JP3052957B2 - 荷電粒子ビーム出射方法及び円形加速器 - Google Patents

荷電粒子ビーム出射方法及び円形加速器

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JP3052957B2 JP11074960A JP7496099A JP3052957B2 JP 3052957 B2 JP3052957 B2 JP 3052957B2 JP 11074960 A JP11074960 A JP 11074960A JP 7496099 A JP7496099 A JP 7496099A JP 3052957 B2 JP3052957 B2 JP 3052957B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、荷電粒子ビームを
円形加速器から出射する荷電粒子ビーム出射方法、及び
荷電粒子ビームを出射する円形加速器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の円形加速器では、電子やイオン等
の荷電粒子ビームを加速して周回させ、その周回軌道か
ら出射させた荷電粒子ビームを輸送系で輸送し、物理実
験や医療等に使用してきた。従来の荷電粒子ビームの出
射では、エー・アイ・ピー・コンファランス・プロシー
ディングズNo.127(1983年)(AIP Conference
Proceedings )の第53頁から第61頁において論じら
れているようにビームのベータトロン振動の共鳴が用い
られてきた。
【0003】ベータトロン振動の共鳴とは次のような現
象である。荷電粒子は左右又は上下に振動しながら周回
し、この振動をベータトロン振動という。ベータトロン
振動の周回軌道一周あたりの振動数をチューンと呼び、
チューンは周回軌道上に設けられた偏向電磁石や4極電
磁石などにより制御可能である。上記の従来例では、チ
ューンを整数±1/3に近づけると同時に、周回軌道上
に設けた共鳴発生用6極電磁石を励磁すると、周回して
いる荷電粒子のうち、ある境界以上の振幅を持つ荷電粒
子のベータトロン振動振幅が急激に増加する。この現象
をベータトロン振動の共鳴といい、前記境界を安定限界
と呼ぶ。共鳴の安定限界のベータトロン振動振幅の大き
さはチューンの整数±1/3からの偏差に依存し、この
偏差が小さい程小さくなる。そこで従来技術では、チュ
ーンを徐々に整数±1/3に近付け、すなわち安定限界
の大きさを徐々に小さくし、周回中の荷電粒子のうちベ
ータトロン振動振幅が大きな荷電粒子にまず共鳴を発生
させ、その後振動振幅が小さな荷電粒子に順次共鳴を発
生させて徐々に荷電粒子ビームを出射させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術では、
共鳴の安定限界の大きさを調節することによって荷電粒
子ビームの出射を制御しているため、出射される荷電粒
子ビームの電流値を制御するのは困難であった。
【0005】本発明の目的は、荷電粒子ビームの電流値
を必要とされる電流値に制御することができる荷電粒子
ビーム出射方法及び円形加速器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の特徴は、周回する荷電粒子ビームに高周波の
電場又は磁場或いは電磁場を印加することにより円形
速器から荷電粒子ビームを出射する場合に、円形加速器
から出射された荷電粒子ビームの電流値を測定し、測定
された電流値に応じて高周波の電場又は磁場或いは電磁
場の強度を制御することにある。荷電粒子ビームの電流
値は荷電粒子ビームに印加される高周波の電場又は磁場
或いは電磁場の強度に応じて変化するので、本発明の特
徴によれば、測定された電流値に応じて高周波の電場又
は磁場或いは電磁場の強度を制御することにより、荷電
粒子ビームの電流値を必要とされる電流値に制御するこ
とができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の原理を図を用いて
説明する。図1は、加速したビームを出射する円形加速
器で、本発明の概要を示す図である。円形加速器は、偏
向電磁石3,4極電磁石5,7,共鳴励起用電磁石9,
出射用デフレクター13等から構成される。共鳴励起用
電磁石9は、共鳴発生用の多重極磁場を発生させる電磁
石である。座標系はビーム周回方向をs、水平方向を
x、垂直方向をyとする。ビームは、周回軌道である設
計軌道1の周囲を振動しながら周回する。このベータト
ロン振動振幅はビームを構成する粒子毎に異なり、振幅
の大きな粒子から小さな粒子まで混在している。従っ
て、設計軌道1を周回中のビーム径は、ベータトロン振
動振幅の最大値により決まる。ベータトロン振動の周回
軌道一周あたりの振動数をチューンと呼び、水平方向チ
ューンをνx、垂直方向チューンをνyとする。水平,
垂直方向チューンνx,νyの値は、収束用4極電磁石
5及び発散用4極電磁石7の励磁量により調整できる。
【0008】4極電磁石5及び7を調整して水平方向チ
ューンνxまたは垂直方向チューンνyを整数±p/q
(既約分数)に近づけ、共鳴励起用電磁石9を励磁する
と、安定限界より大きなベータトロン振動振幅を持つ粒
子の振幅は共鳴により増加する。この時の共鳴をq次の
共鳴と呼ぶが、以下では3次の共鳴を例にとりビームを
水平方向から取り出す場合について説明する。
【0009】4極電磁石5及び7を調整して水平方向チ
ューンνxを整数±1/3に近づけ、共鳴励起用電磁石
9(3次共鳴の場合は6極電磁石を使用)を励磁すると
振動振幅の大きな粒子に3次共鳴が励起される。図1の
出射用デフレクター13が設置されているs方向位置を
soとし、s=soにおけるビームの周回毎のxとdx
/dsの関係(位相空間)を図2に示す。図2に示す破
線が、位相空間における安定限界を示している。安定限
界より外側、即ちベータトロン振動振幅が安定限界より
大きな粒子は、共鳴により、一周毎に振動振幅が急激に
増加する。図2の安定限界を越えた粒子に付けた番号は
周回数を示している。安定限界は、チューンνxの整数
±1/3からの偏差が小さいほど、共鳴発生用の多重極
磁場強度が大きいほど小さくなる。図2の20(内側を
20i,外側を20oで示す)は、図1の出射用デフレ
クター13の電極を示しており、電極20に衝突する粒
子は失われ、電極20の間の領域に入った粒子は円形加
速器の外へ出射される。出射される粒子の出射用デフレ
クター位置での軌道勾配dx/dsは、図2から分かる
ように概ねAに等しい。Aは例えば周回軌道と出射用デ
フレクターとのなす角度に設定される。円形加速器から
出射されるビーム径は、出射用デフレクターに入るビー
ム径で決まる。また、3次共鳴の場合、安定限界を越え
た粒子の3周毎の変位増加量(q次共鳴の場合、q周毎
の変位増加量)をターンセパレーションTsと呼ぶが、
Tsは安定限界から離れるほど大きくなり、安定限界が
小さいほど小さくなる。従って、従来技術のように、ベ
ータトロン振動振幅の小さい粒子を出射するためにチュ
ーンを変化させて安定限界を小さくすると、ターンセパ
レーションTsも小さくなるので、安定限界がある程度
小さくなると出射用デフレクターの壁を乗りこえること
ができず、壁に衝突してビームは消滅する。ビームの出
射効率は、出射用デフレクターの壁の厚さをTdとすれ
ば、一次評価として、(Ts−Td)/Tsとなる。従
って、安定限界を小さくするほど出射効率は低くなる。
一般的に、ベータトロン振動振幅が小さいほど、周回ビ
ームの分布は多いので出射効率は低くなる。そこで、本
発明では、安定限界内にある荷電粒子をベータトロン振
動振幅を増加させることによって安定限界の外に移動さ
せる。その結果、安定限界を小さくしなければ取り出せ
なかったベータトロン振動振幅の小さな粒子も、ある程
度のターンセパレーションTsを保ったまま出射でき
る。従って、出射効率の高い、又は出射電流の大きい円
形加速器と、ビーム出射方法及び出射装置を提供出来
る。
【0010】次に安定限界を実質的に一定に保つことの
作用について述べる。安定限界は、前述したように、チ
ューンと共鳴発生用の多重極電磁石の励磁量を調整する
ことにより制御できる。図2は代表粒子の位相空間上の
軌跡を示したもので、他の粒子は図の軌跡間をたどって
移動する。即ち、図2の軌跡間にも多数の粒子が存在す
る。振動振幅が増加したビームのうち出射されるもの
は、出射用デフレクターの2つの電極20i,20o間
に入射したビームである。従って、安定限界を一定に保
つと、出射ビームの勾配,即ち出射角度を一定に保てる
ばかりでなく出射ビーム径,出射位置も一定に保つこと
が出来る。このように、出射位置が一定で、且つターン
セパレーションTsが一定になると、出射効率(Ts−
Td)/Tsも一定となる。出射ビームの勾配、ターン
セパレーションTsについては、出射前に安定限界を設
定する際のチューン選定、即ち4極電磁石の励磁量,共
鳴励起用電磁石の励磁量の大きさの調整により変えるこ
とができるので、出射効率は一定で大きな値になる。
【0011】次に、ビームの特性を表わすエミッタンス
について説明する。ビームのエミッタンスはビームが位
相空間上で占める面積を表わし、ビームのサイズと軌道
勾配の分布幅の積に比例する。例えば、図5の位相空間
に示す安定限界内で周回中のビームのエミッタンスは、
図5の破線で囲まれた面積に等しい。一方、出射ビーム
の出射用デフレクター電極20付近での位相空間を図6
に示す。出射ビームのエミッタンスは、デフレクター電
極20i,20o間に入るビームの幅ΔXと軌道勾配の
変化幅ΔPの積に等しい。前述の安定限界を実質的に一
定にして共鳴を発生させると、図6に示す軌道勾配の変
化幅ΔPは無視できる程度に小さく抑えられ、出射ビー
ムのエミッタンスは一定で、小さな値に抑えることがで
きる。
【0012】次に、前記共鳴の安定限界内にある粒子の
ベータトロン振動振幅を増加させる手段について説明す
る。安定限界内の粒子の振動振幅を増加させるための手
段としては、課題を解決するための手段で示した3つの
方法に大別される。
【0013】(1)の磁場は、出射する面が水平面の時
は垂直方向(y方向)に、出射面が垂直面の時は水平方
向(x方向)に印加する。これは、一周ごとの軌道勾配
の変化は小さいが、磁場によりビームの軌道勾配を変化
させ、この蓄積によりビームの振動振幅を大きくする。
磁場の時間変化は規則的,不規則的どちらでも良い。ビ
ームに磁場を印加する装置としては、電磁石,平行な線
状電極,平板電極、又は円弧状電極等を用いることがで
きる。これらの装置に時間的に変化する電流を流すこと
によりビームに時間変化する磁場が加わり、ベータトロ
ン振動振幅が増加する。
【0014】(2)の電場は、ビームの周回方向、即ち
s方向に印加するか、又は出射する面が水平面の時は水
平方向(x方向)に、出射面が垂直面の時は垂直方向
(y方向)に印加する。s方向に電場を印加するとビー
ムのエネルギーが変化する。ビームのエネルギーが変化
すると偏向電磁石部での軌道の曲率半径が変化するの
で、ベータトロン振動の中心軌道位置が変化し、結果的
にベータトロン振動振幅が変化する。x方向又はy方向
に電場を印加する場合は、(1)の磁場と同様に、ビー
ムに横方向の力を与えることにより軌道勾配を変化さ
せ、ベータトロン振動振幅を増加させる。電場の時間変
化は規則的,不規則的どちらでも良い。電場の印加は、
平行な線状電極,平板電極、又は円弧状電極等に時間変
化する電流を流すか、ボタン状電極や板状電極に時間変
化する電圧を印加するか、高周波空胴に高周波を印加す
ることにより行う。従って、電場の場合は、印加方向が
どの方向であっても電場をs方向とx方向又はy方向に
分解できるので、上記の2つの作用が発生し、ベータト
ロン振動振幅を増加できる。
【0015】また、電極や空胴に時間変化する信号を加
えると電場と同時に磁場も発生するので、主に電場の効
果を利用するときも磁場の効果が重畳され、主に磁場の
効果を利用するときも電場の効果が重畳される。どちら
の場合でもベータトロン振動振幅は増加するため、単一
の場合と同様にビームが出射できる。
【0016】ビームのベータトロン振動振幅を増加させ
るために、前述のようにビームの進行方向に垂直に時間
変化する電場又は磁場を印加する場合、その周波数成分
は、ベータトロン振動に同期する周波数成分を含んでい
ることが望ましい。これは、ベータトロン振動に同期す
る周波数成分を含む電磁場をビームに印加すると、電磁
場がベータトロン振動に同期し、効率的にベータトロン
振動振幅を増加できるためである。ベータトロン振動に
同期する電磁場の周波数は、チューンの小数部、又は1
からチューンの小数部を引いた値と周回周波数の積から
求めることができる。ビーム出射の際に共鳴を発生させ
るために多重極電磁石が必要であるが、多重極電磁石を
励磁すると、ビームのチューンはベータトロン振動振幅
に依存して変化する。即ち、ベータトロン振動振幅の大
きいビームと小さいビームのチューンは異なる。また、
ビームのベータトロン振動振幅は、大きな値から無限小
まで連続的に分布するので、ビームのチューンも連続的
に分布する。従って、外部から印加する電磁場に複数の
周波数成分を持たせ、それらをビームのチューンに近い
値にすれば、効率的にベータトロン振動振幅を増加させ
ることができる。特に、上述のようにビームのチューン
が連続的に分布するので、連続的な周波数成分を有する
ノイズで、かつ、ベータトロン振動に同期する周波数成
分を含む電磁場を用いることが望ましい。ただし、単一
の周波数でも、分布するビームのチューンに概ね等しい
周波数を持つ電磁場を用いることにより、ベータトロン
振動振幅を増加させることは可能である。この場合、上
記の複数の周波数成分を持つ高周波に比べ、大きな電磁
場強度が必要になる。
【0017】また、外部から印加する電磁場に上述のノ
イズを用いた場合の別の効果を説明する。加速器の電磁
石の電流にリップルが含まれていると、これに同期して
チューンが時間的に変化し、図5の安定限界の大きさが
変化する。従って、従来のように図5の安定限界を徐々
に小さくする出射方法では、安定限界の大きさは電流リ
ップルに同期して振動しながら小さくなるので、ビーム
が間欠的に出射される可能性が高い。一方、強度がラン
ダムに変化する電磁場をビームに印加すると、ビームは
図5に示す位相空間内で拡散し、ベータトロン振動振幅
が増加する。この時、ノイズによるベータトロン振動振
幅の変化量をΔAn、時間をt、定数をDとすると、
(ΔAn2)=Dtと表せる。ここで、(ΔAn2)は
ビームの振動振幅変化の全粒子についての平均値を示
す。これから、ビームの振動振幅変化の時間微分は0.
5(D/t)0.5となり、短時間内の増加率は大きい
が、長時間での増加率は小さくなる。従って、長時間か
けてゆっくりとビームの振動振幅を増加させる場合で
も、電磁石電流のリップル周期程度の時間内ではベータ
トロン振動振幅の増加幅を安定限界の変化幅よりも大き
くできるので、電源リップルの影響をほとんど受けずに
ビームを出射することができる。
【0018】更に(3)では、円形加速器を周回中のビ
ームとは別の粒子を円形加速器内に入れ周回ビームと衝
突させる。衝突により生じる散乱の結果、軌道勾配が変
化し、周回ビームのベータトロン振動振幅が増加する。
衝突させる粒子は、中性粒子でも荷電粒子でもどちらで
も良い。また、衝突させる粒子はガスとして注入して
も、薄膜として加速器内に設置しビームを衝突させても
良い。
【0019】最後に、ベータトロン振動振幅の増加速度
を制御する手段の作用について述べる。出射電流は、安
定限界内粒子のベータトロン振動振幅の増加速度を制御
することにより調整できる。上記の(1)又は(2)の
電磁場を用いてベータトロン振動振幅を増加させる場合
は、電極等に印加する信号強度を変えることにより、電
場又は磁場の強度を変化させる。出射電流を増加させ速
くビームを出射する場合は印加する信号強度を大きく
し、出射電流を減小させゆっくりビームを出射する場合
は印加する信号強度を小さくする。同様の方法を用いる
ことにより、出射過程で出射電流を時間的に変化させる
こともできる。更に、出射電流を一定に保つ場合には、
軌道周回中のビームの分布に合わせて増加速度を調節す
る。
【0020】単位時間当りに出射されるビームの量は、
その時に加速器を周回しているビームの粒子数に概ね比
例する。周回ビームの粒子数は出射に伴い減少するの
で、一定割合でビームを出射するためには、出射中に電
磁場強度を強くすることによりベータトロン振動振幅の
増加速度を速くする必要がある。このようにして、出射
電流の量をベータトロン振動振幅の増加速度により制御
できるので、出射の開始及び停止を電磁場印加の開始及
び停止で制御できる。従って、予め決めた運転計画だけ
でなく、ビーム使用者側からの要求によるビームの出射
・停止も可能であり、更に、ビーム出射の緊急停止も行
える。
【0021】(3)の方法を用いる場合は、円形加速器
内に入れる他の粒子の数を調整することにより、電磁場
でベータトロン振動振幅を増加させる場合と同様に調整
できる。
【0022】また、上記の出射電流の調整のほかに、チ
ューン調整又は共鳴励起用電磁石の励磁量を変化させる
ことにより安定限界の大きさを変えて出射電流を調整す
る方法を加えることによっても、上記と同様に出射電流
を制御できる。
【0023】出射ビームの勾配,ターンセパレーション
Tsについては、出射前に安定限界を設定する際のチュ
ーン選定、即ち、4極電磁石の励磁量,共鳴励起用電磁
石の励磁量の大きさの調整により変えることができる。
【0024】(実施例)以下、本発明の実施例を図面を
用いて詳細に説明する。
【0025】図1は、本発明の第1の実施例で、エネル
ギーがおよそ20MeVのプロトンを入射し、100M
eVまで加速後、出射する円形加速器の機器構成を示す
図である。円形加速器は、前段加速器16からのビーム
17をビーム輸送系18を介して入射させる入射器1
5,入射されたビーム17にエネルギーを与える高周波
加速空胴8,ビーム軌道を曲げる偏向電磁石3,ビーム
のベータトロン振動を制御する4極電磁石5,7,出射
時の共鳴を励起するための6極電磁石9,ビームに時間
変化する磁場および電場を印加することにより共鳴の安
定限界内粒子のベータトロン振動振幅を増加させる高周
波印加装置14、及びベータトロン振動振幅が増加した
粒子を出射用ビーム輸送系に出射する出射用デフレクタ
ー13などから構成される。これらの機器のうち、6極
電磁石9,高周波印加装置14、及び出射用デフレクタ
ー13は、ビームを目標エネルギーまで加速した後の出
射する過程でのみ使用する。
【0026】入射器15から入射されたビームは、周回
する過程で偏向電磁石3で軌道が曲げられる。また、4
極電磁石では、設計軌道1からのずれに比例した力で軌
道勾配が変えられる。4極電磁石5は水平方向にビーム
を収束させ垂直方向にビームを発散させるように軌道勾
配を変え、4極電磁石7は水平方向にビームを発散させ
垂直方向にビームを収束させるように軌道勾配を変える
働きをする。これらの4極電磁石の働きにより、ビーム
は設計軌道1のまわりをベータトロン振動しながら周回
し、ベータトロン振動の振動数は、収束用4極電磁石
5,発散用4極電磁石7の励磁量により制御できる。入
射と加速の過程でビームを安定に周回させるには、加速
器一周あたりのベータトロン振動数(チューン)が共鳴
を生じない値にしておく必要があり、特に、次数の低い
共鳴を起こすチューンから離しておく必要がある。本実
施例では水平方向チューンνxを1.73 、垂直方向チ
ューンνyを1.23 になるように4極電磁石5,7を
調整しておく。この状態でビームは加速器内を安定に周
回するが、その過程で高周波加速空胴8からエネルギー
を与えられる。高周波加速空胴に印加する高周波の周波
数fは、ビームが周回する周波数の整数倍(n倍)にす
る。この高周波の周波数に同期するようにビームは、周
回方向即ちs方向にn個の塊状(バンチ状)になって周
回する。高周波加速空胴8からビームにエネルギーを与
えながら偏向電磁石3及び4極電磁石5,7、各々の磁
場強度比を一定に保ちながら、磁場強度を増加させる。
そうすると、偏向電磁石の曲線部では、ビームエネルギ
ーの増加による遠心力増加と偏向電磁石の励磁量の増加
による向心力増加とが釣合い、同一軌道を中心に周回す
る。この過程でのs方向の出射位置s=soでの位相空
間(x,dx/ds)上の軌跡を図3に示す。図3の位
相空間上の軌跡は、径が異なる相似形の楕円が多数なら
んでいるように見えるが、楕円の径の大きさがベータト
ロン振動振幅の大きさに対応し、楕円の径が小さいほど
ベータトロン振動振幅も小さくなる。
【0027】目標エネルギーまで加速した後、出射する
過程での運転方法を図4に示す。まず図4(1)に示す
ように高周波加速空胴8からのビームへのエネルギー付
与を停止する。これにより、ビームはバンチ状から連続
状ビームになる。次に、図4(2)で収束用4極電磁石
5の電源と発散用4極電磁石7の電源を調整し、水平方
向チューンνxを1.67 にする。次に図4(3)のよ
うに6極電磁石9に共鳴励起のための電流を流す。6極
電磁石9に流す電流は、周回中のビームのベータトロン
振動振幅が大きい粒子が安定限界内に納まる程度の値に
し、その値は予め計算で求めるか、出射の運転の繰り返
しを通じて求める。この時、出射用デフレクター13の
位置での位相空間は図5に示すようになり、位相空間に
おける軌跡は三角形状になる。次に、図4(4)に示す
ように、図1の円形加速器の高周波印加装置14によ
り、不規則な時間変化信号をビームに印加する。図7
に、高周波印加装置14の構成を示す。図7の電極2
5,26は棒状電極で水平方向に対向させて配置し、両
電極に逆向きの電流を電源24から流すことにより、図
7に示す方向の磁場と電場がビームに加わる。図7の負
荷抵抗23は、印加した電流が電極端部から電源側に反
射しないように設置している。ビームの軌道勾配が電
場,磁場の効果で変化し、図5に示す位相空間内のビー
ムのベータトロン振動振幅が増加し始め、図5に示す安
定限界をこえた粒子は、共鳴によりベータトロン振動振
幅が急激に増加し、出射用デフレクター13から出射さ
れる。その後も電極25,26に不規則信号を加えると
各粒子のベータトロン振動振幅は増加し、初期のベータ
トロン振動振幅が小さな粒子もやがて図5の安定限界を
こえ、出射用デフレクター13から出射される。図5の
位相空間で安定限界は一定であり、出射ビームの軌道勾
配dx/ds及びターンセパレーションTsも出射過程
で一定に保たれる。ここでは、図7に示すような電極を
用いたが、加速器を構成する各電磁石のうちのいずれか
の電源電流に時間変化する成分を重畳させるか、新た
に、出射時の共鳴の安定限界内の粒子のベータトロン振
動を増加させるための専用電磁石を設け、この電源電流
を不規則に変化させることにより上記と同様の出射がで
きる。
【0028】上記実施例では、ベータトロン振動振幅が
極めて小さいビームのチューンは4極電磁石で設定した
1.67 になっているが、共鳴発生用の多重極電磁石の
効果により、安定限界近くのベータトロン振動振幅の大
きな粒子のチューンはこの値から1.67−1.6666
=0.003 程度ずれ、振動振幅がこれらの間にあるビ
ームのチューンは1.6666と1.67の間に連続的に
分布する。一方、作用の項で述べたように、ビームのベ
ータトロン振動振幅を増加させるためには、ビームのチ
ューン分布に概ね等しい周波数成分を有する電磁場をビ
ームに印加することが望ましい。従って、図7の不規則
信号電源24は、きわめて広い周波数スペクトルのノイ
ズでもよいし、周波数帯域が周回周波数のおよそ0.6
5 倍から0.70 倍の範囲になっているか、もしく
は、周回周波数の整数倍に上記範囲内の周波数を加えた
周波数スペクトルを持たせるようにしてもよい。不規則
信号電源の一構成例を図8に示す。図8に示すようにほ
ぼ無限の周波数スペクトルを持つ雑音源51からフィル
ター52を通して周波数が0から周回周波数の0.025 倍
までの周波数成分を通した後、ビームの周回周波数の
0.675 倍の周波数の信号を局部発振器53で発生さ
せてフィルター52の出力信号との積を、乗算器54で
求めると周回周波数の0.65倍から0.7倍までのスペ
クトルを持つ不規則信号を作ることができる。また、こ
れ以外に局部発振器53を使用せず、フィルター52の
通過周波数を変化させることによっても、必要な周波数
スペクトルを持つ高周波源を作ることができる。また、
本実施例ではビームへの外乱として不規則信号を用い、
位相空間内でビームを拡散させることにより、電磁石電
源の電流リップルの影響を受けずに一定電流でビームを
出射できる。
【0029】次に、本発明の第2の実施例を説明する。
第2の実施例では、電極に印加する信号を規則的にする
以外は第1の実施例と同じ機器構成であり、出射時の運
転方法も図4と同じである。電極25,26には、図7
の不規則信号電源24の代わりに図9に示す単一周波数
信号源55を用いて、周波数がfの交流信号を印加す
る。周波数fは、ビームが周回する周波数Frevと、出射
時のチューンの整数からの端数0.33(=1−0.6
7)との積に等しい値とする。このような周波数の信号
を加えると、電極から加えられる外部信号の周期とベー
タトロン振動の周期が概ね一致するので、図5の安定限
界内の粒子についてもベータトロン振動振幅が増加し安
定限界をこえて、第1の実施例と同様に出射される。こ
のように、単一周波数の交流信号を加えた場合には、こ
の周波数に同期するチューンを持つ粒子に外部信号によ
る共鳴が生じ、その結果、急速に振動振幅を増加し短時
間の出射ができる。但し、外部信号に共鳴しない多数の
粒子は、前記共鳴粒子に比べ遅れて出射される。
【0030】また、上記実施例では、図9の単一周波数
の外乱を用いているが、図10に示す単一周波数信号源
55を複数個用いて、複数の周波数f1,f2,…,f
nの信号を和算器56を通して電極25,26に加えれ
ば、単一周波数の外乱を使用した場合に比べ、チューン
に幅を持つビームを出射し易くなる。この場合、印加す
る信号の周波数は、分布のあるチューンに近い値にする
ことが望ましい。
【0031】第1,第2の実施例では図7の25,26
に示す2つの電極を用い、両電極に逆極性の信号を加え
ることにより、ビームに電磁場が加わり、軌道勾配が変
化した。一方、同一の電極を用い、2つの電極に同じ極
性の信号を印加すると、電極25,26のs方向端部で
s方向の電界が生じ、ビームは加速又は減速されビーム
の軌道勾配が変化するので、ビームのベータトロン振動
振幅は増加する。この時、電極の構造は棒状だけでな
く、板状でもかまわない。また、両電極に逆極性の信号
を加える場合は、小円板状電極を用いることによりx方
向、又はy方向の電場を発生させることができる。一般
的には、金属電極に外部から時間変化する信号を加えれ
ば、電磁場が発生しビームの軌道勾配を変えることがで
きるので、ビームのベータトロン振動振幅を増加させる
ことができる。
【0032】次に、本発明の第3の実施例を説明する。
第3の実施例の機器構成を図11に示す。図1の実施例
1と異なる点は、出射のための2次共鳴(半整数共鳴)
励起のための多重極電磁石として8極電磁石30を用い
ることと、共鳴の安定限界内のベータトロン振動振幅の
増加のためのに高周波印加空胴31を用いることであ
る。ただし、高周波印加空胴31は、ビームを低エネル
ギーから高エネルギーまで加速するための高周波加速空
胴8とは別な空胴を使用する。第3の実施例についてビ
ームを所定エネルギーまで加速した後の運転方法を図1
2に示す。加速終了後、図12(1)で高周波加速空胴
8を停止し、図12(2)で収束用4極電磁石5及び発
散用4極電磁石7を調整し、水平方向チューンνxを
1.55 に近づける。この後、8極電磁石30を励磁す
る。8極電磁石の磁場強度は、粒子が、異なる振幅でベ
ータトロン振動しながら安定に周回する強度にしてお
く。ここで、高周波印加空胴31に、時間的に不規則に
変化する信号を印加する。この高周波印加空胴31は、
図13に示すように、ビームの周回(s)方向に電場が
生じ、垂直(y)方向に磁場が生じる空胴で、この空胴
部でビームの軌道勾配が周回ごとに不規則に変化し、初
期のベータトロン振動振幅が大きな粒子から順次安定限
界を越え出射用デフレクター13から出射される。高周
波印加空胴31に不規則に変化する信号を加え続けるこ
とにより、第1の実施例と同様な作用により初期のベー
タトロン振動振幅が小さな粒子の振幅も大きくなり、安
定限界をこえて出射される。
【0033】次に、本発明の第4の実施例について述べ
る。第4の実施例は、出射中のビーム位置,ビーム電流
を調整する方法に関する実施例である。第4の実施例の
機器構成を図14に示す。図1の第1の実施例の機器構
成に加えて、出射ビームの軌道補正用電磁石35,ビー
ム位置計測装置32,電流計測装置33、及び制御用計
算機34が具備されている。本機器構成を用いた運転方
法を図15に示す。本実施例では、図14に示す制御用
計算機34に予め記憶させておいたパターンに従って、
高周波印加装置14に印加する不規則に時間変化する信
号の強度を制御する。制御用計算機34に記憶させる信
号強度パターンは、円形加速器にビームを入射・加速し
た後、出射するまでを1回の運転として、1回の運転毎
に決められる。入射,加速、及び出射の運転方法は図4
の運転方法と同じである。高周波印加装置14に印加す
る信号の強度パターンは、計算機に予め記憶させておい
た目標のビーム位置及びビーム電流の時間変化と、ビー
ム位置計測装置32及びビーム電流計測装置33で測定
されたビーム位置及びビーム電流との差が最小になるよ
うに決定する。目標のビーム電流は、時間的に一定のパ
ターンだけでなく、電流の出射,停止を繰返すようなパ
ターンでも、ベータトロン振動振幅を増加させる手段の
使用,停止により容易に実現できる。
【0034】本実施例では、ビーム計測装置を使って高
周波信号強度パターンを変化させて所望の特性を得るよ
うにしているが、ビーム計測装置を使わなくても、高周
波印加装置14に印加する信号の強度を出射中に増加す
ることにより時間的に一定のビーム電流を出射できる。
これは、出射初期には、強度の小さな信号で出射可能な
ベータトロン振動振幅の大きな粒子が多数存在するのに
対し、出射後期には周回する粒子数が減り、一定の出射
電流を得るためにはビームのベータトロン振動振幅の増
加速度を増加させることが必要となるからである。従っ
て、このような時間変化の高周波信号強度パターンを予
め与えておけば、図15の運転においてより短時間で目
標パターンを実現できる。
【0035】また、本実施例では目標のビーム特性を得
るために、高周波印加装置14に印加する信号強度のみ
を調整しているが、高周波信号の周波数及び周波数スペ
クトルの調整、更に、これに加えて共鳴の安定限界の大
きさの調整、即ち4極電磁石によるチューンの調整,共
鳴励起用の多重極電磁石9の強度調整、又は他の電磁
石、例えば、偏向電磁石3や軌道補正用電磁石35等を
使用しても同様の調整が行える。
【0036】上記実施例は正常運転時の出射ビームの制
御であるが、次に、図16を用いて第5の実施例であ
る、出射中の緊急停止時の運転方法を説明する。図16
で(5)までは通常運転で、図4の運転方法と同じであ
る。図16(6)で、ビーム使用系からの停止信号又は
各種安全系からの緊急停止信号の有無を判定し、停止信
号がある場合はビーム系増加のための高周波信号を停止
し、ビームの出射を停止する。ビーム出射のための高周
波信号は数μsで停止できるため、ビーム出射の停止が
短時間に確実に行える、また、この高周波信号の停止と
出射ビーム輸送系の電磁石による軌道変更を同時に使え
ばさらに確実にビームを停止できる。また、ビーム出射
を途中で停止しても、出射のための不規則信号を再び印
加することにより加速器に残っているビームを出射でき
る。図16は、出射のために不規則信号を印加する場合
であるが、単一又は複数の周波数の交流信号を印加する
場合についても全く同様である。
【0037】次に第6の実施例を図17を用いて説明す
る。第6の実施例では、中性粒子と周回ビームを衝突さ
せて共鳴の安定限界内の粒子のベータトロン振動振幅を
増加させる。図1の実施例では、時間変化する電磁場を
ビームに印加するために高周波印加装置14を使用した
が、本実施例では高周波印加装置14の代わりに中性粒
子注入装置36を使用する。本実施例での運転方法を図
18に示す。図18の(4)の中性粒子注入の部分を除
いては、図4の運転方法と同じである。中性粒子との衝
突により、周回ビームのベータトロン振動振幅を徐々に
増加させることができるので、共鳴の安定限界を一定に
保ちながら、ビーム位置,ビーム径,ターンセパレーシ
ョンが各々一定の出射が実現できる。出射電流の調整
は、中性粒子の注入量により調整できる。
【0038】次に第7の実施例を説明する。第7の実施
例では、周回ビームと異なる荷電粒子と周回ビームを衝
突させて共鳴の安定限界内の粒子のベータトロン振動振
幅を増加させる。図17の第6の実施例では、中性粒子
注入装置36を使用したが、本実施例では、その代わり
に図19に断面を示すイオン入射装置を使用する。イオ
ン源から出たイオンを水平方向に周回ビーム領域に打込
む。このイオン源からのイオン打込みは図18に示す運
転方法の中性粒子注入に代わって行うが、ビームの出射
については上記した他の実施例と同一の特性が実現でき
る。また、ガスやイオンを打込む領域に薄膜を設置し
て、荷電粒子ビームを衝突させても同じ出射が実現でき
る。
【0039】以下、本実施例の効果をシミュレーション
で示す。シミュレーションの条件としては、荷電粒子と
してプロトンを用い、周回時の最終エネルギーは300Me
V、利用する共鳴は第3の実施例で示した2次共鳴とす
る。また、出射用デフレクターの電極の位置は、水平方
向で60mmとする。図20,図21は従来技術の運転方
法で、共鳴発生前のベータトロン振動振幅が10mm,3
mmのプロトンに対して、チューンの1/2からのずれを
0.01とし、このずれを0.01から0.001に変化
させて共鳴させた時の位相空間を示す。2次共鳴の安定
限界は、3次共鳴と異なり楕円状の形を取る。一方、図
22,図23は、本実施例の運転方法を示す図である。
図22は、共鳴発生前のベータトロン振動振幅が3mmの
プロトンに対し、チューンの1/2からのずれを0.0
1 に調整して共鳴させると共に、高周波印加装置14
で不規則にビームのベータトロン振動振幅を徐々に増加
させる時の位相空間を示す。図23は、図22の状態が
さらに進み、安定限界(約10mm)を超えたプロトンが
出射されている時の位相空間を示す。従来の運転方法で
は、共鳴発生前のベータトロン振動振幅が10mm,3mm
の時のターンセパレーションTsは各々約10mmと約1
mmである。従って、従来技術ではベータトロン振動振幅
が3mmのプロトンは電極に衝突し、ほとんど出射させる
ことができない。また、チューンの1/2からのずれを
0.01から0.001に調整しているために、出射勾配
が7mrad も変化する。一方、本実施例では、共鳴発生
前のベータトロン振動振幅が3mmでも、徐々にベータト
ロン振動振幅が増加し約10mmになると共鳴を起こし、
図21と同様にターンセパレーションTs10mmで出射
される。また、初期のベータトロン振動振幅が3mmより
さらに小さくなった場合と、初期振動振幅が10mmの場
合の出射用デフレクター位置における軌道勾配の差は
0.01mrad以下であり、出射ビームのエミッタンスは
1πmm・mrad 以下である。このように、初期のベータ
トロン振動振幅が10mm以下の小さな値のビームも、1
0mmの場合と同様に出射できる。本実施例では、チュー
ン,ターンセパレーションTsを一定にできるので、出
射勾配,出射位置、及びビーム径を一定にできる。更
に、ビームの分布はベータトロン振動振幅が小さい方が
多いので、従来の運転方法では出射効率50%を得るこ
とはできないのに対して、本実施例の運転方法では出射
効率を90%以上にすることができる。
【0040】最後に、本発明の医療用加速器システムの
実施例を図24を用いて説明する。本実施例では前段加
速器16からのビームを入射器15により円形加速器10
1に入射する。円形加速器101の構成及びビームの出
射方法は図1に示した第1の実施例と同じであり、前段
加速器16からビームを入射した後、0.5 秒でビーム
を所望エネルギーまで加速し、1秒かけて長いパルス状
のビームを出射する。次の0.5 秒で電磁石の励磁量を
減少させて、次の入射・加速に備える。このようにし
て、ビームの入射・加速・出射を2秒ごとに繰り返す。
出射では、共鳴の安定限界を一定にし、出射用高周波印
加装置14によりベータトロン振動振幅を増加させ、ビ
ームに共鳴を発生させる。共鳴の安定限界が一定である
ため、出射用デフレクター位置での軌道勾配,ターンセ
パレーションが一定となり、時間的に一定の出射効率で
出射でき、出射効率90%以上を得ることができる。出
射用デフレクター13から出射されたビームは、ビーム
輸送系102により複数の治療室103へ輸送される。
輸送系102には、ビーム径や軌道勾配を調整する輸送
系電磁石104が設置されている。輸送されるビームの
エミッタンスは、図20,図23を用いて説明したよう
に、1πmm・mrad以下である。ビームのサイズは、エミ
ッタンスとベータトロン関数と呼ばれる量の積の1/2
乗の2倍から求まる。ベータトロン関数は、ビーム輸送
系の位置によって異なるが、輸送系電磁石104の励磁
量を調整することにより20m以下に抑えることができ
るので、輸送系における最大ビームサイズは10mm程度
になる。従って、輸送系102に用いる真空ダクト径
は、余裕を見ても20mm以下の小型にすることができ
る。出射ビームの複数の治療室への輸送切替は、ビーム
切替用電磁石105を用いて行う。ビームの切り替え
は、ビームの出射過程、即ち1秒以内の短時間に繰り返
し行う。こうして、1回の出射中にビームを複数の治療
室へ繰り返し振り分ける。もちろん、1回の出射中は1
つの治療室にのみビームを輸送し、次の出射で次の治療
室にビームを切り替えることも可能である。治療室で患
者に照射するビームのサイズ,位置などの調整は照射ビ
ーム調整電磁石(図示せず)を用いて行うが、本発明の
出射方法では出射ビームのエミッタンスは1πmm・mrad
以下で一定であるから、患者に照射するビームのサイズ
及び位置変化は3mm以下に抑えることができる。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、荷電粒子ビームの電流
値を必要とされる電流値に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の円形加速器を示す図で
ある。
【図2】位相空間における安定限界を示す図である。
【図3】ビームの入射・加速時の位相空間を示す図であ
る。
【図4】第1の実施例の出射時の運転方法を示す図であ
る。
【図5】第1の実施例の出射直前の位相空間を示す図で
ある。
【図6】第1の実施例の出射用デフレクター電極を示す
図である。
【図7】第1の実施例の高周波印加装置の構成を示す図
である。
【図8】図7の不規則信号電源の一構成例を示す図であ
る。
【図9】第2の実施例の単一周波数信号源の一構成例を
示す図である。
【図10】第2の実施例の複数周波数信号源の一構成例
を示す図である。
【図11】第3の実施例の加速器を示す図である。
【図12】第3の実施例の運転方法を示す図である。
【図13】第3の実施例の高周波印加用空胴を示す図で
ある。
【図14】第4の実施例の加速器を示す図である。
【図15】第4の実施例の運転方法を示す図である。
【図16】第5の実施例の運転方法を示す図である。
【図17】第6の実施例の加速器を示す図である。
【図18】第6の実施例の運転方法を示す図である。
【図19】第7の実施例のイオン入射装置を示す図であ
る。
【図20】共鳴前のベータトロン振動振幅が10mmのプ
ロトンを従来の運転方法で共鳴させた時の位相空間を示
す図である。
【図21】共鳴前のベータトロン振動振幅が3mmのプロ
トンを従来の運転方法で共鳴させた時の位相空間を示す
図である。
【図22】共鳴前のベータトロン振動振幅が3mmのプロ
トンを本発明の運転方法で共鳴させた時の位相空間を示
す図である。
【図23】図22の状態が進み、安定限界(約10mm)
を超えたプロトンが出射されている時の位相空間を示す
図である。
【図24】本発明の医療用加速器システムの一構成例を
示す図である。
【符号の説明】
1…設計軌道、3…偏向電磁石、5…収束用4極電磁
石、7…発散用4極電磁石、8…高周波加速空胴、9…
共鳴励起用電磁石、13…出射用デフレクター、14…
高周波印加装置、15…入射器、20…出射用デフレク
ター電極、22…真空ダクト、23…負荷抵抗、24…
電源、25,26…棒状電極、31…高周波印加空胴、
32…位置計測装置、33…電流計測装置、34…計算
機、50…増幅器、51…雑音源、52…フィルター、
53…局部発振器、54…乗算器、55…単一周波数信
号源、56…和算器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 洋之 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (56)参考文献 特開 平3−263800(JP,A) 特開 平5−266999(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05H 13/04 H05H 7/10

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】周回する荷電粒子ビームに高周波の電場又
    は磁場或いは電磁場を印加することにより円形加速器か
    ら荷電粒子ビームを出射する荷電粒子ビーム出射方法で
    あって、 前記円形加速器から出射された荷電粒子ビームの電流値
    を測定し、測定された電流値に応じて前記高周波の電場
    又は磁場或いは電磁場の強度を制御することを特徴とす
    る荷電粒子ビーム出射方法。
  2. 【請求項2】前記高周波の電場又は磁場或いは電磁場の
    強度を制御するのと共に、測定された電流値に基づいて
    前記高周波の電場又は磁場或いは電磁場の周波数を制御
    することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム出
    射方法。
  3. 【請求項3】入力される高周波信号に基づいて高周波印
    加装置が発生する高周波の電場又は磁場或いは電磁場を
    周回する荷電粒子ビームに印加することによって、円形
    加速器から荷電粒子ビームを出射する荷電粒子ビーム出
    射方法であって、 前記円形加速器から出射された荷電粒子ビームの電流値
    を測定し、測定された電流値に応じて前記高周波信号の
    強度を制御することを特徴とする荷電粒子ビーム出射方
    法。
  4. 【請求項4】前記高周波信号の強度を制御するのと共
    に、測定された電流値に基づいて前記高周波信号の周波
    数を制御することを特徴とする請求項3記載の荷電粒子
    ビーム出射方法。
  5. 【請求項5】前記高周波信号の強度は、前記測定された
    電流値と予め設定された電流値の差が最小となるように
    制御されることを特徴とする請求項3記載の荷電粒子ビ
    ーム出射方法。
  6. 【請求項6】 入力された高周波信号に基づいて高周波の
    電場又は磁場或いは電磁場を発生し 、発生した高周波の
    電場又は磁場或いは電磁場を周回する荷電粒子ビームに
    印加することによって共鳴の安定限界内の荷電粒子ビー
    ムを前記共鳴の安定限界外に移動させる高周波印加装置
    と、前記高周波印加装置により前記共鳴の安定限界外に
    移動させられた荷電粒子ビームを出射する出射用デフレ
    クターとを備えた円形加速器であって、 前記出射用デフレクターから出射された荷電粒子ビーム
    の電流値を測定する電流計測装置と、前記電流計測装置
    により測定された電流値に応じて前記高周波信号の強度
    を決定する計算機とを備えたことを特徴とする円形加速
    器。
  7. 【請求項7】 前記計算機は、前記測定された電流値と予
    め設定された電流値の差が最小となるように前記高周波
    信号の強度を決定することを特徴とする請求項6記載の
    円形加速器。
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