JP3082983B2 - ニッケル溶液中の銅イオンの除去方法 - Google Patents

ニッケル溶液中の銅イオンの除去方法

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  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Electrolytic Production Of Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銅イオンを含むニッケ
ル溶液中からの銅イオンの除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ニッケルマットよりニッケルを回収する
方法には乾式法と湿式法とがある。乾式法は、ニッケル
カルボニルの生成と分解によりニッケル粉を得るもので
ある。一方、湿式法は、ニッケルマットを鉱酸により浸
出し、ニッケル溶液を得、不溶性アノードを用いて電解
採取したり、ニッケルマットを加熱溶解し、鋳造してア
ノードを得、これを用いて電解精製する事により電気ニ
ッケルを得るものである。
【0003】乾式法に用いるニッケルカルボニルが爆発
しやすく、且つ毒性が強いため、乾式法は日本では実施
されていない。
【0004】湿式法では、いずれの方法でも、最終段階
でニッケル電解液を得、これを用いて電気ニッケルを得
ている。この場合、通常は、コバルト、銅のようなニッ
ケルよりも貴な金属が、原料となるニッケルマットから
不純物として溶出する。従って、電解法によりニッケル
を陰極に析出させる場合、電解液中に存在しているニッ
ケルより貴な金属がニッケルと共に陰極に析出し、良好
なニッケル製品を得ることができなくなる。
【0005】不純物であるコバルトはpHと酸化還元電
位との調整により、水酸化物あるいは酸化物として沈澱
除去され、銅は硫化水素を吹込むことにより硫化銅とし
て沈澱除去されるか、金属ニッケルやニッケルマットを
用いてセメンテーション反応を利用し沈澱除去される。
工程管理の容易さや経済性よりニッケルマットを用いた
セメンテーション法が広く採用されている。
【0006】従来行われているニッケルマットを用いた
セメンテーション法によるニッケル電解液中の銅イオン
の除去工程は、図5のようになっている。図5の除去工
程は、粉砕設備10、貯槽12、脱銅反応槽14及びろ
過機16において行われる。すなわち、粉砕設備10に
より微粉砕されたニッケルマットは一時貯槽12に貯め
られる。そして、ニッケル液が入る脱銅反応槽14に適
宜供給される。脱銅反応槽14ではニッケルマット中に
含まれるニッケルや硫化ニッケルがニッケル液中の銅イ
オンと反応し、銅イオンは金属銅として固定される。ま
た、必要に応じて反応槽14に硫黄が添加され、液中に
残存する微量の銅イオンは硫化銅として固定される。な
お、粉砕方法は乾式でも、湿式でもよく、振動ミルやボ
ールミルが用いられる。
【0007】この方法は、ニッケル電解液に限らず、銅
イオンを含むニッケル溶液からの銅イオンの除去のため
に適用できる。
【0008】しかし、上記方法には以下のような問題点
がある。
【0009】すなわち、粉砕方法を乾式法とすると、ホ
ッパー等の貯槽からの切出し時に詰りやすく、ニッケル
マット中の金属ニッケルが空気により酸化し、反応活性
が低下し、粉塵の発生により作業環境を悪化するという
問題がある。一方、粉砕方法を湿式法とすると、得られ
るスラリーは低濃度であるから、脱銅反応槽でのニッケ
ルマット粒子の滞留時間を長くするためには反応槽を大
きくせざるを得ず、また供給スラリー濃度がバラつくの
で、操業が安定しにくいといったことがある。また、粉
砕方法に関係なく、脱銅反応槽内で、セメンテーション
反応により銅がニッケルマット粒子の表面に析出し、該
粒子を覆ってしまうという問題点もある。
【0010】上記問題点は、いずれもセメンテーション
反応の反応速度に影響を与えるので、より高い設備効率
の獲得のためには解消されなければならないものであ
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、設備
効率の改良を可能とするために反応速度を向上した、ニ
ッケル溶液中の銅イオンの除去方法の提供にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によるニッケル溶
液中の銅イオンの除去方法は、セメンテーション反応を
利用して銅イオンを金属銅として固定するためのニッケ
ルマットと、残存する微量の銅イオンを硫化銅として固
定するための硫黄とを用いて、ニッケル溶液中の銅イオ
ンを沈澱除去する方法において、脱銅反応槽として湿式
粉砕機を用い、ニッケル溶液と未粉砕または粗粉砕した
ニッケルマットと硫黄とを該湿式粉砕機に供給し、該湿
式粉砕機より排出されるスラリー中の固形分の粒度を、
44μm以下の粒子の割合が少なくとも50%となるよ
うにする。
【0013】また、ニッケルマットと硫黄とを用いてニ
ッケル溶液中の銅イオンを沈澱除去する上記方法におい
て、湿式粉砕機としてタワーミルを使用して、スクリュ
ー状撹拌運動の中でニッケルマットをニッケル溶液中で
粉砕しながら、脱銅反応を行い、脱銅反応後に排出され
るスラリー中の固形分の粒度を、44μm以下の粒子の
割合が少なくとも50%となるようにする。
【0014】
【作用】まず、本発明の方法を図1に示す。
【0015】上記課題を解決する本発明の方法は、セメ
ンテーション反応を利用して銅イオンを金属銅として固
定するためのニッケルマットと、残存する微量の銅イオ
ンを硫化銅として固定するための硫黄とを用いて、ニッ
ケル溶液中の銅イオンを沈澱除去する方法において、脱
銅反応槽として湿式粉砕機18を用い、ニッケル溶液と
未粉砕または粗粉砕したニッケルマットと硫黄とを該湿
式粉砕機18に供給し、該湿式粉砕機18より排出され
るスラリー中の固形分の粒度を44μm以下が少なくと
も50%となるようにする。湿式粉砕機18より出たス
ラリーは、ろ過機20を介して、電解液とスラッジに分
別される。
【0016】本発明の方法によれば、湿式粉砕機を用い
ることにより、乾式粉砕機を用いた場合の問題点は解消
される。
【0017】さらに、従来のように予めニッケルマット
を粉砕するのではなく、湿式粉砕機自体を脱銅反応槽と
して用いるため、余分の水が系内に入らず、スラリー濃
度を低下させることもない。このため装置を過剰に大き
くする必要もない。加えて、脱銅反応槽として湿式粉砕
機を用いることによりニッケルマット粒子の表面を絶え
ず更新できるため、銅の析出による反応速度の低下を防
止できる。
【0018】湿式粉砕機としてタワーミルを使用する
と、反応系のスラリー濃度を高くすることができる。こ
の点に関しては、高スラリー濃度での通常の湿式粉砕
機、例えば湿式振動ミルの使用は脱銅反応槽の多段化を
必要とする可能性が高い。また、タワーミルの場合、他
の湿式粉砕機と比較して固体と液体との接触頻度が高い
ことも利点の一つである。
【0019】タワーミルを反応槽として使用した場合、
セメンテーション反応により粉砕が促進され、粉砕とい
う点のみで評価したとしても、粉砕能力が例えば1.5
〜2倍程度に上昇する。
【0020】セメンテーション反応は、固体粒子の表面
で起きるため、反応活性は粒子の表面積に比例し、よっ
て粒径と比例することになる。
【0021】脱銅反応速度は、雰囲気よりも、ニッケル
マット濃度や粒径に大きく依存する。
【0022】
【実施例】以下に、実施例を用いて本発明をさらに説明
する。
【0023】[実施例1] 本実施例では脱銅反応槽として久保田タワーミル(株)
製のタワーミルKM−1型を用いて試験を行った。すな
わち、図2に示すように、脱銅反応層は、タワーミル2
2、分離液貯留槽24、固液分離槽26、固形分貯槽2
8、シントロフィダー30から構成される。このタワー
ミル22は有効容量35リットル(l)、回転数100
rpm、SS+ソフトラバーライニングのものである。
粉砕媒体は20mm径のアルミナボールを60kg充填
した。その結果、媒体圧力は0.12kg/cm2とな
った。ニッケル液をタワーミル22に入れると共に、所
定量のニッケルマットと該ニッケルマットに対して20
重量%の硫黄とをシントロフィダー30でタワーミル2
2内に供給し、タワーミル22のオーバーフローを固液
分離槽26で固液分離し、分離液貯留槽24内液中の銅
イオン濃度と固形分貯槽28内の固形分の粒度を測定し
た。なお、タワーミル22内の反応溶液は55〜60℃
に保持された。
【0024】用いたニッケル溶液の組成は、Ni:18
0〜190g/l、Cu:24〜30g/l、pH:
0.5〜1.5である。また、用いたニッケルマット
は、見掛比重が3.6であり、Ni:80%、S:20
%の組成であり、+16メッシュが0.4%、−16〜
+36メッシュが54.4%、−100〜+200メッ
シュが35.6%、−200メッシュが1.8%の粒度
分布をもつものである。
【0025】上記ニッケル溶液37.1lとニッケルマ
ット20.1kgと硫黄4.0kgとをタワーミルに装
入し、スクリューを100rpmの割合で回転し、所定
時間毎にタワーミルのオーバーフローをサンプリング
し、液中の銅イオン濃度と固形分の粒度分布を測定し
た。得られた液中の銅イオン濃度を図3の○で示した。
【0026】図3より、時間と共に液中の銅イオンが減
少してゆくのがよくわかる。
【0027】反応時間2時間における固形分の−44μ
mの割合が65%で、液中の銅イオンの濃度は0.01
g/lとなった。
【0028】実操業で要求されるセメンテーション反応
後の銅イオン濃度は、0.02g/l以下であり、本発
明の装置がきわめて有効であることがわかる。
【0029】[実施例2] ニッケル溶液を0.2l/min、ニッケルマット供給
量を1.84kg/h、硫黄供給量0.37kg/hの
割合で供給し、他の条件は実施例1と同様にして24時
間の連続試験を行った。
【0030】その結果、タワーミルのオーバーフロー中
の固形分の−44μmのものの割合はいずれも90%以
上であり、液中の銅イオン濃度は0.02g/lであっ
た。この時のタワーミル内の有効容量は37lであるの
で反応時間は3時間であった。反応時間をさらに長くす
ることにより、あるいはニッケルマットの添加量を増加
させることにより液中銅イオン濃度をさらに低下するこ
とが可能であることは明らかである。
【0031】[比較例] タワーミルの代りに有効容量37lの撹拌機付き反応槽
(図示せず)を用い、Ni:170g/l、Cu:50
g/lの溶液37lと、ニッケルマット20.1kg
と、硫黄5.0kg(ニッケルマットに対して25%)
を装入し、回転数300rpmで撹拌機を回転させつつ
所定時間毎にスラリーを採取し、液中の銅イオン濃度
と、固形分中に占める−44μmの粒子の割合を求め
た。得られた結果を図4に示した。図4は液中の銅イオ
ン濃度を縦軸に取り、横軸に反応時間を取ったものであ
る。
【0032】図4より、液中の銅イオン濃度は、反応開
始後2時間で0.16g/l、4時間で0.12g/
l、6時間で0.047g/lであり、前記実施例と比
較して格段に反応速度が遅いことがわかる。また、−4
4μmの粒子の割合は73.9%であった。
【0033】この結果より、反応終液中の銅イオン濃度
を0.02g/lまで下げるためには、撹拌機付き反応
槽では多段の大きな反応装置が必要とされることは明ら
かである。
【0034】
【発明の効果】本発明のように湿式粉砕機を脱銅反応槽
として用いれば、セメンテーション反応を利用して銅イ
オンを金属銅として固定するためのニッケルマットの粉
砕とセメンテーション反応とを同時に行うことができ、
反応速度を著しく促進できる。殊にタワーミルの使用に
よりこの効果は顕著であり、この結果、装置設置面積を
著しく減少でき、且つ装置効率の上昇を図ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のニッケルマットを用いたセメンテーシ
ョン法によるニッケル電解液中の銅イオンの除去工程を
示すフローチャートである。
【図2】脱銅反応槽としてタワーミルを用いた本発明の
実施例を示す配置図である。
【図3】本実施例で得られた液中の銅イオン濃度の変化
を示したグラフで、Cu濃度の経時変化を示す。
【図4】従来例の銅イオン濃度と反応時間との関係を示
したグラフである。
【図5】従来のニッケルマットを用いたセメンテーショ
ン法によるニッケル電解液中の銅イオンの除去工程を示
すフローチャートである。
【符号の説明】
22 タワーミル 24 分離液貯留槽 26 固液分離槽 28 固形分貯槽 30 シントロフィダー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25C 1/00 - 7/08 C22B 3/00,23/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セメンテーション反応を利用して銅イオ
    ンを金属銅として固定するためのニッケルマットと、残
    存する微量の銅イオンを硫化銅として固定するための硫
    黄とを用いて、ニッケル溶液中の銅イオンを沈澱除去す
    る方法において、脱銅反応槽として湿式粉砕機を用い、
    ニッケル溶液と未粉砕または粗粉砕したニッケルマット
    と硫黄とを該湿式粉砕機に供給し、該湿式粉砕機より排
    出されるスラリー中の固形分の粒度を、44μm以下の
    粒子の割合が少なくとも50%となるようにすることを
    特徴とするニッケル溶液中の銅イオンの除去方法。
  2. 【請求項2】 湿式粉砕機としてタワーミルを用いるこ
    とを特徴とする請求項1記載のニッケル溶液中の銅イオ
    ンの除去方法。
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