JP3052974B2 - 測長校正法 - Google Patents

測長校正法

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JP3052974B2
JP3052974B2 JP4209075A JP20907592A JP3052974B2 JP 3052974 B2 JP3052974 B2 JP 3052974B2 JP 4209075 A JP4209075 A JP 4209075A JP 20907592 A JP20907592 A JP 20907592A JP 3052974 B2 JP3052974 B2 JP 3052974B2
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芳和 本間
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体表面の荒さ・段差
(ステップ)等の情報を含む三次元的表面形状観察装置
を実観察に供する際に、測定装置によらず汎用的に、表
面に垂直な方向の絶対的な距離を10-10 から10-9
の分解能で校正する測長校正法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に表面形状を観察するには、触針計
に代表される接触型形状観察装置、光干渉や原子間力を
利用した非接触型形状観察装置が用いられており、距離
校正用標準試料も準備されている。その標準試料は他の
分析手法、例えば走査型電子顕微鏡により形状が確認さ
れており、形状は1mmの幅に数千本引かれた回折格子が
代表的であるが、表面と平行な方向での二次元的な幅は
数ミクロン(10-6m)からサブ・ミクロン(10
-7m)であり、表面に垂直な方向(高さ)での大きさは
それと同程度もしくは1桁小さい。このような手法で校
正された装置を用いて、二次元方向の大きさが10-10
から10-8m、高さ10-10 から10-9mの構造を測長
するときには、前述した標準試料を用いて校正された駆
動機構もしくは検出機構を数桁小さい領域まで外挿して
用いている。また、高さ方向の標準試料として、格子状
に形状加工されたシリコン酸化膜もあるが、その高さは
10-8m台である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】接触型表面形状観察装
置、および非接触型表面形状観察装置において、数桁大
きい構造から外挿された領域で測長する際には、駆動機
構もしくは検出機構の精度を評価することができなかっ
た。例えば、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡で
は検出機構の駆動に電歪(ピエゾ)素子が一般的に用い
られているが、その動作の非線形性により、このような
外挿手法を10-10 から10-9mの大きさまで適用する
ことは困難であることが知られている。測定表面に平行
な二次元方向の校正には特殊な結晶(走査型トンネル顕
微鏡ではグラファイト、原子間力顕微鏡では雲母)の原
子像から得られる原子間隔をX線回折法、電子線回折法
等の他の手法で得られる値から校正することができる。
一方、表面に垂直な方向では、ある結晶面に平行な面間
隔を測定することが必要であり、表面形状観察装置で検
出器として用いられている探針やレーザービーム等を用
いて、十分広い平面(テラス)を有する標準試料表面を
測定しなければならない。しかも、測定結果が検出手段
の装置関数と表面形状の重ね合わせとして与えられるこ
とを考慮すると、そのテラスの凹凸が校正しようとする
大きさより十分小さい凹凸から構成されることが必要で
あるが、結晶学的に規定されない人工的試料の平坦面の
荒さを、高さ10-10 から10-9m程度以下とすること
は不可能である。また、10-8m台のシリコン酸化膜を
利用した高さ校正用試料もあるが、10-10 から10-9
m台の厚さを有する酸化膜を精度良く形成するのは困難
であるとともに、一般的にシリコンおよび酸化したシリ
コンの表面の凹凸が10-10 から10-9m台以上あるこ
とを考慮すると酸化膜を利用する校正は不可能である。
したがって、表面垂直方向の高さ10-10 から10-9
の距離を標準試料を用いて直接的に校正することができ
なかった。
【0004】さらに、一般に表面形状観察装置の使用者
が入手できる各種標準試料は原器(絶対基準)ではな
く、原器と同様な手法で作製、もしくは原器を複製した
ものであり、標準としての保証精度は低下する。
【0005】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもの
で、原器および複製を使用せず、結晶学的に規定される
すなわち普遍的な物理量を利用することにより、全ての
試料が絶対標準となり得、高さ10-10 から10-9mの
距離を直接的に校正できる測長校正法を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は上記課
題を解決するために、接触型もしくは非接触型表面形状
観察装置において、表面に垂直方向に測定される距離の
絶対値を、単一元素もしくは複数元素からなる結晶の表
面に存在する結晶学的に定義される階段状の段差を用い
て校正することを特徴とするものであり、結晶学的に規
定される階段状の段差構造を有する試料を、接触型表面
形状観察装置、または非接触型表面形状観察装置を用い
て測定し、表面に垂直な方向の距離を結晶学的な距離に
より校正することにより達成される。
【0007】
【実施例】以下、図面に沿って本発明の実施例について
説明する。なお、実施例は例示であって、本発明の精神
を逸脱しない範囲で種々の変更あるいは改良を行いうる
ことは言うまでもない。
【0008】図1は、第1の例であり、シリコン表面の
階段状構造を示す。ここに示す構造は、シリコン基板1
の表面にステップ6,7,8が特定の方向に一様に分布
し、テラス2,3,4,5の幅(ステップ間の距離)は
ほぼ均一である。このような構造は、例えば[−21
1]方向に傾斜したシリコン(111)表面の場合、真
空中で表面を清浄化処理した後、試料に電流を階段を登
る方向に通電し摂氏850度程度で保持することにより
形成される(Jpn.J.Appl.Phys.vo
l.29 p.L2254 1990年)。この表面を
実用に供する表面形状観察装置で測定すると、図2
(a)に示すような図1と同様な形状が観察される。こ
の形状において点Aと点A′を結ぶ複数のステップを横
切る方向の断面を表すと図2(b)のようになる。ここ
でA1,A3,A5およびA2,A4,A6はそれぞれ
ステップの上側および下側の頂点を表している。AとA
1を結ぶ直線(A−A1)、同様に(A2−A3),
(A4−A5),(A6−A′)は結晶学的に定義され
る平坦な表面(テラス)を表している。したがって、そ
れぞれのテラスの間隔、すなわちテラスに垂直な方向の
距離dが結晶学的に定義される面間隔となる。そこで、
距離dに相当する実際に測定された値がd′であれば、
d′をdと換算する。もしくはハードウェアおよびソフ
トウェアを含む装置関数を調整して測定値d′がdとな
るようにすることにより絶対的な距離校正を行うことが
できる。シリコン(111)の場合dは、0.31ナノ
メートル(nm=1x10-9m)に相当する。ただし、
これは理想的に雑音の無い装置及び結晶表面に凹凸のな
い平坦な試料系に対するもので、一般的にはテラス断面
(A−A1)に雑音成分の微小な凹凸が含まれる。それ
を適当な数値演算処理等を用いて直線的なテラスとして
近似して、平均的なステップ高さdを求めることにより
校正することもできる。この際、校正値の誤差が装置関
数に起因する誤差を含むことは言うまでもない。
【0009】同様な第2の例として、先に示したシリコ
ン表面を、例えば真空中で表面を清浄化処理した後、試
料に電流を階段を登る方向に通電し摂氏1150度程度
で保持することにより、図3に示すように、局所的にス
テップを集合させた構造が形成される(Jpn.J.A
ppl.Phys. vol.29 p.L22541
990年)。この表面を実用に供する表面形状観察装置
で測定し、断面形状を求めると図4(a)のような構造
が得られる。B1,B5はステップの上側の頂点であ
り、B2,B6はステップの下側の頂点であり、B3,
B7はステップ集合帯の上側の頂点であり、B4,B8
はステップ集合帯の下側の頂点である。ここで、図3で
はSB,図4(a)ではB3−B4およびB7−B8が
ステップの集合した領域である。また、B1−B2およ
びB5−B6に示されるような図2(b)のA1−A2
に相当するステップが平坦なテラスB−B3,B4−B
7に含まれることがある。それらでは、図2(b)に示
したのと同様な方法で距離校正を行うことができる。ま
た、B3−B4のようなステップが集合した領域を拡大
して示すと、図4(b)のようになっており、それぞれ
のステップの高さd1,d2,d3等が求められる。こ
のd1等が結晶学的に定義される結晶面間隔またはそれ
の整数倍に相当する。したがって、このような構造を用
いることで、例えばシリコン(111)であれば、0.
31nmのみならず、0.62nm,0.93nm等の
値を得ることができ、複数の状態の測定により装置関数
を校正することができる。なお、この場合も雑音成分を
含む測定に対して、数値処理等の近似により校正を行う
ことができる。また、図1および図3の形状のいずれを
用いるかは、校正対象とする表面形状観察装置の特性に
合わせて選択できる。
【0010】第3の例として、ある結晶構造を有する材
料を適当な溶液等に浸すことにより、局所的に侵食(エ
ッチング)された構造を形成することができる。この
際、図5に示すように、材料の結晶性に依存した形状を
呈し、その侵食部を挟む位置C−C′の断面は図6のよ
うな階段構造からなる凹状形態を示す。ここに含まれる
段差構造のステップ高さもまた結晶学的に定義されるた
め図2(b)、図4(a),(b)と同様に高さ校正を
行うことができる。また、このような表面形状は、図1
および図3のような構造を形成するのに真空装置を必要
とするのに対して、化学的な処理によって得られること
から、比較的容易に準備することができる利点を有す
る。
【0011】第4の例としては、ペロブスカイト構造に
代表されるような層状に成長する材料を構成することに
より、図7に示すような階段状の凸構造を得ることがで
きる。これは図5の凹構造を反転させたものに対応し、
その断面構造は図8に示すような形状を呈する。ここに
含まれる段差構造のステップ高さもまた結晶学的に定義
されるため前述したように高さ校正を行うことができ
る。
【0012】なお、第3および第4の例のそれぞれのス
テップ高さは、図4(b)で述べたように結晶学的に定
義される面間隔の整数倍として校正されることがあり、
それに応じた校正を行える。
【0013】以上、述べたように表面形状を変化させる
ことにより特徴的な構造を形成された試料を標準とする
方法(第1,2の例)、局所的に表面を剥離させること
により形成した試料を標準として用いる方法(第3の
例),膜を成長させることにより形成される基板上に蒸
着した構造を標準として用いる方法(第4の例)を述べ
たが、いずれもステップ高さが結晶学的に定義される面
間隔およびその整数倍からなることを特徴としている。
さらに、これらの試料は原器およびその複製を使用しな
いため、何時でもどのような測定環境でも絶対標準をな
りうる。
【0014】
【発明の効果】表面の荒れを問題とする多様な分野で
は、加工技術の高度化、および要求条件の高度化により
表面垂直方向の高さ10-10 から10-9mの距離を測定
しなければならない状況にあるが、従来の技術では装置
および測定結果の絶対的な校正ができなかった。原器お
よび複製を使用せず、結晶学的に規定されるすなわち普
遍的な物理量を利用した本発明を用いれば、全ての試料
が絶対標準となり得、高さ10-10 から10-9mの距離
を直接的に校正できる。したがって、本発明により、表
面形状観察装置の設計および製造者、さらには使用者
が、複製を用いたりまた外挿等の手段による二次的な校
正を行うことができなくなり、第三者の評価も絶対的な
ものとなることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の第1の例に係る段差(ステッ
プ)が階段状に均一に分布したシリコン表面の様子を示
す外観構成図である。
【図2】(a)は図1の試料を表面形状観察装置で測定
した結果の様子を示す外観構成図であり、(b)は
(a)のA−A′に沿った断面図である。
【図3】本発明実施例の第2の例に係る段差(ステッ
プ)を局所的に集合させたシリコン表面の様子を示す外
観構成図である。
【図4】(a)は図3の試料を表面形状観察装置で測定
した結果の断面図であり、(b)は(a)のステップ集
合領域部分を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明実施例の第3の例に係る局所的に表面を
侵食した形状の構成図である。
【図6】図5の試料を表面形状観察装置で測定した結果
のC−C′方向に沿った断面図である。
【図7】本発明実施例の第4の例に係る階段形状を呈す
る材料を基板上に成長させた試料を示す外観構成図であ
る。
【図8】図7の試料を表面形状観察装置で測定した結果
の断面図である。
【符号の説明】
1…シリコン基板、2〜5…テラス、6〜8…ステッ
プ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−196559(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01B 21/00 - 21/32

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 接触型もしくは非接触型表面形状観察装
    置において、表面に垂直方向に測定される距離の絶対値
    を、単一元素もしくは複数元素からなる結晶の表面に存
    在する結晶面間隔もしくは結晶面間隔の整数倍の階段状
    の段差を用いて校正することを特徴とする測長校正法。
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