JP3059830U - 障害者用シ―トベルト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】主として、椅子や車椅子に着席した状態で、姿
勢を正しく維持することが困難な障害者を、安全かつ確
実に着席した正しい姿勢に保つことができるようにし、
介護者の負担を軽減するシートベルトを得ることを目的
とする。 【解決手段】シートベルトは、椅子に着脱自在とする座
席シート１と、略三角形とし底辺部を前方に向けて配置
した前面カバー２と、肩ベルト４で構成する。前面カバ
ー２は、その頂点2a部分を座席シート１の中程に固着
し、前面カバー２で着席者の腹部から腰を包み込み、前
面カバーの両端に突出させた固定ベルトを背もたれに回
して固定する。さらに、前面カバー２の中心部と座席シ
ート１後端部の左右両側部の間に肩ベルト４を架け渡し
て連結することによって、着席者の上半身をしっかりと
保持する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、主として着席した姿勢を安定して持続することが困難な障害者用の シートベルトに関する考案である。

【０００２】

【従来の技術】

従来から、車椅子や一般の椅子に着用する障害者用のシートベルトは種々提供 されているが、従来のものは概ね着席者の腰を締めつけるだけのものであった。 ところが、障害者には、障害の種類や程度によって椅子や車椅子に座った姿勢を 安定的に持続させることができない人、或いは介護者の予想外の動きをする人が ある。このような人は、転倒事故を含めて非常に危険であるため、従来は紐など を使って着席者を固定することによって安全を図っていた。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

従来のように着席者を紐などを使って固定することは、その自由を極度に拘束 することになり着席者自身が不快であるとともに、座席に沿って前方へ滑ること によって姿勢が崩れることがあった。これを矯正するには、介護者は着席者を一 々抱え上げる必要があり、非常に重労働であった。 このような実情に鑑み、本考案は着席者の安定を確実に維持するシートベルト を提供することを目的とするものである。特に、上半身の姿勢を維持することが 困難な障害者であっても、腰を安定させた上で上半身の動きをしっかりと規制し て安全を確保し、しかも着席者が苦痛を感じることがない安全な範囲の行動を許 容する障害者用のシートベルトを提供せんとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

本考案に係るシートベルトは、主として車椅子や椅子の座席に着脱自在とする 座席シート１と、着席者を前面から固定（腰から腹部）する前面カバー２及び肩 ベルト４で構成する。前面カバー２は左右対称の略三角形とし、底辺を前方に向 けて配置し、その後端である頂点2a部分を座席シートの中程に固着する。また、 前面カバー２の左右の頂点2b，2b部分には、固定ベルト３，3'を側方に向けて突 出させるとともに、座席シート１の後端縁の左右両側部と前記前面カバー２の中 心部との間に肩ベルト４を設ける。なお、肩ベルト４は着脱自在とし、必要に応 じて使用することができるようにするのが好ましい。

【０００５】 上記構成とすることにより、前面カバー２を着席者の股間から前に引出し腹部 を覆うようにし、固定ベルト３，3'を背もたれに回して固定することによって着 席者の腹，腰部をしっかりと固定する。このとき、前面カバー２の先端は、座席 シートの中程に固定しているため腰が座席シートの前方へ移動する（滑る）のを 防止することができる。この状態で、座席シート１の後端縁の左右両側部と前面 カバー２の中心部との間に肩ベルト４を架け渡すと、着席者の上半身の前後及び 左右方向の動きが規制されるが、架け渡すベルトの距離が大きいことによって着 席者の多少の動きが許容されるとともに、肩ベルト４は対称的に斜め方向に掛け ることになるため、一定以上の着席者の上半身の不必要な動きが効果的に阻止さ れ安定する。

【０００６】

【考案の実施の形態】

以下、本考案に係る障害者用シートベルトの好ましい実施の形態を、添付の図 面に基づいて説明する。 図１は、シートベルトを展開して示す平面図、図２は使用状態を示す正面図、 図３は使用状態を示す側面図である。

【０００７】 丈夫な生地の縫製加工などの手段で形成した座席シート１の前端（図面上の下 位置）の左右両側縁には、椅子や車椅子の座席に座席シート１を固定するための 固定ベルト５，5'を設ける。また、座席シート１の後端（図面上の上位置）の左 右両側縁には、座席シート１もしくは背もたれに座席シート１を固定するための 固定ベルト６，6'を設ける。固定ベルト５及び６の先端には一対のベルトを任意 長さの位置で連結することができる連結環７，７を装着し、椅子や車椅子の座席 に座席シート１をしっかりと固定できるようにする。座席シート１を椅子や車椅 子の座席に着脱する手段は、上記以外に座席そのものに座席シート１を形成した り、別に形成した座席シート１をより強固に固定するものであってもよい。

【０００８】 座席シート１には、左右対称の略三角形とした前面カバー２を底辺を前方に向 けて配置し、先端2a部分を座席シート１の中程に縫製などの手段で固着する。座 席シート１に固着した前面カバー２の底辺部分には、頂点2b，2b部分から左右両 側方に固定ベルト３，3'を突出させている。具体的には、前面カバー２の底辺部 分に沿わせて一本の長いベルトを縫着し、そのベルトの左右両側方部を前面カバ ー２の左右の頂点2b，2b部分から側方に突出させている。勿論、固定ベルト３， 3'は、それぞれ別部材として前面カバー２の左右の頂点2b，2b部分に縫着するも のであってもよい。

【０００９】 左右両側方に突出する固定ベルト３，3'の一方の先端（図面上右側の固定ベル ト３）に雌連結杆８を、他方の先端（図面上左側の固定ベルト3'）に雄連結杆10 を装着するとともに、固定ベルト3'の途中に長さの調整杆９を介在させている。 これにより、固定ベルト３，3'を背もたれに回して着席者をしっかりと固定する ことができる。なお、略三角形とする前面カバー２は、左右両側縁2c，2cを着席 者の股間の曲線にフィットするように凹弧状に形成するのが好ましい。

【００１０】 前面カバー２の底辺中心部には、短ベルト11を固定してその先端に雌連結杆12 を装着している。また、座席シート１の後端縁の左右両側には一定寸法の固定ベ ルト4A，4Aを突出させ、それぞれその先端に雌連結杆13，13を装着し、上記、前 面カバー２の雌連結杆12と、固定ベルト4A，4Aの先端に設けた雌連結杆13，13の 間に、肩ベルト４を着脱できるようにする。すなわち、肩ベルト４は、長寸法の ベルトをＶ字状に折り返し、好ましくは折り返し部分を縫製してＶ字状を保持す るようにし、Ｖ字状の折り返し部分と、ベルトの両端の三箇所に雄連結杆14，15 ，16を装着している。

【００１１】 しかして、肩ベルト４の折り返し部分に装着した雄連結杆16と前面カバー２の 底辺中心部に設けた雌連結杆12を、肩ベルト４の両端に設けた雄連結杆14，15と 固定ベルト4A，4Aの先端に設けた雌連結杆13，13をそれぞれ連結することができ るようにしている。なお、図示例では、肩ベルト４の左右部分にそれぞれ長さの 調整杆17，18，を介在させるとともに、着席者への当たりを和らげるため、ベル ト表面にクッション材19，20を縫着している。

【００１２】 次に、本考案に係る障害者用シートベルトの使用状態を、図２及び図３に基づ いて説明する。この図において、椅子として車椅子を例示しているが、通常の固 定的な椅子であってもよいこと勿論である。

【００１３】 使用に際しては、あらかじめ椅子Ａの座席Ｂに座席シート１を装着しておく。 座席シート１を椅子Ａの座席Ｂに装着するには、座席シート１の前端部に設けた 固定ベルト５，5'を座席Ｂの下にまわして連結するとともに、座席シート１の後 端部に設けた固定ベルト６，6'を背もたれＣに巻回させて固定し、前面カバー２ を前に垂らした状態で着席者を着席させる。この状態で、前面カバー２を着席者 の股間を通して上方に引き上げ、着席者の腹部をつつみ込むような態様とし、前 面カバー２の上端に位置する固定ベルト３，3'を、後方の背もたれＣに巻回して 連結すると、着席者の下半身（腰，腹部）をしっかりと固定できることになる。 すなわち、前面カバー２の先端部は、座席シートの中程に固定されているため着 席者の腰をしっかりと後方に引きつけた状態で固定し、着席者の腰が前方にずれ ることを完全に阻止する。

【００１４】 上記、前面カバーを装着した状態では、着席者は上半身を前後，左右に自由に 動かせる状態である。上半身の姿勢を十分にコントロールすることができる障害 者の場合はこの状態で使用するとよい。ところが、上半身の姿勢をしっかりと保 つことができない障害者の場合は、上半身が大きく揺れると椅子ごと転倒する危 険性があるため、肩ベルト４を装着して上半身を固定する。

【００１５】 着席者に肩ベルト４を装着するには、座席シート１後端から背もたれの後方へ 固定ベルト4A，4Aを引出し、その先端に設けた雌連結杆13，13に肩ベルト４の両 端に設けた雄連結杆14，15を連結する。この状態で背もたれの上端を越して肩ベ ルト４を着席者の前方に回し、前面カバー２の雌連結杆12と肩ベルト４の雄連結 杆16を連結する。もっとも、肩ベルト４を使用する場合は、着席する前に固定ベ ルト4A，4Aと肩ベルト４を連結して準備しておくとよい。

【００１６】 装着した肩ベルト４は、着席者の腹部に相当する前面カバー１の中心部から左 右に分かれ、着席者の両肩を背もたれに支持した上で座席シート１後端部の左右 両側に連結されることになる。したがって、装着した肩ベルト４は、着席者を三 点で支持することになり、極めて安定よく固定することができるとともに、肩ベ ルトは比較的長い寸法で着席者の肩部を架け渡しているため、着席者の少しの動 きを許容し、着席者にとって拘束感の少ないものとなる。

【００１７】

【考案の効果】

請求項１記載の本考案障害者用シートベルトによれば、椅子や車椅子に着席し た姿勢を正常な状態にしっかりと保持させることができる。例えば、腰が椅子の 前方にずれて姿勢を崩すことがなく、着席している障害者の姿勢を正すために抱 き抱える必要にせまられるといった、介護者の負担を軽減することができる。 また、上半身を安定した姿勢に維持することが困難な障害者であっても、肩ベ ルトによって、上半身をしっかりと安定させることができる。一方で、肩ベルト による上半身の固定は、着席者の上半身の多少の動き、自由を許容することがで き、従来の紐などで着席者を固定する方法に比較して拘束感がなく、障害者が快 適に使用できる。

【００１８】 請求項２記載の考案によれば、上半身を固定する必要のあるときとないとき、 あるいは、上半身の固定を必要とする人としない人によって肩ベルトの使用を任 意に選択することができる。

【００１９】 請求項３記載の考案によれば、前面カバーで着席者を固定するに際し、前面カ バーが股間にぴったりとフィットし、着席者に無理な力が作用せず使い心地の良 いものとすることができる特長がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る障害者用シートベルトの展開図、

【図２】本考案に係る障害者用シートベルトの使用状態
を示す正面図、

【図３】本考案に係る障害者用シートベルトの使用状態
を示す側面図。

【符号の説明】

１…座席シート、 ２…前面カバー、 ３，3'…固定ベ
ルト、 ４…肩ベルト、4A，4A…固定ベルト、 ５，5'
…固定ベルト、 ６，6'…固定ベルト、 ７…連結環、
８，12，13…雌連結杆、 ９…調整杆、 10，14，，
16…雄連結杆、17，18…調整杆、 Ａ…椅子、 Ｂ…座
席、 Ｃ…背もたれ。

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】車椅子や椅子の座席に着脱自在とした座席
   シート１に対して、左右対称の略三角形である前面カバ
   ー２を底辺を前方に向けて配置し、該前面カバー２の後
   端である頂点2a部分を座席シート１の中程に固着して着
   席者の股間部から腹部を覆うようにし、該前面カバー２
   の左右の頂点2b，2b部分に背もたれに回して着席者を固
   定するための固定ベルト３，3'を設けるとともに、座席
   シート１の後端縁の左右両側部と前記前面カバー２の中
   心部との間に肩ベルト４を設けたことを特徴とする障害
   者用シートベルト。
2. 【請求項２】座席シート１の左右両側の後端部と前面カ
   バー２の中心部との間に設ける肩ベルト４を着脱自在と
   してなる請求項１記載の障害者用シートベルト。
3. 【請求項３】頂点2a部分を座席シート１に固着する前面
   カバー２は、左右両側縁2c，2cを着席者の股間曲線に沿
   うべく凹弧状に形成し、この左右両側縁は布片を袋縫い
   にするなどによって厚みを大きく、かつ柔らかく形成し
   てなる請求項１又は２記載の障害者用シートベルト。