JP3084081B2 - 積層焼結体 - Google Patents

積層焼結体

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JP3084081B2 JP03112135A JP11213591A JP3084081B2 JP 3084081 B2 JP3084081 B2 JP 3084081B2 JP 03112135 A JP03112135 A JP 03112135A JP 11213591 A JP11213591 A JP 11213591A JP 3084081 B2 JP3084081 B2 JP 3084081B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は積層焼結体に関し、とく
に機械的強度ならびに熱衝撃に強い積層焼結体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来の焼結体は、多成分が均一に混在し
た焼結体であり、熱衝撃が加わると、表面部に熱応力が
生じてクラックが発生し、欠損しやすいという問題があ
る。
【0003】温度変化による熱応力に対応するために、
セラミックスなどに、成分比が連続的に変化する傾斜組
織の複合体を用いる研究がなされている。たとえば、特
開昭62−156938号公報には、剥離や亀裂の発生
を防ぐために、第1成分であるセラミックスと第2成分
である金属あるいは他のセラミックスとの間に傾斜組織
の中間層を設け、かつ該中間層にヤング率の低い第3成
分を分布させる技術が開示されている。また、特開昭6
4−45757号公報には、焼結時に液相で助成されて
高密度化が行われ、表面領域とコア領域の間に傾斜組織
の表面遷移域を有する焼結セラミックス材料が開示さ
れ、この技術は切削工具や構成要素品にも利用されるこ
とが記載されている。さらに特開平2−157149号
公報には、ゾル−ゲル法による、このような傾斜組織を
含む多成分系セラミックスとその製造方法が開示されて
いる。
【0004】上述の先行技術に開示された焼結体は、傾
斜組織の表面部をそのまま切削工具のような苛酷な条件
で用いたとしても、摩耗又は欠損のために寿命が短いと
いう問題がある。また、そのうち特開昭62−1569
38号公報に開示されている傾斜組織の中間層を介在さ
せた焼結体は、中間層が単一層の傾斜組織であるために
高温、高応力状態で用いる切削工具のような苛酷な条件
では十分な応力緩和ができず、欠損に至るという問題が
あり、中間層を厚くして応力緩和を高めようとしても、
製造上の困難がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐熱
性が優れた最外層を有し、かつ機械的強度ならびに熱衝
撃に強い積層焼結体を得ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために研究を重ねた結果、基材の表面のと
くに高温にさらされる部分に、耐熱性で、かつ熱膨張率
の低いセラミックス最外層を設け、かつ、該最外層と基
材との間に、両者の熱膨張率の大きな段差を解消する傾
斜組成である中間層を設けた積層体がこの目的に適合す
ることを見出して、本発明をなすに至った。
【0007】すなわち本発明は、セラミックス焼結体又
は焼結合金からなる基材の少なくとも一面の一部もしく
は全面に、セラミックスからなる中間層を形成し、さら
に該中間層の表面に、セラミックスからなる最外層を形
成してなる積層焼結体であって、該最外層の熱膨張率
が、該基材の熱膨張率より小さく、該中間層は、粒径が
0.2〜5μmの多結晶粒子を含有し、かつ該中間層の
最外層に隣接した部分(A)と基材に隣接した部分
(B)の間の熱膨張率が、(A)から(B)へと漸次増
加し、該中間層が傾斜組成を形成していることを特徴と
する積層焼結体に関する。
【0008】本発明の積層焼結体の基材は、セラミック
ス焼結体又は焼結合金からなり、1種でも2種以上の物
質の混合体でもよい。このようなセラミックス焼結体と
しては、酸化アルミニウム−酸化ジルコニウム系セラミ
ックスのような酸化物;立方晶窒化ホウ素、窒化アルミ
ニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタルのよう
な窒化物;炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ジルコニウ
ム、炭化タングステン、炭化タンタル、炭化クロムのよ
うな炭化物が例示され、またSIALON、酸化アルミ
ニウム−炭化チタンのように、これらを横断した各種の
組合せも用いられる。焼結合金としては、ここではサー
メットに属する超硬合金を包含し、ニッケル系合金、タ
ングステン系合金、モリブデン系合金のほか;WC−C
o、WC−Co−Cr32 、WC−TiC−Co、W
C−TaC−Co、TiC−Ni、TiC−Ni−M
o、Cr32 −Ni、BN−TiN−Alなどが例示
される。
【0009】形状はとくに限定されないが、直方体のよ
うな多面体などが例示される。
【0010】本発明における最外層は、焼結体のうち高
温にさらされる部分の表面に形成される。すなわち、最
外層を形成する部分は、多面体を例にとると、少なくと
もその一面の一部又は全面であり、たとえば直方体の一
面、上下両面などであり、それぞれ後述の中間層を介し
て基材の表面に形成される。最外層の厚さは、0.01
〜0.5mmが好ましく、0.05〜0.1mmがさらに好
ましい。
【0011】このような最外層は、耐熱性のセラミック
スからなり、その熱膨張率は、概して基材の熱膨張率よ
り小さい。このようなセラミックスとしては、酸化アル
ミニウム、酸化アルミニウム−炭化チタン、立方晶窒化
ホウ素、窒化タンタルなどが例示される。
【0012】本発明の積層焼結体は、最外層と基材との
間に中間層を有する。該中間層の厚さは0.05〜1.
0mmが好ましく、0.2〜0.6mmがさらに好ましい。
【0013】中間層は傾斜組成からなり、好ましくは多
層構造で、より好ましくは中間層のうち、最外層に隣接
した部分(A)の化学組成が外層の化学組成に近く、基
材に隣接した部分(B)の化学組成が基材の主要化学組
成に近く、上記(A)(B)間の化学組成が、(A)か
ら(B)へと漸次変化している。また、熱膨張率につい
ては、中間層のうち、最外層に隣接した部分(A)の熱
膨張率が外層の熱膨張率より僅かに大きく、基材に隣接
した部分(B)の熱膨張率が基材の熱膨張率より僅かに
小さく、上記(A)(B)間の熱膨張率が、(A)から
(B)へと漸次増加していることがさらに好ましい。そ
して、上述の組成と熱膨張係数の双方について、このよ
うな傾斜組成と傾斜機能を有することが、とくに好まし
い。
【0014】中間層の傾斜組成は、組成が完全に連続的
に変化することが最も好ましいが、容易に、かつ制御よ
く製造できることから、基材と最外層の組成や熱膨張率
の差により、2段階以上、好ましくは3段階以上の段階
的な組成変化をなしてもよい。
【0015】中間層は、通常、粒径が0.2〜5μm の
多結晶粒子からなるが、その複数の成分のうちの少なく
とも1種が、直径0.5〜100μm 、アスペクト比3
〜10の耐熱性高硬質のウィスカーであってもよく、そ
のことによって、例えば300kg/mm2 に至る高い熱応
力に耐えることができる。
【0016】このような積層焼結体の製法としては、ま
ず基材の素材となる粉末を型に振りかけないし注入し、
振動を与えるかヘラ状のものを用いるなどの方法によっ
て上表面を平坦にし、ついで、形成すべき中間層の各層
の素材粉末を、順次、該表面の一部又は全面に振りかけ
ては平坦化する方法を繰返して任意の厚さの層状に積
み、最後に最外層の素材粉末を注入して平坦化した後、
このように積層した基材−中間層−最外層の素材を同時
に焼結してもよい。
【0017】また、上記のようにして注入し、表面を平
坦化した基材の素材粉末を焼結して基材を形成したの
ち、該表面の一部又は全面に、上記と同様の振りかけな
いし注入、平坦化を繰返すか、印刷、スパッタリングな
どの方法によって中間層と最外層の素材を積層し、つい
で焼結してもよい。
【0018】さらに、中間層の一部ないし全部の層まで
を前者による同時焼結、それ以降を後者によって形成し
てもよい。
【0019】さらに、これらの方法のうちの一つによっ
て、基材の一表面の一部又は全面に中間層及び最外層を
形成した後、基材を回転させて他の任意の面を上表面と
し、該表面の一部又は全面に中間層及び最外層の素材粉
末を注入し、表面を平坦化するか、印刷することによっ
て積層し、焼結してもよいし、さらにこれを他の任意の
表面について繰返してもよい。
【0020】また、焼結は通常の加圧焼結(HP)によ
っても、また熱間等静圧焼結(HIP)によってもよ
く、また両者を併用する2段階焼結法によってもよい。
また熱焼結は加圧下、常圧大気中、真空中のいずれでも
差支えない。
【0021】
【発明の効果】本発明によって、耐熱性の優れた最外層
を有し、かつ機械的強度ならびに熱衝撃性に優れた積層
焼結体を得ることができた。本発明の積層焼結体は、高
温材料、摺動材料、工具材料などに用いられ、とくに急
激に高温にさらされ、又は高温から急冷される切削工具
材料に有用である。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例によって説
明する。本発明はこれらの実施例によって限定されるも
のではない。実施例及び比較例において、部は重量部、
%は重量%を表わす。
【0023】実施例1 粒径0.8μm のAl23 粉末と粒径0.5μm のZ
rO2 粉末を用い、表1に示す割合で、基材、中間層a
〜c及び最外層の素材粉末をそれぞれ調製した。ダイス
鋼の型に、基材の素材粉末を深さ8mmまで注入し、振動
を与えて表面を平均化した。
【0024】
【表1】
【0025】ついで、前述の各層の素材粉末を、前述の
平坦化した基材表面の全面に、中間層a、b、c、最外
層の順に、それぞれ65μm の深さに、注入しては平坦
化する操作を繰返した。
【0026】これをいったん冷間プレス成形し、ついで
大気中、1,500℃で3時間焼結した後、1,400
kgf/cm2 のアルゴン中、1,450℃で30分間の熱
間等静圧焼結を行い、図1に示されるような、基材の1
面に最外層及び3層の傾斜構造の中間層を形成した積層
焼結体を得た。
【0027】この焼結体の基材、中間層a〜c及び最外
層のそれぞれの組成を用い、別途、焼結して作成した試
料の室温における熱膨張率を測定したところ、表2のよ
うな値を得た。
【0028】
【表2】
【0029】このようにして得られた積層焼結体につい
て、次のような条件で熱衝撃試験を行った。レーザ出力
1JのYAGレーザパルス機を用いて、試料にレーザ光
を照射し、熱亀裂を発生させてc/a比(ただし、c:
亀裂長さ、a:溶融孔径)を測定することにより、耐熱
衝撃性の評価を行った。なお、レーザ光照射によるパル
ス幅は5ms、パルス径は0.5mmであった。その結果を
表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】実施例2 表1に示されるように、粒径0.7μm のAl23
末を用い、基材及び中間層a、b、cの組成を変え、ま
た各層の厚さを50μm とした以外は実施例1と同様に
して未焼成の積層体を形成し、これを冷間プレス成形
し、ついで大気中、1,550℃で2時間焼結した後、
1,500 kgf/cm2 のアルゴン中、1,500℃で3
0分間の熱間等静圧焼結を行って、実施例1と同様の構
造をもつ積層焼結体を得た。
【0032】この焼結体を構成する各層について、実施
例1と同様の方法で測定した熱膨張率は表2の値であ
り、また実施例1と同様のレーザ光照射による耐熱衝撃
性は表3のとおりであった。
【0033】実施例3 基材として、Ti(C0.8 ・N0.2)50%、TaC10
%、WC10%、Mo2 C10%、Ni15%及びCo
5%からなるTi(C,N)系サーメットを用いた。こ
のひとつの表面に、表1に示すような組成と厚さの中間
層及び最外層を設けた。これを冷間プレス成形し、つい
で1,400℃で1時間の真空焼結を行って、実施例1
と同様な構造の積層焼結体を得た。
【0034】この焼結体を構成する各層について、実施
例1と同様の方法で測定した熱膨張率は表2の値であ
り、また実施例1と同様のレーザ光照射による耐熱衝撃
性は表3のとおりであった。
【0035】実施例4 基材として、WC93.5%、Co0.5%及びCr3
2 0.5%からなるWC−Co系超硬合金を用いた。
このひとつの表面に、表1に示すような組成と厚さの中
間層及び最外層を設けた。これを冷間プレス成形し、つ
いで1,380℃で1時間の真空焼結を行って、実施例
1と同様な構造の積層焼結体を得た。
【0036】この焼結体を構成する各層について、実施
例1と同様の方法で測定した熱膨張率は表2の値であ
り、また実施例1と同様のレーザ光照射による耐熱衝撃
性は表3のとおりであった。
【0037】実施例5 基材として、cBN65%、TiN30%及びAl 5
%からなるBN系焼結体を用いた。このひとつの表面
に、表1に示すような組成と厚さの中間層及び最外層を
設けた。これを冷間プレス成形し、ついで60,000
kgf/cm2 の高圧下に1,500℃で30分間焼結し
て、実施例1と同様な構造の積層焼結体を得た。
【0038】この焼結体を構成する各層について、実施
例1と同様の方法で測定した熱膨張率は表2の値であ
り、また実施例1と同様のレーザ光照射による耐熱衝撃
性は表3のとおりであった。
【0039】実施例6 実施例1と同様の方法を用いて、表1に示す組成及び厚
さの基材、中間層a、b、c及び最外層からなる成形体
を得、これを600 kgf/cm2 のアルゴン中、1,60
0℃で30分間のホットプレスを行って、積層焼結体を
得た。
【0040】この焼結体を構成する各層について、実施
例1と同様の方法で測定した熱膨張率は表2の値であ
り、また実施例1と同様のレーザ光照射による耐熱衝撃
性は表3のとおりであった。
【0041】比較例1〜6 それぞれ対応する実施例に対して、中間層を設けず、基
材の表面に最外層を直接形成させ、ついで、対応する実
施例と同様の焼結条件で、それぞれの実施例の基材と最
外層のみからなる焼結体を得た。得られた焼結体につい
て、上述のレーザ照射による耐熱衝撃試験を行った。そ
の結果を表3に示す。
【0042】表3からわかるように、同一の基材及び最
外層からなり、中間層の有無のみ相違する6対の本発明
品と比較例焼結体との耐熱衝撃性を比較すると、本発明
品は、約55〜67%の耐熱性の向上が認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって得られる積層焼結体の一例を示
す。
【符号の説明】
1 最外層 2 中間層 3 基材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−68488(JP,A) 特開 平2−242545(JP,A) 特開 平3−12377(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 C04B 37/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックス焼結体又は焼結合金からな
    る基材の少なくとも一面の一部もしくは全面に、セラミ
    ックスからなる中間層を形成し、さらに該中間層の表面
    に、セラミックスからなる最外層を形成してなる積層焼
    結体であって、該最外層の熱膨張率が、該基材の熱膨張
    率より小さく、該中間層は、粒径が0.2〜5μmの多
    結晶粒子を含有し、かつ該中間層の最外層に隣接した部
    分(A)と基材に隣接した部分(B)の間の熱膨張率
    が、(A)から(B)へと漸次増加し、該中間層が傾斜
    組成を形成していることを特徴とする積層焼結体。
  2. 【請求項2】 中間層が、多層構造でなる、請求項1記
    載の積層焼結体。
  3. 【請求項3】 中間層の厚さが0.05〜1.0mmであ
    り、最外層の厚さが0.01〜0.5mmである、請求項
    1記載の積層焼結体。
  4. 【請求項4】 中間層のうち、上記(A)の熱膨張率が
    最外層の熱膨張率より僅かに大きく、上記(B)の熱膨
    張率が基材の熱膨張率より僅かに小さい、請求項1記載
    の積層焼結体。
  5. 【請求項5】 中間層のうち、上記(A)の化学組成が
    最外層の化学組成に近く、上記(B)の化学組成が基材
    の主要化学組成に近く、上記(A)(B)間の化学組成
    が、(A)から(B)へと漸次変化している、請求項1
    記載の積層焼結体。
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