JP3044324B2 - すべり止めニス及びそれを用いたすべり止め加工方法並びにすべり止め加工を施した段ボールの製造方法 - Google Patents

すべり止めニス及びそれを用いたすべり止め加工方法並びにすべり止め加工を施した段ボールの製造方法

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JP3044324B2 JP2034769A JP3476990A JP3044324B2 JP 3044324 B2 JP3044324 B2 JP 3044324B2 JP 2034769 A JP2034769 A JP 2034769A JP 3476990 A JP3476990 A JP 3476990A JP 3044324 B2 JP3044324 B2 JP 3044324B2
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、段ボール、カートン等の紙器及び種々の紙
袋の荷崩れ等を防止するためのすべり止めニスに関する
ものであり、またそれらすべり止めニスを用いたすべり
止め加工方法等に関するものである。
<従来の技術及びその課題> 農産物、水産物その他の種々の食品、各種工業製品等
は、段ボール、カートン等の紙器あるいは種々の紙袋で
持つて包装され、輸送されている。
近年、各種包装ラインの自動化、輸送ラインのパレッ
ト化等物流の効率化が進み、段ボ−ルケ−ス等のすべり
による荷崩れが大きな問題となつてきている。パレット
積みされた段ボールケース等の荷崩れは、バンディング
処理やシュリンク処理によつて防止することが可能であ
るが、コスト高を招き、低コストで安全性の高いすべり
止め防止が望まれる。
従来、これら紙器、紙袋のすべり防止のためには、以
下説明するようなすべり止めニスが使用され、例えば段
ボールケースの全面あるいは、積層面となる天面及び/
または地面に部分的に印刷もしくは塗工されていた。
これらすべり止めニスとしては、粘着タイプ(紙器等
表面に塗工後の乾燥状態においても粘着性を保持してお
り、この粘着力でもつてすべり防止効果を発揮するも
の)及び、非粘着タイプ(紙器等の表面に塗工し、必要
に応じて更に加熱発泡等適当な処理を行うことによっ
て、表面に微妙な凹凸を形成せしめ、この凹凸が物理的
にかみ合って摩擦係数が向上しすべり防止を行うもの)
が一般的に使用されていた。
前記の粘着タイプのすべり止めニスとしては、粘着性
を有するアクリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重
合体のエマルジョンがもっぱら用いられ、適当な印刷も
しくはコーティング手段で印刷・塗工されていた。ま
た、エチレン/酢酸ビニル共重合等の固形樹脂も用いら
れ、特別なホツトメルトコーティング装置でもって加熱
溶融により塗工されていた。
また、ゴムラテックス及び水性接着剤とからなるすべ
り止め塗料も提案されている。
一方、後者の非粘着タイプとしては、水性インキ、水
性塗料等の樹脂バインダー中に無水ケイ酸等の微細無機
粒子或は加熱によって発泡するような発泡剤を混合せし
めたものが用いられ、適当な印刷またはコーティング手
段で印刷・塗工後、固着した前記微粒子或は加熱により
体積膨張した発泡剤粒子でもって凹凸面が形成されてい
た。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、前述の粘着タイプは、乾燥後の塗工面
が粘着性を有するため、ブロッキングが生じ、紙器等の
表面を損傷せしめたり、或は輸送中等にゴミ、ホコリ等
が付着して汚すなど、紙器の商品価値を著しく低下させ
るものであった。
また、各種粘着性を有する共重合体エマルジョンの場
合は、ブロッキングの発生を防止しようとすればすべり
防止効果が得られないという問題点を有し、また固形樹
脂の場合は、加熱溶融して塗工する特別な装置を必要と
するため、紙器、紙袋の印刷機をそのまま使用できず、
作業効率の低下という問題を有するものであった。
ゴムラテックス及び水性接着剤からなるすべり止め塗
料の場合は、ブロッキング防止効果は多少期待できる
が、耐摩擦性において充分ではなく問題を有するもので
あった。
また、後者の非粘着タイプの場合、最初のすべり防止
効果はある程度期待できるが、積み替え作業が繰り返さ
れるとすべり止め効果が極端に低下するもので、すべり
防止の持続性に欠けるものであった。また、耐摩擦性に
劣る一方、無機粒子の多量使用の結果、ニスも白化傾向
が避けられず、美粧性に欠け、実用上種々な制限を有す
るものではあった。更に無機粒子の使用は、塗工機のド
クター刃、アニロックスローラーの摩耗を促進すると言
う問題も有するものであった。
更に、従来のすべり止めニスにおいては、耐熱性が十
分でなく、例えば、段ボール製造において段ボ−ルの製
造用ライナーに予め印刷及びすべり止めニスの印刷・塗
工を行い、コルゲーターで中芯、裏ライナーと貼合する
システムに適用すると、以下のような問題を有するもの
であった。
即ち、粘着タイプの場合は、乾燥後の塗工面が粘着性
を示すことが必要なため、使用する樹脂の軟化点、分子
量に制限があり、耐熱温度を高くすることが出来ないも
のであつた。そのため、これらニスを塗工した表ライナ
ーを用いて、コルゲーター内で貼合すると、樹脂が軟化
し、熱版汚れが発生したり、更には段ボールを損傷した
りするものであつた。一方、樹脂の軟化点を十分な耐熱
温度まで上げると、逆にすべり防止効果が低下するもの
で、従来の粘着タイプのすべり止めニスは、この方式に
は適用できないものであった。
一方、非粘着タイプは、コルゲーター内での熱板との
摩擦により、凹凸が平滑化し、すべり止め効果の著しい
低下を来すもので、同様にこのような段ボール製造シス
テムには適性を有さないものであった。
本発明は、従来のすべり止めニスの上記問題点を解決
することを目的としたもので、より優れたすべり止め効
果を有すると共に、透明性(白化現象が生じない)、耐
ブロッキング性、耐摩擦性に優れたすべり止めニスを提
供しようとするものである。
また本発明は、塗工機のドクタ−刃、アニロックスロ
ーラーの摩耗の少ないすべり止めニスを提供しようとす
るものである。
また本発明は、コルゲータにおける耐熱性を有するす
べり止めニスを提供するものである。
さらに本発明は、上記すべり止めニスを用いたすべり
止め加工方法、ならびにすべり止め加工を施した段ボ−
ルの製造方法を提供しょうとするものである。
<問題を解決するための手段> 本発明は、改善された粘着タイプのすべり止めニスに
相当するもので、本発明は、ガラス転移温度が特定範囲
にある水性粘着剤とアルカリ可溶型水溶性樹脂とを特定
割合混合した混合物に対して、更に微粒子有機充填剤を
特定割合添加することを特徴とするすべり止めニスを提
供しようとするものである。
本発明に係わるすべり止めニスにおいて使用する水性
粘着剤としては、紙器等に塗布後の乾燥状態においても
粘着性を付与する性状を必要とし、かつ後記アルカリ可
溶型水溶性樹脂と充分な相溶性を有するものでなければ
ならない。このような目的に適用できる水性粘着剤とし
ては、ガラス転移温度(Tg)が5℃以下、より好ましく
は、0℃〜−40℃にある粘着剤が使用できる。Tgが、5
℃を超えると、すべり防止効果が十分でなく、−40℃よ
り以下の場合のブロッキングが発生しやすくなるなどの
問題が生じるものである。
本発明に係わるすべり止めニスの一つの成分である水
性粘着剤としては、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマ
ルジョン、アクリル系共重合体エマルジョン、ウレタン
系エマルジョン、さらにはゴムラテックス等の水性エマ
ルジョンが使用出来る。
エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン(以下単
にEVAエマルジョンとする)としては、紙器等に塗工後
の乾燥状態においても粘着性を付与する性状を必要と
し、かつ後記するアルカリ可溶型水溶性樹脂と充分な相
溶性を有するものでなければならない。
このような目的に適用出来るEVAエマルジョンとして
は、粘度が300〜5000センチポイズで、常温で造膜する
ものが使用できる。
エマルジョンの粘度が上記範囲外にある場合は、印刷
適性が十分でなく、常温で造膜しないものは、特別な加
熱装置を必要とし、作業工程上好ましいものではない。
これらの性状を有するEVAエマルジョンの具体例とし
ては、ポリゾールEVA P−20、P−3(昭和高分子社
製)、デンカEVAテックス#20、#60(電気化学工業社
製)、スミカフレックス400、401、450、610、460(住
友化学工業社製)等が例示できる。これらエマルジョン
は、固形分35〜60重量%の範囲のものである。
また、アクリル系共重合体エマルジョンとしては、粘
着剤としての前述性能を有するもので、(メタ)アクリ
ル酸アルキルエステル、例えばメチル、エチル、プロピ
ル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチ
ル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、デシル、ラウリル
等の直鎖又は側鎖のアルキル基を有するエステル類、必
要に応じて、スチレン類、(メタ)アクリル酸、マレイ
ン酸等不飽和酸、その他の重合性ビニル化合物等と共に
乳化重合して得られるものが例示出来る。
また、ウレタン系エマルジョンとしては、ポリオール
と有機ジイソシアネート等から合成される自己乳化型あ
るいは活性剤の存在下分散させた粘着性を有するエマル
ジョンが使用出来、ガラス転移温度としては、5℃〜−
40℃のものである。
これら性状を有するウレタン系エマルジョンの具体例
としては、サンキュアー776、822A、849、867、889(グ
ンゼ産業社製)が例示出来る。これらエマルジョンの固
形分は、35〜60重量%の範囲である。
また、ゴムラテックスとしては、天然ゴム或はスチレ
ン/ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリル
ゴムまたはポリイソプレンゴムから選ばれた合成ゴムラ
テックスが使用出来、それらの単独もしくは混合物の形
で用いることが出来る。
これらゴムラテックスは、固形分40〜60重量%の範囲
で、アルカリ性(通常、pHが7〜12のもの)である。
以上例示した水性粘着剤のうちでも、ウレタン系エマ
ルジョン及びゴムラテックスについては、高度な耐摩擦
性を得ることが難しく、この適性が重視される用途にお
いては、EVAエマルジョンあるいはアクリル系共重合体
エマルジョンを使用することが望ましいものである。
また、上記水性粘着剤と併用するアルカリ可溶型水溶
性樹脂としては、分子量、5000〜60000、酸価、80〜300
の範囲のもので好ましいものである。なお、分子量が50
00以下の場合、ブロッキング防止効果が劣り、60000以
上の場合には溶解性及び印刷適性に問題を生じ、また、
酸価が80以下の場合は、水溶化が困難となり、逆に300
以上では、耐水性或はすべり効果において劣る結果とな
るものである。
また、アルカリ可溶型の水性樹脂のTgが、60℃以上、
より好ましくは80℃以上であることが必要であり、Tgが
低いと有機充填剤を多量使用しても充分なブロッキング
防止効果並びに耐熱性を得ることが困難となる。
これらアルカリ可溶型水溶性樹脂の具体例としては、
スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル共
重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、マ
レイン酸樹脂等が例示出来、これらの単独又は二種以上
を併用して使用することが出来る。
なお、本発明に係るすべり止めニスにおいて、前記水
性粘着剤とアルカリ可溶型水溶性樹脂との混合比率が重
要で、前者の固形分100重量部に対して、後者の固形分
が10〜60重量部の範囲にあることが必要である。前者の
比率が高い場合は、耐ブロッキング性、耐熱性が問題と
なり、逆の場合は、すべり止め効果が問題となる。
また、有機系微粒子充填剤としては、すべり止めニス
中1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%の添加出来
る。なお1%以下の場合、耐ブロッキング性が充分でな
く、20%以上の場合は塗工・印刷適性、耐摩擦性、ニス
の流動性の低下の問題が生じるものである。さらに、こ
れら有機充填剤の粒径としては、1〜20μの範囲が使用
出来る。粒径が範囲より小さい場合は、ブロッキング防
止効果が得られず、大きい場合は、印刷・塗工適性にお
いて問題となる。
また、耐熱性(コルゲーター適性)を必要とする場
合、有機充填剤の軟化点としては、180℃以上、より好
ましくは200℃以上のものが適し、また粒径としても、
比較的大きい(10μ以上)ものを選択することが望まし
い。
有機充填剤の具体例としては、アクリル、スチレン、
スチレン/アクリル、エチレン.アクリル、ナイロン、
ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビ
ニル、アクリロニトリル、フェノール、エポキシ、ポリ
アミド、シリコーン、ポリウレタン等の樹脂から得られ
る微粒粉末の単独、もしくは混合物が使用できる。
本発明に係わるすべり止めニスは、前記三つの成分を
主たる成分とするものであるが、必要に応じて消泡剤、
粘度調整、乾燥調整、或は印刷適性向上のための各種添
加剤を加えることが出来るものである。
<作用> 本発明に係るすべり止めニスは、ガラス転移温度が特
定範囲にある水性粘着剤とアルカリ可溶型水溶性樹脂と
を特定割合混合した混合物に対して、更に微粒子有機充
填剤を特定割合添加することを特徴とするものである
が、その作用としては、以下のように考えることが出来
る。
すなわち、従来の粘着タイプのすべり止めニスの場合
は、塗工されたニス表面に粘着性層が形成され、それで
もってすべり防止効果を得ていたため、ブロッキングが
生じない限度までしか粘着剤の比率を高めることが出来
ないものであった。これに対し、本発明に係るニスは、
本来ならブロッキングが生じるところまで粘着剤比率を
高めてはいるが、それに有機充填剤を所定量添加するこ
とで、塗工されたニス表面上に一様に有機充填剤層を形
成し、これが一種のバリアーとなって直接的な接触を防
止し、ブロッキング現象の発生を防ぐものと思われる。
また、段ボール等が積層され荷重が掛かると有機充填剤
が層中に押し込まれ、粘着層が直接的に接触し、高いす
べり止め効果を発揮するが、荷重がなくなると、有機充
填剤が押し出され、ミクロン単位での剥離現象が生じて
ブロッキングの発生を防止するものと思われる。
また、無機充填剤の添加に比べ、優れたすべり止め性
能、ブロッキング防止性能を得ることができる理由とし
ては、無機系に比べ比重が低いため、ニスを塗工した場
合、塗膜表面に粒子が浮き上がり、塗膜表面に効率的に
分布する結果に起因するものと考えられる。
また、耐熱性・耐コルゲーター適性については、塗工
されたニス表面上に一様に形成された軟化点の高い有機
充填剤層が、熱板と粘着性層との直接的な接触を防止す
る結果、熱板汚れの発生あるいはすべり止め効果の低下
を生じさせないものと思思われる。
さて、本発明に係わるすべり止めニスの塗工に関して
は、製函後或は製袋後にローラーコーティング或はスプ
レー等の手段で行うことも可能であるが、作業の効率化
の面から紙器、紙袋の印刷工程内で行うことが好ましの
ものである。具体的には、印刷機の余った最終印刷ユニ
ットで以て紙器等の印刷と同時にすべり止めニスの塗工
を行うことが出来る。
次いで、本発明に係わる耐熱性に優れるすべり止めニ
スを用いた段ボールの製造方法について説明する。本発
明に係わるすべり止めニスは、段ボール、紙器に塗工し
た状態で、優れたすべり止め効果を発揮するものである
が、更にコルゲーターの熱板に対しても高い耐熱性を有
するものである。
それ故、本発明に係わる耐熱性に優れるすべり止めニ
スは、段ボール製造において最近利用されてきているプ
レプリント方式に適用したとき、極めて効果的である。
即ち本発明においては、輪転形式で印刷された表ライナ
ー表面に、本発明に係わる耐熱性に優れるすべり止めニ
スを塗布した後、当該表ライナーと中芯及び裏ライナー
をコルゲータマシーンで貼合を行い、段ボールを得るす
べり止め加工が施された段ボールの製造方法を提供する
ものである。
まず、段ボール製造に使用する表ライナー表面に輪転
形式で印刷を行う工程について説明する。
従来の段ボールの印刷では、表ライナー、中芯、裏ラ
イナーが貼り合わされ、適当な大きさに裁断された段ボ
ールが使用され、枚葉形式のフレキソ印刷機等により印
刷が行われていた。これに対し本発明の方法において
は、ウェブ状の表ライナーに輪転形式で連続的に印刷が
行われる。
そして、この印刷工程においては従来の段ボール印刷
のような印刷方式におけるような制約はなく、輪転形式
の印刷方式であれば、フレキソ印刷、グラビア印刷、平
版輪転印刷、更にはロータリー形式のスクリーン印刷等
の手段が便宜使用できるものである。
近年、高級段ボールを製造する方法としてウェブ状の
表ライナーに水性もしくは溶剤性のフレキソ又はグラビ
アインキを用いて、輪転印刷を行い、それを巻き取った
ものをコルゲータマシーンの表ライナー用ミルロールス
タンドに設置し、中芯、裏ライナーと貼合する、いわゆ
るプレプリントによる段ボールの製造方法が実施されて
いる。
従って、これに使用されている各種印刷インキ及びこ
れに使用されている印刷機を用いて表ライナーに印刷が
行われ、表ライナーに必要な印刷を施した後、巻き取ら
れる。なお、表ライナーの印刷と、次のすべり止めニス
の塗工とをインラインで連続的に行うことも可能であ
り、この場合には、印刷機の最後の印刷ユニットをすべ
り止めニスの塗工に利用したり、或は印刷機の後に塗布
のための各種コーティング装置を組み込むことによつて
可能となる。
なお、印刷とインラインですべり止めニスを塗工する
場合は、ロールコート、カーテンコート、スプレーコー
ト或は、グラビア、フレキソ印刷などの手段を用いて、
全面又は必要箇所に部分的に塗布する事が出来る。ま
た、印刷された表ライナーをそのままコルゲータマシー
ンのミルロールスタンドに取り付け、コルゲータマシー
ン内に設置されているライナー用のロールコーター等を
用いてすべり止めニスを塗布することも可能である。
ここで、従来の耐熱性のないすべり止めニスを用いて
塗工した表ライナーを用いて、コルゲータマシーン内で
中芯及び裏ライナーとの貼合を行った場合、熱板の温度
である160〜190℃で、すべり止めの効果の劣化が起こっ
たり、軟化した樹脂が熱板汚れを起こし段ボールの商品
価値を著しく低下させるという問題を生じるものである
が、本発明で特定する前述すべり止めニスを使用すれ
ば、すべり止め効果に低下もなく、また熱板汚れの問題
も生じないものである。
従って、本発明の方法の実施に際しては、予め印刷及
びすべり止めニスの塗工が施された表ライナーを使用す
る場合は、表ライナー用のミルロールスタンドに巻き取
られた印刷・塗工済み表ライナーを設置し、ニスが塗工
されていない場合は、表ライナー用プレヒーターの前後
の何れかに設置された塗工装置によって印刷済み表ライ
ナーに塗布され、ダブルフェーサーの手前で、中芯、裏
ライナーと貼合され、目的とするすべり止め加工が施さ
れた段ボールが製造されることとなる。
なお、本発明の方法の実施においては、無印刷の段ボ
ールを製造する場合は少なく、印刷された表ライナーが
貼合される場合が多いため、印刷図柄に基づき裁断する
ような裁断装置を設置する必要がある。上記裁断装置に
よって必要なカッティング等を行い、目的とするすべり
止め加工が施された段ボールを得ることが出来る。
以下、実施例でもって本発明をより具体的に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例> ここで、まず実施例で製造したすべり止めニスの成分
(水性粘着剤、水溶性樹脂、有機充填剤)について、そ
れぞれ説明する。
水性粘着剤 粘着剤A:EVAエマルジョン、スミカフレックス 400、
住友化学社製(粘度1300cps、固形分50%、Tg−15℃) 粘着剤B:アクリル系エマルジョン、モビニール937
(ヘキスト合成社製)(固形分60%、Tg.−40℃) 粘着剤C:日本合成ゴム社製、SBRラテックスNo.0598
(固形分50%、Tg.−20℃) 水溶性樹脂溶液 水溶性樹脂A:メタクリル酸メチル、65.1重量%、メタ
アクリル酸、23.1重量%、スチレン8.8重量%からなる
アルカリ可溶性樹脂のアンモニア水溶液(水溶樹脂
A)。(固形分25重量%、Tg.121℃) 水溶性樹脂B:メタクリル酸メチル、52.4重量%、アク
リル酸、21.8重量%、スチレン11.8重量%、アクリル酸
ブチル、14.0重量%からなるアルカリ可溶性樹脂のアン
モニア水溶液(水溶樹脂B)。(固形分25重量%、Tg.6
9.8℃) 有機微粒子充填剤: 有機微粒子としては、以下の樹脂粉末を使用する。
有機微粒子A;ポリスチレン、平均粘度、6μ(軟化点
200℃) 有機微粒子B;ナイロン、平均粒度、12μ、(軟化点16
0℃) 有機微粒子C;エチレン−アクリル、平均粒度10μ(軟
化点100℃) 有機微粒子D;ポリスチレン、平均粒度、12μ(軟化点
200℃) 有機微粒子E;ポリスチレン、平均粒度、3μ(軟化点
200℃) 実施例1〜9及び比較例1〜5 先に説明した粘着剤A〜C、水溶性樹脂A、B、微粒
子充填剤A〜Cを表−1の配合になるように混合し、少
量の水及び消泡剤を添加して、すべり止めニスをそれぞ
れを調整する。
評価試験1 実施例1〜9及び比較例1〜5で得たそれぞれのすべ
り止めニスを使用し、バーコーターでもって段ボール用
のKライナ−に、ベタ状に塗布量約4グラム/m2になる
ように塗工し、20℃、湿度60%で一日調湿し、TAPPIに
規定されている傾斜法試験に従いすべり角度を測定し
た。
また、ブロッキングについては、高温多湿(40℃、湿
度90%)で同様調湿し、ニス加工面同志を重ね合わせ、
荷重5kg/25cm2をかけて評価する。
また、透明性については、すべり止めニスの乾燥塗膜
を目視で評価する。
また、耐摩擦性については、水性フレキソインキを印
刷した段ボール用Kライナー上に、それぞれのニスをバ
ーコーターでもって、ベタ状に塗布量約4グラム/m2
なるように塗工し、学振型耐摩擦試験機で、500g荷重、
500回の条件で、汚れの生じないものを○、若干の汚れ
が生じるものを△、汚れが多いものを×として、評価し
た。
さらに、すべり止めニスの貯蔵安定性(充填剤の分離
もしくは沈降の程度)及びグラビアコーターにそれぞれ
のすべり止めニスを入れ、長時間運転した時のドクター
の摩耗の程度を評価する。
なお、ニスを全く塗工しないライナーの場合は、ブラ
ンクとして同様に評価した。
以上の評価結果は表−1に追記した。
実施例10〜12 先に説明した粘着剤A、水溶性樹脂A及びB、微粒子
充填剤A、D、Eを表−2の配合になるように混合し
て、すべり止めニスをそれぞれを調整する。
評価試験2 実施例1〜5、9及び10〜12並びに比較例1〜5のす
べり止めニスを使用し、評価試験1と同様すべり角、耐
ブロッキング性を評価する一方、以下の耐熱性の評価試
験を行う。なお、耐熱性については、アルミ箔にニス加
工面を当て、それを180℃、5kg/cm2の荷重で、3秒間圧
着し、ニスのアルミへの転移の程度から評価する。
更に、水性フレキソインキを用い、輪転形式で印刷し
た段ボール用Kライナーに、上述の耐熱性を有するすべ
り止めニス塗工し、これを表ライナーとして用いコルゲ
ーターにて中芯及び裏ライナーと貼合し、段ボールを製
造し、熱板汚れの有無、コルゲーター通過後のすべり角
を測定する。
なお、上記各評価の結果は表−2に追記した。
実施例2及び3のすべり止めニスでは、使用した有機
充填剤の軟化点が低いため、充分な耐熱性を得ることが
難しく、また水性樹脂としてガラス転移温度が低い水性
樹脂Bを使用した場合も、充分な耐熱性を得ることが難
しいものである。従って、充分な耐熱性(コルゲーター
適性)を得るためには、軟化点の高い有機充填剤並びに
ガラス転移温度が高い水性樹脂の使用が必要である。
<効果> 以上の説明から明らかなように、本発明に係わるすべ
り止めニスは、従来の粘着タイプのすべり止めニスに比
べ、極めて高いすべり防止効果を示しつつ、優れた耐ブ
ロッキング性を示し、また無機充填剤の使用に比べ、透
明性、印刷・塗工適性等に優れるものである。
また、耐熱性を有するニスの場合は、最近実施されて
いるいわゆるプレプリント方式の段ボ−ル製造方式にも
効果的に適用できるものである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C09D 5/02 C09D 5/02 7/12 7/12 D21H 19/58 D21H 19/58 (56)参考文献 特開 平1−97298(JP,A) 特開 昭62−110997(JP,A) 特開 平3−220088(JP,A) 特開 平2−32171(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 5/00 D21H 19/00 - 19/84

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス転移温度が5℃以下の水性エマルジ
    ョンである水性粘着剤100重量部(固形分)、ガラス転
    移温度が60℃以上かつ酸価80〜300のアルカリ可溶型水
    溶性樹脂10〜60重量部(固形分)から主として構成され
    るすべり止めニスの全量に対して、微粒子有機充填剤1
    〜20重量%(固形分)を添加したことを特徴とするすべ
    り止めニス。
  2. 【請求項2】前記水性エマルジョンが、エチレン/酢酸
    ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系共重合体エマ
    ルジョンから選ばれた請求項1記載のすべり止めニス。
  3. 【請求項3】前記アルカリ可溶型水溶性樹脂のガラス転
    移温度が、100℃以上である耐熱性に優れた請求項1記
    載のすべり止めニス。
  4. 【請求項4】前記微粒子有機充填剤の粒径が、1〜20μ
    である請求項1記載のすべり止めニス。
  5. 【請求項5】前記微粒子有機充填剤の軟化点が、180℃
    以上である耐熱性に優れた請求項4記載のすべり止めニ
    ス。
  6. 【請求項6】紙器または紙袋の表面に、請求項1乃至5
    記載のすべり止めニスを塗布し、すべり止め被覆を形成
    することを特徴とするすべり止め加工方法。
  7. 【請求項7】紙器または紙袋の印刷工程内で、前記すべ
    り止めニスの塗布を行う請求項6記載のすべり止め加工
    方法。
  8. 【請求項8】印刷された段ボール製造用の表ライナーに
    請求項3又は5記載のすべり止めニスを塗布した後、コ
    ルゲータマシーンで、当該表ライナーと中芯および裏ラ
    イナーとの貼合を行い段ボールを製造することを特徴と
    するすべり止め加工が施された段ボールの製造方法。
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