JP3033841B2 - 散布式薄膜熱交換方法とその装置 - Google Patents

散布式薄膜熱交換方法とその装置

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の係る分野 本発明は熱交換器、より詳細には散布式薄膜蒸発器に
係る。
従来技術 散布式薄膜蒸発器(Trickling film evaporators、以
後TFEと略称する)は、流体と非常に薄い液体流との間
で液体流に気泡を発生することなく熱交換を行なう目的
で化学工業、農業、食品工業、空調および冷凍の分野で
広く使用されている。
従ってTFEは、気化すべき比較的大きな厚さの液相全
部が加熱壁の表面に形成される気泡巣となるボイラーと
は区別されたものである。
TFEはボイラーに比べて多くの利点がある。まず、気
泡を発生しないために加熱壁に酒石が被着するのが遅く
なる。また熱伝達レベルが高いために、操業時の熱勾配
が低く、設備の有効寿命に好結果をもたらす。最後にTF
Eは熱安定性の低い液体も気化させることができる。
但し、TFEにも2つの欠点がある。まず、TFEの先頭部
においては液体流を薄い均等層にして分配するのが困難
である。第二にこの層を破壊することなく維持し、細か
い流れにして集えることが困難であり、先頭壁に乾燥す
る領域を生じる結果となる。
TFEの実際の性能は主として2つの大きさで決定する
ことができる。第一にTFEの全容積または質量に対する
1秒あたりに気化される液体流質量である比出力によっ
てであり、比出力は容積または質量単位あたりの移動流
量によっても表される。第二に、TFEを通過する液体流
の気化画分である気化速度によってである。動作の実行
可能性と所要保守レベルも上記の大きさと比べると数量
化し難いものであるがやはり考慮に入れるべき性能要素
であり、特に汚損、付着または腐食速度についてはこれ
らの要素が重要になる。
気化すべき液体膜が流れ落ちる簡単な垂直加熱壁から
成る「基本的な」TFEは上記のような欠点を呈するので
あるが、この「基本的」TFEに対する改良が多くの特許
に記載されている。
欧州特許第221722号は流体の流れを均等に分配すると
共に熱伝達効率を高めることを目的として、その外表面
に「歯形」フィンを列状に配置して相互に組分けした垂
直流路を備え、該フィンが加熱壁に沿って流れる液体流
を分散して細かく分ける乱流促進装置となる熱交換装置
について記載している。
またWO特許82/00597号は気化速度を高めることを目的
として、流体を循環させる垂直流路を備え、該流路の外
表面にはその外表面を伝って流れる液体流の画分を永久
的に保持する貯留部を設けることによって、液体流のTF
E内滞留時間が長くなるように構成された熱交換装置に
ついて記載している。
発明の目的 上記2つの特許は部分的な解決にすぎず、所望の性能
の全てを達成し得るものではない。例えば、欧州特許第
0221722号は液体流を分散して液滴や小さな流れにする
ことによって液体流分配の規則性を改良したにすぎず、
気化速度については単純な加熱壁から成るTFEのそれと
変わらない。同様にWO特許82/00597号についても、平均
滞留時間、ひいては気化速度を高めているが、熱伝達流
の改良は行なっておらず、最大でも単純な加熱壁のそれ
と等しいにすぎない。実際、例えば椀形の小型貯留部に
たまった液体流が厚い層を形成するが、液体の熱伝導率
はTFEに使用される伝熱性材料の100分の1から500分の
1であるためにその厚い層が熱伝達に悪影響を及ぼす。
さらに小形椀の中に液体がたまることによって動作中、
特に液体が流れを停止した時に付着または汚損を生じる
危険性が高くなる。
本発明の目的は先行技術では同時に達成することので
きない次の3つの要件を同時に満足することにある。
1.高比出力 2.高気化速度(滞留時間が長いこと) 3.付着および汚損速度の低いこと。
実施例 本発明の第1の目的は、熱伝達性材料から成る実質的
に垂直の管2の内部を流れる流体1と前記管の外部を流
れ気相と接触する液体流3との間で熱交換する方法であ
って、前記液体流を、前記管と熱接触している伝熱性材
料から成る少なくとも1つの流路14によって支持案内さ
れる薄い層として重力により下降せしめ、高比出力と高
気化速度を獲得できるように前記流路を水平線に対して
連続的に傾斜していることを特徴とする。
各流路はフィンによって形成されており、フィンが外
縁部8を上へ折返した形状とすることができる。またフ
ィンは管2とその中心軸5を中心として螺旋状に配置さ
れ、管の外壁7の一部がチャネルの壁部を構成する。流
体1を管の中で循環させ、液体流3を流路上部に配設さ
れた導入口9から各流路に導入して(第2図参照)液体
流が、流路14内を自重により流れるようにし、前記流路
に導入された時点での液体流とは温度および/または組
成が異なる液体流を流路の下部に配設されている吐出口
10より各流路から回収する方法で流体1と流体流3との
間の熱交換を行なう。
本発明方法のこのような特長により、液体流が螺旋流
路14の床において物理的に案内されるため液体流を下記
の点で制御することが可能になる。
・液体流の平均速度、ひいては、TFE内の平均滞留時間
は本質的に螺旋の角度α(第2図参照)によって決定さ
れる。気化速度を高くしたい場合、または滞留時間を長
くしたい場合、角度αを例えば数度と小さくすると良
い。
・液体流を流路周辺部に集めようとする遠心力を補償す
るように流路の縦断面形状(第5a図第5b図参照)を構成
しているため、厚さの均等な薄い膜流を獲得することが
できる。但し、流路全体に均等に分配された薄膜を獲得
するためには、液体流によって流路を湿潤することも必
要条件となる。
また本発明の方法は、液体流と管内を循環する液体と
の間の熱交換を行なう液体流とフィンとの界面を想定す
るか、あるいは熱量及び物質の交換の場合の液体流と気
相との界面を想定するかに関わらず、交換用界面の大き
さを要件に適合させることが可能になる。これらの界面
の大きさはTFEの比出力に影響を及ぼす要素である。
例えば本発明による方法は、比出力と気化速度を同時
にかつ個別に最適化することを可能にする。この他にも
汚れの付着および汚損を抑制する上で非常に効果的な2
つの特長、すなわち流体流全体が均等に移動するという
ことと、液体流が停止した時TFE内に液体が残らないと
いう特長を有している。どちらの特長もTFE内での固体
堆積の危険性を低減するものである。この項の終わりに
はその他の利点についても明らかとなろう。
本発明によると、管内を循環する流体と液体流との間
の熱エネルギーの交換を下記のように両方向で行うこと
ができる。
・流体から液体流にカロリーを与える場合は、液体流の
入口温度が上昇し、気化または脱離が行なわれる。
・流体が液体流から熱を受け取る場合は、気相から液相
への凝縮または蒸気または気体の液体流への吸収が生じ
る。どちらの場合も液体流は化学反応または物理化学反
応の場になるが、これらの反応では、微細化された固相
が液体流の中に懸濁された形で存在し得る。これは微細
化された触媒等として最初に導入されているか、あるい
はTFE内で形成されるためである。
管内を循環する流体は液体、蒸気、気体の何れかでも
よく、選択的には加圧されている。また燃焼気体でもよ
く、その場合のTFEは管の径をより大きくしたものとな
ろう(第6図参照)。
本発明の方法の最も一般的な用途は冷凍および空調分
野と化学、薬学、農業食品分野であり、希薄水溶液の濃
縮、熱交換を要する気液反応、例えば塩酸気体の水への
吸収、有機化合物の酸化または水素化に関連することが
多い。後者の場合、気体流を液体流の上にある螺旋空間
12の中で液体流と反対方向に循環させるのが望ましい。
また気相を大気圧以外の圧力に維持することも可能であ
る。圧力が大気圧より低ければ脱離が容易になる。同様
に液相への揮発性化合物の吸収または維持には大気圧よ
り高い圧力が必要になる。これらの用途、特に気体・液
体間の化学反応の場合、1回だけ液体流を通過させて所
要程度の気液反応が達成されなければTFEの先頭部にお
いて液体流を再循環させることができる。
本発明の第2の目的は、上記本発明の方法を実施する
ことのできる装置および装置アセンブリを提供すること
である。
説明の明快さを期するため、上の「方法」の部分で説
明した特徴については「装置」の部分では重複を避ける
ことにする。
本発明による装置はまず下記のような装置の幾何学的
形状を決定するパラメータによって特徴づけられ、各パ
ラメータの数値は技術と化学工学とTFEの実際の使用と
に関連する各種基準によって決定される。
・流体1を循環させる中央管2は横断面を円形とするこ
とができ、その場合の外径Deは1mm〜1000mm、好適に
は、5〜100mmになる。
また断面を正方形、長方形(第3図参照)、三角形、
楕円形、平行四辺形とすることができ、その場合の大き
い方の外径Deは1mm〜2000mm、好適には5〜500mmとし
て、フィンが偽似螺旋を形成するようにする。説明上の
拘束を避けるため、「螺旋」または「螺旋形」という語
は断面が円形以外の管を取囲む偽似螺旋を有する装置も
含むものとする。
円形以外の形状とする利点は、ある種の小型化を必要
とする場合や幾何学的に拘束のある別の装置にTFEを一
体化しなければならない場合に顕著である。
・管の周りに延びる螺旋フィン4の幅Leは管の外径Deに
関係する。La:Deの比は0.05〜5、好適には0.1〜1であ
り、この比は同一のTFEにおいてその高さと共に変化し
得る。例えば高レベルの気化を伴う方法においては、TF
E上部のフィンの幅を下部のフィンの幅より大きくする
のが望ましい。その場合フィンの幅Laと管の外径Deを同
時に変えることによってTFEの長さ全体に亘って21a+De
の合計を一定に保つようにすることで円錘台形状になる
のを防止することができる。
・螺旋フィンは管から最も離れたフィン端部において角
度αの傾斜を有し、また外径Dtの円筒形TFE(第2図参
照)に関してp=π・Dt・tanαの等式を満足するピッ
チpを有する。角度αは1゜〜60゜好適には、3゜〜10
゜であり、同一のTFE内で変化させて液体流の速度を局
所的に変更することもできる。
・螺旋フィンは幅Laと管の軸と平行に測定したフィン基
部の厚さEbとが関連する。実際、フィンは液体流を支持
するだけでなく、熱の流れの全部ではないにせよその大
部分を伝達する働きもするため、管から最も遠くに位置
するフィンの端部にも熱流を伝達するためには、フィン
の基部をある程度の厚さにする必要がある。La:Ebの比
を20未満、好適には10未満にしなければならない。この
比の下限は0.5、好適には1である。これ以下になると
フィンの相対的厚さが機械的性質または熱伝達上の理由
から不適切なものになるのが普通である。
本発明によるTFEは少なくとも1つの螺旋フィンを備
えるが、生産性の理由から熱の伝達に支障のない限りフ
ィンの数を複数にする方がよい。フィンの最大数nはp/
Ebの比にほぼ等しくなる。この時ピッチpは基本的仕様
となる外径Dtおよび角度aの選択によって決定され、フ
ィン基部の厚さEbはフィンの幅Laによって決定される。
管から最も遠くに位置するフィン先端部の厚さを管軸
を含む平面において測定した数値Eeは、台形フィンの場
合のゼロから2つの連続旋回部間の距離Dsまで変化し得
る。距離Dsは「フィンのピッチ対フィン数の比」に等し
い。
螺旋フィンは管軸を含む平面に位置する母面6を変位
させることによって描かれる。この母面は全部または一
部に曲線部または直線部を含み、フィン面Sa(管軸平面
におけるフィンの断面)と母面の上部によって拘束され
る流路面Sc(流路の断面)とを形成し(第1b図参照)、
その他に管の外壁および/または次の旋回部の一部また
は下部が位置することになる(第5a図)。これら2つの
表面は、それ以外の点では等しいが表面Saが液体流量、
すなわち液体流が流路全体を占有していない場合の流路
自体の表面積Scに従って変化するため、相互に依存する
関係にあり、Sc/Saの比は、0.1〜10、好適には0.5〜5
の範囲である。
薄い層を維持しながら交換表面積を大幅に拡大し得る
(第5a図,第5b図参照)表面湿潤現象の良い面を引き出
すためには、旋回部を相互にできるだけ近接させて、数
mmから数十mm程度の間隔で配置するのが有利である。
本発明による装置は上記以外にも下記のような特徴を
有する。
・流路床に選択的に螺旋状の溝を設け、交換表面積を大
きくして液体流を薄い層の状態で流し易くすることがで
きる。また流路床の表面に着脱式の非常に細かい網を設
けるなどの方法によって該表面を粗面にし、乱流を促進
して伝達流を増大することも可能である。
・おそらくは管内の流体とは異なる流体を好適には液体
流と反対方向に循環させる中空フィン(第1c図)を用い
ることによって熱交換を増大する必要のある場合があ
る。中空フィンを管内部と連通させてもよい(第1図
d)。
・化学反応の実施に使用されるTFEのは場合、管および
/またはフィン(中空、中実を問わず)を多孔質にして
管および/またはフィンの中を循環する流体と流路内を
循環する液体との間で物質の移動が行われるようにする
こともできる。例えば、流体Aと液体Bを徐々に反応さ
せて形成と同時に抽出すべき揮発性化合物Cを形成した
い場合、流体Aを多孔質の管および/または多孔質の中
空フィンの中で循環させる一方、液体Bを螺旋流路内で
循環させる。特に流体Aの圧力に作用することによって
試薬Aを試薬Bと徐々に接触させ、揮発性化合物Cを抽
出することが可能になる。また、管を熱伝達性流体の搬
送具として作用させ、試薬Aを中空の多孔質フィン内で
のみ循環させてもよい。
・フィンの外縁部8が上へ折返された形状となるが、こ
れをフィンと一体化してもフィンに取付けてもよく、い
くつかの機能、例えば液体流を案内する機能、さらに気
流を案内する機能、TFE外部との熱接触を保証する機能
または逆にTFEを断熱する機能等を持たせることができ
る。
所望の機能に応じて外縁部を断熱性材料または熱伝達
性材料で形成し、高さを変更したり、フィンと共に剛性
を多少とも強めればよいことが理解されよう。
本発明によるTFEは管と1つまたは複数のフィンから
成り、該フィンは選択的に折返し縁部を有し、管および
フィンは熱伝導率1W・m-1・K-1以上、好適には8W・m-1
・K-1以上の材料で形成される。
フィンと折返し縁部を異なる材料で形成できるのと同
様に、管と各フィンを異なる材料で形成してもよい。こ
れらの材料は下記から選択するのが好適である。
・グラファイトおよび炭素化材料を、必ずしも最終特性
を呈さなくても機械加工、押出し等の技術により獲得さ
れる形状が保持される処理段階に到達するところまで機
械加工、好適には自動押出し等の周知技術により成形し
て、熱伝達性としたもの。・金属および合金を、機械加
工、好適には粉末金属の自動成形、焼結等の周知の方法
で成形したもの。
・熱伝達性セラミックを成形、押出し等の周知の方法に
より成形したもの。
・プラスチック材料を押出し、射出成形等の周知の方法
で成形して熱伝達性としたもの。
・熱伝達性の複合材料および多層材料を押出し、射出成
形、金型成形、引抜き成形等の周知の方法で成形したも
の。
本発明によると、各種部品、すなわち管とフィンと場
合によっては折返し縁部とを組立てることによってTFE
を獲得することができ、組立て方法は機械的手段によっ
ても、溶接、接着その他周知の組立て手段によってもよ
い。液体流と逆方向に気相を循環させたい場合、折返し
縁部をTFEの外径(TFEが円筒形の場合)と実質的に等し
い内径を有する管で構成するのが有利である。例えば、
フィンと「折返し縁部」管との間での熱接触を良くした
い場合、すなわち「折返し縁部」管が熱交換に寄与する
ようにしたい場合は、TFEを「折返し縁部」管の中に圧
入することになる。そうでない場合は内側に溝を切った
「折返し縁部」管の中にTFEを螺合させてもよいし(第
4図参照)、「折返し縁部」管の中に滑り込ませるだけ
でもよい。この場合の「折返し縁部」管はTFEとの間に
十分な間隙を有し、TFEに用いる材料と同じ材料または
断熱性材料で構成される(例えば熱収縮性プラスチック
材料から成る管または外装)。
先にも述べたように、本発明では液体流を薄い層状に
分散しようとする(本発明装置は液体流を薄い層にしな
いで使用される場合もある)が、この目的は流路の実際
の寸法だけでなく、液体流による流路の湿潤性によって
も達成される。この湿潤性を高くするためには流路床に
表面酸化等の表面処理を行なう必要が生じる。一般にTF
Eの表面の全部または一部に対して該表面の熱伝導率を
良くする処理(金属の電解メッキ)や管またはフィンの
多孔度を所用レベルに調節できるようにする処理が行わ
れる。
本発明によるTFEはそのままでも使用できるモジュー
ルであるが、その処理能力を高めるためにこのようなTF
Eモジュールを多数同時に並行して作用させるのが望ま
しい。この目的で全てのモジュールを外囲体16の中に入
れるが、この時の配置は外囲体16が円筒形の場合は密な
六角形を形成するようにする(第7a図、第7b図、第8図
参照)。これらのモジュールと関連するのが下記の手段
である。・各モジュールに液体流9を供給するために外
囲体の上部に配設される手段17; ・外囲体底部において液体流10を回収する手段18; ・好適には外囲体下部に設けられた1つのまたはそれ以
上の導入口19と、好適には外囲体の上部に設けられた1
つまたはそれ以上の排出口20と協働して気相を循環させ
るための手段; ・管の内部とフィンが中空の場合のフィンの内部とで流
体を循環させるための手段。
また、TFEモジュールの端部と端部を突合せ配置にし
て、周知の管連続手段によりそれらを整列させた状態で
固着保持することにより、流体流の滞留時間を長くする
ことも有利である。
以上に述べた本発明の利点に加えて、フィンの上を流
れる流体流の流体力学に関連する利点もいくつかある。
フィンが螺旋形状であるために液体が平行な流れとな
って流れず、実際には下記の2つの相反する現象が生じ
ることが経験的に証明されている。
・液体の軌道の実際の曲り具合による流れの遠心運動。
・内側壁部付近での局部傾斜の方が外縁部の傾斜より大
きいことによる流れの求心運動。
そのため、いろいろな流れが半径方向で相当混合され
る結果になる。
その第1の結果として装置の先頭部にフィンの幅全体
に液体を均等に分散させるための分散装置を設ける必要
がなくなる。均等性が自発的に生まれるためである。
第2の結果として、乾燥区域の出現の可能性が低減す
る。乾燥区域が生じても、液体の横方向運動によってす
ぐに「再湿潤」されるためである。
垂直壁上を水の膜が流れ落ちる場合、乾燥区域出現閾
値はレイノルド数にして液体流が徐々に消失する30前後
になる。
実施例4に述べるようにグラファイト製のフィンを備
える直径170mmの管の場合、明白な表面乾燥を生じるこ
となくレイノルド数10まで減少した。
第3の結果として、半径方向の混合により液体流のあ
らゆる部分で滞留時間が均等になり、このことは同時に
品質の定常性の要因となり、また感熱性製品の場合には
非常に有利な要因となる。
最後に第4の結果として、熱伝達性能に直接の影響を
与える熱伝達係数が増大する。
下記の実施例と添付図面は本発明を説明するものであ
り、これらを参照することで本発明の機能、実施方法お
よび利点が容易に理解できるようになるであろう。
[実験例] 実験例1 LE CARBONE LORRAINE社製含浸グラファイト円筒形ブ
ロックを機械加工してTFEを製造した。
TFEの幾何学的特徴 ・ピッチp=20mmで第5a図に示す縦断面図を有する単一
フィン形TFE。
・外径De=50mm、 ・フィン幅La=50mm ・フィン基部の厚さEb=15mm ・フィン端部の厚さEe=5mm ・螺旋角度α=2.43゜ ・流路傾斜角度β=6゜ ・高さH=800mm このTFEと同じ高さと同じ直径を有するグラファイト管
からなるTFE(指示記号0で示す)との性能比較: ・熱交換面積の増加 ・熱出力Qの増加(=h・s・△T) ・少しづつ流れる膜の厚さを通しての上と下での温度差
を示す△Tは2つのTFEにおいて同じ数値になると考え
られる。
・伝達係数hはそれぞれのTFEに関して実験的に測定し
た。液体流の速度を同じにした場合、フィン上の係数h
は垂直線上の係数h0のほぼ3倍になる(h0=1KW・m-2
K-1,h=3KW・m2・K-1)。
これは遠心力による半径方向の循環流から生じる流体
の流れが乱流混合されるためであると考えられる。従っ
て、 となる。しかしフィンの熱抵抗を考慮すると、これがゼ
ロになることはあり得ないため、上に定義したようなグ
ラファイト製フィンに対する熱出力の比は約4になる。
・気化速度 流速uを同一とし(単位m・s1)、従ってレイノルド
数を同一とした場合、フィン上を流れる液体流は、 m=ρ・u・La となるのに対し、基本的TFEの管壁を流れる液体流は、 M0=ρu・π・Deである。
・流速uを同一とする時の液体の装置内滞留時間tsは、 ・円筒形管については、 ・本発明によるTFEについては 式中のLs=旋回部の平均長(=300mm)、 α=旋回部の平均傾斜角(α=3.8゜) 結論として、垂直グラファイト壁を有するTFEから本
発明によるTFEに移行することによって、 ・比気化出力が実質的に4倍 ・気化速度が12倍 ・滞留時間が230倍 になった。
実験例2 実験例1と同じ幾何学的特徴を有するアルミニウムの
円筒形ブロックを機械加工してTFEを製造した。
その後の実験方法も実験例1に倣った。
結果として、垂直アルミニウム壁を有するTFEから本
発明のTFEに変えることによって、 ・比気化出力が7倍 ・気化速度が23倍 ・滞留時間が230倍 になった。
実験例3 第7a図と第7b図と第8図とは1組のフィン付き管を垂
直円筒ドラムに収容して成る蒸発装置の原理を示す。こ
れらの管は燃焼室から出る加熱ガスの通過によって加熱
される(ガス、燃料等による運転)。
第7b図に示すように、管はフィン縁部間に50mmの間隔
をあけながら六角形を形成するように配置される。こう
してドラムを貫通して横断面積1m2あたり29本の管が設
けられる。h=3KW・m-2・K-1,△t=5℃の時、管1mあ
たりの熱出力を求めると11.8Kwになり、全部の管の比出
力はフィンを備えない場合90Kw/m3であるのに対して340
Kw/m3となる。
実験例4 LE CARBONE LORRAINE社製含浸グラファイト円筒形ブ
ロックを機械加工してTFEを製造した。
TFEの幾何学的特徴 ・ピッチp=20mmで第1a図に示す縦断面を有する単一フ
ィン形TFE。
・外径De=170mm、 ・管壁の厚さ=10mm ・フィン幅La=52mm ・平均角α=1.64゜ ・高さ=600mm 取得結果 すなわち、比気化出力が2.3倍、気化速度が24倍にな
った。
実験例5 第6図はこのようなフィン付き管を燃焼室の壁として
使用した例を示している。その内径は150mm、高さは600
mmである。28の旋回部から成る1つの螺旋が設けられて
おり、気化目的の表面積は全体で0.90m2となっている。
実験結果に基づいて計算すると、気化出力Qが12Kwの
場合、液体膜の気化面の温度が、100℃であればグラフ
ァイト壁の内面(すなわち燃焼火炎と接触する壁面)の
温度は107℃になる。
このように温度が低いとグラファイトが損傷を受ける
ことはない。経験的に400℃前後までは過剰酸素が存在
していてもグラファイトは火炎による侵食に対する耐性
を有することが証明されている。
【図面の簡単な説明】
同じ機能を有する同様の要素については同じ参照符号を
付して示す。 第1図は管と螺旋フィン旋回部を管の垂直軸に沿って取
った断面で示す複数の部分図であり、第1a図及び第1b図
は下記の記号を表している。 De=管の外径 Dt=TFEの外径 La=フィンの幅 Eb=フィン基部の厚さ Ee=フィン先端部の厚さ Ds=連続する旋回部間の距離 Sc=流路の表面積(断面) Sa=フィンの表面(断面) 第1c図は中空フィンを概略的に示した図、第1d図は折返
し縁部の代替的形式を示している図である。 第2図は2つのフィンを有するTFEの外観図であり、螺
旋の角度αとピッチpが示されている図である。 第3図は横断面が矩形のTFEをその垂直軸に対して直角
に取った断面図である。 第4図は折返し縁部が内側に溝を切った管で構成される
TFEを垂直軸上で取った断面図である。 第5a図及び第5b図は管とフィン旋回部の一部を垂直軸上
で取った断面図を示し、第5a図は直線部分のみで構成さ
れる母面の一例を示しているのに対し、第5b図の母面は
曲線を含んでいる図である。 第6図は燃焼室壁部として使用される大径管を備えるTF
Eを示す図である。 第7a図は複数の並列TFEを含むアセンブリを垂直軸上で
取った断面で示すと共に、それらの機能方法を示してい
る図である。 第7b図は六角形状に密に配置したTFEを垂直軸に対して
直角に取った断面で示す図である。 第8図はTFEの主要部分を相互に分離して示す全体図で
あり、TFE設備一式の組立て品を示している図である。 1……流体、2……管、3……液体流、8……折返し外
縁部、9……導入口、10……吐出口、14……流路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭48−72745(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F28D 1/00 - 9/04 F28F 1/00 - 1/38

Claims (41)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱伝導性材料から成る実質的に垂直の管の
    内部を流れる流体と前記管の外部を気相と接触して流れ
    る液体流との間で熱交換する方法であって、前記液体流
    を、前記管と熱接触する熱伝導性材料から成る少なくと
    も1つの流路によって支持案内しながら薄い層として重
    力により下降せしめ、高い比出力と高い気化速度を獲得
    できるように、前記流路を水平線に対して連続的に傾斜
    させ、各流路をフィンで構成し、該フィンの外縁部を選
    択的に上方への折返し縁部とし、該フインを管およびそ
    の中心軸の周りに螺旋状に配設し、前記管の外壁の一部
    が選択的に前記流路の壁部を構成し、前記流体を管内で
    循環せしめ、流路上部に配設されている導入口から各流
    路に液体流を導入して液体流を該流路内部で重力により
    流下せしめ、各流路下部に配設されてる吐出口を通じて
    前記流路に導入された時点での液体流と温度および/ま
    たは化学組成の異なる液体流を回収することによって前
    記流体と液体流との間で加熱交換を行なうことを特徴と
    する方法。
  2. 【請求項2】前記流路に導入口から導入された時の液体
    流の温度よりも高い温度で流体を前記管の内部で循環さ
    せることにより、前記液体流に吸熱性の物理化学変化を
    生じさせる請求項1に記載の熱交換方法。
  3. 【請求項3】前記流路に導入口から導入された時の前記
    液体流の温度よりも低い温度で前記管の内部に流体を循
    環させることにより、前記液体流に発熱性の物理化学変
    化を生じさせる請求項1に記載の熱交換方法。
  4. 【請求項4】前記外部の気相が、前記液体流の流れと反
    対方向に循環して前記液体流に対する物理化学変化に寄
    与する気流である請求項2または3に記載の熱交換方
    法。
  5. 【請求項5】前記気流が、下降する体流の流れと反対方
    向に乗り越えて行く螺旋状上昇流であって気体と液体と
    の間の接触を促進する請求項4に記載の熱交換方法。
  6. 【請求項6】前記気相の圧力が大気圧と異なる請求項1
    から5のいずれか一項に記載の熱交換方法。
  7. 【請求項7】請求項1から6のいずれか一項に記載の方
    法により熱交換を実施するための装置であって、その内
    部に流体を循環させるための、横断面が円形で外径Deが
    1mmから1000mm、好適には5mmから100mmの実質的に垂直
    の管から成り、前記管が、その外側に熱伝導性材料から
    成る螺旋状フィンを水平線に対して連続的に傾斜させる
    と共に前記管と熱接触させた状態で備えており、前記フ
    ィンが流路の全部または一部を形成することにより液体
    流の薄い層を該流路内で重力により生じさせるように構
    成されて成る装置。
  8. 【請求項8】請求項1から6のいずれか一項に記載の方
    法により熱交換を実施するための装置であって、その内
    部に流体を循環させるための、横断面が非円形で正方
    形、長方形、三角形、楕円形または平行四辺形であり且
    つ最も長い方の外径Deが1mmから2000mm、好適には5mmか
    ら500mmの実質的に垂直の管を含んで成り、前記管が、
    その外側に熱伝導性材料から成る擬似螺旋形フィンを水
    平線に対して連続的に傾斜させると共に前記管と熱接触
    させた状態で備えており、前記フィンが流路の全部また
    は一部を形成することにより液体流の薄い層を該流路内
    で重力により下降させるように構成されて成る装置。
  9. 【請求項9】フィン幅Laと最大外径Deとの比が0.05〜
    5、好適には0.1〜1である請求項7または8に記載の
    装置。
  10. 【請求項10】Le:Deの比が同一装置の上部から下部に
    向かって、0.05から5まで、または5から0.05まで可変
    であり、Laおよび/またはDeが単独であるいは同時に変
    化してLa:Deの比を変化させる請求項9に記載の装置。
  11. 【請求項11】各フィンによって形成される螺旋形また
    は擬似螺旋形の、前記管から最も遠くに位置するフィン
    端部において水平線に対して測定した角度αが1゜〜60
    ゜、好適には3゜〜10゜であって同一の装置内で可変で
    ある請求項10に記載の装置。
  12. 【請求項12】フィン幅Laと管の軸および前記管の外表
    面と平行に測定したフィン基部の厚さEbとの比が0.5か
    ら20の間、好適には1から10の間で可変である請求項11
    に記載の装置。
  13. 【請求項13】前記管の軸に対して垂直の平面内で数え
    たフィンの最大数nが、前記フィンによって形成される
    螺旋または擬似螺旋のピッチと前記フィンの基部の厚さ
    Ebとの比以下である請求項12に記載の装置。
  14. 【請求項14】前記フィンの端部の厚さEeが、1つ又は
    複数のフィンに関して0から前記管の軸を含む平面で測
    定した2つの連続旋回部間の距離Dsまで可変である請求
    項13に記載の装置。
  15. 【請求項15】前記フィンの断面形状が、前記管の軸を
    含む平面において測定したフィンの表面積Saと流路の表
    面積Scとの比が0.1〜10、好適には0.5〜5となるように
    SaとScを決定している請求項14に記載の装置。
  16. 【請求項16】前記フィン表面積Saが直線部分によって
    確定されている請求項15に記載の装置。
  17. 【請求項17】前記フィン表面積Saが直線部分のみによ
    って画定されている請求項16に記載の装置。
  18. 【請求項18】前記液体流と接触する前記フィンの上部
    と選択的に管外部とに溝が切られてあって、前記液体流
    と前記流路床との間での熱交換用表面積を大きくしてい
    る請求項16に記載の装置。
  19. 【請求項19】前記フィンの上部と選択的に前記液体流
    と接触する管部分とに凹凸が設けられてあって、乱流を
    促進して移動流を増大する請求項18に記載の装置。
  20. 【請求項20】前記フィンを中空として、その中を前記
    管内を流れる前記流体と異なるものでもよい流体を前記
    液体流と反対方向に移動させ得るように構成されている
    請求項19に記載の装置。
  21. 【請求項21】前記管の材料と選択的に前記フィンの材
    料を多孔質に且つ薄膜効果を呈するものとし、前記流体
    の一部が前記管の壁および前記フィンの材料を通過し、
    物理的、化学的または物理化学的に前記液体流と作用し
    合うように構成されて成る請求項20に記載の装置。
  22. 【請求項22】前記管の材料を前記フィンの材料と異な
    るものとしてもよい請求項21に記載の装置。
  23. 【請求項23】前記上方への折返し外縁部の材料を前記
    フィンの残りの部分を構成する材料と異なるものとして
    もよく、且つ選択的に断熱性材料で形成し得る請求項22
    に記載の装置。
  24. 【請求項24】前記管と前記フィンとの材料を熱伝導率
    が1W・m-1・K-1以上、好適には、8W・m-1・K-1以上の材
    料の中から選択する請求項7から23のいずれか一項に記
    載の装置。
  25. 【請求項25】前記管および/または前記フィンの材料
    をグラファイトまたは熱伝導性の炭素化材料とする請求
    項24に記載の装置。
  26. 【請求項26】前記管および/または前記フィンの材料
    を金属または合金とする請求項24に記載の装置。
  27. 【請求項27】前記管および/または前記フィンの材料
    を熱伝導性セラミック材料とする請求項24に記載の装
    置。
  28. 【請求項28】前記管および/または前記フィンの材料
    を熱伝導性にしたプラスチック材料とする請求項24に記
    載の装置。
  29. 【請求項29】前記管および/または前記フィンの材料
    を熱伝導性の複合材料または各層材料とする請求項24に
    記載の装置。
  30. 【請求項30】前記材料が、その全ての処理段階におい
    て機械加工または押出しされることによって前記装置の
    形状を維持するようにして製造される請求項25に記載の
    装置または装置部品。
  31. 【請求項31】前記材料の機械加工または型成形、ある
    いは前記材料の金属粉の焼結によって製造される請求項
    26に記載の装置または装置部品。
  32. 【請求項32】前記材料の型成形または押出しによって
    製造される請求項27に記載の装置または装置部品。
  33. 【請求項33】前記材料の押出しまたは射出成形によっ
    て製造される請求項28に記載の装置または装置部品。
  34. 【請求項34】前記材料の押出し、射出成形、型成形ま
    たは引抜き成形のいずれかによって製造される請求項29
    に記載の装置または装置部品。
  35. 【請求項35】請求項30から34に記載の装置部品を機械
    組立て、溶接、接着のいずれかの方法によって組立てて
    成る装置。
  36. 【請求項36】上方への折返し外縁部を備えていない装
    置を上方への折返し外縁部と共に組立てて前記流路を形
    成し、また選択的に気相体積を前記装置の1つまたは複
    数のフィンの旋回部間に形成される空間に限定するよう
    にして気相を液体流と反対方向に循環させるように構成
    されて成る請求項35に記載の装置。
  37. 【請求項37】上方への折返し外縁部が選択的に内側に
    溝が切られた管であり、その内側寸法が前記装置の外側
    寸法に実質的に対応している請求項36に記載の装置。
  38. 【請求項38】前記装置の全部または一部が処理段階ま
    たは表面被覆を受けていることを特徴とする請求項30か
    ら36のいずれか一項に記載の装置。
  39. 【請求項39】前記装置の複数を相互に平行に配列して
    収容する外囲体と、 前記外囲体の上部に配設されて液体流を供給する手段
    と、 前記外囲体の下部に配設されて液体流を回収する手段
    と、 好適には外囲体底部に設けられた1つまたは複数の導入
    口と、好適には外囲体上部に設けられた1つまたは複数
    の吐出口とを含んで気相を循環させる手段と、 熱エネルギー交換能力を増加するために、前記流体を前
    記管の内部及び選択的に前記フィンの内部で循環させる
    手段とを含んで成る請求項7から29のいずれか一項に記
    載の装置の組立て品。
  40. 【請求項40】前記複数の装置が、周知の管結合手段に
    より相互に端部と端部を突合せて配置され且つ整列状態
    に維持されている請求項7から29のいずれか一項に記載
    の装置の組立て品。
  41. 【請求項41】請求項1から6のいずれか一項に記載の
    方法の、特に工業用蒸発器および空調装置における脱着
    と気化への、また気液反応器および空調装置における気
    体または蒸気の凝縮と吸収への応用法。
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