JP3043832B2 - ストレプトミセスでの調節された遺伝子発現 - Google Patents

ストレプトミセスでの調節された遺伝子発現

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、ストレプトミセスにおける調節
された遺伝子発現に関する。
【0002】ストレプトミセス(Streptomycetes)は最も
重要な抗生物質産生菌の仲間であるが、遺伝学に関して
は余りよく知られていない。したがって、ストレプトミ
セスにおける遺伝子発現を制御する機構については余り
よく知られていない。
【0003】チオストレプトンによる誘導発現は知られ
ているが、これは高価であり且つ水への溶解度が低いた
め工業的規模で実際に使用するには不適当である。
【0004】プラスミドpIJ101からそれ自体知られてい
るkil-kor 系がストレプトミセスでの調節された遺伝子
発現に利用することができることを見出した。この系は
Kendall とCohen のJ. Bacteriol., 169 (1987), 4177-
4183;170 (1988), 4634-4651 に記載されており、プラ
スミドpIJ101の完全なヌクレオチド配列は前記の第二の
文献に記載されている。以後、この配列について説明す
る。特に、kilA遺伝子の調節領域は本発明による方法に
特に好適であることが見出された。
【0005】したがって、本発明はkilA-korA 系をスイ
ッチとして用いるストレプトミセス宿主菌株における遺
伝子の調節された発現の方法であって、発現される遺伝
子がkilA調節領域に結合し、KorAタン白質が不活性化さ
れまたは除去されてスイッチが入ることを特徴とする方
法に関する。この発明の更なる発展および好ましい態様
は以下に詳細に説明され、特許請求の範囲に定義されて
いる。
【0006】本発明による「スイッチ」の一部はkilA遺
伝子の調節領域に存在し、KorAタン白質の付着または結
合によって発現され且つ好都合ではあるが必ずしもkilA
遺伝子のプロモーターを包含しないDNA領域を意味す
る。この領域は、(ヌクレオチド番号6160から出発す
る)酵素BglII または(ヌクレオチド番号6027から出発
する)HinfI および(ヌクレオチド番号5764から出発す
る)NcoIの開裂部位によって天然のDNA配列に結合さ
れ、最後に記載の開裂部位はKilAタン白質(そこではtr
a と呼ばれる)のATG開始コドンも包含する。kilAプ
ロモーターの-35 領域のDNA配列TTGACAはヌクレオチ
ド番号5975から始まり、転写はヌクレオチド番号5939か
ら始まる。これらのデーターを知ることによって、調節
領域についてのより短いまたは修飾されたDNAセグメ
ントを用いることおよび適当な場合には他のプロモータ
ーを用いることが可能である。
【0007】調節された方法で発現される遺伝子は、Nc
oI開裂部位に対応する突出配列に直接連結することがで
きる。NcoI開裂部位は、開始後の最初のコドンがG で始
まるときに保持することができる。
【0008】本発明による「スイッチ」の第二の本質的
な成分はKorAタン白質であって、これはkilA遺伝子のリ
プレッサーとして働く。適当量の活性KorAタン白質が存
在するかぎり、必要とされる遺伝子の調節された発現は
スイッチが切れている。したがって、スイッチを入れる
には、原則として2つの可能性がある。a)KorAタン白質
を不活性化する、またはb)これを除去する。
【0009】KorAタン白質はこのタン白質の温度感受性
変異体を発現させることによって不活性化することがで
き、必要な遺伝子にスイッチを入れるために、温度を閾
値を上回る値に上昇させこの閾値を上回る温度では温度
感受性変異体が不活性化され、すなわちkilA遺伝子の調
節領域の抑制には最早不適当となる用にすることによっ
て不活性化することができる。このような温度感受性変
異体の調製は知られており、例えばBirch らのJ. Gen.
Microbiol., 131 (1985), 1299-1303 に記載されてい
る。この種類の突然変異は高収率で起こり、生成する温
度感受性タン白質は本発明の範囲内の適当な分析法を用
いて容易に見出される。
【0010】KorAタン白質はいくつかの方法によって除
去することができる。
【0011】korA遺伝子をスイッチ可能なプロモーター
の制御下に置くことが可能である。リジンデカルボキシ
ラーゼに対するmRNAの転写は鉄(III) 塩化物を培養
物に加えることによって発現することが知られている
(Schuppら、Gene, 64 (1988),179-188)。しかしなが
ら、工業的醗酵バッチに重金属イオンを添加すること
は、例えばそれに関連して腐蝕の危険性があるため不利
であることがある。
【0012】korA遺伝子を温度感受性プラスミドに組込
むのが一層有利であり、この場合にはそれ自身のプロモ
ーターまたはストレプトミセス中で活性な他のプロモー
ターを用いることができる。ストレプトミセス中で複製
する温度感受性プラスミドは既知であり、例えばBirch
らによって報告されている。しかしながら、プラスミド
pSG5の温度感受性レプリコンを用いるプラスミドが特に
有利である。このプラスミドは、欧州特許第0 158 872
号公報および米国特許第4 880 746 号公報に記載されて
おり、pSG5の温度感受性プラスミドとしての使用は欧州
特許第0 334 282 号公開公報に記載されている。プラス
ミドpSG5は広い宿主範囲を有し、多くの他のストレプト
ミセスプラスミドと適合性(compatible)である。欧州特
許第0 158 201 号公報には、これらの特性を用いるシャ
トルベクターが記載されている。
【0013】それ故、本発明によれば、korA遺伝子をpS
G5の温度感受性レプリコンを含むプラスミドに組み入れ
ることが可能であり且つ特に有利であり、その場合には
発現される遺伝子はkilA調節領域の制御下で、pSG5誘導
体と適合性であり且つpSG5レプリコンの閾値温度を上回
る温度でも安定な複製を行うもう一つのプラスミドに組
み入れられる。
【0014】korA遺伝子はプラスミドpIJ101からのAhaI
I-BclIフラグメントとして用いるのが好都合である(Ah
aII についての認識配列はヌクレオチド5930から開始
し、BclIの認識配列は6753から開始し、korAプロモータ
ーの-35 領域のCGCACA配列はヌクレオチド5957から開始
し、転写はヌクレオチド番号5992から開始する)。
【0015】2種類の異なるプラスミドでの手順を用い
るときには、両方のプラスミドがシャトルベクターであ
ることが可能であるが、必ずしも必要ではない。しかし
ながら、これら2種類のプラスミドがいかなる相同の領
域を含まず、組換工程を妨げないように留意しなければ
ならない。
【0016】発現される遺伝子はKilA調節領域の制御下
で通常のストレプトミセス発現プラスミド上に収容する
ことができる。本発明の有利な展開は、必要とされるタ
ン白質をコードし、例えばプロインシュリンをコードす
る遺伝子をα−アミラーゼインヒビターテンダミスタッ
ト(tendamistat)の遺伝子またはこの遺伝子の一部に結
合することを含んでいる。これによってコードされる融
合タン白質は細胞から放出され、醗酵上澄液から直接的
に得ることができる。この種類の遺伝子融合は、例えば
欧州特許第0 281 090号公開公報および第0 289 936 号
公開公報に記載されており、この欧州特許第0 289 936
号公開公報にはプロインシュリンを含む融合タン白質を
コードする発現プラスミドのいくつかの例が含まれてい
る。
【0017】本発明を下記の例で詳細に説明する。
【0018】
【実施例】例1 ベクターpKORE2の構築 (ザ・ジョン・インズ・ファンデーション(the John In
nes Foundation) 、ノリッジ、英国から入手可能な)プ
ラスミドpIJ101をAhaII およびBclIで消化し、大きさが
830 bpのフラグメントを単離する。プラスミドpSG5(欧
州特許第0 158 872 号公報および米国特許第4 880 746
号公報)から大きさが3.8 kbp のEcoRI-BamHI フラグメ
ントを単離し、BamHI-AhaII リンカーを提供する。市販
のプラスミドpUC19 を酵素EcoRI およびHindIII で消化
し、bla 遺伝子を含む大きなフラグメントを単離する。
ストレプトミセス中で選択可能なマーカーを導入するた
め、大きさが1.85 kbpでありトランスポゾンTn5から
のaphII 遺伝子を有するHindIII-BamHI フラグメントを
用いる。これらのDNAフラグメントを連結すると、大
きさが9.2 kbp のプラスミドpKORE2を生じる(図1)。
これはプラスミドpSG5からの温度感受性レプリコンを含
み、したがって、34℃を下回る温度でのみ安定な複製を
行う。対照的に、36℃を上回る温度では、プラスミドの
複製は阻害され、プラスミドは細胞から除去される。pS
G5レプリコンの広い宿主範囲および例えばプラスミドpS
VH1 (欧州特許第0070 522 号公報、米国特許第4 673 6
42 号公報)、pSG2(欧州特許第0 066 701 号公報、米
国特許第4 621 061 号公報)、pIJ101(Kieserら、Mol.
Gen. Genet., 185 (1982), 223-238 )およびSLP1.2
(Thompsonら、Gene, 20 (1982), 51-62)に基づく多く
の他のベクター系との適合性のため、プラスミドpKORE2
を必要なタン白質をコードする多くのプラスミドと結合
することができる。
【0019】例2 融合タン白質の熱誘導による産生 プラスミドpIJ101のkilA遺伝子のプロモーター領域を制
限酵素Sau3A で切断し、(ザ・ジョン・インズ・ファン
デーション(the John Innes Foundation) 、から入手可
能な)「プロモーター選択ベクター」pIJ487の特異BamH
I 開裂部位にクローニングする。S. lividans TK24の形
質転換の後に、ネオマイシン耐性の発現によってクロー
ニングが成功したことが認められる。単離したプロモー
ター領域(フラグメント1)を制限酵素KpnIおよびSphI
で切断して、既知の方法での電気溶出(electroelution)
によって単離することができる。α−AIプロモーター
はSphI-XmaIII DNAフラグメントを、先端を切り詰め
た合成SphI-XmaIII DNAフラグメント(配列番号:1)
(表1)で置換することによってプラスミドpGF1(欧州
特許第0 289 936 号公開公報、南アフリカ特許第88/316
8 号公報、オーストラリア特許第15 559/88 号公開公
報、ニュージーランド特許第222 464 号公報)から欠失
する。 10 (MET)ARG VAL ARG ALA LEU ARG LEU ALA ALA LEU VAL GLY ALA CGC GTA CGG GCA CTT CGA CTT GCG GCG CTG GTG GGT GCG G TAC GCG CAT GCC CGT GAA GCT GAA CGC CGC GAC CAC CCA CGC (SphI) 20 GLY ALA ALA LEU ALA LEU SER PRO LEU (ALA) (ALA) GGC GCC GCA CTC GCC CTG TCT CCC CTC GC CCG CGG CGT GAG CGG GAC AGA GGG GAG CGC CGG (XmaIII)
【表1】 シグナル配列、α−AI遺伝子、プロインシュリン遺伝
子および終止配列から成る完全な融合構造を含むプラス
ミドpGF1p1が生じる。このDNA配列(フラグメント
2)を制限酵素SphIおよびSstIで消化することによって
切断し、既知の方法で単離することができる。市販の発
現ベクターpIJ702(ジョン・インズ・ファンデーション
(John InnesFoundation) )を制限酵素KpnIおよびSstI
で消化して、大きなフラグメント(フラグメント3)を
同様にして電気溶出する。フラグメント1、2および3
の連結によって組換プラスミドpKILP1が生成する(図
2)。適合性プラスミドpKORE2を既に含んでいるS.livi
dans TK24の形質転換の後に、チオストレプトンおよび
ネオマイシン耐性マーカーの存在に就いての選択を行
う。温度が36℃に上昇した後、両方のプラスミドを含む
クローンは、α−アミラーゼインヒビターとプロインシ
ュリンとから成る必要な融合タン白質を分泌するが、こ
れはそれ自体既知の方法で検出し、単離することができ
る。
【0020】
【配列表】配列番号:1 配列の型:対応するタン白質を有するヌクレオチド 配列の長さ:76塩基 鎖の数:突出認識配列を有する二本鎖 トポロジー:直鎖状 フラグメント型:N末端(シグナル配列) 起源:合成DNA 配列 CGC GTA CGG GCA CTT CGA CTT GCG GCG CTG GTG GGT GCG G TAC GCG CAT GCC CGT GAA GCT GAA CGC CGC GAC CAC CCA CGC Met Arg Val Arg Ala Leu Arg Leu Ala Ala Leu Val Gly Ala 1 10 GGC GCC GCA CTC GCC CTG TCT CCC CTC GC CCG CGG CGT GAG CGG GAC AGA GGG GAG CGC CGG Gly Ala Ala Leu Ala Leu Ser Pro Leu Ala Ala 20
【図面の簡単な説明】
【図1】9.2 kbp のプラスミドpKORE2の構成を示す説明
図。
【図2】組換プラスミドpKILP1の構成を示す説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ギュンター、ヨハンネス、リーシュ ドイツ連邦共和国フランクフルト、ア ム、マイン、ローレライシュトラーセ、 59 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/00 - 15/90 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】kilA-KorA 系をスイッチとして用いること
    を特徴とするストレプトミセス宿主菌株における遺伝子
    の調節された発現の方法であって、発現される遺伝子が
    kilA調節領域に結合し、KorAタン白質が不活性化されま
    たは除去されてスイッチが入り、ここで温度感受性KorA
    タン白質が発現され、温度がその閾値を上回って上昇さ
    れることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】korA 遺伝子がスイッチ可能プロモーター
    の制御下に置かれる、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】korA遺伝子が温度感受性プラスミドによっ
    て発現され、温度をその閾値を上回って上昇させる、請
    求項1記載の方法。
JP3108461A 1990-04-12 1991-04-12 ストレプトミセスでの調節された遺伝子発現 Expired - Lifetime JP3043832B2 (ja)

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