JP3039864B1 - トリカフェオイルアルダル酸、その製造法及びその用途 - Google Patents

トリカフェオイルアルダル酸、その製造法及びその用途

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JP3039864B1
JP3039864B1 JP11191823A JP19182399A JP3039864B1 JP 3039864 B1 JP3039864 B1 JP 3039864B1 JP 11191823 A JP11191823 A JP 11191823A JP 19182399 A JP19182399 A JP 19182399A JP 3039864 B1 JP3039864 B1 JP 3039864B1
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tricaffeoylaldaric
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yacon
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真紀子 竹中
裕嗣 小野
忠博 永田
眞由美 亀山
シャオジュン イェン
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農林水産省食品総合研究所長
真紀子 竹中
裕嗣 小野
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Abstract

【要約】 【課題】 食品用の抗酸化剤などとして有用な新規アル
ダル酸誘導体であるトリカフェオイルアルダル酸と、そ
の製造法と、その用途の提供。 【解決手段】 式(I) 【化1】 (式中、Rは、式(II) 【化2】 で表わされるものである。)で表わされるトリカフェオ
イルアルダル酸、前記記載のトリカフェオイルアル
ダル酸からなる抗酸化剤、ヤーコンから水及び/又は
親水性有機溶媒を用いて溶媒抽出すること、或いはヤー
コンから水及び/又は親水性有機溶媒を用いて溶媒抽出
した後固相抽出すること、を特徴とする前記記載のト
リカフェオイルアルダル酸を製造する方法、をそれぞれ
提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品産業分野、化
学産業分野等において有用な新規トリカフェオイルアル
ダル酸、その製造法及びその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】アルダル酸は、アルドースの酸化などに
よって得られることが知られているが、天然物に含まれ
る例は少ない。また、アルダル酸自身の機能としては、
グルカル酸について、ラットの血中コレステロール値降
下作用が知られている程度である。さらに、アルダル酸
の有機酸エステルは極めて稀であり、これらの化合物の
機能性については、これまでほとんど知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、食品
用の抗酸化剤などとして有用な新規アルダル酸誘導体で
あるトリカフェオイルアルダル酸と、その製造法と、そ
の用途とを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、様々な生理
活性を有しながらもわが国への普及が遅れている、南米
のアンデス原産の農産物であるヤーコンについて研究を
行っており、このヤーコンの新たな健康維持機能を見出
すべく、鋭意検討を重ねる過程において、このヤーコン
塊根の粗抽出液が強い抗酸化性を有することを見出し
た。なお、ヤーコン自体は、フラクトオリゴ糖などの特
殊な糖を貯蔵する農産物として近年注目を集めている
が、ヤーコン塊根の粗抽出液が強い抗酸化性を有するこ
とは、これまで全く知られていない。本発明者は、その
活性が、多量に含まれるフェノール性化合物であると推
定してさらに研究を進め、ヤーコン塊根のメタノール抽
出物について、各種クロマトグラフィーを行い、活性成
分を単離することに成功し、その化学構造の解析を行っ
た。その結果、本発明者は、その活性成分が、アルダル
酸の一種であるアルトラル酸とカフェ酸とがエステル結
合した化合物であると同定した。これは、文献未記載の
化合物であった。本発明は、このような知見に基づいて
完成されたものである。
【0005】すなわち、請求項1に係る本発明は、次の
式(I)
【化3】 (式中、Rは、式(II)
【化4】 で表わされるものである。)で表わされるトリカフェオ
イルアルダル酸を提供するものである。
【0006】次に、請求項2に係る本発明は、請求項1
記載のトリカフェオイルアルダル酸からなる抗酸化剤を
提供するものである。
【0007】また、請求項3に係る本発明は、ヤーコン
から、水及び/又は親水性有機溶媒を用いて溶媒抽出す
ることを特徴とする請求項1記載のトリカフェオイルア
ルダル酸を製造する方法を提供するものである。
【0008】さらに、請求項4に係る本発明は、ヤーコ
ンから、水及び/又は親水性有機溶媒を用いて溶媒抽出
した後、固相抽出することを特徴とする請求項1記載の
トリカフェオイルアルダル酸を製造する方法を提供する
ものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳しく説
明する。請求項1に係る本発明は、上記式(I)で表わ
されるトリカフェオイルアルダル酸である。上記式
(I)中において、Rは式(II)で表わされるもので
ある。このものは、2,3,5−トリカフェオイルアル
ダル酸又は2,4,5−トリカフェオイルアルダル酸で
あって、文献未記載の新規化合物である。
【0010】請求項1記載のトリカフェオイルアルダル
酸は、強い抗酸化性を有しており、例えば食品用抗酸化
剤として知られているBHA(3−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシアニソール)と比較して、モル比で3.6倍の
活性が認められる。しかも、この請求項1記載のトリカ
フェオイルアルダル酸は、後述するように、食用とされ
ているヤーコンの塊根などから得られるため、安全性の
点でも問題がない。
【0011】従って、請求項1記載のトリカフェオイル
アルダル酸は、請求項2に記載したように、抗酸化剤、
特に食品用の抗酸化剤として有用である。請求項1記載
のトリカフェオイルアルダル酸を食品に添加することに
より、食品中の油脂などの酸化が抑制される。すなわ
ち、食品中の油脂類に含まれる不飽和脂肪酸の酸化など
が抑制される。また、その食品摂取後は、体内で何らか
の抗酸化性を発揮することが期待される。請求項1記載
のトリカフェオイルアルダル酸を、請求項2に記載した
ように、抗酸化剤、特に食品用の抗酸化剤として用いる
場合、その使用量は、特に制限されないが、通常、食品
1kg当たり、0.01〜0.3g程度で充分な効果を
発揮する。また、請求項1記載のトリカフェオイルアル
ダル酸を、請求項2に記載したように、抗酸化剤、特に
食品用の抗酸化剤として使用する場合の使用方法には特
に制限はないが、例えば油脂、バターなどにそのまま添
加することができるし、或いは請求項1記載のトリカフ
ェオイルアルダル酸の溶液に魚介類などを浸漬すること
もできる。
【0012】なお、請求項1記載のトリカフェオイルア
ルダル酸を、請求項2に記載したように抗酸化剤として
用いる場合、必要に応じて適宜、他の公知の抗酸化剤
(例えば、BHA、BHTなど)やアスコルビン酸、ク
エン酸などを相乗剤として併用することもできる。一般
に、抗酸化性の発現機作には、ラジカル捕捉作用と金属
キレート作用の2つがあるが、請求項1記載のトリカフ
ェオイルアルダル酸は、その分子構造から、これら2つ
の作用(フェノール性芳香環や炭素二重結合によるラジ
カル捕捉作用、及び炭素鎖にカルボキシル基や水酸基が
付いた構造を持つことによる金属キレート作用)を併せ
持っており、これらどちらの作用を持つ抗酸化剤と併用
しても相乗効果を発揮する。
【0013】上記式(I)で表わされるトリカフェオイ
ルアルダル酸は、例えば請求項3に記載したように、ヤ
ーコンから、水及び/又は親水性有機溶媒を用いて溶媒
抽出することによって製造することができる。請求項3
に係る本発明においては、ヤーコンから、水及び/又は
親水性有機溶媒を用いて溶媒抽出することによって、上
記式(I)で表わされるトリカフェオイルアルダル酸を
製造することができる。ヤーコンとしては、通常、塊根
が用いられるが、葉や茎なども使用することができる。
【0014】請求項3記載の方法に基づき、上記式
(I)で表わされるトリカフェオイルアルダル酸を製造
するにあたっては、ヤーコンは、通常、抽出効率を高め
るため、細かく粉砕しておき、これを水及び/又は親水
性有機溶媒を用いて溶媒抽出すれば良い。抽出溶媒とし
ては、水で十分であるが、親水性有機溶媒を用いたり、
さらには両者を併用しても良い。ここで親水性有機溶媒
としては、例えばメタノール,エタノール,2−プロパ
ノール,1−プロパノール,アセトン,ジオキサンなど
を挙げることができ、これらの中でも特にメタノール,
エタノールが好ましい。
【0015】抽出条件としては特に制限はないが、通
常、ヤーコン1kgあたり、0.5〜5L程度の水及び
/又は親水性有機溶媒を用いる。ヤーコンに水及び/又
は親水性有機溶媒を添加し攪拌した後、静置すれば良
い。静置温度は特に制限はなく、通常は常温以下程度で
ある。また、静置時間も特に制限はなく、通常は例えば
一晩程度以上静置すれば良い。
【0016】得られた抽出液から、常法に従い分離精製
を行うことにより、例えばゲル濾過クロマトグラフィ
ー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを組
合せることにより、目的とする化合物を得ることができ
る。得られた化合物は、新規アルダル酸誘導体である、
上記式(I)で表わされるトリカフェオイルアルダル
酸、すなわち、2,3,5−トリカフェオイルアルダル
酸又は2,4,5−トリカフェオイルアルダル酸であ
る。このものは、より具体的には、アルダル酸の異性体
の一つであるアルトラル酸とカフェ酸とがエステル結合
した2,3,5−トリカフェオイルアルトラル酸(2,3,
5-tricaffeoylaltraric acid)又は2,4,5−トリカ
フェオイルアルトラル酸(2,4,5-tricaffeoylaltraric
acid)であることは、精密質量分析により決定した分子
式、核磁気共鳴スペクトル及び加水分解実験から確認さ
れた。これら2,3,5−トリカフェオイルアルトラル
酸と2,4,5−トリカフェオイルアルトラル酸とを合
わせて、単に「トリカフェオイルアルトラル酸」と称す
ることがある。なお、アルダル酸の異性体には、上記ア
ルトラル酸の他に、アラル酸、グルカル酸、マンナル
酸、イダル酸、ガラクタル酸が存在することは既知のこ
とである。従って、トリカフェオイルアルトラル酸以外
のトリカフェオイルアルダル酸であっても、請求項1〜
4に係る本発明に包含される。特に、物質の分離精製法
や抗酸化活性は、同等である。
【0017】但し、この場合、操作中に酵素的褐変が進
行し、目的とする化合物の収率が必ずしも十分でない。
果物、野菜における酵素的褐変は、ポリフェノール化合
物を基質としたポリフェノールオキシダーゼによる酸化
重合反応であるため、ポリフェノールの一種であるトリ
カフェオイルアルダル酸が褐変と共に消費され、収率の
低下をもたらしたと考えられる。従って、これを抑制す
るためには、アスコルビン酸などの還元剤の添加、酵素
の至適pHを避けるためのpH調整(酸やアルカリを加
える、或いは緩衝溶液を用いる)、酵素失活のための加
熱或いは阻害剤の添加などが有効であり、これらの酵素
的褐変の抑制手段の1乃至それ以上を適宜組合せると良
い。
【0018】上記した如き請求項3に記載の抽出精製法
(溶媒抽出に通常の分離精製を組み合わせた方法、すな
わち溶媒抽出+ゲル濾過クロマトグラフィー+HPL
C)は、操作中に酵素的褐変が進行し、目的とする化合
物の収率が必ずしも十分に満足し得るものではない。そ
こで請求項4に記載したように、抽出〜精製の方法を変
更することにより、目的とする化合物を高収率で製造す
ることができた。
【0019】請求項4に係る本発明は、ヤーコンから、
水及び/又は親水性有機溶媒を用いて溶媒抽出した後、
固相抽出することを特徴とする請求項1記載のトリカフ
ェオイルアルダル酸を製造する方法である。請求項4に
係る本発明は、溶媒抽出によって抽出された抽出液中の
目的物質を含む成分について、酵素的褐変を抑えなが
ら、疎水基の疎水性相互作用などを利用した固相抽出に
よって迅速に分離精製することを特徴とする。すなわ
ち、目的とする化合物の分子構造に着目し、適切な固相
を選択することで、分離精製に固相抽出の手法を有効に
取り入れることができる。請求項1記載のトリカフェオ
イルアルダル酸は、疎水性官能基を分子内に有している
ために、エチル、オクチル、フェニル,シクロヘキシ
ル,オクタデシルなどの疎水基による疎水性相互作用を
利用した固相抽出によって、効率良く分離精製を行うこ
とができる。後述の実施例では、固相としてオクタデシ
ル化シリカゲル(ODS)を用いた。エチル、オクチ
ル、フェニル,シクロヘキシル,オクタデシルなどの疎
水基を化学的に結合させたシリカゲルでは、疎水的な部
位が水中の無極性成分を疎水性相互作用によって捕捉す
る。
【0020】この固相抽出は、カラム法、バッチ法、膜
法のいずれで行っても良い。例えば、カラム法を例にと
って説明すると、固相を充填したカラムに試料を通過さ
せ、目的成分を捕集した後、適当な洗浄液を通して洗浄
し、次いでアルコールなどからなる溶離液を通して捕集
した目的成分を溶出する。なお、固相抽出するにあたっ
ては、予めエタノールなどの親水性の溶媒をカラムに通
すコンディショニングを行い、固相表面を濡らしておく
と良い。なお、ODSの固相抽出において、ヤーコン中
のポリフェノール類は、溶離液としてメタノール−水
(3:7)混合溶媒を用いた場合に最も良く溶出される
と考えられる。また、陰イオン交換樹脂などの静電相互
作用を利用した固相抽出によっても、効率良く抽出する
ことが可能である。
【0021】得られた抽出液から、常法に従い分離精製
を行うことにより、例えばゲル濾過クロマトグラフィ
ー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを組
合せることにより、目的とする化合物を得ることができ
る。最も好ましい抽出・分離精製方法は、溶媒抽出と固
相抽出とHPLCとを組み合わせた方法である。請求項
4に係る本発明においては、溶媒抽出液を固相抽出用の
カラムに直接流すことで、褐変酵素を迅速に除去するこ
とができ、分離操作の時間を短縮することができる。
【0022】請求項4に係る本発明においては、抽出時
にアスコルビン酸を添加することが好ましい。アスコル
ビン酸の添加により、抽出時又はそれ以降の酵素的褐変
(ポリフェノール化合物の酸化重合反応)を抑えること
ができ、収率を大幅に向上させることができる。これは
アスコルビン酸の添加により抽出液のpHを下げ、酵素
活性を低下させると共に、アスコルビン酸の還元力によ
り、酸化が抑えられたためと考えられる。また、添加し
たアスコルビン酸は固相抽出条件により、褐変酵素など
と同時に容易に除去されるため、分離精製にあたって問
題とならない。
【0023】
【実施例】次に、本発明を実施例によって詳しく説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】実施例1(溶媒抽出+ゲル濾過クロマトグ
ラフィー+HPLC) (1)化合物〔式(I)で表わされるトリカフェオイル
アルダル酸〕の単離 ヤーコンの抗酸化性は、多量に含まれるフェノール性化
合物によると考え、紫外部吸収を指標に分離精製を進め
た。まず、1.4kgのヤーコン塊根を細かく刻み、1.5Lの
メタノールで抽出した。抽出液を乾固し、40mlの10%メ
タノール溶液に溶解し、ゲル濾過クロマトグラフィー
(Toyopearl HW-40;TOSOH,450×40mm i.d.)に供
した。200mlの水を流した後、5%酢酸水溶液中5-90%
メタノールのリニアグラジエントで溶出し、15ml×120
画分を分取した。このうち、60から100の画分を集め濃
縮し、これをHPLCで分離した。カラムは、Wakosil-
II 5C18 HG;Wako(250×20mm i.d.)、溶離液は3
0%メタノール/5%酢酸、流速は8ml/min、検出は 300
nmで行った。45.5分のピークにあたる部分を分取し、
減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、純粋な化合物 6.7mgを
得た。
【0025】(2)化合物〔式(I)で表わされるトリ
カフェオイルアルダル酸〕の構造解析 上記(1)で得られた化合物について、NMR(核磁気
共鳴)及びMS(質量分析法)により、構造解析を行っ
た。以下に、各データを示す。1 H NMR(600MHz, DMSO-d6); δ(ppm) 4.63 (1
H, d, J=9.4Hz), 5.02 (1H, d, J=1.5Hz), 5.42 (1
H, brd), 5.43 (1H, d, J=9.4Hz), 6.18 (1H, d, J
=15.9Hz), 6.25 (1H, d, J=15.9Hz), 6.26 (1H, d,
J=15.9Hz), 6.72-6.77 (3H, m), 6.95-7.01 (4H,
m), 7.04-7.05 (2H, m), 7.41 (1H, d,J=15.8Hz),
7.49 (1H, d, J=15.9Hz), 7.52 (1H, d, J=15.9Hz) FAB-MS;m/z 695([M-H]-), 533, 371, 209 高分解能 FAB-MS(高速原子衝撃質量分析法);計算値
332717=695.1248, 実測値 695.1235
【0026】また、上記(1)で得られた化合物のU
V,VIS吸収スペクトルは、λmax(MeOH)n
m:326,297,250であった。この結果、上記(1)で
得られた化合物は、前記式(I)で表わされるトリカフェ
オイルアルダル酸であることが確認された。
【0027】(3)トリカフェオイルアルダル酸の加水
分解 上記(1)で得られた化合物のアルダル酸部分を同定す
るため、加水分解を行い、分解物のNMRスペクトルを
標品のスペクトルと比較した。NMR測定後のトリカフ
ェオイルアルダル酸DMSO-d6溶液(約10mg/ml)
10μlを0.1M K2CO3/D2O溶液に溶解し、NMRサ
ンプルチューブ内で80℃にて1時間加熱したもののNM
Rを測定し、アルダル酸部分のスペクトルをアルダル酸
標品のグルカル酸及びアルトラル酸のスペクトルと比較
した。NMRのスペクトルの強度から、分解はほぼ定量
的に進行したと考えられ、加水分解物のスペクトルは、
アルトラル酸のスペクトルと重なったため、アルトラル
酸と同定された。ここでは約10μgのトリカフェオイル
アルトラル酸を分解して、約2.6μgのアルトラル酸が
得られた。この結果、上記(1)で得られた化合物は、
式(I)で表わされるトリカフェオイルアルトラル酸で
あることが確認された。
【0028】(4)化合物〔式(I)で表わされるトリ
カフェオイルアルダル酸〕の抗酸化試験 上記(1)で得られた化合物について、DPPH(ジフ
ェニルピクリルヒドラジル)ラジカル消去能を利用した
抗酸化試験を行った。比較対照に、食品用抗酸化剤であ
るBHA(3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソー
ル)を用いた。この抗酸化試験の詳細は以下の通りであ
る。
【0029】試料溶液の調製 上記(1)で得られた式(I)で表わされるトリカフェ
オイルアルダル酸(トリカフェオイルアルトラル酸)の
39μg/ml(0.056μmol/ml)50%エタノール溶液を
試料溶液として用いた。
【0030】活性の測定 DPPHラジカルの減少を、520nmの吸光度を指標に
評価した。標準溶液として、BHAの25μg/ml(0.1
4μmol/ml)50%エタノール溶液を用いた。200mMの
DPPHエタノール溶液300μlに、水300μl、50%エタ
ノール(600−a)μl(a=0,60,120,240)、試料(標
準)溶液aμlを加え、2分後に520nmにおける吸光度
を測定した。試料(標準)溶液無添加のときの吸光度を
100(%)として、それぞれの吸光度の補正値をプロッ
トしたものが図1である。DPPHラジカル(0.06μmo
l)を50%消去するのに必要な試料(標準)溶液量を図
1のグラフから読み取り、その物質量を算出して活性の
比較を行った。その結果、DPPHラジカルを50%消去
するのに必要な上記試料及びBHAの物質量は、それぞ
れ4.5nmol(0.056μmol/ml×80μl=4.5×10-9mo
l)、16nmol(0.14μmol/ml×112μl=1.6×10-8mo
l)であった。従って、モル数で比較すると、上記
(1)で得られた化合物、すなわち式(I)で表わされ
るトリカフェオイルアルダル酸(トリカフェオイルアル
トラル酸)は、BHAと比較して、3.6倍(16/4.5=3.6
倍)の活性があるといえる。
【0031】実施例2(溶媒抽出+固相抽出+HPL
C) (1)化合物〔式(I)で表わされるトリカフェオイル
アルダル酸〕の単離と構造解析 ヤーコンの塊根160gに20mMアスコルビン酸水溶液160
mlを加え、ホモジナイズした。ガーゼで濾過し、濾液
を遠心分離(5000rpm×10min)し、約260mlの上清を
得た。このうち250mlを直接ODS(Cosmosil 140C
18-OPN;nacalai tesque,190×26mm i.d.)の固
相に通し、洗浄液に紫外部の吸収がなくなるまで水を65
0ml流してカラムを洗浄した。次に、メタノール-水
(3:7)混合溶媒を500ml流して、100mlずつの画
分に分け、3−4番目の画分を合わせて濃縮し、4ml
のメタノールに溶解した。これを分取用HPLC(条件
は実施例1と同じ)に供し、単一の化合物 16.4mg
(生のヤーコン塊根に対し、0.01重量%の割合)を得
た。なお、上記固相抽出用のオープンカラムは、メタノ
ール-水(1:1)溶液にODS充填剤を懸濁してガラ
スカラムに注ぎ入れ、これにカラム容量の約5倍の水を
流して溶液を置換することにより作製し、これを固相抽
出に用いた。
【0032】この化合物のNMRを測定し、式(I)で
表わされるトリカフェオイルアルダル酸(トリカフェオ
イルアルトラル酸)と同定した。
【0033】(2)前項におけるODSによる固相抽出
の条件の検討 ODS充填カートリッジ(Sep-Pak Plus C18 Cartridge
s;Waters)を用いて、メタノール-水(1:1)混合溶
媒を4ml流した後、水を10ml流し、50倍に希釈した
ヤーコン抽出液を5ml流した()。続いて、水4m
l()、メタノール-水(3:7)混合溶媒4ml
()、メタノール-水(1:1)混合溶媒4ml
()、メタノール4ml()を流し、〜のU
V,VIS吸収スペクトル(300〜400nm)を測定し
た。上記におけるスペクトル強度が最も大きかったた
め、ヤーコン中のポリフェノール類のほとんどは、OD
Sの固相抽出において、メタノール−水(3:7)混合
溶媒を用いて溶出されると考えられた。
【0034】
【発明の効果】請求項1に係る本発明によれば、新規ア
ルダル酸誘導体であるトリカフェオイルアルダル酸、す
なわち2,3,5−トリカフェオイルアルダル酸又は
2,4,5−トリカフェオイルアルダル酸が提供され
る。
【0035】請求項1記載のトリカフェオイルアルダル
酸は、請求項2に係る本発明のように、抗酸化剤として
有用であり、特に食用とされているヤーコンの塊根から
得られるため、食品用の抗酸化剤として用いたときに
も、安全性の点で問題がない。すなわち、請求項1記載
のトリカフェオイルアルダル酸を食品に添加することに
より、食品中の油脂などの酸化が抑制される。すなわ
ち、食品中の油脂類に含まれる不飽和脂肪酸の酸化など
が抑制される。また、その食品摂取後は、体内で何らか
の抗酸化性を発揮することが期待される。ヤーコンは、
フラクトオリゴ糖などの特殊な糖を貯蔵する農産物とし
て近年注目されているが、本発明により、抗酸化性を有
するアルダル酸誘導体の原料としての利用も期待するこ
とができる。さらに、アルダル酸類の製造は、化学合成
によるものが一般的であって、食品への応用は好ましく
なかったが、本発明により、農産物からの安定的な供給
が可能となる。
【0036】請求項3に係る本発明によれば、そのよう
な新規アルダル酸誘導体であるトリカフェオイルアルダ
ル酸の製造法が提供される。
【0037】さらに、請求項4に係る本発明によれば、
そのような新規アルダル酸誘導体であるトリカフェオイ
ルアルダル酸のより効率的な製造法が提供される。すな
わち、請求項4に係る本発明においては、溶媒抽出液を
固相抽出用のカラムに直接流すことで、褐変酵素を迅速
に除去することができ、分離操作の時間を短縮すること
ができる。また、請求項4に係る本発明においては、抽
出時にアスコルビン酸を添加することで、抽出時又はそ
れ以降の酵素的褐変(ポリフェノール化合物の酸化重合
反応)を抑えることができ、収率を大幅に向上させるこ
とができる。
【0038】従って、本発明は、特に食品産業分野にお
いて有効に利用することができる。さらに、本発明のト
リカフェオイルアルダル酸或いはこれを加水分解して得
られるアルダル酸は、医薬品などの高付加価値化学物質
の合成原料として供給されることが期待され、化学産業
分野等においても有効に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における本発明の試料溶液〔39μg
/ml(0.056μmol/ml)〕(図中、○−○で示される
もの)とBHA溶液〔25μg/ml(0.14μmol/m
l)〕(図中、×−×で示されるもの)によるDPPH
ラジカル消去の程度を示したグラフである。縦軸の値
は、残存しているDPPHラジカルの相対量を表わし、
直線のマイナスの傾きが大きいほど抗酸化活性が高いこ
とを示す。
フロントページの続き (72)発明者 竹中 真紀子 茨城県つくば市吾妻2丁目2番2号709 棟213号 (72)発明者 小野 裕嗣 茨城県つくば市吾妻1丁目1番1号603 棟805号 (72)発明者 永田 忠博 茨城県牛久市柏田町田宮東4街区4番地 1 (72)発明者 亀山 眞由美 千葉県柏市旭町5丁目1番18号805 (72)発明者 イェン シャオジュン 茨城県つくば市松代1−24 (56)参考文献 特開 平6−292479(JP,A) 特開 平10−298009(JP,A) Plant Physiol.,92 [1](1990),41−47. J.Agric.Food Che m.,46[2](1998),361−367. Electroanalysis,10 [13](1998),908−912. 日本土壌肥料学雑誌,60[2 ](1989),122−126. J.Agric.Food Che m.,47[11](1999),4711−4713. (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 69/732 C09K 15/00 BIOSIS(DIALOG) CAPLUS(STN) REGISTRY(STN) WPIDS(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の式(I) 【化1】 (式中、Rは、式(II) 【化2】 で表わされるものである。)で表わされるトリカフェオ
    イルアルダル酸。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のトリカフェオイルアルダ
    ル酸からなる抗酸化剤。
  3. 【請求項3】 ヤーコンから、水及び/又は親水性有機
    溶媒を用いて溶媒抽出することを特徴とする請求項1記
    載のトリカフェオイルアルダル酸を製造する方法。
  4. 【請求項4】 ヤーコンから、水及び/又は親水性有機
    溶媒を用いて溶媒抽出した後、固相抽出することを特徴
    とする請求項1記載のトリカフェオイルアルダル酸を製
    造する方法。
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