JP3067850B2 - オリゴヌクレオチド及びそれを用いた乳酸菌の検出法 - Google Patents

オリゴヌクレオチド及びそれを用いた乳酸菌の検出法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オリゴヌクレオチド及
びそれを用いた乳酸菌の検出法に関し、詳しくは食品、
特ににビールの品質に悪影響を及ぼすL.brevisをはじめ
とする乳酸菌の検出法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】食品、特
にビール製造において乳酸菌[ ラクトバチルス(Lactob
acillus)属またはペディオコッカス(Pediococcus) 属 ]
はその耐酸性と耐アルコール性から最も重要な有害菌で
あり、その高感度かつ迅速な検出法が待望されてきた。
しかしながら、従来の培養法による乳酸菌の検出には数
日を要し、抗体による方法は選択性には優れているが、
検出感度が劣る。また、菌体内ATPを抽出し、ルシフ
ェラーゼ−ルシフェリンを用いて蛍光分析を行う方法は
乳酸菌の検出感度に優れるけれども選択性に劣る。さら
に、最近オリゴヌクレオチドを用いたDNAプローブ法
あるいはハイブリダイゼーション法が試みられるように
なってきたが、これらの方法も十分な検出感度と選択性
を得るのが難しい。このように、従来より種々の方法が
開発されてはいるものの、いずれも一長一短があり、検
出感度,選択性ともに優れた乳酸菌の検出方法は未だ存
在しないのが現状である。
【0003】そこで、本発明の目的は、オリゴヌクレオ
チドを核酸合成反応のプライマーとして機能させた遺伝
子増幅技術により乳酸菌、特にラクトバチルス・ブレビ
ス(L.brevis)由来の5S rRNA 遺伝子を検出する方法に
関し、食品の微生物管理検査に有用な、乳酸菌の簡便,
迅速かつ高感度な検出法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段および作用】本発明は、検
体中に存在する乳酸菌を選択的に検出するためのオリゴ
ヌクレオチドまたは乳酸菌の5S rRNA 遺伝子をコードす
るヌクレオチド配列を標的とし、そのヌクレオチド配列
と相補的となるように化学合成されたオリゴヌクレオチ
ドであって、該ヌクレオチドが以下の配列群 5’−TGTGGTGGCGATAGCCTGAA−3’・・・(a) 5’−GCGTGGCAACGTCCTATCCT−3’・・・(b) の少なくとも1つを有するか、または該配列に対応する
相補的配列を有することを特徴とするオリゴヌクレオチ
ド並びに上記配列群のうち、少なくとも1つを有するオ
リゴヌクレオチドを鎖長反応のプライマーとして機能さ
せ、標的ヌクレオチド配列を選択的に増幅させた後、検
体内に認識されるべき配列が存在しているか否かを判定
することにより乳酸菌の検出を行うことを特徴とする乳
酸菌の検出方法を提供するものである。
【0005】本発明は、乳酸菌、特にラクトバチルス・
ブレビスの5S rRNA 遺伝子と選択的にハイブリダイズす
るオリゴヌクレオチドを作製し、このオリゴヌクレオチ
ドをプライマーとして遺伝子増幅に用い、乳酸菌を選択
的に検出することを特徴としている。
【0006】本発明において、遺伝子増幅は例えばSaik
i らが開発したPolymerase Chain Reaction 法(Scienc
e 230,1350(1985)、以下、PCR法と略すことがあ
る。) に基づいて行うことができる。この方法は、ある
特定のヌクレオチド配列領域(本発明の場合はラクトバ
チルス・ブレビスの5S rRNA 遺伝子)を検出する場合、
その領域の両端の一方は+鎖を、他方は−鎖をそれぞれ
認識してハイブリダイゼーションするようなオリゴヌク
レオチドを用意し、それを熱変性により1本鎖状態にし
た試料核酸に対して鋳型依存性ヌクレオチド重合反応の
プライマーとして機能させ、生成した2本鎖核酸を再び
1本鎖に分離したのち、再び同様な反応を起こさせるも
のである。この一連の操作を繰り返すことにより、2つ
のプライマーに挟まれた領域は検出できるまでにコピー
数が増大してくる。
【0007】本発明でプライマーとして用いられるオリ
ゴヌクレオチドは、選択性や検出感度および再現性から
考えて10塩基以上、望ましくは15塩基以上の長さを
持ったヌクレオチド断片で、以下の配列群 5’−TGTGGTGGCGATAGCCTGAA−3’・・・(a) 5’−GCGTGGCAACGTCCTATCCT−3’・・・(b) の少なくとも1つを有するか、または該配列に対応する
相補的配列を有するものである。このオリゴヌクレオチ
ドは化学合成で得られるものあるいは天然のもののどち
らでも良い。また、プライマーは特に検出用として標識
されていなくても良い。
【0008】プライマーが規定している増幅領域は、5
0塩基から2000塩基、望ましくは100塩基から1
000塩基となれば良い。鋳型依存性ヌクレオチド重合
反応には、耐熱性DNAポリメラーゼを用いるが、この
酵素の起源については90〜95℃の温度で活性を有し
ていれば、どの生物種由来であっても良い。熱変性温度
は90〜95℃、プライマーをハイブリダイズさせるア
ニーリング操作は37〜65℃、好ましくは40〜60
℃、重合反応は50〜75℃、好ましくは70〜75℃
であり、これを1サイクルとして20から40サイクル
行って増幅させる。
【0009】乳酸菌の検出は、酵素反応液をそのままポ
リアクリルアミドゲル電気泳動又はアガロースゲル電気
泳動にかけることによって行われ、増幅されたヌクレオ
チド断片の存在及びその長さが確認できる。その結果か
ら、検体中にプライマーが認識すべき配列を持ったヌク
レオチドが存在しているかどうかを判定することができ
る。この判定は、そのまま乳酸菌の有無を判定するもの
となる。増幅されたヌクレオチド断片の検出には、その
他の電気泳動やクロマトグラフィーも有効である。
【0010】
【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明す
る。 実施例1 検体の調製 ラクトバチルス・ブレビス(JCM1059T )の培養
液100μlについてコロニーカウントによる菌数測定
を行う一方、同濃度の菌体培養液100μlに150μ
lの溶菌液A〔(1.67M sucrose/0.67% 2-mercaptoeth
anol/ 0.33 mg/ml zymolyase/ 0.33 mg/ml lysozyme/0.
67μg/ml mutanolysin)in 16.7 mM potassium phosphat
e buffer(pH 6.8 )〕を添加し、37℃で60分処理し
た後、150μlの溶菌液B〔(13.3mM MgCl2/2.7% t
riton X-100/2.7 % diethyl pyrocarbonate/0.27 mg/m
l proteinase K/6.7% SDS) in 10 mM potassium phosp
hate buffer(pH 6.8)〕を添加し、70℃で10分処理
して溶菌を行った。この後、フェノール/クロロホルム
抽出,エタノール沈澱処理を行って核酸成分を精製し、
10μlの緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)/1mM EDTA)に
溶かし、これを検体とした。
【0011】プライマーの合成 ラクトバチルス・ブレビス(JCM1059T ) 5S rR
NA遺伝子の配列(Woese, C.R. et al. J. Mol. Evol. 8,
143-153(1976)) から下記の配列を選び、それと同じ配
列を持つオリゴヌクレオチドを化学合成した。なお、D
NA合成および精製は宝酒造株式会社に委託した。 5’−TGTGGTGGCGATAGCCTGAA−3’・・・(a) 5’−GCGTGGCAACGTCCTATCCT−3’・・・(b)
【0012】PCR法 10x反応用バッファー,dNTP溶液及び耐熱性DN
AポリメラーゼはGene-Amp kits(Perkin Elmer Cetus社
製)を使用し、同説明書通りの量を用いた。反応条件は
以下の通りである。 熱変性:94℃,1分 アニーリング:50℃,2分 重合反応:72℃,1.5分 熱変性からアニーリングを経て重合反応にいたる過程を
1サイクルとし、これを35サイクル行った。
【0013】乳酸菌の検出 反応液から増幅されたヌクレオチド断片を検出する方法
として、縦型の8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動
(ゲルサイズ80x80mm)を行った。PCR処理後
の反応液から10μlを取り出し、電気泳動を行った。
なお、電気泳動はTBE溶液(89mM Tris/89mM boric a
cid/2mM EDTA(pH 8.0)) を用い、43V/cmで12分
行った。その後、ゲルを臭化エチジウム溶液(0.5μg/
ml)にて染色し、紫外線照射によって視覚化した。反応
液の他に分子量マーカーの泳動も同時に行い、相対移動
度の比較により、ヌクレオチドの長さを算出した。
【0014】結果 前述したように、ラクトバチルス・ブレビスの5S rRNA
遺伝子は既に塩基配列が明らかにされており、本発明の
オリゴヌクレオチド、すなわちプライマーがPCR法に
より増幅されてくるヌクレオチドの長さは推定できる。
それによると、プライマー(a)と(b)では、117
塩基対(bp) の長さのヌクレオチドが増幅されてくる筈
である。図1に示したものは、様々の濃度のラクトバチ
ルス・ブレビスを本法によって検出したものである。同
図からわかるように、増幅されたヌクレオチドの長さは
推定された通りであり、プライマー(a)と(b)が5
SrRNA 遺伝子の標的としている領域を正しく増幅して
きていることを示している。さらに、100μlのサン
プル中にわずか1菌体(cell) でも存在すれば、検出可
能であることがわかる。
【0015】実施例2 本法を実際の工場の現場等で用いることを考えた場合、
まず食品から菌体を捕獲し、検体の量を100μlにま
でスケールダウンする必要がある。そこで、以下の検討
を行った。 方法 250mlのビールに様々な数のラクトバチルス・ブレビ
スを加え、デュラポア親水性メンブレンフィルター(直
径47mm、孔径0.22μm、Millipore 社製)で吸引濾
過した後、フィルターを10ml容器のチューブに入れ5
mlのエタノールを添加した。30分振とうした後、フィ
ルターを取り除き、チューブ内のエタノールを濃縮乾固
した。しかる後、100μlの滅菌水に溶かした。これ
を菌体懸濁液として実施例1に記載した方法でラクトバ
チルス・ブレビスの検出を行った。その結果を図2に示
す。
【0016】結果 図から明らかなように、図1の場合と同様に、117bp
の長さのヌクレオチドの増幅がみられ、250mlのビー
ル中にわずか30菌体存在すれば、検出できることがわ
かる。なお、実施例1に比べて検出感度が落ちる原因と
しては、菌体がフィルター内に留まって完全には洗い出
されないことが最大の原因であると考えられる。何故な
らば、ビールによる濾過操作を省いて、菌体とフィルタ
ーをそれぞれ10ml容チューブに入れた場合には、検出
感度の低下はほとんどないからである。
【0017】実施例3 実施例1及び実施例2で得られた結果が乳酸菌に対し選
択的なものかどうかを確かめるため、乳酸菌及びその他
の食品一般細菌、そして酵母について比較検討した。方
法は、実施例1に示したものと同じであるが、各菌体の
濃度は100μlのサンプル当たり104cells以上とな
るようにした。結果を表1に示す。表1において、11
7bpの長さのヌクレオチドの増幅がみられたものは+、
増幅がみられなかったものは−と表示した。ラクトバチ
ルス・ブレビスをはじめ乳酸菌については117bpの長
さのヌクレオチドの増幅が認められるが、その他の微生
物については増幅が認められないことから乳酸菌を容易
に区別し、選択的に検出できることがわかった。
【0018】
【表1】 表1 ──────────────────────────────────── 菌株名 117bpの増幅 ──────────────────────────────────── Lactobacillus brevis JCM 1059T + Lactobacillus pastorianus JCM 1113 + Lactobacillus casei JCM 1163 + Pediococcus damnosus JCM 5886 T + Corynebacterium facians IAM 1079 − Microbacterium flavum IAM 1642 − Sarcina lutea IFO 3232 − Streptococcus lactis IFO 12007 − Pseudomonas fragi IAM 1650 − Escherichia coli JM109 − Saccharomyces cerevisiae W34 − ────────────────────────────────────
【0019】
【発明の効果】本発明では遺伝子の増幅を行うにあた
り、PCR法を用いているため、乳酸菌の検出において
遺伝子増幅による高い検出感度と、2つあるいはそれ以
上のプライマーで反応が規定されることによる高い選択
性を得ることができる。また、高い検出感度のため多量
の検体を必要とせず、しかも検体の前処理が簡便で済
む。その上、本発明によれば、反応時間が短く、検出も
簡単な機材だけで行うことができ、操作も容易なため、
同定までの時間を大幅に短縮できる。例えば実施例の場
合、PCR反応時間が約5時間、検出にかかる時間が約
40分である。また、乳酸菌の検出にポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動又はアガロースゲル電気泳動と臭化エチ
ジウムによる核酸染色法を用いることで、プライマー等
に標識せずに検出を行うことができる。しかも、核酸の
長さが確認できるので、結果の信頼性が高いものとな
る。
【0020】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のポリアクリルアミドゲル電気泳動
の結果を示しており、図中のレーンはMがDNAサイズ
マーカー(φX174/HaeIII、digest) 、Nがネガテ
ィブコントロール(菌数0)、1がラクトバチルス・ブ
レビスの菌数1個、2が同菌数8個、3が同菌数50
個、4が同菌数103 個、5 が同菌数104 個を示す。
【図2】 実施例2のポリアクリルアミドゲル電気泳動
の結果を示しており、図中のレーンはMがDNAサイズ
マーカー(φX174/HaeIII、digest) 、Nがネガテ
ィブコントロール(菌数0)、1がラクトバチルス・ブ
レビスの菌数5個、2が同菌数30個、3が同菌数10
2 個を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/10 C12Q 1/04 C12Q 1/68 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) WPI/L(DIALOG) SwissProt/PIR/GeneS eq

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検体中に存在する乳酸菌を選択的に検出
    するためのオリゴヌクレオチドまたは乳酸菌の5S rRNA
    遺伝子をコードするヌクレオチド配列を標的とし、その
    ヌクレオチド配列と相補的となるように化学合成された
    オリゴヌクレオチドであって、該ヌクレオチドが以下の
    配列群 5’−TGTGGTGGCGATAGCCTGAA−
    3’・・・(a) 5’−GCGTGGCAACGTCCTATCCT−
    3’・・・(b) の少なくとも1つを有するか、または該配列に対応する
    相補的配列を有することを特徴とするオリゴヌクレオチ
    ド。
  2. 【請求項2】 オリゴヌクレオチドが、請求項1に記載
    された各オリゴヌクレオチドの配列のうち、少なくとも
    連続した10塩基以上を含むものであるオリゴヌクレオ
    チド。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載された配列群のうち、少
    なくとも1つを有するオリゴヌクレオチドを鎖長反応の
    プライマーとして機能させ、標的ヌクレオチド配列を選
    択的に増幅させた後、検体内に認識されるべき配列が存
    在しているか否かを判定することにより乳酸菌の検出を
    行うことを特徴とする乳酸菌の検出方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の方法における反応物から
    電気泳動又はクロマトグラフィーにより、増幅されたヌ
    クレオチドを分離し、該ヌクレオチドの分子量を決定す
    ることにより乳酸菌の検出を行う請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 請求項3記載の方法における反応物を用
    い、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はアガロース電
    気泳動及び臭化エチジウムによる核酸染色を行うことに
    より乳酸菌の検出を行う請求項3記載の方法。
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