JP3073087B2 - アクリル系中空フィラメント及びその製造方法 - Google Patents

アクリル系中空フィラメント及びその製造方法

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JP3073087B2 JP04021332A JP2133292A JP3073087B2 JP 3073087 B2 JP3073087 B2 JP 3073087B2 JP 04021332 A JP04021332 A JP 04021332A JP 2133292 A JP2133292 A JP 2133292A JP 3073087 B2 JP3073087 B2 JP 3073087B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な捲縮特性を有する
アクリル系フィラメント、特に単一のアクリル系重合体
により優れた捲縮を発現させることが可能なアクリル系
中空フィラメントに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、2種以上のアクリル系重合体を複
合口金によりバイメタル状あるいは芯鞘状に接合して得
られる複合繊維は、特異かつ優れた捲縮発現能を有し、
その嵩高性を生かすべく、セ−タ−等の衣料用やフトン
綿用など種々の分野に広く利用されている。
【0003】しかしながら、本複合技術は技術上、少な
くとも2種の重合体を接合するために必要な複合紡糸口
金や装置自体が複雑、高価であるためにコスト面等で問
題があった。
【0004】更に、重合体の組み合わせにより重合体間
の剥離が発生したり、各単繊維中の重合体成分比率のバ
ラツキが発生し、工程上毛羽や糸切れの発生や、製品品
位上、捲縮特性の斑や染め斑が発生するという問題点が
あった。
【0005】一方、中空糸については、特公昭46−1
7302号公報、特開昭54−15029号公報等のよ
うな特殊なスリット状ノズルを用いて乾湿式法によりア
クリル系中空フィラメントを得る方法等が開示されてい
るが、その目的とするところは、いずれも軽量感、保温
性等の機能を付与することにあり、本発明の目的とする
捲縮発現性を改善するために中空糸を利用した検討は見
い出されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、中空断
面を呈するアクリル系フィラメントを製造するに際し、
断面形状及び乾熱延伸方法等を鋭意検討した結果、特定
の中空断面形状の糸条に乾熱延伸を施す際、加熱した直
後に一方向より冷却することにより、優れた捲縮特性を
発現させることが可能であることを見い出し、本発明に
到達したものである。
【0007】すなわち、本発明の目的とするところは、
複雑な複合紡糸によらず、単一な重合体の使用だけでも
優れた捲縮発現能を有する中空アクリル系フィラメント
及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、繊維横断面の中央部に、繊維長さ方向にフィラメ
ントの全断面積の5〜50%に相当する連続した空洞を
有し、且つ沸水処理時に発現する捲縮数が、インチ当た
り10〜40個であることを特徴とするアクリル系中空
フィラメントを第1の発明とし、アクリル系重合体紡糸
原液を紡糸ノズルより一旦空気中または不活性気体中に
押し出して、繊維横断面の中央部に、繊維長さ方向に連
続した空洞を有する糸条を形成した後に、該糸条を原液
用溶媒と水を主とする紡糸浴中に導くことにより凝固
し、次いで洗浄、湿熱延伸、乾燥処理した後に、更に延
伸倍率2〜10倍で乾熱延伸してアクリル系中空繊維を
製造する際に、乾熱延伸工程で糸条を180〜230℃
にて加熱後、直ちに繊維走行方向に垂直な一方向より冷
却することにより、フィラメントの全断面積の5〜50
%に相当する連続する空洞を有し、且つ沸水処理時に発
現する捲縮数が、インチ当たり10〜40個とすること
を特徴とするアクリル系中空フィラメントの製造方法を
第2の発明とするものである。
【0009】本発明におけるアクリロニトリル系重合体
は、アクリル繊維用のアクリロニトリル系重合体であれ
ば何ら制限を受けるものではなく、ポリアクリロニトリ
ル、アクリロニトリルと他の共重合可能な単量体との共
重合体、及びこれらの混合物を目的に応じて任意に選べ
ば良い。
【0010】アクリロニトリルと共重合される他の共重
合可能な単量体の具体例としては、例えば、メチル(メ
タ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチ
ル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メ
タ)アクリレ−ト等の(メタ)アクリル酸エステル類、
酢酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン、α−メチ
ルスチレン、ビニルピリジン等の芳香族ビニル単量体、
(メタ)アクリルアミド等の末端アミド基含有ビニル単
量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有ビ
ニル単量体、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルベンゼ
ンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル単量体及びそ
の塩類、等が挙げられ、単独又は2種以上の混合物で使
用される。
【0011】また、アクリロニトリリル系重合体を得る
ための重合法としては、特に限定されるものではなく、
懸濁重合、溶液重合、乳化重合等の公知の方法を使用す
ることができ、目的に応じて任意に選択すれば良い。
【0012】本発明においては、アクリロニトリル系重
合体の重合度は特に限定されるものではないが、重合体
の比粘度(重合体0.1gを0.1Nのロダンソ−ダを
含有するジメチルホルムアミド100mlに溶解したも
のを25℃で測定した値)で0.10〜0.30のもの
を使用するのが繊維強度の点で好ましい。
【0013】アクリロニトリル系重合体紡糸原液を調整
するために使用される溶媒としては、通常のアクリル系
繊維を製造する際に使用される溶剤を目的に応じて選択
することができ、具体例として、例えばジメチルホルム
アミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド
等の有機溶媒、又は硝酸、ロダン塩水溶液、塩化亜鉛水
溶液等の無機溶媒が挙げられる。
【0014】上記紡糸原液は、紡糸ノズルより一旦空気
または不活性ガス中に押し出した後に、該糸条を原液用
溶媒と水を主とする紡糸浴中に導いて凝固糸得る方法で
ある、乾湿式紡糸法によって紡糸される。
【0015】本発明においては、目的とする中空率を有
するフィラメントが得られるものであれば紡糸ノズル形
状、紡糸浴条件は特に限定されない。
【0016】紡糸ノズルの具体例としては、例えば特開
昭54−15029号公報等に開示されているような、
スリット状のノズルの開孔部によって包囲される内部非
開孔部と外部非開孔部とが、開孔部を横切る2個以上の
非開孔部によって連結されているような孔形状を有する
ノズルが挙げられる。
【0017】該ノズルの典型的な孔形状の概念図を第1
図に示した。また、通常紡糸に使用されるノズルとして
は、上記の様な形状を有する孔を、例えば第2図に示す
ように、円弧状に、少なくとも1列に複数個形成させた
もので代表されるように、複数個の孔を有するものが使
用される。
【0018】また、紡糸浴条件の具体例としては、例え
ば、溶剤としてジメチルアセトアミドを用いた場合、紡
糸浴温度0〜40℃、溶剤濃度10〜85%とする条件
が挙げられる。
【0019】本発明においては、得られた凝固糸はフィ
ラメント中の溶剤分を低減、除去するために洗浄処理さ
れる。
【0020】洗浄処理条件としては特に限定されるもの
ではなく、一般のアクリル系フィラメントの洗浄条件を
適用することができ、例えば50〜100℃の温水中に
て、フィラメント中の溶剤分が通常1%以下になるまで
洗浄処理すればよい。
【0021】本発明においては、洗浄後湿熱延伸され
る。その条件は特に限定されるものではなく、目的に応
じて任意に設定することが出来るが、延伸性の点から8
0〜100℃の温水中にて2倍以上延伸することが好ま
しい。
【0022】湿熱延伸処理後、糸条は乾燥処理される
が、必要に応じて乾燥処理の前に、後続の熱処理におけ
る繊維間の融着や糸条ガイドとの摩擦を低下させるため
に油剤付与処理を施しても良い。
【0023】乾燥処理条件は特に限定されるものではな
く、通常のフィラメントの乾燥条件を適用することがで
き、例えば、120〜180℃の乾燥ロールで乾燥すれ
ば良い。
【0024】本発明においては、次いで延伸倍率2〜1
0倍で乾熱延伸処理が施される。延伸倍率が2倍より低
い場合、充分な強度が得られず、また捲縮の発現力も弱
くなるので好ましくない。一方、延伸倍率が10倍を超
えると、糸切れが発生し易くなることから好ましくな
い。
【0025】本発明における乾熱延伸方法としては、糸
条を180〜230℃にて加熱後、直ちに繊維走行方向
に垂直な一方向より冷却することが必要である。
【0026】乾熱延伸時の加熱温度が180℃よりも低
い場合、充分に昇温されず、糸切れが発生し易く、好ま
しくない。一方、加熱温度が230℃を超えると、糸が
着色するといった問題が生じ、好ましくない。
【0027】上記の加熱手段としては特に限定されるも
のではなく、通常の加熱方法が使用でき、例えば、熱ピ
ン等による加熱方法が挙げられる。
【0028】180〜230℃に加熱されたフィラメン
トは、直ちに冷却板等にて繊維走行方向に垂直な一方向
より選択的に冷却される。
【0029】上記乾熱延伸処理装置の具体例を第3図に
示した。供糸ローラー(3)から供糸されたフィラメン
トは、延伸熱ピン(1)にて加熱され、その直後に冷却
板(2)により冷却され、引取りローラー(4)で引き
取られる。
【0030】本発明にて重要な点は、上記乾熱延伸工程
において積極的に冷却を施さない場合、目的とする捲縮
発現を示さないことである。
【0031】この理由は定かではないが、各フィラメン
トにおいて冷却板との接触部と非接触部との間で熱履歴
の差が生じ、沸水処理時に収縮率の差として優れた捲縮
が発現するものと推定される。
【0032】また、上記冷却を施こした場合でも、各フ
ィラメントの繊維断面形状が中空を呈さない場合及び該
中空部の占有率が5%未満の場合、目的とする捲縮発現
を示さない。
【0033】本現象の機構等詳細は不明だが、中空部内
の空気の断熱効果によるものと推察される。繊維断面中
の中空部の占有率は5〜50%が好ましい。更に好まし
くは8〜30%である。逆に占有比率が50%を超える
場合、巻き取り時のケバの発生し易く、好ましくない。
【0034】乾熱延伸処理されたフィラメントは、通常
追油された後に巻き取られる。
【0035】以上のようにして得られたフィラメント
は、沸水処理を施すことによりインチ当たり10〜40
ケの高い捲縮発現性を有するものとすることが可能とな
る。
【0036】以下、実施例によって本発明を具体的に説
明する。尚、実施例中の捲縮数の測定方法はJIS規格
L−1015に準ずる。
【0037】
【実施例】
<実施例−1>アクリロニトリル単位92.8重量%、
酢酸ビニル単位6.95重量%、メタリルスルホン酸ソ
−ダ単位0.25重量%からなる比粘度0.174
(0.1%DMF溶液、25℃測定)のアクリル系共重
合体をジメチルホルムアミドに溶解し、固形分濃度25
%の原液を調整した。
【0038】この紡糸原液を、第1図に示す孔形状を有
する、第2図に示す孔数15の紡糸口金より吐出し、5
mmの空気層を経て、ジメチルアセトアミド73.5重
量%、水26.5重量%からなる40℃の凝固浴へ乾湿
式紡糸し、糸条形成後、凝固浴から引き取り60℃の温
水で洗浄した後、沸水にて3倍に湿熱延伸し、油剤を均
一に付着させ、140℃の乾燥ロ−ルで、完全に乾燥し
た。
【0039】引き続いて第3図に示す装置を用い、熱ピ
ンを200℃に、冷却板は室温とし、両者間にて2倍に
延伸しつつ糸条を通過させ、追油を施した後巻き取っ
た。
【0040】得られたフィラメントの単繊維デニ−ルは
5.0dであり、繊維断面中の中空部占有率は10%、
沸水処理後の捲縮数は1インチ当たり25ケであった。
【0041】<比較例−1>実施例−1の乾熱延伸工程
において、糸条を冷却板に接触させない他は実施例−1
と同様にしてフィラメントを得た。得られたフィラメン
トの単繊維デニ−ルは5.0dであり、繊維断面中の中
空部占有率は10%であったが、沸水処理後の捲縮の発
現は認められなかった。
【0042】<比較例−2>実施例−1の紡糸工程にお
いて、通常の丸断面形状を有する孔数15の紡糸口金を
用いて紡糸して得られたフィラメントの単繊維デニ−ル
は5.0dであり、繊維断面形状は丸断面であり、沸水
処理後の捲縮の発現は認められなかった。
【0043】
【発明の効果】本発明のフィラメントは、従来のアクリ
ル系フィラメントでは得られなかった優れた捲縮発現能
性を有することから、中空糸独特の軽量感と合わせて嵩
高性を要求される衣料分野等への展開が期待され、その
産業上の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】紡糸ノズルの孔形状を示す概念図である。
【図2】紡糸ノズルにおけるノズル位置を示す概念図で
ある。
【図3】本発明における乾熱延伸装置の1実施例を示す
図である。
【符号の説明】
A 開孔部 B 外部非開孔部 C 連結部 D 内部非開孔部 E ノズル孔 1 熱ピン 2 冷却板 3 供糸ローラー 4 引取りローラー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/18 D01D 5/24 D01F 6/38

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】繊維横断面の中央部に、繊維長さ方向にフ
    ィラメントの全断面積の5〜50%に相当する連続した
    空洞を有し、且つ沸水処理時に発現する捲縮数が、イン
    チ当たり10〜40個であることを特徴とするアクリル
    系中空フィラメント。
  2. 【請求項2】アクリル系重合体紡糸原液を紡糸ノズルよ
    り一旦空気中または不活性気体中に押し出して、繊維横
    断面の中央部に、繊維長さ方向に連続した空洞を有する
    糸条を形成した後に、該糸条を原液用溶媒と水を主とす
    る紡糸浴中に導くことにより凝固し、次いで洗浄、湿熱
    延伸、乾燥処理した後に、更に延伸倍率2〜10倍で乾
    熱延伸してアクリル系中空繊維を製造する際に、乾熱延
    伸工程で糸条を180〜230℃にて加熱後、直ちに繊
    維走行方向に垂直な一方向より冷却することにより、フ
    ィラメントの全断面積の5〜50%に相当する連続する
    空洞を有し、且つ沸水処理時に発現する捲縮数が、イン
    チ当たり10〜40個とすることを特徴とするアクリル
    系中空フィラメントの製造方法。
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