JP3089291B2 - ニンジン不定胚誘導の大量培養方法 - Google Patents

ニンジン不定胚誘導の大量培養方法

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JP3089291B2 JP06286544A JP28654494A JP3089291B2 JP 3089291 B2 JP3089291 B2 JP 3089291B2 JP 06286544 A JP06286544 A JP 06286544A JP 28654494 A JP28654494 A JP 28654494A JP 3089291 B2 JP3089291 B2 JP 3089291B2
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康一 大菅
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科学技術庁長官官房会計課長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はニンジンの植物体の大量
増殖生産や人工種子作製のための材料となる不定胚の分
化誘導を促進する不定胚の大量培養方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ニンジン(学名:Doucus carota )の
苗、特にF1 雑種などの優良品種の苗を大量に生産しよ
うとする場合には、種子由来の苗とは異なり遺伝的に均
一なクローン苗が得られることから不定胚の利用が有利
とされている。ニンジンの不定胚は植物ホルモンとして
2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)を含む
培地で植物体の一部からカルス(細胞塊)を誘導、増殖
し、このカルスを植物ホルモンを含まない培地に移して
培養することにより誘導できる。このときの培養は、培
養容器として容量が100〜500ミリリットルの三角
フラスコを用い、30〜150ミリリットルの培地を入
れてロータリ式やレシプロ式の振盪培養機で100rp
m前後の速度で回転させることによって行われることが
多く、こうした培養方法は公知である。さらに苗の増殖
生産のため不定胚を大量に必要とする場合には、用いる
フラスコの本数及び振盪培養機の数を増やして不定胚を
誘導することが必要とされていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】F1 雑種など優良品種
の苗の大量増殖生産には、一度に大量の不定胚、特に最
も分化が進み成熟した魚雷型胚を得ることが重要であ
る。こうした大量培養では一般に培養容器としてジャー
ファーメンタが用いられるが、これまでニンジンの不定
胚誘導ではフラスコと同じ誘導効率をジャーファーメン
タで達成した例は見当たらない。フラスコを用いて不定
胚を大量に誘導しようとすると、一度に何十本ものフラ
スコを用いて不定胚を誘導する必要があり、数多くの振
盪培養機や多大な労力も必要とした。さらに、魚雷型胚
の誘導効率を高めてゆくには、pHや溶存酸素濃度など
培養環境のモニタや制御あるいは培地への栄養源の追加
等の手段が必要となってくるが、フラスコによる培養で
はこれらが行えないかもしくは極めて困難である。本発
明の目的は、従来の技術では難しかった大型の装置によ
るニンジンの不定胚分化の誘導を効率よく、しかも容易
に行うことのできる不定胚の大量培養方法を提供するこ
とにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、細胞塊か
ら不定胚を誘導する方法について種々検討の結果、特定
形状の培養容器を使用し、通気、撹拌条件などを制御し
ながら培養することにより前記目的を達成することを見
出し、本発明を完成した。すなわち本発明はニンジンの
植物体から誘導、増殖したカルスを培地中で培養して不
定胚分化を誘導する方法において、培養容器として円筒
の中心軸を回転軸として回転する水平円筒型の培養容器
を使用し、該培養容器の口は外部と無菌的に気相の交換
が可能な通気栓で封止して緩やかに回転させながら培養
することを特徴とするニンジンの不定胚誘導の大量培養
方法である。
【0005】本発明の方法においては、細胞塊から不定
胚を誘導する場合に用いるジャーファーメンタとして円
筒型の培養容器を使用し、これを水平に設置し円筒の中
心軸を回転軸として緩やかに回転させながら培養する。
緩やかな回転とは、このような状態で容器を回転させる
に際し、内容物のかきまぜができ、かつ培養液の飛散、
付着を生じない程度の回転を意味する。回転の速度は円
筒容器の直径等により異なるが、通常、植物組織培養の
分野で用いられるローラー瓶回転式のジャーファーメン
タ程度の規模(培養液量0.1〜1リットル程度)では
毎分5〜8回転程度が好適である。5回転未満では撹拌
効果が不十分で増殖が遅く、また、回転が速すぎ、例え
ばこの程度の規模で回転数が9、10回転となると培養
液の飛散、付着による問題が生じるので好ましくない。
【0006】培養容器には外部と無菌的に気相の交換が
可能な通気手段を設けておき、十分に通気を行いながら
培養を行うようにする。このような通気手段を設けた培
養容器としては円筒型の培養瓶を使用し、その口にシリ
(登録商標、以下同じ)栓をかぶせたものが好適であ
る。以下に、本発明の構成を採ることにより、従来のフ
ラスコによる培養で得られるのと同じ誘導効率で、大量
の不定胚を誘導できることを、実験結果に基づいて説明
する。
【0007】(1)5×10-6(M)の2,4−Dを含
むムラシゲ&スクーグの培地(Murashige & Skoog の培
地、以下、MS培地と記載する)を用いて誘導、増殖し
たニンジンの培養細胞の中で63〜37μmの大きさの
細胞塊を、植物ホルモンを含まないMS培地に懸濁さ
せ、細胞塊の密度を培地1ミリリットル当たり500個
(以下、500個/ミリリットルと記載する)に調整し
た。これを容量300ミリリットルの三角フラスコ及び
以下に示すからの各種ジャーファーメンタに入れ、
不定胚を誘導した。用いたジャーファーメンタの特徴及
び培養条件はそれぞれ次の通りである。
【0008】三角フラスコでの培養では、三角フラスコ
に前記細胞塊を含む培地を80ミリリットル入れ、10
0rpmの速度でロータリー式の振盪機で振盪した。
【0009】ローラ瓶回転式ジャーファーメンタ:円
筒形の培養瓶をローラにより水平の状態で回転させる形
式のもの(以下、ローラ瓶回転式と称する)、攪拌など
細胞に与える物理的な影響が比較的小さいとされる。容
量1リットルの培養瓶に前記細胞塊を含む培地300ミ
リリットルを入れ、3rpmで回転させて培養した。な
お、この実験はローラ培養瓶の口はキャップにより密栓
した状態で行った。
【0010】エアリフト型ジャーファーメンタ:容器
の下部から空気を通気して培地を循環させるタイプのも
ので、ローラ瓶回転式と同様に物理的な影響が小さいと
されている。容量1リットルの装置内に前記細胞塊を含
む培地300ミリリットルを入れ、毎分150ミリリッ
トルの空気を通気して培養した。
【0011】攪拌羽根を備えた攪拌槽からなるジャー
ファーメンタ(攪拌槽型):細胞に対する損傷が少ない
攪拌子(スピンナ型)を備えている。容量1リットルの
装置内に前記細胞塊を含む培地300ミリリットルを入
れ、槽内の気相部分は無菌的に外部と空気の出入りが可
能になるよう槽の口の部分にシリコ栓をつけ、100r
pmで攪拌して培養した。
【0012】攪拌子を入れた攪拌槽からなるジャーフ
ァーメンタ(スターラ式攪拌槽型):汎用的なスターラ
バーを培養槽の底部に入れ、これをスターラにより攪拌
するタイプで、簡易かつスケールアップが容易である。
容量1リットルの装置内に前記細胞塊を含む培地を30
0ミリリットル入れ、槽内の気相部分は無菌的に外部と
空気の出入りが可能になるよう槽の口の部分にシリコ栓
をつけ、100rpmで攪拌して培養した。
【0013】前記の各ジャーファーメンタを用いて培養
を行って不定胚を誘導し、14日後の結果を分化率を指
標に調べた。なお、ここで分化率は最初に用いた細胞塊
数に対して得られた魚雷型胚数の割合を示す。300ミ
リリットルフラスコでは分化率は35%であったが、用
いたジャーファーメンタの中では、ローラ瓶回転式が最
も高く10%であり、エアリフト型では2%、攪拌槽型
は0.2%、スターラ式攪拌槽型では0%と極めて低か
った。特にエアリフト型では、細胞塊の容器の底面への
沈降が著しかったと同時に、容器の壁面への付着が認め
られた。この結果から、不定胚誘導の大量培養に用いる
ジャーファーメンタとしてはローラ瓶回転式が好ましい
ことがわかる。
【0014】(2)次にローラ瓶回転式のジャーファー
メンタを用い、瓶の口をキャップで密閉した場合とシリ
コ栓をつけた場合のそれぞれについて1,3,8rpm
で回転させ、他は前記(1)と同条件で不定胚を誘導し
た。ローラ培養瓶の口は通常キャップにより密栓されて
いるが、瓶の口をキャップに換えてシリコ栓を用いるこ
とにより瓶内のガスは無菌的に交換される。キャップを
用いて密栓した場合には分化率は回転数が1,3,8r
pmの場合でそれぞれ2%,10%,10%であり、何
れの回転数でも不定胚の誘導効率は低かった。これに対
しシリコ栓を付けた場合には、1,3,8rpmでそれ
ぞれ6%,20%,43%であり、分化率は回転数を上
げるほど向上し、8rpmではフラスコよりも高い誘導
効率が得られた。
【0015】これらの結果から、ジャーファーメンタを
用いてフラスコでの培養で得られるのと同等以上の高い
誘導効率で不定胚を誘導できる培養条件として、ロー
ラ瓶回転式のジャーファーメンタを用いてローラ培養瓶
内の気相部分を無菌的に外部と交換しながら培養するこ
と(例えば瓶の口にシリコ栓をかぶせるなど)、ロー
ラ培養瓶の回転軸の方向を水平にして回転することが必
要であり、さらにこの回転によりローラ培養瓶内の培
地を混合・攪拌すると同時に気相と接触させるが、この
回転を8rpm程度の速度で行うのが適当であることが
わかる。
【0016】
【作用】ローラ培養瓶の口にシリコ栓などをつけること
により、瓶内のガスが無菌的に交換される。また、瓶を
回転させることにより、これに伴って瓶内の培地は流動
し攪拌される。この攪拌により、培養中に栄養源の濃
度や不定胚が不均一にならないよう培地内が混合され、
またガス交換の作用とともに酸素など瓶内のガスが倍
地中への溶解が促進される。こうした混合の速度や培地
中へのガスの溶解速度はローラ培養瓶を回転する速度に
より変わるが、回転数を8rpm程度に設定することに
よりフラスコによる培養と同等の不定胚の誘導効率を得
ることができる。さらに、回転による培地の攪拌では培
地が培養瓶の壁面に接触しながら、常に壁面上を流動し
ているため、エアリフト型のように培養容器壁面への付
着が防止できる。
【0017】
【実施例】本発明の方法によりニンジンの不定胚誘導の
培養試験を行った。用いたニンジンの品種は「US春蒔
五寸」であり、種子から暗所で無菌的に発芽させて得ら
れた芽生えの下胚軸から、5×10-6(M)の2,4−
D及び0.9%の寒天を含むMS培地を用いてカルスを
誘導した。カルスは寒天を含まないことを除き、同組成
の液体培地で増殖、2週間毎に植え換えた。なお、培養
は300ミリリットルの三角フラスコに培地80ミリリ
ットルを入れ、振盪速度100rpm、暗黒下で温度は
25℃であった。(以下同じ)。増殖した懸濁培養細胞
をオープニングサイズ63μmと37μmのナイロン篩
で濾過し、37μmの篩上に残った細胞塊を集め、植物
ホルモンを含まないMS培地に懸濁した。この培地で低
速の遠心分離(600rpm程度で30sec)を6回
ほど繰り返すことにより、細胞塊を洗浄した。
【0018】得られた細胞塊を用いて三角フラスコとロ
ーラ瓶回転式のジャーファーメンタを用いて不定胚の誘
導を行った。細胞塊は培地中の密度が500個/ミリリ
ットルとなるように調整した。三角フラスコの場合は容
量300ミリリットルの三角フラスコに前記細胞塊を含
む培地を80ミリリットルを入れ、口にシリコ栓をして
100rpmで回転させて培養した。ローラ瓶回転式の
ジャーファーメンタの場合は図1に示す構造の装置を使
用し、1リットルのローラ培養瓶1に前記細胞塊を含む
培地を300ミリリットル入れ、ローラ培養瓶1の口に
シリコ栓3をして、回転駆動装置2により8rpmで回
転させながら培養した。なお、図1(a)は回転軸に垂
直な断面図、(b)は回転軸に平衡な方向から見た断面
図である。
【0019】7日後には球状胚が14日後には魚雷型胚
がそれぞれ観察でき、分化率もフラスコで35%、ロー
ラ瓶回転式で43%とほぼ同様の結果が得られた。ま
た、得られた魚雷型胚を0.9%の寒天を含むMS培地
に置床して16/8時間の明暗周期のもと約3,000
luxの光を照射すると、幼植物体へ成長した。この幼
植物体をフラスコ外へ出して順化すると順調に生育し
た。
【0020】
【発明の効果】ローラ瓶回転式のジャーファーメンタを
用いることにより、ニンジンの不定胚をフラスコでの培
養と同じ誘導効率で大量に誘導することができる。その
ため、従来の方法におけるように数多くの振盪培養機や
多大な労力を必要としない。さらに、不定胚の誘導効率
を高めるためには、培養中にpHや溶存酸素濃度など培
養環境の計測やこれらの制御あるいは栄養源の追加等の
手段が必要であるが、ローラ瓶回転式のジャーファーメ
ンタを用いることにより、これらの操作を容易に行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用したローラ瓶回転式のジャーファ
ーメンタの概略図。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニンジンの植物体から誘導、増殖したカ
    ルスを培地中で培養して不定胚分化を誘導する方法にお
    いて、培養容器として円筒の中心軸を回転軸として回転
    する水平円筒型の培養容器を使用し、該培養容器の口は
    外部と無菌的に気相の交換が可能な通気栓で封止して緩
    やかに回転させながら培養することを特徴とするニンジ
    ンの不定胚誘導の大量培養方法。
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