JP3042398B2 - 鋳片表面割れの抑制方法 - Google Patents

鋳片表面割れの抑制方法

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JP3042398B2
JP3042398B2 JP8072265A JP7226596A JP3042398B2 JP 3042398 B2 JP3042398 B2 JP 3042398B2 JP 8072265 A JP8072265 A JP 8072265A JP 7226596 A JP7226596 A JP 7226596A JP 3042398 B2 JP3042398 B2 JP 3042398B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼の連続鋳造時に
おける鋳片表面割れを減少または防止する方法に関する
【0002】
【従来の技術】近年、材料特性上の要求からNb、V、Ni
およびCuなど種々の合金元素を含有した低合金鋼の生産
量が増加している。しかしながら、これらの合金元素の
添加に伴い、連続鋳造時に鋳片表面部分に横割れ、横ひ
び割れと呼ばれる表面割れ(以下、表面割れという)が
発生する場合があり、製造上の問題となっている。
【0003】表面割れは、連続鋳造鋳片の2次冷却時に
鋳片の表面温度が熱間延性の低下するγ→α変態温度近
傍(約 600〜850 ℃)になり、このとき鋳片の矯正によ
る矯正応力を受けるのが原因で発生することが知られて
いる。この対策として通常、鋳片矯正時の表面温度が熱
間延性の低下する温度域(以下、脆化温度域という)を
低温側もしくは高温側に回避し、表面割れを抑制する方
法が採用されている。
【0004】しかし、鋳片矯正時の表面温度を制御する
のみでは表面割れを防止することは不可能であり、種々
の方法が提案されている。
【0005】例えば、特公昭58−3790号公報に
は、前述の矯正点での表面温度が延性の低下する温度域
を低温側に回避できるような冷却パターンを採り、かつ
2次冷却帯の上部を強制冷却して鋳片表面温度を 650〜
700 ℃とすることで、いったんγ(オーステナイト)→
α(フェライト)変態させる方法が開示されている。特
開平5−329505号公報には、加熱炉装入前に鋳片
表層部を 350〜500 ℃の温度に1分間以上冷却・保持す
る方法が開示されている。
【0006】これらの方法はいずれも、いったん鋳片の
表面温度を低下させることにより、鋳片の大部分もしく
は全体の相変態を生じさせ、組織的に割れ感受性を鈍く
する方法である。しかし、鋳片の表面温度をいったん 7
00℃以下にまで低下させると、その後複熱させても脆化
温度域を高温側に回避することは熱的に困難である。
【0007】一方、合金含有量が多く割れ感受性の高い
鋼種では、冷却特性の変化により鋳片矯正時の脆化温度
域を低温側に回避することは困難である。
【0008】さらに、表面割れはγ粒界に発生すること
からγ粒径に着目し、これを微細化しようとする提案が
数多くある。本出願人はγ粒の成長を抑制するために、
特開昭63−63559号公報でオーステナイト単晶化
温度からの冷却速度を10℃/sec以上とする方法、および
特開昭61−195742号公報で鋳型長さの関係式を
規定し、早めに鋳片を引き出し直ちに2次冷却する方法
を提案した。しかし、鋳片表面近傍の凝固部は通常、鋳
型内でオーステナイト単晶化温度を通過することから、
冷却速度の制御が困難であり、また鋳型長さを通常より
極端に短くすることは操業上のトラブルを招きやすいた
め、上記二つの方法ではいずれも実用化が困難であっ
た。
【0009】一方、表面割れの発生した粒界部にはAlN
が析出しており、これに伴う応力集中が割れを助長する
ことが知られている。これに対して鋼中のAlN 析出を抑
制するためにTiを添加し、TiN を析出させることがしば
しば行われ、高い効果が得られている。例えば特公昭5
5−7106号公報では、冷却条件を制御することによ
りAlN の析出を制御している。しかし、材料特性上の要
求によりTiの添加が不可能な鋼種も多く、冷却条件によ
るAlN 析出の制御は安定性を欠くという問題がある。
【0010】このように鋳片表面割れの防止方法は数多
く提案されているが、いずれにも一長一短があり、表面
割れが頻発しているのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、鋳片のミク
ロ組織(粒界フェライトの生成状況)と割れ感受性(割
れの有無)との関係に着目し、上記の問題点を解決する
ためになされたものである。本発明の目的は、2次冷却
を適切な条件で行うことにより連続鋳造鋳片のミクロ組
織を制御し、横ひび割れなどの表面割れを減少または防
止する方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の鋳
片表面割れの抑制方法にある。
【0013】C、Mn、Ni、CuおよびNの各含有量と炭素
当量Cp とが下記式(1) および(2)の関係を満たす鋼の
鋳片を湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて製
造する際に、鋳片を鋳型から引き抜いた後直ちに2次冷
却を行い、この2次冷却のパターンにおいて、下記式
(3) で定める鋳片の鋳型通過後の経過時間t(min) の範
囲内の任意の時間帯における冷却水の平均水量密度d
(リットル /(cm2・min))が、下記式 (4)および(5) で
表される領域を満たし、かつ下記式(3) で定める経過時
間tの範囲内では平均水量密度dが、下記式 (6)および
(7) で表される領域を満たすように冷却することを特徴
とする鋳片表面割れの抑制方法。
【0014】 Cp =C(%) +Mn(%)/33+Ni(%)/25 +Cu(%)/44+N(%)/1.7 ・・・(1) Cp <0.18 ・・・・・・・・・・・(2) 0.5 ≦t<2.5 ・・・・・・・・・・(3) A<d ・・・・・・・・・・・・・(4) A=−0.009 t+0.043 ・・・・・・(5) d<B ・・・・・・・・・・・・・(6) B=−0.02t+0.11 ・・・・・・・(7) ただし、X(%) は、X成分の質量%を表す。
【0015】上記の「平均水量密度d」は、鋳片の鋳型
通過後の経過時間t(min) の間の合計冷却水量(リット
ル)を、対応する鋳型表面積(cm2)および上記t(min)
で除した値である。
【0016】本発明者は、種々の鋳造条件における連続
鋳造鋳片の表面割れ発生部のミクロ組織を詳細に調査し
た。その結果、鋳片のミクロ組織(粒界フェライトの生
成状況)と表面割れ感受性(表面割れの有無)とには明
白な相関があることを見いだし、上記の2次冷却条件に
より表面ミクロ組織の制御が可能であることを知見し
た。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明方法を適用する連続鋳造機
は、鋳片に矯正応力が発生する湾曲型または垂直曲げ型
である。前述のように、表面割れは鋳片の矯正歪みによ
り発生するものであるから、本発明方法は鋳片の矯正部
を備えた誓曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて
製造する際に有効となる。
【0018】2次冷却のための装置は、鋳片を鋳型から
引き抜いた後直ちに行う通常のものを用いる。
【0019】鋳造する鋼鋳片の化学組成は、C、Mn、N
i、CuおよびNの各含有量と炭素当量Cp とが下記式(1)
および(2) の関係を満足するものである。
【0020】 Cp =C(%) +Mn(%)/33+Ni(%)/25 +Cu(%)/44+N(%)/1.7 ・・・(1) Cp <0.18 ・・・・・・・・・・・(2) 上記式(1) において(%) は質量%である。
【0021】<炭素当量Cp の限定理由>図1により、
炭素当量Cp を上記のように限定した理由について説明
する。図1は種々の化学組成における凝固の機構を模式
的に示す図である。(a) はFe−C系の状態図、(b) は炭
素当量がA、B、CおよびDの場合の凝固を示す模式図
である。包晶組成より左側の亜包晶(Bの場合)あるい
はδ凝固(Aの場合)に当たる組成では、完全凝固後に
相変態しγ相が生成することから、最終凝固位置はγ粒
界と一致する。したがって、粒界への成分元素の偏析、
析出などによる粒界移動のピン留め効果が小さく、凝固
後にγ粒径が成長し、粗大なγ粒となる。前述のミクロ
組織の制御が表面割れの抑制に重要な影響を与えるの
は、この粗大なγ粒となる領域である。
【0022】前記式(1) 式は、鋼中のC、Mn、Ni、Cuお
よびNの各含有量から包晶反応の炭素当量Cp を求める
式として知られるものである。この式で求められるCp
値が0.18よりも小さいときには、図1に示すようにδ凝
固または亜包晶凝固となることから、Cp は式(2) のと
おり0.18未満とした。
【0023】一方、実製造経験によりCp 値と表面割れ
発生とには相関があることが判明しており、表面割れは
Cp が0.10未満のときにはほとんど発生しない。したが
って本発明方法による表面割れ抑制の効果が実質的な意
味を持つのは、Cp が0.10以上のときである。
【0024】本発明方法では、上記条件における2次冷
却で、下記式(3) で定める鋳片の鋳型通過後の経過時間
t(min) の範囲内の任意の時間帯における冷却水の平均
水量密度d(リットル /(cm2・min)) が、下記式 (4)お
よび(5) で表される領域を満たし、かつ下記式(3) で定
める経過時間tの範囲内では平均水量密度dが、下記式
(6)および(7) で表される領域を満たすような冷却パタ
ーンとする。
【0025】0.5 ≦t<2.5 ・・・・・・・・・・(3) A<d ・・・・・・・・・・・・・(4) A=−0.009 t+0.043 ・・・・・・(5) d<B ・・・・・・・・・・・・・(6) B=−0.02t+0.11 ・・・・・・・(7) ただし、X(%) は、X成分の質量%を表す。
【0026】上記の「平均水量密度d」は、鋳片の鋳型
通過後の経過時間t(min) の間の合計冷却水量(リット
ル)を、対応する鋳型表面積(cm2)および上記t(min)
で除した値である。
【0027】<水量密度dおよび経過時間tの限定理由
>前述のように、鋳片のミクロ組織(粒界フェライトの
生成状況)と表面割れ感受性(割れの有無)とには明白
な相関がある。図2により、この例を説明する。
【0028】図2は、鋳片表面の割れ発生部および非発
生部の典型的なミクロ組織を示す写真の模写図である。
(a) が表面割れが発生する場合および(b) が表面割れが
発生しない場合である。
【0029】図示するとおり、鋳片表面のミクロ組織は
いずれもフェライト−パーライト組織である。しかし、
表面割れが発生するときのミクロ組織は、図2(a) に示
すようにγ粒界が明瞭であり、粒界のフェライトがフィ
ルム状に生成し、かつ粗大であるという特徴を持つ。こ
れに対して表面割れが発生しないときには、図2(b)に
示すようにγ粒界が不明瞭となり、ミクロ組織は比較的
微細である。前述のように、表面割れはγ粒界割れであ
り、γ粒界が不明瞭であれば割れの起点は存在せず、結
果的に表面割れ感受性も低下する。
【0030】一般に鋼の組織は温度履歴によって決定さ
れることから、2次冷却条件を適正に制御すれば表面割
れ感受性の鈍いミクロ組織が得られ、鋳片の表面割れを
低減できる可能性がある。この理由から鋳片表面の温度
履歴を種々変化させ、ミクロ組織への影響を調査する基
礎試験を行った。
【0031】この試験では、200kg の溶鋼を静止鋳造に
より約400 ×400 ×200mm の鋳片とし、この鋳片の完全
凝固前に鋳型から取り出し、制御されたスプレーにより
冷却した。冷却には空気と水を混合したミストスプレー
を使用した。放射温度計またはあらかじめ鋳ぐるんだ熱
電対により、鋳片表面部の温度履歴を測定し、種々の温
度履歴に対する鋳片表面のミクロ組織の変化を調査し
た。
【0032】図3は、鋳片表面のミクロ組織に及ぼす、
鋳片が鋳型を通過した後の経過時間tと2次冷却の平均
水量密度dとの影響を示す図である。2次冷却過程では
水量密度を変化させており、このため平均水量密度dは
鋳型通過後の経過時間tとともに変化するが、図3では
平均水量密度dは2次冷却過程において最大となったと
きの値とした。鋳片表面のミクロ組織は、γ粒界が明瞭
である場合(図3中の□印)、部分的に不明瞭である場
合(同じく△印)、不明瞭である場合(同じく○印)お
よび2次冷却が強く十分に復熱しなかったときに得られ
たベイナイト組織(同じく×印)の場合の4種類に分類
した。
【0033】図3において、直線Aは式(5) を表すd=
−0.009 t+0.043 、直線Bは式(7) を表すd=−0.02
t+0.11であり、いずれも実験式である。
【0034】図3に示すように、鋳片が鋳型を通過した
後の経過時間tと2次冷却の平均水量密度dとを適切な
条件に設定すれば、γ粒界が不明瞭な望ましいミクロ組
織が得られる。
【0035】まず、鋳片表面のミクロ組織と平均水量密
度d、直線AおよびBとの関係について説明する。
【0036】例えば、鋳片が鋳型を通過した後、平均水
量密度dを0.034 リットル /(cm2・min)以上の条件とし
て1分間冷却し、その後復熱させて適切な冷却速度で冷
却すれば、得られる組織はフェライト−パーライト組織
であり、かつγ粒界が不明瞭となる。鋳片が鋳型を通過
した後1分間冷却する場合に平均水量密度dを極端に増
大させて0.09リットル /(cm2・min)以上とすると、鋳片
表面温度が極端に低下して復熱せず、ベイナイト組織と
なる。また、平均水量密度dを極端に増大させると鋳片
表面の温度むらの発生が避けられず、熱応力が発生し、
表面割れの原因となる。すなわち、直線B以上の高い水
量密度dで冷却した場合には、鋳片が十分復熱せず、ベ
イナイト組織となる。他の鋼種についても同様の調査を
行い、同じ結果が得られた。
【0037】一方、γ粒界の不明瞭なフェライト−パー
ライト組織を得るには、鋳片の鋳型通過後速やかにγ→
α変態させることが必要であり、そのためには、平均水
量密度dが直線Aを上回る必要がある。
【0038】次に、鋳片が鋳型を通過した後の経過時間
tmin を、下記式(3) のように限定した理由について説
明する。
【0039】0.5 ≦t<2.5 ・・・・・・・・・・(3) γ粒界を不明瞭化するために、鋳片が鋳型を通過した後
速やかにγ→α変態させるのが必要であることは、前述
のとおりである。しかし実際の連続鋳造において、鋳型
通過後0.5min未満の時点では凝固シェルの強度が不十分
であり、この時点までに速やかにγ→α変態を完了させ
るほど強冷却するのは困難である。よって、上記時間t
は0.5min以上とした。
【0040】一方、図3のとおり、鋳型通過後2.5min以
上経過した後の平均水量密度dが直線Aを上回る条件で
は、dが直線Bを上回らなくともベイナイト組織もしく
はγ粒界が明瞭な組織となり、いずれも表面割れ感受性
が高くなる。よって、前記時間tは2.5min未満とした。
【0041】以上のように、前記式(3) で定める鋳片の
鋳型通過後の経過時間t(min) の範囲内の任意の時間帯
における冷却水の平均水量密度d(リットル /(cm2・mi
n))が、前記式 (4)および(5) で表される領域を満た
し、かつ前記式(3) で定める経過時間tの範囲内では平
均水量密度dが、直線B以上の領域に入らないことを必
須とした冷却パターンを採用することにより、2次冷却
の初期に鋳片表面部の温度をいったん低下させた後、未
凝固溶鋼の凝固潜熱により復熱させ、その後適当な冷却
速度とすれば、鋳片のミクロ組織はフェライト−パーラ
イト組織であり、かつγ粒界が不明瞭な組織となる。以
下、図3に示すγ粒界が不明瞭になる領域を、便宜的に
本発明領域という。
【0042】実際の連続鋳造では、図4に示すような冷
却パターンを採ればよい。
【0043】図4は、本発明方法の冷却パターンの例を
説明する図である。は、鋳型通過後の経過時間tが
0.5〜約1.25min の範囲で平均水量密度dが本発明領域
に入り、かつ最大平均水量密度dが比較的低い例、
は、時間tが 0.5から2.5min未満の全範囲で平均水量密
度dが本発明領域に入る例、は、と同様のパターン
であるが、平均水量密度dが比較的高い例、および
は、時間tが 1.5から2.5min未満の後半の範囲で平均水
量密度dが本発明領域に入り、かつ低く略々一定の例で
ある。
【0044】実際の連続鋳造の2次冷却帯ではスプレー
とロールとが交互に配置してあるから、2次冷却は間欠
冷却となる。2次冷却法には、空気と水とを混合したミ
ストスプレーを使用するものと水スプレーを使用するも
のとがあるが、冷却能には水量密度の寄与の方が大きい
ので空気量は考慮に含めなくとも大きな問題はない。
【0045】また、鋳造条件が異なると、スプレー冷却
とロールが存在することによる非冷却との時間ピッチ、
ならびに1段のスプレーまたはミストノズルから受ける
冷却および復熱の温度履歴が変化するが、鋳片表面の所
定のミクロ組織を形成するための冷却条件は、平均水量
密度dを用いて整理しても差し支えない。
【0046】本発明方法を適用する場合の望ましい鋳造
速度の範囲は 0.4〜5.0m/min程度、望ましい鋳片寸法は
幅 700〜2500mm程度、厚さ 100〜350mm 程度である。
【0047】<γ粒界が不明瞭となる機構>フェライト
−パーライト組織では、図2(a) に示すようにγ粒界部
分にフィルム状のフェライトが生成するため、γ粒界の
観察が可能となる。一般にγ粒径が粗大で、γ粒界が直
線的となる条件で粒界フェライト同士が合体する場合、
あるいは粒界フェライトが動的析出により生成する場合
に、粒界フェライトがフィルム状になることが知られて
いる。しかし、鋳造ままの鋳片ではγ粒径に大きな差が
存在せず、粒界フェライトの動的析出の原因となる歪も
生じない。鋳片のミクロ組織観察の結果によれば、鋳造
ままの鋳片では粒界フェライトの形状は、2次冷却によ
る過冷効果で決定される。
【0048】図5は、粒界フェライトの生成機構を模式
的に示す図である。鋳片を鋳型から引き抜いた後急冷す
る場合には過冷状態となり、隣接するγ粒の結晶方位と
関係なく、図5の左に示すようにγ粒界にフェライトが
生成する。このため、粒界フェライトとγ粒との整合性
が悪く、フェライトが粒状に成長するため、γ粒界が不
明瞭になる。
【0049】一方、冷却速度を遅くして徐冷した場合に
は連続鋳造の後半で徐冷され、γ粒の結晶方位に見合う
粒界フェライトが析出するため、図4の右に示すとおり
接触する他のγ粒側にはフェライトの成長が進行しな
い。この理由で、もとのγ粒界が残存し、明瞭なγ粒界
になる。したがって、図3からもわかるとおり平均水量
密度dを直線A以下に減少させた場合、または鋳型通過
後2.5min以上かけて冷却した場合、いずれも十分な冷却
速度が得られず、γ粒界が明瞭な組織になる。
【0050】前述のように、極端に平均水量密度を増加
した場合あるいは比較的高い平均水量密度で長時間冷却
した場合にはベイナイト組織となり、γ粒界は明瞭化す
る。
【0051】これを防止するためには、2次冷却過程に
おいていったん粒界フェライトが析出するまで冷却した
鋳片を復熱させることが必要である。復熱の際にはγ単
晶化するが、フェライト相中の元素の拡散速度はγ相中
に比べて著しく速いために、粒界近傍に初析フェライト
の何らかの痕跡が残るものと考えられる。
【0052】復熱後に再びγ→α変態するときの冷却速
度を速くした場合にも、鋳片表面のミクロ組織はベイナ
イト組織となり、γ粒界は明瞭化する。しかし、一般に
連続鋳造過程では、この変態は連続鋳造の末期あるいは
終了後となり、冷却速度は遅く、鋳片表面のミクロ組織
はフェライト−パーライト組織となる。したがって、本
発明方法による2次冷却が終了した後の鋳片の冷却条件
については、特に規定する必要はない。
【0053】このように、2次冷却条件を制御すること
によりγ粒界を不明瞭化し、表面割れ感受性を低下させ
ることが可能であるが、連続鋳造の曲げ・矯正点におけ
る鋳片表面温度が鋼の高温脆化温度域となるのを回避す
ることにより、高い効果が得られることはいうまでもな
い。本発明方法では、鋳片矯正部を備えた湾曲型または
垂直曲げ型の連続鋳造機を用いるため、曲げ・矯正点に
おける鋳片表面温度を850 ℃以上とすることが好まし
い。
【0054】前述のように、鋳片表面近傍部分のγ粒界
を不明瞭にするには、2次冷却の後半に復熱させること
が必要である。そのためには2次冷却時に鋳片内に未凝
固溶鋼が残存している必要があり、本発明方法は鋳片厚
さが100mm 以上の範囲で有効である。100mm 以上の範囲
では、復熱挙動は主に凝固シェルの熱抵抗により支配さ
れるから、鋳片厚さを変化させても前記の関係式を変更
する必要はない。
【0055】なお、鋳造から2次冷却開始までの高温で
保持される時間が長くなると、鋳片表面近傍部のγ粒径
が著しく肥大化し、上述の組織制御による表面割れの抑
制効果が得られなくなる。しかし、鋳片の鋳型通過所要
時間は通常の連続鋳造では2min 以内であり、この条件
においても鋳型過後直ちに所定の2次冷却を実施すれば
鋳片表面のミクロ組織面での悪影響はない。
【0056】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼および実製造ライン
の湾曲型連続鋳造機を用い、表2に示す条件で鋳片の鋳
型通過後の経過時間tに対する平均水量密度dを変化さ
せて鋳片を製造し、鋳片表面のミクロ組織および割れを
調査した。表1に示す鋼種は割れ感受性の高いものであ
る。鋳造速度は0.7m/min、鋳片の寸法は幅2200mm、厚さ
240mm とした。鋳片表面温度の測定には、鋳型直下部で
鋳片表面に熱電対をかみ込ませる方法を用いた。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】本発明例1〜4の冷却パターンは、前述の
図4に示す〜にそれぞれ相当する。比較例1〜4の
冷却パターンを、便宜上併せて図4に示す。
【0060】表2に示す冷却条件の平均水量密度dは、
その代表値として鋳型通過後の経過時間tが1min およ
び2min における値とした。
【0061】前述のように表面割れを抑制するために
は、曲げ・矯正点における鋳片表面温度が脆化温度域を
回避することが重要である。表2中の本発明例および比
較例ではいずれも脆化温度域を回避させた。すなわち、
2次冷却条件の影響を明確にするために、矯正点におけ
る鋳片表面温度の範囲がほぼ850 ℃から900 ℃程度にな
るように、鋳型通過後の矯正点までの総冷却水量を制御
した。
【0062】評価は、得られた鋳片表面のミクロ組織お
よび表面割れ発生の程度により行った。ミクロ組織で
は、γ粒界が不明瞭である場合を○、明瞭である場合を
×とした。割れ発生の観察では、鋳片の表面をスカーフ
ィングして表層の酸化皮膜を取り除いた後、目視により
行い、割れ発生コードを用いて割れが発生しなかった場
合を0、深さ30mm以上の割れが存在した場合を5とした
6段階に指数化した。表2に結果を併せて示す。
【0063】本発明例1は、鋳型通過後、約1.25min 以
内の平均水量密度が本発明範囲を満たすようにし、以後
の平均水量密度を本発明範囲外に減少した場合である
が、この条件ではγ粒界は不明瞭となり、表面割れも発
生しなかった。
【0064】本発明例2は、水量密度分布を変化させ、
より長時間にわたり平均水量密度が本発明範囲を満たす
ようにした場合であるが、この条件でもγ粒界は不明瞭
となり、表面割れも発生しなかった。
【0065】本発明例3は、本発明例2と同様の条件に
おいてさらに平均水量密度を高くした場合であるが、γ
粒界は不明瞭となったものの、鋳片の略々全長にわたり
コーナー近傍に深さ5mm以下の軽微な表面割れが数個発
生していた。しかし、その程度は許容範囲であった。こ
れは、長時間にわたり平均水量密度を高くしたため復熱
が小さく、鋳片の矯正点におけるコーナー近傍の表面温
度が一段と低下したことによる。
【0066】本発明例4は、本発明例1よりもさらに鋳
型通過後の平均水量密度を低下し、約1.5min後に平均水
量密度が直線Aを上回るように本発明範囲とした場合で
あるが、γ粒界は不明瞭となったものの、鋳片のコーナ
ー近傍に深さ5mm以下の軽微な表面割れが数個発生して
いた。この条件では、矯正点におけるコーナー近傍の表
面温度が低下し、本発明例1および2と比較して鋳片の
表面性状が悪化したものと考えられた。
【0067】比較例1では、平均水量密度が低く、かつ
全て本発明範囲外の条件であるため、鋳型直下で鋳片の
表面部がγ→α変態していないことから、γ粒界が明瞭
な組織となった。また、深さ10mm程度の表面割れが鋳片
の全面にわたり発生し、割れコードでは4と著しく悪化
した。比較例2では、2.5min以上経過した後に平均水量
密度が直線Aを上回るが、比較例1と同様に全て本発明
範囲外の条件であるため、冷却速度が遅く、γ粒界が明
瞭なミクロ組織となり、割れコードも4となった。比較
例3および4は、平均水量密度を極端に増加させた場合
であるが、通過後の時間帯で前後の差はあっても、いず
れにせよ或る時間帯の平均水量密度が直線Bを超える領
域に入るため、鋳片表面のミクロ組織はベイナイトとな
り、熱応力に起因すると考えられる表面割れが発生し
た。
【0068】
【発明の効果】本発明方法によれば、連続鋳造時に鋳片
表面に発生する横ひび割れなどの表面割れを減少または
防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】凝固の機構を模式的に示す図である。(a) はFe
−C系の状態図、(b) は炭素当量がA、B、CおよびD
の場合の凝固を示す模式図である。
【図2】鋳片表面の割れ発生部および非発生部の典型的
なミクロ組織を示す写真の模写図である。(a) が割れが
発生する場合、(b) が割れが発生しない場合である。
【図3】鋳片のミクロ組織に及ぼす、鋳片が鋳型を通過
した後の経過時間と2次冷却の平均水量密度との影響を
示す図である。
【図4】本発明方法の冷却パターンの例を説明する図で
ある。
【図5】粒界フェライトの生成機構を模式的に示す図で
ある。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/124 B22D 11/16 B22D 11/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C、Mn、Ni、CuおよびNの各含有量と炭素
    当量Cp とが下記式(1) および(2)の関係を満たす鋼の
    鋳片を湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて製
    造する際に、鋳片を鋳型から引き抜いた後直ちに2次冷
    却を行い、この2次冷却のパターンにおいて、下記式
    (3) で定める鋳片の鋳型通過後の経過時間t(min) の範
    囲内の任意の時間帯における冷却水の平均水量密度d
    (リットル /(cm2・min))が、下記式 (4)および(5) で
    表される領域を満たし、かつ下記式(3) で定める経過時
    間tの範囲内では平均水量密度dが、下記式 (6)および
    (7) で表される領域を満たすように冷却することを特徴
    とする鋳片表面割れの抑制方法。 Cp =C(%) +Mn(%)/33+Ni(%)/25 +Cu(%)/44+N(%)/1.7 ・・・(1) Cp <0.18 ・・・・・・・・・・・(2) 0.5 ≦t<2.5 ・・・・・・・・・・(3) A<d ・・・・・・・・・・・・・(4) A=−0.009 t+0.043 ・・・・・・(5) d<B ・・・・・・・・・・・・・(6) B=−0.02t+0.11 ・・・・・・・(7) ただし、X(%) は、X成分の質量%を表す。
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