JP3065468B2 - ポリベンザゾール繊維の製造方法 - Google Patents

ポリベンザゾール繊維の製造方法

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JP3065468B2
JP3065468B2 JP5304112A JP30411293A JP3065468B2 JP 3065468 B2 JP3065468 B2 JP 3065468B2 JP 5304112 A JP5304112 A JP 5304112A JP 30411293 A JP30411293 A JP 30411293A JP 3065468 B2 JP3065468 B2 JP 3065468B2
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エル フェリイ チモシー
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリベンズオキサゾール
もしくはポリベンズチアゾールポリマーから成る繊維の
生産性が優れた製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ライオトロピック液晶性のポリベンズオ
キサゾールとポリベンズチアゾールポリマーは熱可塑性
を示さない。これらはドライ・ジエット・ウェット・ス
ピニング法により繊維化される。すなわち、ポリベンザ
ゾールポリマーと酸溶媒を含むドープを紡糸口金より押
し出し、エアギャップで引き伸ばし、溶媒を希釈し、ポ
リマーを溶解させない非溶媒と接触させることによって
凝固する方法による。
【0003】紡糸設備が高価であるために、紡糸の速度
は可能な限り高速にする事が経済的観点から望ましい。
また単糸デニールを小さくして多くのフィラメントで繊
維を形成させる方が、大きな単糸デニールで少ないフィ
ラメントで繊維を形成させた場合よりも優れた或は安定
した物理的性質を有することから、単糸デニールは可能
な限り小さくする事が好ましい。
【0004】しかしながら、高速の単糸デニールが細い
紡糸においては、糸切れが頻繁に起こる。高速で単糸デ
ニールが小さい紡糸を糸切れが頻雑に起こらないように
生産する技術を進歩させる必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリベンズ
オキサゾールもしくはポリベンズチアゾールポリマーか
ら成る繊維を、高速でかつ単糸デニールが小さい条件に
おいても安定に製造する方法を提供せんとするものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、ポリ燐
酸溶媒とポリベンズオキサゾール、もしくはポリベンズ
チアゾールもしくはこれらの共重合ポリマーであるライ
オトロピック・ポリベンザゾールポリマーからなる液晶
性ドープから得られる繊維の製造方法において、次の工
程から成る製造方法。 (1)2つの面とそれらを繋ぐ複数の孔がある紡糸口金
よりドープを押し出す。この紡糸口金の特徴として
(a)各々の孔はドープが流入する導入孔とドープが流
出するキャピラリーから成り、(b)導入孔径とキャピ
ラリー径の大きさは少なくとも平均で10kmの完成糸
が糸切れが起きることなしに造ることが出来るように選
ばれており、この紡糸口金より複数本のドープ・フィラ
メントを形成し、 (2)このドープ・フィラメントをドローゾーンで少な
くともおよそ20倍以上のスピンドロー比で延伸し、 (3)次より如何なる順番でもよいが、(a)該フィラ
メントより大部分のポリ燐酸を洗い出し、(b)洗浄し
たフィラメントを乾燥させ、(c)少なくとも毎分15
0m以上の速度で巻き取り これらの工程によりフィラメントの単糸の太さが平均で
17ミクロン以下の繊維を糸切れが10kmでおよそ1
回未満平均で起きるように製造する方法、である。紡糸
口金の導入孔径がキャピラリー径よりも大きく、かつキ
ャピラリー径と等しくなるまでの孔径が次第に小さくな
る孔径変化コーンを少なくとも1つ設けた上記の製造方
法。キャピラリー直前の孔径変化コーンの導入角がおよ
そ90度以下である上記の製造方法。キャピラリー直前
の孔径変化コーンの導入角がおよそ60度以下である上
記の製造方法。キャピラリー直前の孔径変化コーンの導
入角がおよそ30度以下である上記の製造方法。キャピ
ラリー直前の孔径変化コーンの導入角がおよそ20度以
下である上記の製造方法。スピンドロー比が少なくとも
およそ40以上である上記製造方法。スピンドロー比が
少なくともおよそ50以上である上記製造方法。スピン
ドロー比が少なくともおよそ75以上である上記製造方
法。少なくとも毎分200m以上の速度で巻き取る上記
製造方法。少なくとも毎分400m以上の速度で巻き取
る上記製造方法。
【0007】紡糸口金の孔径とキャピラリー断面の導入
角を適正化することで、高速で単糸デニールが小さい紡
糸を糸切れが起こらない十分な安定性にする事ができ
る。キャピラリー径とスピンドロー比を選択すること
で、所望の単糸繊度の繊維を造ることができる。キャピ
ラリー当りのドープ吐出量とスピンドロー比を適正化す
る事で所望の巻き取り速度にする事ができる。
【0008】本発明はライオトロピック液晶性ポリベン
ザゾールポリマー、すなわちポリベンゾオキサゾール、
ポリベンゾチアゾールもしくはこれらの共重合ポリマー
を含む紡糸原液を使用する。ここで使用するポリベンザ
ゾールポリマーとは、Wolfeらの「Liquid Crystalline
Polymer Compositions,Process and Products」U.S.Pat
ent 4,703,10,(October 27,1987) ;Wolfe らの「Liqui
d Crystalline PolymerCompositions,Process and Prod
ucts」U.S.Patent 4,533,692 (August 6,1985);Wolfe
らの「Liquid Crystalline Poly (2,6-Benzothiazole)
Compositions,Prosess and Products」U.S.Patent 4,53
3,724 (August 6,1985);Wolfe らの「Liquid Crystall
ine Polymer Compositions,Process and Products」U.
S.Patent 4,533,693(August 6,1985) ;Evers 「Thermo
xdatively Stable Articulated p-Benzobisoxazozl p-B
enzobisthiazole Polymers」U.S.Patent 4,359,567 (No
vember 16,1982) ;Tsaiらの「Method for Making Hete
rocyclic Block Copolymer Compositions,Process and
Products」U.S.Patent 4,578,432 (March 25,1986) ;1
1 Ency.Poly.Sci.& Eng.,「Polybenzothiazoles and Po
lybenzoxazoles 」,601(J.Wiley & Sons 1988) and W.
W.Adams ら「The Materials Science and Engineering
of Rigid-Rod Polymers 」(Materials Research Societ
y 1989)に記載されているようなPBO、PBTおよび
PBO、PBTのランダム、シーケンシャル、ブロック
共重合ポリマー。
【0009】ポリマーは化学構造式1(a)に代表され
るようなAB型かつ/または化学構造式1(b)に代表
されるようなAA/BB型単位であってもよい。
【0010】
【化1】
【0011】ここに、各々のArはライオトロピック液
晶ポリマー(すなわち”臨界濃度点以上で液晶ドメイン
を形成する)ポリベンザゾールポリマーから選ばれた芳
香属基は縮合した多環基環若しくは縮合していない多環
基であってもよい、但し1つの6員環が好ましい。大き
さは制約はないが、芳香属基は18個以下の炭素原子を
含む事が好ましく、より好ましくは12個以下の炭素原
子を含む事が好ましく、さらに好ましくは6個以下の炭
素原子を含む事が好ましい。AA/BB型単位のArl
は1,2,4,5−フェニレン構造もしくはその類似体である
事が好ましい。AB型単位のArは1,3,4−フェニレン
構造もしくはその類似体である事が好ましい。各々のZ
は互いが無関係に酸素原子もしくは硫黄原子である。各
々のDMは互いが無関係に直接結合もしくはライオトロ
ピック液晶ポリマーとなるポリベンザゾールの中から選
ばれた2価の有機構造である。2価の構造単位として
は、前述の芳香属基(Ar)が好ましい。特に、1,4 −
フェニレン構造もしくはその類似体が好適である。各々
のアゾール環の窒素原子とZ構造は隣接する芳香属基の
炭素原子と結合して、5員アゾール環と芳香属基が縮合
した形になっている。AA/BB型単位のアゾール環
は、引用文献中の11 Ency.Poly.Sci.& Eng.,「Polybe
nzothiazoles and Polybenzoxazoles 」, 601(J.Wiley
& Sons 1988)に図示されているシス型もしくはトランス
型の何れであってもよい。
【0012】ポリマーはAB−PBZ繰り返し単位もし
くはAA/BB−PBZ繰り返し単位で構成される事が
好ましく更に好ましくは本質的にAA/BB−PBZ繰
り返し単位で構成される事が好ましい。ポリマー中のア
ゾール環はZが酸素原子であるオキサゾール環である事
が好ましい。
【0013】本発明で用いる繰り返し単位は構造式2
(a)−(h)に示したものが好ましい。より好ましく
は構造式2(a)−(f)に示したものが良く、更に好
ましくは構造式2(a)−(d)に示したものが好適で
ある。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】各々のポリマーは少なくとも平均でおよそ
25以上の繰り返し単位を有する事が好ましい、より好
ましくは少なくともおよそ50以上の繰り返し単位を有
する事が好ましく、更に好ましくは少なくともおよそ1
00以上の繰り返し単位を有する事が好ましい。AA/
BB−PBZ剛直鎖の極限粘度数は、25℃メタンスル
フォン酸の測定で、少なくともおよそ10dl/g以上
である事が好ましい。より好ましくは少なくともおよそ
15dl/g以上である事が好ましく、更に好ましくは
少なくともおよそ20dl/g以上である事が好まし
い。ある用途に対しては極限粘度数は、少なくともおよ
そ25もしくは30dl/gであることが最適である。
極限粘度数は、60dl/gであってもよいが、40d
l/gである事が好ましい。半剛直なAB−PBZポリ
マーの極限粘度数は、少なくともおよそ5dl/g以上
である事が好ましく、更に好ましくは少なくともおよそ
15dl/g以上である事が好ましい。
【0017】このポリマーあるいはコポリマーはポリ燐
酸に溶解し溶液若しくはドープとする。ポリ燐酸は80
重量パーセント以上の五酸化二燐を含んでいる事が好ま
しい、より好ましくは85重量パーセント以上の五酸化
二燐を含んでいる事が好ましい。ポリ燐酸は、多くとも
90重量パーセント以下の五酸化二燐を含んでいる事が
好ましい、より好ましくは多くとも88重量パーセント
以下の五酸化二燐を含んでいる事が好ましい。最も好ま
しい五酸化二燐の含有量は87から88重量パーセント
の間である。
【0018】ドープはドープの液晶ドメインを形成する
のに十分な濃度のポリマーを含む必要がある。ポリマー
濃度は少なくともおよそ7重量パーセント以上である事
が好ましい。より好ましくは少なくともおよそ10重量
パーセント以上である事が好ましく、更により好ましく
は少なくともおよそ14重量パーセント以上が好適であ
る。最大ポリマー濃度は主として、ポリマーの溶解性や
ドープ粘度といった実施可能性の制約を受ける。ポリマ
ー濃度30重量パーセントのドープを用いることはほと
んどなく、通常は20重量パーセント以下のドープを使
用する。
【0019】本発明に適したポリマーもしくはコポリマ
ーおよびドープは次のような公知の手法で合成される。
合成手法としては、WolfeらのU.S.Patent 4,533,693(Au
gust6,1985) ;SybertらのU.S.Patent 4,772,678(Septe
mber 20,1988) ;HarrisのU.S.Patent 4,847,350(July
11,1989) ;Gregory のU.S.Patent 5,089,591(February
18,1992);Ledbetter らの“An Integrated Laborator
y Process for Preparing Rigid Rod Fibers from Mono
maers”「The Materials Science and Engineering of
Rigid-Rod Polymers 」の253-64頁(Materials Research
Society 1989)に記載されている。要するに、適正なA
A型とBB型あるいはAB型のモノマーを酸化性がなく
脱水性の酸溶媒中で非酸素雰囲気下で、勢い良く高せん
断速度で撹はんさせながら、温度は120℃以下から少
なくともおよそ190℃迄ステップワイズもしくはラン
プ制御で昇温させながら反応させる。AA型モノマーの
例としてテレフタル酸およびこれらの類似体が挙げられ
る。BB型モノマーの例として、主に酸の塩として保管
される4,6 −ジアミノレゾルシノール、2,5 −ジアミノ
ヒドロキノン、2,5 −ジアミノ−1,4 −ジチオベンゼン
およびこれらの類似体が挙げられる。AB型モノマーの
例として主に酸の塩として保管される3−アミノ−4−
ヒドロキシベンゾイックアシド、3−ヒドロキシ−4−
アミノベンゾイック、3−アミノ−4−トリベンゾイッ
クアシド、3−チオ−4−アミノベンゾイックアシドお
よびこれらの類似体が挙げられる。
【0020】最も高い生産性で紡糸するためには、ドー
プは均一性が高く、団体粒子を含んでいないことが肝要
である。これらは、以下の公知の多くの方法の組み合わ
せにより達成されるが本発明は以下の方法により制約を
受けるものではない。異物を濾過するための金網もしく
は/およびシリカサンド層、金属を削ったものや粒子、
ガラス層や焼結セラミックスや焼結金属様なせん断濾過
を用いることができる。ドープの均一性をさらに向上さ
せるための単軸、2軸スクリュー押し出し機、スタティ
ックミキサーそのたの混合装置を利用することができ
る。
【0021】ドープは紡糸口金を通して紡糸される。図
1に示す様に平板あるいは洋裁で用いるシンブルの形状
をした本体に、複数の貫通孔を設けてある。紡糸口金に
幾つ孔を開けるかは本発明に制約を与えるものてはない
が、経済的観点より最大限多くの孔を設ける事が望まし
い。孔の数は100もしくは1000もしくはそれ以上
でもよく、孔配列は円周配列、格子配列もしくはそれら
以外のどの様な配列であってもよい。紡糸口金はステン
レス鋼のようなドープにより分解される事の無い耐蝕性
に優れた材料で造ってよい。
【0022】図1に示すように、各々の孔は以下によっ
て構成される。すなわち、 (a) 入口1、 (b) キャピラリー断面にさしかかる前の角度θで窄
む孔径変化コーン2があってもよい。 (c) キャピラリー断面3は、孔径が最も細い部分で
両壁面はおおよそ平行である。 (d) 出口4。 入口は、面取りをつけることができる、面取りは上に凸
もしくは、下に凸の曲面であってもよく一定角度であっ
てもよい。
【0023】キャピラリー断面は孔出口の直上であるた
めに、通常出口孔径と同じ直径になっている。キャピラ
リー断面の長さは本発明においては限界値はない。キャ
ピラリー直径の少なくともおよそ0.1倍以上が好まし
く、より好ましくはキャピラリー直径の少なくともおよ
そ0.5倍以上がよい、更に好ましくはキャピラリー直
径の少なくともおよそ0.8倍以上がよい。また、キャ
ピラリー直径の少なくともおよそ10倍以下が好まし
く、より好ましくはキャピラリー直径の少なくともおよ
そ5倍以下がよい、更に好ましくはキャピラリー直径の
少なくともおよそ3.5倍以下がよい。口金の孔すべて
が同じ直径即ち直径変化コーンがなく出口と入口の間す
べてがキャピラリー断面であってもよい。しかしながら
入口を広くし孔径変化コーンを設けて、出口に至るキャ
ピラリー断面に向けて細くする事が好ましい。
【0024】キャピラリー断面にさしかかる導入角θは
図1に示すようにキャピラリー断面直上の孔径変化コー
ンの壁面のなす角である。孔径変化コーンは幾つかの異
なる角度で構成することが出来るが本発明における重要
条件はキャピラリー断面直上の導入角である。
【0025】ドープは、口金の入口、キャピラリー断面
を通過し出口より押し出されドローゾーンに至る。紡糸
口金孔のサイズと形状は以下に述べるように孔を通過し
たドープ流動の安定性が最も良くなる様に選定する事が
好ましい。
【0026】細デニール(単糸デニールが小さい)フィ
ラメントを高速で紡糸するには2通りの方法がある。1
つは、孔径が比較的小さい紡糸口金を用いて比較的小さ
いスピンドロー比で紡糸する方法であり、もう一つは孔
径が比較的大きい紡糸口金を用いて比較的大きなスピン
ドロー比で紡糸する方法である。大孔径高ドロー比プロ
セスと小孔径低ドロー比プロセスの間に明確な区別があ
るわけではなく相対的な傾向として連続的なものを表わ
しており、両者の区別は便宜的なものである。小孔径低
ドロー比プロセスの場合、キャピラリー断面と出口の孔
径はおよそ0.5mm以下が好ましい。より好ましくは
およそ0.4mm以下、更に好ましくはおよそ0.35
mm以下が良い。この際の紡糸口金出口直径は、通常少
なくともおよそ0.05mm以上、0.08mm以上が
好ましい。大孔径高ドロー比プロセスの場合、キャピラ
リー断面と出口の孔径は少なくともおよそ0.5mm以
上が好ましい。より好ましくはおよそ1mm以上、更に
好ましくはおよそ1.5mm以下が良い。この際の紡糸
口金出口直径は、5mm以下が好ましく、3.5mm以
下がより好ましい。
【0027】ドープが紡孔を通過する際にせん断にさら
される。最大のせん断歪み速度は普通はキャピラリー断
面で生じる。キャピラリーのせん断速度(Y)[se
c-1]は次式で与えられる。 Y=8vc/Dc ここに、vcはキャピラリー断面での平均流束[m/se
c]、Dcはキャピラリー断面の直径[m]である。キャ
ピラリー断面と出口の孔径が小さくなるに連れてキャピ
ラリー中のドープ速度は速く成りドープにかかるせん断
歪みも速くなる。せん断速度が速くなるに連れて孔形状
はより重用になってくる。
【0028】重量分率で14%のシスPBOポリマーを
とポリ燐酸とから成るドープは160℃から180℃で
は、キャピラリー中でのせん断速度が500sec-1 未満
である限りは導入角は180°であってもよい。せん断
速度が1500sec-1 になると導入角を90°以下にす
る必要がある。せん断速度が2500sec-1 になると導
入角を60°以下にする必要がある。せん断速度が35
00sec-1 になると導入角を30°以下にする必要があ
る。せん断速度が5000sec-1 になると導入角を20
°以下にする必要がある。もしこれらの条件よりも導入
角が大きい場合製糸の安定性が悪く成りがちである、ま
た高スピンドロー比で糸切れが起こり易くなる。図4〜
10に異なる繊維太さ毎のキャピラリー中でのせん断速
度と紡糸速度との関係を示す。
【0029】上述のドープより粘度が高いものを用いる
場合には導入角がより鋭角な紡糸口金を用いるにする必
要がある。粘度が低いものを用いる場合には導入角がよ
り鈍角な紡糸口金を用いることもできる。粘度は、温
度、せん断速度、ポリ燐酸とポリベンザゾールポリマー
の分子量、ポリマー濃度といった要因の影響を受ける。
例えば、紡糸温度が180℃を越える場合には上述の条
件で決められたせん断速度と導入角の制約よりも高せん
断速度で紡糸することが可能である。
【0030】紡糸口金の孔形状が効果を発揮する理由は
次のように考えている。概して紡糸ドープは粘度が非常
に高い。例えば、重量分率で14%のシス−ポリベンツ
オキサゾールポリマー(極限粘度数30dl/g)をと
ポリ燐酸とから成るドープの150℃におけるゼロ・シ
アー粘度は1,000,000 ポアズにもなる。紡糸工程ではド
ープ粘度は数千ポアズのオーダー迄小さくなる。但し、
この粘度は湿式紡糸としては依然として異常に高い。そ
こで我々は紡糸口金の設計を溶融紡糸と同様な考え方を
する必要が有ると考え、さらにドープの液晶性に起因す
る非常に特異な挙動や弾性効果が非常に大きい特徴を十
分考慮する必要がある。我々は、紡糸ドープは球とみな
した直径でおよそ100ミクロンメートルほどのドメイ
ンを形成し、紡糸口金中のせん断変形においてもこのド
メインは容易には壊れないと考えている。紡糸における
最大スピンドロー比は、主としてこのドメインの延伸性
により決まる。と考えている。そこで紡糸口金中でドメ
インが大変形を起こした場合、エアギャップ中ではドー
プが紡糸口金内で既に大きな歪みを与えられてしまって
いるために最大スピンドロー比が小さくなってしまう。
紡糸口金の孔形状が前述の基準角度から外れる場合、繊
維表面のドメイン変形は繊維中心部のドメイン変形に比
べて大きくなり、繊維表面のドメイン変形が限界に達し
た時に繊維全体の糸切れが起きる。この理由として図2
に示すような繊維破断端がしばしば観察される。
【0031】図3(a)−(d)に好ましい紡糸口金孔
を示す。孔形状は図3(a)−(b)に示すように1段
の孔径変化コーンを有しても良く、図3(c)に示す様
に多段の孔径変化コーンを有しても良い。但し、キャピ
ラリー断面のすぐ前の孔径変化コーンの角度だけを導入
角と呼ぶことにする。
【0032】ドープの代表的な軟化温度は熱可塑性樹脂
の軟化と同程度である。ドープは軟化温度より高く分解
温度より低い温度で紡糸口金から吐出する事が好まし
い。紡糸温度は吐出条件のせん断粘度で1000から10000
ポアズに設定する事が好ましい。多くのドープで紡糸温
度は低くてもおよそ120℃以上、より好ましくは14
0℃以上が好ましい。また、紡糸温度は高くともおよそ
220℃以下、より好ましくはおよそ200℃以下が好
ましい。例えば、重量分率で14%のシス−PBOポリ
マー(極限粘度数30dl/g)とポリ燐酸とからなる
ドープの場合、紡糸温度はおよそ130−190℃が好
ましい、より好ましくは160−180℃が好ましい。
【0033】ドープは紡糸口金から押し出され、紡糸口
金と凝固ゾーンの間の空隙に入る。この空隙は通常“エ
アギャップ”と呼ばれているが空気を必要とするもので
はない。エアギャップは凝固に影響を与えたり障害を来
すものでなければ何を含んでいてもよく、空気、窒素、
アルゴン、ヘリュウム、二酸化炭素の様なものであって
もよい。エアギャップではドープの引き伸ばしを行うド
ローゾーンを含んでおり、スピンドロー比を少なくとも
およそ2以上、好ましくは少なくともおよそ20以上、
一層好ましくは少なくともおよそ40以上、より好まし
くは少なくともおよそ50以上、さらに好ましくは少な
くともおよそ60以上が良い。スピンドロー比はフィラ
メントの引取速度とドープのキャピラリーでの平均流速
との比で定義される。引き伸ばしはこの後に述べるよう
に単糸直径が所望の大きさになるだけ十分に行う必要が
ある。紡糸口金のキャピラリーサイズとスピンドロー比
に対する完成糸直径の関係を図4〜10に示す。エアギ
ャップの温度は少なくともおよそ10℃以上が好まし
い、より好ましくは少なくともおよそ50℃以上が良
い。エアギャップの温度は高くともおよそ200℃以下
が好ましい。より好ましくは高くともおよそ150℃以
下が良い。紡糸口金からエアギャップに押し出されたド
ープは凝固される前にドープの固化温度以下に冷却され
る事が好ましい。エアギャップの長さは通常10cm以
上100cm以下であるが、必要に応じてこの範囲より
も短くしたり長くしたりすることが出来る。
【0034】フィラメントがドローゾーンから出る際に
糸速度は少なくともおよそ150m/分でなければなら
ない。フィラメントがドローゾーンから出る際に糸速度
は少なくともおよそ200m/分が好ましい、より好ま
しくは400m/分、更に好ましくは600m/分以上
が良い。およそ1000m/分もしくはそれ以上の速度
での紡糸も可能である。フィラメントは残留した酸を取
り除くために洗浄され、ヤーンもしくは単繊維として巻
き取られる。それらは通常溶媒を希釈しポリベンザゾー
ルポリマーに対しては溶解性がない流体と接触させる事
により洗浄される。流体は水蒸気のような気体であって
もよいが、好ましくは液体が良くより好ましくは水溶液
が良い。洗浄は1段の工程でも浴、多段の工程でも良
い。水洗を巻き取りの前あるいは後にそれぞれ何段行っ
てもよいまた、巻き取りの前後に分けて行っても良い。
【0035】液浴は、特開昭63−12710;特開昭
51−35716;特公昭44−22204に組み込ま
れた様々な形式のものを用いて良い。また、例えばGuer
tinのU.S.Patent 5,034,250(July 23,1991)に記載され
ているような2つのローラーに繊維を走行させる間にス
プレーする方法を組み合わせて用いてもよい。洗浄され
た繊維は2%以下の酸を含む用にすることが好ましい、
より好ましくは0.5%以下にするとよい。
【0036】洗浄された繊維は公知の方法により乾燥さ
せる。乾燥の方法としては過熱炉を通すあるいは過熱ロ
ーラーに巻き付けて通過させるあるいは減圧下にさらす
方法等が用いられる。乾燥は繊維へのダメージを避ける
ために300℃以下の温度で行う事が望ましい。好まし
い洗浄と乾燥の工程の例はChauらのU.S.Ser.No.07/929,
272(出願August 13,1992) に示されている、本発明では
この方法を合わせて用いることができる。
【0037】本発明では必要に応じて熱処理を行うこと
ができる。例えば、良く知られた加熱炉の中を張力下で
通過させるポリベンザゾールの熱処理手法がある。Chen
evy,のU.S.Patent4,554,119(November 19,1985) の例に
見られる手法を合わせて用いることができる。
【0038】完成糸の平均単糸直径は18μm以下であ
る。繊維の単糸直径は好ましくは17μm以下、より好
ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下
が良い。繊維デニールは、3.5dpf(単糸当たりの
デニール)が好ましい。繊維の単糸デニールは3.2d
pf以下が非常に好ましく、より好ましくは2.5dp
f以下、さらに好ましくは1.6dpf以下が良い。平
均単糸直径が10μmあるいは8μm以下の繊維も得る
ことができるが、フィラメント直径および単糸デニール
の最小値は実用面での制約を受ける。各々のフィラメン
トは平均で通常およそ3μm以上単糸デニールは0.1
dpf以上である。
【0039】本発明では多くの異なる条件を組み合わせ
て限定された実施条件を行うことができる。一つの好ま
しい組み合わせた条件として、これ迄に述べた様に紡糸
口金を導入角が30°以下にしてキャピラリー径を0.
1mmから0.5mmの間とし、これ迄に述べた様にス
ピンドロー比を20以上とする。
【0040】本発明では所望の繊維を比較的高度な工程
安定性で造ることができる。工程は少なくともおよそ1
0km以上単糸切れを起こすことなく紡糸することがで
きることが好ましく、より好ましくは少なくともおよそ
100km、更に好ましくは少なくともおよそ1000
km以上単糸切れを起こすことなく紡糸することができ
ることが良い。平均の引っ張り強度は少なくともおよそ
1GPa以上が好ましく、より好ましくは少なくともお
よそ1.75GPa以上、更に好ましくは2.75GP
a以上、最も好ましくはおよそ4.10GPa以上が良
い。熱処理後の平均の引っ張り弾性率は少なくともおよ
そ260GPa以上が好ましく、より好ましくは少なく
ともおよそ310GPa以上が良い。
【0041】
【実施例】以下の実施例は説明だけの目的であり、これ
らにより本発明の明細書および特許請求の範囲に何れに
対しても制約を与えるものではない。断りがない場合に
は分量およびパーセンテージはすべて重量で示す。
【0042】紡糸における糸切れ頻度は、2台もしくは
それ以上の紡糸機で計数しある一定時間での1ポジショ
ン当りの糸切れ回数で表わす。
【0043】ポリベンザゾールの極限粘度数は30℃の
メタンスルフォン酸溶液に対して求めた。
【0044】実施例1 極限粘度数21dl/gのシス−ポリベンツオキサゾー
ル(極限粘度数21)の14.7重量%を溶かしたポリ
燐酸(五酸化二燐重量%84.3)溶液を、2軸押し出
し機中で170℃で混合・脱気する。ドープは166孔
の紡糸口金より押し出される。紡孔のキャピラリー径、
導入角の条件およびスピンドロー比を表1に示す。押し
出された繊維状のドープは紡糸口金から55cm下に設
けられた紡糸漏斗に導かれおよそ22℃に保たれた凝固
水を通す。繊維中は洗浄された後加熱ロール上で乾燥さ
せて巻き取る。
【0045】実施例2 14wt%のシス−PBOポリマーをポリ燐酸溶媒に溶
かし均一混合させた後、金属メッシュとサンド層を通
し、毎分2.4gの吐出量で10孔の紡糸口金より紡糸
温度165℃で押し出す。紡糸口金のキャピラリー径は
0.20mmで孔形状は図−3(b)に示す、導入角
(θ)が20°のものを用いた。キャピラリー断面での
せん断速度およそ2600sec-1 であった。繊維を紡糸
漏斗に導き水洗した後紡速200m/分で巻き取り、さ
らに水洗乾燥を行った。この紡糸におけるスピンドロー
比は52であった。ここで得られた繊維の平均単糸径は
およそ11.5μmであった。紡糸は単糸切れなしに1
20分(24km)以上連続して行うことが出来た。
【0046】実施例3 実施例2において導入角(θ)が60°であることを除
いて他の塗出条件を全く同じにして紡糸を行ったとこ
ろ、紡糸速度を190m/分以上にすると直ちに糸切れ
が発生した。そこで、巻き取り速度だけを160m/分
に下げてスピンドロー比を42とし、平均単糸径がおよ
そ12.9μmの繊維を得た。紡糸は単糸切れなしに1
20分(19.2km)以上連続して行うことが出来
た。
【0047】比較例1 実施例2において導入角(θ)が90°であることを除
いて他の塗出条件を全く同じにして紡糸を行ったとこ
ろ、紡糸速度を90m/分以上にすると直ちに糸切れが
発生した。
【0048】比較例2 実施例2において導入角(θ)が60°であること及び
キャピラリー径が180μmであることを除いて他の塗
出条件を全く同じにして紡糸を行ったところ、紡糸速度
を130m/分以上にすると直ちに糸切れが発生した。
この時のせん断速度はおよそ3700sec-1 であった。
【0049】
【発明の効果】本発明によると高性能ポリベンザゾール
繊維を優れた生産性で得ることを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における紡糸口金の断面図。
【図2】繊維の破断端を示す。
【図3】(a)〜(e)は紡糸口金の孔形状の種々の例
を示すものである。
【図4】繊維太さが18μmのキャピラリー中でのせん
断速度と紡糸速度の関係を示す。図中の“um”は“μ
m”を表わし紡孔のサイズの単位である、SDRはスピ
ンドロー比を表わす。
【図5】図4の説明において紡孔が17μmについての
もの。
【図6】図4の説明において繊維太さが15μmについ
てのもの。
【図7】図4の説明において繊維太さが13.5μmに
ついてのもの。
【図8】図4の説明において繊維太さが11.5μmに
ついてのもの。
【図9】図4の説明において繊維太さが9.5μmにつ
いてのもの。
【図10】図4の説明において繊維太さが8.25μm
についてのもの。
【符号の説明】 1:入口、 2:孔径変化コーン、 3:キャピラリー
断面、 4:出口 5:紡糸口金。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 チー チュン チャウ アメリカ合衆国 ミシガン州48640 ミ ッドランドブルーバード ドライブ 4205 (72)発明者 ミヤナ セラーノ アメリカ合衆国 ミシガン州48640 ミ ッドランドナコマ ドライブ 605 (72)発明者 マイケル イー ミルズ アメリカ合衆国 ミシガン州48640 ミ ッドランドシルバンレイン 604 (72)発明者 チモシー ジェイ レイ アメリカ合衆国 ミシガン州48640 ミ ッドランドヘッジウッド ドライブ #417 5220 (72)発明者 ラビ シャンカー アメリカ合衆国 テキサス州77459 ミ ズーリシティ トルースデイル ドライ ブ 3107 審査官 中島 庸子 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/74 D01D 5/06 D01D 5/098 D01D 10/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリ燐酸溶媒とポリベンズオキサゾー
    ル、もしくはポリベンズチアゾールもしくはこれらの共
    重合ポリマーであるライオトロピック・ポリベンザゾー
    ルポリマーからなる液晶性ドープから得られる繊維の製
    造方法において、次の工程から成る製造方法。 (1)2つの面とそれらを繋ぐ複数の孔がある紡糸口金
    よりドープを押し出す。この紡糸口金の特徴として
    (a)各々の孔はドープが流入する導入孔とドープが流
    出するキャピラリーから成り、(b)導入孔径とキャピ
    ラリー径の大きさは少なくとも平均で10kmの完成糸
    が糸切れが起きることなしに造ることが出来るように選
    ばれており、この紡糸口金より複数本のドープ・フィラ
    メントを形成し、 (2)このドープ・フィラメントをドローゾーンで少な
    くともおよそ20倍以上のスピンドロー比で延伸し、 (3)次より如何なる順番でもよいが、(a)該フィラ
    メントより大部分のポリ燐酸を洗いだし、(b)洗浄し
    たフィラメントを乾燥させ、(c)少なくとも毎分15
    0m以上の速度で巻き取り これらの工程によりフィラメントの単糸の太さが平均で
    17ミクロン以下の繊維を糸切れが10kmでおよそ1
    回未満平均で起きるように製造する方法。
  2. 【請求項2】 ポリ燐酸溶媒とポリベンズオキサゾー
    ル、もしくはポリベンズチアゾールもしくはこれらの共
    重合ポリマーであるライオトロピック・ポリベンザゾー
    ルポリマーからなる液晶性ドープから得られる繊維の製
    造方法において、次の工程から成る製造方法。 (1)複数の孔がある紡糸口金よりドープを押し出す。
    この紡糸口金の特徴として(a)各々の孔はドープが流
    入する導入孔と孔径変化コーンおよびドープが流出する
    キャピラリーから成り、(b)紡糸口金の導入孔径がキ
    ャピラリー径よりも大きく、(c)キャピラリー直前の
    孔径変化コーンの導入角がおよそ30度以下である。こ
    の紡糸口金より複数本のドープ・フィラメントを形成
    し、 (2)このドープ・フィラメントをドローゾーンで少な
    くともおよそ20倍以上のスピンドロー比で延伸し、 (3)該フィラメントより大部分のポリ燐酸を洗い出
    す。
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