JP3040189B2 - タンパクの抽出方法 - Google Patents

タンパクの抽出方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大腸菌によって産生さ
れたヒトC型肝炎ウィルスコア抗原タンパクまたはその
コア抗原領域を含むタンパクの抽出方法に関する。さら
に詳しくは、タンパクの抽出に用いる変性剤を含んだ緩
衝液に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒトC型肝炎は、ヒトC型肝炎ウィルス
によって引き起こされる肝炎であり、輸血後の非A非B
型肝炎のほとんどは、この肝炎であると言われている。
【0003】そして、その多くは更に肝ガンへと病状が
進行する。ヒトC型肝炎ウィルスは、遺伝子の長さ約1
0Kb(約1万ヌクレオチド)のRNAウィルスとさ
れ、フラビウィルスとの類似性から5′末端から約1.
5Kbの部分が構造タンパク遺伝子部分に相当し、残り
が非構造タンパク遺伝子部分に相当すると考えられてい
る。
【0004】又、約1.5Kbの構造タンパク遺伝子部
分は、コア抗原遺伝子部分、膜タンパク遺伝子部分、外
皮タンパク遺伝子部分に機能的に分かれているものと考
えられている。
【0005】C型肝炎ウィルスの遺伝子の非構造タンパ
ク遺伝子領域および構造タンパク遺伝子領域について、
前者はカイロン社によるヨーロッパ特許(EPO318
216)での報告があり、後者はカイロン社によるヨー
ロッパ特許(EPO388232)での報告および下遠
野らの平成2年7月3日日本ガン学会における口頭発表
による報告等がある。
【0006】その後の国内外の研究により、ヒトC型肝
炎ウィルス遺伝子の構造タンパク遺伝子領域のうちのコ
ア抗原遺伝子部分でコードされるタンパク(コア抗原)
は、その他の抗原性を有する領域(C−100抗原等)
よりも抗原性が強く、特異性も高く、且つヒトC型肝炎
ウィルス感染の初期診断が可能であるタンパクであるこ
とが明らかにされた。(Muraiso.K, Hijikata.M, Shimo
tono.K et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 17
2,(2), 511-16(1990))
【0007】近年、輸血後非A非B型肝炎患者の血液中
に存在する抗体を検出する診断薬に使用できるタンパク
試料として、又、ヒトC型肝炎ウィルスに関する分子生
物学的、免疫学的研究に使用できるタンパク試料とし
て、高度に純化したタンパク試料の供給が強く望まれて
いる。
【0008】そのためには、ヒトC型肝炎ウィルスコア
抗原およびその領域を含むタンパクを大腸菌および酵母
等で大量産生させる製造方法と産生された該タンパクを
産生細胞から抽出する方法、および得られた抽出物から
該タンパクを純化する精製方法とを確立することが必要
である。
【0009】大腸菌で産生されたヒトC型肝炎ウィルス
のコア抗原タンパクまたはそのコア抗原領域を含むタン
パクを大腸菌から抽出する方法および抽出物から該タン
パクを純化する精製方法については現在まで報告がない
が、大腸菌で産生されたタンパクを抽出し、精製した他
のタンパクの例は数多くなされている。
【0010】大腸菌で産生された可溶性タンパクは、一
般に菌を集菌後、変性剤および界面活性剤を含んでいな
い通常の緩衝液でタンパクを抽出し、続いて、イオン交
換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、
アフィニティークロマトグラフィー、硫酸アンモニウム
沈殿(分画)等の精製手段を用いて精製される。
【0011】又、大腸菌で産生された不溶性又は難溶性
タンパクの精製法としては、菌を集菌後内容物を変性剤
又は界面活性剤を含んだ緩衝液で抽出した後、該抽出物
に対して、ポリアクリルアミド電気泳動を行ない、目的
のタンパク部分のゲルを切り出し、ゲルから電気泳動的
にタンパクを抽出する方法、および菌を集菌後、変性剤
又は界面活性剤を含んだ緩衝液で、内容物を抽出し同緩
衝液存在下で、ゲル濾過、イオン変換クロマトグラフィ
ーを行なった例が報告されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは大腸菌で
産生されるヒトC型肝炎ウィルスのコア抗原タンパクま
たはそのコア抗原領域を含むタンパク(以下、C−タン
パクともいう)の抽出方法について検討した結果、C−
タンパクは該タンパクのコア抗原領域の性質から水に難
溶性であり、変性剤非存在下あるいは界面活性剤非存在
下での抽出では効率よく抽出できないことを見い出し、
又、界面活性剤存在下での抽出法は、抽出はできるもの
の、該抽出物を使用すると、後に続く精製工程を進める
ことが容易でないことがわかった。
【0013】さらに、C−タンパクの変性剤存在下での
抽出を検討した結果、変性剤存在下での抽出において
も、抽出時に使用する緩衝液中に添加する変性剤の種類
および濃度で、抽出中にC−タンパクが大腸菌内のプロ
テアーゼにより分解される場合があることが判明した。
【0014】そこで、本発明者らは、大腸菌で産生され
たC−タンパクをいかなる変性剤を含んだ緩衝液で大腸
菌から抽出すれば、効率よく、且つC−タンパクが大腸
菌内のプロテアーゼに分解されずに済むか等について、
鋭意研究した結果、大腸菌によって産生されたC−タン
パクを2−メルカプトエタノール及びグアニジン塩酸を
含有する緩衝液存在下で大腸菌から抽出することで、上
記問題点を解決できることを見い出し、本発明を完成す
るに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、大腸菌によっ
て産生されたヒトC型肝炎ウィルスコア抗原タンパクま
たはそのコア抗原領域を含むタンパクを2−メルカプト
エタノール及びグアニジン塩酸を含有する緩衝液で抽出
することを特徴とする抽出方法である。
【0016】本発明においてヒトC型肝炎ウィルスコア
抗原タンパクとは、ヒトC型肝炎ウィルス遺伝子の構造
タンパク遺伝子領域のうちコア抗原遺伝子部分でコード
されるタンパクであり、少なくともヒトC型肝炎ウィル
ス遺伝子の開始コドンの最初の塩基(アデニン)から始
まる360個の塩基がコードするタンパクを指す。例え
ば開始コドンから始まる482塩基のDNA塩基配列が
コードする161個のアミノ酸をヒトC型肝炎ウィルス
由来タンパクとして含むタンパクが例示される。
【0017】本発明のタンパクは、上記コア抗原遺伝子
部分でコードされるタンパクの端部が不可避的に切断さ
れている場合、或いは付加的に例えばベクター由来のペ
プチドが連結されている場合も含む。
【0018】本発明において使用されるC−タンパクを
産生するための大腸菌は、特に制限されるものではな
い。
【0019】大腸菌でのC−タンパクの産生方法は、ヒ
トC型肝炎ウィルスコア抗原をコードする遺伝子を大腸
菌で遺伝子発現が可能なベクターに組込んで、組換えベ
クターを得、該組換えベクターで大腸菌を形質転換され
た大腸菌を使用して、C−タンパクを産生する方法であ
る。
【0020】ヒトC型肝炎ウィルスのコア抗原領域を含
むタンパクを大腸菌で産生させる方法の具体例として
は、ヒトC型肝炎ウィルスコア抗原をコードする遺伝子
断片をベクターpET−3dに挿入して得た組換えベク
ターpKMR3を用いて、大腸菌BL21(DE3)を
形質変換させ、該形質転換体をラクトースを含まない栄
養培地で培養後、IPTG(イソプロピルチオガラクト
シド)を添加して、引き続き培養することで産生させる
方法(Muraiso.K, Hijikata.M, Shimotono.K etal., Bi
ochem. Biophys. Res. Commun., 172,(2), 511-16(199
0))が挙げられる。
【0021】上記の方法で得られたC−タンパクを産生
させた大腸菌を遠心分離することで、大腸菌ペレットを
得る。そして、該大腸菌ペレットを2−メルカプトエタ
ノール及びグアニジン塩酸を含有する緩衝液に懸濁す
る。
【0022】本発明においては2−メルカプトエタノー
ル及びグアニジン塩酸を含有する緩衝液を用いて抽出す
ることが必須である。他の成分からなる緩衝液を用いた
場合は抽出効率が悪かったり、大腸菌内のプロテアーゼ
による分解を受けて得られるC−タンパクの量が低下す
る。
【0023】該緩衝液中に含有される2−メルカプトエ
タノールの濃度は、1mM〜100mMの範囲であれば
いかなる濃度でも良いが、40mM〜60mMが好適で
ある。
【0024】又、グアニジン塩酸の濃度は、1M〜8M
の範囲であればいかなる濃度でも適用できるが、5M〜
6Mが好適である。
【0025】該緩衝液のpHは、5〜9の範囲であれば
いかなるpHでも適用できるが、6〜8が好適である。
【0026】該緩衝液は、上記のpHで緩衝作用を示す
ものなら何んら制限されず、例示すれば、リン酸緩衝
液、トリス−塩酸緩衝液等が好適に使用される。
【0027】又、該緩衝液の濃度は5mM〜100mM
の範囲で適用できるが、10mM〜50mMが好適であ
る。
【0028】次に、細胞懸濁液に対して、ダイノミル細
胞破砕機、超音波破砕装置等を使用し、細胞の破砕を行
ない、該破砕物を遠心分離し、その上清を得ることで、
C−タンパクを抽出する。
【0029】
【発明の効果】本抽出方法は、大腸菌で産生されたヒト
C型肝炎ウィルスコア抗原タンパクまたはそのコア抗原
領域を含むタンパクを大腸菌から高収率で且つ、大腸菌
内のプロテアーゼによる分解を受けずに抽出できる方法
である。該タンパクは、抽出液中に安定に保持される。
【0030】
【実施例】以下、実施例をあげて説明するが、本発明は
これに限定されるものではない。
【0031】実施例1 ヒトC型肝炎ウィルスコア抗原領域を含む組換えタンパ
ク(分子量23Kd;以下、COREX タンパクと略す)を
産生する大腸菌HCVKMR3からのCOREX タンパクの
抽出。
【0032】プラスミドpKMR3で形質転換されたB
L21(DE3)大腸菌HCVKMR3(微工研菌寄
第11569号;FERM P−11569)を20リ
ットルのM9ZB培地(NH4 Cl 0.3%,KH2
PO4 0.3%,Na2 HPO4 0.6%,NaC
l 0.5%,MgSO4 1mM,バクトトリプトン
1%,グルコース 0.1%,アンピシリン 50μg
/ml)で培養し、OD600が0.4となった時点で、
IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を最終濃度
が0.4mMになるように添加し、引続き、37℃で2
時間培養することで、COREX タンパクを生産させた。
【0033】その後、細胞を8000rpm,4℃で連
続遠心し、ペレットを凍結することにより保存用に回収
した。湿潤重量は、20gであった。次に湿潤重量5g
の凍結HCVKMR3ペレットを解凍し、ペレット1g
につき、抽出用緩衝液4mlの比率で懸濁した。
【0034】抽出用緩衝液の組成は、3Mグアニジン塩
酸、40mM 2−メルカプトエタノール,pH7.0
の10mMリン酸緩衝液とした。
【0035】該懸濁物を超音波処理によりCOREX タンパ
クを抽出し、遠心分離(15000rpm,30mi
n,4℃)し、上清(19ml)を得た。
【0036】上清の全タンパク量は、1860mgであ
った。図1にCOREX タンパクの抽出効率をSDSポリア
クリルアミドゲル電気泳動で調べた結果を示す。
【0037】Lane1は、COREX タンパクを産生して
いる大腸菌ペレットをグアニジン塩酸を含有した緩衝液
に懸濁、続いて超音波処理した処理液を遠心分離し、得
た上清。 Lane2は、上記処理液を遠心分離し、得た沈殿。 Lane3は、COREX タンパク精製標品。 上記の結果より、COREX タンパクがほぼ100%の効率
で抽出されることがわかった。
【0038】実施例2 実施例1で得られた凍結HCVKMR3ペレットを解凍
し、ペレット1gにつき、表1に示す組成の各々の緩衝
液4mlの割合でそれぞれ懸濁し、該懸濁物を超音波処
理後、遠心分離(15000rpm,4℃,30mi
n)し、上清4mlと沈殿物を得た。
【0039】
【表1】
【0040】得られた沈殿物および上清をそれぞれ別々
にSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動し、ゲルをク
ーマシー染色した後、脱色した。脱色したゲルをデンシ
ドメトリーで分析することで、電気泳動したゲル上のCO
REX タンパクのバンドの濃さを上清と沈殿とで比較し、
上清に抽出された割合を抽出効率として求め、それぞれ
表2に示した。
【0041】又、上清を電気泳動したゲル上のCOREX タ
ンパクのバンドの濃さを表1の1〜5の緩衝液間で比較
した。表1の緩衝液5を使用して得られた上清のCOREX
タンパクのバンドの濃さを100%とし、表1の緩衝液
1〜4を用いて、抽出して得られた上清のCOREX タンパ
クのバンドの濃さをCOREX タンパク相対量として表わし
た。(表2)
【0042】
【表2】
【0043】表1の1,2で示されている変性剤を含有
しない緩衝液を使用した場合、表2に示す通り、抽出効
率が低い。
【0044】又、表1の緩衝液3、緩衝液4を使用した
場合、抽出効率は100%であるが、緩衝液5で抽出し
た時のCOREX タンパク量を100%とした場合、COREX
タンパク相対量はそれぞれ30%,60%と少ない。
【0045】これは、抽出操作時に大腸菌内のプロテア
ーゼによりCOREXタンパクが分解されていることが原因
と考えられる。
【0046】次に、表1の1〜5の緩衝液を用いて抽出
して得られた上清をそれぞれ37℃で、2時間保温処理
した。
【0047】37℃処理前と処理後の上清をそれぞれ別
々にSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、ゲル
をクーマシー染色した後、脱色した。脱色したゲルをデ
ンシドメトリーで分析することで、電気泳動したゲル上
のCOREX タンパクのバンドの濃さが37℃処理前と処理
後で変化するか否か即ち、上清中のCOREX タンパク量が
変化するか否かを調べた。
【0048】緩衝液5で抽出して得られた上清の37℃
処理前のCOREX タンパク量を100%として、各緩衝液
で抽出して得られた上清の37℃処理後のCOREX タンパ
ク相対量を表3に示した。
【0049】
【表3】
【0050】上記の結果より、緩衝液5を用いた場合の
み、COREX タンパクを大腸菌から高収率で且つ、大腸菌
内のプロテアーゼによる分解を受けずに抽出できること
がわかる。又、本抽出方法によりCOREX タンパクは抽出
液中に安定に保持されることも判明した。
【図面の簡単な説明】
【図1】SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べ
たCOREX タンパクの抽出効率を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Biochem.Biophys,R es.Commun.(1990)Vol. 172,No.2,p.511−516 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 21/00 - 21/02 C12N 15/51 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大腸菌によって産生されたヒトC型肝炎
    ウィルスコア抗原タンパクまたはそのコア抗原領域を含
    むタンパクを、2−メルカプトエタノール及びグアニジ
    ン塩酸を含有する緩衝液で抽出することを特徴とするタ
    ンパクの抽出方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101682853B1 (ko) * 2016-04-06 2016-12-05 김정훈 수영 보조 기구

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Biochem.Biophys,Res.Commun.(1990)Vol.172,No.2,p.511−516

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101682853B1 (ko) * 2016-04-06 2016-12-05 김정훈 수영 보조 기구

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