JP3062290U - リテ―ナ―ワイヤ―および該リテ―ナ―ワイヤ―を用いた歯列保定装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック部分と金属ワイヤーとの接合部
分の引き抜き強度が改善されたリテーナーワイヤーを提
供することと、共に金属アレルギーの対応性を改善する
ことである。 【解決手段】 歯列に当接し得るように円弧状に形成さ
れた保持部と、該保持部の両端から延設された金属製の
ワイヤーとからなるリテーナーワイヤーであって、前記
保持部が、透明性と、所定の機械的強度とを備えた合成
樹脂からなり、前記金属製のワイヤーが保持部と一体的
に成形されてなることを特徴としている。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は歯列保定装置に関する。さらに詳しくは、口蓋の上部または下部表面 におよび歯列の裏側の各歯の根元部に密着するベース部と、該ベース部に端部が 固着された保持手段からなり、矯正された歯を該ベース部と保持手段とのあいだ に挟圧して所望の歯列を維持する歯列保定装置に関する。

【０００２】

【従来の技術および考案が解決しようとする課題】

従来より歯列保定装置に用いられる金属製のリテーナーワイヤーが知られてい る（以下、「従来技術１」という）。従来技術１のリテーナーワイヤー１０（図 ４参照）は、その両端部をベース部１の前端部に固着し、ループ状に形成されて 、矯正された歯を含む複数の歯を囲むようにして取り付けられる（図７参照）。

【０００３】 また矯正された歯は、リテーナーワイヤー１０によって環状に取り付けられて いるので、たとえ矯正前の状態に戻ろうとしても、リテーナーワイヤー１０に反 力が生じるため、矯正された歯はベース部１に押圧される。こうして矯正された 歯列状態が維持されるので、再び元のように捻れたり、傾斜したりすることが防 止される。

【０００４】 しかしながら、金属製のワイヤーだけからなる従来技術１のリテーナーワイヤ ー１０を使用して作成したリテーナー（以下「保定装置」ともいう）の場合、金 属製のワイヤーが前歯部分の歯列表面の上に剥き出しのままで貼りついた状態に なり、口許を緩めると、この金属ワイヤーが見えてしまうという欠点がある。

【０００５】 本来リテーナーは２４時間装着することが望ましいが、金属製のワイヤーの場 合は見た目が悪いという理由で連続装着されないことが多く、一度矯正された歯 列がまた元に戻ろうとするために治療期間が長くなってしまうという問題が指摘 されている。

【０００６】 また、金属製のワイヤーを歯列表面に沿わせるためには、プライヤー（ペンチ ）類を使用して曲げ加工を施す手間が必要である。

【０００７】 かかる問題を解決するリテーナーワイヤーとして、本考案者は特開平７−２１ ３５３８号公報において図１０〜１１にされるような保定装置に用いられるもの を提案している（以下、「従来技術２」という）。

【０００８】 図１０に示す保定装置（リテーナーワイヤー）は、口蓋内の下顎部の形状に適 合し、歯列の裏面と密着するベース部１、ベース部１の前端部に固着された、合 成樹脂製の保持部２およびバネ部２ａと、ベース部１の左右の後端部に設けられ た金属製のワイヤーからなる支持部３とから構成される。

【０００９】 保定装置を作製するに先立ち、まず患者の口蓋内の下顎部または上顎部の型ど りを行う。たとえば、石膏で下顎または上顎の型をとり、しかるのち当該型上に 保持部２および支持部３を取り付ける。

【００１０】 最後に左右の大臼歯のモデルに金属製のワイヤを取り付け、支持部３を形成す る。このワイヤの一端も歯列の裏側に延ばしておく。

【００１１】 こうして歯列のモデル上に保持部および支持部３の取り付けが終了すると、モ デル内に溶融したアクリル樹脂を流し込み、ベース部１を形成する。数分以上放 置しておくと鞍状の形状を呈したベース部１に保持部２と支持部３とが固着され た保定装置がえられる。

【００１２】 ベース部１の材料としては、アクリル樹脂など口腔内の雑菌や汚れに強いもの が採用される。ベース部１の厚さは、約０．５〜１．０ｍｍとしている。

【００１３】 また保持部２およびバネ部２ａの材料としては、ポリエチレンテレフタレート 、ポリブチレンテレフタレートのほかポリカーボネート、シクロヘキサンジメタ ノール−テレフタル酸共重合体など熱収縮性と過去の加熱温度によって形状記憶 性とを有すると共に、曲げ強さおよび引っ張り強さが比較的高く、かつ口腔内の 雑菌や汚れに強いものが採用されている。

【００１４】 なお保持部２の形状および寸法は、直径が約０．５〜５．０ｍｍの断面が円形 のもののほか、約（０．３〜５．０）×（０．５〜１０．０）ｍｍの断面が矩形 または平板状のものが用いられている。

【００１５】 さらに特開平７−２１３５３８号公報には、バネ部２ａに隣接する部分１０ａ と、支持部３の他端１０ｂとがかしめにより接合されたものも開示されている（ 図５、６および１１参照）。

【００１６】 このように従来技術２のリテーナーワイヤー１０は、透明なプラスチックを使 用しており、このリテーナーワイヤー１０を使用して作製したリテーナー２０の 場合は、前歯部分の歯列表面の上に透明のプラスチックが乗った状態になり、口 許を緩めても透明なプラスチックが見えるだけなので、殆ど装着していることが 判らない。そのため、見た目を気にすることなく患者が連続装着してくれること から治療期間が短くなるという利点がある。

【００１７】 従来技術２のリテーナーワイヤーの種類としては、叙上のとおり、全体がプラ スチックでできているもの（図９および１０参照）（全体がプラスチックででき ているために、歯型とバネ部２および支持部３とに緩みが生じた場合は、補正の ために高熱を加えての修正加工が必要）と、図１１に示されるように、目につく 前歯部だけが透明プラスチックでできており、目に見えない部分は従来の金属ワ イヤーを使用したジョイント型（歯型とバネ部および支持部との緩み修正のため に、熱は使わないでプライヤー類だけで修正が可能）の２種類がある。

【００１８】 プラスチック型のワイヤーを歯列表面に沿わせるためには、金属ワイヤーであ ればプライヤー（ペンチ）類を使用して修正加工をする手間だけですむが、ヒー トセットをさせたプラスチックを使用している従来技術２のリテーナーワイヤー の場合は、プラスチックを歯列表面に沿わせるために、高熱を加えた上でプライ ヤー（ペンチ）類を使用して修正加工をする必要がある。

【００１９】 また、ジョイント型のリテーナーワイヤーを使用してリテーナーを作製する場 合に、前歯部のプラスチック部分２（以下、「保持部」という）と、バネ部２お よび支持部３の金属ワイヤーとの二つの部材を物理的に接合させて使用する必要 がある。

【００２０】 本考案の目的は、叙上の従来のリテーナーワイヤーの問題点を解消し、プラス チック部分と金属製のワイヤー部分との接合部分の引き抜き強度が改善されたリ テーナーワイヤーを提供することである。

【００２１】

【課題を解決するための手段】

本考案の第１の態様であるリテーナーワイヤーは、歯列に当接し得るように円 弧状に形成された保持部と、 該保持部の両端から延設された金属製の支持部 とからなるリテーナーワイヤーであって、 前記保持部が、透明性と、所定の機械的強度とを備えた合成樹脂からなり、 前記支持部が保持部と一体的に成形されてなる ことを特徴としている。

【００２２】 本考案の第２の態様である歯列保定装置は、ベース部に両端部が固着され、矯 正治療された歯を含む複数の歯を取り囲むように環状に掛け回されるリテーナー ワイヤーからなる歯列保定装置であって、前記リテーナーワイヤーが、前記リテ ーナーワイヤーからなることを特徴としている。

【００２３】

【考案の実施の形態】 添付図面を参照しながら、本考案のリテーナーワイヤーを詳細に説明する。

【００２４】 図１は本考案の一実施の形態にかかわるリテーナーワイヤーの一例を歯型模型 の歯列に装着した状態を示す斜視図、図２は本考案の一実施の形態にかかわるリ テーナーワイヤーの状態を示す斜視図、図３は図２のリテーナーワイヤーにバネ 部を形成した状態を示す斜視図である。

【００２５】 図１に示されるように、本実施の形態にかかわるリテーナーワイヤー５０は、 歯列のうち、前歯に相当する部分に当接する円弧状の保持部５１と、保持部５１ に固着された金属製のワイヤー５２とから構成されている。

【００２６】 金属製のワイヤー５２は、バネ部５２ａと、支持部５２ｂとを含んでいる。

【００２７】 保持部５１への金属製のワイヤー５２の固着は、金属製のワイヤー５２の端部 を保持部５１の中に埋没させた状態で達成される。

【００２８】 叙上の如く構成される本考案のリテーナーワイヤーは、従来のリテーナーワイ ヤーに較べて前歯部のプラスチック部分（保持部５１）と、バネ部５２ａおよび 支持部の金属ワイヤー５２との２つの部材を事前に一体化させており（すなわち 、金属ワイヤー５２の端部を保持部５１として機能するプラスチックの中に埋没 させてある）、後加工で接合させている従来のリテーナーワイヤーよりも、接合 部分の引き抜き強度が大幅に向上すると共に作製者の接合技術による接合強度バ ラツキが解消されて、均一な引き抜き強度が得られる。ちなみに、従来はおおよ そ３．０ｋｇであるのに対し、本考案では、おおよそ９．０ｋｇである。また、 リテーナーを作製するとき、前歯部のプラスチック部分（保持部５１）と、バネ 部５２ａおよび支持部５２ｂの金属ワイヤー５２との２つの部材を物理的に接合 させる工程が不要になる。

【００２９】 また、本考案にかかわるリテーナーワイヤーは、プラスチックが熱収縮を起こ して熱変形をする。

【００３０】 したがって、リテーナーを作成する時に、本考案のリテーナーワイヤー５０を 予め歯型模型に軽く沿わせてセットさせておき、所定の温度以上に加熱（湿熱、 乾熱を問わず）すると、リテーナーワイヤー５０のプラスチック部分（保持部５ １）が熱収縮を起こして、歯型模型の歯列表面に簡単に沿うことになる。使用樹 脂選定によっては、歯型模型ＤＭにリテーナーワイヤー５０を沿わせて軽く固定 させた状態（図１参照）のまま沸騰している熱湯に１秒〜３０分程度放置してお くと、プラスチック部分が熱収縮を起こして歯型模型ＤＭに簡単に沿い綺麗な仕 上がりとなる。

【００３１】 このため、プライヤー（ペンチ）類を使用して歯型表面にプラスチックワイヤ ーを沿わせるこれまでの修正加工の手間がなくなった。これにより、リテーナー 作成のための作業時間が大幅に短縮され得る。

【００３２】 叙上のように、熱可塑性樹脂からなる本考案の熱可塑性樹脂製のリテーナーワ イヤーを歯型模型に軽く沿わせておいて、樹脂それぞれのもつ収縮温度以上の温 度を与えることにより合成樹脂を熱収縮させて、模型上の歯型にプラスチック部 分がきれいに沿ったリテーナーを簡単に作成させることが可能となる。

【００３３】 加える温度については、乾熱：湿熱のどちらでもよいが、より均一な収縮を得 るためには、湿熱を利用するほうが簡単でよい。湿熱を利用する場合には圧力を 加えて気圧を変化させたり、塩等の何らかの助剤を加えることで沸騰温度を変化 させることにより、湿熱を使用して簡単に均一な熱収縮を起こさせることが可能 になる。また、熱風炉等の乾熱を使用して熱収縮を起こさせることも当然可能で ある。

【００３４】 本考案のリテーナーワイヤーは従来のリテーナーワイヤーに較べて、プラスチ ック部分と金属ワイヤーが一体化されており、リテーナー作成時に２つの部材を わざわざジョイントさせる手間がなくなり作業時間が大幅に短縮されると共に接 合強度が大幅に向上し得る。

【００３５】 また、本考案のリテーナーワイヤーは、比較的低温で加熱することで熱収縮を 起こして歯型に沿うことから、作業時間が大幅に短縮されると共により歯型にフ ィットしたリテーナーが容易に作製できる。金属線ワイヤーの材料は耐腐食性を 備え、かつ塑性加工を容易になしうるものから選択されるが、たとえば、ステン レス、ニッケルコバルト合金、ニッケルクロム合金、チタン合金などが好適に採 用される。

【００３６】 また、図２（ｂ）に示すように、表面に合成樹脂やセラミックスなどの被覆（ コーティング）加工を付加して被覆層Ｃを設けた金属ワイヤー５２を使用するこ とにより、金属アレルギー患者に対してよい効果が得られる。このばあい、被覆 加工したワイヤー５２を使用してもよいし、製品仕上がり後に金属ワイヤーを被 覆してもよい。

【００３７】

【考案の効果】

本考案のリテーナーワイヤーによれば、プラスチック部分と金属ワイヤーとの 接合部分の引き抜き強度が大幅に改善される。また、本考案のリテーナーワイヤ ーを用いた保定装置は、容易に作製されうるだけでなく、より歯型にフィットし たものがえられる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施の形態にかかわるリテーナーワ
イヤーの一例を歯型模型の歯列に装着した状態を示す斜
視図である。

【図２】本考案の一実施の形態にかかわるリテーナーワ
イヤーの射出成形直後の状態を示す斜視図および断面図
である。

【図３】図２のリテーナーワイヤーにバネ部が形成され
た状態を示す斜視図である。

【図４】従来のリテーナーワイヤーの一例を示す斜視図
である。

【図５】従来のリテーナーワイヤーの他の例を示す斜視
図である。

【図６】従来のリテーナーワイヤーの他の例を示す斜視
図である。

【図７】従来の歯列保定装置の一例が歯列に装着された
状態を示す斜視図である。

【図８】図７の歯列保定装置が歯列から除去された状態
を示す斜視図である。

【図９】従来のリテーナーワイヤーの一例を示す斜視図
である。

【図１０】従来の歯列保定装置の斜視図である。

【図１１】図１０の歯列保定装置が歯列に装着された状
態を示す斜視図である。

【符号の説明】

５０ リテーナーワイヤー ５１ 保持部 ５２ 金属ワイヤー Ｃ 被覆層

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 歯列に当接し得るように円弧状に形成さ
   れた保持部と、該保持部の両端から延設された金属製の
   ワイヤーとからなるリテーナーワイヤーであって、前記
   保持部が、透明性と、所定の機械的強度とを備えた合成
   樹脂からなり、前記金属製のワイヤーが保持部と一体的
   に成形されてなることを特徴とするリテーナーワイヤ
   ー。
2. 【請求項２】 前記金属製のワイヤーの表面に被覆層が
   設けられてなる請求項１記載のリテーナーワイヤー。
3. 【請求項３】 ベース部に両端部が固着され、矯正治療
   された歯を含む複数の歯を取り囲むように環状に掛け回
   されるリテーナーワイヤーからなる歯列保定装置であっ
   て、前記リテーナーワイヤーが、請求項１記載のリテー
   ナーワイヤーであることを特徴とする歯列保定装置。
4. 【請求項４】 ベース部に両端部が固着され、矯正治療
   された歯を含む複数の歯を取り囲むように環状に掛け回
   されるリテーナーワイヤーからなる歯列保定装置であっ
   て、前記リテーナーワイヤーが、請求項２記載のリテー
   ナーワイヤーであることを特徴とする歯列保定装置。