JP3093164B2 - 抗酸菌の細胞溶解方法及び核酸の抽出方法 - Google Patents

抗酸菌の細胞溶解方法及び核酸の抽出方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は培養した抗酸菌や血
液、尿、髄液、痰、精液、細胞、組織、生検標本に存在
する抗酸菌の細胞を簡単にかつ効率よく溶解する細胞溶
解方法並びに当該細胞溶解方法を用いて抗酸菌から核酸
を効率よく抽出する核酸の抽出方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、核酸プローブや遺伝子増幅法を用
いた抗酸菌の研究や診断が急速に進歩し、抗酸菌からの
核酸抽出がますます重要になってきた。しかし、抗酸菌
が他の微生物に比べて細胞に脂質を多く含むことから、
従来の核酸抽出方法では細胞を十分に溶解することがで
きないため、高い回収率で核酸を抽出することが出来な
かった。
【0003】核酸の抽出を行なうには通常基本的に4つ
の操作を行う必要がある。すなわち、細胞の溶解、
除蛋白と脱炭水化物、分離濃縮、洗浄精製の4つの
操作である。細胞の溶解にはリゾチーム、アクロモペ
プチダーゼなどの細胞壁溶解酵素やプロテインナーゼK
等の蛋白分解酵素を用いたり、アルカリやSDS等の界
面活性剤を用いて細胞を破壊する。
【0004】また結核菌やぶどう球菌等強固な細胞壁を
持つ微生物の場合、ビーズや超音波を用いて物理的に破
壊させたりする。場合によってはこれに併用して細胞壁
溶解酵素や蛋白分解酵素を作用させたり、アルカリや界
面活性剤添加を組合わせて行う。
【0005】の除蛋白と脱炭水化物については従来よ
りフェノール・クロロホルム法による抽出が最も多く使
用されている。しかしこのフェノール・クロロホルム法
は毒性が強いうえ時間と手間がかかるため大変扱いにく
いという問題があった。そこで、本願出願人は生物材料
から核酸を溶出するための前処理を行ったのち、この前
処理した生物材料にチキソトロピック増粘剤を含む非親
水性の高比重有機液体と水性液体を加えて混合し、遠心
分離後、上層と下層の境界面に非流動性の凝集層を形成
し、上層の核酸を分離抽出するようにした核酸の抽出方
法、即ち相分配抽出法を提案し、特許を得ている(特許
第2548494号)。
【0006】の後に分離濃縮操作においては、核酸
を含む水性液体から100%のイソプロピルアルコール
又は100%のエタノール等で核酸(DNA またはRNA )
を沈殿させて分離濃縮するが、従来の分離濃縮操作で
は、核酸を含む水性液体の塩濃度が高いため、この段階
でイソプロピルアルコール(終濃度が50%)又はエタ
ノール(終濃度が70%)等を加えても、核酸の沈殿物
が無色透明であるため確認できず、この段階で核酸沈殿
物を捨ててしまうことがあり、十分に核酸を回収するこ
とができなかった。
【0007】核酸の抽出効率と抽出の正確度は、第一
に、この分離濃縮操作時の核酸と共沈剤をいかにもれな
く回収するかに起因する。そこで、本願出願人は、イソ
プロピルアルコールやエタノール等によるアルコール沈
殿による核酸を含む水性液体からの核酸の分離濃縮操作
の過程において、核酸と親和性を有し、逆転写反応と競
合せず、PCR 反応を阻害しないで、テクニカルエラーを
最小限に抑えるべく、白い沈殿物または青い沈殿物とし
て目視を可能にすると同時に核酸の回収率を確実にする
共沈剤及びその共沈剤を用いた核酸の抽出方法について
も既に提案した(国際公開番号第W097/07207
号)。
【0008】洗浄精製においては、通常70%エタノ
ールを用いて、分離濃縮された核酸から不純物を取り除
き精製する。
【0009】特に、抗酸菌から核酸を抽出するために
は、その細胞壁の溶解を目的に軽質石油などの有機溶剤
処理による脂質除去やリゾチーム等の細胞溶解酵素を用
いた方法、又は煮沸処理等があるが、いずれの方法でも
抗酸菌の細胞を完全に溶解することができないため、時
間がかかり、核酸の回収率も低かった。また、超音波発
生機を用いた超音波処理による細胞破砕では、抽出した
核酸の分解と実施者への飛沫感染等の問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来の抗酸菌の細胞溶解処理における問題点に鑑みて発明
されたもので、有機溶剤処理や超音波処理による細胞破
砕を行わずに、脂質分解酵素を用いることにより抗酸菌
の細胞壁に存在する脂質を可溶化させて細胞を容易に溶
解することができる抗酸菌の細胞溶解方法並びにこの方
法を用いて高い回収率で、しかも簡便、迅速、安全に核
酸を抽出することができる核酸の抽出方法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明の抗酸菌の細胞溶解方法は、抗酸菌を予め
蛋白質分解活性を含む酵素剤で処理して抗酸菌自身が保
有するリパーゼインヒビターの活性を阻害または失活さ
せた後、脂質分解活性を含む酵素剤を作用させることに
より抗酸菌の細胞壁に存在する脂質を分解させ、細胞を
溶解することを特徴とする。
【0012】上記した蛋白質分解活性を含む酵素剤とし
ては、トリプシン、プロナーゼ、キモトリプシン、プラ
スミン及びズブチリシンからなる群から選ばれた1又は
2以上の酵素剤を用いることができる。上記した脂質分
解活性を含む酵素剤としては、リパーゼが好適である。
【0013】本発明の核酸の抽出方法は、上記した抗酸
菌の細胞溶解方法を用いて核酸を抽出することを特徴と
する。具体的には、上記抗酸菌の細胞溶解方法によって
細胞壁に存在する脂質を分解させた抗酸菌を界面活性剤
及び変性剤又は細胞壁溶解酵素で処理することによって
抗酸菌から核酸を抽出することができる。
【0014】本発明の最も好適な態様は、リパーゼの作
用を増強させるために、抗酸菌を予めトリプシンやプロ
ナーゼ等の蛋白分解活性を含む酵素剤で処理し、抗酸菌
自身が保有するリパーゼの作用を阻害するリパーゼイン
ヒビターの活性を阻害または失活させたのち、リパーゼ
を使用して抗酸菌の細胞壁に存在する脂質を可溶化し、
細胞を溶解する方法である。この方法によれば、抗酸菌
の細胞をさらに効率よく溶解することができ、したがっ
て、抗酸菌からの核酸抽出を容易に行なうことが可能と
なる。
【0015】本発明の抗酸菌の細胞溶解方法は、好まし
くは、抗酸菌からの核酸の抽出操作の前の段階、すなわ
ち抗酸菌の細胞を溶解する操作において、脂質分解活性
及び蛋白質分解活性を含む酵素剤、もしくは予め蛋白質
分解活性を含む酵素剤で処理した後、脂質分解活性を含
む酵素剤を、培養した抗酸菌や抗酸菌が存在する血液、
尿、髄液、痰、精液、細胞、組織、生検標本等の生物材
料に添加することによって行なわれる。
【0016】本発明において使用する脂質分解活性及び
蛋白質分解活性を含む酵素剤としては、リパーゼA〔天
野製薬(株)〕、リパーゼM〔天野製薬(株)〕、リパ
ーゼF〔天野製薬(株)〕、リパーゼAY〔天野製薬
(株)〕、リパーゼPS〔天野製薬(株)〕、リパーゼ
F−AP15〔天野製薬(株)〕を使用することができ
る。培養した抗酸菌や抗酸菌が存在する生物材料を予め
0.1%〜10.0%(W/V)の範囲の濃度の陰イオ
ン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤等を含む緩
衝液(pH5〜9)中で前処理したのち、上記した酵素
剤を1単位/ml〜1000000単位/ml、好ましくは
100単位/ml〜10000単位/mlの濃度で使用する
のが好適である。
【0017】脂質分解活性を含む酵素剤を用いる場合
は、培養した抗酸菌や抗酸菌が存在する生物材料を予め
0.1%〜10.0%(W/V)の範囲の濃度の陰イオ
ン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤等を含む緩
衝液(pH5〜9)中で前処理したのち、1単位/ml〜
1000000単位/ml、好ましくは100単位/ml〜
10000単位/mlの濃度の脂質分解酵素で処理するの
が好適である。
【0018】最も好適には、上記した脂質分解活性を含
む酵素剤を加える前に、培養した抗酸菌や抗酸菌が存在
する生物材料に0.1mg/ml〜1000mg/mlの濃度の
蛋白質分解活性を含む酵素剤の1又は2以上で処理した
のち、1単位/ml〜1000000単位/ml、好ましく
は100単位/ml〜10000単位/mlの濃度の脂質分
解活性を含む酵素剤で処理する。
【0019】本発明の核酸の抽出方法は、上記した抗酸
菌の細胞溶解方法を細胞の溶解操作に適用するものであ
る。この細胞溶解方法により抗酸菌の細胞壁に存在する
脂質を可溶化したのち、抗酸菌から核酸を抽出するため
には、キレート剤を含む緩衝液(pH5〜9)中で前処
理したのち、細胞膜または細胞壁等を破壊するために通
常は約0.1%〜20.0%(W/V)の範囲の濃度の
陰イオン界面活性剤や非イオン性界面活性剤等の膜溶解
剤と約1M〜5Mのグアニジンチオシネートまたは約1
M〜5Mの塩酸グアニジン等の蛋白変性剤で処理する。
場合によっては、細胞膜や細胞壁等を破壊するための酵
素によって処理してもよい。
【0020】上記した細胞膜や細胞壁等を破壊するため
の酵素として好適に用いられるものは、約1mg/mlから
50mg/mlの濃度のリゾチーム、アクロモペプチダー
ゼ、リゾスタフィン、リチカーセ、ムタノリシン等の膜
溶解剤、もしくは約10μg/mlから20mg/mlの濃度
の蛋白変性剤、たとえばプロテアーゼk、プロナーゼ、
ペプシン、パパイン等がある。
【0021】上記したような前処理を行うと、抗酸菌や
抗酸菌が存在する生物材料は上記したキレート剤、膜溶
解剤、蛋白変性剤等を含む水溶液に溶解し、この水溶液
中には核酸と各種の生物物質が可溶化する。次に、抗酸
菌の核酸と各種の生物物質が可溶化しているこの水溶液
から、核酸を抽出するためには、フェノール/クロロホ
ルム抽出やチキソトロピック増粘剤を用いる相分配抽出
法(特許第2548494号)、又はガラス等のシリカ
表面上への固相吸着等の方法を適用することができる。
また、分離濃縮操作時において前記した共沈剤を用いる
方法(国際公開番号第W097/07207号)を適用
することもできる。
【0022】本発明でいう抗酸菌としては、マイコバク
テリウム・アフリカ,マイコバクテリウム・アビウム,
マイコバクテリウム・アビウム亜種アビウム,マイコバ
クテリウム・アビウム亜種パラツベルクロシス,マイコ
バクテリウム・アビウム亜種シルバティカム,マイコバ
クテリウム・ボビス,マイコバクテリウム・ケローネ,
マイコバクテリウム・クキイイ,マイコバクテリウム・
フラベッセンス,マイコバクテリウム・フォーチュイタ
ム,マイコバクテリウム・フォーチュイタム亜種アセタ
ミドリチカム,マイコバクテリウム・ガストリ,マイコ
バクテリウム・ゴルドネ,マイコバクテリウム・ヘモフ
ィルム,マイコバクテリウム・イントラセルラー,マイ
コバクテリウム・カンサシイ,マイコバクテリウム・レ
プレ(癩菌),マイコバクテリウム・レプレムリウム
(鼠癩菌),マイコバクテリウム・マルモエンセ,マイ
コバクテリウム・マリナム,マイコバクテリウム・ミク
ロティ,マイコバクテリウム・モリオカエンセ,マイコ
バクテリウム・ノンクロモジェニカム,マイコバクテリ
ウム・フレイ(チモテ菌),マイコバクテリウム・ポリ
フェレ,マイコバクテリウム・スクロフラセウム,マイ
コバクテリウム・シミエ,マイコバクテリウム・スメグ
マチス(スメグマ菌),マイコバクテリウム・シュルガ
イ,マイコバクテリウム・テラエ,マイコバクテリウム
・トリビアーレ,マイコバクテリウム・ツベルクローシ
ス(結核菌),マイコバクテリウム・ウルセランス,マ
イコバクテリウム・バッカエ,マイコバクテリウム・ゼ
ノピから選ばれる。
【0023】本発明で用いられる脂質分解活性を含む酵
素剤としては、グリセロールエステルを加水分解し、脂
肪酸を遊離する酵素、膵リパーゼ、リポプロテインリパ
ーゼ、ヘパティックリパーゼ、ホルモンセンシティブリ
パーゼ、モノグリセリドリパーゼ、トリアシルグリセロ
ールリパーゼ等のリパーゼやリパーゼ活性を持つエステ
ラーゼ等を指す。
【0024】本発明で用いられる蛋白分解活性を含む酵
素剤としては、プロテアーゼ、プロナーゼ、トリプシ
ン、キモトリプシン、プラスミン、ズブチリシン、ナガ
ーゼ等がある。
【0025】脂質分解活性を含む酵素剤と蛋白分解活性
を含む酵素剤を溶解する適当な水溶液には、0.1%〜
10.0%(W/V)の範囲の濃度の陰イオン性界面活
性剤、又は非イオン性界面活性剤等を含む蒸留水、また
は、T・Ebuffer(一般的には50mMのトリス
ヒドロキシメチルアミノエタン−塩酸緩衝液pH8.0
・20mMのEDTA)等の緩衝液や塩化ナトリウム,
塩化カリウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウム,酢
酸ナトリウム,塩化アンモニウム,酢酸アンモニウム,
硫酸アンモニウム等の無機塩およびその混合物があり、
通常、約0.1M〜10.0Mの範囲の濃度で使用す
る。
【0026】上記した陰イオン界面活性剤には、ラウリ
ル硫酸ナトリウム,N−ラウロイルサルコシンナトリウ
ム,リン酸ラウリル,カプリレート塩,コレート塩,ス
ルフォン酸デカン塩,デオキシコレート塩,グリココレ
ート塩,グリコデオキシコレート塩,タウロコレート
塩,タウロデオキシコレート塩等がある。
【0027】上記した適切な非イオン性界面活性剤に
は、Span20,Span40,Span60,Sp
an65,Span80,Span85等のd−ソルビ
トールの脂肪酸エステル類、Tween20,Twee
n21,Tween40,Tween60,Tween
65,Tween80,Tween81,Tween8
5等のポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキ
ルエステル類、TritonX−100等のポリオキシ
エチレングリコールp−t−オクチルフェニルエーテル
類等がある。
【0028】
【実施例】以下に、本発明の実施例を挙げて説明する
が、本発明がこれらの実施例に限定されるものでないこ
とは勿論である。
【0029】実施例1 小川培地にて2週間培養したマイコバクテリウム・アビ
ウムを4.0mlのTE緩衝液(10mMのEDTA、2
5mMのトリス−塩酸:pH8.0)に懸濁し、クレッ
ト吸収試験管に1.0×109 cells /mlとなるように
調製して被験菌液とした。この被験菌液に0.2%のTr
itonX-100 を含む同緩衝液で調製した10mg/mlのリパ
ーゼM〔天野製薬(株)製〕を0.5ml加え、50℃、
60分間反応させた後、0.5mlの5Mのグアニジンチ
オシネート、5%のラウロイル・サルコシン・ナトリウ
ム、25mMのクエン酸ナトリウムの溶液を加えて60
℃、60分間の処理を行い、クレット光電光度計(富士
工業株式会社製)を使って濁度を測定し、表1に示し
た。
【0030】対照には、リパーゼM〔天野製薬(株)
製〕を含まない同緩衝液を用いて同様の方法で実験し
た。結果は、リパーゼM〔天野製薬(株)製〕を作用さ
せた実施例1の方が対照に比べて濁度が低かった。細胞
が溶解することによって溶液の透明度が増し、濁度は低
下する。即ち、濁度が低い程細胞溶解が進んでいること
を示す。実施例1の濁度の数値は細胞溶解が充分に行わ
れたことを示している。
【0031】比較例1 上記実施例1と比較するために、リパーゼM〔天野製薬
(株)〕の代わりにブタ膵リパーゼを用いて同様の方法
で実験した。また、対照には、リパーゼM〔天野製薬
(株)〕を含まない同緩衝液を用いて同様の方法で実験
した。結果を表1に示した。比較例1の場合、対照に比
較して濁度が多少低下しているが、実施例1に比較すれ
ばはるかに高い濁度であり、細胞溶解が多少あったにし
ても充分に行われたとはいえない。
【0032】
【表1】
【0033】実施例2 小川培地にて2週間培養したマイコバクテリウム・イン
トラセルラーを滅菌生理食塩水等で1.2×109 cell
s /mlに調製し被験菌液とした。この被験菌液1mlをマ
イクロチューブ(1.5ml〜2.0ml)に移し、120
00回転、5分間の遠心分離で上清を除去して、菌体を
500μlの50mMのグルコース、10mMのEDT
A(pH8.0)、25mMのトリスー塩酸(pH8.
0)の緩衝液に懸濁し、5分間室温に放置した。放置
後、50mg/mlの濃度のプロテアーゼで37℃、60分
間の処理を行ったのち、12000回転、5分間の遠心
分離で上清を除去した。
【0034】続いて、400μlの0.2%のTritonX-
100 を含む上記の緩衝液で再懸濁し、50μlの100
0単位/mlのリポプロテインリパーゼと50μlの1mg
/mlの濃度のリゾチームを加え、37℃、60分間の処
理を行い細胞壁を溶解した。
【0035】次に、細胞膜と蛋白質を変性させるために
5Mのグアニジンチオシネート、5%のラウロイル・サ
ルコシン・ナトリウム、25mMのクエン酸ナトリウム
の溶液を100μl加えて60℃、60分間の処理を行
ったのち、フェノール・クロロホルム・イソアミルアル
コール(25:24:1,V/V)600μl加え激し
く振とうした後、12000回転で15分間遠心分離す
る。
【0036】核酸は水性液体層(上層)に、変性蛋白質
は水性液体層と有機液体層(下層)との中間層に綿状の
白い層をつくるので、その白い層を吸い込まないように
DNA層を注意深く口の広いピペットを用いて静かに吸
い取り、新しいマイクロチューブに移した。600μl
の冷イソプロピルアルコールを加えよく混合した後、1
2000回転で15分間遠心して核酸を沈殿させ上清を
除去した後、ペレットに1mlの70%のエタノールを加
え12000回転で5分間遠心して上清を除去した。
【0037】この70%のエタノールによる核酸の沈殿
操作を2回行ったのち、沈殿を乾燥させ、0.1×SS
Cを加えて核酸を溶解した。このときに抽出・精製した
核酸の回収率と純度は分光光度計(HITACHIU-3200 Spec
trophotometer)を使って、波長260nmの吸光度を測
定してDNA量を計算(OD260 1.0のとき、50μ
g/mlのDNA量に相当する)して回収率を求めた。
【0038】また純度試験として波長280nmと波長
234nmの吸光度を測定し、OD 260 /OD280 の比
率が1.65〜1.85の範囲にあれば蛋白質等の混在
はほとんどないものと判定し、OD234 /OD260 の比
率が0.9以下であれば多糖類等の混在は少ないものと
判定した。この時抽出・精製した核酸の回収率と純度の
測定結果を表2に示した。表2から明らかなように、実
施例2の回収率は比較例2の軽質石油を用いた方法に比
べて約3倍となり極めて優れており、また純度において
もほぼ同等といえるものであった。
【0039】比較例2 上記実施例2と比較するために、以下に記した従来公知
の軽質石油を用いた方法で実験した。
【0040】小川培地にて2週間培養したマイコバクテ
リウム・イントラセルラーを滅菌生理食塩水等で1.2
×109 cells /mlに調製し被験菌液とした。この被験
菌液1mlをマイクロチューブ(1.5ml〜2.0ml)に
移し、12000回転、5分間の遠心分離で上清を除去
したのち、菌体を500μlの軽質石油:クロロホル
ム:緩衝液(3:1:1)に懸濁し、ボルテックスミキ
サーを用いて15分間懸濁した。懸濁後、1mlの緩衝液
を加えよく混和させたのち、12000回転、5分間の
遠心分離で上清を除去した。
【0041】次いで、10mg/mlのナガーゼを加えて3
7℃、4時間の処理を行ったのち、50mg/mlのリゾチ
ームを加えて50℃、4時間の処理を行った。
【0042】次に、1%のラウリル硫酸ナトリウムと3
mg/mlのプロナーゼを加えて37℃、12時間の処理を
行ったのち、フェノール・クロロホルム・イソアミルア
ルコール(25:24:1,V/V)600μl加え激
しく振とうした後、12000回転で15分間遠心分離
する。核酸は水性液体層(上層)に、変性蛋白質は水性
液体層と有機液体層(下層)との中間層に綿状の白い層
をつくるので、その白い層を吸い込まないようにDNA
層を注意深く口の広いピペットを用いて静かに吸い取
り、新しいマイクロチューブに移した。
【0043】600μlの冷イソプロピルアルコールを
加えよく混合した後、12000回転で15分間遠心し
て核酸を沈殿させ上清を除去した後、ペレットに1mlの
70%のエタノールを加え12000回転で5分間遠心
して上清を除去した。この70%のエタノールによる核
酸の沈殿操作を2回行ったのち、沈殿を乾燥させ、0.
1×SSCを加えて核酸を溶解した。この時抽出・精製
した核酸の回収率と純度を実施例2と同様に測定し、表
2に示した。
【0044】
【表2】
【0045】実施例3 小川培地にて2週間培養したマイコバクテリウム・アビ
ウムを減菌生理食塩水等で6.4×108 cells /mlに
調製し被験菌液とした。この被験菌液1mlをマイクロチ
ューブ(1.5ml〜2.0ml)に移し、12000回
転、5分間の遠心分離で上清を除去して、菌体を500
μlの100mMのEDTA(pH8.0)、50mM
のトリス−塩酸(pH8.0)の緩衝液に懸濁し、5分
間室温に放置した。放置後、50mg/mlの濃度のトリプ
シンで37℃、60分間の処理を行ったのち、1200
0回転、5分間の遠心分離で上清を除去した。
【0046】続いて、400μlの0.2%のTwee
n−20を含む上記の緩衝液で再懸濁し、50μlの1
0000単位/mlのリパーゼと50μlの1mg/mlの濃
度のリゾチームを加え、45℃、30分間の処理を行
い、細胞壁を溶解した。
【0047】次に、細胞膜と蛋白質を変性させるために
5Mのグアニジンチオシネート、10%のラウロイル・
サルコシン・ナトリウム、25mMのクエン酸ナトリウ
ムの溶液を100μl加えて60℃、60分間の処理を
行ったのち、2.7%(W/V)のBENTONE S
D−3を含むクロロホルム:イソアミルアルコール(2
4:1,V/V)600μlを加え激しく振とうした
後、12000回転で15分間遠心分離した。
【0048】遠心分離後、上層(水性液体層)と下層
(高比重有機液体層)の境界面に非流動凝集層が形成さ
れるので、マイクロチューブを傾斜(デカンテーショ
ン)させて上層のDNAを含む水性液体層を新しいマイ
クロチューブに移した。
【0049】水性液体層の1/10量に相当する量の3
Mの酢酸ナトリウムを加え、さらに同量のイソプロピル
アルコールを加え軽く攪拌した後、12000回転で1
5分間遠心して核酸を沈殿させ、デカンテーションで静
かに上清を除去した後、ペレットに70%のエタノール
1mlを静かに加え12000回転で5分間遠心してデカ
ンテーションで静かに上清を除去し、乾燥させた後、
0.1×SSCを加えて核酸を溶解した。
【0050】この時抽出・精製した核酸の回収率と純度
を実施例2と同様に測定し、表3に示した。この時抽出
・精製した核酸の回収率と純度は、表3から明らかなよ
うに比較例3の煮沸・超音波法を用いた方法と同等の成
績であった。
【0051】比較例3 上記実施例3と比較するために、以下に記した従来公知
の煮沸・超音波法を用いた方法で実験した。
【0052】小川培地にて2週間培養したマイコバクテ
リウム・アビウムを滅菌生理食塩水等で6.4×108
cells /mlに調製し被験菌液とした。この被験菌液1ml
をマイクロチューブ(1.5ml〜2.0ml)に移し、1
00℃で10分間煮沸したのち、40μgのプロテイネ
ースKと0.5%のTween 20、及びガラスビーズを加
え、37℃、30分間の処理を行った。
【0053】続いて、60℃で20分間の超音波処理を
行ったのち、フェノール・クロロホルム・イソアミルア
ルコール(25:24:1,V/V)600μlを加え
激しく振とうした後、12000回転で15分間遠心分
離する。核酸は水性液体層(上層)に、変性蛋白質は水
性液体層と有機液体層(下層)との中間層に綿状の白い
層をつくるので、その白い層を吸い込まないようにDN
A層を注意深く口の広いピペットを用いて静かに吸い取
り、新しいマイクロチューブに移した。
【0054】600μlの冷イソプロピルアルコールを
加えよく混合した後、12000回転で15分間遠心し
て核酸を沈殿させ上清を除去した後、ペレットに1mlの
70%のエタノールを加え12000回転で5分間遠心
して上清を除去した。この70%のエタノールによる核
酸の沈殿操作を2回行ったのち、沈殿を乾燥させ、0.
1×SSCを加えて核酸を溶解した。この時抽出・精製
した核酸の回収率と純度を実施例2と同様に測定し、表
3に示した。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、回
収率の低い有機溶剤処理を用いた方法や実験者への感染
の恐れがある超音波処理による細胞破砕を行わずに、脂
質分解酵素を有効に用いることにより抗酸菌の細胞壁に
存在する脂質を可溶化させて細胞を容易に溶解し、高い
回収率で、しかも簡便・迅速・安全に核酸を抽出すると
いう大きな効果が達成される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅井 義征 埼玉県与野市上落合神明494−4 (56)参考文献 特開 平6−319527(JP,A) 特公 昭46−3109(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗酸菌を予め蛋白質分解活性を含む酵素
    剤で処理して抗酸菌自身が保有するリパーゼインヒビタ
    ーの活性を阻害または失活させた後、脂質分解活性を含
    む酵素剤を作用させることにより抗酸菌の細胞壁に存在
    する脂質を分解させ、細胞を溶解することを特徴とする
    抗酸菌の細胞溶解方法。
  2. 【請求項2】 蛋白質分解活性を含む酵素剤として、ト
    リプシン、プロナーゼ、キモトリプシン、プラスミン及
    びズブチリシンからなる群から選ばれた1又は2以上の
    酵素剤を用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 脂質分解活性を含む酵素剤として、リパ
    ーゼを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項記載の抗酸
    菌の細胞溶解方法を用いて核酸を抽出することを特徴と
    する核酸の抽出方法。
  5. 【請求項5】 細胞壁に存在する脂質を分解させた抗酸
    菌を界面活性剤及び変性剤又は細胞壁溶解酵素で処理す
    ることによって抗酸菌から核酸を抽出することを特徴と
    する請求項4記載の方法。
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