JP3051844B2 - 3相電圧形インバータのためのpwm方法及び装置 - Google Patents

3相電圧形インバータのためのpwm方法及び装置

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JP3051844B2 JP7074687A JP7468795A JP3051844B2 JP 3051844 B2 JP3051844 B2 JP 3051844B2 JP 7074687 A JP7074687 A JP 7074687A JP 7468795 A JP7468795 A JP 7468795A JP 3051844 B2 JP3051844 B2 JP 3051844B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、3相電圧形インバータ
のためのPWM方法及び装置に関し、例えば3相交流モ
ータ等のように3相で負荷を運転する所謂3相負荷につ
いて使用される。
【0002】
【従来の技術】従来より、ACサーボモータとして使用
される誘導モータ、同期モータ等の3相交流モータの駆
動を正確かつ高速で制御するために、インバータを用い
たPWM(パルス幅変調)方法が広く採用されている。
図15には、3相負荷の代表的な例として3相交流モー
タの駆動に使用される、3相電圧形インバータ及びその
主要な関連装置からなる典型的なPWM方法の構成が示
されている。電圧Eの直流電源1は、スイッチング素子
S1〜S6からなるインバータ2を介して、3相交流モ
ータ3に接続されている。PWM装置4は、外部制御器
等(図示せず)から制御周期毎に入力するU、V、W各
相の指令相電圧Vu、Vv、Vwに基づいて、インバー
タ2の各スイッチング素子にスイッチング信号up、u
n、vp、vn、wp、wnを出力する。
【0003】前記指令相電圧は、一般に正弦波に限らな
い任意の波形をとることができ、これに鋸波、三角波等
の直線的に変化するキャリア信号を用いてPWM(パル
ス幅変調)することによって、パルス状のスイッチング
信号が得られる。例えば、図16は、PWM変調用のキ
ャリア信号として振幅−E/2〜E/2の三角波を用い
た場合に、入力する指令相電圧Vuに対してある区間t
=kTs〜(k+1)Tsの前後に亘る変調出力up、
unを示している。ここで、指令相電圧は制御周期Ts
毎に更新され、かつ制御周期内では一定とする。
【0004】同図から容易に理解されるように、変調出
力即ちインバータ2のスイッチング素子S1、S2への
スイッチング信号up、unは、入力信号とキャリア信
号との大小関係を比較することにより直ちに決定され
る。また、下段のスイッチング素子S2用の信号un
は、上段のスイッチング素子S1用の信号upの反転信
号である。実際には、各スイッチング素子のターンオ
ン、ターンオフ時間を考慮して、それらの同時短絡を防
止するために同時オフ期間をスイッチング信号に設定す
る。他の指令相電圧についても同様の処理が行われる。
このようにPWM方式は、指令相電圧Vu、Vv、Vw
からスイッチング信号を得る処理が極めて単純であると
いう特長を有することから、広く利用されている。
【0005】また、図16から分かるように、指令相電
圧Vi(i=u,v,w)は、キャリア信号で線形的に
変調してスイッチング信号を出力するために、次の式
(4)に示すようにキャリア信号の振幅−E/2〜E/
2の範囲内になければらない。
【0006】
【数4】
【0007】しかしながら、実際には、指令相電圧が常
に上記式(4)を満足するとは限らない。かかる場合に
は、従来は、指令相電圧に対して次の式(5)で示す非
線形なリミッタ処理を行い、このリミッタ処理された指
令相電圧Vi*(i=u、v、w)に対して、上記PW
Mを実行することによってスイッチング信号を得てい
る。
【0008】
【数5】
【0009】また、このような従来のキャリア信号比較
形PWM方式では、平均的な電圧利用効率が、線形性が
維持される範囲において理論的に約86%であること
は、よく知られている。即ち、図15において、従来の
PWM方式で上記式(4)の関係を維持しつつ生成され
るスイッチング信号により得られる3相線間電圧の平均
最大値は、約0.86Eである。この電圧利用効率を改
善するために、各指令相電圧が一定の振幅及び角周波数
ωでかつ位相を互いに2π/3(rad)づつずらした
正弦波信号の場合には、これに3倍の角周波数3ω及び
1/6の振幅の正弦波を重畳する方法が一般に採用され
ている。即ち、次の式(6)で表されるような指令相電
圧が与えられた場合、これを式(7)で表される相電圧
に変換してPWM装置に入力する。
【0010】
【数6】
【0011】
【数7】
【0012】しかしながら、この従来の方法では、各指
令相電圧が、角周波数を一定にしかつ位相を互いに2π
/3(rad)づつずらした同一振幅の正弦波状の信号
に限られるため、加減速時のモータ等に要求される任意
の形状の指令相電圧に対しては適用できないという問題
があった。仮に、指令相電圧が都合よく上記正弦波条件
を満足する場合にも、従来方法では、上記式(6)、
(7)に示すように、指令相電圧に基づいて1/6倍の
振幅と3倍の角周波数をもつ信号を正確に発生すること
が求められるから、これに応じた複雑な装置を付加する
必要があり、実際上実現が困難であった。
【0013】そこで、特公平6−81514号公報によ
れば、各相の瞬時電圧指令値Vu、Vv、Vwを比較し
て、その中の最大値と最小値の絶対値が常に等しくなる
ように、又はそれらの和が常に一定となるように、その
中間値の2分の1を元の各指令相電圧に加算し、これら
を変調信号として三角波のキャリア信号と比較すること
によって、電圧利用効率を改善するPWM方法が開示さ
れている。この方法では、例えば中間値をVvとする
と、次の式(8)で示される値が加算される。
【0014】
【数8】
【0015】この方法は、各相の電圧指令に上述した同
じ値を加えて、電圧指令の絶対値が最大となる相の電圧
指令を小さくすることによって、3相の線間電圧を変化
させずに電圧指令のピーク値を小さくできるので、出力
電圧の高調波成分を増加させることなく出力電圧の基本
波成分を大きくすることができ、電動機を駆動する場合
には発生トルクの脈動を低減できるというものである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来のPWM方式では、いずれの場合にも過大指令相
電圧への対応、電圧利用効率の改善等の実用上重要な問
題点がある。即ち、上記式(5)による従来のリミッタ
処理では、3相の指令相電圧の中にリミッタ処理される
ものとされないものが生じる。図17に例示される場合
では、U相の指令相電圧Vuが、E/2を超えるために
リミッタ処理されているのに対し、他のV、W相の指令
相電圧は、式(4)の条件を満足するのでリミッタ処理
を受けない。このリミッタ処理は非線形処理であるか
ら、非線形処理を受けた相電圧に対して、同様にキャリ
ア信号を用いて線形処理であるPWM処理を行っても、
3相負荷に最適なスイッチング信号を得ることができな
い。この結果、例えば3相負荷が3相交流モータの場合
には、脈動回転、異音の発生、モータの損傷等を引き起
こすという問題があった。従って、実際の使用上モータ
の出力を抑えなければならず、モータ本来の性能を十分
に発揮できないという問題があった。また、そのために
本来必要な出力よりも大きな出力のモータを使用しなけ
ればならず、モータ自体が大型化しかつコストが高くな
るという問題があった。
【0017】特公平6−81514号のPWM方法の場
合にも、各指令相電圧に加える値には、上記式(8)に
示すように、キャリア信号の振幅を決定する直流電圧値
Eまたはこれに関連する要素が含まれていないことか
ら、明らかに同様の問題点がある。即ち、線間電圧がキ
ャリア信号の振幅を超える指令相電圧に対しては、上述
した非線形のリミッタ処理が必要になる。例えば、急激
な加減速を伴う交流モータのサーボ駆動では、指令相電
圧が特公平6−81514号の場合のように正弦波では
なく、しかも線間電圧が直流電源電圧を超えるような場
合は容易に予想される。
【0018】また、このような従来のPWM方法は、ス
イッチングロスが大きいという問題がある。例えば、図
18に示すように各指令相電圧Vu、Vv、Vwが全て
0の場合でも、各相のスイッチング信号up、un、v
p、vn、wp、wnは、キャリア信号の三角波の1周
期の間に2回変化するから、図15に於けるインバータ
2のスイッチング素子S1〜S6は、スイッチング動作
を必要としないにも拘らず、それぞれ2回動作すること
になる。この不必要なスイッチング動作は、モータ等を
負荷とする場合に、モータが停止指令に対してハンチン
グするという不都合な現象を誘発する原因の1つとなっ
ている。
【0019】更に、本来インバータは、U、V、W相の
中の1組のスイッチング素子の状態を変化させるだけ
で、負荷に印加すべき電圧の状態を達成できるが、上述
した従来方法では、指令相電圧が0以外であっても常
に、各スイッチング素子に対して三角波の1周期の間に
2回のスイッチング動作が要求される。即ち、本来必要
としない全組のスイッチング動作を要求するために常に
スイッチングロスが生じ、指令相電圧に対して最適なス
イッチング信号を発生することは困難であるという問題
がある。特に、最近多用されている10kHz超の高ス
イッチングレート用インバータでは、スイッチンググロ
スを低減させることが極めて重要である。
【0020】そこで、本発明は、上述した従来の問題点
を解決するためになされたものであり、その目的は、従
来のキャリア信号を利用するPWM方法及び装置が有す
る簡単性という優れた特長を維持しつつ、指令相電圧に
比較的簡単な線形処理を実行することによって、指令相
電圧がキャリア信号のレベルを超える場合にも最適のス
イッチング信号を得ることができ、それによって3相交
流モータを駆動する場合には、脈動等の好ましくない挙
動や損傷を発生させる虞れがなく、しかも、例えばサー
ボ駆動時の交流モータ等の3相負荷に必要とされる任意
の波形の指令相電圧に対して同様に適用することができ
ると共に、電圧利用効率を向上させて、コストパーフォ
ーマンスの高い実用性に優れた3相電圧形インバータの
ためのPWM方法及び装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、上述
した目的を達成するためになされたものであり、請求項
1記載の3相電圧形インバータのためのPWM方法は、
3相電力を生成するために、指令相電圧を変調用キャリ
ア信号との比較により、直流電源を有する3相電圧形イ
ンバータのスイッチング用パルス信号に変換するPWM
(パルス幅変調)方法であって、制御周期毎にU、V、
W各相の指令相電圧Vu、Vv、Vwより3相線間電圧
の最大絶対値を求め、この線間電圧最大絶対値と前記直
流電源の電圧値とを比較して、少なくとも各制御周期間
一定の縮退率α(0<α≦1)を決定し、前記各指令相
電圧に対して、制御周期毎に前記縮退率αを乗じて縮退
相電圧α・Vu、α・Vv、α・Vwを生成することに
より、前記変調用キャリア信号の振幅を超えないように
線形信号処理を行い、その結果得られた前記各縮退相電
圧をU、V、W各相の中間相電圧信号Vut、Vvt、
Vwtとしてこれらに対してピーク間の振幅を前記直流
電源電圧値と等しくした前記変調用キャリア信号を用い
ることによって、前記スイッチング用パルス信号を得る
ようにしたことを特徴とする。 このように本発明によれ
ば、指令相電圧に縮退処理を行ない、それにより得られ
た縮退相電圧を新たな指令相電圧とすることにより、上
記式(4)のようなレベル条件を満足させることがで
き、しかも常に線形性が維持されるので、PWMにより
3相交流モータ3を駆動する際に最適のスイッチング信
号が得られる。
【0022】また、本発明によれば、請求項2記載の3
相電圧形インバータのためのPWM方法は、3相電力を
生成するための指令相電圧を変調用キャリア信号との比
較によって、直流電源を有する3相電圧形インバータの
スイッチング用パルス信号に変換するPWM(パルス幅
変調)方法であって、制御周期毎にU、V、W各相の指
令相電圧Vu、Vv、Vwに対して、少なくとも各制御
周期間それぞれ一定の縮退率α(0<α≦1)及びバイ
アス値βで表される次式(1)を用いて、前記変調用キ
ャリア信号の振幅を超えないように線形信号処理を行
い、その結果得られたU、V、W各相の中間相電圧信号
Vut、Vvt、Vwtに変調用キャリア信号を用いる
ことによって、スイッチング用パルス信号を得るように
したことを特徴とする。 更に、請求項3記載のPWM方
法は、上述した請求項2の特徴点に加え、制御周期毎に
各指今相雷圧Vu、Vv、Vwより3相線間電圧の最大
絶対値を求め、この線間電圧最大絶対値と前記直流電源
の電圧値とを比較して縮退率αを決定することを特徴と
する。
【0023】
【数9】 Vut=αVu+β (0<α≦1) Vvt=αVv+β (1) Vwt=αVw+β
【0024】このように本発明によれば、3相のいずれ
かの指令相電圧がキャリア信号のレベルを超える場合、
及び指令相電圧の最大線間電圧絶対値がキャリア信号の
振幅を超える場合にも、指令相電圧に対する上記式
(1)の信号処理により得られた各中間層電圧信号につ
いて、上記式(4)のようなレベル条件を満足させるこ
とができ、しかもこの信号処理が、PWM制御と同様に
線形処理であることから、スイッチング信号の生成を最
適に行うことができ、かつ、所定の制御周期毎に処理を
行う離散時間形のデジタル制御であることから、指令相
電圧が正弦波以外の任意の波形を有する場合にも、何等
支障なく適用することができる。
【0025】ここで、本発明の理解をより容易にするた
めに、空間ベクトルの概念を利用して説明すると、指令
相電圧Vu,Vv,Vwに線形的に対応する空間ベクト
ルXは、次式(9)のように計算される。ここに、Sは
次式(10)に示す線形変換行列である。
【0026】
【数10】
【0027】
【数11】
【0028】一方、制御周期毎に、3相指令相電圧の線
間最大絶対値と直流電源電圧値とを比較して決定した縮
退率αを各指令相電圧に乗じて得られた縮退相電圧α・
Vu、α・Vv、α・Vwに対応した空間ベクトルXa
は、次式(11)のように計算される。
【0029】
【数12】
【0030】この式(11)が示すように、縮退相電圧
に対応する空間ベクトルXaは、縮退前の指令相電圧に
対応した空間ベクトルXに縮退率αを乗じたものであ
る。即ち、各指令相電圧に縮退率αを乗じて得た縮退相
電圧の空間ベクトルは、縮退前の空間ベクトルと同一方
向を向き、かつ上記縮退処理によれば、両ベクトルの間
には比例的線形関係が保存されることになる。
【0031】線形変換であるキャリア信号比較形のPW
M処理によりインバータのスイッチング信号を得る場合
には、上記式(4)のような入力信号とキャリア信号の
レベル条件が満足される限り、入力信号と出力信号との
間にも同じく線形性が保存される。従って、縮退相電圧
α・Vu・α・Vv、α・Vwをキャリア信号の振幅よ
り小さくなるように、即ち式(4)のようなPWM処理
におけるレベル条件を満足するように縮退率αを選定
し、かつそれにより得られる縮退相電圧に対してパルス
幅変調を行えば、縮退及び変調の各信号処理の終始にお
いて、線形性が保存されるという結果が得られる。この
処理を制御周期毎に繰り返し行うことによって、本発明
をモータの制御に応用した場合には、過大な任意の形状
の指令相電圧が与えられても、モータの駆動に不都合な
トルクを引き起こすスイッチング用パルス信号の発生が
なくなり、脈動回転、異音の発生、更にはモータの損傷
等を抑制することができる。更に、上述した縮退処理に
加えて、各指令相電圧に同一の値を加えるバイアス処理
を組み合わせることによって、電圧利用効率の向上を図
り、スイッチングロスを少なくすることができる。
【0032】請求項4記載のPWM方法は、縮退率αを
各指令相電圧に乗じて縮退相電圧α・Vu、α・Vv、
α・Vwを生成し、少なくとも各制御周期間一定のバイ
アス値Vb=βを各縮退相電圧に加算して縮退バイアス
相電圧Vuab、Vvab、Vwabを生成し、これら
を中間相電圧信号として、ピーク間の振幅を直流電源電
圧値とするキャリア信号を用いることによって、スイッ
チング用パルス信号を得るようにしたことを特徴とす
る。
【0033】このように制御周期毎に線形な縮退処理に
線形なバイアス処理を組み合わせることについて、同様
に空間ベクトルの概念を利用して以下に簡明に説明す
る。上記式(1)の関係を満足する縮退バイアス相電圧
に線形対応する空間ベクトルXabは、次式(12)のよ
うに計算される。
【0034】
【数13】
【0035】上式は、縮退バイアス相電圧の空間ベクト
ルXabが、バイアス処理前の縮退相電圧の空間ベクトル
Xa(または縮退処理前の相電圧の空間ベクトルX)と
同一であること、換言すれば、バイアス処理によっては
空間ベクトルが何ら影響を受けないことを示している。
空間ベクトルとスイッチング用パルス信号の線形対応性
を考えるならば、これは、バイアス処理前後における相
電圧が、同一のパルス幅をもつパルス信号に対応するこ
とを示している。
【0036】従来のキャリア信号比較形PWM方式にお
ける電圧利用効率が最大約86%に止まる原因は、指令
相電圧に対する非線形なリミッタ処理を避けるべく、線
間電圧がE以下の指令相電圧に対して更に式(4)のレ
ベル条件を満足させる必要があったからである。これに
対して本発明によるPWM方法は、指令相電圧の如何に
関わり無く、上記線間条件を満足する縮退バイアス相電
圧に対してPWM処理を行うことによって、スイッチン
グ用パルス信号を得ようとするものである。従って、指
令相電圧が過大な場合にも、制御周期毎の線形な縮退処
理によって、縮退相電圧が形成する線間電圧の最大絶対
値が、直流電源電圧値のレベルに納まるようにし、かつ
縮退後は、制御周期毎に実施される線形なバイアス処理
により縮退バイアス相電圧が、レベル条件であるキャリ
ア信号の振幅−E/2〜E/2の範囲内に納まるように
して、PWM処理を行うことにより、線形性を維持しな
がら直流電源電圧の利用効率を100%に高めることが
できると同時に、スイッチングロスを少なくすることが
できる。
【0037】請求項5記載のPWM方法は、上記請求項
4記載の特徴点に加え、バイアス値Vbを縮退相電圧に
基づいて決定することを特徴とする。更に、請求項6記
載のPWM方法は、バイアス値Vbを、縮退相電圧の最
大値Vamaxまたは最小値Vaminと直流電源電圧
値Eとにより表わされる次式(2)または(3)に基づ
いて決定することを特徴とする。
【0038】
【数14】
【0039】U、V、W相の縮退相電圧の例えば相対的
関係等の状態を取り入れて、特に上記式(2)または
(3)に基づいてバイアス値Vbを決定することによっ
て、縮退バイアス相電圧により電圧利用効率の向上とス
イッチングロスの最小化を同時に達成する最適のスイッ
チング信号が生成される。例えば、式(2)を用いてV
bを決定する場合、全ての指令相電圧を0(Vu=Vv
=Vw=0)としたときの縮退バイアス相電圧は、上記
式(1)、(2)から次の式(13)となる。
【0040】
【数15】
【0041】これを変調信号として振幅−E/2〜E/
2のキャリア信号で変調した状態を図1に示す。同図よ
り明らかなように、スイッチング信号up、vp、wp
はオフ(off)状態を維持し、これらの反転信号であ
るスイッチング信号un、vn、wnはオン(on)状
態を維持し続ける。即ち、上述した従来技術のPWMの
場合と異なり、インバータのスイッチング素子S1〜S
6は一切動作されないので、指令相電圧の0指令に対し
て最適のスイッチング信号が得られることが分かる。
【0042】請求項7記載のPWM方法は、制御周期毎
に、少なくとも各制御周期間一定のバイアス値Vb=β
/αを各指令相電圧に加算してバイアス相電圧Vub、
Vvb、Vwbを生成し、各指令相電圧または各バイア
ス相電圧より3相線間電圧の最大絶対値を求め、この線
間電圧最大絶対値と直流電源の電圧値とを比較して縮退
率αを決定し、各バイアス相電圧に縮退率αを乗じて縮
退バイアス相電圧Vuab、Vvab、Vwabを生成
し、これらを中間相電圧信号として、ピーク間の振幅を
直流電源電圧値とするキャリア信号を用いることによっ
て、スイッチング用パルス信号を得るようにしたことを
特徴とする。
【0043】請求項4記載のPWM方法とは逆に、制御
周期毎に先ず線形なバイアス処理を行い、生成されたバ
イアス相電圧に縮退処理を行うことにより、最終的に所
望の縮退バイアス相電圧を得ようとするものであるが、
それと同様に、指令相電圧が過大な場合にも最適な形で
線形性を維持し、電源電圧の利用効率100%及び最小
のスイッチングロスを達成し得る最適のスイッチング用
パルス信号を生成することができる。これは、上記式
(1)が次の式(14)、(15)のように書き直しで
きることから明らかである。
【0044】
【数16】
【0045】或る実施例において、前記PWM方法は、
前記中間相電圧信号に応じて制御周期毎に前記キャリア
信号の形状を制御することができる。
【0046】PWM処理に最適なスイッチング信号とし
ては、次の3つの条件を満足することが望ましい。 (a)入力である指令相電圧と出力であるインバータ発
生電圧とは、その対応する空間ベクトルが制御周期の時
間平均において同一である。また、指令相電圧の線間電
圧値がインバータの直流電圧値を超える場合には、出力
側に対応した空間ベクトルは、発生限界を達成すると共
に、その方向は入力側の空間ベクトルと制御周期の時間
平均において同一である。 (b)制御周期の始点及び終点のスイッチング状態は、
共にゼロ状態であり、かつこれらの状態の滞留時間は同
一である。 (c)スイッチング状態の遷移は、最小のスイッチング
回数で実行する。 先の説明から分かるように、請求項1乃至請求項7に記
載されるPWM方法は、(a)、(b)の条件を完全に
満足しており、同時にスイッチング回数の低減を図るも
のであるが、スイッチング回数は最小ではない。(c)
の条件を満足するためには、更にキャリア信号の制御が
必要になる。
【0047】U、V、W各相のスイッチング状態を三次
元空間ベクトルで説明した場合、各スイッチング信号の
オン状態を1、オフ状態を0とすると、端子間電圧を0
にするゼロ状態は、[up,vp,wp]=[0,0,
0]または[up,vp,wp]=[1,1,1]の2
つの形で表現される。残りのスイッチング信号un、v
n,wnは、up,vp,wpを反転したものである。
ゼロ状態からスイッチング動作によって[up,vp,
wp]=[1,0,0]の状態へ遷移する場合に、その
始点となるゼロ状態は、U相だけの1回のスイッチング
で済む[0,0,0]が最適である。また、ゼロ状態か
らスイッチング動作によって[up,vp,wp]=
[1,1,0]の状態へ遷移する場合には、その始点と
なるゼロ状態は、W相だけの1回のスイッチングで済む
[1,1,1]が最適である。
【0048】この例から分かるように、最小回数のスイ
ッチング動作を得るためには、始点のゼロ状態を制御し
なければならず、これはキャリア信号の形状を制御する
ことにより達成される。図2は、中間相電圧信号Vitに
応じて、始点のゼロ状態を、キャリア信号の形状を制御
することにより変更している様子の1例を示したもので
ある。即ち、或周期kTs〜(k+1)Tsでは、最小
値を−E/2とした中間相電圧信号に対し、下向き凸の
三角波をキャリア信号に用い、ゼロ状態を[up,v
p,wp]=[0,0,0]で達成している。次の周期
(k+1)Ts〜(k+2)Tsでは、最大絶対値を最
小とするような中間相電圧信号に対し、下降型の鋸波信
号をキャリア信号として用い、始点のゼロ状態は[u
p,vp,wp]=[0,0,0]で、終点のゼロ状態
は[up,vp,wp]=[1,1,1]で達成してい
る。更に周期(k+2)Ts〜(k+3)Tsでは、最
大値をE/2とした中間相電圧信号に対し、上向き凸の
三角波信号を用い、ゼロ状態を[up,vp,wp]=
[1,1,1]で達成している。即ち、時刻kTsを始
点とする制御周期と時刻(k+2)Tsを始点とする制
御周期とでは、ゼロ状態の変更が効率的に達成されてい
る。このように形状を制御されるキャリア信号には、三
角波、鋸波等の直線状に変化する波形の信号を基本信号
とし、制御周期、中間相電圧信号等の条件に合わせて、
この周波数、位相を制御して使用される。
【0049】このように、制御周期毎にキャリア信号の
形状を制御することによって、入力側と出力側との間で
所望の空間ベクトルを維持しながら、電圧利用効率の向
上等に加えてスイッチングロスの最小化に最適のスイッ
チング信号を生成させることができる。
【0050】請求項8記載の3相電圧形インバータのた
めのPWM装置は、外部から入力する指令相電圧を変調
用キャリア信号と比較することにより、3相電力を生成
するためのスイッチング用パルス信号に変換して、直流
電源を有する3相電圧形インバータに出力するものであ
って、制御周期毎にU、V、W各相の指令相電圧Vu、
Vv、Vwに対して、少なくとも各制御周期間それぞれ
一定の縮退率α(0<α≦1)及びバイアス値βで表さ
れる次式(1)を用いて、変調用キャリア信号の振幅を
超えないように線形信号処理を行なう手段と、該手段か
ら得られたU、V、W各相の中間相電圧信号Vut、V
vt、Vwtに変調用キャリア信号を用いることによっ
て、スイッチング用パルス信号を生成するPWM処理手
段とからなることを特徴とする。
【0051】
【数17】
【0052】これにより、過大な指令相電圧が与えられ
た場合にも、これをPWM処理する前に線形信号処理手
段により線形処理することによって、請求項1記載の本
発明による離散時間形のPWM方法を比較的簡単に実現
することができる。
【0053】請求項9記載のPWM装置は、上述した
求項8の特徴点に加え、線形信号処理手段が、制御周期
毎に各指令相電圧Vu、Vv、Vwより3相線間電圧の
最大絶対値を求める手段と、該手段により求められた線
間電圧最大絶対値と直流電源の電圧値とを比較して縮退
率αを決定する手段と、縮退率αを各指令相電圧に乗じ
てU、V、W各相の縮退相電圧を生成する手段とからな
り、各縮退相電圧を中間相電圧信号としてPWM処理手
段に出力することを特徴とする。
【0054】これにより、過大な指令相電圧が与えられ
た場合にも、縮退と変調の信号処理の終始において線形
性が保存されることになる。この結果、モータ駆動に使
用される場合には、モータにとって好ましくないスイッ
チング用パルス信号の発生がなくなり、脈動回転、異音
の発生、更にはモータの損傷等が抑制することができ
る。
【0055】請求項10記載のPWM装置は、線形信号
処理手段が制御周期毎にバイアス値βを決定するための
手段を更に有することを特徴とする。更に、請求項11
記載のPWM装置は、このバイアス値決定手段が、制御
周期毎に各縮退相電圧に対し加算すべき一定のバイアス
値Vb=βを決定する手段からなり、線形信号処理手段
が、このバイアス値Vbを各縮退相電圧に加算して縮退
バイアス相電圧を生成する手段を更に有し、その各縮退
バイアス相電圧を中間相電圧信号としてPWM処理手段
に出力することを特徴とする。
【0056】また、請求項12記載のPWM装置は、線
形信号処理手段が、制御周期毎に各指令相電圧に対し加
算すべき一定のバイアス値Vb=β/αを決定する手段
と、これにより決定されたバイアス値Vbを各指令相電
圧に加算してバイアス相電圧を生成する手段と、制御周
期毎に各指令相電圧または各バイアス相電圧より3相線
間電圧の最大絶対値を求める手段と、これにより求めら
れた線間電圧最大絶対値と直流電源の電圧値を比較して
縮退率αを決定する手段と、この縮退率αを各バイアス
相電圧に乗じてU、V、W各相の縮退バイアス相電圧を
生成する手段とからなり、各縮退バイアス相電圧を中間
相電圧信号としてPWM処理手段に出力することを特徴
とする。
【0057】これら請求項10乃至請求項12のように
構成することによって、制御周期毎に線形な縮退処理と
線形なバイアス処理とを適当に組み合わせて実行するこ
とができ、これにより指令相電圧が過大な場合にも、線
形性を維持しつつ電源電圧利用効率100%を達成し、
かつスイッチングロスの少ない最適のスイッチング用パ
ルス信号を生成することができる。
【0058】或る実施例では、上述した各請求項のPW
M装置において、前記中間相電圧信号に応じて制御周期
毎にキャリア信号の形状を制御する手段を有する。
【0059】これにより、指令相電圧の状態に応じて適
当に周波数、位相を制御した三角波、鋸波等の直線状に
変化する波形の信号をキャリア信号に用いることがで
き、スイッチング状態の遷移に必要なスイッチング回数
を最小にすることができる。
【0060】また、請求項13記載のPWM装置は、上
述した各請求項のPWM装置において、少なくとも線形
信号処理手段をIC化したことを特徴とする。
【0061】これにより、PWM装置をシステムにコン
パクト、かつ容易に、更には高い信頼性を付与した形で
組み込めるという作用が得られる。
【0062】更に、請求項14記載のPWM装置は、外
部から入力する情報に従って各指令相電圧を生成し、線
形信号処理手段に出力する制御部を一体的にIC化した
ことを特徴とする。
【0063】これにより、本発明によるPWM装置を用
いた離散時間形のPWM制御システムのソフトウェア化
を図ることができ、より一層コンパクトかつ安価でコス
トパフォーマンスに優れた信頼性の高いシステムを構築
することができる。
【0064】
【実施例】以下に本発明の好適な実施例について添付図
面を参照しつつ詳細に説明する。尚、添付図面におい
て、同一または類似の構成要素については同じ参照符号
を付して表すものとする。
【0065】図3は、3相負荷として誘導モータの駆動
を制御するための本発明によるPWM制御システムの構
成を概略的に示している。本実施例において、直流電源
1は商用交流電源をコンバータで整流したものを使用
し、インバータ2を介して誘導モータである3相交流モ
ータ3に接続されている。インバータ2には、図15に
関連して説明した従来のPWM制御システムと同様に、
インバータ2へのスイッチング信号を生成するPWM装
置4が接続され、かつPWM装置4には、誘導モータの
駆動制御用の制御器5が接続されている。本実施例で
は、誘導モータをベクトル制御によりトルク制御するも
のとし、制御指令として励磁電流指令とトルク電流指令
とを制御器5に入力する。誘導モータのベクトル制御で
は、モータの回転速度情報及び電流情報が必要とされる
が、これらはモータ3に取り付けた速度センサ6、電流
計7等の各センサを介して制御器5に入力される。制御
器5は、これらの指令及び情報に基づいて3相の指令相
電圧をPWM装置4へ出力する。また、PWM装置4に
は、直流電源1から電圧情報が入力される。
【0066】図4は、本発明によるPWM装置4の好適
な実施例の構成を示しており、制御器5側の前段処理部
8とインバータ2側の後段処理部9とから構成される。
前段処理部8は、制御器5から受け取った指令相電圧に
対し、その制御周期毎に本発明による縮退、バイアスと
いう所要の線形信号処理を実行し、中間相電圧信号Vu
t、Vvt、Vwtとして後段処理部9に出力する。後
段処理部9は、前段処理部8から受け取った前記中間相
電圧信号に対して、ピーク間の振幅を直流電源電圧値と
する三角波等の直線的に変化するキャリア信号を用いて
PWM処理を行い、パルス状のスイッチング信号を生成
してインバータ2へ出力する。
【0067】図5は、前段処理部8において本発明によ
る縮退処理を実行する場合の過程をフロー図で示してい
る。先ず、ステップFa1では、制御器5から制御周期
毎に指令相電圧Vu,Vv,Vwを受け取り、次の式
(16)を満足する3相線間電圧の最大絶対値Emax
を求める。
【0068】
【数18】
【0069】次にステップFa2では、インバータ2の
直流電圧値Eと線間電圧最大絶対値Emaxを比較し
て、縮退率αを決定する。縮退率αは、例えば次の式
(17)の条件に従って決定することができる。
【0070】
【数19】
【0071】ステップFa3では、各指令相電圧にステ
ップFa2で決定した縮退率αを乗じて、縮退相電圧α
Vu、αVv、αVwを生成する。各縮退相電圧は、前
記中間相電圧信号として後段処理部9へ送られる。これ
らの処理は制御周期毎に繰り返し行われる。
【0072】図6は、図5に示した縮退処理を実現する
ための前段処理部8の構成を具体的に示すブロック図で
ある。前段処理部8は、制御周期毎に制御器5から指令
相電圧を受け取り、3相線間電圧の最大絶対値Emax
を決定する手段10と、手段10から入力するEmax
に加えて直流電源1の電圧情報Eを受け取り、例えば式
(17)に従って縮退率αを決定する手段11と、制御
器5からの各指令相電圧に手段11から入力する縮退率
を乗じて縮退相電圧を発生する乗算手段12とを有す
る。
【0073】このように前段処理部8に於いて各指令相
電圧に縮退処理を行ない、それにより得られた縮退相電
圧を新たな指令電圧とすることにより常に線形性が維持
されるので、PWMにより3相交流モータ3を駆動する
際に最適のスイッチング信号が得られる。従って、過大
な指令相電圧に対しても、モータ3の脈動回転や異音の
発生、損傷等を防止することができる。
【0074】本発明によれば、上述した縮退処理に加え
て、各指令相電圧に同一の値を加えるバイアス処理を組
み合わせることによって、電圧利用効率の向上を図り、
スイッチングロスを少なくすることができる。図7は、
前段処理部8の別の実施例により、このような縮退及び
バイアス両処理を実行する場合の過程をフロー図で示し
ている。
【0075】本実施例では、図5の実施例と同様に、最
初に式(16)を満足するように3相線間電圧の最大絶
対値Emaxを決定し(ステップFb1)、次にこれと
インバータの直流電圧Eとを比較して縮退率αを決定す
る(ステップFb2)。本実施例では、縮退率αは、バ
イアス処理が付加されることを考慮して、例えば次式の
条件に従って決定すればよい。
【0076】
【数20】
【0077】次のステップFb3では、各指令相電圧に
ステップFb2で決定した縮退率αを乗じ、縮退相電圧
αVu、αVv、αVwを生成する。ステップFb4で
は、前記縮退相電圧に基づいて、それに加えるべきバイ
アス値Vbを決定する。バイアス値Vbの決定には、例
えば前記縮退相電圧の最小値と直流電圧値Eとを利用し
た式(2)を、または前記縮退相電圧の最大値と直流電
圧値Eを利用した式(3)を用いることができる。ま
た、縮退相電圧の中間値Vamidを利用した次式によ
りバイアス値Vbを決定することもできる。
【0078】
【数21】
【0079】最後にステップFb5において、ステップ
Fb3で生成した前記各縮退相電圧にステップFb4で
決定したバイアス値Vbを加算して、縮退バイアス相電
圧Vuab、Vvab、Vwabを生成し、後段処理部
9へ出力する。これらの処理は、上記各実施例と同様に
制御周期毎に繰り返し実行する。
【0080】図8は、図7に示した縮退及びバイアス両
処理を実行する前段処理部8を実現するための構成を示
すブロック図である。本実施例の前段処理部8は、図6
の実施例と同様にEmax決定手段10と縮退率決定手
段11とを有し、縮退率決定手段11から出力された縮
退率αは、縮退バイアス相電圧生成手段16へ送られ
る。縮退バイアス相電圧生成手段16には、乗算手段1
2と加算手段14とが接続されている。乗算手段12
は、縮退率αを各指令相電圧に乗じて縮退相電圧を生成
し、これらを加算手段14及びバイアス決定手段17に
出力する。バイアス決定手段17は、乗算手段12から
受け取った各縮退相電圧に一様に加算すべき一定のバイ
アス値Vbを、例えば上記式(2)または式(3)に従
って生成する。バイアス値Vbは、加算手段14に出力
され、そこで乗算手段12からの各縮退相電圧に加算さ
れて、縮退バイアス相電圧Vuab、Vvab、Vwabとし
て出力される。
【0081】図9(a)(b)は、それぞれ前段処理部
8の更に別の実施例であって、本発明による縮退及びバ
イアスの両処理を実行する場合の過程をそれぞれフロー
図で示している。図9(a)の実施例では、図5の実施
例と同様にステップFc1において、制御周期毎に制御
器5から指令相電圧Vu,Vv,Vwを受け取り、3相
線間電圧の最大絶対値Emaxを求める。次にステップ
Fc2では、インバータ2の直流電圧Eと前記線間電圧
最大絶対値Emaxとを比較して、縮退率αを決定す
る。
【0082】ステップFc3では、一定のバイアス値V
bを決定する。バイアス値Vbの決定は、前記指令相電
圧に基づいて行なう。例えば、前記指令相電圧の最大値
または最小値と直流電圧値Eとを利用した次の式(2
0)、または(21)を用いて行えばよい。また、前記
指令相電圧の中間値を利用することもできる。
【0083】
【数22】
【0084】次のステップFc4では、式(15)に従
って、ステップFc3で決定したバイアス値Vbを各指
令相電圧に加算し、バイアス相電圧Vub,Vvb,V
wbを生成する。更にステップFc5では、ステップF
c4で生成したバイアス相電圧にステップFc2で決定
した縮退率αを式(14)に従って乗じることにより、
縮退バイアス相電圧Vuab,Vvab,Vwabを生
成する。生成した縮退バイアス相電圧は、前記中間相電
圧信号として後段処理部9に送られて処理される。これ
ら一連の処理は繰り返し実行される。
【0085】図9(b)の実施例は、図9(a)の実施
例と同様に、前段処理部8において制御周期毎に縮退及
びバイアスの両処理を実行するが、処理手順が僅かに相
違する。この変形実施例では、図9(b)のフロー図か
ら分かるように、ステップFd1でバイアス値Vbを決
定し、ステップFd2でバイアス相電圧を生成した後
に、ステップFd3で線間電圧最大絶対値Emaxを決
定し、次に縮退率αを決定し(ステップFd4)、これ
を前記バイアス相電圧に乗算することによって、縮退バ
イアス相電圧を生成する(ステップFd5)。縮退率α
は、図9(a)の実施例と同様に、指令相電圧Vu,V
v,Vwから3相線間電圧の最大絶対値Emaxを求
め、これとインバータ2の直流電圧Eとの比較により決
定することができ、また前記各バイアス相電圧から3相
線間電圧の最大絶対値Emaxを求めてインバータ2の
直流電圧Eと比較しても、同じ値を得ることができる。
【0086】図10は、図9に示した縮退及びバイアス
両処理を実行する前段処理部8を実現するための構成を
示すブロック図である。本実施例の前段処理部8は、図
6及び図8の実施例と同様に制御周期毎に制御器5から
指令相電圧を受け取り、かつ3相線間電圧の最大絶対値
Emaxを求める手段10と、手段10からの前記線間
電圧最大絶対値及び直流電源1の電圧情報を受け取り、
かつ縮退率αを決定する手段11とを有する。縮退率α
は、例えば式(18)に従って決定される。更に前段処
理部8には、図8の実施例と同様に、制御周期毎に制御
器5から指令相電圧を受け取りかつ縮退率決定手段11
から縮退率αを入力し、加算すべき一定のバイアス値V
bを生成する手段13が配設されている。
【0087】バイアス値Vbは、同様に例えば式(2
0)または(21)に従って決定される。縮退率決定手
段11及びバイアス生成手段13は、図8と同様の加算
手段14と乗算手段12とで構成され、かつ縮退バイア
ス相電圧を生成する手段15にそれぞれ接続されてい
る。加算手段14は、元の指令相電圧にバイアス生成手
段13で決定したバイアス値を加算してバイアス相電圧
を発生し、乗算手段12は、縮退率決定手段11で決定
した縮退率をバイアス相電圧に乗じ、生成された縮退バ
イアス相電圧を後段処理部9へ出力する。
【0088】上記各実施例から分かるように、本発明の
PWM装置4の前段処理部8における指令相電圧に対す
る線形信号処理は、次の式によって一般的な形で表すこ
とができる。そして本発明によれば、上述したように制
御周期毎に縮退処理とバイアス処理とを組み合わせて実
行することによって、指令相電圧が最大な場合には、線
形性を維持しつつ縮退相電圧の線間電圧の最大絶対値が
直流電源電圧Eの範囲内に納まるようにし、100%の
電圧利用効率を達成しながら、同時に、スイッチングロ
スを解消することができる。
【0089】
【数23】
【0090】図11は、PWM装置4における後段処理
部9の好適実施例の構成を示している。上述したように
様々な形で前段処理部8から入力する中間相電圧信号V
ut、Vvt、Vwtは、信号正規化部18において、
直流電源電圧値Eで除算され、かつ正規化されて、パル
ス信号生成部19に送られる。このように正規化処理す
ることによって、パルス信号生成部19における後の処
理が直流電源電圧の変動に対応し易くなる。キャリア信
号生成部20は、外部からキャリア信号の周波数や信号
正規部18から相信号等の情報を受け取り、ピーク間の
振幅が1に正規化された三角波、鋸波等の直線的に変化
するキャリア信号を生成し、パルス信号生成部19へ出
力する。パルス信号生成部19は、信号正規化部18か
ら入力した3つの相信号とキャリア信号生成部からのキ
ャリア信号とを比較し、スイッチング用のパルス信号u
p、un、vp、vn、wp、wnを生成する。前記相
信号とキャリア信号とは、共に同一の直流電源電圧値E
で正規化されているので、正規化処理をしない場合と同
一のパルス信号を得ることができる。
【0091】このように本実施例では、キャリア信号生
成部20が、信号正規化部18から入力する相電圧信号
に基づいてキャリア信号の基本形状を、例えば三角波ま
たは鋸波のように決定し、かつ後段処理部9外部からの
情報に基づいてキャリア信号の周波数を決定する。更に
キャリア信号の位相を、例えば三角波であれば制御周期
毎に上向き凸または下向き凸としたり、鋸波であれば下
降形または上昇形を選択することができる。このよう
に、制御周期毎に変調信号に応じてキャリア信号の形状
を制御することによって、最適のパルス信号が得られ、
100%の電圧利用効率を達成しながらスイッチングロ
スを最小化した高度なPWM処理を実現することができ
る。
【0092】また、別の実施例では、キャリア信号生成
部20が、上述したキャリア信号の生成に必要な全ての
情報を外部から受け取るようにすることができ、その場
合にも同様の作用効果が得られる。更に、キャリア信号
として三角波信号のみを使用する場合には、最終的に得
られるパルス信号の最適性は多少損われるが、キャリア
信号生成部の構成を簡単にすることができ、コストを低
減できる利点がある。この場合にも、上述した本発明の
本質的な作用効果に何ら影響を与えないことは、言うま
でもない。
【0093】一般に、前記パルス信号には、インバータ
2の各スイッチング素子のターンオン、ターンオフ特性
を考慮して短絡防止期間が設定される。これには公知の
様々な方法を用いることができ、例えば図9では、参考
までに破線で示すベクトル信号線21によって、かかる
処理に必要な信号をパルス信号生成部19に入力させて
いる。
【0094】上記各実施例では、図11に示すような信
号正規化部18を後段処理部9側に配置したが、別の実
施例では、信号正規化部を前段処理部8側に配置するこ
とができる。即ち、前段処理部8は、縮退処理と正規化
処理を同時に実行することが可能であり、それによって
処理効率を向上させることができる。この場合、例えば
図5、図6の実施例に関しては、縮退率αを次の式のよ
うに選定すればよい。
【0095】
【数24】
【0096】また、図7乃至図10の実施例に関して
は、縮退率αを次の式のように選定することができる。
【0097】
【数25】
【0098】上述したPWM装置4は、それ全体を1個
のICで実現することができる。図12には、このよう
なICの好適な実施例の構成が概略的に示されている。
同図において、IC22は、前記PWM装置に対応する
PWM部23と、そのインタフェース部24とから構成
される。インタフェース部24は、PWM装置のIC化
に伴ってPWM部23に必要な信号を送信するために付
加されたものであり、外部とのインタフェース25と、
該インタフェースを介して入力する前記信号を一時的に
保存するためのレジスタ26、27とを有する。レジス
タ26は、指令相電圧Vu、Vv、Vwを、レジスタ2
7は、前記指令相電圧以外の直流電圧値等の情報を保存
する。これらの信号はPWM部23に出力され、PWM
部23は6個のスイッチング用パルス信号としてインバ
ータ2に出力する。
【0099】別の実施例では、例えば図3のPWM装置
4とインバータ2とを1個のICで実現することができ
る。このようなICの好適な実施例が、図13に概略的
に示されている。本実施例のIC28は、図12の実施
例と同様にPWM装置4に対応するPWM部23と、そ
のインタフェース部24と、インバータ2を部分的にI
C化したインバータ部29とを有する。インバータ部2
9は、PWM部23とのインターフェース部30と、ベ
ースアンプ部31と、パワートランジスタ部32とから
構成される。
【0100】PWM部23から出力される6個のスイッ
チング信号は、高耐圧インターフェース部30を経てベ
ースアンプ部31に入力され、パワートランジスタ部3
2を構成するIGBT、MOSFET等のパワートラン
ジスタを駆動するに足りるレベルに増幅された後、パワ
ートランジスタ部32に出力される。パワートランジス
タ部32は、前記ベースアンプ部から入力する信号に応
じてスイッチング動作を行い、直流電源1から供給され
る直流電力を交流電力に変換して、3相負荷33に供給
する。
【0101】図14は、本発明のPWM装置を1個のI
Cで実現した更に別の実施例を示している。本実施例の
IC34には、例えば図3のPWM装置4に対応するP
WM部23と、同じく制御器5に対応する制御部35と
が搭載されている。更にIC34には、PWM装置のI
C化に対応して、外部から必要な各種情報を入力して前
記PWM部及び制御部に供給すると共に、制御部35か
ら前記情報の一部を外部へ出力するために、インターフ
ェース部36が設けられている。
【0102】以上、本発明のPWM制御方法及び装置に
ついて、好適な実施例を用いて詳細に説明したが、当業
者に明らかなように、本発明は上記実施例に限定される
ものでなく、その技術的範囲内において様々に変形・変
更を加えて実施することができる。
【0103】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されている
ので、以下に記載するような顕著な効果を奏する。
【0104】本発明の3相電圧形インバータのためのP
WM方法によれば、インバータへのスイッチング用パル
ス信号を生成するべく指令相電圧をPWM処理する前
に、制御周期毎に所定の離散時間形の線形信号処理を行
うことによって、直線的に変化する三角波、鋸波等のキ
ャリア信号を利用する従来のPWM方法の簡単性という
優れた特長を活かしながら、指令相電圧がキャリア信号
のレベルを超える場合にも、線形性を損なうことなく無
理のないPWM処理を行うことができる。特にモータ駆
動等に利用される場合には、モータに不都合な挙動をさ
せたり損傷を生じる虞がなく、しかも、サーボ駆動モー
タ等の3相負荷に必要とされる任意の形状の指令相電圧
にも支障なく適用できると共に、電圧利用効率が理論的
に100%でかつスイッチングロスの少ない最適のスイ
ッチング信号を発生することができる。即ち、本発明に
よれば、上述した従来技術の様々な問題点を解消し、処
理が極めて簡単で実用性・信頼性の高い3相電圧形イン
バータのためのPWM方法を実現することができる。
【0105】また、本発明のPWM装置によれば、複雑
な機器や設備を必要とすることなく比較的簡単な構成に
より、従来のPWM装置に僅かな変更を加えるだけで、
上述した本発明の離散時間形のPWM方法を実現するこ
とができ、既存の様々なシステムにも容易に組み込んで
使用することができる。特に本発明のPWM装置は、I
C化に適しており、それによりより高い信頼性を確保す
ることができ、かつより一層コンパクト化、低コスト化
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるPWM処理において、各指令相電
圧が0の場合に生成されるスイッチング信号の1例を示
す波形図である。
【図2】本発明によるPWM処理において、制御周期毎
にキャリア信号の形状を制御する様子の1例を示す波形
図である。
【図3】本発明による離散時間形のPWM装置を用い
て、3相負荷として誘導モータを駆動制御するサーボ系
の構成を示すブロック図である。
【図4】図3のPWM装置の構成を示すブロック図であ
る。
【図5】PWM装置の第1実施例による前段処理部にお
ける信号処理過程を示すフロー図である。
【図6】図5の第1実施例によるPWM装置の前段処理
部の構成を示すブロック図である。
【図7】PWM装置の第2実施例による前段処理部にお
ける信号処理過程を示すフロー図である。
【図8】図7の第2実施例によるPWM装置の前段処理
部の構成を示すブロック図である。
【図9】図(a)、(b)は、PWM装置の第3実施例
による前段処理部における信号処理過程をそれぞれ示す
フロー図である。
【図10】図9の第3実施例によるPWM装置の前段処
理部の構成を示すブロック図である。
【図11】PWM装置の後段処理部の構成を示すブロッ
ク図である。
【図12】PWM装置を搭載したICの構成を示すブロ
ック図である。
【図13】PWM装置及びインバータを搭載したICの
構成を示すブロック図である。
【図14】PWM装置及び制御器を搭載したICの構成
を示すブロック図である。
【図15】3相交流モータを駆動制御するための従来技
術による3相電圧形インバータ及びPWM装置からなる
システムの構成を示す回路図である。
【図16】従来技術を用いてキャリア信号として三角波
信号との比較により、指令相電圧からスイッチング信号
を生成する様子を示す図である。
【図17】従来技術により3相の指令相電圧をリミッタ
処理する場合を示す波形図である。
【図18】従来の三角波比較形PWMにおいて、各指令
相電圧が0の場合のスイッチング信号の生成を示す波形
図である。
【符号の説明】
1 直流電源 2 インバータ 3 3相交流モータ 4 PWM装置 5 制御器 6 速度センサ 7 電流計 8 前段処理部 9 後段処理部 10 Emax決定手段 11 縮退率決定手段 12 乗算手段 13 バイアス生成手段 14 加算手段 15 縮退バイアス相電圧生成手段 16 縮退バイアス相電圧生成手段 17 バイアス決定手段 18 信号正規化部 19 パルス信号生成部 20 キャリア信号生成部 21 ベクトル信号線 22 IC 23 PWM部 24 インタフェース部 25 インタフェース 26、27 レジスタ 28 IC 29 インバータ部 30 インターフェース部 31 ベースアンプ部 32 パワートランジスタ部 33 3相負荷 34 IC 35 制御部 36 インターフェース部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02M 7/42 - 7/98

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3相電力を生成するために、指令相電圧
    を変調用キャリア信号との比較により、直流電源を有す
    る3相電圧形インバータのスイッチング用パルス信号に
    変換するPWM(パルス幅変調)方法であって、 制御周期毎にU、V、W各相の指令相電圧Vu、Vv、
    Vwより3相線間電圧の最大絶対値を求め、この線間電
    圧最大絶対値と前記直流電源の電圧値とを比較して、少
    なくとも各制御周期間一定の縮退率α(0<α≦1)を
    決定し、前記各指令相電圧に対して、制御周期毎に前記
    縮退率αを乗じて縮退相電圧α・Vu、α・Vv、α・
    Vwを生成することにより、前記変調用キャリア信号の
    振幅を超えないように線形信号処理を行い、その結果得
    られた前記各縮退相電圧をU、V、W各相の中間相電圧
    信号Vut、Vvt、Vwtとしてこれらに対してピー
    ク間の振幅を前記直流電源電圧値と等しくした前記変調
    用キャリア信号を用いることによって、前記スイッチン
    グ用パルス信号を得るようにしたことを特徴とする3相
    電圧形インバータのためのPWM方法。
  2. 【請求項2】 3相電力を生成するために、指令相電圧
    を変調用キャリア信号との比較により、直流電源を有す
    る3相電圧形インバータのスイッチング用パルス信号に
    変換するPWM(パルス幅変調)方法であって、 制御周期毎にU、V、W各相の指令相電圧Vu、Vv、
    Vwに対して、少なくとも各制御周期間それぞれ一定の
    縮退率α(0<α≦1)及びバイアス値βで表される次
    式(1)を用いて、前記変調用キャリア信号の振幅を超
    えないように線形信号処理を行い、その結果得られた
    U、V、W各相の中間相電圧信号Vut、Vvt、Vw
    tに前記変調用キャリア信号を用いることによって、前
    記スイッチング用パルス信号を得るようにしたことを特
    徴とする3相電圧形インバータのためのPWM方法。 【数1】 Vut = αVu+β (0<α≦1) Vvt = αVv+β (1) Vwt = αVw+β
  3. 【請求項3】 制御周期毎に前記各指令相電圧Vu、V
    v、Vwより3相線間電圧の最大絶対値を求め、この線
    間電圧最大絶対値と前記直流電源の電圧値とを比較して
    前記縮退率αを決定することを特徴とする請求項2記載
    の3相電圧形インバータのためのPWM方法。
  4. 【請求項4】 前記縮退率αを前記各指令相電圧に乗じ
    て縮退相電圧α・Vu、α・Vv、α・Vwを生成し、
    少なくとも各制御周期間一定のバイアス値Vb=βを前
    記各縮退相電圧に加算して縮退バイアス相電圧Vuab、
    Vvab、Vwabを生成し、これらを前記中間相電圧信号
    として、ピーク間の振幅を前記直流電源電圧値とする前
    記キャリア信号を用いることによって、前記スイッチン
    グ用パルス信号を得るようにしたことを特徴とする請求
    項2または請求項3記載の3相電圧形インバータのため
    のPWM方法。
  5. 【請求項5】 前記バイアス値Vbを前記縮退相電圧に
    基づいて決定することを特徴とする請求項4記載の3相
    電圧形インバータのためのPWM方法。
  6. 【請求項6】 前記バイアス値Vbを、前記縮退相電圧
    の最大値Vamaxまたは最小値Vaminと前記直流
    電源電圧値Eとにより表わされる次式(2)または
    (3)に基づいて決定することを特徴とする請求項4ま
    たは請求項5記載の3相電圧形インバータのためのPW
    M方法。 【数2】Vb=−E/2−Vamin (2) Vb=E/2−Vamax (3)
  7. 【請求項7】 制御周期毎に、少なくとも各制御周期間
    一定のバイアス値Vb=β/αを前記各指令相電圧に加
    算してバイアス相電圧Vub、Vvb、Vwbを生成
    し、前記各指令相電圧または前記各バイアス相電圧より
    3相線間電圧の最大絶対値を求め、この線間電圧最大絶
    対値と前記直流電源の電圧値とを比較して前記縮退率α
    を決定し、前記各バイアス相電圧に前記縮退率αを乗じ
    て縮退バイアス相電圧Vuab、Vvab、Vwabを生成
    し、これらを前記中間相電圧信号として、ピーク間の振
    幅を前記直流電源電圧値とする前記キャリア信号を用い
    ることによって、前記スイッチング用パルス信号を得る
    ようにしたことを特徴とする請求項2記載の3相電圧形
    インバータのためのPWM方法。
  8. 【請求項8】 3相電力を生成するために、外部から入
    力する指令相電圧を変調用キャリア信号との比較により
    スイッチング用パルス信号に変換して、直流電源を有す
    る3相電圧形インバータに出力するPWM(パルス幅変
    調)装置であって、 制御周期毎にU、V、W各相の指令相電圧Vu、Vv、
    Vwに対して、少なくとも各制御周期間それぞれ一定の
    縮退率α(0<α≦1)及びバイアス値βで表される次
    式(1)を用いて、前記変調用キャリア信号の振幅を超
    えないように線形信号処理を行なう手段と、 前記手段から得られたU、V、W各相の中間相電圧信号
    Vut、Vvt、Vwtに前記変調用キャリア信号を用
    いることによって、前記スイッチング用パルス信号を生
    成するPWM処理手段とからなることを特徴とする3相
    電圧形インバータのためのPWM装置。 【数3】 Vut = αVu+β (0<α≦1) Vvt = αVv+β (1) Vwt = αVw+β
  9. 【請求項9】 前記線形信号処理手段が、制御周期毎に
    前記各指令相電圧Vu、Vv、Vwより3相線間電圧の
    最大絶対値を求める手段と、前記手段により求められた
    線間電圧最大絶対値と前記直流電源の電圧値とを比較し
    て前記縮退率αを決定する手段と、前記縮退率αを前記
    各指令相電圧に乗じてU、V、W各相の縮退相電圧を生
    成する手段とからなり、前記各縮退相電圧を前記中間相
    電圧信号として前記PWM処理手段に出力することを特
    徴とする請求項8記載の3相電圧形インバータのための
    PWM装置。
  10. 【請求項10】 前記線形信号処理手段が、制御周期毎
    に前記バイアス値βを決定するための手段を更に有する
    ことを特徴とする請求項9記載の3相電圧形インバータ
    のためのPWM装置。
  11. 【請求項11】 前記バイアス値決定手段が、制御周期
    毎に前記各縮退相電圧に対し加算すべき一定のバイアス
    値Vb=βを決定する手段からなり、前記線形信号処理
    手段が更に、決定された前記バイアス値Vbを前記各縮
    退相電圧に加算して縮退バイアス相電圧を生成する手段
    からなり、前記各縮退バイアス相電圧を前記中間相電圧
    信号として前記PWM処理手段に出力することを特徴と
    する請求項10記載の3相電圧形インバータのためのP
    WM装置。
  12. 【請求項12】 前記線形信号処理手段が、制御周期毎
    に前記各指令相電圧に対し加算すべき一定のバイアス値
    Vb=β/αを決定する手段と、これにより決定された
    前記バイアス値Vbを前記各指令相電圧に加算してバイ
    アス相電圧を生成する手段と、制御周期毎に前記各指令
    相電圧または前記各バイアス相電圧より3相線間電圧の
    最大絶対値を求める手段と、これにより求められた線間
    電圧最大絶対値と前記直流電源の電圧値を比較して前記
    縮退率αを決定する手段と、前記縮退率αを前記各バイ
    アス相電圧に乗じてU、V、W各相の縮退バイアス相電
    圧を生成する手段とからなり、前記各縮退バイアス相電
    圧を前記中間相電圧信号として前記PWM処理手段に出
    力することを特徴とする請求項8記載の3相電圧形イン
    バータのためのPWM装置。
  13. 【請求項13】 少なくとも前記線形信号処理手段をI
    C化したことを特徴とする請求項8乃至請求項12のい
    ずれか記載の3相電圧形インバータのためのPWM装
    置。
  14. 【請求項14】 外部から入力する情報に従って前記各
    指令相電圧を生成し、前記線形信号処理手段に出力する
    制御部を一体的にIC化したことを特徴とする請求項1
    記載の3相電圧形インバータのためのPWM装置。
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