JP3040863B2 - 1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンの製造方法 - Google Patents

1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンの製造方法

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬、農薬等の中間
体、例えば合成抗菌剤の中間体として有用な1−クロロ
−3,4−ジフルオロベンゼンを高収率、かつ、高純度
で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の方法】1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼ
ンの製法としては、3,4−ジフルオロアニリンをジア
ゾ化した後、ザンドマイヤー反応により得る方法〔J.
Am.Chem.Soc.,81,94(1959)〕
が知られている。ところがその反応収率は70%と低
く、しかも3,4−ジフルオロアニリンは工業的に大量
入手が難しいものである。
【0003】一方、特開平2−286636号公報にお
いて、塩化第二鉄あるいは塩化アルミニウム触媒の存在
下、1,2−ジフルオロベンゼンを1当量以下の塩素ガ
スで塩素化し、1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼ
ンを製造する方法が記載されている。ところが塩素化の
際、異性体の1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼン
が1〜3%副生し、過塩素化反応も進行し易くなるた
め、原料に対し転化率を低く押さえる必要があった。し
かも副生した1−クロロ−2,3−ジフルオロベンゼン
は、1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンと物性が
酷似しており、通常の蒸留操作で分離する事は困難であ
り、純度および収率低下の原因となっていた。従って医
薬品の中間体には、反応の段階で特に高純度組成にする
必要があった。また特公昭63−12450号公報には
モノハロゲノベンゼンの塩素化が開示されているが、本
発明とは出発原料及び目的化合物が異なる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
技術の問題点を解消し、高純度、高収率で1−クロロ−
3,4−ジフルオロベンゼンを工業的に製造する方法を
提供することである。
【0005】
【問題を解決するための手段】本発明者は、従来法の問
題点を解決する為、1,2−ジフルオロベンゼンを直接
塩素化する方法について鋭意研究を重ねた結果、触媒と
してL型ゼオライトを用い塩素化することにより、位置
選択性を高めて1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼ
ンを高収率で得ることができることを認め本発明を完成
した。
【0006】すなわち本発明は、1,2−ジフルオロベ
ンゼンを塩素化し1−クロロ−3,4−ジフルオロベン
ゼンを製造するに当り、1,2−ジフルオロベンゼンに
L型ゼオライト触媒の存在下、塩素化剤を反応させるこ
とを特徴とする1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼ
ンの製造方法を提供するものである。
【0007】本発明において出発原料としての1,2−
ジフルオロベンゼンは、通常工業的に入手できるもので
良いが、水分は200ppm 以下であることが好ましい。
また、本発明の方法において用いるL型ゼオライトは、
酸化ケイ素(SiO2 )/酸化アルミニウム(Al2
3 )比が通常4〜8の結晶性アルミナシリケートであ
り、一般的にはそれと同一のX線回折スペクトルを有す
る合成ゼオライトでもよい。また、通常イオン交換可能
なカチオンが、カリウムであるL型ゼオライトが用いら
れる。この場合、カリウムをナトリウムでイオン交換す
ることも可能である。このイオン交換は公知のイオン交
換方法が適宜採用される。通常はナトリウムの硝酸塩、
塩化物などの水溶液で前記カリウム含有L型ゼオライト
を処理することにより容易にイオン交換される。さらに
本発明で用いるL型ゼオライトは、前記のカリウムイオ
ンやナトリウムイオン以外に、もちろん他のカチオン成
分を含んでいてもよく、例えばカリウム、ナトリウム以
外のIA族、IIA族、IIIA族、IVA族、VA族
の金属、選移金属、又はプロトンなどで交換したものが
好ましく用いられる。またこれらのカチオンは1種でも
2種以上でもよく、触媒は未焼成でも焼成されていても
よい。
【0008】本発明の操作としては、1,2−ジフルオ
ロベンゼンの塩素化の際、1,2−ジフルオロベンゼン
1モル当りL型ゼオライトを通常0.1g以上適宜添加
し、塩素化剤を導入する。この際触媒の量は、特に限定
されるものでは無く、適宜添加量を決めれば良いが、通
常は1,2−ジフルオロベンゼン1モル当り1〜100
gの範囲で選ばれる。
【0009】また本発明で用いられる塩素化剤として
は、通常慣用されている塩素化剤、例えば塩素ガス、塩
化スルフリル、N−クロロコハク酸イミド、五塩化リ
ン、一酸化塩素などが挙げられるが、塩素ガスを用いる
のが好ましい。
【0010】本発明方法において反応溶媒は特に必要な
いが、所望により使用しても良い。その際には反応に不
活性な溶媒が使用される。反応温度は前記塩素化剤の種
類によって適宜選ばれ、通常0℃から反応系の沸点まで
の範囲で選ばれる。反応時間は、反応温度や塩素化剤の
種類によって左右されるが、通常は1〜40時間程度で
ある。また窒素などの不活性ガス雰囲気下行うことがで
き、反応圧についても、反応系が液相を保つのに十分な
圧であれば特に制限はなく、減圧、加圧のいずれでもよ
いが、通常は常圧で行われる。
【0011】本発明方法において得られた反応混合物
は、例えば窒素ガスで脱ガス後、蒸留することにより少
量含まれる未反応の原料およびジクロル体を分離し、目
的とする純度99.0%以上の1−クロロ−3,4−ジ
フルオロベンゼンが90%以上の高収率で得られる。
【0012】次に、本発明の目的化合物である1−クロ
ロ−3,4−ジフルオロベンゼンより合成抗菌剤の中間
体として有用な2−クロロ−4,5−ジフルオロ安息香
酸を製造するルートを示す。
【0013】
【化1】
【0014】
【発明の作用及び効果】本発明においてL型ゼオライト
触媒の存在下、1,2−ジフルオロベンゼンを塩素化す
ることにより、1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼ
ンが、高純度、高収率で得られる。また本発明の方法
は、フッ素原子に対しオルソ位の塩素化を抑制し、選択
的にパラ位が塩素化され、高純度の1−クロロ−3,4
−ジフルオロベンゼンを得ることが可能になった。しか
も塩素化の際、転化率を上げても多塩素化物の副生が極
めて少なく、高収率で目的物が得られるなど優れた作用
効果を奏する。したがって、本発明方法は後処理が簡便
となり、かつ触媒のL型ゼオライトも再使用できるな
ど、工業的に実施する方法として極めて好適である。
【0015】
【実施例】
実施例1 冷却管、温度計、かきまぜ機及び吹込み管を備えた50
0ml反応フラスコにKL型ゼオライト〔商品名TSZ−
506 東ソー(株)製〕30g、1,2−ジフルオロ
ベンゼン342.3g(3モル)を入れ、90〜100
℃で乾燥塩素ガス0.175モル/時間で17時間吹き
込んだ。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析す
ると、1,2−ジフルオロベンゼン6.4%、1−クロ
ロ−3,4−ジフルオロベンゼン90.6%、1−クロ
ロ−2,3−ジフルオロベンゼン0.8%、多塩素化物
2.2%からなる混合物であった。この混合物をヘリパ
ックを充填した精留塔を用いて常圧蒸留すると1,2−
ジフルオロベンゼン23.3gが回収されるとともに1
−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンが382.1g
(純度99.2%)が得られた。沸点は130.5〜1
31.5℃/760mmHgであり、収率は92%(消費さ
れた1,2−ジフルオロベンゼン基準)であった。
【0016】実施例2 実施例1と同様にして、1,2−ジフルオロベンゼン5
7.1g(0.5モル)及びK L型ゼオライト10gの
混合物中に90〜100℃で塩素ガス0.025モル/
時間で20時間吹込んだ。反応液をガスクロマトグラフ
ィーにより分析すると、1,2−ジフルオロベンゼンの
転化率は93.1%で多塩素化物が2.2%生成してお
り、モノクロル化物中の1−クロロ−3,4−ジフルオ
ロベンゼンの選択率は99.5%であった。
【0017】実施例3 触媒をBaL型ゼオライト(K L型ゼオライトをBaカチオ
ンで交換し、その交換率61%のものを使用。)に変え
た以外は実施例2と同様に行った。その結果、1,2−
ジフルオロベンゼンの転化率は95.9%で、多塩素化
物が2.2%生成し、モノクロル化物中の1−クロロ−
3,4−ジフルオロベンゼンの選択率は99.0%であ
った。
【0018】実施例4 溶媒として四塩化炭素50mlを加え、反応温度を75℃
とした以外は、実施例2と同様にして行った。その結
果、1,2−ジフルオロベンゼンの転化率は92.7%
で、多塩素化物が1.4%生成し、モノクロル化物中の
1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンの選択率は9
9.1%であった。
【0019】実施例5 (触媒の繰り返し実験)実施例1と同様に反応した反応
液を蒸留し、その残留物に1,2−ジフルオロベンゼン
342.3g(3モル)及び5gのK L型ゼオライトを
加え、実施例1と同様に反応を行った。その結果、1,
2−ジフルオロベンゼンの転化率は93.1%で、多塩
素化物が2.8%生成し、モノクロル化物中の1−クロ
ロ−3,4−ジフルオロベンゼンの選択率は99.1%
であった。
【0020】さらに上記操作を5回繰り返した結果、
1,2−ジフルオロベンゼンの転化率は91.0%で、
多塩素化物が3.6%生成し、モノクロル化物中の1−
クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンの選択率は99.
0%であった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1,2−ジフルオロベンゼンを塩素化し
    1−クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンを製造するに
    当り、1,2−ジフルオロベンゼンにL型ゼオライト触
    媒の存在下、塩素化剤を反応させることを特徴とする1
    −クロロ−3,4−ジフルオロベンゼンの製造方法。
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