JP3041344B2 - 圧縮木質材の製造方法 - Google Patents

圧縮木質材の製造方法

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JP3041344B2 JP8130934A JP13093496A JP3041344B2 JP 3041344 B2 JP3041344 B2 JP 3041344B2 JP 8130934 A JP8130934 A JP 8130934A JP 13093496 A JP13093496 A JP 13093496A JP 3041344 B2 JP3041344 B2 JP 3041344B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は木質材を加熱圧縮し
て得られる圧縮木質材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の圧縮木質材は、木質材を湿潤状態
であるいは水蒸気雰囲気中で加湿加温して高含水率・高
温状態とした後、加熱圧縮して製造されている。
【0003】上記従来技術は、木質材中に多量の水分が
存在する状態で高温の中で加熱圧縮して圧縮木質材を得
るものであり、セルロース、ヘミセルロース、リグニン
等の木材成分を軟化させ、特に非結晶成分であるヘミセ
ルロースおよびリグニンに対しては水分が可塑剤として
大きく作用してそれらの軟化温度をそれぞれ約60℃に
まで低下させ、木質材の可塑性を増大させつつ加熱圧縮
を行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高含水
率状態で木質材の加熱圧縮を行う従来技術による場合、
木質材の内部に存在する水分の高蒸気圧力が圧締の解圧
時に圧縮状態を復元しようとする力として働き、更に解
圧によるスプリングバック現象と相まって、圧縮状態を
維持することが困難である。
【0005】また、特に比重の低い木質材においては、
圧縮が容易になされるものの、水分の高蒸気圧力が圧締
の解圧時に一瞬のうちに放出されることによりパンク
(層間剥離)が発生するおそれがある。
【0006】高蒸気圧力の影響を防止するために、圧締
圧縮状態を保持しつつ冷却することも考えられるが、生
産性がきわめて低く、コストを大幅に上昇させるので実
際的ではない。
【0007】更に、圧縮化状態を維持することができた
としても、高含水率状態にある木質材全体に亘って圧縮
化されることから、高比重の木質材となってしまう。こ
のことは、圧縮化状態の維持により材積が小さくなり、
製品歩留まりを低下させ、コストを大幅に上昇させるこ
とを意味している。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記従来技術に
よる問題点を解決することのできる圧縮木質材の製造方
法を提供することを目的とする。
【0009】すなわち、本発明による圧縮木質材の製造
方法は、繊維飽和点以下に含水率調整された木質材を該
木質材の結晶成分であるセルロースの軟化点温度以下で
あって且つ前記含水率調整後の含水率における非結晶成
分の軟化点温度以上の温度にて加熱圧縮し、その後解圧
冷却することにより、該木質材の表裏面にそれぞれ加熱
圧縮により圧縮化された高比重層を形成し、次いで、そ
の少なくとも表面の高比重層に樹脂を塗布して含浸硬化
させることにより、該高比重層の表層部に樹脂含浸層を
形成することを特徴とする。
【0010】
【0011】
【0012】
【発明の実施の形態】木質材としては、木材の挽材ある
いは集成材、単板積層材、合板、パーティクルボード、
繊維板等の加工材が用いられる。
【0013】これら木質材には針葉樹材および広葉樹材
のいずれもが使用可能であり、特に柔らかいもの、低比
重のものが好適に用いられる。
【0014】木質材は、その含水率を繊維飽和点以下、
好ましくは35%以下に調整される。このため、木質材
として挽材が用いられる場合、木材を製材前に乾燥した
後挽材とするか、あるいは乾燥せずに挽材とした後に乾
燥して得られる。加工材を用いる場合にはその製造過程
で繊維飽和点以下に含水率調整される。
【0015】繊維飽和点以下に含水率調整された木質材
を、上下の熱盤の間隔を規制する厚さ規制治具(一般に
ディスタンスバーと呼ばれる)が取り付けられたホット
プレス装置の熱盤間に挿入する。
【0016】加熱圧縮時に熱盤間に取り付けて用いられ
る厚さ規制治具は、最終的に得ようとする圧縮木質材の
厚みと略同じ厚みを有するものとされ、木質材の圧縮率
が5〜40%、より好ましくは8〜35%となるように
設けられることが好適である。換言すれば、木質材の厚
さの60〜95%、より好ましくは65〜92%の厚さ
を有する厚さ規制治具が好適に用いられる。
【0017】木質材の圧縮率が5%未満であると、表裏
両面に対する圧縮化が不十分となり、高比重層として必
要な強度を得ることができない。逆に、圧縮率が40%
を超えると、表裏両面の圧縮化は十分に行われて高比重
層としての必要強度が得られるものの、全体比重が高く
なって重量増を招き、また過大な圧縮率を与えることに
よる材積の減少、すなわち原材料のロスが大きくなるた
めに歩留まりが低下し、コストアップの原因となるので
好ましくない。
【0018】木質材の圧縮率は、上記範囲内において、
使用する木質材の樹種、比重、得ようとする表裏面の硬
度等に応じて任意に選択することができ、その選択され
た圧縮率に対応して厚さ規制治具をセットする。
【0019】圧締時間および圧締圧力は、使用する木質
材の種類、樹種、材自体の比重、柔らかさ等に応じて任
意に設定されるが、一般に圧締時間3〜15分、圧締圧
力5〜25kg/cmとすることが好ましい。
【0020】ホットプレス装置における木質材の熱圧圧
締は、その熱圧温度を、木質材の結晶成分であるセルロ
ースの軟化点温度以下であって且つ前記含水率調整後の
含水率における非結晶成分(ヘミセルロース、リグニ
ン)の軟化点温度以上の温度として行われる。
【0021】ホットプレス装置の上下熱盤間にて加熱圧
縮された木質材は、熱盤の熱が表裏部分に伝わり、該表
裏部分において熱軟化および圧縮力による圧縮化が進行
するが、木質材が繊維飽和点以下の含水率に調整されて
いることから、熱伝達は比較的緩慢な速度で内部に移行
し、従って木質材の表裏部分のみが早期に圧縮化され
る。
【0022】木質材中の結晶成分であるセルロースの軟
化点温度は、樹種によって若干異なるものの、概ね20
0〜250℃であり、しかも木質材の含水率にかかわら
ずほぼ一定している。これに対して、木質材の非結晶成
分であるヘミセルロース、リグニンの軟化点温度は木質
材の含水率によって大きく変化し、絶乾状態におけるヘ
ミセルロースおよびリグニンの軟化点温度はそれぞれ約
180℃、約150℃であるが、木質材の繊維飽和点で
ある35%の含水率においては共に軟化点温度が60℃
付近にまで低下する。従って、繊維飽和点以下に含水率
調整された木質材を用いる本発明において、セルロース
の軟化点以上の温度で熱圧圧締することにより、結晶成
分であるセルロースが熱軟化すると同時に、非結晶成分
であるヘミセルロースおよびリグニンも軟化溶融する。
【0023】以上のようにして加熱圧縮を行った後に解
圧冷却する。先に述べたように、熱圧時においても木質
材自体の温度が全体的に高くなることがないため、その
後の解圧により容易且つ短時間に冷却される。
【0024】しかも、熱圧温度が、木質材の結晶成分で
あるセルロースの軟化点温度以下であって且つ前記含水
率調整後の含水率における非結晶成分(ヘミセルロー
ス、リグニン)の軟化点温度以上の温度とされることか
ら、木質材の木質組織中には繊維質であるセルロースが
熱軟化することなく圧縮変形した状態で残存しており、
熱圧時に軟化溶融したヘミセルロース、リグニンがセル
ロースに対して接着剤として作用するため、熱圧後の解
圧に伴う木質材のスプリングバックが最小限に抑えら
れ、表裏両面に圧縮化された高比重層が形成される。
【0025】木質材の表裏面の高比重層の硬さはJIS
Z−2007による木材の硬さ試験法において1.5
kgf/mm以上であることが好ましい。これにより
表面の耐衝撃性が十分なものとなって傷がつきにくくな
り、材自体の曲げ強度を向上させると共に、疎水性、膨
潤率、吸水率の減少により木質材としての寸法安定性を
向上させる。なお、上記試験法による硬さの数値は、そ
の各々の高比重層を研削等により外面に露出させた状態
で測定したものである。
【0026】なお、木質材の加熱圧縮は、高比重層の平
滑性を向上させ、圧縮化された木質材の厚さを均一化さ
せるため、一度熱圧圧締した後に、木質材の材温が高い
うちに、あるいは常温にまで材温を冷却した後に、再度
熱圧圧締を行うことによる2段階熱圧圧締方式を採用し
てもよい。
【0027】2段階熱圧圧締を行う場合には、2回の熱
圧圧締に用いられるホットプレス装置において同じ厚さ
規制治具を用い、1回目の熱圧圧締後の木質材のスプリ
ングバックによる戻り分を2回目の熱圧圧締で再圧する
ことができる。
【0028】あるいは、1回目のホットプレス装置にお
いては最終的に得ようとする木質材の厚さよりも厚い厚
さ規制治具を用いて熱圧圧締した後、2回目のホットプ
レス装置において最終的に得ようとする木質材の厚さと
同じ厚さの厚さ規制治具を用いて熱圧圧締することによ
り、スプリングバックによる戻りを抑制するようにして
もよい。
【0029】また、必要に応じて、1回目の熱圧圧締後
の木質材の表面または表裏面に水を塗布して表層の含水
率調整を行った後に、2回目の熱圧圧締を行うことがで
きる。1回目の熱圧圧締により木質材の表層部は絶乾状
態となるが、このように1回目の熱圧圧締後に水を塗布
して表層部の含水率を高めておくことで、木質材の表層
部に可塑性を付与し、圧縮化を容易にすることができ
る。
【0030】このようにして木質材の表裏両面に加熱圧
縮により圧縮化された高比重層を有する圧縮化材を得た
後、その少なくとも表面の高比重層に樹脂を塗布する。
【0031】塗布する樹脂としては、フェノール樹脂、
ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタ
ン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹
脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂等の樹脂またはその変性
物を単独であるいは任意混合して用いられる。また、こ
のような樹脂を塗膜形成要素として得られる塗料を用い
てもよい。
【0032】高比重層に塗布された樹脂は、一部該高比
重層内に含浸され、加熱または加熱加圧により乾燥硬化
させて、樹脂含浸層を形成する。これにより、高比重層
の安定固着がなされ、表面の疎水性が向上されると共
に、膨潤率および吸水率が減少され、圧縮化率の戻りが
なく、寸法安定性を向上させる。
【0033】樹脂の塗布にあたり、圧縮化材の高比重層
の表面に、必要に応じてワイヤブラシ掛け、サンダー掛
け等により微細溝を形成することができる。高比重層の
表面に微細溝を形成することにより、高比重層の表面積
の増大を通じて、樹脂の含浸を促進させると共に、その
投錨効果により樹脂含浸層の密着力を向上させる。
【0034】以上のようにして、繊維飽和点以下に含水
率調整された木質材の表裏面にそれぞれ加熱圧縮により
圧縮化された高比重層2、2が設けられると共に、その
少なくとも表面の高比重層の表層部に樹脂含浸層3が設
けられてなることを特徴とする本発明の圧縮木質材1が
得られる(図1)。樹脂含浸層3は表裏の高比重層2、
2の表層部にそれぞれ形成してもよいことは勿論であ
る。
【0035】かかる圧縮木質材は、その表面に着色塗
装、柄模様印刷等によるダイレクト化粧や、突板、化粧
紙、化粧合成樹脂フィルム等の化粧材を積層することに
よるオーバーレイ化粧等の任意化粧が施される化粧板の
基材として好適に用いられ、該化粧板は建築用材や建具
または家具用材として有効に利用されるものである。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、全体比重を高めること
なく、木質材の表裏面およびその厚さ方向の中心にそれ
ぞれ高比重層が形成されるため、軽量でありながら曲げ
強度、表面平滑性、表面硬度の向上がなされ、また表裏
のバランスが保たれることから反りやねじれを発生させ
ることのない圧縮木質材が得られる。
【0037】木質材の表裏面にそれぞれ形成される高比
重層は、木質材の結晶成分であるセルロースが軟化さ
れ、また非結晶成分であるヘミセルロース、リグニンが
軟化溶融された後に圧縮されて高比重に硬化して形成さ
れるものであるため、疎水性の被膜となり、圧縮化によ
る親水性の低減と相まって、膨潤率および吸水率を減少
させることができ、木質材の寸法安定性を大幅に向上さ
せる。
【0038】さらに、少なくとも表面の高比重層の表層
部に樹脂含浸層が形成されることにより、高比重層が安
定的に固着され、寸法安定性をさらに向上させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法により製造された圧縮木質材の概略
構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 圧縮木質材 2 高比重層 3 樹脂含浸層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B27K 5/00 B27K 3/15

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】繊維飽和点以下に含水率調整された木質材
    を該木質材の結晶成分であるセルロースの軟化点温度以
    下であって且つ前記含水率調整後の含水率における非結
    晶成分の軟化点温度以上の温度にて加熱圧縮し、その後
    解圧冷却することにより、該木質材の表裏面にそれぞれ
    加熱圧縮により圧縮化された高比重層を形成し、次い
    で、その少なくとも表面の高比重層に樹脂を塗布して含
    浸硬化させることにより、該高比重層の表層部に樹脂含
    浸層を形成することを特徴とする圧縮木質材の製造方
    法。
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