JP3057927U - 多重パイル編地 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 機能性に優れた数種の繊維を使用し、需要に
応じた機能性パイル編地を提供する。 【解決手段】 ３本以上の複数本の編糸Ａ・Ｂ・Ｃが同
一ニードルに供給されて形成するニードルループＮによ
って構成されているベース編地Ｇのコース方向Ｋにおい
て隣合うニードルループＮとニードルループＮを連結す
るシンカーループＳを構成する複数本の編糸Ａ・Ｂ・Ｃ
の中の２本の編糸Ａ・Ｂがベース編地Ｇから浮き出たル
ープパイルを形成したパイル編地において、一方の編糸
ＡのループパイルＨを他方の編糸ＢのループパイルＬよ
りもベース編地Ｇから高くする。それらのループパイル
ＨとＬの編糸ＡとＢを、導電性、耐熱性、難燃性、耐摩
耗性等の物性品質の何れかの点において異なるものとす
る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、機能性多重パイル編地に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

パイル編地は、その有するパイルの機能に応じて種々の分野において使用され ている。 耐摩耗性、吸湿性、撥水性、発色性、嵩高（バルキー）性等の数種の機能が要 求されるパイル編地では、それらの機能を有する繊維をパイルに混用する方法が 採られる。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

機能の異なる繊維を混用する場合、その所要の機能をある種の繊維が具備する としても、その機能を他の繊維が欠如し、機能性の高いパイル編地は得られない 。 例えば、導電性に優れたカーボン繊維と、吸湿性に優れたレーヨンと、発色性 や嵩高性に優れた捲縮性ポリエステル繊維をパイルに混用するとき、カーボン繊 維の帯電防止機能はレーヨンやポリエステル繊維に妨げられ、レーヨンの吸湿機 能はカーボン繊維やポリエステル繊維に妨げられ、又、ポリエステル繊維の嵩高 性や発色機能はカーボン繊維やレーヨンに妨げられることになる。 そして、繊維の紡績性が繊維の種類によって異なるので、所要の機能を有する 数種の繊維を混紡し得ないこともあり、所要の数種の機能を有するパイル編地が 得られるとは限らない。

【０００４】

【考案の目的】

そこで本考案は、機能性に優れた数種の繊維を使用し、需要に応じた数種の機 能を有するパイル編地を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

本考案に係るパイル編地は、３本以上の複数本の編糸Ａ・Ｂ・Ｃが同一ニード ルに供給されて形成するニードルループＮによって構成されているベース編地Ｇ のコース方向Ｋにおいて隣合うニードルループＮとニードルループＮを連結する シンカーループＳを構成する複数本の編糸Ａ・Ｂ・Ｃの中の２本の編糸Ａ・Ｂが ベース編地Ｇから浮き出たループパイルを形成しており、その一方の編糸Ａのル ープパイルＨが他方の編糸ＢのループパイルＬよりもベース編地Ｇから高く浮き 出ており、それらのループパイルＨとＬを構成する編糸Ａと編糸Ｂが、導電性、 耐熱性、難燃性、耐摩耗性、引張強度、弾力性、嵩高性、断熱性、保温性、保湿 性、吸湿性、疎水性、撥水性、吸塵性、防汚性、抗菌性、防黴性、防虫性、発色 性、堅牢度、消臭性、見掛け太さ等の物性品質の何れかの点において異なること を第１の特徴とする。

【０００６】 本考案に係るパイル編地の第２の特徴は、上記第１の特徴に加えて、高いルー プパイルＨを形成する編糸Ａが耐摩耗性繊維、発色性繊維、導電性繊維、耐熱性 繊維、撥水・防汚性繊維、堅牢度繊維の何れかの繊維によって構成されており、 低いループパイルＬを形成する編糸Ｂが保温性繊維、保湿・吸湿性繊維、難燃性 繊維、弾力性繊維、断熱性繊維、吸塵性繊維、抗菌・防黴・防虫性繊維、消臭性 繊維の何れかの繊維によって構成されていることにある。

【０００７】

【考案の実施の形態】

耐摩耗性と発色性と保温性と保湿性が同時に要求されるパイル編地では、耐摩 耗性と発色性に優れたポリエステルモノフイラメント糸によって高いループパイ ルＨを形成し、ポリエステル繊維に比して発色性や耐摩耗性は劣るが保温性と保 湿性に優れた羊毛繊維紡績糸によって低いループパイルＬを形成する。 そうすると、発色性や耐摩耗性に劣る羊毛繊維の低いループパイルＬは、発色 性や耐摩耗性に優れたポリエステルモノフイラメントの高いループパイルＨの下 に隠れ、その隠れる低いループパイルＬが高いループパイルＨを補強することに なるので、発色性や耐摩耗性に優れ、弾力性に富むパイル編地が得られる。 一方、高いループパイルＨの下に隠れる低いループパイルＬが、保温性や保湿 性に富む羊毛繊維によって構成されているので、パイル編地は、耐摩耗性や発色 性と共に、保温性や保湿性の点でも優れたものとなる。

【０００８】 このようにパイル編地の外面の品質を左右する耐摩耗性繊維や発色性繊維、及 び、撥水・防汚性繊維、堅牢度繊維は、高いループパイルＨを形成する編糸Ａに 使用し、パイル編地の外面の品質を左右しない保温性繊維や保湿・吸湿性繊維、 及び、断熱性繊維、吸塵性繊維、抗菌・防黴・防虫性繊維、消臭性繊維は、低い ループパイルＬを形成する編糸Ｂに使用する。 導電性繊維と耐熱性繊維は、高いループパイルＨを形成する編糸Ａに使用する とよく、難燃性繊維と弾力性繊維は、低いループパイルＬを形成する編糸Ｂに使 用するとよい。

【０００９】 導電性繊維としては、炭素繊維、ステンレス繊維、酸化チタン繊維、金属蒸着 繊維、硫化銅無電解メッキ繊維などが使用される。 耐熱性繊維としては、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ア ラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維などが使用される。 耐摩耗性繊維としては、ナイロン、ポリエステル繊維、ポリオレフイン繊維、 アラミド繊維などの合成繊維、特に、それらの繊度１００〜５００デニールのモ ノフイラメントが使用される。 撥水・防汚性繊維としては、弗素系防汚撥水剤やシリコン系防汚撥水剤で処理 された繊維が使用される。 発色性繊維としては、ナイロン、ポリエステル繊維が使用される。 堅牢度繊維としては、染料や顔料をを練り込んで紡糸した合成繊維が使用され る。

【００１０】 難燃性繊維としては、ハロゲン系や硫黄系などの難燃剤で処理された繊維、或 いは、難燃剤を練り込んで紡糸した合成繊維の如く難燃剤を担持する繊維、及び 、自己消火性を有する羊毛繊維の如く繊維高分子の分子構造内に難燃成分を有す る繊維が使用される。 弾力性繊維としては、上記耐摩耗性繊維に加えて、ポリウレタン繊維（スパン デックス）や羊毛繊維が使用される。 保温性繊維としては、羊毛繊維、及び、捲縮加工を施した繊度１〜１０デニー ルの合成繊維を、好ましくは繊度０．１デニール以下の極細繊維と混用する。 保湿・吸湿性繊維としては、ビニロン、羊毛繊維、麻、木綿、レーヨン、アセ テートその他のセルロース繊維、及び、繊度０．１デニール以下の極細繊維が使 用される。 断熱性繊維としては、上記保温性繊維に加えて、繊度５デニール以下の上記耐 熱性繊維が使用される。 吸塵性繊維としては、繊度０．１デニール以下の極細繊維、及び、オイリング 処理されたビニロン、羊毛繊維、麻、木綿、レーヨン、アセテートその他のセル ロース繊維が使用される。 抗菌・防黴・防虫性繊維としては、銀イオンや銅イオン、及び、亜鉛イオンが 付与された繊維、フエニトロチオン、フエニチオン、ダイアジノン、ホキシム、 Ｎ・アシルアミノ酸塩、トリクロロカルバニリド、オルガノシリコン第４級アン モニウム塩などの抗菌・防黴・防虫剤に処理された繊維が使用される。 消臭性繊維としては、金属Ｌアスコルビン酸錯体、水酸化銅イオン錯体、金属 フタロシアニン誘導体、アミドホスフアゼン、キトサンに処理された繊維が使用 される。

【００１１】 疎水性繊維と嵩高性繊維は、耐摩耗性、発色性、撥水・防汚性、堅牢度、触感 風合いなどのパイル編地の外面に要求される品質特性、及び、保温性、保湿・吸 湿性、断熱性、吸塵性、抗菌・防黴・防虫性、消臭性などのパイル編地全体に要 求される品質特性に応じて、高いループパイルＨを形成する編糸Ａまたは低いル ープパイルＬを形成する編糸Ｂの何れかに使用する。

【００１２】 疎水性繊維としては、ナイロン、ポリエステル繊維、ポリオレフイン繊維、ア ラミド繊維などの合成繊維が使用される。 嵩高性繊維としては、羊毛繊維、及び、捲縮加工を施したナイロン、ポリエス テル繊維、アクリル繊維などの合成繊維、特に、繊度０．１デニール以下の極細 繊維が使用される。

【００１３】 同一シンカーループＳを構成する複数本の編糸の中の２本が高低異なるループ パイルＨ・Ｌを形成するようにするには、丸編機（横編機）の隣合うニードルと ニードルの間でシンカーループＳを形成するシンカーに対し、高いループパイル Ｈを形成する編糸Ａを低いループパイルＬを形成する編糸Ｂよりも多く給糸（供 給）する。

【００１４】

【考案の効果】

本考案（請求項１）によると、導電性、耐熱性、難燃性、耐摩耗性、引張強度 、弾力性、嵩高性、断熱性、保温性、保湿性、吸湿性、疎水性、撥水性、吸塵性 、防汚性、抗菌性、防黴性、防虫性、発色性、堅牢度などの機能性に優れた数種 の繊維を使用し、需要に応じた数種の機能を有するパイル編地が得られる。 本考案では、導電性、耐熱性、難燃性、耐摩耗性、引張強度、弾力性、嵩高性 、断熱性、保温性、保湿性、吸湿性、疎水性、撥水性、吸塵性、防汚性、抗菌性 、防黴性、防虫性、発色性、堅牢度などの何れかの点において優れた繊維を、他 の機能性に優れた繊維と混紡せず、別々の編糸Ａ・Ｂとして使用するので、それ らの機能性に優れた編糸Ａ・Ｂが用意し易く、数種の機能を有するパイル編地の 需要に即応することが出来る。 又、機能性に優れた数種の繊維を、混紡によらず、機能性に応じた別々の糸と して編糸Ａ・Ｂとして用意し使用するので、それらの残糸は、他の機能性編糸と 共に他の機能性パイル編地に転用することが出来、それによって残糸を消費し低 減することが出来るので経済的である。

【００１５】 本考案（請求項２）によると、パイル編地の外面の品質を左右する耐摩耗性繊 維、発色性繊維、導電性繊維、耐熱性繊維、撥水・防汚性繊維、堅牢度繊維の何 れかの繊維によって構成され、パイル編地の外面の品質を格別左右しない保温性 繊維、保湿・吸湿性繊維、難燃性繊維、弾力性繊維、断熱性繊維、吸塵性繊維、 抗菌・防黴・防虫性繊維の何れかの繊維によって構成されているので、低いルー プパイルＬに使用する繊維（Ｂ）が耐摩耗性や堅牢度等の点で耐久性を欠き、或 いは、剛直で触感を損なうものであっても、それらの欠点は高いループパイルＨ に補完されて高品質の機能性パイル編地が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る多重パイル編地の斜視図である。

【符号の説明】

Ａ・Ｂ・Ｃ 編糸 Ｇ ベース編地 Ｈ 高いループパイル Ｌ 低いループパイル Ｎ ニードルループ Ｓ シンカーループ Ｋ コース方向

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ３本以上の複数本の編糸（Ａ・Ｂ・Ｃ）
   が同一ニードルに供給されて形成するニードルループ
   （Ｎ）によって構成されているベース編地（Ｇ）のコー
   ス方向（Ｋ）において隣合うニードルループ（Ｎ）とニ
   ードルループ（Ｎ）を連結するシンカーループ（Ｓ）を
   構成する複数本の編糸（Ａ・Ｂ・Ｃ）の中の２本の編糸
   （Ａ・Ｂ）がベース編地（Ｇ）から浮き出たループパイ
   ルを形成しており、その一方の編糸（Ａ）のループパイ
   ル（Ｈ）が他方の編糸（Ｂ）のループパイル（Ｌ）より
   もベース編地（Ｇ）から高く浮き出ており、それらのル
   ープパイル（ＨとＬ）を構成する編糸（Ａ）と編糸
   （Ｂ）が、導電性、耐熱性、難燃性、耐摩耗性、引張強
   度、弾力性、嵩高性、断熱性、保温性、保湿性、吸湿
   性、疎水性、撥水性、吸塵性、防汚性、抗菌性、防黴
   性、防虫性、発色性、堅牢度、消臭性、見掛け太さ等の
   物性品質の何れかの点において異なることを特徴とする
   多重パイル編地。
2. 【請求項２】 高いループパイル（Ｈ）を形成する編糸
   （Ａ）が耐摩耗性繊維、発色性繊維、導電性繊維、耐熱
   性繊維、撥水・防汚性繊維、堅牢度繊維の何れかの繊維
   によって構成されており、低いループパイル（Ｌ）を形
   成する編糸（Ｂ）が保温性繊維、保湿・吸湿性繊維、難
   燃性繊維、弾力性繊維、断熱性繊維、吸塵性繊維、抗菌
   ・防黴・防虫性繊維、消臭性繊維の何れかの繊維によっ
   て構成されていることを特徴とする前掲請求項１に記載
   の多重パイル編地。