JP3039480B2 - 熱履歴判定方法および熱履歴表示ラベル - Google Patents

熱履歴判定方法および熱履歴表示ラベル

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JP3039480B2
JP3039480B2 JP9272562A JP27256297A JP3039480B2 JP 3039480 B2 JP3039480 B2 JP 3039480B2 JP 9272562 A JP9272562 A JP 9272562A JP 27256297 A JP27256297 A JP 27256297A JP 3039480 B2 JP3039480 B2 JP 3039480B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加熱環境下に置か
れた被加熱物の熱履歴を判定するための判定方法および
熱履歴表示ラベルに関する。
【0002】
【従来の技術】天然および合成された化学物質や材料を
はじめ、それらの材料を用いて作られたあらゆる工業製
品の多くは、製造、使用、廃棄あいは再処理工程での発
熱あるいは加熱処理による熱吸収(本発明では熱被曝と
略す)によって、物性、性能、機能等の劣化を伴う場合
があり、その原因が主に熱による材料の化学的変化に起
因することはよく知られている事実である。
【0003】熱被曝による各種物性劣化の進行の程度
は、熱にさらされた時間(本発明では熱被曝時間と略
す)の関数であることは明白であるが、劣化の速度は温
度にも支配され、温度が高いほど劣化速度も速くなる。
従って、劣化の度合いを推測あるいは評価するには、た
だ単に熱被曝時間や、加えられた温度、即ち被曝温度を
測定するだけでは不十分であり、熱被曝時間と被曝温度
の積分値、即ち熱履歴を把握しなければならない。
【0004】従来、過剰な加熱処理が行なわれた場合の
部品に対する被曝温度の検査には、特定温度以上で変色
もしくは融解等の性状の変化を伴う示温材料が用いられ
ていた。即ち、故障や物性変化を引き起こす可能性が高
くなる温度以上で反応する示温材料を含有した塗料やラ
ベルを被加熱物に塗布もしくは貼り付け、加熱後の示温
材の色や性状の変化から被曝温度を検査するものであ
る。
【0005】この様な被曝温度の検査を行うために用い
られる示温材料は、ドイツのI.G.Farbeind
ustrie社が1937年〜1941年にかけて特許
〔DRP:665462(1938)、695460
(1940)〕を取得し、Thermocolorの名
称で発売された物を最初として、国内においては理化学
研究所からサーモペイントの商品名で市販されているも
のがあり、それらの熱特性から可逆性および不可逆性の
2種類に分類され、被曝温度の検査で利用される後者の
化学物質には、コバルト、ニッケル、鉄、銅、クロム、
マンガン、鉛などの塩類が用いられ、これらの塩類は、
化学組成中にアミンまたはアンモニウム基、アミン基、
炭酸基、シュウ酸基、水酸基を含む物が多い。
【0006】また、従来の被曝温度と熱被曝時間を含め
た熱履歴を評価する方法としては、レドックス染料を利
用した酸の透過量を監視して時間・温度積分を行う方法
が報告されている(米国特許第3、768、976
号)。
【0007】その他に、アゾ染料とエポキシ化合物をマ
イクロカプセル等に包含させ、50〜300℃の温度範
囲で溶融又は軟化するマイクロカプセルで隔絶し、特定
の温度条件でマイクロカプセルの隔壁が融解する際の両
者の熱拡散と、混合に伴う化学反応で引き起こされる色
相の変化を利用する、熱履歴検知インジケータが考案さ
れている(特開昭59−124956号)。
【0008】また特開昭59−124956号公報の熱
履歴検知インジケータの、マイクロカプセルの隔壁の軟
化および溶融温度以下での利用ができなかったという問
題点を、温度上昇に伴ってマイクロカプセルの隔壁が内
圧で破壊するように工夫し、これに求核性化合物と、こ
れと反応して色相が変化する化合物とを別々に封印し、
熱被曝時に生じる発色の度合いから判定する熱被曝エネ
ルギーの表示材料の報告がある(特開昭63−3568
4号)。
【0009】これらの熱履歴に関する従来技術は、いず
れも化学物質同士の化学反応、ここでは発色反応が引き
起こされる際に起きる化学物質の熱拡散現象が、加えら
れた被曝温度と熱被曝時間に依存し、反応で生じた発色
物質の蓄積量が熱履歴に対応することを利用しており、
これを色相の変化の程度に対応させることによって、目
視あるいは光学的に検知するものであった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来の被曝温度
の判定方法は、加熱工程における運転条件の把握や温度
管理を主目的としていたため、特定の温度以上に加熱さ
れたか否かの判別はできても、実際に加わったあるいは
発生した温度とその継続時間の積分値、即ち熱履歴を正
確に把握することが困難であった。例えば示温材料が反
応する温度以下の加熱処理の継続や、その反復が起きる
場合の熱履歴の検査は、原理的に不可能であった。従っ
て、このような加熱処理の繰り返しで徐々に促進される
材料物性の疲労や変性の蓄積により引き起こされる電子
部品等の信頼性の評価は、直接個々の材料や部品につい
ての化学分析や不良解析を高価な設備と長い評価時間を
費やして検査する以外に方法が無かった。さらに、プラ
スチック等の有機材料に関しては、熱履歴を簡便に評価
する方法は全くなく、材料の精密な機器分析を行うしか
方法がなかった。
【0011】また、加熱処理に伴う化学物質の色相の変
化、すなち色の変化の度合いを、基本的には目視で識別
して行う従来の熱履歴を評価する方法では、熱被曝量の
ある程度の定量的な知見を得ることができても、厳密な
評価には不十分であった。あるいは光学フィルターや分
光器を用いて、特定波長域の反射光の強度を検出して、
これを電気信号へ変換する定量的な評価方法も考案さ
れ、一部の分野では濃度計としての利用が行われている
が、情報伝達手法としての反射光の利用は、一般的に階
調表現に劣る点で、情報の記録および読み出し手法とし
ては必ずしも有効ではなかった。
【0012】本発明の目的は、加熱により受けた、ある
いは発熱によって生じた温度と継続時間の積分値、即ち
熱履歴を、定性かつ定量的に判定する熱履歴判定方法と
熱履歴表示ラベルを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の熱履歴判定方法
は、加熱環境下に置かれた被加熱物の熱履歴を判定する
方法である。被加熱物と共に加熱環境下に置かれた蛍光
性物質の熱変性に伴う蛍光特性の変化を定性かつ定量的
に計測する。その蛍光性物質についてはあらかじめ蛍光
特性の変化量と熱履歴との関係がデータとして計測され
ており、そのデータを基に、計測された蛍光特性の変化
から被加熱物の熱履歴を判定する。
【0014】蛍光物質の熱変性に伴う蛍光特性の変化の
計測には、蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光強度の変化を
用いてもよく、蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光波長の変
化を用いてもよい。
【0015】また、蛍光物質の熱変性に伴う蛍光特性の
変化の計測において、蛍光スペクトルが異なる複数の蛍
光性物質を同時に用い、複数の蛍光性物質の熱変性後の
各蛍光スペクトルの合成蛍光強度および蛍光波長の変化
を用いてもよい。
【0016】本発明の熱履歴表示ラベルは、熱履歴の判
定のために、加熱環境下における熱変性によって蛍光特
性の変化を生ずる化学物質が、熱履歴標識剤として利用
されている。
【0017】その熱履歴標識剤が、ラベル上の情報表示
パターンとして形成されていることが好ましい。また、
化学物質の蛍光特性の変化が蛍光強度の変化および蛍光
波長の少なくともいずれか一方の変化であることが好ま
しい。
【0018】さらに、熱的に安定な非蛍光性のインクで
印刷された情報表示パターンや熱的に安定な蛍光性物質
を用いた情報表示パターンを同時に有してもよく、粘着
材層を有してもよい。
【0019】即ち、上述の目的を達成し得る本発明の熱
履歴判定方法は、化学物質の熱変性が熱履歴に対応して
定量的に変化して蓄積される特性を利用し、その変化量
を加熱後の変性もしくは未変性の単一もしくは複数の化
学物質から発する蛍光の強度変化や蛍光スペクトルの形
状変化を計測し、あらかじめ計測されていた蛍光の強度
変化や蛍光スペクトルの波長シフト量と熱履歴との関係
を基に、蛍光の強度変化や蛍光スペクトルの波長シフト
量によって被加熱物の熱履歴を定性および定量的に判定
することを特長とする。
【0020】加熱前後で蛍光特性の変化を引き起こす化
学物質の利用によって、化学物質から放射される蛍光、
即ち発光光を熱履歴情報として利用でき、この結果反射
光を利用する場合よりもより多くの情報量を扱うことが
可能となる。熱履歴の定量的な評価は、基本的には光学
的に検出された発光光を電気信号へ変換することによっ
て行うことができ、例えば任意波長域での発光強度と熱
履歴を対応させることにより行われる。さらに、任意の
複数波長域間での蛍光強度や、これらの比較値、即ち強
度比を利用することによって、さらに多くの情報の利用
が可能となり熱履歴情報の信頼性の向上にもつながる。
【0021】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態を説明するに当
って、用いられている用語に含まれる具体的な内容を説
明する。
【0022】本発明における熱変性とは、加熱によって
引き起こされる化学物質の構造や状態の変化を指し、例
えば分解、酸化、還元、付加、異性化、重合などの化学
構造の変化を伴う化学反応や、融解、拡散、乳化、配向
などの化学反応を伴わない状態の変化を指し、加熱前後
で化学物質の発する蛍光特性に変化を与え得る構造や状
態の変化を伴うものであれば特にその様式は限定されな
い。
【0023】本発明の蛍光性物質とは、それ自身が蛍光
性を有する物質であり、熱変性によって非蛍光性物質へ
変化したり、新たな蛍光性物質へと変化する、あるいは
性状の変化によって蛍光性を示したり非蛍光性を示すよ
うに振る舞う化学物質や化学物質の組み合わせを指す
が、加熱前の化学物質自身が非蛍光性物質であっても、
熱変性によって蛍光性物質へ変化する、もしくは他の化
学物質との相互作用によって蛍光を発する状態を新たに
作りだす化学物質や化学物質の組み合わせであれば特に
限定されない。好ましくは加熱処理前後の変化がより明
確となる、蛍光強度が強い、あるいは発光波長域の変化
が加熱前後で大きく変化する化学物質であることが望ま
しい。
【0024】具体的な化学物質の例を挙げると、蛍光強
度の変化を利用する場合には、アントラセン、ベンゾフ
ェナントレン、ピレン、コロネン等が使用可能であり、
これらを単一に、あるいは複数を任意に混合して利用す
ることができる。蛍光波長の変化を利用する場合には、
p−ジフェニルベンゼン等のエチレン鎖長の異なる物質
が使用できる。
【0025】本発明で利用する蛍光特性とは、励起光を
照射した際に得られる蛍光の任意波長域での強度、蛍光
スペクトルの中心波長、蛍光色あるいは蛍光の偏向等を
指し、加熱前後でのこれらに代表される物理量の変化が
定量的に検出できれば特に限定されないが、検査が容易
である点で、任意波長域の蛍光強度あるいは任意波長域
間での蛍光の強度比の利用が好ましい。
【0026】なお、本発明において計測の対象となる化
学物質が変性する望ましい温度の範囲は、被加熱物の加
熱工程の違いで異なり限定することはできないが、例え
ば、通常の電子機器の製造工程であれば、電子部品の実
装工程、即ちはんだ付け時の約150〜400℃を指
し、プラスチック等有機材料を成形・加工する工程では
それらが軟化する約100〜350℃である。前述の通
り本発明の適応範囲はこれらの温度範囲に限定されな
い。
【0027】本発明の被加熱物の熱履歴を判定するため
に使用される蛍光性物質の利用形態は、蛍光性物質を塗
料やラベルのように被試験体へ簡便に密着させることが
できる形状および形態に加工し、これを被試験体に塗布
または貼り付けて利用することが一般的であるが、スプ
レーの様な塗布装置を利用して被加熱物の一部あるいは
広範囲に噴霧して皮膜を形成させることも可能である。
【0028】加熱処理を行った化学物質の蛍光の測定
は、被加熱物へ付着させた化学物質、あるいは熱変性に
よって2次的に形成された蛍光性物質の励起波長を含む
光、好ましくは蛍光の発光波長域の光を含まない励起光
を分光器や干渉フィルターあるいはバンドパスフィルタ
ー等を用いて取り出して被加熱物へ照射、好ましくは均
一に照射する。この際に発する蛍光を各種光検出器、例
えば光電子増倍管やフォトダイオード等を利用して任意
の波長における蛍光強度を測定したり、分光器とフォト
ダイオードアレイを併用して蛍光スペクトルを測定し、
そのスペクトル形状の変化を波長のシフト量として定量
的あるいは定性的に測定し、その変化量から加えられた
熱履歴の定量判定を行う。発光波長の異なる複数の蛍光
性物質を利用する場合は、加熱後の蛍光性物質から発す
る合成蛍光の色の変化を目視で識別することも可能であ
る。蛍光波長の変化を利用する場合は、特徴的な、例え
ば蛍光の中心波長に着目すればよく、この値が励起光の
強さには依存しないことから、照射光源の強度の厳密な
管理を必要としない。
【0029】本発明の原理を説明するために熱被曝度と
いう概念を用いる。本発明の判定の目的である熱履歴に
よる被加熱物の物性や部品としての信頼性の変化の度合
は、一般的に被加熱物が曝された温度のレベルと温度の
加えられた時間に対応し、特に被加熱物の安定温度範囲
を超える温度のレベルと温度の加えられた時間の積分量
に対応すると考えられる。この積分値を熱被曝度という
概念で表現する。具体的には判定の対象となる被加熱物
と同一の被加熱物に蛍光性物質を計測の状態に添付し、
加えられると予測される温度範囲内の複数の温度でかつ
予想される複数の継続時間および繰り返し時間で加熱
し、その結果としての蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光特
性の変化を計測して熱履歴との関係データとしておき、
この蛍光特性の変化が熱被曝度の変化に対応すると考え
て、判定の対象となる被加熱物の蛍光性物質の蛍光特性
の変化から熱履歴を判定する。さらに、この被加熱物の
加熱後の物性の変化を化学分析や不良解析によって評価
して熱履歴との相関関係を求め、熱履歴に対応する蛍光
物質の蛍光特性の変化に被加熱物質の信頼性の維持でき
るしきい値を設けることによって、簡便に信頼性の評価
を行うことも可能となる。
【0030】次に本発明の熱履歴判定方法の実施の形態
について、蛍光性物質の加熱処理後の、(1)蛍光強度
の変化を利用する場合、(2)蛍光波長の変化を利用す
る場合、(3)蛍光強度と蛍光波長の変化を利用する場
合のそれぞれについて説明する。
【0031】(1)蛍光強度の変化を利用する場合 蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光強度の変化を利用した熱
履歴の判定方法を説明する。図1は、相対蛍光強度と熱
被曝度との関係の説明図であり、(a)は熱被曝度を段
階的に変化させて加熱処理を行った後の化学物質の蛍光
スペクトルの模式的グラフ、(b)は(a)で行った加
熱処理後の任意の波長λ0 における相対蛍光強度と熱被
曝度Qとの関係を示す模式的グラフであり、(a)の横
軸は波長、縦軸は蛍光の相対強度を、(b)の横軸は熱
被曝度Q、縦軸は相対蛍光強度を表している。
【0032】図1の任意の波長λ0 において、この波長
における各加熱処理後の蛍光強度I 1 〜I3 は、それぞ
れの加熱処理で受けた熱被曝度に対応した蛍光強度が得
られるので、加えられた熱被曝度、即ち熱履歴を定量的
に推測することが可能となる。加熱後の蛍光強度は、加
熱時の温度と時間の所定の積分値が同一であれば、連続
あるいは間欠的な加熱であっても、蛍光性物質の熱分解
し得る温度以上でありさえすれば、加えられた熱被曝度
の総量が同一である限り、その値に対応した蛍光強度の
変化を再現性良く判定することが可能である。
【0033】(2)蛍光波長の変化を利用する場合 蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光波長の変化を利用した熱
履歴の判定方法を説明する。図2は、中心蛍光波長と熱
被曝度との関係の説明図であり、(a)は加熱に伴う熱
変性によって、中心波長がλ0 からλ3 へと変化する蛍
光性物質へ、段階的に異なる熱履歴を加えた前後での蛍
光スペクトルの模式的グラフ、(b)は(a)で行った
加熱処理後に得られる各蛍光スペクトルの中心波長λ
1 、λ2 、λ3 に対する熱被曝度Qとの関係を示す模式
的グラフであり、(a)の横軸は波長、縦軸は蛍光の相
対強度を、(b)の横軸は熱被曝度Q、縦軸は波長を表
している。
【0034】熱被曝度と蛍光の波長シフト量とを対応さ
せることによって熱履歴を定量的に判定することが可能
になる。波長シフト量が大きい蛍光性物質を用いれば、
蛍光の発光色の変化による簡便な熱履歴の定性判定も可
能となる。
【0035】(3)蛍光強度と蛍光波長の変化を利用す
る場合 蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光強度および蛍光波長の変
化を利用した熱履歴の判定方法について説明する。図3
は、蛍光強度および蛍光波長と熱被曝度との関係の説明
図であり、(a)は波長λa およびλb にそれぞれ蛍光
の中心波長を持ち、かつ熱安定性が異なる2種類の蛍光
性物質a,bを組み合わせて用い、これらの蛍光性物質
の加熱処理後に得られる合成蛍光スペクトルの模式的グ
ラフ、(b)は(a)で行った加熱処理後の任意の波長
λにおける相対蛍光強度と熱被曝度Qの関係を示す模式
的グラフであり、(a)の横軸は波長、縦軸は蛍光の相
対強度を、(b)の横軸は熱被曝度Q、縦軸は相対蛍光
強度を表している。
【0036】波長λa およびλb にそれぞれ蛍光の中心
波長を持ち、かつ熱安定性が異なる2種類の蛍光性物質
a,bを組み合わせて用い、これらの蛍光性物質の加熱
処理後に得られる合成蛍光スペクトルの、任意の波長λ
における蛍光強度の変化量および合成蛍光のスペクトル
の中心波長の変化量と熱被曝量とを対応させることによ
って、熱履歴を定性および定量的に判定することが可能
となる。図3(b)では相対蛍光強度と熱被曝度との関
係を示しているが、図2(b)と同様に波長と熱被曝度
との関係で熱履歴を判定することもできる。
【0037】前述の(2)の実施形態で述ベたような、
単一の蛍光性物質を利用して、同一の効果を得ようとす
る場合には、目的の蛍光特性を得る化学物質の選定が困
難となる場合が多いが、本実施の形態で説明した様な異
なる熱安定性と蛍光特性を示す複数(2種類以上)の化
学物質を組み合わせることによって、より多くの化学物
質の利用が可能になる。
【0038】次に本発明の熱履歴表示ラベルの実施の形
態について図面を参照して詳細を説明する。図4は本発
明の実施の形態の熱履歴表示ラベルの模式的斜視図であ
り、図中符号40は熱履歴表示ラベル、41は粘着材
層、42は耐熱性樹脂膜、43は情報表示パターン、4
4は剥離紙である。
【0039】図4を参照すると、本発明の熱履歴表示ラ
ベル40の基本的な実施の形態としては、被着面上に接
合するための耐熱性樹脂からなる粘着材層41が下面に
形成された耐熱性樹脂膜42と、この表面に印刷された
熱履歴標識剤を含有した情報表示パターン43から構成
されるラベルが提案される。本実施の形態は、基本的な
機能を説明するためのものであり、蛍光性の熱履歴標識
剤を含有した情報表示パターン43を有するラベルであ
れば、必ずしもこの形式に限定されるものではない。
【0040】本発明の熱履歴表示ラベル40に用いられ
る耐熱性樹脂膜42は、例えばシリコーン樹脂、ポリイ
ミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノー
ル樹脂等の耐熱性樹脂から成る薄膜が利用でき、特に2
00℃以上の高温環境での利用には、耐熱性と光透過性
に優れたシリコーンやポリイミド樹脂系の耐熱性に優れ
る樹脂の利用が望ましい。また耐熱性樹脂膜に塗布する
粘着材層41も、耐熱性の樹脂を主成分とする粘着材を
利用する。
【0041】耐熱性樹脂膜42の表面に印刷される情報
表示パターン43は、熱履歴情報を定量的かつ再現性良
く検知できれば特にその形状は限定されず、例えば熱履
歴標識ラベル40の表面全体を、熱履歴標識材料で均一
に塗布した物から、ラベル表面の一部へ一定の面積を有
する単一のバー状パターンを印刷するものや、これらを
複数配列したバーコード状のものが提案される。特に熱
履歴情報以外の、被加熱物に関する情報、例えば製造年
月日や製造番号などの補足情報を同時に管理する場合
は、非蛍光性もしくは熱的に安定な蛍光性物質からなる
パターンを共存させることも可能である。
【0042】本発明の熱履表示ラベルで利用される熱履
歴標識剤としては、加熱前後で定量的に蛍光特性が変化
する化学物質や化学物質の組み合わせであれば特に限定
されず、使用温度領域で蛍光特性が変化する化学物質を
利用できる。本発明で説明する比較的高温領域の例えば
200℃付近のでの利用では、アントラセン、メチルア
ントラセン、ベンズアントラセン、ベンゾフルオレン、
アントラミン、ベンゾフラボン、アミノアクリドン、キ
サントン、ピレン、ハルマリン、ルマジン、ベンゾピレ
ン、アミノアクリジン、アントロール、アントロン、フ
ェナントレン、ルブレン、クリセン、ケンフェロール、
フェニルナフタレン、クレゾールフタレイン、トリフェ
ニレン、チオキサントン、フェノキサジン、アントラル
フィン、N−フェニルナフチルアミン、フェナントリジ
ン等の化合物およびこれらの誘導体や支持媒体の化学構
造に修飾したものが利用でき、これらの化学物質を各種
耐熱性樹脂へ溶解又は分散させたインクを作製して、情
報表示パターン43を耐熱性樹脂膜42に印刷や塗布し
て利用する。前述の熱履歴標識材料の蛍光特性は、分散
もしくは溶解させる支持媒体や添加剤の種類や配合の違
いでも変化するので、その利用形態は限定されない。
【0043】次に、熱履歴表示ラベル40の基本的な使
用方法について説明する。本発明の熱履歴表示ラベル4
0は、耐熱性樹脂膜42の裏面に塗布された粘着材層4
1を介して、任意の加熱物表面へ接着しての利用が提案
される。何らかの理由で被試験体が熱被曝を受ける場
合、密着した熱履歴表示ラベル40は被試験体からの速
やかな熱伝導や熱源からの直接的な加熱によって、被試
験体とほぼ同等の熱履歴が加わると同時に、耐熱性樹脂
膜42の表面に印刷された熱履歴標識剤が熱履歴に対応
した熱変成を起こす。
【0044】熱履歴の検出は、室温にまで冷却した熱履
歴表示ラベル40の表面に、熱履歴標識剤が蛍光を発す
る波長域の励起光を均一に照射することによって、情報
表示パターン43から蛍光が放射され、これを任意の波
長域の光を通過させる、好ましくは励起光を含まず、蛍
光のみが選択的に得られる干渉フィルター等の波長選択
フィルターを用いて蛍光成分のみを取り出し、その全光
量もしくは任意波長域の光量を電気的信号へと変換し、
得られた値と熱被曝量とを対応させることによって熱履
歴が検知される。
【0045】
【実施例】以下に実施例により、プリント配線基板に電
子部品を実装する工程における熱履歴検査での利用を例
に挙げて、本発明の熱履歴判定方法および熱履歴表示ラ
ベルをさらに詳細に説明する。なお、本発明の請求範囲
はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】[実施例1(熱履歴判定方法)] (1)熱履歴判定用被加熱試料の調整 熱履歴判定用の蛍光性物質としてアントラセン(1重量
%)、耐熱性支持材料としてクレゾールノボラック型エ
ポキシ樹脂(82.5重量%)、硬化剤のフェノールノ
ボラック型フェノール樹脂(16.5重量%)からなる
樹脂組成物の混合物を作製し、熱履歴判定プローブとし
た。配合からなる樹脂組成物は、エポキシ樹脂にアント
ラセン結晶粉末を添加し、自動乳鉢で30分間混練して
アントラセンの結晶粉末が十分粉砕され均一に分散され
たことを確認した後、硬化剤のフェノール樹脂を添加し
て混練し、約5分間の真空脱気処理を行い、これを電子
部品である3cm角大のICチップの表面に均一に塗布
し、室温で約1週間硬化させ被加熱試料を得た。
【0047】(2)熱履歴の判定 ICチップの加熱処理は、ICチップをプリント基板に
固定した状態でIRリフロー加熱装置〔ニホンハンダ
(株)製215型〕へ挿入して行った。加熱方式として
は、連続加熱と繰り返し加熱方式の2形態で行った。
【0048】連続加熱方式では、加熱温度をはんだの融
解する温度領域として175、200、225および2
50℃に設定し、それぞれの温度帯に対し1、2、3、
5、8、10分間、ICチップを搭載したプリント配線
基板を連続的に加熱し、所定の時間が経過した時点で速
やかに取り出して室温で静置して空冷した。
【0049】繰り返し加熱方式では、連続加熱方式と同
様に加熱温度を175、200、225および250℃
に設定し、それぞれの温度帯で1分間加熱した後に取り
出して室温へ戻した後、再び加熱するという操作を2、
3、5、8および10回繰り返し、総加熱時間を連続加
熱方式と同一とした。
【0050】蛍光スペクトルの判定は、ウシオ電気
(株)製のXe−Hgランプを照射用光源として用い、
バンドパスフィルターを用いて中心波長365nm、半
値幅約10nmの照射用光源を得た。この光を光ファー
バーを用いてICチップ面に対して垂直方向から10m
mφの領域に照射し、この際に得られた蛍光を光ファイ
バーを用いて、ICチップ面に対して45゜の角から採
光し、この蛍光光を大塚電気(株)製の分光蛍光検出機
IMUC−7000を用いて計測した。照射光強度は、
バンドパスフィルターを通過した後の光を分岐した光フ
ァイバーを用いてその一部を取り出し、光電子増倍管
(浜松ホトニクス製)によって監視した。
【0051】図5は、加熱温度250℃で連続的な加熱
処理を行った後のICチップ表面に塗布したアントラセ
ンを含有したエポキシ樹脂混合物から得られた蛍光スペ
クトルの判定結果を示すグラフである。アントラセンは
加熱量の違いに対応した相対蛍光強度の変化が起きる
が、そのスペクトル形状が維持されるので任意の波長に
における蛍光強度を判定することによって、熱履歴を間
接的に推測することが可能となる。
【0052】
【表1】
【0053】表1に、410nmにおけるアントラセン
の相対蛍光強度と加熱温度および加熱時間との関係を示
す。表1から明らかなように、加熱処理後の任意の波長
で得られる蛍光強度は、熱履歴、即ち熱被曝度(加熱温
度および加熱継続時間の積分)に対応した関係にあり、
蛍光強度を判定することによって、加えられた熱被曝度
を定量的に推測することが可能となる。表1における加
熱形式の違いに起因した蛍光強度の変化率の違いは、繰
り返し加熱方式では、1分単位の加熱と冷却を繰り返す
工程の繰り返しであるために、プリント基板やICチッ
プが設定温度に達するまでの熱被曝度の損失に起因する
ためであり、本発明の熱履歴判定方法によれば、このよ
うな僅かな熱被曝度の違いをも検出することが可能とな
る。
【0054】[実施例2(熱履歴表示ラベル)]図6は
本発明の実施例2の熱履歴表示ラベルの模式的側面図、
図7は本発明の実施例2の熱履歴表示ラベルの模式的上
面図、図8は熱履歴表示ラベルから蛍光を測定するため
の、励起光照射および検出システムの模式的構成図であ
る。図中符号60は熱履歴表示ラベル、61は粘着材
層、62は耐熱性樹脂膜、63は情報表示パターン、6
4は剥離紙、65はシリコーン樹脂、66は熱履歴標識
剤、80は熱履歴表示ラベル、81はXe−Hg光源、
82はバンドパスフイルタ、83は励起光、84は蛍
光、85は波長選択フイルタ、86は光ファイバ、87
は分光器、88はコンピュータである。
【0055】図2〜図4を参照しながら、実施例2を説
明する。シリコーン樹脂(商品名:X−40−3004
H、信越化学工業社製)に対して硬化剤(商品名:CA
T−PL−50T、信越化学工業社製)を0.5重量部
添加し、均一な混練および真空脱気処理を行った後、ポ
リイミド樹脂系の耐熱性樹脂膜62(商品名:カプトン
25um、東レ・デュポン社製)の一面へ均一になるよ
うに塗布し、120℃で3分間加熱乾燥して粘着材層6
1を形成させ、その上に剥離紙64を貼り合わせた。次
に、シリコーン樹脂65(商品名:KE−1300T、
信越化学工業製)および架橋剤(商品名:CAT−13
00T、信越化学工業製)を10:1の重量比で室温で
混練した後、熱履歴標識剤66としてアントロン (和
光純薬工業(株)試薬特級)を30重量部を均一に分散
混合した後、真空脱気処理を行って情報表示用インクを
作製した。これを厚さ300μmのメタルマスクを用
い、裏面にシリコーン系の粘着材を塗布した耐熱性樹脂
膜61表面に、10mm×5mmの情報表示パターン6
3としてスクリーン印刷し、室温で一昼夜硬化させて、
20mm×30mm角の熱履歴表示ラベル60を得た。
【0056】この熱履歴表示ラベル60を、ペースト半
田を印刷した上に電子部品を密着させた10cm×15
cm角のプリント配線基板の表面へ貼り付け、これを遠
赤外線リフロー加熱装置(ニホンハンダ製、215型)
を用いて150、180、210、240、270℃の
各加熱温度で、0、2、4、6、8、10分間の加熱処
理を行った。これらの加熱処理を行った各熱履歴表示ラ
ベルを常温まで冷却した後、熱履歴表示ラベル表面へX
e−Hgランプ光源81(商品名:UXM−300Y
A、ウシオ電気製)から、バンドパスフィルター82
(山下電装製)を用いて、中心波長365nmの励起光
83を基板表面に対して垂直に照射し、その際に発した
蛍光84を、励起光の反射や迷光をカットさせる波長選
択フィルター85を介し、プリント配線基板に対して4
5度の角度から光ファイバー86を用いて分光器87
(Ocean Optics Inc.PS1000)
へ導入し、その分光スペクトルのデータをコンピュータ
88(Digital Hinote Ultra C
T475)に取り込み、波長423nmの蛍光強度を計
測した。加熱処理後の熱履歴表示ラベル60から得られ
た、蛍光強度と加熱処理条件との関係の一例を表2に示
す。
【0057】
【表2】
【0058】表2から明らかな様に、異なる加熱温度及
び処理継続時間で行った加熱処理後の熱履歴表示パター
ンへ、励起光を照射して得られた432nmでの蛍光の
相対強度は、加熱温度が高いほど、また加熱時間が長い
ほど増加し、蛍光強度の変化量は、加えられた加熱温度
と加熱時間の積、即ち熱履歴に対応することが分かる。
従って、蛍光を測定する際に照射する励起光のエネルギ
ー強度と、その際に得られる任意波長での蛍光強度の関
係を把握することによって、熱履歴を定量的に評価する
ことができる。
【0059】[実施例3(熱履歴表示ラベル)]実施例
3を、図9を参照しながら詳細を説明する。図9は本発
明の実施例3の熱履歴表示ラベルの模式的側面図であ
り、図中符号90は熱履歴表示ラベル、91は粘着材
層、92は耐熱性樹脂膜、93は熱履歴表示パターン、
94は剥離紙、65はシリコーン樹脂、96は熱履歴標
識剤、97は蛍光標準パターン、98は蛍光標準物質で
ある。
【0060】実施例2と同様の手順および材料を使用し
て耐熱性樹脂膜92の裏面に、シリコーン樹脂系の粘着
材層91を形成させた後、熱履歴標識剤96としてアン
トロンを分散させたシリコーン系樹脂95をスクリーン
印刷して、10mm×5mm角の熱履歴表示パターン9
6を形成させ、更に蛍光標準物質98としてアントラセ
ンカルボン酸(和光純薬工業製、試薬特級)を、シリコ
ーン樹脂95(商品名:KE−1300T、信越化学工
業製)および架橋剤(商品名:CAT−1300、信越化
学工業製)を実施例2と同様の配合で混練したのち真空
脱気処理を行い、30重量部の蛍光標準剤を均一に分散
させ、これを熱履歴表示パターン93と同様に、厚さ3
00μmのメタルマスクを用いて、耐熱性樹脂膜92の
表面にスクリーン印刷し、室温で一昼夜硬化させて蛍光
標準パターン97を作製し、熱履歴表示パターン93と
蛍光標準パターン97とを同時に有する熱履歴表示ラベ
ル90を作製した。
【0061】熱履歴表示ラベル90を、実施例2と同様
の手順でプリント配線基板に貼り付け、加熱後、室温ま
で冷却した熱履歴表示ラベル90に、中心波長365n
mの励起光を照射を行い、蛍光標準物質であるアントラ
センカルボン酸の蛍光中心波長465nmでの蛍光強度
(Fs)と、熱履歴標識剤であるアントロンが熱変成し
て生じるアントロールの蛍光中心波長である約423n
mでの蛍光強度(Ft)を、実施例2と同様の検出手法
で測定し、両者の蛍光強度の比であるFt/Fsを求め
た。加熱処理後の熱履歴表示ラベル90から得られた、
蛍光強度の比(Ft/Fs)と加熱処理条件との関係の
一例を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】表3からは、蛍光標準パターンから得られ
る蛍光の任意波長での相対強度と、熱履歴表示パターン
から得られる蛍光の任意波長での相対強度の比も、実施
例2と同様、加熱処理条件に対応した値が得られ、熱履
歴の定量評価への利用が可能であることが分かる。この
場合、任意波長間における蛍光の相対強度の比が、励起
光エネルギーに関係なく一定であるという特性から、実
施例2で必要とされた励起光強度の管理や励起高強度と
蛍光強度の関係を把握する必要が無く、より簡便な熱履
歴の定量測定が可能となる。
【0064】[実施例4(熱履歴表示ラベル)]図10
を参照して、実施例4を説明する。図10は本発明の実
施例4の熱履歴表示ラベルの模式的上面図であり、図中
符号100は熱履歴表示ラベル、102は耐熱性樹脂
膜、103は熱履歴表示パターン、107は蛍光標準パ
ターン、109は補足情報パターンである。
【0065】本実施例は、実施例3で説明した、熱履歴
標識剤からなる熱履歴表示パターン103と蛍光標識剤
からなる蛍光標準パターン107に加え、被加熱物の製
造年月日や製造番号などの情報を表した補足情報パター
ン109を同時に有する熱履歴表示ラベル100であ
る。補足情報パターン109は、熱履歴以外の情報を予
め熱履歴表示ラベルに組み込ませたものであり、熱的に
安定なインクあるいは熱的に安定な蛍光性物質から成
り、加熱によってそれ自体が変化しない材料で印刷され
ている。その表示形態には特に限定はないが、例えば図
10で示したバーコード等が提案される。熱履歴情報の
検知は、実施例2および3と同様の手順で行い、補足情
報には既存のバーコードリーダー等が利用できる。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように本発明の熱履歴判定
方法によれば、被加熱物に付着させた化学物質の熱変性
に伴う蛍光強度や蛍光の波長の変化量を、予め所定の条
件で計測して得た蛍光強度や蛍光の波長の変化量と熱履
歴との関係の計測データと対比することによって、簡便
かつ定量的な熱履歴の判定が可能となるという効果があ
る。
【0067】また、熱履歴の検知に、加熱処理で蛍光特
性が変化する化学物質を利用することによって、加えら
れた熱履歴を情報量が豊富な発光光を利用して定量的に
検出することが可能になることから、粘着層を有する耐
熱性樹脂膜の表面に情報表示パターンとして熱履歴標識
剤を印刷した熱履歴表示ラベルを用いることによって、
任意の場所での簡便な熱履歴の検査が可能となるという
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】相対蛍光強度と熱被曝度との関係の説明図であ
る。(a)は熱被曝度を段階的に変化させて加熱処理を
行った後の化学物質の蛍光スペクトルの模式的グラフで
ある。(b)は(a)で行った加熱処理後の任意の波長
λ0 における相対蛍光強度と熱被曝度Qとの関係を示す
模式的グラフである。
【図2】中心蛍光波長と熱被曝度との関係の説明図であ
る。(a)は加熱に伴う熱変性によって、中心波長がλ
0 からλ3 へと変化する蛍光性物質へ、段階的に異なる
熱履歴を加えた前後での蛍光スペクトルの模式的グラフ
である。(b)は(a)で行った加熱処理後に得られる
各蛍光スペクトルの中心波長λ1 、λ2 、λ3 に対する
熱被曝度Qとの関係を示す模式的グラフである。
【図3】蛍光強度および蛍光波長と熱被曝度との関係の
説明図である。(a)は波長λa およびλb にそれぞれ
蛍光の中心波長を持ち、かつ熱安定性が異なる2種類の
蛍光性物質a,bを組み合わせて用い、これらの蛍光性
物質の加熱処理後に得られる合成蛍光スペクトルの模式
的グラフである。(b)は(a)で行った加熱処理後の
任意の波長λにおける相対蛍光強度と熱被曝度Qの関係
を示す模式的グラフである。
【図4】本発明の実施の形態の熱履歴表示ラベルの模式
的斜視図である。
【図5】加熱温度250℃で連続的な加熱処理を行った
後のICチップ表面に塗布したアントラセンを含有した
エポキシ樹脂混合物から得られた蛍光スペクトルの判定
結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例2の熱履歴表示ラベルの模式的
側面図である。
【図7】本発明の実施例2の熱履歴表示ラベルの模式的
上面図である。
【図8】熱履歴表示ラベルから蛍光を測定するための、
励起光照射および検出システムの模式的構成図である。
【図9】本発明の実施例3の熱履歴表示ラベルの模式的
側面図である。
【図10】本発明の実施例4の熱履歴表示ラベルの模式
的上面図である。
【符号の説明】
40、60、80、90、100 熱履歴表示ラベル 41、61、91 粘着材層 42、62、92、102 耐熱性樹脂膜 43、63 情報表示パターン 44、64、94 剥離紙 65、95 シリコーン樹脂 66、96 熱履歴標識剤 81 Xe−Hg光源 82 バンドパスフイルタ 83 励起光 84 蛍光 85 波長選択フイルタ 86 光ファイバ 87 分光器 88 コンピュータ 93、103 熱履歴表示パターン 97、107 蛍光標準パターン 98 蛍光標準物質 109 補足情報パターン λ 波長 I 相対蛍光強度 Q 熱被曝量 τ 時間

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱環境下に置かれた被加熱物の熱履歴
    を判定する方法であって、前記被加熱物と共に加熱環境
    下に置かれた蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光特性の変化
    を定性かつ定量的に計測し、前記蛍光性物質についてあ
    らかじめ計測されていた蛍光特性の変化量と熱履歴との
    関係を基に、計測された蛍光特性の変化から前記被加熱
    物の熱履歴を判定することを特徴とする熱履歴判定方
    法。
  2. 【請求項2】 前記蛍光物質の熱変性に伴う蛍光特性の
    変化が、前記蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光強度の変化
    である、請求項1に記載の熱履歴判定方法。
  3. 【請求項3】 前記蛍光物質の熱変性に伴う蛍光特性の
    変化が、前記蛍光性物質の熱変性に伴う蛍光波長の変化
    である、請求項1に記載の熱履歴判定方法。
  4. 【請求項4】 前記蛍光物質の熱変性に伴う蛍光特性の
    変化の計測において、前記蛍光物質が、同時に用いられ
    た蛍光スペクトルが異なる複数の蛍光性物質であり、熱
    変性に伴う蛍光特性の変化が、複数の前記蛍光性物質の
    熱変性後の各蛍光スペクトルの合成蛍光強度および蛍光
    波長の変化である、請求項1に記載の熱履歴判定方法。
  5. 【請求項5】 熱履歴の判定のために、加熱環境下にお
    ける熱変性によって蛍光特性の変化を生ずる化学物質
    が、熱履歴標識剤として利用されていることを特徴とす
    る熱履歴表示ラベル。
  6. 【請求項6】 前記熱履歴標識剤が、ラベル上の情報表
    示パターンとして形成されている請求項5に記載の熱履
    歴表示ラベル。
  7. 【請求項7】 前記化学物質の蛍光特性の変化が蛍光強
    度の変化および蛍光波長の少なくともいずれか一方の変
    化である請求項5または請求項6に記載の熱履歴表示ラ
    ベル。
  8. 【請求項8】 熱的に安定な非蛍光性のインクで印刷さ
    れた情報表示パターンを同時に有する請求項6に記載の
    熱履歴表示ラベル。
  9. 【請求項9】 熱的に安定な蛍光性物質を用いた情報表
    示パターンを同時に有する請求項6または請求項8に記
    載の熱履歴表示ラベル。
  10. 【請求項10】 粘着材層を有する請求項5から請求項
    9のいずれか1項に記載の熱履歴表示ラベル。
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