JP3079911B2 - シャドウマスクの製造方法 - Google Patents

シャドウマスクの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フォトエッチング法に
よってシャドウマスクを製造する方法に係わり、特に開
孔の径が小さく開孔の数が多い高精細シャドウマスクの
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カラー受像管に用いるシャドウマ
スクは、図3に示すような工程で造られる。すなわち、
シャドウマスク材1として例えば板厚0.13mmの低炭素鋼
板を用い、その両面を脱脂、整面、洗浄処理した後、そ
の両面にカゼインやポリビニルアルコールと重クロム酸
アンモニウムからなる水溶性感光液を塗布乾燥して、フ
ォトレジスト膜2を形成する。次いで、シャドウマスク
材1の一方の面に小孔像のネガパターンを、他方の面に
大孔像のネガパターンを露光する。その後、温水にて、
未露光未硬化のフォトレジスト膜を溶解する現像処理を
行なえば、図3(a)に示すように、小孔レジスト膜2a
と大孔レジスト膜2bを表裏に有するシャドウマスク材1
が得られる。
【0003】その後、レジスト膜2に対して硬膜処理お
よびバーニング処理を施し、第一段階のエッチングを表
裏両面から行なう。エッチング液には塩化第二鉄のボー
メ濃度35〜50を用い、スプレー圧 1.5〜3.5kg/cm2 のス
プレーエッチングで行なうのが一般的である。この第一
エッチング工程では、図3(b)に示すように、エッチ
ング進度は、途中で止めるのが肝要である。また、この
第一エッチング工程では、シャドウマスク材1の大孔レ
ジスト膜2bを有する面に保護フィルムを貼り付け、小孔
側からのみシャドウマスク材1を中途までエッチングす
る方法もある。
【0004】次いで、図3(c)に示すように、前段の
エッチングで形成された小孔側の凹部3aを完全に埋め尽
くすエッチング防止層4を塗布形成する。続いて、図3
(d)に示すように、大孔側からのみシャドウマスク材
1をエッチングする第二エッチング工程を行ない、大孔
側から小孔に貫通する開孔5を形成する。最後に、エッ
チング防止層4およびレジスト膜2を剥がし、水洗乾燥
して図3(e)に示すフラット型のシャドウマスク6を
得る。
【0005】この従来法では、フォトエッチング法では
避けることのできないサイドエッチング現象を小孔側で
抑えている、ということができる。すなわち、小孔側の
凹部にエッチング防止層を充填し、第二エッチング工程
では小孔はサイドエッチングされないことにより、第一
エッチング工程における精確な小孔パターンを維持でき
る。したがって、例えば材料金属板の厚さより小さい孔
径の開孔も可能としていた。
【0006】しかしながら、この従来法にも問題がない
わけではない。従来法によれば、エッチング防止層の形
成は、スプレーコート法またはメッシュ状の溝のインキ
セルを有するメッシュセルグラビアコート法等で行なわ
れているが、この方法では以下のような欠点があげられ
る。すなわち、スプレーコート法においては、 スプレーノズルを多数並べるのでコート装置が大型化
する。 スプレー飛沫による汚染、コート液の滞留のため、コ
ート装置の保守管理に手間がかかる。 エッチング防止層内に気泡が取り込まれて残存しやす
い等、の欠点があげられる。 次いで、メッシュセルグラビアコート法においては、 コート液を凹部に押し込む性質が弱い。 エッチング防止層内に気泡が取り込まれて残存しやす
い等の、欠点があげられる。 特に、上記の二方法に共通するエッチング防止層内に気
泡が取り込まれて残存しやすいという欠点は、シャドウ
マスクの孔形不良の原因となる重大な欠点といえる。す
なわち、図4(a)に示すようにエッチング防止層内に
残存した気泡25が、第二エッチング工程で、小孔のサイ
ドエッチング現象を助長することがあり、その結果、図
4(b)に示すように開孔の形状が拡大したり、所定の
円形にならないなどの孔形不良の原因となった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な事情に鑑み、シャドウマスクの製造方法において、気
泡が取り込まれて残存することのないエッチング防止層
の形成法を立案して、本発明に至ったものであり、得ら
れるシャドウマスクに形状不良の開孔が生じないシャド
ウマスクの製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、両
面に所定パターンに従って一部金属面を露出させている
レジスト膜が形成されている板状のシャドウマスク金属
素材の少なくとも一方の面をエッチングして、少なくと
もこの一方の面の金属露出部分に凹部を形成する第一エ
ッチング工程と、前記第一エッチング工程にて形成され
た凹部を有する一方の面にエッチング防止層を塗布し
て、この凹部内部にエッチング防止層を充填する工程
と、前記エッチング防止層の設けられた面とは反対の面
をエッチングして、この反対の面から前記一方の面に形
成された凹部に通じる凹孔を形成する第二エッチング工
程と、前記エッチング防止層とレジスト膜を除去する剥
膜工程とを少なくとも有するシャドウマスクの製造方法
において、前記のエッチング防止層の塗布手段として、
斜めらせん溝のインキセルを有するグラビアロールによ
るグラビアコート法を用いることを特徴とするシャドウ
マスクの製造方法である。
【0009】しかし、本発明のシャドウマスクの製造方
法の実施態様には、以下の変形がありうる。すなわち、
斜めらせん溝のインキセルを有するグラビアロールによ
るグラビアコーターが、リバースグラビアコーターであ
ることである。「リバース」とは、被塗布物と接するグ
ラビアロールの回転方向が、被塗布物の進行方向と逆に
なるような回り方をいう。以下、とくにことわらないか
ぎり、単に「グラビアコーター」という場合は、グラビ
アロールの回転方向が、被塗布物の進行方向と同じであ
るナチュラルグラビアコーターを意味し、リバースグラ
ビアコーターとは区別するものとする。
【0010】次いで、本発明のグラビアロールの前後に
圧胴を設けることも本課題解決の手段として望ましい。
何故かならば、圧胴を用いて金属素材に張力をかけるこ
とにより金属素材のたるみを防止し、金属素材とグラビ
アロールとの密着性を高めることで、より効率よく金属
素材の凹部内部にエッチング防止層を充填することが可
能となるからである。
【0011】また、グラビアコーターのインキ供給方式
は、リバースであるとナチュラルであるとを問わず、イ
ンキ循環方式であることが望ましい。何故かならば、イ
ンキ循環経路にフィルターを付けることにより、インキ
を常に清浄な状態で版に供給できるからである。
【0012】本発明が適応できるシャドウマスクの製造
方法としては、図3を用いて説明した従来技術が適応で
きることは勿論である。より一般的に言えば、エッチン
グを二段階に分け、その間に片面に中途までエッチング
した凹部内にエッチング防止層を充填する工程を有する
シャドウマスクの製造方法であれば、本発明は適応でき
る。エッチング防止層を充填する凹部は、小孔側であっ
ても大孔側であっても、差し支えないが、多くの場合、
小孔側である。
【0013】
【作用】本発明は、シャドウマスクの製造工程におい
て、エッチング防止層の塗布手段として、斜めらせん溝
のインキセルを有するグラビアロールによるグラビアコ
ート法を用いるものである。斜めらせん溝のインキセル
を有するグラビアロールコーターは、被塗布面へ充分量
のインキを供給し、かつエッチングした凹部内へインキ
を押し込む性質が優れる。特に、リバースコートの場
合、斜めらせん溝のインキセルを有するグラビアロール
コーターは、エッチングした凹部に対して、波状的にイ
ンキを押し込むように働き、ピンホールのない均一な膜
厚の塗布膜を得ることに長じている。このように、本発
明は、気泡を抱き込むことなく、エッチングした凹部内
にエッチング防止層を充填することができる。
【0014】
【実施例】以下に、図面の図1から図2に基づいて、本
発明を詳述する。図2において、シャドウマスク材1
は、巻取りロールから供給された長尺物の金属板であっ
て、例えば、板厚0.13mmの低炭素鋼や低膨張性のアンバ
ー材を用いる。すでに(従来の技術)の項で説明したよ
うな工程を行なえば、図3(a)に示すような、小孔レ
ジスト膜2aと大孔レジスト膜2bを表裏に有するシャドウ
マスク材1が得られる。
【0015】次いで、図2の第一エッチングチャンバー
7に、シャドウマスク材1を通せば、上下に設置された
スプレーノズル8から吹き出すエッチング液により、シ
ャドウマスク材1の表裏が途中までエッチングされ、図
3(b)に示すような凹部3a、3bが形成される。
【0016】第一エッチングチャンバー7を通過したシ
ャドウマスク材1は、上方へ搬送され、エッチング防止
層が充填される小孔側を下面となるよう反転される。シ
リンダーロールによる塗布では、塗布面を下側とするの
が適しているからである。反転して小孔面を下側とした
シャドウマスク材1に対して、斜めらせん溝のインキセ
ルを有するグラビアロールによるグラビアコーター10で
グラビアコートを行なう。これが、本発明の特徴であ
る。
【0017】この点を図1に基づいて説明すると、シャ
ドウマスク材1は右方から搬送されてくる。次いで、斜
めらせん溝のインキセルを有するグラビアロールによる
グラビアコーター10でコートを行なう。すなわち、斜め
らせん溝26のインキセルを有するグラビアロール17と圧
胴22の間にシャドウマスク材1を通すのであるが、図1
の実施例ではグラビアロール17の回転方向は、リバース
となっている。
【0018】リバースグラビアロール17の場合、シャド
ウマスク材1との相対速度が大で、しかも逆方向での接
触であるから、接触面で塗布液を凹部へ押し込む働きが
強く、かつ、斜めらせん溝のインキセルは波状的にイン
キを押し込むように働く。そのうえ、グラビアコーター
10の性質として、塗布液を均一に展開するのに適してい
るから、ピンホール等の塗布欠陥を生じることがない。
【0019】なお、本発明者らによれば、グラビアロー
ル上に設ける斜めらせん溝は山から山までのピッチを 1
00〜 500μm 、らせんの角度をロール軸に対し25〜65°
で設定し、インキセルの深度を10〜 200μm とすること
で良好な塗布結果を得られるという事実を経験的に得て
いる。
【0020】また、本実施例では図1中に示すようにグ
ラビアロール17の前後に圧胴22を設けている。この圧胴
22を用いてシャドウマスク材1に張力をかけることで、
長尺物のシャドウマスク材1を搬送する際に生じるシャ
ドウマスク材1のたるみを防止するとともに、シャドウ
マスク材1をグラビアロール17に押しつける役目をはた
している。これにより、シャドウマスク材1とグラビア
ロール17の密着性が高まり、より効率よく塗布液を均一
にシャドウマスク材1の凹部内部に充填することが可能
となる。
【0021】グラビアコーター10の塗布液は、循環方式
で供給されている。塗布液供給装置18の先端部23はリバ
ースグラビアロール17の表面に摺接して、グラビアロー
ルの表面に刻設されたインキセルの中に充填された塗布
液以外の余分な塗布液を掻き落とす。余分な塗布液は、
インキ受け19からポンプ20、フィルター21を経て循環さ
れる。この方式の優れた点は、フィルターを通して塗布
液が常に清浄なことである。
【0022】次いで、図2においてエッチング防止層の
塗布が終了したシャドウマスク材1は、さらに上の乾燥
・硬化のエリア24を経て、第二エッチングチャンバー11
に通す。スプレーノズルは大孔側すなわち下方からエッ
チング液を噴き付ける。こうして大孔側から小孔に通じ
る貫通孔を開け、図3(d)に示す状態とし、最後に剥
膜チャンバー12にてエッチング防止層およびレジスト膜
2を除去して、図3(e)に示すフラット型のシャドウ
マスクを得た。
【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明のシャドウマスク
の製造方法によれば、エッチング防止層の塗布方法とし
て、斜めらせん溝のインキセルを有するグラビアコータ
ーは、被塗布面へ充分量のインキを供給すること、かつ
エッチングした凹部内へインキを押し込むことに長け、
ピンホールのない均一な膜厚の塗布膜を得ることに長じ
ている。
【0024】したがって、 スプレー方式またはメッシュセルグラビアコート方式
に比べて、エッチング防止層内に気泡が取り込まれな
い。したがって、残存した気泡が、第二段階のエッチン
グで、小孔のサイドエッチング現象を助長することがな
く、その結果、開孔の形状が拡大したり、所定の円形に
ならないなどの孔形不良が抑えられる。 グラビアコーター方式の塗布法であるので、スプレー
方式に比べてコート装置が小型である。 スプレー飛沫による汚染、コート液の滞留ということ
がなく、コート装置の保守管理が楽である。 という、実用上すぐれた効果がある。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシャドウマスクの製造方法の一実施例
の要部を示す説明図。
【図2】本発明のシャドウマスクの製造方法の一実施例
を示す説明図。
【図3】シャドウマスクの製造方法の一例を工程順に示
す説明図。
【図4】(a)〜(b)はエッチング防止層内に残留し
た気泡による二次エッチング不良の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1 シャドウマスク材 2 レジスト膜 3 凹部 4 エッチング防止層 5 開孔 6 シャドウマスク 7 第一エッチングチャンバー 8 ノズル 10 グラビアコーター 11 第二エッチングチャンバー 12 剥膜チャンバー 17 グラビアロール 18 塗布液供給装置 19 インキ受け 20 ポンプ 21 フィルター 22 圧胴 23 先端部 24 乾燥・硬化のエリア 25 気泡 26 斜めらせん溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 9/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】両面に所定パターンに従って一部金属面を
    露出させているレジスト膜が形成されている板状のシャ
    ドウマスク金属素材の少なくとも一方の面をエッチング
    して、少なくともこの一方の面の金属露出部分に凹部を
    形成する第一エッチング工程と、前記第一エッチング工
    程にて形成された凹部を有する一方の面にエッチング防
    止層を塗布して、この凹部内部にエッチング防止層を充
    填する工程と、前記エッチング防止層の設けられた面と
    は反対の面をエッチングして、この反対の面から前記一
    方の面に形成された凹部に通じる凹孔を形成する第二エ
    ッチング工程と、前記エッチング防止層とレジスト膜を
    除去する剥膜工程とを少なくとも有するシャドウマスク
    の製造方法において、前記のエッチング防止層の塗布手
    段として、斜めらせん溝のインキセルを有するグラビア
    ロールによるグラビアコート法を用いることを特徴とす
    るシャドウマスクの製造方法。
  2. 【請求項2】グラビアロールが金属素材の進行方向と逆
    回転のリバースグラビアコート法である請求項1記載の
    シャドウマスクの製造方法。
  3. 【請求項3】グラビアロールの前後に圧胴を設けた請求
    項1または2記載のシャドウマスクの製造方法。
  4. 【請求項4】グラビアコーターの塗布液供給方式が、塗
    布液循環方式である請求項1、2または3記載のシャド
    ウマスクの製造方法。
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