JP3045517B2 - 化合物系超電導撚線およびその製造方法 - Google Patents

化合物系超電導撚線およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は超電導発電機などの超電導応用機器に用い
られる化合物系超電導撚線およびその製造方法に関す
る。
「従来の技術」 超電導線においては量子磁束線の運動などに起因して
発熱を生じる場合があり、このような場合に超電導線に
部分的に常電導の芽が発生し、超電導線の全体が常電導
状態に転位するおそれがある。そこで従来、このような
磁気的不安定性および常電導転位などを防止して超電導
線を安定化するために、以下に記載する技術が採用され
ている。
超電導体をCuなどの良導電性の安定化母材の内部に埋
設する。特に、安定化母材を高純度の銅から形成する。
超電導体を数μ〜数十μmの径のフィラメント状に極
細化する。
多心線をツイスト加工する。
編組や成形撚線の構造を採用する。
金属間化合物系の超電導体は極めて硬く、脆いので、
機械歪が加わると超電導特性が劣化する傾向があり、こ
のため超電導線に補強材を添設して機械歪が加わること
を阻止する。
以上のような背景から、従来、交流用の超電導線の一
構造例として、Nb-Ti線等の線材を撚線化する方法など
が採用されているが、Nb3Snなどの化合物系の超電導線
材は機械歪に弱い欠点があり、直に撚線化することは困
難であるために、交流用などとして好適な構造の超電導
撚線を製造するための技術開発が進められている。
このような背景において、Nb3Sn系の超電導撚線を製
造する方法の一例として、第3図ないし第6図を基に以
下に説明する方法が知られている。
第3図に示すようにCuまたはCu合金からなる基地の内
部にNbの極細フィラメントを多数分散してなる素線1を
作製し、次いでこの素線1の外面に第4図に示すように
純Snの被覆層2を形成して複合線3を作製する。
次にこの複合線3を第5図に示すように複数本集合し
て集合線4を得、この集合線4を複数本揃え、撚線加工
して第6図に示す撚線5を得る。
そして、この撚線5に拡散熱処理を施し、被覆層2の
Snを素線1の内部に拡散させてNbフィラメントと反応さ
せることでNb3Sn超電導フィラメントを生成させること
ができ、Nb3Sn超電導撚線を得ることができる。
「発明が解決しようとする問題点」 ところが、前記の製造方法においては、複合線3…か
らなる集合線4を撚線化する場合、複合線3の1本1本
に強い圧縮加圧力が作用するので、Snからなる被覆層2
どうしが擦れあい、被覆層2の厚さが不均一となった
り、剥離を生じることがあった。このように被覆層2が
不均一になると、拡散熱処理時において、素線1の内部
側にSnが不均一に拡散する現象が起こる結果、Nb3Snの
生成状態が不均一になって超電導特性の劣化を引き起こ
す問題があった。
また、第6図に示す撚線5に拡散熱処理を施した場
合、複合線3の外周部に残留した溶融Snによって、隣接
する集合線4どうしが固着されてしまうことがある。
このようにSnによって隣接する集合線4どうしが固着
されることがあると、撚線5に応力が付加された場合な
どにおいて、集合線4どうしが相互に摺動できないため
に、撚線5の可撓性が損なわれる結果、固着部分が応力
集中点となるおそれがあり、機械強度が低下する問題が
あった。
更に、前記超電導撚線を交流用として用いた場合、前
記固着部分に応力が集中すると、応力集中部分の超電導
線に大きな歪が発生し、この部分の超電導特性が劣化す
る問題がある。
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、
機械強度が高く、撚線を構成する超電導線間の固着がな
く、可撓性に優れるとともに、優れた超電導特性を発揮
し、超電導発電機用などの交流用として優れた構造を有
する化合物系超電導撚線およびその製造方法を提供する
ことを目的とする。
「課題を解決するための手段」 請求項1に記載した発明は前記課題を解決するため
に、金属基地の内部に超電導金属間化合物からなるフィ
ラメントを多数分散してなる超電導線を複数本集合して
超電導導体部を構成し、純Cu程度の良導電性の導電体を
Ta、Nb等の高融点金属の拡散防止層で覆って安定化導体
を構成するとともに、前記超電導導体部の周囲を複数本
の安定化導体で覆って素線を構成し、この素線を複数本
撚り合わせてなるものである。
請求項2に記載した発明は前記課題を解決するため
に、超電導金属間化合物を構成する2種以上の金属元素
のうち、少なくとも1つの元素からなるフィラメントを
金属基地の内部に分散してなるロッドを用い、前記ロッ
ドの外周に、前記金属間化合物を構成する2種以上の金
属元素のうち、残りの元素の被覆層を形成して被覆複合
線を作成し、次いでこの被覆複合線を複数本集合して集
合素線を形成する一方、純Cu程度の良導電性の導電体を
Ta、Nb等の高融点金属からなる拡散防止層で覆って安定
化導体を形成し、前記集合素線の周囲を複数本の安定化
導体で覆った後に撚線加工するものである。
「作用」 超電導線を集合してなる超電導導体部の周囲に安定化
導体を配置して素線を構成し、この素線を撚線化してい
るので、前記安定化導体が超電導線を補強する結果、機
械強度が向上する。また、素線どうしを撚線化した場
合、撚線時に主に擦れ合うのは、素線外周部に設けた安
定化導体どうしであり、素線どうしは安定化導体を介し
て接する。従って熱処理を行った場合、素線どうしが固
着されてしまうことがなくなり、素線の可撓性が損なわ
れることが起こらないので、機械強度の低下を起こさな
い。
以下に本発明を更に詳細に説明する。
第1図は本発明の方法をNb3Sn系の交流用超電導撚線
を製造する場合に適用した例について説明するためのも
ので、この例の方法を実施するには、まず、第1図
(a)に示すインサイチュロッド9を作製する。
このインサイチュロッド9を作製するには、所定成分
のCu-Nb合金あるいはCu-Nb-Sn合金などを溶製してイン
サイチュインゴットを作成し、このインサイチュインゴ
ットを圧延加工、鍛造加工などの塑性加工で線引するこ
とにより作製する。前記インサイチュインゴットは、Cu
あるいはCu-Sn合金などからなる金属基地の内部に、Nb
からなる無数の樹枝状晶が分散された構造をなす加工性
の良好なものである。このインサイチュインゴットを線
引加工することにより、金属基地内に繊維状の無数のNb
フィラメントが分散配列された構造のインサイチュロッ
ド9を得ることができる。
次にこのインサイチュロッド9の外周面に電気メッキ
法、あるいは溶融メッキ法などの手段によってSnの被覆
層10を形成して第1図(b)に示す構造の被覆複合線11
を形成する。ここで被覆層10を形成する手段は前記の手
段に限定されるものではなく、Snテ−プの巻き付けなど
の手段によっても良い。
次いで前記被覆複合線11を複数本、例えば、7本集合
して第1図(c)に示す集合素線12を作成する。
一方、第1図(d)に示すロッド状の良導電性の導電
体13を用意し、この導電体13を管体14に挿入する。前記
導電体13は良導電性の純Cuなどからなるものであって、
管体14はTaあるいはNbなどからなるものである。
前記管体14に導電体13を挿入したならば、縮径加工を
施し、第1図(e)に示す安定化導体15を得る。この安
定化導体15は、内部側の導電体16を拡散防止層17で覆っ
てなる構成のものである。
前記拡散防止層17を構成する金属材料は、導電体16を
構成する純Cuとの間に不要な化合物などを生じない材料
であって、高融点のTaあるいはNbなどの金属材料からな
り、後述する拡散熱処理時に導電体16にその外部側から
不要な元素が拡散しないようにするために設けられる。
なお、前記導電体16の外方に拡散防止層17を形成する
手段として、導電体13の外方にメッキ処理を施すか、あ
るいは、導電体13の外方に前記材料からなるテープある
いは箔などを被せて伸線加工するなどの手段を採用して
も良い。
前述のように集合線12と安定化導体15とを作成したな
らば、集合線12の外周を覆うように複数の安定化導体15
を添わせて第1図(f)に示すような断面構造の素線18
を形成する。
続いて前記素線18を複数本用意して撚線加工を施し、
撚線を得る。この撚線加工において、素線18の外周部ど
うしが擦り合わされて素線18の外周部が損傷するおそれ
もあるが、素線18の外周部には安定化導体15が配置され
ているので、安定化導体15に多少の損耗が生じても差し
支えない。
撚線を作成したならば、以下に説明する段階的熱処理
を行って第2図に示す超電導撚線20を得ることができ
る。
まず、撚線をSnの融点より低い温度であって、Snの拡
散が進行する180〜220℃に数時間〜数十時間加熱する第
1熱処理を施す。この第1熱処理によってSnの溶け落ち
を防止しつつSnの被覆層2をインサイチュロッド1の内
部に拡散させる。なお、この第1熱処理は、Snをインサ
イチュロッド9側に十分に拡散させて消失させるまで行
うことが好ましい。
第1熱処理が終了したならば、前記撚線を更に300〜4
50℃の温度で数時間〜数十時間加熱する第2熱処理を施
す。この第2熱処理によってインサイチュロッド1の中
心部側までSnを十分に拡散させるとともに、CuとSnの不
要な化合物相が生じないようにする。
第2熱処理が終了したならば、前記撚線を更に450℃
よりも高い温度、例えば500〜750℃で数十時間〜数百時
間加熱する第3熱処理を施してNbフィラメントとSnを反
応させ、Nb3Sn超電導金属間化合物フィラメントを生成
させる。
以上説明した第1〜第3熱処理において、被覆複合線
11の被覆層10は周囲の安定化導体15に接触しているの
で、安定化導体15側にSnの拡散を生じることが懸念され
るが、安定化導体15の外周部分には拡散防止層17が形成
され、拡散防止層17がSnの拡散を阻止するので、導電体
16がSnで汚染されることがない。なおここで、導電体16
がSnによって汚染されると、極低温に冷却されて通電さ
れる場合に電導体16の電気抵抗が上昇するので好ましく
ない。
なおまた、前述のように段階的に第1〜第3熱処理を
行うことなく、500〜700℃に数十時間〜数百時間加熱す
る1回の熱処理でNb3Sn超電導フィラメントを生成させ
るようにしても差し支えない。
以上の処理によって、被覆複合線11の内部にNb3Sn超
電導フィラメントを生成させて超電導線19を形成し、第
2図に示す超電導撚線20を製造することができる。
前記超電導撚線20は、Nb3Sn超電導金属間化合物フィ
ラメントが生成された超電導線19を複数本集合してなる
超電導導体部と、この超電導導体部を覆った複数の安定
化導体15から構成された素線が、複数本撚り合わされて
なるものである。
以上のように製造された超電導撚線20は、各素線18の
外周部に安定化導体15が配置され、撚線時において素線
18どうしの擦れ合いが生じても安定化導体15が緩衝層と
して機能するので、素線18の内側に配置されている被覆
複合線11の被覆層10の損傷程度を最低限に抑えることが
できる。このため、撚線化の後に行う拡散熱処理時にお
いてインサイチュロッド9に被覆層10のSnが拡散する場
合、インサイチュロッド9の内部側に向けてSnが均一に
拡散する。従ってインサイチュロッド9の内部にNb3Sn
超電導フィラメントを均一に生成させることができる。
また、前記構成の超電導撚線は、インサイチュロッド
9から製造された超電導線21を有し、それらの超電導線
21を複数本の安定化導体15で補強した構造になっている
ので、臨界電流特性に優れ、機械歪を受けても超電導特
性の劣化が少ないなど、機械強度の面でも優れている。
従って前記構造の超電導撚線20は超電導発電機の界磁
巻線用などの交流用として好適に使用することができ
る。
なお、前記の例においては、超電導導体部の超電導線
21をインサイチュロッド9を用いて形成したが、Nbの芯
材にSnパイプを被せた複合体を多数本集合して縮径する
操作を複数回行って製造した複合多心線をインサイチュ
ロッド9の代用として用いることで超電導線を製造して
も良いのは勿論である。
更に、前記の例においては、本発明方法をNb3Sn系の
超電導撚線の製造方法に適用した例について説明した
が、本発明の方法をV3Ga系、Nb3Ge系、Nb3Al系などの他
の化合物系超電導撚線の製造方法として適用できること
は勿論である。
「実施例」 Cu-30wt%Nbの組成を有するインサイチュインゴット
を溶製し、これに鍛造加工と押出加工と線引加工を施し
て直径0.185mmのインサイチュロッドを作成し、更にそ
の外周面に電気メッキにより厚さ7.5μmのSnメッキ層
を被覆して被覆複合線を得、この被覆複合線を7本集合
して集合線を得た。
一方、外径16mm、内径14mmのTaの管体に、外径13.5mm
の純Cuのロッドを挿入し、全体を縮径加工して直径0.2m
mの安定化導体を得た。
次に前記集合線の周囲に前記安定化導体を12本添わせ
て素線を形成し、この素線を9本用いて平角成形撚りを
行い、厚さ1.8mm、幅4.5mmの矩形断面形状の撚線を得
た。
この撚線にNb3Sn生成用の拡散熱処理を施して超電導
撚線を得た。
得られた超電導撚線の臨界電流密度を測定したとこ
ろ、8Tの外部磁場中において、約1700A/mm2を示した。
なお、この超電導撚線を構成しているインサイチュロ
ッドからなる超電導導体部において、1本の超電導線の
臨界電流密度は2000A/mm2であるので、約85%の特性が
得られたことになる。
また、得られた超電導撚線に曲げ歪を付加したとこ
ろ、約2%歪まで特性の劣化は生じなかった。更に、超
電導導体部を構成する各超電導線の密着現象は生じるこ
とがなく、超電導撚線全体は十分な可撓牲を有してい
た。
「発明の効果」 以上説明したように本発明によれば、超電導線の周囲
に複数の安定化導体が配置されて素線が構成され、この
素線が撚線化されているので、超電導線が安定化導体に
より補強された構造となっている。このため機械強度が
高く、機械歪を受けても超電導特性の劣化が少ない超電
導撚線を提供することができる。
また、素線を撚線化する場合、素線どうしが擦れ合う
が、素線の外周部に安定化導体を配置しているので、こ
れらの安定化導体が緩衝層となってそれらの内部側に設
けられるロッドと被覆層の損傷を少なくできる。よっ
て、安定化導体の内部側に設ける被覆層の損傷割合が少
なくなるので、拡散熱処理を施した場合、被覆層の元素
をロッド側に均一に拡散させることができ、ロッド内に
均一に超電導金属間化合物フィラメントを生成させて超
電導線を得ることができる。
更に、各素線の外周部にTa、Nb等の高融点金属で被覆
した安定化導体を配置するので、撚線後に熱処理した場
合であっても、素線どうしが固着されることがなくな
る。よって超電導撚線は優れた可撓性を有するので、機
械歪が加わる可能性の高い超電導発電機用などの交流用
として好適である。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)〜(f)は本発明方法を説明するためのも
ので、第1図(a)はインサイチェロッドの断面図、第
1図(b)は複合体の断面図、第1図(c)は集合線の
断面図、第1図(d)は導電体を管体に挿入した状態を
示す断面図、第1図(e)は安定化導体の断面図、第1
図(f)は素線の断面図、第2図は撚線を示す断面図、
第3図ないし第6図は従来方法を説明するためのもの
で、第3図はインサイチュロッドの断面図、第4図は被
覆複合線の断面図、第5図は集合線の断面図、第6図は
超電導撚線の断面図である。 9……インサイチュロッド、10……被覆層、11……被覆
複合線、12……集合線、15……安定化導体、16……電導
体、17……拡散防止層、18………素線、19……超電導
線、20……超電導撚線。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丹下 雅善 東京都江東区木場1丁目5番1号 藤倉 電線株式会社内 (72)発明者 早川 弘之 東京都江東区木場1丁目5番1号 藤倉 電線株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−86015(JP,A) 特開 平2−213009(JP,A) 特開 平2−213010(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 12/00 - 12/16 H01B 13/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属基地の内部に超電導金属間化合物から
    なるフィラメントを多数分散してなる超電導線を複数本
    集合して超電導導体部が構成され、純Cu程度の良導電性
    の導電体をTa、Nb等の高融点金属の拡散防止層で覆って
    安定化導体が構成されるとともに、前記超電導導体部の
    周囲を複数本の安定化導体で覆って素線が構成され、こ
    の素線が複数本撚り合わされてなることを特徴とする化
    合物系超電導撚線。
  2. 【請求項2】超電導金属間化合物を構成する2種以上の
    金属元素のうち、少なくとも1つの元素からなるフィラ
    メントを金属基地の内部に分散してなるロッドを用い、
    前記ロッドの外周に、前記金属間化合物を構成する2種
    以上の金属元素のうち、残りの元素の被覆層を形成して
    被覆複合線を作成し、次いでこの被覆複合線を複数本集
    合して集合素線を形成する一方、純Cu程度の良導電性の
    導電体をTa、Nb等の高融点金属からなる拡散防止層で覆
    って安定化導体を形成し、前記集合素線の周囲を複数本
    の安定化導体で覆った後に撚線加工し、その後に拡散熱
    処理することを特徴とする化合物系超電導撚線の製造方
    法。
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