JP3090837B2 - 作業用走行車における作業部のローリング制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、乗用型田植機等の作業
用走行車における作業部のローリング制御装置に関する
ものである。

【０００２】

【従来技術及び発明が解決しようとする課題】一般に、
この種作業用走行車のなかには、ローリング自在に連結
される作業部を、左右一対のローリング弾機を介して従
動的にローリング制御するものがあるが、このもので
は、制御し得るローリング量（ローリング弾機の有効範
囲）に限度があるため、凹凸の大きい圃場では走行機体
のローリングに追随して作業部が大きく傾斜してしまう
欠点があつた。そこで、前記作業部に、アクチユエータ
駆動に基づいて強制的なローリング制御を行う強制ロー
リング制御機構を設けて前記従動ローリング制御の欠点
を補うことが提案されている。しかるに、前記アクチユ
エータの駆動停止状態では強制ローリング制御機構を容
易に手で動かすことができないため、ローリング弾機の
着脱作業をする場合や、強制ローリング制御機構の故障
時に作業を可能にするためのローリングロツク作業をす
る場合に、強制ローリング制御機構の影響を受けて作業
性が低下するという不都合があつた。

【０００３】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実
情に鑑みこれらの欠点を一掃することができる作業用走
行車における作業部のローリング制御装置を提供するこ
とを目的として創作されたものであつて、左右一対のロ
ーリング弾機を介して作業姿勢が従動的にローリング制
御される作業部に、アクチユエータ駆動に基づいて強制
的なローリング制御を行う強制ローリング制御機構を設
けてなる作業用走行車において、前記強制ローリング制
御機構を、アクチユエータ側の駆動ギヤと、これに噛合
する従動ギヤとを用いて構成すると共に、これらギヤの
うちの一方には、他方のギヤに対する噛合解除をすべく
ギア軸方向とは直行する方向に移動できる移動機構が設
けられていることを特徴とするものである。そして本発
明は、この構成によつて、ローリング弾機の着脱時等に
おける作業性を向上できるようにしたものである。

【０００４】

【実施例】次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説
明する。図面において、１は乗用型田植機の走行機体で
あつて、該走行機体１の後部には、油圧昇降作動する昇
降リンク機構２を介して植付作業部（作業部）３が連結
されている。この植付作業部３は、前記昇降リンク機構
２の後端部に着脱自在に連結され、かつ下端部に前後を
向くボス部４ａが一体的に設けられるホルダフレーム
４、該ホルダフレーム４のボス部４ａに前後一対の軸受
５ａを介して回動自在に軸支されるローリング支軸５、
該ローリング支軸５の後端部に一体的に連結され、かつ
左右両端部に苗載台支持ステー６ａが立設される作業部
フレーム６、該作業部フレーム６に一体的に固設される
プランタケース７、該プランタケース７に並設されるプ
ランタアーム８、前記苗載台支持ステー６ａの上端部お
よびプランタケース７の上端部にスライドピースＳを介
して左右往復移動自在に支持され、かつプランタアーム
８の掻取タイミングに合わせて強制的に横送りされる前
傾姿勢の苗載台９、プランタケース７の底部中央および
左右両側部に上下揺動自在に設けられるセンターおよび
サイドフロート１０、１１等で構成されている。即ち、
植付作業部３は、昇降リンク機構２を介して走行機体１
に連結されるホルダフレーム４に対し、ローリング支軸
５を介してローリング自在に支持されているが、以上の
基本構成は何れも従来通りである。

【０００５】１２は前記ホルダフレーム４と植付作業部
３との間に介設される中間フレームであつて、該中間フ
レーム１２の下端部に一体的に形成されるボス部１２ａ
は、ホルダフレーム４のボス部４ａに回動自在に外嵌支
持されている。即ち、中間フレーム４は、ホルダフレー
ム４および植付作業部３に対して相対的にローリング自
在となり、しかも、そのローリング支点は植付作業部３
のローリング支点に一致するようになつている。また、
前記中間フレーム４は、直立姿勢のフレーム本体１２ｂ
と、該フレーム本体１２ｂの上端部から苗載台９の裏側
面に沿つて前傾状に突出するＴ字フレーム部１２ｃとで
構成されるが、側面視における中間フレーム１２は、前
記苗載台支持ステー６ａと苗載台９との間に位置するよ
うに配設されている。

【０００６】１４は左右一対のコイル弾機等で構成され
る第一ローリング弾機であつて、該第一ローリング弾機
１４は、中間フレーム１２のフレーム本体１２ｂと作業
部フレーム６との間にハの字状に介設されている。つま
り、第一ローリング弾機１４の弾持作用に基づいて植付
作業部３の全体荷重をバランスさせるが、植付作業時に
は、ジヨイント軸（機体側ＰＴＯ軸と作業部側入力軸を
連結するもの）Ｊの回転力に基づいて植付作業部３が所
定方向にローリングしようとするため、該方向のローリ
ング時に伸長する側のコイル弾機に他側のコイル弾機よ
りも大きい付勢力を設定しておくことにより、植付作業
時の作業部姿勢を平行に維持するようになつている。

【０００７】１５は左右一対のコイル弾機等で構成され
る第二ローリング弾機であつて、該第二ローリング弾機
１５は、中間フレーム１２のＴ字フレーム部１２ｃと苗
載台９の左右両端部との間にハ字状に介設されて、苗載
台９の横送りに伴う偏荷重をバランスするようになつて
いる。つまり、ローリング自在な植付作業部３を第一お
よび第二のローリング弾機１４、１５によつて弾持し
て、前記センターフロート１０およびサイドフロート１
１の浮力に基づく植付作業部３の従動的な田面追随作用
を許容する所謂従動ローリング制御を行うように構成さ
れているが、前記Ｔ字フレーム部１２ｃの上端部に形成
される第二ローリング弾機１５用の係着孔１２ｄと、苗
載台９の左右両端部に形成される第二ローリング弾機１
５用の係着孔９ａは、それぞれ左右方向に所定間隔を存
して複数並設されており、このため、係着孔１２ｄ、９
ａの掛け換えに基づいて各第二ローリング弾機１５の付
勢力を調整することができるようになつている。尚、第
二ローリング弾機１５を、図８に示す様に係着孔９ａ
（１２ｄ）に直接係着するのみならず、図９に示す如く
係着孔９ａ（１２ｄ）に螺着されるボルトｂに係着する
ようにしてもよい。

【０００８】ところで、前記係着孔１２ｄが形成される
Ｔ字フレーム部１２ｃの上端部は、左右を向く横フレー
ム１２ｅによつて形成されているが、該横フレーム１２
ｅは、Ｔ字フレーム１２ｃとは別体となつており、横フ
レーム１２ｅから下方に突出する左右一対の突出バー１
２ｆを、Ｔ字フレーム部１２ｃの中空部１２ｇに抜き差
しすることによつて着脱することができるように構成さ
れている。

【０００９】一方、１６は前記ホルダフレーム４の側方
位置にブラケツト１７を介して設けられる減速機構付の
モータ（アクチユエータ）であつて、該モータ１６の駆
動力を出力するピニオンギヤ１６ａには、ブラケツト１
７に回動自在に設けられる中間ギヤ（駆動ギヤ）１８が
噛合しているが、この中間ギヤ１８は、中間フレーム１
２から側方に突設されるラツク（従動ギヤ）１９のギヤ
部１９ａ（中間フレーム１２のローリング支点を中心と
して円弧状に湾曲形成される）に上方から噛合してい
る。即ち、ホルダフレーム４と中間フレーム１２との間
には、前記モータ１６の駆動に基づいて中間フレーム１
２を左右方向に強制的にローリングさせる強制ローリン
グ制御機構が構成されている。

【００１０】さて、前記ブラケツト１７の一側縁には、
上下に並ぶ複数の取付孔１７ａが開設された取付片１７
ｂが折曲形成されている。そして、前記取付孔１７ａお
よび中間フレーム１２側の取付孔に貫挿されるボルトＢ
とナツトＮとの締付けでブラケツト１７が中間フレーム
１２の側面部に一体的に取付けられることになるが、前
記取付孔１７ａは上下方向に長い長孔に形成されてお
り、このためボルトＢを緩めた状態では、ブラケツト１
７を上方にスライドさせて中間ギヤ１８とラツク１９と
の噛合を解除することができるようになつている。

【００１１】さらに、２０は中間フレーム１２の後面部
にＬ字状のセンサブラケツト２０ａを介して設けられる
振り子式等のローリング検知センサであつて、該ローリ
ング検知センサ２０のローリング検知値は図示しない制
御部に入力され、そして制御部においては、入力される
ローリング検知値を所定の設定値（水平設定値もしくは
傾斜設定値）に一致させるべく前記モータ１６を正逆駆
動制御し、該制御に基づいて中間フレーム１２を一定姿
勢に強制ローリング制御（水平制御もしくは傾斜制御）
するようになつている。

【００１２】２１は中間フレーム１２から後方に向けて
突設された規制ピンであつて、該規制ピン２１は、プラ
ンタケース７に一体的に設けられる規制プレート２２の
凹部２２ａに遊嵌して植付作業部３のローリング規制機
構を構成している。つまり、規制ピン２１は、中間フレ
ーム１２に対する植付作業部３の相対的なローリング角
度が所定角度Ｂ以内であれば植付作業部３のローリング
を許容するが、中間フレーム１２に対する植付作業部３
の相対的なローリング角度が所定角度Ｂに達した場合に
は、凹部２２ａの左右端部に接当して植付作業部３のそ
れ以上のローリングを規制するようになつている。

【００１３】２３は中間フレーム１２のＴ字フレーム１
２ｃから垂下状に突出するブラケツトであつて、該ブラ
ケツト２３の下端部は、ホルダフレーム４の上端部に設
けられるガイド板２４の前面に左右摺動自在に接当して
いる。つまり、前記ローリング弾機１４、１５の付勢力
を受ける中間フレーム１２の後方への傾倒を、ガイド板
２４に対するブラケツト２３の接当に基づいて規制する
傾倒規制機構を構成している。

【００１４】さらに、前記ブラケツト２３のガイド板接
当面には、左右一対の筒部材２３ａが突設されるが、各
筒部材２３ａには、一部が筒部材２３ａの先端から露出
してガイド板２４に転動自在に接当するボール２５が収
容されている。つまり、中間フレーム１２のローリング
に伴うブラケツト２３とガイド板２４との摺動抵抗を最
小限に抑えることができるようになつている。

【００１５】また、前記ガイド板２４の左右両端部に
は、ブラケツト２３の下端部を挟んで対向する左右一対
の折曲片２４ａが形成されるが、該左右の折曲片２４ａ
には、ブラケツト２３に形成される左右の接当片２３ｂ
との接当に基づいて検知作動するリミツトスイツチ２６
がそれぞれ設けられている。即ち、左右のリミツトスイ
ツチ２６は、ホルダフレーム４に対する中間フレーム１
２の相対的なローリング角度が所定角度Ａに達したこと
を接当検知すると共に、該検知信号を前記制御部に出力
してモータ１６のリミツト自動停止を行うようになつて
いる。

【００１６】一方、２７はホルダフレーム４に設けられ
るロツクピンであつて、該ロツクピン２７は、ホルダフ
レーム４の側部に設けられる側面視略冂字状のブラケツ
ト２８に前後スライド自在に貫通支持されるものである
が、中間フレーム１２の弾機ブラケツト（第一ローリン
グ弾機１４を係着するためのもの）２９に形成されるロ
ツク孔２９ａに嵌入操作（後方スライド操作）すること
によつてモータ等の故障時に中間フレーム１２のローリ
ングを中立位置でロツクすることができるようになつて
いる。

【００１７】３０は前記ロツクピン２７の中間部に一体
的に外嵌組付けされるボス部材であつて、該ボス部材３
０から上方に突出するボルト軸３０ａは、ブラケツト２
８に前後を向いて形成される長孔２８ａを貫通すると共
に、ナツト３１に螺合されている。そして、前記ナツト
３１を緩めた状態では、ボルト軸３０ａが長孔２８ａに
沿つて移動してロツクピン２７のスライド操作を許容す
る一方、ナツト３１を締付けた状態では、ボルト軸３０
ａの移動を規制してロツクピン２７を適宜位置で固定で
きることになるが、ナツト３１の締付け力は上下方向に
のみ作用するため、ナツト３１の締付けに伴うロツクピ
ン２７のずれに基づいて中間フレーム１２のロツク位置
が左右に変化してしまう不都合を回避できるようになつ
ている。

【００１８】叙述の如く構成された本発明の実施例にお
いて、ホルダフレーム１２および植付作業部３に対して
相対的にローリング自在な中間フレーム１２を設け、該
中間フレーム１２と植付作業部３との間にローリング弾
機１４、１５を介設する一方、中間フレーム１２とホル
ダフレーム４との間に強制ローリング制御機構を介設
し、該強制ローリング制御機構のモータ１６を、中間フ
レーム１２に設けられるローリング検知センサ２０の検
知に基づいて駆動制御して複合的なローリング制御を行
うことになる。つまり、中間フレーム１２を機体ローリ
ングに拘らず一定姿勢（水平姿勢もしくは傾斜姿勢）に
制御してローリング弾機１４、１５による従動ローリン
グ制御の有効範囲を拡大するものであるが、前記モータ
１６等が組付けられるブラケツト１７は、ボルトＢを緩
めることによつて上方にスライドできるため、中間ギヤ
１８とラツク１９との噛合を解除して中間フレーム１２
の自由なローリングを許容することが可能になる。従つ
て、ロツクピン２７による中間フレーム１２の中立ロツ
ク操作が容易になることは勿論のこと、ローリング弾機
１４、１５を着脱する場合においては、中間フレーム１
２を左右に手で動かすことによつて、弾機取付間隔を可
及的に短くした状態でローリング弾機１４、１５の着脱
作業を行えることになり、この結果、ローリング弾機１
４、１５の着脱時における作業性を著しく向上させるこ
とができる許りでなく、着脱時に無理な力を作用させて
ローリング弾機１４、１５を破損するような不都合も確
実に解消することができる。

【００１９】しかも、中間フレーム１２の自由なローリ
ングを許容した状態では、左右ローリング弾機１４、１
５が拮抗する位置に中間フレーム１２が移動することに
なるため、この位置を基準として左右ローリング弾機１
４、１５のバランス調整を容易に行うことが可能にな
り、この結果、中間フレーム１２がロツクされた状態で
バランス調整を行う場合の様に、殊更植付作業部３を上
昇させてバランス状態を確認するような面倒も解消する
ことができる。

【００２０】さらに、中間ギヤ１８をラツク１９から噛
合解除する方向に移動させるための機構は、中間ギヤ１
８が組付けられるブラケツト１７の取付孔１７ａを単に
長孔に形成するだけで構成されているため、殊更部品を
追加したり複雑な構造を採用する必要がない。

【００２１】また、前記ブラケツト１２をギア軸方向と
は直行する方向にスライド可能に構成したことにより、
中間ギヤ１８とラツク１９との噛合深さ調整（バツクラ
ツシユ調整）を容易に行うことができるという利点もあ
る。

【００２２】また、左右の第二ローリング弾機１５が係
着される横フレーム１２ｅを、中間フレーム１２に対し
て着脱自在に構成したため、第二ローリング弾機１５を
横フレーム１２ｅの取り外し状態で安全に行うことがで
きる。つまり、横フレーム１２ｅが中間フレーム１２に
一体的に設けられている場合には、第二ローリング弾機
１５を一本ずつ引きながら横フレーム１２ｅに係着する
必要があるが、横フレーム１２ｅの取り外し状態では、
殊更引張ることなく左右の第二ローリング弾機１５を横
フレーム１２ｅに係着させることができるうえに、この
状態では左右の第二ローリング弾機１５がバランス状態
であるため、横フレーム１２ｅを容易に中間フレーム１
２にセツトできることになり、この結果、弾機組付け作
業における作業性および安全性を大いに向上させること
ができる。

【００２３】またさらに、本実施例では、第二ローリン
グ弾機１５の係着孔１２ｄ、９ａを、それぞれ左右方向
に所定間隔を存して複数並設しているため、係着孔１２
ｄ、９ａの掛け換えに基づいて各第二ローリング弾機１
５の付勢力を容易に調整することができ、従つて、部品
のバラツキや組付け誤差による左右のアンバランスを第
二ローリング弾機１５の付勢力調整に基づいて容易に解
消することができる。

【００２４】尚、本発明は、前記実施例に限定されない
ものであることは勿論であつて、例えば噛合解除するギ
ヤは、強制ローリング制御機構の動力伝動経路を構成す
るものであれば何れのギヤであつてもよい。

【００２５】

【作用効果】以上要するに、本発明は叙述の如く構成さ
れたものであるから、ローリング弾機を介して従動的な
ローリング制御がなされる作業部を、アクチユエータ駆
動に基づいて強制的にローリング制御できるようにした
ものでありながら、強制ローリング制御機構を構成する
駆動ギヤと従動ギヤとの噛合を、何れか一方のギヤ移動
に基づいて解除することができるため、該噛合解除状態
においてローリング弾機の着脱作業やバランス調整作業
ができるうえに、ローリングロツク作業も強制ローリン
グ制御機構に影響されない状態で行うことができ、この
結果、ローリング弾機の着脱等における作業性を著しく
向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】乗用型田植機の側面図である。

【図２】植付作業部の側面図である。

【図３】同上要部正面図である。

【図４】同上要部拡大側面図である。

【図５】同上要部拡大正面図である。

【図６】同上要部拡大平面図である。

【図７】同上分解斜視図である。

【図８】（Ａ）、（Ｂ）は苗載台の弾機係着部を示す正
面図および側面図である。

【図９】（Ａ）、（Ｂ）は他例を示す弾機係着部の正面
図および側面図である。

【図１０】（Ａ）、（Ｂ）はブラケツトの正面図および
側面図である。

【図１１】横フレームの着脱構造を示す要部正面図であ
る。

【図１２】中間フレームロツク機構の正面図である。

【図１３】同上平面図である。

【図１４】同上側面図である。

【符号の説明】

１ 走行機体 ２ 昇降リンク機構 ３ 植付作業部 ４ ホルダフレーム ５ ローリング支軸 ６ 作業部フレーム １２ 中間フレーム １４ 第一ローリング弾機 １５ 第二ローリング弾機 １６ モータ １７ ブラケツト １７ａ 取付孔 １９ ラツク ２０ ローリング検知センサ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平５−252806（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) A01C 11/02 320 A01C 11/02 311 A01B 63/10

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 左右一対のローリング弾機を介して作業
   姿勢が従動的にローリング制御される作業部に、アクチ
   ユエータ駆動に基づいて強制的なローリング制御を行う
   強制ローリング制御機構を設けてなる作業用走行車にお
   いて、前記強制ローリング制御機構を、アクチユエータ
   側の駆動ギヤと、これに噛合する従動ギヤとを用いて構
   成すると共に、これらギヤのうちの一方には、他方のギ
   ヤに対する噛合解除をすべくギア軸方向とは直行する方
   向に移動できる移動機構が設けられていることを特徴と
   する作業用走行車における作業部のローリング制御装
   置。