JP3051920B1 - 土壌の病害抑止性の評価方法 - Google Patents

土壌の病害抑止性の評価方法

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JP3051920B1 JP10334040A JP33404098A JP3051920B1 JP 3051920 B1 JP3051920 B1 JP 3051920B1 JP 10334040 A JP10334040 A JP 10334040A JP 33404098 A JP33404098 A JP 33404098A JP 3051920 B1 JP3051920 B1 JP 3051920B1
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直幸 松本
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農林水産省農業環境技術研究所長
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Abstract

【要約】 【課題】 土壌の病害抑止性評価方法の提供。 【解決手段】 測定対象微生物を添加した寒天培地に被
検土壌を被覆し、次いで該微生物を培養し、得られる培
養物から該微生物の生育度を測定することを特徴とする
土壌の病害抑止性の評価方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土壌の病害抑止性
の評価方法及び土壌の病害抑止性評価用キットに関す
る。
【0002】
【従来の技術】作物の圃場栽培において、作物の生育を
盛んにしできるだけ多くの収穫を得るためには、健全な
土壌条件が必要である。そのような土壌条件を設定する
には、過不足のない養分、空気及び水の供給、適切な温
度の設定、並びに有害物質及び有害生物の排除などが特
に大切である。そして、所望の土壌条件を長期間維持す
るためには、土壌監視、肥培管理及び土壌改良が必要で
ある。この場合、作物の栽培に必要とされる土壌の性質
は栽培する作物の種類によって大きく異なるため、行う
べき土壌改良及び肥培管理の実施内容は、作物の種類に
よって異なっている。
【0003】従って、例えば新たに林地を開拓し農地と
して用いる場合、まず、農地にどのような土壌が分布し
ているのか、予め土壌の特徴・性質を十分に把握するこ
とが重要である。最近、土壌改良や肥培管理に役立てる
ために、土壌診断がなされている。一般に、土壌診断と
は、過去の作物の収量・調査結果の整理などによる診断
地域の概況把握、聞き取り調査、現地での観察による問
題点の把握に基づき、分析項目を決定し、それに従って
詳細な土壌の分析診断を行い、得られた結果を総合的に
判断するというものである。
【0004】特に、土壌病害は、発生後、時間ととも
に、その汚染程度が高くなるため、植物病原菌に侵され
た土壌を早期に診断し、早期に処置することが特に重要
である。現在、土壌の持つ土壌病害抑止性の評価は、主
に対象土壌に実際に作物を栽培し、対象病害の発病程度
を判定することにより行われている。しかし、その実施
には、多大の時間、場所、機材等が必要であり、従って
簡便で迅速な土壌病害抑止性の評価方法が求められてい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、簡便、迅速
かつ正確に土壌病害抑止性を評価するための方法及びキ
ットを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意研究を行った結果、寒天培地に土壌
病原菌を添加し、該寒天培地に土壌を被覆して培養する
ことにより、極めて簡便、迅速且つ正確に土壌の病害抑
止性を評価することができることを見出し、本発明を完
成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、測定対象微生物を添
加した寒天培地(測定対象微生物の生育度を示す指標剤
を含むものが好ましい)に被検土壌を被覆し、次いで該
微生物を培養し、得られる培養物から該微生物の生育度
を測定することを特徴とする土壌の病害抑止性の評価方
法である。ここで、寒天培地への測定対象微生物の添加
は、寒天培地上で前培養させた菌叢寒天片(例えば、寒
天培地上に生育させた測定対象微生物の菌叢をコルクボ
ーラーで打ち抜いたもの)を置床することにより行うこ
とができる。また、測定対象微生物としては、菌類、細
菌類又は放線菌類などが挙げられる。さらに、本発明
は、寒天培地及び測定対象微生物を含む、土壌の病害抑
止性評価用キットである。以下、本発明を詳細に説明す
る。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の土壌の病害抑止性の評価
方法は、測定対象微生物を添加した寒天培地に被検土壌
を被覆し、次いで該微生物を培養し、得られる培養物か
ら該微生物の生育度を測定することを特徴しており、微
生物の生育度の測定結果によって被検土壌が病害抑止性
を有するか否かを評価する方法である。本発明の評価方
法は、測定時間、季節、場所、機材などの制約を受ける
ことなく、簡便、迅速かつ正確に行うことができる。具
体的には以下のようにして実施することができる。
【0009】1.土壌病害抑止性の評価 (1) 測定対象微生物の調製 土壌の病害抑止性を評価するにあたり、測定する対象と
なる微生物としては、表1に示すような菌類、細菌類、
又は放線菌類などの土壌病原菌が挙げられる。
【0010】
【表1】
【0011】但し、培養器上で人工的に生育させること
ができかつコロニーを形成し得る菌であれば、上記以外
のあらゆる植物病原菌が対象となる。上記の病原菌は、
土壌病害抑止性の評価方法において、測定対象微生物の
種菌として用いることができる。種菌としては、上記病
原菌を前培養した新鮮な菌体、胞子を形成する病原菌で
あれば胞子、市販されている菌であれば市販されいる菌
体そのものなどを用いることができる。例えば、上記の
病原菌を適切な固体培地又は液体培地に植菌し、得られ
た土壌病原菌の菌体(例えば菌糸、胞子、細菌細胞など)
を土壌病害抑止性評価用平板培地への添加用の種菌とし
て用いることができる。
【0012】(2) 土壌の病害抑止性評価用平板培地 土壌の病害抑止性を評価するために用いる菌類用の培地
としては、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)、
ポテトシュクロース寒天培地(PSA培地)、ツァペック-ド
ックス寒天培地、サブロー寒天培地、ガウガー寒天培
地、乾アンズ寒天培地、インゲン煎汁寒天培地、オート
ミール寒天培地、V-8ジュース寒天培地、乾アンズ・V-8
ジュース寒天培地、コーンミール寒天培地、ワックスマ
ン寒天培地、素寒天培地などが挙げられる。
【0013】また、細菌類用の培地としては、肉エキス
・ペプトン寒天培地(BPA培地)、酵母エキス・ペプトン
寒天培地(YPA培地)、ジャガイモ半合成寒天培地(PSA培
地)、PPGA寒天培地、BCYE寒天培地、キングB寒天培
地、ニュートリエントブロス・酵母エキス寒天培地(NBY
A培地)、酵母エキス・ニュートリエント寒天培地(YNA培
地)、グルコース加カゼイン寒天培地(CGA培地)、ペプト
ン・トリプトン・酵母エキス・グルコース添加寒天培地
(PTYGA)、R2-A培地などが挙げられる。
【0014】さらに、放線菌類用の培地としては、YMPG
寒天培地、CM寒天培地、Bennett-マルトース寒天培地な
どが挙げられる。ここで、培地に増殖した病害微生物の
生育度を正確かつ簡便に測定することができるように、
アニリンブルー、ブロムフェノールブルー、テトラゾリ
ウムなどの指標剤を培地中に添加することが好ましい。
【0015】2.土壌の病原菌抑止性の評価 (1)寒天培地上への測定対象微生物の添加 上記1.に記載の測定対象微生物の種菌の平板培地への
添加は、以下のいずれかの方法により行うことができ
る。すなわち、測定対象微生物を固体培地上で培養後、
培地とともに切り取った菌叢を含む切片 (例えば、コル
クボーラーで打ち抜いたもの)を平板培地上へ置床する
こと、測定対象微生物を液体培地又は固体培地上で培養
後、生育した菌体の一部を適当な溶液(例えば滅菌生理
食塩水)に懸濁し、得られた菌体懸濁液を適切な支持体
(例えばパルプディスクなど)に染み込ませたものを平板
培地上へ置床すること、あるいは測定対象微生物を液体
培地又は固体培地上で培養後、生育した菌体の平板培地
上へ直接添加することなどにより行うことができる。
【0016】(2) 寒天培地の土壌被覆 上記(1)において得られた測定対象微生物を添加した寒
天培地を土壌サンプルで被覆する。すなわち、採取した
土壌を均一に分散後、寒天培地上に均一に播く。ここ
で、通気を良くするとともに測定対象微生物が生育する
空間を確保するために、土壌サンプルに海砂を添加して
十分混合した土壌サンプルを用いることもできる。ここ
で土壌サンプルに添加する海砂の量は、土壌サンプルの
種類に応じて様々に設定することができるが、通常、土
壌サンプルの1〜50倍容量、好ましくは5〜20倍容量が
好ましい。
【0017】(3) 土壌を被覆した寒天培地上の測定対象
微生物の培養 上記(2)において作製した土壌を被覆した測定対象微生
物添加寒天培地の培養は、測定対象である微生物の種類
に応じて、様々な培養条件(温度、時間、気体組成など)
下で行うことができる。ここで、測定対象微生物が好気
性菌の場合は、平板培地を通常の恒温培養装置(例えば
ヤマト社製、IL-600型培養装置)中で培養することがで
き、測定対象微生物が通性嫌気性菌又は偏性嫌気性菌の
場合は、所望の気体組成に設定可能な嫌気グローブボッ
クス中で培養することができる。また、実際の圃場栽培
を想定して、ハウス栽培の条件、露地栽培の条件になる
ように培養の温度、湿度、酸素などを設定することもで
きる。培養後得られる培養物から測定対象微生物の生育
度を測定する。ここで培養物とは、寒天培地に測定対象
微生物を添加しさらにその上に被検土壌を被覆した後、
測定対象微生物が生育し得る条件下で適当な時間培養す
ることにより得られた寒天平板培地をいう。
【0018】(4) 土壌病害抑止性の評価 上記(3)において得られた培養物から土壌病害抑止性を
評価する。すなわち、土壌病害抑止性の評価は、測定し
ようとする病気の発生が過去に知られていない良質な土
壌(コントロール土壌という)を被覆した場合の測定対象
微生物の生育度と、被検土壌を被覆した場合の測定対象
微生物の生育度とを比較することにより行うことができ
る。すなわち、対象微生物の生育度がコントロール土壌
を被覆した場合よりも被検土壌を被覆した場合の方が低
い場合、被検土壌はコントロール土壌に比べて土壌病害
抑止性が高いと評価し、被検土壌を被覆した場合の対象
微生物の生育度がコントロール土壌を被覆した場合の生
育度以上の場合は、被検土壌はコントロール土壌に比べ
て土壌病害抑止性が低い又は無いと評価する。ここで、
測定対象微生物の生育度は、微生物の植菌位置からの菌
叢の生育距離とすることができる。
【0019】一般に、土壌の病害抑止性の発現には、土
壌の物理化学的性質以外にも、土壌中に存在する微生物
が重要な役割を果たしている場合がある。そこで、本発
明において、土壌サンプル中の微生物に起因する土壌病
害抑止性を調べる場合には、滅菌した土壌サンプルを被
覆した場合の測定対象微生物の生育度と、滅菌していな
い土壌サンプルを被覆した場合の測定対象微生物の生育
度とを比較することにより土壌の病害抑止性を評価する
こともできる。例えば、滅菌した被検土壌を被覆した場
合の植菌位置からの菌叢の生育距離をA、滅菌していな
い被検土壌を被覆した場合の植菌位置からの菌叢の生育
距離をBとした場合、以下の式に基づいて、土壌の土壌
病害抑制値を算出することができる。
【0020】生育抑制値(%)=(A−B)÷A×100 ここで土壌の病原抑止性と土壌中の微生物の多様性との
関係は、横山らの方法(土と微生物,No.47,1〜7頁,199
6年3月)により被検土壌中の微生物の多様性指数を計測
し、上記生育抑制値と微生物の多様性指数との相関性を
調べることにより確認することができる。
【0021】3.開墾した農地の土壌の病害発生危険度
の評価 林地や山地を新しく開墾して耕地にする場合、その耕地
には、予想外の危険性が内在している場合が少なくな
い。例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、モモ、ナシ、カ
キなどの果樹を侵す白紋羽病菌は、林地を開墾して樹園
地にした場合に、土壌中に残存していた菌が引き継がれ
て果樹などに被害を及ぼすことが知られている。従っ
て、新しく開墾した農地に作物を植える場合、予めその
作物が冒されやすい病原菌に対する土壌の病害抑止性を
予測することができれば、適切な土壌改良を行うことに
より被害を未然に防ぐことができる。本発明の土壌病害
抑止性の評価方法は、そのように新たに開墾し、初めて
農地として用いる土壌の病害発生危険度の評価に用いる
ことができる。例えば、山を切り開いてリンゴ果樹園に
しようとする場合、リンゴは白紋羽病や紫紋羽病などの
土壌病原菌に冒されやすいことが知られているため、こ
れらの病害の原因菌を測定対象微生物として、また開墾
後の果樹園の土壌を被検土壌として用い、上記2.に記
載の方法に従って、該土壌の土壌病害抑止性を評価する
ことができる。
【0022】4.本発明の病害抑止性評価方法を用いる
土壌病害抑止性のモニタリング 土壌は、温度、日照時間、水分含量などの外的要因、土
壌中の微生物フローラの変化、土壌有機物含量の変化な
どの内的要因によって容易に変化し得、それに伴い、土
壌の病害抑止性も様々に変化し得る。従って、作物の栽
培前、栽培中などに土壌の病害抑止性をモニターするこ
とは重要である。本発明の土壌病害抑止性の評価方法を
用いることにより、時間とともに変化する土壌の病害抑
止性をモニタリングすることができる。例えば、ハウス
栽培の普及とともに、全国的に発生している青枯病に冒
されやすい作物を栽培している場合は、本病は一番果の
収穫が始まるころに発生する。従って、一番果収穫の1
〜2ヶ月前を中心に、測定対象微生物として青枯病の原
因菌のシュードモナス・ソラナセアルム(Pseudomonas s
olanacearum)を用い、上記2.に記載の方法に従って、
被検土壌の病害抑止性を評価することができる。
【0023】5.本発明の土壌病害抑止性評価方法の土
壌改良方法選択への適用 一般に、土壌が所望の病害抑止性を有していない場合
は、目的の病害抑止性を有するように土質を改良するこ
とが行われている。この場合、最も適している土壌改良
方法を、本発明の評価方法を用いることによって選択す
ることができる。土壌の改良方法には、土壌燻蒸剤(例
えばクロルピクリン剤や臭化メチル剤など)による土壌
消毒、太陽熱消毒による土壌消毒、輪作、湛水などによ
り病原菌密度を下げる方法や、土壌pHの制御、土壌水分
の制御、温度の制御、微生物の添加などにより病原菌の
活動を抑える方法などがある。
【0024】しかし、これらの方法のうち、いずれの方
法が実際に目的の土壌を所望の土質に改良することがで
きるのかを、土壌改良方法の土壌への適用に先立って予
測することは困難である。特に、微生物の添加法、すな
わち土壌病原菌に対して拮抗作用を有する微生物を土壌
に添加することにより土壌病原菌の活動を抑える方法を
実際に土壌に適用した場合、期待した程の発病抑制効果
が得られないことが多い。これは、実際の土壌には土壌
病原菌の他に何種類もの微生物が混在しているにもかか
わらず、人工培地上において病原菌と拮抗微生物とを共
培養するという1対1の単純な培養系において、拮抗微
生物の拮抗度を測定したものに過ぎないためである。従
って、拮抗微生物を添加することによって土壌病害を抑
制しようとする場合には、実際に目的の土壌中と同様な
条件下において、測定対象の土壌病原微生物に対して拮
抗作用を有する微生物を用いることが必要である。
【0025】本発明の評価方法においては、複数の微生
物が混在する自然のままの土壌に拮抗微生物を添加し、
該土壌中での測定対象土壌病原菌に対する拮抗微生物の
拮抗作用を調べることができるため、実際の使用に先立
って、どのような微生物剤が実際に測定対象の土壌病害
に対して最も抑制効果があるのか予測することができ
る。具体的には、被検土壌に土壌改良の目的で使用しよ
うとしている微生物を、土壌に対して実際の圃場散布と
同様の割合で添加し、上記2.に記載の方法に従って、
該微生物の添加効果を評価することができる。そして、
本発明の土壌病害抑止性評価方法を用いることにより、
前記の微生物の添加法に限らず、どのような土壌改良法
が、目的の病原菌を抑制するために最も効果的であるの
かを簡易、迅速かつ正確に予測することができる。
【0026】6.土壌病害抑止性評価キット 本発明の土壌病害抑止性の評価方法に用いる菌体、培地
などは、キットとして用いることができる。このような
キットは、土壌病原菌の菌体(例えば菌糸、胞子、細菌
細胞など)、該病原菌が生育可能な培地成分又は平板培
地を含む。使用時には、添付の培地成分から調製した平
板培地又は添付の平板培地に、添付の土壌病原菌の菌体
を添加後、被検土壌を被覆し、適切な条件下で培養す
る。そして、被検土壌を被覆した場合に、菌の生育がど
のくらい抑制されたかを調べることにより、土壌病害抑
止性を評価することができる。
【0027】
【実施例】以下に、本発明を実施例を示して具体的に説
明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものでは
ない。 〔実施例1〕白紋羽病菌に対する土壌病害抑止性の評価 (1) 白紋羽病抑止活性評価用寒天培地プレートの作製 3株の白紋羽病菌ロセリニア・ネカトリックス(鳥取県園
芸試験場から入手したES9501株、岡山県農業試験場から
入手した岡山20株、又は福島県果樹試験場から入手した
福島菌)をPDA培地(培地1L当り:剥皮しサイコロ状に
したジャガイモ200gを1Lの蒸留水で約1時間煮沸し、
ガーゼ濾過した濾液にグルコース20gを加え全量を1L
にしたもの)に播種し、25℃で4〜7日間静置培養し
た。平板寒天培地上に増殖した白紋羽病菌の菌叢を約5
mmのコルクボーラーで打ち抜き、得られた白紋羽病菌の
菌叢寒天片を、直径9cmのシャーレを用いて作製したア
ニリンブルー入りのPDA平板寒天培地(100mg/Lの濃度に
なるようにPDA培地にアニリンブルーを添加したもの)上
に菌叢面を下向きに配置することにより、白紋羽病抑止
活性評価用寒天平板培地を作製した。
【0028】(2) 土壌サンプルの調製 青森県恐山の杉美林、円通寺、鬼石地区の圃場におい
て、表層から深さ約5〜約10cmの位置に存在する土壌を
採取した。各土壌サンプル20mlを300ml容のビーカーに
それぞれ計りとり、そのうち1個を121℃、1.2気圧、20
分の条件で蒸気滅菌した。次いで、滅菌した土壌サンプ
ルと滅菌していない生の土壌サンプルに180mlの滅菌済
の海砂(15〜35メッシュ)を混和することにより、海砂混
和滅菌土壌サンプルと海砂混和生土壌サンプルを調製し
た。
【0029】(3) 土壌サンプルの土壌病害抑止性の評価 図1のような手順で、各土壌サンプルの土壌病害抑止性
を調べた。すなわち、上記(1)において作製した白紋羽
病抑止活性評価用寒天平板培地に、上記(2)において調
製した海砂混和滅菌土壌サンプル又は海砂混和生土壌サ
ンプルを、平板培地1枚当り40mlの割合で、均一に被覆
後、25℃で3〜5日間培養した。培養後のシャーレの様
子を図2及び図3に示した。図2において、は鬼石地
区の生の土壌サンプル、は鬼石地区の滅菌した土壌サ
ンプル、は円通寺地区の生の土壌サンプル、は円通
寺地区の滅菌した土壌サンプル、は杉美林地区の生の
土壌サンプル、は杉美林地区の滅菌した土壌サンプル
をそれぞれ被覆した場合のシャーレの様子である。黄色
の部分が、白紋羽病菌の生育範囲である。また、図3
は、杉美林地区の土壌サンプルを用いた場合の培養後の
シャーレの様子を拡大したものである。図3において
が生の土壌サンプル、が滅菌した土壌サンプルを被覆
した場合である。図からも明らかなように、いずれの地
区の土壌サンプルも、滅菌した土壌サンプルを被覆した
場合に比べて、滅菌していない生の土壌サンプルを被覆
した場合に、顕著に白紋羽病菌の生育が抑制されてい
た。
【0030】得られたシャーレを用いて、土壌による白
紋羽病菌の生育抑制率を算出した。すなわち、滅菌した
土壌サンプルを被覆した場合の菌叢寒天片からの菌叢の
生育距離(A)、滅菌していない土壌サンプルを被覆した
場合の菌叢寒天片からの菌叢の生育距離(B)を計測し、
以下の式に基づいて生育抑制率を算出した。
【0031】生育抑制率(%)=(A−B)÷A×100 表2に示したように、生育抑制率は、杉美林地区の土壌
が最も高く、次いで、円通寺地区の土壌、鬼石地区の土
壌の順であった。
【0032】
【表2】
【0033】以上の結果より、本実施例に用いた青森県
恐山の鬼石地区、円通寺地区、杉美林地区の土壌は、い
ずれも土壌中の白紋羽病菌に起因する白紋羽病抑止性を
有しており、なかでも杉美林地区の土壌が最も高い白紋
羽病抑止性を有していると評価することができる。
【0034】〔実施例2〕土壌サンプルの細菌群集多様
性と土壌病害抑止製との関係 実施例1において採取した各土壌サンプル1gを用い、
以下のようにして、細菌群の多様性指数を算出した。す
なわち、サンプル土壌から希釈平板法により、無作為に
分離した。細菌株50菌株個々の炭素源利用パターン間の
類似度をクラスター距離(類似度)の総和の2乗を菌株数
で割った指数を、調べた50菌株で構成される集団の多用
度の高さ、すなわち多様性指数とした。その結果、細菌
の多様性指数は、杉美林地区の土壌で約2,000、円通寺
地区の土壌で約1,200、鬼石地区の土壌で約125であっ
た。従って、上記三つの地区の土壌のなかでは、杉美林
地区の土壌が最も多様な細菌を含んでいることがわかっ
た。次いで、得られた多様性指数と実施例1において得
られた白紋羽病菌の土壌の抑止性との関係を調べたとこ
ろ、細菌群集の多様性が高いほど、生育抑制率が高くな
ることがわかった。
【0035】〔実施例3〕土壌病害の発生度と白紋羽病
菌の生育量との関係 実施例1と同様にして、腐敗病が頻繁に発生するハス田
圃場の土壌及び土壌病害の殆ど発生しないハス田圃場の
土壌の白紋羽病菌生育抑制率を調べた。ここで、土壌病
害が頻繁に発生する圃場の土壌として、腐敗病常発地で
ある石川県河北潟干拓地の腐敗病発生圃場の土壌を、土
壌病害の殆ど発生しない圃場の土壌として、河北潟干拓
地でも腐敗病の発生しない圃場の土壌及び後背地圃場の
土壌を用いた。
【0036】その結果、表3に示したように、河北潟干
拓地の腐敗病頻発圃場の土壌は平均47.5%という低い生
育抑制値であったのに対し、河北潟干拓地の腐敗病無発
生圃場の土壌は平均66.2%、後背地圃場の土壌は平均6
8.1%と高い生育抑制値を示した。従って、河北潟干拓
地の腐敗病無発生圃場及び後背地圃場の土壌は、河北潟
干拓地の腐敗病頻発圃場の土壌よりも白紋羽病菌の増殖
抑制活性が高いと評価することができる、このように、
本発明の土壌病害抑性評価法を用いることによって、土
壌の病害抑制率を迅速に測定することができることがわ
かった。
【0037】
【表3】
【0038】〔実施例4〕微生物資材と白紋羽病菌の生
育量の関係 実施例1に記載の方法によって測定したところ白紋羽病
菌の生育抑止率が49.3%であった石川県河北潟干拓地の
腐敗病発生圃場の土壌に、白紋羽病菌の拮抗微生物のグ
リオクラディウム・ビレンス(Gliocladium virens)菌製
剤を453g/m3の率で添加した後、土壌を採取し同様に、
該土壌の白紋羽病菌に対する生育抑止率を調べた。その
結果、発病抑制率は62.3%に高まっていることがわかっ
た。このように、本発明の土壌病害抑制評価法を用いる
ことによって、特定の土壌に対する土壌改良剤の効果を
迅速に評価することができることがわかった。
【0039】
【発明の効果】本発明により、土壌の病害抑止性の評価
方法、土壌の病害抑止性評価用キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の土壌病害抑制評価法の測定手順を示す
図である。
【図2】各種土壌を被覆した寒天培地上での、白紋羽病
菌の生育度を示した写真である。
【図3】各種土壌を被覆した寒天培地上での、白紋羽病
菌の生育度を示した写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/00 - 7/08 C12Q 1/00 - 3/00 G01N 33/00 - 33/46 C12M 1/00 - 1/42

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 測定対象微生物を添加した寒天培地に、
    海砂を混合した被検土壌を被覆し、次いで該微生物を培
    養し、得られる培養物から該微生物の生育度を測定する
    ことを特徴とする土壌の病害抑止性の評価方法。
  2. 【請求項2】 寒天培地が、測定対象微生物の生育度を
    示す指標剤を含むものである請求項1記載の評価方法。
  3. 【請求項3】 測定対象微生物の添加が、寒天培地上で
    前培養させた菌叢寒天片の置床である請求項1又は2記
    載の評価方法。
  4. 【請求項4】 菌叢寒天片が、寒天培地上に生育させた
    測定対象微生物の菌叢をコルクボーラーで打ち抜いたも
    のである請求項3記載の評価方法。
  5. 【請求項5】 測定対象微生物が、菌類又は放線菌類で
    ある請求項1〜4のいずれか1項に記載の評価方法。
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