JP3049308B2 - 光誘起屈折率特性を改善したニオブ酸リチウム単結晶の製造方法 - Google Patents

光誘起屈折率特性を改善したニオブ酸リチウム単結晶の製造方法

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JP3049308B2
JP3049308B2 JP8216584A JP21658496A JP3049308B2 JP 3049308 B2 JP3049308 B2 JP 3049308B2 JP 8216584 A JP8216584 A JP 8216584A JP 21658496 A JP21658496 A JP 21658496A JP 3049308 B2 JP3049308 B2 JP 3049308B2
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保典 古川
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザー光を利用
した光情報処理、光加工技術、光化学反応技術、光計測
制御等々の分野で利用するニオブ酸リチウム(LiNb
3)(以下LNと略記する)単結晶の製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来技術】LN単結晶の相図は古くから知られてお
り、従来、組成の均質性の高いLN単結晶を製造するた
めには、結晶と融液が同じ組成で平衡共存する一致溶融
(コングルエント)組成であるLi2O/(Nb25
Li2O)のモル分率が0.485の融液から回転引き
上げ法で育成されていた。育成されたアズグロウンLN
単結晶は多分域状態となっているため、育成後の結晶を
キュリー温度である約1150℃以上に加熱した状態で
結晶のZ軸方向に電圧を印加し、単一分域化した後、結
晶を冷却するポーリングという処理を施されていた。単
一分域化処理された結晶は所定の大きさに加工された
後、各種用途に使用されていた。
【0003】LN単結晶を光学応用に用いる場合、強い
レーザー光を当てると局所的な屈折率の変化(光誘起屈
折率変化、通称「光損傷」と呼んでいる)が現れ、光変
調素子や波長変換素子等の応用においては障害となって
いるが、一方では、逆に、この光誘起屈折率変化を積極
的に利用して高感度光メモリとして位相型ホログラム記
録素子に応用する関心が高まっている。光誘起屈折率変
化(フォトリフラクティブ効果)に関しては、これまで
以下のようにそのメカニズムが説明されている。即ち、
光誘起屈折率変化は不純物や欠陥に起因する深いトラッ
プ準位(フォトリフラクティブ中心)の存在する電気光
学結晶に光を照射したときの生じる現象であり、フォト
リフラクティブ中心が光イオン化され、その際に生成さ
れた自由キャリアが拡散、外部電場、光起電力効果など
により移動したのち光の照射していない部分で再結合
し、その結果、光の強度分布に対応した空間電荷分布が
生じる。この空間電荷分布が電気光学効果により屈折率
変化を引き起こす。これが光誘起屈折率変化である。
【0004】以上のメカニズムが機能するためには、初
期状態でイオン化されたトラップ準位がなくてはならな
い。例えばLN単結晶ではFe2+がドナー準位を形成
し、これがイオン化されてFe3+となりトラップ準位を
形成する。したがって、結晶中に含まれる特に遷移金属
不純物が重要な役割を果たし、これまで、電気光学結晶
であるLN単結晶の光誘起屈折率変化は、結晶にFe、
Mn、Cu等の遷移金属を添加することで光感度及び回
折効率がさらに向上することが知られていた。また、遷
移金属を添加しない一致溶融組成のLN単結晶は、ホロ
グラム回折効率が極端に低いためこれら応用には適さ
ず、従来は一致融液組成のLN単結晶に数百ppmのF
eを添加した結晶が製造され、レ−ザ−光の応用技術に
使用されていた。
【0005】可視光のレーザー光を用いて単結晶内に三
次元ホログラムを書き込む光レーザー装置に用いる単結
晶として、遷移金属を添加しない一致溶融組成のLN単
結晶は、比較的透明であるが、ホログラム回折効率が極
端に低すぎるため、応用上ホログラム書き込みが困難で
あるという問題があった。一方、通常の一致溶融組成に
数百ppmのFeを添加したLN単結晶はホログラム回
折効率は高いものの、約400〜600nmの可視光領
域での吸収が大きく茶色に着色していた。また、結晶製
造の観点からみても、遷移金属は結晶中で偏析するため
これを一様に添加した結晶育成は難しく、Feを添加し
たLN単結晶には光散乱の原因となるマクロな結晶欠陥
が多く含まれ光学素子としては十分な品質のものが得ら
れていなかった。また、このようなフォトリフラクティ
ブ効果を示す結晶材料を比較する性能指数として結合係
数が用いられているが、これまで知られているFeを添
加したLN単結晶の場合には約4〜12cm-1であると
言われており(例えば「光学結晶」200頁 宮沢信太
郎著 培風館社)、光学応用上必ずしも十分な性能を有
しているとは言えない問題もあった。
【0006】ところで、一般に光学素子材料は光吸収、
光散乱ができるだけ小さいことが望ましいが、光学結晶
においてレーザー光の吸収が増大することは、結晶の特
性を劣化させる場合が多く、位相型三次元ホログラム素
子においても、その特性が同じならば吸収の少ない方が
望ましいといえる。また、結晶製造の観点からみても、
遷移金属は結晶中で偏析するためこれを一様に添加した
結晶育成は難しく、Feを添加したLN単結晶には光散
乱の原因となるマクロな結晶欠陥が多く含まれ光学素子
としては十分な品質のものが得られていなかった。さら
に、従来の結晶は単一分域化するためにポーリングとい
う数十時間の工程時間を要する分極処理をする必要があ
るが、LN単結晶中に添加されたFeは分極処理により
結晶中を容易に動くため、結晶中に濃度の著しい勾配が
でき結晶の光学特性が不均一になるという問題があっ
た。さらに、Fe添加LN単結晶の不均一性によるラン
ダムな光散乱が原因とされる雑音がホログラムの記録密
度の向上を妨げる問題であるとされていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の
欠点を改良し、LN単結晶中に遷移金属を添加せずとも
光誘起屈折率変化を制御し、回折効率が高く、しかも光
散乱がなく透過特性に非常に優れたLN単結晶を提供す
べく種々検討した結果、LN単結晶の結晶組成を制御す
ることにより目的を達成しうることを見出し、本発明を
完成したもので、本発明の目的は、レーザー光を利用し
た光情報処理、光加工技術、光化学反応技術、光計測制
御等々の分野への応用に際して、光誘起屈折率変化を制
御したLN単結晶の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、内
側坩堝の底に外側坩堝から内側坩堝に通じる穴を設けた
二重坩堝法を用いた引き上げ法によるニオブ酸リチウム
単結晶育成に際し、内側坩堝のニオブ酸リチウム融液の
組成をLi 2 O/(Nb 2 5 +Li 2 O)のモル分率を
0.56〜0.60の特定範囲に保った融液組成とし、
育成される結晶成長量を測定し、結晶化した成長量に見
合った量のLi 2 O/(Nb 2 5 +Li 2 O)のモル分率
が0.50の化学量論組成比の原料を外側坩堝に自動的
に供給するとともに、坩堝を種結晶と反対方向に回転さ
せることにより、アズグロウンで単分域化している、結
晶組成と光学的均質性の良いLi 2 O/(Nb 2 5 +L
2 O)のモル分率が0.495〜0.50であって、
400〜600nmの可視光域での光吸収係数1cm -1
以下で、遷移金属のFeを添加することなしにホログラ
ム回折効率が高い結晶を育成することを特徴とするニオ
ブ酸リチウム単結晶の製造方法である。
【0009】さらに、本発明は、上記の方法で得られた
Li 2 O/(Nb 2 5 +Li 2 O)のモル分率が0.49
5〜0.50であるニオブ酸リチウム(LN)単結晶
に、育成後にさらに、ホログラムの書き込み速度とホロ
グラムの記録時間を制御するために、酸素濃度を制御し
た雰囲気中で900〜1000℃で熱処理を加えること
を特徴とするニオブ酸リチウム単結晶の製造方法であ
る。
【0010】すなわち、請求項1の発明は、LN融液か
らその単結晶を育成する方法において、LN融液の組成
を、リチウム成分の過剰なLi 2 O/(Nb 2 5 +Li 2
O)のモル分率を0.53〜0.62の特定範囲に保っ
た融液から二重坩堝法により結晶を育成することによ
り、単一分域処理が不要で、組成と光学的均質性に優
れ、ホログラムの回折効率が高い単結晶製造法を要旨と
するものである。
【0011】また、請求項2の発明は、遷移金属のFe
が無添加である化学量論比に近い組成を持つLN単結晶
に、育成後にさらに、ホログラムの書き込み速度とホロ
グラムの記録時間を制御するために熱処理を加えること
を特徴とするLN単結晶製造方法を要旨とするものであ
る。
【0012】
【作用】本発明の製造方法によって得られるLN単結晶
は、Li2O/(Nb25+Li2O)のモル分率が0.
485である通常のコングルエント組成よりも化学量論
比に近いモル分率が0.495〜0.50の組成を持つ
単結晶であるため結晶の完全性が高く欠陥密度も低い。
さらに、遷移金属などが無添加であることから、光散乱
が少なく400〜600nmの可視光域での光吸収係数
が1cm-1以下と光透過特性にも優れホログラム回折効
率が高いものである。
【0013】本発明に係るLN単結晶の製造方法は、引
き上げ法によるLN単結晶育成に際し、融液からその単
結晶を育成する際のLN融液の組成を、従来のような結
晶と融液が同じ組成で平衡共存する一致溶融組成でな
く、リチウム成分の過剰なLi2O/(Nb25+Li2
O)のモル分率を0.56〜0.60の特定範囲の保っ
た融液から二重坩堝法により結晶を育成することにより
得られる。また、本組成の融液から育成すれば、結晶さ
れる結晶組成のキュリー温度が約1200℃と通常のコ
ングルエント組成結晶の1150℃よりも高く結晶成長
温度に近いため、アズグロウンの状態でも結晶の大部分
は単一分域状態となっている。このため、従来のコング
ルエント組成融液から育成した多分域状態の結晶とは大
きく異なり、多分域結晶で必要となる育成後のポーリン
グ処理を施す必要性が無いという利点がある。さらに、
結晶育成方法を二重坩堝法とすることにより、結晶が育
成される融液の組成は常に一定に保たれ、かつ、内側坩
堝内の融液の温度変動はきわめて少ないという特徴があ
るため、きわめて均一組成で光学的均質性も良いLN単
結晶を製造することが可能である。
【0014】さらに、本発明の製造方法で得られたLN
単結晶を用いたレーザー装置は、可視光のレーザー光を
用いて単結晶内に三次元ホログラムを書き込む光増幅装
置であり、三次元ホログラムは高速でかつ記憶容量が潜
在的に大きいため最近マルチメディア関連の新しい記録
方法として、将来の発展が期待されているものである。
ホログラムには銀塩写真をはじめいろいろな材料が使わ
れているが、メモリへの応用には光誘起屈折性結晶がも
っとも有力であると考えられており、とくにLN単結晶
は数ある光誘起屈折性結晶の中でも一番保持時間の長い
材料であり、これまでメモリの実験には、ほとんどが遷
移金属であるFeを添加することで回折効率を大きくし
た茶色に着色したLN単結晶が用いられている。しかし
ながら、Feを添加したLN単結晶は、約400〜60
0nmの可視光領域での吸収や散乱が大きく、また、試
料による特性のばらつきも大きいためホログラム記録材
料として実用に供するには至っていなかった。本発明者
らは、遷移金属を添加せずともLN単結晶の組成を制御
することにより結晶的にも均質かつ高品質で、レーザー
装置で要求されるに十分な回折効率が得られると言う現
象を初めて見いだした。本発明によるLN単結晶を用い
た三次元ホログラムを書き込む光増幅装置は本発明者に
よって初めて見いだされたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明をさらに詳細に説明
する。本発明で使用する原料としては、Li成分及びN
b成分はこれらの酸化物もしくは加熱により酸化物と成
るような化合物、例えば、Li2O、Li2CO3、Nb2
5等を使用する。そして、これらの成分をLi2O/
(Nb25+Li2O)のモル分率が0.485である
通常のコングルエント組成(コングルエント組成)より
も化学量論比に近いモル分率が0.495〜0.50の
組成を持つ単結晶を得るのであって、この単結晶は40
0〜600nmの可視光域での光吸収係数が1cm-1
下である特性を有し、遷移金属を添加することなしにホ
ログラム回析効率が高いのである。そして、このホログ
ラム回析効率が高いとはレーザ光を照射する事で、より
大きな屈折率変化を結晶中に書き込むことを意味する。
更に、このニオブ酸リチウムに熱処理を加えることによ
ってホログラムの書き込み速度とホログラムの記録時間
を制御することことができる。この際の熱処理条件とし
ては酸素濃度を制御した雰囲気中で900〜1000℃
である。
【0016】本発明のニオブ酸リチウムの製造方法とし
て、好ましい方法は二重坩堝法における結晶の育成方法
である。二重坩堝法における結晶の育成方法の原理につ
いて図1及び図2を用いて説明する。図1はLNの相図
を、図2は二重坩堝法における単結晶育成装置の説明図
である。図1に見られるように、LN単結晶のコングル
エント組成はLi2O/(Nb25+Li2O)のモル分
率が0.485であるため、コングルエント組成融液か
ら通常の引き上げ法で得られるLN単結晶はNb成分過
剰となるが、融液の組成を著しくLi成分過剰(例えば
Li2O/(Nb25+Li2O)のモル分率が0.56
〜0.60、好ましくは0.58)にすると化学量論比
組成に近い、すなわち不定比欠陥濃度を極力抑えた単結
晶を得ることができる。しかし、成長する結晶組成と融
液組成が異なると、通常の引き上げ法では育成が進むに
連れ、融液と結晶の組成がより離れるため結晶は困難と
なる。そこで、不定比欠陥の密度や構造を精密に制御す
るために図2に示した二重坩堝法による単結晶育成装置
を開発した。二重坩堝法においては坩堝が二重構造とな
っており、内側坩堝の底に外側坩堝から内側坩堝に通じ
る穴を設けた。さらに、Li2O/(Nb25+Li
2O)のモル分率が0.56〜0.60のLi成分過剰
の内側坩堝の融液から育成される結晶成長重量をロード
セルにより測定し、結晶化した成長量に見合った量のL
2O/(Nb25+Li2O)のモル分率が0.50の
化学量論組成比の原料を外側坩堝に自動的に供給した。
この方法により、外側から内側への原料の流れ込みによ
り、結晶を常に一定深さで一定組成を保った内側坩堝の
融液から育成できるため、均質組成の大型単結晶を育成
することが初めて可能となった。
【0017】
【実施例及び比較例】次に本発明の実施例を示す。 実施例1 市販の高純度Li2CO3、Nb25(それぞれ純度9
9.999%)の原料粉末を準備し、Li成分過剰原料
としてLi2CO3:Nb25の比が0.56〜0.6
0:0.44〜0.40の割合で混合し、化学量論比組
成原料としてLi2CO3:Nb25=0.50:0.5
0の割合で混合した。次に1000kg/cm2の静水
圧でラバープレス成形し、それぞれを約1050℃の酸
素中で焼結し原料棒を作成した。また、連続供給用粉末
原料として混合済みの化学量論比組成原料を約1050
℃の酸素中で焼結して化学量論比組成原料も作成した。
次に、二重坩堝法による単結晶育成に際して、Li成分
過剰原料を内側坩堝に、化学量論比組成原料を外側坩堝
に予め充填し、次に坩堝を加熱して融液を作成した。こ
こで、育成に用いた坩堝は白金でできており、種結晶は
Z軸方位に切り出した5mm×5mm×長さ70mmの
単一分域状態にあるLN単結晶を用いた。育成条件は結
晶回転速度を5rpm、引き上げ速度を0.5〜2mm
/h、雰囲気を大気中とした。また、融液組成の均一化
のために坩堝を0.2rpmの早さで種結晶と反対方向
にゆっくり回転させた。約1.5週間の育成により直径
40mm、長さ70mmでクラックのない無色透明のL
N結晶体を得た。得られたアズグロウン結晶を種々の方
位に切断し、内部の分域状態を観察したところ結晶の表
面近傍のごく一部を除いて内部は均一に単一分域状態に
なっていることが認められた。
【0018】実施例2 実施例1で得られたLN単結晶は化学分析により、ほぼ
化学量論比組成に近くLi2O/(Nb25+Li2O)
のモル分率が0.495〜0.500にあり不定比欠陥
濃度が極力抑えられた単結晶であることを確認した。次
に育成した結晶のキュリー温度を示唆熱分析法により測
定したところ、結晶の各部分から切り出された試料のキ
ュリー温度はいづれも1198〜1200.0℃の範囲
にあり、さらに一本の結晶から切り出した試料のキュリ
ー温度は試料の切り出し位置に依らず一定で、結晶組成
の均質性は極めて良いことを確認した。さらに育成した
アズグロウンの単結晶から10mm×10mmで厚みが
2mmおよび10mmのYカット試料を切り出し、メカ
ノケミカル研磨により表面研磨を行った。試料は各種条
件のアニーリング処理を施しその酸化還元状態を制御し
た。アニーリング処理後の試料の光透過率を分光光度計
で測定した。図3aに示すように、アズグロウン状態の
ストイキオメトリ組成のLN単結晶の波長が400〜6
00nmにおける光吸収係数は1cm-1以下と非常に高
く、その特性はアニーリングによっても大きく低下する
ことは見られなかった。一方、従来の鉄を添加したコン
グルエント組成のアズグロウンと熱処理を施した結晶で
は、いずれの試料も、波長が400〜600nmにおけ
る光透過率は60%以下と低い透過特性を示すことが確
認された。さらに、図3bに基礎吸収端近傍での光吸収
係数特性を示すが、無添加化学量論比組成結晶ではコン
グルエント組成結晶よりもより短波長側に基礎吸収端が
伸びており、しかもその光吸収も小さく良好であること
がわかる。さらに、試料の光学的均質性をレーザー干渉
装置により観察したところ、結晶欠陥により引き起こさ
れるストリエーションやボイドなどの欠陥が見られず、
試料全体で変動が1×10-5以下の高い屈折率均質性が
あることが確認された。さらに、結晶中に含まれる散乱
についてレーザマイクロプローブ法により評価した。図
4は10mm角の試料に波長633nmのHe−Neレ
ーザーを入射したときの試料内の様子を模式的に示した
ものであるが、本発明で育成されたLN結晶ではレーザ
ーの散乱は全く観察されず、市販のコングルエント組成
にFeを数100ppm添加したLN単結晶に比べて、
格段に結晶品質が優れていることが認められた。
【0019】さらに、本発明で育成されたLN結晶の光
増幅率を二光波混合実験により評価した。実験の光学系
を図5に模式的に示す。図5に示すように、それぞれポ
ンプ光と信号光と呼ぶ二つのコヒーレントな光波を光誘
起屈折性結晶であるLN単結晶内で交わらせ、複数の干
渉縞を形成させた。この干渉縞の空間的な強度変化に対
応した空間電場が形成され、その結果として、結晶中に
屈折率格子が形成された。屈折率格子の位相は干渉縞に
対してπ/2だけ推移しているため、光誘起屈折性結晶
を通過した透過信号光は光強度の増幅を受け、ポンプ透
過光は光強度の減衰を受ける。その結果、図6に示した
二光波混合によるポンプ光から信号光へのエネルギーの
移動がオシロスコープ上で観察され、二光波混合の前後
の信号光強度の比から増幅率を求めた。ここでは、ポン
プ光および信号光としてNd:YAGレーザーの二倍波
である波長532nmの緑色光を用いた。ビーム直径は
それぞれ1mm、交差角を20°、ポンプ光と信号光の
光強度比を100:1とした。図7は無添加のコングル
エント組成LN単結晶、Fe添加コングルエント組成L
N単結晶、および無添加化学量論比組成LN結晶(試料
厚2mm)について、それぞれの回折効率、増幅率およ
び結合係数を求めた結果を比較した図である。但し、そ
れぞれの試料表面には無反射コートは施していない。無
添加のコングルエント組成LN単結晶では回折効率、増
幅率のいずれも1%以下と小さいが、Fe添加コングル
エント組成LN単結晶では、Feの添加により回折効率
が約34%、増幅率が15%、結合係数が15cm-1
増大していることがわかる。一方、無添加化学量論比組
成LN単結晶ではFeを添加していないにも係わらず回
折効率、増幅率および結合係数のいずれも、他の結晶の
それよりも大きく、それぞれ60%、42%、20〜2
7cm-1と大きな値が得られることが確認できた。
【0020】実施例3 次に各種条件で熱処理した10mm×10mmで厚みが
2mmのYカット試料を用い、二波混合実験における回
折効率と書き込み時間、およびホログラムの記録時間に
ついて測定した。熱処理は以下のように行った。キュリ
ー温度が1200℃の化学量論比組成のアズグロウンL
N単結晶を雰囲気制御が可能な熱処理炉に封入し、95
0℃まで10時間で昇温し、950℃で約12時間保持
したのち、室温まで約10時間で冷却して試料を取り出
した。炉の雰囲気は、流量1リットル/分の100%酸
素中、流量1リットル/分の乾燥した100%窒素ガス
中、および流量1リットル/分の水蒸気を含む窒素ガス
中の3つについて行った。熱処理後のそれぞれの試料の
二波混合測定結果をアズグロウン結晶のそれと比較した
結果を表1に示す。酸素処理により書き込み時間は約3
倍長くなり、一方、窒素処理により書き込み時間は1/
5〜1/3に短くなった。すなわち、より高速での書き
込みが可能となった。また、ホログラム記録の保持時間
は結晶の温度に大きく依存し、室温では数カ月以上も保
持できた。加速試験として結晶温度を約60℃に加熱し
てホログラム記録の保持時間を測定したところ、表1に
示したようにアズグロウン結晶の記録時間は約240時
間であったが、酸素中処理結晶は約710時間と、約3
倍の長時間保持が可能となることがわかった。一方、窒
素中で処理した結晶はそれぞれ80時間、55時間と短
くなった。以上の結果から、ホログラムの書き込み、お
よび記録保持時間は化学量論比組成LN結晶の熱処理に
より任意に制御することが可能となることが明らかにさ
れた。
【0021】
【表1】
【0022】参考例 次に可視光のレーザー光を用いて単結晶内に三次元ホロ
グラムを書き込む装置を試作した。装置の構成略図を図
8に示す。この装置は本発明のホログラム回折効率の高
いLN単結晶を用いた角度多重方式による体積型ホログ
ラムメモリー装置である。デジタルの画像入力データは
空間光変調器上に図形として展開される。次にこれをレ
ーザー光で読み出し、ホログラムの物体波とした。これ
にほぼ直角に参照波を入射し、干渉縞を記録媒質である
LN単結晶中に書き込んだ。ここで、LN結晶は、結晶
のc軸が干渉縞の方向に直行させるように配置し、高精
度に回転させることが可能なステージ上に載せた。結晶
サイズは1×1×1cm3である。結晶を少しずつ変え
ながら、ブラック回折の選択性を利用し約200枚のデ
ータを多重記録した。これらのデータは参照波により再
生され、二次元の光検出器により電気信号に変換した。
ここでのホログラム記録の特徴は、屈折率が変化する位
相型ホログラムであるため高い回折効率が期待されるこ
とと、現像処理を必要とせず干渉縞を照射するだけで回
折格子を書き込むことができ、更にこの一度書き込まれ
たホログラムは長時間保持できることである。ホログラ
ムの保持時間は温度などの環境条件に依存するが、化学
量論比組成のLN単結晶は従来の結晶よりもさらに長時
間で数カ月以上に亘りデータを保持できた。本構成にお
けるデータの記録密度は回折効率と雑音の大きさによっ
て決まる。従来、Fe添加LN単結晶の不均一性による
ランダムな光散乱が原因である雑音が問題とされていた
が、本発明によるLN単結晶では回折効率が高くしかも
結晶が均質で散乱がないため雑音が大幅に低減し、記録
密度が向上できることが確認された。
【0023】
【発明の効果】以上詳しく述べたように、本発明によれ
ば、遷移金属を添加せずともLN単結晶の組成をLi2
O/(Nb25+Li2O)のモル分率が0.495〜
0.50に制御することにより結晶的にも均質かつ高品
質で、透過特性も高く、レーザー装置で要求されるに十
分な回折効率が得られるLN単結晶が得られる。この特
性を利用することにより、LN単結晶を用いて、高速で
記憶容量が大きくかつ保持時間の長い三次元ホログラム
光増幅装置を提供することが可能である。これらのこと
から、光誘起屈折率変化を制御した化学量論組成LN単
結晶は光応用技術に広く活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】LNの相図である。
【図2】化学量論比組成のLN単結晶を育成するための
二重坩堝法による単結晶育成装置を説明する図である。
【図3】化学量論比組成と鉄添加一致溶融組成LN単結
晶の可視光領域での光透過率、(a)、および化学量論
比組成と一致溶融組成LN単結晶の光吸収係数(b)を
示した図である。
【図4】化学量論比組成のLN単結晶およびFeを添加
したコングルエント組成のLN単結晶に波長633nm
のHe−Neレーザーを入射したときの試料内光散乱の
様子を模式的に示した図である。
【図5】二光波混合によりLN単結晶内にホログラムを
書き込み回折効率を求める実験の様子を模式的に示した
図。
【図6】二光波混合によるポンプ光から信号光へのエネ
ルギーの移動測定から増幅率を求める図。
【図7】各種LN単結晶の二光波混合における回折効
率、増幅率、結合係数を求めた結果を比較した図であ
る。条件は波長532nm、試料厚2mm、ポンプ光と
信号光の強度比100:1
【図8】可視光のレーザー光を用いて単結晶内に三次元
ホログラムを書き込むホログラムメモリー装置の構成を
略して示した図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−320294(JP,A) Y.Furukawa et a l.,”Growth and cha racterization of o ff−congruent LiNbO 3 single crystals grown by the doubl e crucible metho d,”Journal of Crys tal Growth,Vol.128, No.1−4,Part.2,1993,p p.909−914 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 G02B 5/32 G02F 1/35 G03H 1/02 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内側坩堝の底に外側坩堝から内側坩堝に通
    じる穴を設けた二重坩堝法を用いた引き上げ法によるニ
    オブ酸リチウム単結晶育成に際し、内側坩堝のニオブ酸
    リチウム融液の組成をLi2O/(Nb25+Li2O)
    のモル分率を0.56〜0.60の特定範囲に保った融
    液組成とし、内側坩堝の融液から育成される結晶成長重
    量を測定し、該測定によって得られる結晶化した成長量
    に見合った量のLi 2 O/(Nb 2 5 +Li 2 O)のモル
    分率が0.50の化学量論組成比の原料を外側坩堝に自
    動的に供給するとともに、坩堝を種結晶と反対方向に回
    転させることにより、アズグロウンで単分域化してい
    る、結晶組成と光学的均質性の良いLi 2 O/(Nb 2
    5 +Li 2 O)のモル分率が0.495〜0.50であっ
    て、400〜600nmの可視光域での光吸収係数1c
    -1 以下で、遷移金属のFeを添加することなしにホロ
    グラム回折効率が高い結晶を育成することを特徴とする
    ニオブ酸リチウム単結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の方法で得られたLi2O/
    (Nb25+Li2O)のモル分率が0.495〜0.
    50であるニオブ酸リチウム(LN)単結晶に、育成後
    にさらに、ホログラムの書き込み速度とホログラムの記
    録時間を制御するために、酸素濃度を制御した雰囲気中
    で900〜1000℃で熱処理を加えることを特徴とす
    るニオブ酸リチウム単結晶の製造方法。
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