JP3082481B2 - ピストン式圧縮機における冷媒ガス吸入構造 - Google Patents

ピストン式圧縮機における冷媒ガス吸入構造

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JP3082481B2 JP04310648A JP31064892A JP3082481B2 JP 3082481 B2 JP3082481 B2 JP 3082481B2 JP 04310648 A JP04310648 A JP 04310648A JP 31064892 A JP31064892 A JP 31064892A JP 3082481 B2 JP3082481 B2 JP 3082481B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回転軸の周囲に配列さ
れた複数のシリンダボア内にピストンを収容するととも
に、回転軸の回転に連動してピストンを往復動させるピ
ストン式圧縮機における冷媒ガス吸入構造に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来のピストン式圧縮機(例えば特開平
3−92587号公報参照)では、ピストンによってシ
リンダボア内に区画される作動室と吸入室との間の吸入
ポートが作動室内のフラッパ弁によって開閉されるよう
になっている。吸入室内の冷媒ガスは上死点側から下死
点側へ移動するピストンの吸入動作によってフラッパ弁
を押し開いて作動室へ流入する。ピストンが下死点側か
ら上死点側へ移動する吐出行程ではフラッパ弁が吸入ポ
ートを閉じ、作動室内の冷媒ガスが吐出ポートから吐出
室へ吐出される。
【0003】フラッパ弁の開閉動作は作動室と吸入室と
の間の圧力差に基づくものであり、吸入室の圧力が作動
室の圧力よりも高ければフラッパ弁は撓み変形して吸入
ポートを開く。吸入室の圧力が作動室の圧力よりも高く
なるのは上死点側から下死点側へ移動するピストンの吸
入動作時である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】弾性変形であるフラッ
パ弁の撓み変形は弾性抵抗として作用し、吸入室の圧力
が作動室の圧力をある程度上回らなければフラッパ弁は
開放しない。即ち、フラッパ弁の開放が遅れる。圧縮機
内の潤滑を行うために冷媒ガス中には潤滑油が混入され
ており、この潤滑油が冷媒ガスとともに圧縮機内の必要
な潤滑部位に送り込まれる。この潤滑油は冷媒ガスの流
通領域ならばどこへでも入り込み可能であり、吸入ポー
トを閉じているフラッパ弁とその密接面との間にも潤滑
油が付着する。この付着潤滑油は前記密接面とフラッパ
弁との間の密接力を高め、フラッパ弁の撓み変形開始が
一層遅れる。このような撓み変形開始遅れは作動室への
冷媒ガス流入量の低下、すなわち体積効率の低下をもた
らす。又、フラッパ弁が開いている場合にもフラッパ弁
の弾性抵抗が吸入抵抗として作用し、冷媒ガス流入量が
低下する。
【0005】ピストン式圧縮機の一種である斜板式圧縮
機では吸入室内の冷媒ガスが両頭ピストンの復動動作に
よって作動室内へ吸入され、作動室内の冷媒ガスが両頭
ピストンの往動動作によって吐出室へ吐出される。両頭
ピストンは複数個用いられ、回転軸の周囲に等角度間隔
に配列されたシリンダボア内に収容されている。作動室
は吐出ポートを介して吐出室に接続しており、吸入ポー
トを介して吸入室に接続している。吐出ポートは吐出弁
によって開閉され、作動室内の冷媒ガスは吐出弁を押し
退けつつ吐出室へ吐出される。吸入ポートは吸入弁によ
って開閉され、吸入室の冷媒ガスは吸入弁を押し退けつ
つ作動室へ吸入される。
【0006】吸入室はシリンダの前後に1つずつ有り、
シリンダブロック内の吸入通路を介して斜板室に連通し
ている。外部の吸入冷媒ガス管路は導入口を介して斜板
室に連通しており、冷媒ガスは両頭ピストンの復動動作
に伴う吸入作用によってまず斜板室に導入され、シリン
ダブロック内の吸入通路及び吸入室を経て作動室内へ導
入される。
【0007】シリンダボアの配列間隔はシリンダブロッ
クの必要な強度を確保し得る程度まで拡げられる。この
配列間隔の大きさとシリンダボアの配列半径の大きさと
は比例し、配列間隔を拡げれば配列半径が増大し、配列
間隔を狭めれば配列半径も減少する。しかしながら、通
常、前記吸入通路が回転軸の周囲に等角度位置に配列さ
れた複数のシリンダボアの狭間に1本ずつ設けられてお
り、このような通路の存在がシリンダブロックの強度低
下をもたらす。従って、吸入通路をシリンダブロック内
に貫設する構成が採用される限りシリンダボアの配列半
径の縮径化は困難であり、圧縮機のコンパクト化は困難
である。
【0008】しかも、シリンダブロック内の吸入通路の
存在は圧力損失の原因となり、圧縮効率が低下する。そ
こで、本願出願人は圧縮効率を向上することができるピ
ストン式圧縮機を提案している。(例えば、特願平4−
211165号参照)この圧縮機はピストンによってシ
リンダボア内に区画される作動室に冷媒ガスを導入する
ための吸入通路をロータリバルブ内に形成している。
又、前記ロータリバルブの摺接周面をテーパ形状とする
とともに、ロータリバルブを収容する収容室の内周面を
テーパ形状としている。さらに、ピストンの往復動に同
期して前記作動室と前記吸入通路とを順次連通するよう
に、かつロータリバルブの軸方向にスライド可能に前記
ロータリバルブを前記収容室に収容している。そして、
ロータリバルブを大径端部側から小径端部側に付勢する
シール力をロータリバルブに作用させるようにしてい
る。
【0009】ところが、この新規な圧縮機はロータリバ
ルブのテーパ状外周面が収容室のテーパ状内周面に摺接
しているので、吸入通路の開口側の摺接面は冷媒ガスに
より潤滑油が供給されるので、潤滑上特に問題はない
が、常時所定の押圧力で摺接している摺接面においては
高い潤滑性が得られないという新たな問題が生じた。
【0010】本発明は体積効率を向上することができる
とともに、圧縮機全体のコンパクト化を図り、ロータリ
バルブの外周面とそれを収容する収容室の内周面との摺
接面の潤滑特性に優れたピストン式圧縮機における冷媒
ガス吸入構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】そのためにこの発明で
は、回転軸の周囲に配列された複数のシリンダボア内に
ピストンを収容するとともに、回転軸の回転に連動して
ピストンを往復動させるピストン式圧縮機において、ピ
ストンによってシリンダボア内に区画される作動室に冷
媒ガスを導入するための吸入通路をロータリバルブ内に
形成し、前記ロータリーバルブを収容する収容室の内周
面には吸入行程中の作動室と前記ロータリーバルブの吸
入通路の出口とを連通する導通路を形成し、さらに前記
ロータリバルブの外周面に潤滑溝を形成し、該潤滑溝の
基端部を前記吸入通路の出口のバルブ回転方向に関して
後端部に連通し、潤滑溝の先端部を外側方へ指向した。
【0012】
【作用】ロータリバルブ内の吸入通路はロータリバルブ
の回転に伴って複数の作動室に順次連通する。この連通
は前後一方の作動室に対するピストンの吸入動作に同期
して行われる。吸入通路と作動室とが連通している時に
ピストンが下死点側へ向かい、作動室の圧力が吸入通路
の圧力(吸入圧)以下まで低下していく。この圧力低下
により吸入通路の冷媒ガスが導通路を介して作動室へ流
入する。
【0013】ロータリーバルブの回転により吸入通路の
出口の回転方向に関して後側端面には収容室の内周面に
付着したミスト状の潤滑油が掻き集められるようにして
回収される。この潤滑油はロータリバルブの外周面に形
成した潤滑溝に進入し、前記出口の外側方へ案内される
ので、潤滑油がロータリバルブの外周面と収容室の内周
面との常時摺接している細隙に供給される。このため潤
滑効率が向上し、ロータリバルブの磨耗が抑制される。
【0014】斜板室の冷媒ガスを作動室にロータリバル
ブを介して導入する構成は従来のシリンダブロック内の
吸入通路を不要とする。シリンダブロック内の吸入通路
の省略によってシリンダボアの配列半径の縮径化がで
き、圧縮機全体がコンパクト化する。
【0015】
【実施例】以下、本発明を斜板式圧縮機に具体化した第
1実施例を図1〜図7に基づいて説明する。
【0016】図1に示すように接合された前後一対のシ
リンダブロック1,2の中心部には収容室1a,2aが
貫設されている。シリンダブロック1,2の端面にはバ
ルブプレート3,4が接合されており、バルブプレート
3,4には支持孔3a,4aが貫設されている。支持孔
3a,4aの周縁には環状の位置決め突起3b,4bが
突設されており、位置決め突起3b,4bは収容室1
a,2aに嵌入されている。バルブプレート3,4及び
シリンダブロック1,2にはピン5,6が挿通されてお
り、シリンダブロック1,2に対するバルブプレート
3,4の回動がピン5,6により阻止されている。
【0017】バルブプレート3,4の支持孔3a,4a
には回転軸7が円錐コロ軸受け8,9を介して回転可能
に支持されており、回転軸7には斜板10が固定支持さ
れている。斜板室11を形成するシリンダブロック1,
2には導入口12が形成されており、導入口12には図
示しない外部吸入冷媒ガス管路が接続されている。
【0018】図4及び図5に示すように回転軸7を中心
とする等間隔角度位置には複数のシリンダボア13,1
3A,14,14Aが形成されている。図1に示すよう
に前後で対となるシリンダボア13,14,13A,1
4A(本実施例では5対)内には両頭ピストン15,1
5Aが往復動可能に収容されている。両頭ピストン1
5,15Aと斜板10の前後両面との間には半球状のシ
ュー16,17が介在されている。従って、斜板10が
回転することによって両頭ピストン15,15Aがシリ
ンダボア13,14,13A,14A内を前後動する。
【0019】バルブプレート3の前側面にはフロントハ
ウジング18が接合されており、バルブプレート4の後
側面にはリヤハウジング19が接合されている。図6及
び図7に示すように両ハウジング18,19の内壁面に
は複数の押さえ突起18a,19aが突設されている。
押さえ突起18aと円錐コロ軸受け8の外輪8aとの間
には環状板形状の予荷重付与ばね20が介在されてい
る。押さえ突起19aは円錐コロ軸受け9の外輪9aに
当接している。外輪8a,9aとともにコロ8c,9c
を挟む内輪8b,9bは回転軸7の段差部7a,7bに
当接している。シリンダブロック1、バルブプレート3
及びフロントハウジング18はボルト21により締め付
け固定されている。シリンダブロック1、シリンダブロ
ック2、バルブプレート4及びリヤハウジング19はボ
ルト22により締め付け固定されている。円錐コロ軸受
け8,9は回転軸7に対するラジアル方向の荷重及びス
ラスト方向の荷重の両方を受け止める。ボルト21の締
め付けは予荷重付与ばね20を撓み変形させ、この撓み
変形が円錐コロ軸受け8を介して回転軸7にスラスト方
向の予荷重を与える。
【0020】両ハウジング18,19内には吐出室2
3,24が形成されている。両頭ピストン15,15A
によりシリンダボア13,14,13A,14A内に区
画される作動室Pa,Pbはバルブプレート3,4上の
吐出ポート3c,4cを介して吐出室23,24に接続
している。吐出ポート3c,4cはフラッパ弁型の吐出
弁31,32により開閉される。吐出弁31,32の開
度はリテーナ33,34により規制される。吐出弁3
1,32及びリテーナ33,34はボルト35,36に
よりバルブプレート3,4上に締め付け固定されてい
る。吐出室23は排出通路25を介して図示しない外部
吐出冷媒ガス管路に連通している。
【0021】26は回転軸7の周面に沿った吐出室23
から圧縮機外部への冷媒ガス漏洩を防止するリップシー
ルである。回転軸7上の段差部7a,7bにはロータリ
バルブ27,28がスライド可能に支持されている。ロ
ータリバルブ27,28と回転軸7との間にはシールリ
ング39,40が介在されている。ロータリバルブ2
7,28は回転軸7と一体的に図4の矢印Q方向に回転
可能に収容室1a,2a内に収容されている。
【0022】図2に示すように収容室1a,2aはテー
パ形状であり、シリンダブロック1,2の端面から内部
に向かうにつれて縮径となっている。ロータリバルブ2
7,28の外周面27c,28cは収容室1a,2aと
同形のテーパにしてある。両外周面27c,28cは収
容室1a,2aの内周面にぴったりと嵌合可能である。
即ち、ロータリバルブ27の大径端部27a側は吐出室
23側を向き、ロータリバルブ27の小径端部27b側
は斜板室11側を向いている。又、ロータリバルブ28
の大径端部28a側は吐出室24側を向き、ロータリバ
ルブ28の小径端部28b側は斜板室11側を向いてい
る。
【0023】ロータリバルブ27,28内には吸入通路
29,30が形成されている。吸入通路29,30の入
口29a,30aは小径端部27b,28b上に開口し
ており、吸入通路29,30の出口29b,30bはテ
ーパ外周面27c,28c上に開口している。
【0024】図3に示すようにロータリバルブ27のテ
ーパ外周面27cには、潤滑溝27dが形成されてい
る。潤滑溝27dは吸入通路29のロータリーバルブ回
転方向に関して後側の端面29cと対応する位置におい
て、斜め外側方へ指向するように形成されている。そし
て、前記端面29cにより収容室1a内周面に付着した
潤滑油が掻き集められるとともに、前記潤滑溝27dに
よりロータリバルブ27のテーパ外周面27cと収容室
1aの内周面との常時摺接している細隙に潤滑油を供給
してロータリーバルブ27の潤滑を行うことができるよ
うにしている。なお、潤滑溝27dの先端は、ロータリ
バルブ27により区画されている斜板室11と吐出室2
3とを連通させないように形成されている。
【0025】ロータリバルブ27と同様にロータリバル
ブ28にも後側の端面30cと対応する位置に潤滑溝2
8dが形成されていて、ロータリーバルブ28のテーパ
外周面28cと収容室2aとの摺接面の潤滑を行うよう
にしている。
【0026】図4に示すようにロータリバルブ27を収
容する収容室1aの内周面にはシリンダボア13,13
Aと同数の導通路としての吸入ポート1bが等間隔角度
位置に配列形成されている。吸入ポート1bとシリンダ
ボア13,13Aとは1対1で常に連通しており、各吸
入ポート1bは吸入通路29の出口29bの周回領域に
接続している。
【0027】同様に、図5に示すようにロータリバルブ
28を収容する収容室2aの内周面にはシリンダボア1
4,14Aと同数の吸入ポート2bが等間隔角度位置に
配列形成されている。吸入ポート2bとシリンダボア1
4,14Aとは1対1で常に連通しており、各吸入ポー
ト2bは吸入通路30の出口30bの周回領域に接続し
ている。
【0028】図1、図4及び図5に示す状態では両頭ピ
ストン15Aは一方のシリンダボア13Aに対して上死
点位置にあり、他方のシリンダボア14Aに対して下死
点位置にある。両頭ピストン15Aがシリンダボア13
に対して上死点位置から下死点位置に向かう吸入行程に
入ったときには吸入通路29はシリンダボア13Aの作
動室Paに連通する。この連通により斜板室11内の冷
媒ガスが吸入通路29を経由してシリンダボア13Aの
作動室Paに吸入される。一方、両頭ピストン15Aが
シリンダボア14Aに対して下死点位置から上死点位置
に向かう吐出行程に入ったときには吸入通路30はシリ
ンダボア14Aの作動室Pbとの連通を遮断される。こ
の連通遮断によりシリンダボア14Aの作動室Pb内の
冷媒ガスが吐出弁32を押し退けつつ吐出ポート4cか
ら吐出室24に吐出される。
【0029】このような冷媒ガスの吸入及び吐出は他の
シリンダボア13,14の作動室Pにおいても同様に行
われる。回転軸7の一端はフロントハウジング18から
外部に突出しており、他端はリヤハウジング19側の吐
出室24内に突出している。回転軸7の軸心部には吐出
通路37が形成されている。吐出通路37は吐出室24
に開口している。フロントハウジング18側の吐出室2
3によって包囲される回転軸7の周面部位には導出口3
8が形成されており、吐出室23と吐出通路37とが導
出口38によって連通されている。従って、前後の吐出
室23,24が吐出通路37によって連通しており、吐
出室24の冷媒ガスは吐出通路37から吐出室23に合
流する。
【0030】フラッパ弁型の吸入弁の場合には、潤滑油
が吸入弁とその密接面との間の吸着力を大きくしてしま
い、吸入弁の開放開始タイミングが前記吸着力によって
遅れる。この遅れ、吸入弁の弾性抵抗による吸入抵抗が
体積効率を低下させる。しかしながら、強制回転される
ロータリバルブ27,28の採用では潤滑油に起因する
吸着力及び吸入弁の弾性抵抗による吸入抵抗の問題はな
く、作動室Pa,Pb内の圧力が斜板室11内の吸入圧
をわずかに下回れば冷媒ガスが直ちに作動室Pa,Pb
に流入する。従って、ロータリバルブ27,28採用の
場合には体積効率がフラッパ弁型の吸入弁採用の場合に
比して大幅に向上する。
【0031】斜板室11の吸入冷媒ガスがロータリバル
ブ27,28内の吸入通路29,30を経由して作動室
Pa,Pbへ吸入される構成は従来の斜板式圧縮機にお
けるシリンダブロック内の複数の吸入通路を不要とす
る。又、吐出室24に吐出された吐出冷媒ガスを回転軸
7内の吐出通路37を経由して排出通路25へ導く構成
は従来の斜板式圧縮機におけるシリンダブロック内の吐
出通路を不要とする。シリンダブロック1,2から吸入
通路及び吐出通路を排除したことによってシリンダボア
13,13A,14,14Aの配列間隔を狭めることが
できる。シリンダボア13,13A,14,14Aの配
列間隔の減少はシリンダボア13,13A,14,14
Aの配列半径の縮径化に繋がり、シリンダブロック1,
2全体の縮径化が達成される。従って、圧縮機全体の縮
径化及び軽量化が達成される。
【0032】斜板室11内の冷媒ガスは作動室Pa,P
b内の圧力が斜板室11内の圧力を下回ると作動室P
a,Pbに吸入される。斜板室11から作動室Pa,P
bに到る冷媒ガス流路における流路抵抗、即ち吸入抵抗
が高ければ圧力損失が大きくなり、圧縮効率が低下す
る。ロータリバルブ27,28を採用することにより斜
板室11から作動室Pa,Pbに到る冷媒ガス流路長が
短くなり、吸入抵抗が従来より低減する。従って、損失
が減り、圧縮効率が向上する。
【0033】斜板室11は吸入圧領域であり、吐出室2
3,24は吐出圧領域である。そのため、吐出室23,
24の吐出冷媒ガスがロータリバルブ27,28の外周
面27c,28cに沿って漏洩する可能性がある。ロー
タリバルブ27,28の外周面27c,28cはテーパ
になっており、ロータリバルブ27,28を収容する収
容室1a,2aの内周面も同様のテーパとなっている。
又、ロータリバルブ27,28の大径端部27a,28
aは吐出圧領域に露出しており、小径端部27b,28
bは吸入圧領域に露出している。即ち、ロータリバルブ
27,28は大径端部27a,28a側から小径端部2
7b,28b側に向けて付勢される。この付勢によりロ
ータリバルブ27,28のテーパ外周面27c,28c
が収容室1a,2aの内周面に押接され、ロータリバル
ブ27,28は収容室1a,2aの内周面に摺接しなが
ら回転する。従って、吐出室23,24の吐出冷媒ガス
がロータリバルブ27,28の周面27c,28cと収
容室1a,2aの内周面との間から斜板室11側へ漏洩
することはない。
【0034】テーパ外周面27c,28cにおけるシー
ルは冷媒ガスの高低圧力差によって得られ、ロータリバ
ルブ27,28と回転軸7との間のシールはシールリン
グ39,40によって保障される。
【0035】ロータリバルブ27,28の摺接周面27
c,28cをテーパとする構成により吐出冷媒ガスの漏
洩が防止され、体積効率が向上する。しかも、収容室1
a,2aに対するロータリバルブ27,28の嵌入作業
も容易となる。
【0036】ロータリバルブ27,28の摺接周面27
c,28cをテーパとする構成はさらに次のような利点
をもたらす。収容室1a,2aのテーパ内周面とロータ
リバルブ27,28のテーパ外周面27c,28cとの
摺接は摺接周面における摩耗をもたらすが、ロータリバ
ルブ27,28は収容室1a,2aに対して常に良好に
摺接する。即ち、ロータリバルブ27,28と収容室1
a,2aとの間のシールは自己補充機能を有し、シール
性が低下することはない。ロータリバルブ27,28の
線膨張係数とシリンダブロック1,2の線膨張係数とが
異なっていてもシールの自己補充機能は常に確保され
る。従って、圧縮機内の温度変化に対してもシール性能
は変化しない。しかも、ロータリバルブ27,28を合
成樹脂製とすることもでき、ロータリバルブ27,28
の摺接周面27c,28cのテーパ構成は圧縮機の軽量
化にも寄与する。
【0037】特に、前記実施例ではロータリバルブ2
7,28に対し潤滑溝27d,28dを形成したので、
所定の押圧力をもって常時摺接するテーパ外周面27
c,28cの潤滑性を向上することができる。即ち、ロ
ータリーバルブ27,28の回転により吸入通路29,
30の出口29b,30bの回転方向に関して後側端面
29c,30cには収容室1a,2aの内周面に付着し
たミスト状の潤滑油が掻き集められるようにして回収さ
れる。この潤滑油はロータリバルブ27,28のテーパ
外周面27c,28cに形成した潤滑溝27d,28d
に進入し、出口29a,30aの外側方へ案内されるの
で、潤滑油がテーパ外周面27c,28cと収容室1
a,2aの内周面との常時摺接している細隙に供給され
る。このため潤滑効率が向上し、ロータリバルブの磨耗
が抑制される。
【0038】次に、図8〜図10に示すように可変容量
型の揺動斜板式圧縮機に具体化した第2実施例について
説明する。図8に示すようにシリンダブロック41及び
フロントハウジング42には回転軸44が円錐コロ軸受
け56A,56Bを介して回転可能に支持されている。
回転軸44に止着された回転支持体45には回転駆動体
46がアーム45a上の長孔45bとピン47との係合
により傾斜角可変に連結支持されている。回転駆動体4
6は回転軸44上のガイドスリーブ48の左右両側に突
設された軸ピン48aにより揺動可能に支持されてお
り、回転駆動体46上には揺動斜板49が相対回転可能
に支持されている。
【0039】複数のシリンダボア41a(本実施例では
6つ)内の各ピストン50,50A,50Bはピストン
ロッド50aを介して揺動斜板49に連結されている。
回転軸44の回転運動は回転支持体45及び回転駆動体
46を介して揺動斜板49の前後往復揺動に変換され、
ピストン50,50A,50Bがシリンダボア41a内
を前後動する。
【0040】シリンダブロック41とリヤハウジング4
3との間にはバルブプレート51、弁形成プレート52
及びリテーナ形成プレート53が挟まれている。リヤハ
ウジング43内の吐出室43aと作動室P,P1 ,P2
とはバルブプレート51上の吐出ポート51aを介して
繋がっている。弁形成プレート52上の吐出弁52aは
吐出室43a側で吐出ポート51aを開閉し、リナーナ
形成プレート53上のリテーナ53aは吐出弁52aの
撓み変形量を規制する。
【0041】シリンダブロック41及びリヤハウジング
43の対向端面中心部には収容室41b,43bが形成
されており、回転軸44の端部が収容室41b内に突出
している。両収容室41b,43bは回転軸44の軸方
向に軸芯をもつ円錐形状の収容室を形成し、収容室41
b,43b内にはロータリバルブ54が回転可能に収容
されている。ロータリバルブ54の外周面54cはテー
パになっており、収容室41b,43bも同様のテーパ
となっている。
【0042】収容室43bの端面とロータリバルブ54
の小径端部54aとの間には間隙が設けられており、ロ
ータリバルブ54の大径端部54bにはカップリング5
5が嵌入固定されている。収容室41b内に突出する回
転軸44の突出端部44aとカップリング55とは相対
回転不能かつスライド可能に嵌合している。ロータリバ
ルブ54は回転軸44と一体的に収容室41b,43b
内で図9の矢印R方向に回転する。
【0043】ロータリバルブ54内には吸入通路57が
形成されている。ロータリバルブ54の収容室43b側
の端面には吸入通路57の入口57aが形成されてお
り、ロータリバルブ54の周面には吸入通路57の出口
57bが形成されている。リヤハウジング43の中心部
には導入口43cが収容室43bに接続するように形成
されており、吸入通路57の入口57aが導入口43c
に連通している。
【0044】収容室41bの周面には作動室P,P1
2 と同数の吸入ポート41cが等間隔角度位置に配列
形成されている。各吸入ポート41cは吸入通路57の
出口57bの周回領域に接続している。図8及び図9に
示す状態ではピストン50Aは上死点位置にあり、18
0°の回転対称位置にあるピストン50Bは下死点位置
にある。
【0045】作動室P,P1 ,P2 内へ吸入された冷媒
ガスはピストンが下死点位置から上死点位置に向かう吐
出動作によって圧縮されつつ吐出室43aに吐出される
が、クランク室42a内の圧力と作動室内の吸入圧との
ピストンを介した差圧に応じてピストンのストロークが
変わり、圧縮容量を左右する揺動斜板49の傾斜角が変
化する。クランク室42a内の圧力制御は、吐出圧領域
の冷媒ガスを図示しない給気通路を介してクランク室4
2aへ供給するとともに、クランク室42a内の冷媒ガ
スを図示しない抽気通路及びその途中に設けた制御弁機
構によって吸入圧領域へ放出制御することによって行わ
れる。従って、クランク室42aは吸入圧領域よりも高
圧の圧力領域となる。
【0046】クランク室42a内の圧力はロータリバル
ブ54の大径端部54bに作用しており、導入口43c
内の圧力はロータリバルブ54の小径端部54aに作用
している。この圧力作用によりロータリバルブ54は大
径端部54b側から小径端部54a側へ付勢され、ロー
リバルブ54のテーパ外周面54cが収容室41b,4
3bのテーパ内周面に押接される。従って、作動室の高
圧冷媒ガスがロータリバルブ54の摺接周面54cから
導入口43cあるいはクランク室42a側へ漏洩するこ
とはない。
【0047】図10に示すように、ロータリバルブ54
のテーパ外周面54cには前記第1実施例で述べたロー
タリバルブ27の潤滑溝27dと同様の潤滑溝54dが
形成されている。潤滑溝54dは吸入通路57の出口5
7bの端面57cと対応して形成されている。前記潤滑
溝54dによりロータリバルブ54の収容室41b,4
3bと常時摺接するテーパ外周面54cの潤滑が行われ
る。
【0048】次に、この発明の第3実施例を図11に基
づいて説明する。この第3実施例では斜板室11の圧力
がロータリバルブ58,59の大径端部58a,59a
に作用し、吐出室23,24の圧力が小径端部58b,
59bに作用している。大径端部58a,59aと斜板
10との間にはシールばね60,61が介在されてい
る。ロータリバルブ58,59のテーパ外周面58c,
59cはシールばね60,61のばね力により収容室1
a,2aのテーパ内周面に押接される。
【0049】ロータリバルブ58,59のテーパ外周面
58c,59cには前記第1実施例で述べたロータリバ
ルブ27,28の潤滑溝27d,28dと同様の潤滑溝
58d,59dが形成されている。これらの潤滑溝によ
り収容室1a,2aと常時摺接するロータリバルブ5
8,59のテーパ外周面58c,59cの潤滑が行われ
る。
【0050】大径端部58a,59aと小径端部58
b,59bとに作用する圧力差を上回るようにシールば
ね60,61のばね力を設定すれば、テーパ外周面58
c,59cにおけるシール性は適正に確保される。この
設定ばね力を可及的に小さくすれば、テーパ外周面58
c,59cと収容室1a,2aとの過剰圧接が回避され
る。即ち、シールに必要な最小限のばね力をロータリバ
ルブ58,59に作用させることによって過剰圧接が回
避され、摺接に伴う動力損失も最小限に抑えることがで
きる。
【0051】シールばねを採用する構成は図8及び図9
の揺動斜板式圧縮機にも適用できる。なお、この発明は
前記実施例に限定されるものではなく、次のように具体
化することができる。
【0052】(1)図12に示すように吸入通路29の
出口29bの後側端面29cの形状を山形状にして潤滑
溝27dへの潤滑油の進入を促進するようにすること。
又、同図の鎖線で示すように出口29bの形状を端面2
9c側ほど幅狭となるテーパ状に形成し、潤滑油の回収
を効率的に行うようにすること。
【0053】(2)図13に示すように潤滑溝27dの
先端に微小な絞り27eを設けて大径端部27a,小径
端部27b側とを連通すること。又、同図の鎖線で示す
ように潤滑溝27dを後側端面29cと同方向に形成す
ること。この場合には加工が容易となる。
【0054】(3)ロータリバルブの摺接周面をストレ
ート形状とし、収容室の内周面もストレート形状とした
圧縮機に具体化すること。
【0055】
【発明の効果】以上詳述したように本発明は、ロータリ
バルブの外周面に吸入通路の出口の回転方向に関して後
側の端面に開口する潤滑溝を形成したので、ロータリバ
ルブ及び収容室の摺接面の潤滑性を向上し、耐久性を向
上することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1実施例を示す圧縮機全
体の側断面図である。
【図2】要部拡大側断面図である。
【図3】ロータリバルブの斜視図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】図1のB−B線断面図である。
【図6】図1のC−C線断面図である。
【図7】図1のD−D線断面図である。
【図8】この発明の第2実施例を示す圧縮機全体の側断
面図である。
【図9】図8のE−E線断面図である。
【図10】ロータリバルブの斜視図である。
【図11】この発明の第3実施例を示す圧縮機全体の側
断面図である。
【図12】ロータリーバルブの別例を示す正面図であ
る。
【図13】ロータリーバルブの別例を示す部分正面図で
ある。
【符号の説明】
1a,2a,41b,43b…収容室、1b,2b,4
1c…導通路としての吸入ポート、7…回転軸、11…
斜板室、23,24…吐出室、27,28,54,5
8,59…ロータリバルブ、27c,28c,54c,
58c,59c…テーパ外周面、27d,28d,54
d,58d,59d…潤滑溝、29,30,57…吸入
通路、29b,30b,57b…吸入通路の出口、29
c,30c,57c…出口の後側端面、P…作動室。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 犬飼 均 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式 会社 豊田自動織機製作所 内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F04B 27/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸の周囲に配列された複数のシリン
    ダボア内にピストンを収容するとともに、回転軸の回転
    に連動してピストンを往復動させるピストン式圧縮機に
    おいて、 ピストンによってシリンダボア内に区画される作動室に
    冷媒ガスを導入するための吸入通路をロータリバルブ内
    に形成し、前記ロータリーバルブを収容する収容室の内
    周面には吸入行程中の作動室と前記ロータリーバルブの
    吸入通路の出口とを連通する導通路を形成し、さらに前
    記ロータリバルブの外周面に潤滑溝を形成し、該潤滑溝
    の基端部を前記吸入通路の出口のバルブ回転方向に関し
    て後端部に連通し、潤滑溝の先端部を外側方へ指向した
    ピストン式圧縮機における冷媒ガス吸入構造。
JP04310648A 1992-11-19 1992-11-19 ピストン式圧縮機における冷媒ガス吸入構造 Expired - Fee Related JP3082481B2 (ja)

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