JP3042673B2 - 新規な淡水性微細藻類 - Google Patents

新規な淡水性微細藻類

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JP3042673B2
JP3042673B2 JP7256676A JP25667695A JP3042673B2 JP 3042673 B2 JP3042673 B2 JP 3042673B2 JP 7256676 A JP7256676 A JP 7256676A JP 25667695 A JP25667695 A JP 25667695A JP 3042673 B2 JP3042673 B2 JP 3042673B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、高度不飽和脂肪
酸特にアラキドン酸の産生能を有する淡水性単細胞微細
藻類パリエトクロリス・インシサ(緑藻門・プレウラス
トルム綱・プレウラストルム目・パリエトクロリス属)
とこの藻類を利用して従来方法では得られなかった高度
不飽和脂肪酸特にアラキドン酸をより容易にかつ大量に
製造する方法に関するものである。より詳しくは、高度
不飽和脂肪酸特にアラキドン酸産生能を有する淡水性単
細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサ(緑藻門・プ
レウラストルム綱・プレウラストルム目・パリエトクロ
リス属)自体に関するものであり、また、淡水性単細胞
微細藻類パリエトクロリス・インシサを、培養基中で通
気攪拌下で、連続培養して、高度不飽和脂肪酸特にアラ
キドン酸を多量に含有する淡水性単細胞微細藻類パリエ
トクロリス・インシサを得ることを特徴とする淡水性単
細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサを製造する方
法に関するものであり、さらに、淡水性単細胞微細藻類
パリエトクロリス・インシサの培養乾燥物に関するもの
であり、さらにまた、乾燥した培養淡水性単細胞微細藻
類パリエトクロリス・インシサを常法により処理して高
度不飽和脂肪酸特にアラキドン酸を得ることを特徴とす
る高度不飽和脂肪酸を製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】アラキドン酸は、血清コレステロールの
低下作用、血栓形成の抑制作用、胃粘膜傷害の抑制作
用、さらには脳の代謝系に関与して知的能力の向上、皮
膚疾患の乾そう(psoriasis )の治癒効果、制癌作用な
どの生理作用が注目されている高度不飽和脂肪酸の1つ
である。また、血清コレステロールの低下作用、血栓形
成の抑制作用、胃粘膜傷害の抑制作用、さらには脳の代
謝系に関与して知能の向上、皮膚疾病の乾そう(psoria
sis )の治癒効果、制ガン作用などへの生理作用が注目
されている高度不飽和脂肪酸の一つであり、また、多様
な生理活性機能を有する2シリーズのプロスタグラジン
(PG)や4シリーズのロイコトリエン(LT)の前駆
物質であるが、ブタの肝臓やある種の微細藻類(珪藻類
・紅藻類)に含まれていることが知られているが、その
含有量はたとえば0.2ないし0.5%ときわめて少な
い。このため、アラキドン酸の価格は、非常に高価であ
り、しかも安定した供給源が不足しているのが現状であ
る。
【0003】そして、最近になって油脂の多様な生理活
性機能が解明され、その特異的な機能が注目されている
が、このような油脂の中でω−3およびω−6系の高度
不飽和脂肪酸として、エイコサペンタエン酸(EP
A)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、γ−リノレン酸
(GLA)およびアラキドン酸(ARA)などがある
が、これらのうちこれまで魚油という豊富な供給源のあ
るω−3系以外の高度不飽和脂肪酸(PUFA)は、適
当な供給源がほとんどなく、得られにくいものであっ
た。魚油を主な供給源とするEPAやDHAは、マグ
ロ、カツオ、イワシなどの魚油から抽出して精製加工さ
れているが、漁獲量の不安定などから安定した供給源に
なりにくいという点とか魚油の組成上の理由から、他の
不飽和脂肪酸との分離が困難であるばかりでなく魚油特
有の異臭があるなどの欠点がある。一方、魚油以外の供
給源を利用してこれらの高度不飽和脂肪酸を製造する方
法としては、モルティエレラ属菌の変換による高度不飽
和脂肪酸の製法(特開昭63−185389号)、アラ
キドン酸を生産できる微生物による高度不飽和脂肪酸強
化油脂の製法(特開平1−304892号)、海洋微生
物からの高度不飽和脂肪酸含有脂質の製法(特開平2−
304892号)などが知られているが、これらの微生
物は、アラキドン酸の生産量が少ないか、あるいはアラ
キドン酸の抽出、精製過程で他の不飽和脂肪酸との完全
分離が難しい点や、アラキドン酸を含む菌体をそのまま
乾燥体として食品などへ利用する場合に嗜好の面で難点
があるとか、安全性の面で難しい点があるなど様々な問
題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は、このよう
な従来の問題点を解決するために鋭意研究を続けた結
果、富山県内の中部山岳国立公園の立山山麓(標高約
2、500m)の土壌中から高濃度で高度不飽和脂肪酸
の産生能を有する淡水性単細胞微細藻類パリエトクロリ
ス・インシサ(Parietochloris incisa)(緑藻門・プレ
ウラストルム綱・プレウラストルム目・パリエトクロリ
ス属)の分離に成功し、この淡水性単細胞微細藻類パリ
エトクロリス・インシサが、高濃度で培養することがで
きるとともに定常生育期において相対的に多くの高度不
飽和脂肪酸特にアラキドン酸を産生するので、高度不飽
和脂肪酸とりわけアラキドン酸の生産に好適で、優れて
いることを見いだし、本願発明に至ったものである。そ
して、藻類であるため分離した高度不飽和脂肪酸に問題
となるような不純物が混入することがないという利点が
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願発明は、以下の形態
学的、生理的及び化学的特性を有する、高度不飽和脂肪
酸特にアラキドン酸の産生能を有する淡水性単細胞微細
藻類パリエトクロリス・インシサ(緑藻門・プレウラス
トルム綱・プレウラストルム目・パリエトクロリス属)
に関するものである。 細胞:球形叉は卵形で、直径約10−15μm。葉緑体
中にピレノイドを有する。 生育至適温度:低温下(5℃)において生育できる耐寒
性を有するとともに、15ないし25℃の生育至適温度
を有する。 生育至適pH:5−8 生活環(ライフサイクル):生活環の上で体に遊走子と
胞子の2つを有する。(遊走子による生殖生殖サイクル
と内生胞子による無性生殖サイクル) 遊走子:2本の鞭毛を有し、その鞭毛基部は反時計回り
に配列されている。 定常生育期:相対的に多くの高度不飽和脂肪酸、特にア
ラキドン酸を細胞内に産生し蓄積する。 この淡水性単細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサ
は、高濃度で培養することができるとともに定常生育期
において相対的に多くの高度不飽和脂肪酸特にアラキド
ン酸を産生するので、高度不飽和脂肪酸とりわけアラキ
ドン酸の生産に好適で優れている。そこでさらに、本願
発明は、上述の淡水性単細胞微細藻類パリエトクロリス
・インシサを培養基中で通気攪拌条件下で、連続培養し
て、高度不飽和脂肪酸特にアラキドン酸を多量に含有す
る淡水性単細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサを
製造する方法に関するものであり、また、上述の淡水性
単細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサの培養乾燥
物に関するものであり、さらにまた、上述の淡水性単細
胞微細藻類パリエトクロリス・インシサを培養基中で通
気攪拌条件下で、連続培養して、高度不飽和脂肪酸特に
アラキドン酸を産生することを特徴とする高度不飽和脂
肪酸、特にアラキドン酸を製造する方法に関するもので
ある。
【0006】微細藻類は、培養したものを乾燥物とす
る。乾燥物は、アラキドン酸をきわめて高い含量で含ん
でいるので、そのまま動物用の飼料の添加剤などとして
も使用することができる。乾燥した微細藻類からアラキ
ドン酸を分離するためには常法により処理すればよい。
アラキドン酸は、藻類中ではグリセライドの形で存在し
ているので、アルカリでケン化し、ついで中和すること
により容易に酸の形で分離できる。本願発明は、上述し
た形態学的、生理学的及び化学的な特性を有する淡水性
の単細胞微細藻類であって、該藻類であるパリエトクロ
リス・インシサ(Parietochloris incisa )を通気攪拌
条件下で連続培養して高度不飽和脂肪酸、特にアラキド
ン酸を多量に含有する藻体を培養することを特徴とする
微細藻類のアラキドン酸生産方法の提供にあり、また前
記淡水性単細胞微細藻類であるパリエトクロリス・イン
シサが、細胞は球形または卵形でかつ直径約10μm〜
15μmからなり、その増殖は不動胞子および遊走子か
ら構成され、さらに遊走子が2本の鞭毛を有しかつ鞭毛
基部(Basal Body)が反時計回りに配列されるとともに
葉緑体中にピレノイドを有して一定条件の生活環(Life
Cycle)を持ち、また、前記パリエトクロリス・インシ
サが、約5℃位の低温下においても生育できる耐寒性を
有するとともに、約15℃〜25℃位の生育至適温度を
有しかつ栄養培地の至適pH5〜pH8位を有し、更に
前記パリエトクロリス・インシサが、定常生育期(Stat
ionary Growth Phase )に相対的に多くの高度不飽和脂
肪酸(PUFA)特にアラキドン酸(ARA)を細胞内
に蓄積する微細藻類のアラキドン酸生産方法の提供にあ
る。
【0007】すなわち、本発明の目的とするところは新
規に分離した淡水性単細胞微細藻類、パリエトクロリ
ス、インシサ(Parietochloris incisa )を通気攪拌条
件下で連続大量培養して高度不飽和脂肪酸、特にアラキ
ドン酸を多量に含有する藻体を安定かつ安価に生産する
方法を提供することによって、現在希少な資源であるア
ラキドン酸の有効活用と経済的な有効利用に貢献しよう
とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】(1)富山県立山山麓(立山黒部
国立公園内、標高約2、500m)の土壌中から数10
種類の微細藻類を採取し、それらを連続洗浄法、数種類
の栄養培地を用いた集積培養法および形態学的手法など
を併用して最終的に10数種類の微細藻類を単離し、そ
れらの単独培養に成功できた。 (2)前記(1)で得られた10数種類の単離微細藻類
について光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて、
それらの分類学的同定を行った結果、9種類の緑藻類と
1種類の藍藻類に分類・同定することができた。 (3)前記1種類の緑藻類が、これまでに報告されてい
ない新種の淡水性単細胞微細藻類であることが判明し
た。そして、この微細藻類は学術的命名法によれば、緑
藻門、プレウラストルム綱、プレウラストルム目、パリ
エトクロリス属に分類される新分類学名「パリエトクロ
リス・インシサ」(Parietochloris incisa(Reisigl)Wat
anabe comb. nov.)と呼ばれるものである。 (4)前記新種の微細藻類の一般的・形態的な特徴は図
1のとおりであり、この新種の微細藻類はその細胞内に
高度不飽和脂肪酸(PUFA)を多量に含有しており、
特にその培養方法を適切に選択することによって細胞内
に高度不飽和脂肪酸の一種であるアラキドン酸(Arachi
donic acid)を極めて多量に蓄積させるように誘導する
ことができる。すなわち、アラキドン酸をこれほど多量
(8%〜10%対乾物)に蓄積する微細藻類は、表1に
示すようにこれまで全く知られていない。 (5)また、アラキドン酸は大変有用な化学物質であ
り、細胞膜の主要構成成分であると同時に血圧や炎症・
免疫系の調節など様々な機能を有する2−シリーズのプ
ロスタグランジン(PG)や4−シリーズのロイコトリ
エン(LT)などエイコサノイドの前駆物質でもある。
なお、人間の母乳中にも含まれており乳児の能細胞の発
育に必要な物質であることも報告されている。
【0009】
【表1】
【0010】
【実施例】微細藻類の特徴 ア、細胞は球形又は一部分がやや突出した卵形であっ
て、直径が10μm〜15μm位である。そして、球形の場
合には、細胞壁は均一な厚さであるが卵形ではややとが
った部分で肥厚することが多い。 イ、葉緑体は側壁でしばしば深い切れ込みが2、3ヵ所
あり、葉緑全体の形は個体によって変異が大きい。電子
顕微鏡の観察によれば、図4及び図5のようなデンプン
粒に囲まれたピレノイドが確認される。ピレノイドは殆
ど古いシスト細胞中に見られ、若い細胞では稀れであ
る。 ウ、栄養細胞は単核でもって、厚いセルローズ外層をも
っている。 エ、増殖は母細胞内での不動胞子及び遊走子形成によ
り、葉緑体の切れ込みに沿って細胞質が2分され、その
後連続して細胞分裂が起っている。その結果は、図8に
示すような2、4、8、16個の不動胞子になっている。
また、不動胞子は図1に示すように母細胞壁が破れた後
も互いに接触してコロニーを形成する傾向がある。
【0011】コロニーの形成様式 ア、通常コロニーは、核細胞間で柔らかく付着している
ために4個〜32個の細胞集団から成っている。そして、
図2のa〜dに示すようにコロニー形成は母細胞が、4
個、8個、16個、32個の自生胞子に分裂してコロニーを
形成するか、あるいは母細胞壁の破れた残骸によって一
部が包まれている単独の細胞を形成している。 イ、コロニー中の細胞の場合、娘コロニーは母細胞コロ
ニーの中に残って不規則な数のコロニーを創生し、好適
な条件下では細胞はその母細胞コロニーから遊離する。 ウ、典型的なコロニー形成の過程は図3のa〜dに示し
たとおりであり、またコロニーと細胞の大きさは表2の
とおりである。
【0012】
【表2】 遊走子の形成様式 ア、藻類における遊走子の形成は、有性生殖(Sexual R
eproduction)の一つの手段であり、場合によって遊走子
はバクテリア混在の培地中では増殖できない。
【0013】イ、パリエトクロリス・インシサにおいて
もこのことが確認され、スロット平面寒天培地法におい
て純粋培養(液体培地あるいは寒天平面培地において
も)の場合にのみ遊走子の誘導が可能である。 ウ、母細胞から離れたばかりの遊走子は増殖し、形は楕
円形で長さ8μ〜11μ、幅3μ〜4μの範囲の大きさで
あり、また母細胞は図9に示すように遊走子を形成する
ことがある。 エ、遊走子の頭部(先端)には2本の鞭毛が観察され、
遊走子は10分〜40分位の短時間スロットの中で遊泳し、
その後これらの遊走子は徐々に円形(5μm〜6μm)
になって収縮して鞭毛を失い、更に細胞膜が消失して運
動性を失うことになる。 オ、なお、母細胞内遊走子の連続切片の電子顕微鏡観察
によれば、図6の模式図A、Bに示すように遊走子の2
本の鞭毛基部は反時計回りの配列をしている。近年の研
究(Mattox & Stewart 1984 )によれば、遊走子の鞭毛
基部の配列こそが、緑藻類の分類基準である綱を決定す
る指標的形質であるといわれている。
【0014】ライフサイクル ア、微細藻類(パリエトクロリス・インシサ)のライフ
サイクル(生活史)は図7のa〜gのとおりである。図
中a〜iはスロット平面寒天培地中で観察されたライフ
サイクルであり、a〜eは遊走子による生殖であり、a
〜gは内生胞子による生殖を示したものである。
【0015】アラキドン酸の特性 ア、アラキドン酸は高度不飽和脂肪酸の一種であり、リ
ノール酸とリノレン酸と共に必須脂肪酸と呼ばれてお
り、生理活性物質プロスタグランジン生合成の前駆物質
(出発物質)である。なお、母乳中にも極く少量含まれ
ている。 イ、微細藻類(パリエトクロリス・インシサ)に含まれ
るアラキドン酸は表3のとおり、主に中性脂質に存在し
ておりその大部分はトリ・アラキドニル・グリセロール
として存在しているところに大きな特徴がある(表4参
照)。従来の藻類は、全てモノ・アラキドニル・グリセ
ロールやジ・アラキドニル・グリセロールである。 ウ、表2のように微細藻類(パリエトクロリス・インシ
サ)のアラキドン酸は、その大部分はトリ・グリセロー
ルとエステルとが結合したトリ・アラキドニル・グリセ
ロール(3個所共アラキドン酸が結合)として存在して
いることが判明した。このことは、純度の高いアラキド
ン酸を抽出する際に他の脂肪酸が混入しないので、大変
有利な化学構造を持っていることを示している。
【0016】
【表3】
【0017】
【表4】 アラキドン酸の利用 アラキドン酸は図10のとおり、プロスタグランジンやト
ロンボキサンを始め多くの生理活性物質の前駆物質とし
て有用である。すなわち、アラキドン酸カスケードと言
われるものは、生体内での生理的状態及び病態発現にお
いてきわめて主要な役割を果しているプロスタグランジ
ン、トロンボキナン、プロスタサイクリン、ロイコトリ
エンなどのオータコイドがC20不飽和脂肪酸であるアラ
キドン酸から幾つかの酵素反応を経て生合成されてい
る。そして、細胞膜が刺激をうけると脂質からアラキド
ン酸が遊離され、それを原料として強い生理活性をもつ
アラキドン酸代謝産物がつくられる。このアラキドン酸
代謝経路全体を幾筋もの滝が段階状に流れ落ちるのにた
とえて「アラキドン酸カスケード」と呼んでいる。この
アラキドン酸カスケードは、主としてプロスタグランジ
ン、トロンボキサン、プロスタサイクリン群がつくられ
るシクロオキシゲナーゼ代謝経路と、ロイコトリエン群
がつくられるリポキシゲナーゼ代謝経路とに大きく分け
られる。また、リポキシゲナーゼ経路代謝産物にはロイ
コトリエン群以外の代謝物が多数発見されており、ヒド
ロペルオキシ化合物やリポキシン類の生理作用は特に注
目されている。
【0018】
【発明の効果】本発明は、形態学的、生理学的及び化学
的な特性を有する淡水性の単細胞微細藻類であって、該
藻類であるパリエトクロリス・インシサ(Parietochlor
is incisa )を通気攪拌条件下で連続培養して高度不飽
和脂肪酸、特にアラキドン酸を多量に含有する藻体を培
養することを特徴とする微細藻類のアラキドン酸生産方
法であり、また前記淡水性単細胞微細藻類であるパリエ
トクロリス・インシサが、細胞は球形又は卵形でかつ直
径約10μm〜15μmから成り、その増殖は不動胞子及び
遊走子から構成され、更に遊走子が2本の鞭毛を有しか
つ鞭毛基部(Basal Body)が反時計回りに配列されると
共に葉緑体中にピレノイドを有して一定条件の生活環
(Life Cycle)を持ち、また前記パリエトクロリス・イ
ンシサが、約5℃位の低温下においても生育できる耐寒
性を有すると共に15−25℃の生育至適温度を有し、かつ
栄養培地の至適約pH5〜pH8位を有し、更に前記パ
リエトクロリス・インシサが、定常生育期(Stationary
Growth Phase )に相対的に多くの高度不飽和脂肪酸
(PUFA)、特にアラキドン酸(ARA)を細胞内に
蓄積する構成になっているので、次のような多くの効果
を有する。 ア、富山県立山山麓(立山黒部国立公園内、標高約2,50
0m)の土壌中から数10種類の微細藻類を採取し、それら
を連続洗浄法、数種類の栄養培地を用いた集積培養法及
び形態学的手法などを併用して最終的に10数種類の微細
藻類を単離して単独培養に成功することができた。 イ、前記培養によって得られた10数種類の単離微細藻類
について光学顕微鏡及び透過型電子顕微鏡を用いて、そ
れらの分類学的同定を行なった結果、9種類の緑藻類と
1種類の藍藻類に分類・同定することができた。 ウ、その中の1種類の緑藻類が、これまでに報告されて
いない新種の淡水性単細胞微細藻類であるパリエトクロ
リス、インシサ(Parietochloris incisa )であること
が判明した。 エ、この新種の微細藻類は、その細胞内に高度不飽和脂
肪酸(PUFA)を多量に含有しており、特にその培養
方法を適切に選択することによって細胞内に高度不飽和
脂肪酸の一種であるアラキドン酸(Arachidonic acid)
を極めて多量に蓄積させるように誘導することができ
る。 オ、また、アラキドン酸をこれ程多量(8%〜10%対乾
物)に蓄積する微細藻類は、これまで全く知られていな
かった。すなわち、アラキドン酸は大変有用な化学物質
であって、細胞膜の主要構成成分であると同時に血圧や
炎症・免疫系の調節など様々な機能を有する2−シリー
ズのプロスタグランジン(PG)や4−シリーズのロイ
コトリエン(LT)などエイコサノイドの前駆物質でも
ある。なお、人間の母乳中に含まれており、乳児の脳細
胞の発育に必要な物質でもある。 カ、現在のところ、アラキドン酸の主な供給源はブタの
肝臓であり、そのアラキドン酸含有量は比較的低い(0.
5 %程度)ので、その利用性は限られており有力な供給
源が欠乏している。これに対して本発明方法によれば、
新規に分離した淡水性単細胞微細藻類、パリエトクロリ
ス、インシサ(Parietochloris incisa )(Reisigl )
を通気攪拌条件下で連続大量培養し、高度不飽和脂肪
酸、特にアラキドン酸を多量に含有する藻体を安定かつ
安価に生産する方法を提供することができるので、現在
稀少な資源であるアラキドン酸の有効活用及び経済的な
有効利用に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微細藻類(パリエトクロリス・インシ
サ)の一般的形態図。
【図2】コロニー状の形態図。
【図3】パリエトクロリス・インシサの典型的コロニー
形成過程図。
【図4】栄養細胞の電子顕微鏡写真。
【図5】2個の不動胞子を含む細胞の電子顕微鏡写真。
【図6】遊走子先端部の概要説明図。
【図7】スロット平面寒天培地中で観察されたライフサ
イクル。
【図8】4個の不動胞子を含む母細胞の電子顕微鏡写
真。
【図9】遊走子の電子顕微鏡写真。
【図10】アラキドン酸カスケード。
【符号の説明】
a 母細胞 b 遊走子の母細
胞 c 母細胞からの分離した遊走子 d 遊泳期間中の遊走子 e 若い娘細胞 f 成熟娘細胞 g 成熟コロニー h 未成熟コロニー i 分裂細胞 P ピレノイド
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12R 1:89) (72)発明者 ツビー コーエン マイクロアルガル バイオテクノロジー ザ ヤコブ ブラウシュタイン イン ステュート フォー デザート リサー チ ベン グリオン ユニバーシティー オブ ザ ネゲブ スデ ボケル キ ャンパス イスラエル (72)発明者 サミー ボウシバ マイクロアルガル バイオテクノロジー ザ ヤコブ ブラウシュタイン イン ステュート フォー デザート リサー チ ベン グリオン ユニバーシティー オブ ザ ネゲブ スデ ボケル キ ャンパス イスラエル (72)発明者 アビガド ボンシャク マイクロアルガル バイオテクノロジー ザ ヤコブ ブラウシュタイン イン ステュート フォー デザート リサー チ ベン グリオン ユニバーシティー オブ ザ ネゲブ スデ ボケル キ ャンパス イスラエル 審査官 斎藤 真由美 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/00 - 1/38 C12P 1/00 - 41/00 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の形態学的、生理学的及び化学的特
    性を有する、高度不飽和脂肪酸産生能を有する淡水性単
    細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサ(緑藻門・プ
    レウラストルム綱・プレウラストルム目・パリエトクロ
    リス属)。 細胞:球形叉は卵形で、直径約10−15μm。葉緑体
    中にピレノイドを有する。 生育至適温度:低温下(5℃)において生育できる耐寒
    性を有するとともに、15ないし25℃の生育至適温度
    を有する。 生育至適pH:5−8 生活環(ライフサイクル):生育中の温度により生活環
    の上で体に遊走子と胞子を備えた2環型を有する。 (遊走子による有性生殖サイクルと内生胞子による無性
    生殖サイクル) 遊走子:2本の鞭毛を有し、その鞭毛基部は反時計回り
    に配列されている。 定常生育期:相対的に多くの高度不飽和脂肪酸を細胞内
    に産生し蓄積する。
  2. 【請求項2】 高度不飽和脂肪酸がアラキドン酸である
    ことを特徴とする請求項1記載の淡水性単細胞微細藻類
    パリエトクロリス・インシサ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載された淡水
    性単細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサの培養乾
    燥物。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載された乾燥淡水性単細胞
    微細藻類パリエトクロリス・インシサを常法により処理
    して高度不飽和脂肪酸を得ることを特徴とする高度不飽
    和脂肪酸を製造する方法。
  5. 【請求項5】 高度不飽和脂肪酸がアラキドン酸である
    ことを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載された淡水性単細胞微細
    藻類パリエトクロリス・インシサを培養基中で通気攪拌
    条件下で連続培養して、高度不飽和脂肪酸を多量に含有
    する淡水性単細胞微細藻類パリエトクロリス・インシサ
    を製造する方法。
  7. 【請求項7】 高度不飽和脂肪酸がアラキドン酸である
    ことを特徴とする請求項5記載の淡水性単細胞微細藻類
    パリエトクロリス・インシサを製造する方法。
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