JP3032132B2 - 酸素検出素子 - Google Patents

酸素検出素子

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JP3032132B2
JP3032132B2 JP7044663A JP4466395A JP3032132B2 JP 3032132 B2 JP3032132 B2 JP 3032132B2 JP 7044663 A JP7044663 A JP 7044663A JP 4466395 A JP4466395 A JP 4466395A JP 3032132 B2 JP3032132 B2 JP 3032132B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ハロゲンイオンを含有
したアパタイト粒子を用いた酸素検出素子に関する。さ
らに詳しくは、酸素ガスとの反応性に富み、酸素検出素
子材料として好適なハロゲンイオン含有のアパタイト粒
子を用いた酸素検出素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、アパタイトの一種である水酸
アパタイト〔Ca10(PO4)6(OH)2 〕を、酸素の検出に利用
することが提案されており、このような水酸アパタイト
を用いた酸素検出素子として、例えば特公平5−150
04号公報には、カルシウム水酸アパタイトのカルシウ
ム(Ca)の一部をイットリウム(Y)に置換固溶させ
たイットリウム置換固溶カルシウム水酸アパタイト組成
物を用いたイオン導電体装置が開示されている。また、
特開平6−107404号公報には、希土類カチオン置
換固溶カルシウム−ストロンチウムオキシ水酸アパタイ
ト組成物からなるイオン導電体材料が開示されている。
【0003】上記各公報のイオン導電体装置およびイオ
ン導電体材料では、いずれも酸素を酸素イオンの状態で
検体の中を透過させて、酸素イオンの濃淡により生じる
検体の抵抗値の違いから酸素を検出している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、酸素をイオ
ンの状態で検体を透過させるには、約800℃以上の高
温にする必要があり、上記各公報のイオン導電体装置お
よびイオン導電体材料では、800℃以上に加熱するた
めのヒーター等の加熱手段が必要とされ、上記酸素検出
素子を用いた検出装置の構造が複雑なものとなるという
問題を生じている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、水酸アパ
タイトを用いた酸素検出素子について鋭意検討したとこ
ろ、ハロゲンイオン含有率を調整したアパタイト粒子を
基材とし、この基材にビスマス系化合物を含有させた酸
素検出素子が極めて有効であることを見い出し、本発明
を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明の請求項1記載の酸素検
出素子は、以上の課題を解決するために、ハロゲンイオ
ン含有のアパタイト粒子とビスマス系化合物とを含むこ
とを特徴としている。
【0007】また、本発明の請求項2記載の酸素検出素
子は、以上の課題を解決するために、請求項1に記載さ
れた酸素検出素子において、ハロゲンイオンが塩素イオ
ンまたは/および臭素イオンであることを特徴としてい
る。
【0008】上記ハロゲンイオン含有のアパタイト粒子
におけるアパタイトとしては、化学式M10(ZO4)6
2 で表される物質群が挙げられる。上記のMとして、C
a、Pb、Ba、Sr、Cd、Zn、Ni、Mg、N
a、K、Fe、Al の元素の中から少なくとも1種が選
択され、上記のZO4 として、PO4 、AsO4 、VO
4 、SiO4 またはCO3 の原子団の中から少なくとも
1種が選択され、上記Xとして、OH、F、Cl、B
r、Iの原子団の中から少なくとも1種が選択される。
【0009】上記ハロゲンイオンとして塩素イオンを含
有するアパタイト粒子は、例えば非晶質のリン酸カルシ
ウム非晶質のリン酸カルシウム(Amorphous Calcium Ph
osphate :以下、ACPと略す)微粒子を所定濃度にて
含むスラリーに、有機系分散剤を混合して混合液を得た
後、上記ACPに対して所定の添加量となる塩素イオン
を上記混合液に添加して、塩素イオンを吸着したACP
を含む懸濁液を得た後、上記懸濁液を造粒したACP造
粒物を得、続いて、上記ACP造粒物を焼成することに
より、塩素イオンの含有量が調整されたハロゲンイオン
含有のアタイト粒子として得られる。
【0010】上記塩素イオン含有量が調整されたアパタ
イト粒子としては、水酸アパタイトにおける水酸基が少
なくとも一部塩素イオンと置換された〔Ca10(PO4)6(OH)
2-xClx 〕あるいは〔Ca10(PO4)6Cl2 〕で示されるもの
がある。
【0011】上記有機系分散剤としては、焼成したとき
にガス化して消失するものであり、その水溶液が中性あ
るいはアルカリ性のものを用いる。また、上記有機系分
散剤を混合液に混合する際には、例えば塩素イオンとし
て塩化アンモニウムを添加したときに混合液が酸性とな
ることによるACPの溶解を回避するために、上記混合
液をpH7〜11に調整することが好ましい。
【0012】上記スラリーに含まれるACP粒子は、得
られた造粒物の比表面積を大きくするために粒径約 0.1
μm以下が望ましい。上記ACP粒子を含むスラリー
は、攪拌下の水酸化カルシウム懸濁液に、リン酸水溶液
の滴下によってpH11〜6に調整することにより得られ
る。
【0013】また、添加する塩素イオンとしては、水酸
基を塩素イオンに置換する反応を阻害しない、例えば塩
化アンモニウムの水溶液が好ましい。ただし、上記水溶
液は酸性を示すため、高濃度の上記水溶液をACPスラ
リー中に添加すると上記ACPが溶解するおそれがある
ので、上記水溶液の塩化アンモニウム濃度を50重量%以
下となるように調整することが望ましい。
【0014】また、ACPスラリーと上記水溶液とは、
室温条件下で混合することが望ましい。これは、室温条
件下の方がpHの調整が容易であり、また、混合中の温
度が高いとACPの成分が溶出したりして、造粒やpH
の調整が困難なものとなるからである。
【0015】一方、ACPスラリーにおけるACP微粒
子の含量を1〜90重量%の範囲で変更することにより、
所望の平均粒径を有するACP粒子を得ることができ
る。なお、ACPスラリーにおけるACP微粒子が90重
量%を越えると、ACPスラリーの粘度が高くなるので
造粒に不適となり、1重量%未満となると、ACPスラ
リーの溶媒を除去するのに手間取り、造粒化が不経済と
なる。
【0016】また、塩素イオン含有のACP粒子の造粒
法としては、得られる造粒粒子が、100μm以下の略球
状で、その比表面積を大きくでき、かつ、酸素検出素子
として、例えばシート状に成形された際に、成形体に凝
集粒子や亀裂を生じないものであれば、特に限定される
ものではないが、例えば噴霧乾燥造粒法を用いることが
でき、他にフリーズドライ後に粉砕してなる造粒法、ま
た、高速撹拌型造粒法を用いてもよい。
【0017】なお、ハロゲンイオンを臭素イオンとした
場合、上述した塩素イオン含有のACP粒子と同じ製造
方法により臭素イオン含有のACP粒子が製造される
が、塩素イオン含有のACP粒子とは異なり、製造され
る臭素イオン含有のACP粒子としては、水酸アパタイ
トにおける水酸基が一部臭素イオンと置換された〔Ca10
(PO4)6(OH)2-y Bry 〕(0<y≦2)で示されるものが
ある。
【0018】上記の焼成とは、 0.1〜5時間、酸化雰囲
気下 800〜1300℃にて加熱することにより、造粒粒子に
含まれる有機系分散剤を、酸化しガス化することにより
飛散させ消失させて除去するためのものであり、かつ、
ACPを用いた場合、上記ACPを結晶化させ、ハロゲ
ンイオン含有のアパタイトにするためのものである。
【0019】上記焼成温度が 800℃未満では、ACPの
結晶化が不十分となり、一方、上記焼成温度が1300℃を
越えると、ハロゲンイオン含有のアパタイトが分解して
しまう。
【0020】また、上記ハロゲンイオン含有のACP造
粒粒子を、酸素検出素子として用いる場合、上記造粒粒
子の平均粒径は、隣接する造粒粒子間の接触部位を確保
するために、50μm以下が望ましい。
【0021】本発明者らは、ハロゲンイオン含有のアパ
タイト粒子とビスマス系化合物とを含む酸素検出素子で
は素子本体と電極との近傍にビスマスが存在する場合
に、常温で酸素を検出することを見い出している。上記
ビスマスは、ビスマス単体でも化合物であってもよい。
【0022】上記ビスマス系化合物は、例えばハロゲン
イオン含有のアパタイト粒子を成形した素子本体の表面
に形成される一対の白金電極に含有されてもよく、この
場合、白金ペースト中にビスマスを含ませて電極を形成
する。そして、この白金電極材に対して、混入ビスマス
単体として3%以下、望ましくは1%以下の微量含まれ
ていれば、酸素濃度に応じて素子本体のインピーダンス
を良好に変化させることができる。
【0023】また、ビスマスをハロゲンイオン含有のア
パタイト粒子で形成された素子本体の少なくとも表面に
存在させれば、酸素を吸着して素子本体のインピーダン
スを変化させることができることから、上記したように
白金電極材を作成する際に、白金ペースト中にビスマス
を混入させても良く、また、素子本体形成前に、ハロゲ
ンイオン含有のアパタイト粒子中にビスマスあるいはビ
スマス化合物を混入させても良い。したがって、ビスマ
スは、酸素検出素子の表面に混在していれば、常温で酸
素を吸着して素子本体のインピーダンスを変化させるこ
とができることが判る。
【0024】また、本発明者らは、ビスマスを含む酸素
検出素子が、水分と光(紫外線)の存在下で、非常に安
定して酸素濃度を検出することができることも見い出し
ている。
【0025】このように、本発明の酸素検出素子は、常
温で酸素を安定して検出することができるので、この酸
素検出素子を検出装置に使用した場合、従来のように80
0 ℃のような高温に加熱する必要がなくなる。これによ
り、検出装置におけるヒータ等の加熱手段を無くすこと
ができるので、検出装置の構成を簡素化できる。
【0026】前記酸素検出素子における素子本体の形態
としては、ペレット型、厚膜型、薄膜型等、当該分野で
公知のいずれの形態であってもよい。ペレット型の場合
は、ハロゲンイオン含有のアパタイト粒子が所望の形状
に加圧成形される。
【0027】また、厚膜型の場合は、上述したハロゲン
イオン含有のアパタイト粒子が適当なバインダーおよび
可塑剤と共に適当な溶剤に混合され、さらに粘度調整さ
れた後、所定の厚さに塗布成型され、続いて、 500〜13
00℃にて焼成することにより、上記バインダー、可塑材
および溶剤が消失し、厚膜状の素子本体となる。
【0028】このような素子本体により酸素検出素子を
形成する場合、上記素子本体の表裏両面で一対の電極を
設けられるものであってもよく、また、絶縁基板上に上
記素子本体を設置し、上記素子本体の表面に、一対の櫛
型電極が形成されたものであってもよい。具体的には後
述する実施例の記載が参照される。
【0029】
【実施例】本発明の各実施例について図1ないし図15
に基づいて説明すれば、以下の通りである。まず、AC
P粒子を含むスラリーの製造方法について説明すると、
最初に、攪拌下の水酸化カルシウム懸濁液に、pH11付
近に至るまで2〜4倍に水で希釈したリン酸水溶液を滴
下し、続いて、5〜8倍に水で希釈したリン酸水溶液を
滴下して、上記混合溶液をpH10〜8に調整することに
より、粒径約0.1μm以下のACP微粒子を含むスラリ
ーを得た。
【0030】〔実施例1〕上記スラリーをイオン交換水
により希釈して、ACPの濃度が20重量%になるよう
に調製したACPスラリーを得た。弱アルカリ性の有機
系分散剤であるトリアクリル酸アンモニウム塩(第一工
業製薬社製、商品名:セラモD-134)を、上記ACPに対
し 0.5重量%となるように上記ACPスラリーに混入
し、さらに、塩化アンモニウムを上記ACPに対し10 m
ol%となるように上記ACPスラリーに混入し、攪拌モ
ーターで1時間攪拌して、混合物スラリーを得た。な
お、上記塩化アンモニウムは、水溶液(10重量%溶液)
の状態で添加した。
【0031】続いて、図2に示すように、ACP粒子
1、有機系分散剤2および塩化アンモニウム水溶液を含
む上記混合物スラリー3を、定量ポンプ4によりスプレ
ードライヤー(大川原化工機械社製 L−8)5に供給す
る。スプレードライヤー5のアトマイザー6を高速回転
させて、上記混合物スラリー3を、スプレードライヤー
5内の高温で乾燥した熱空気流中に噴霧することによ
り、噴霧造粒法によって造粒乾燥した。
【0032】造粒乾燥により得られた塩素イオンが吸着
されたACP造粒粒子7は、略球状であり、サイクロン
8によって、その平均粒径が10〜100 μmとなるように
分級、採取された。なお、サイクロン8により採取しき
れない超微粉体はバグフィルター(図示せず)により別
に採取された。続いて、上記ACP造粒粒子7は、酸化
雰囲気下で 800℃にて2時間焼成され、よって、上記A
CP造粒粒子7に含まれる有機系分散剤は酸化されてガ
ス化することにより蒸散・消失し、一方、上記ACP造
粒粒子7のACPが結晶化して塩素イオン含有のアパタ
イトとなり、所定濃度の塩素イオンを含有したアパタイ
ト粒子が得られた。
【0033】なお、上記スプレードライヤー5における
操作条件は次の通りである。定量ポンプ4による混合物
スラリー3のスプレードライヤー5に対する供給量は、
1〜3kg/hに設定され、エアフィルター9を介して電気
ヒーター10によって加温された乾燥用の熱空気の温度
および流量は、スプレードライヤー5における熱ガス室
11の入口温度が 200〜 250℃に、サイクロン8に繋が
るスプレードライヤー5の排出孔12における出口温度
が 100℃を常に越えるように制御され、また、アトマイ
ザー6の回転数は 10000〜37000rpmの範囲内に設定され
た。
【0034】また、上記スプレードライヤー5をよりス
ケールアップした2種のスプレードライヤー(大川原化
工機械社製 FOC-20,OD-25G、FOC-25,OC-25) を用いて、
混合物スラリー3の供給量を100kg/hrとし、他の条件は
上記と同様にACP粒子を調製したところ、上記スプレ
ードライヤー5によるACP粒子と同様のACP粒子が
得られた。
【0035】次に、前記塩化アンモニウム水溶液を上記
ACPに対し20、30、40、50、60、70、80、90、100 mo
l %となるように上記ACPスラリーにそれぞれ混入
し、以下同様に操作して、塩素イオン吸着量の異なる略
球状のACP粒子をそれぞれ得た。
【0036】このようにして得られた各ACP粒子を焼
成した後、塩素イオン含有量を、イオンクロマトグラフ
ィ(横川電機製、商品名:IC500)によりそれぞれ定量分
析し、それらの結果から、塩素イオンの添加状態に換算
した分析換算値をそれぞれ算出した。
【0037】そこで、上記各分析換算値と、それぞれに
対応する塩素イオンの添加量とを比較したところ、図3
に示すように、添加した塩素イオンが 100%吸着された
際の理論値である傾き1の直線上に上記各分析換算値が
ほぼ分布したことから、添加した塩素イオンは、塩素イ
オン含有のアパタイト粒子に対してほぼ 100%吸着され
ていることが判った。
【0038】また、塩素イオン含有量が、10〜50mol
%、60〜100 mol %となる各アパタイト粒子についてX
線回折法により分析したところ、図4および図5に示す
ように、塩素イオン含有量が増加するに伴って、ピーク
Bに対するピークAの大きさが大きくなり、これによっ
ても、塩素イオンの含有量が判る。
【0039】なお、上記実施例1の構成では、塩素イオ
ンの原料として塩化アンモニウムを用いた例を挙げた
が、上記に特に限定されることはなく、例えば塩化カル
シウムを用いることも可能である。
【0040】次に、得られた塩素イオン含有のアパタイ
ト粒子を用いた酸素検出素子について、図1および図6
ないし図8に基づいて説明する。
【0041】酸素検出素子では、 100gの塩素イオン含
有のアパタイト粒子に対し、バインダーとしてのポリビ
ニルブチラール(積水化学社製、商品名:エスレックB,
BH-3)を20〜30重量%、可塑剤としてのジエチルフタレ
ートとジブチルフタレートの混合液を20〜30重量%、溶
剤としてトルエンとエタノールの混合液を50重量%、消
泡剤(三洋化成社製、商品名:イオネットS-85)を 0.1
重量%となるようにそれぞれ加え、ボールミルにて20時
間混合して、均一な混合物を得た。
【0042】その後、上記混合物を、ロータリーエバポ
レーターにて脱泡し、ドクターブレード法によって膜厚
約 300μmのグリーンシートを得た。そのグリーンシー
トに、ビスマス(Bi)を含有する白金ペーストをスク
リーン印刷法で印刷して櫛形電極16・16を形成し
た。そして、乾燥後、4本の白金リード線17・17を
一対の電流端子と一対の電圧端子としてそれぞれ設け、
焼成して、図1に示すように、素子膜片(素子本体)1
4上に櫛形電極16・16が形成された酸素検出素子1
8を得た。
【0043】上記各櫛形電極16・16では、相互に対
抗する電極板16aが7.5対形成されている。なお、
上記電極板16aの数は、上記に限定されることはな
く、1対から10対程度形成してもよい。このとき形成
される酸素検出素子18は、上記素子膜片14の長さが
7.5 mm、幅が5.5 mm、櫛形電極16の電極板16a
の長さと幅がそれぞれ約5mmとなっている。
【0044】上記焼成の条件は、5℃/分の昇温速度に
て室温から 500℃まで昇温した後、その 500℃の状態を
2時間維持し、続いて、 500℃から 800℃まで5℃/分
の昇温速度にて昇温した後、その 800℃の状態を2時間
維持し、続いて、 800℃から室温まで5℃/分の降温速
度にて降温する。
【0045】また、図示しないが、白金リード線を1本
ずつの2端子法の酸素検出素子も作製した。この2端子
法は、通常の抵抗値の測定法であって、2端子に所定の
交流電圧が印加され、その電圧値および電流値により、
検体の抵抗値およびリアクタンスが測定される。
【0046】一方、4端子法は、つまりケルビンダブル
ブリッジ法であって、4端子の内、一対の電流端子に大
きな電流を流し、測定機内の可変標準抵抗値を可変して
検流計Gの振れが零となるようにして、検体の抵抗値お
よびリアクタンスが測定される。
【0047】上記酸素検出素子18の抵抗値およびリア
クタンスを測定する測定システムでは、図6に示すよう
に、上記酸素検出素子18を収納するためのチェンバー
20が、所定のガス雰囲気を維持できるように設けられ
ている。
【0048】また、上記測定システムでは、酸素
(O2 )40%+窒素(N2 )60%の酸素富化合成ガ
スのガスボンベ21aと、N2 ほぼ100%(99.9
999%)のガスボンベ21bと、上記各ガスボンベ2
1a・21bからのガスを混合するガスミクサ22とが
設置され、さらに、上記ガスミクサ22からのガスを乾
燥する5酸化リンを含むガスドライヤ23と、上記ガス
ミクサ22からのガスに対し加湿する加湿器24とが、
前記チェンバー20にガスを供給するように設けられて
いる。
【0049】さらに、上記チェンバー20内には、チェ
ンバー20内の温度を測定するための熱電対25と、チ
ェンバー20内に設置された被検体である酸素検出素子
18を保温するセラミックヒータ28が設けられてい
る。
【0050】よって、上記熱電対25からの信号に基づ
いて、上記セラミックヒータ28の温度を制御するため
の温度コントローラ26と、この温度コントローラ26
からの制御信号によって上記セラミックヒータ28に給
電する電源30を制御するSSR(Solid State Relay
)31とが設けられている。
【0051】また、チェンバー20内のガス組成を検出
するためのガスクロマトグラフ29が上記チェンバー2
0に接続されている一方、酸素検出素子18の抵抗値お
よびリアクタンスを測定するためのインピーダンスアナ
ライザー27が設けられている。なお、上記インピーダ
ンスアナライザー27からの測定結果を示す信号は、マ
イクロコンピューター32に入力されて記憶され分析さ
れる。
【0052】塩素イオン濃度60 mol%のアパタイト粒
子からなる酸素検出素子18について、図6に示す測定
システムを用いて、室温(25℃)での抵抗およびリアク
タンスを4端子法で測定した。それらの結果を、コール
・コールプロットにして図7に示した。なお、この測定
は、N2 100 %のガスと、O2 20%+N2 80%の混合ガ
スと、O2 40%+N2 60%の混合のガスとについて行っ
た。
【0053】次に、塩素イオン濃度60 mol%のアパタ
イト粒子からなる酸素検出素子18について、ガスミク
サ22にて、ガスボンベ21aからの酸素富化合成空気
(O2 40%+N2 60%)をガスボンベ21bからの
ほぼ100%の窒素で希釈して作ったO2 20%の合成
空気、および、窒素雰囲気を、30分毎に切り替えて2
端子法によって酸素濃度変化に対するインピーダンスの
変化を測定した。
【0054】なお、上記測定システムに用いたインピー
ダンスアナライザー27には、横河ヒューレットパッカ
ード社製のインピーダンスゲインフェイズアナライザ4
194Aを用いた。また、上記インピーダンスアナライ
ザー27は下記の条件にて測定した。
【0055】測定条件 測定周波数 100Hz、500Hz、1k
Hz 測定信号レベル 1.0V 積分時間 100msec 切替時間 30分毎 ただし、上記の測定では、上記チェンバー20に、ガス
ボンベ21aから酸素富化合成空気(O2 40%+N2
60%)と、ガスボンベ21bから窒素ガスのみ、また
はガスボンベ21a・21bとから窒素ガスに対して酸
素が20%となるように混合した混合ガスを、100m
l/minにて30分毎に切り替えて流しながら、室温
(25℃)、50%RHにて、酸素検出素子18のイン
ピーダンスを測定した。なお、酸素検出素子18の光の
影響をさけるため、図6に示すように、チェンバー20
から20cmのところに6Wのインバータ蛍光灯34を
点灯させ、それらを遮光箱35に入れておいた。
【0056】塩素イオン濃度60 mol%の酸素検出素子1
8における2端子法での測定結果を、図8に示した。図
8から、合成空気が流れている間は、いずれの測定周波
数であってもN2 ガスのみが流れている間のインピーダ
ンスよりも大きくなっていることが判る。したがって、
この結果から、塩素イオン濃度60mol %の酸素検出素子
18では、室温にて、良好な酸素検出特性を示すことが
判った。
【0057】このように、本実施例における酸素検出素
子18は、100Hz から 1kHzの測定周波数を用いて、2
端子法によりインピーダンスを測定することにより、室
温にて酸素を検出できるものである。
【0058】したがって、上記酸素検出素子18は、 1
00Hzから 1kHzの測定周波数を用いることにより、比較
的安価な回路構成とでき、その上、従来のように検出素
子を800℃以上に加熱する必要がなく、ヒーター等の加
熱手段を省くことができるから、酸素検出装置を簡素化
でき、省エネルギー化でき、かつ、コストダウンできる
ものとなっている。
【0059】なお、本実施例では、グリーンシートに白
金電極を印刷後、焼成して酸素検出素子18を形成した
例を挙げたが、上記グリーンシートをアルミナ基板等の
絶縁基板上に形成し、その上に白金電極を印刷し、それ
を焼成して酸素検出素子を形成してもよい。これによ
り、素子本体の補強、即ちグリーンシートの補強を行う
ことができる。
【0060】また、上記酸素検出素子は、 800℃以下の
温度にても、酸素を検出できるものであり、 25 ℃程度
の常温においても、酸素の検出測定可能となっている。
【0061】〔実施例2〕次に、ハロゲンイオン含有の
アパタイト粒子として、上記実施例1における塩素イオ
ンの代わりに臭素イオンを含有したアパタイト粒子を用
いて酸素検出素子を作成した場合について、図9ないし
図13に基づいて以下に説明する。
【0062】上記臭素イオン含有のアパタイト粒子は、
上記実施例1における塩素イオン含有のアパタイト粒子
と同様の装置および同様の方法にて得られる。
【0063】すなわち、ACP微粒子を含むスラリーを
イオン交換水により希釈して、ACPの濃度が20重量
%になるように調製したACPスラリーを得た。弱アル
カリ性の有機系分散剤であるトリアクリル酸アンモニウ
ム塩(第一工業製薬社製、商品名:セラモD-134)を、上
記ACPに対し 0.5重量%となるように上記ACPスラ
リーに混入し、さらに、臭化アンモニウムを上記ACP
に対し10 mol%となるように上記ACPスラリーに混入
し、攪拌モーターで1時間攪拌して、混合物スラリーを
得た。なお、上記臭化アンモニウムは、水溶液(10重量
%溶液)の状態で添加した。
【0064】続いて、図2に示すように、ACP粒子
1、有機系分散剤2および臭化アンモニウム水溶液を含
む上記混合物スラリー3を、定量ポンプ4によりスプレ
ードライヤー(大川原化工機械社製 L−8)5に供給す
る。スプレードライヤー5のアトマイザー6を高速回転
させて、上記混合物スラリー3を、スプレードライヤー
5内の高温で乾燥した熱空気流中に噴霧することによ
り、噴霧造粒法によって造粒乾燥した。
【0065】造粒乾燥により得られた臭素イオン吸着さ
れたACP造粒粒子7は、略球状であり、サイクロン8
によって、その平均粒径が10〜100 μmとなるように分
級、採取された。なお、サイクロン8により採取しきれ
ない超微粉体はバグフィルター(図示せず)により別に
採取された。続いて、上記ACP造粒粒子7は、酸化雰
囲気下で 800℃にて3時間焼成され、よって、上記AC
P造粒粒子7に含まれる有機系分散剤は酸化されてガス
化することにより蒸散・消失し、一方、上記ACP造粒
粒子7のACPが結晶化して臭素イオン含有のアパタイ
トとなり、所定濃度の臭素イオンを含有したアパタイト
粒子が得られた。
【0066】なお、上記スプレードライヤー5における
操作条件は次の通りである。定量ポンプ4による混合物
スラリー3のスプレードライヤー5に対する供給量は、
1〜3kg/hに設定され、エアフィルター9を介して電気
ヒーター10によって加温された乾燥用の熱空気の温度
および流量は、スプレードライヤー5における熱ガス室
11の入口温度が 200〜 250℃に、サイクロン8に繋が
るスプレードライヤー5の排出孔12における出口温度
が80℃を常に越えるように制御され、また、アトマイ
ザー6の回転数は 10000〜37000rpmの範囲内に設定され
た。
【0067】また、上記スプレードライヤー5をよりス
ケールアップした2種のスプレードライヤー(大川原化
工機械社製 FOC-20,OD-25G、FOC-25,OC-25) を用いて、
混合物スラリー3の供給量を100kg/hrとし、他の条件は
上記と同様にACP粒子を調製したところ、上記スプレ
ードライヤー5によるACP粒子と同様のACP粒子が
得られた。
【0068】次に、前記臭化アンモニウム水溶液を上記
ACPに対し10、20、30、40、50、60、70、80、90、10
0 mol %となるように上記ACPスラリーにそれぞれ混
入し、以下同様に操作して、臭素イオン吸着量の異なる
略球状のACP粒子をそれぞれ得た。
【0069】このようにして得られた各ACP粒子を焼
成した後、臭素イオン含有量を、イオンクロマトグラフ
ィ(横川電機製、商品名:IC500)によりそれぞれ定量分
析し、それらの結果から、臭素イオンの添加状態に換算
した分析換算値をそれぞれ算出した。
【0070】そこで、上記各分析換算値と、それぞれに
対応する臭素イオンの添加量とを比較したところ、図9
に示すように、添加した臭素イオンが 100%吸着された
際の理論値の傾き1の直線上に、上記各分析換算値は分
布せず、50%以上添加した場合、理論値のほぼ1/2
の値になるところに分布していることから、添加した臭
素イオンは、ACP粒子に対してほぼ50%吸着されて
いることが判った。
【0071】このことから、臭素イオン含有のアパタイ
ト粒子は、実施例1の図3で示す塩素イオン含有のアパ
タイト粒子のように、水酸アパタイト粒子の水酸基が全
て臭素イオンに置換されず、水酸基の一部が臭素イオン
に置換されているにすぎないことが判る。これは、臭素
イオンのイオン半径が、塩素イオンのイオン半径よりも
大きいので、水酸アパタイトの全ての水酸基と置換する
ことが困難となっているからだと考えられる。
【0072】また、臭素イオン含有量が、10〜50mol
%、50、70、90mol %となる各ACP粒子について焼成
後、X線回折法により分析したところ、図10および図
11に示すように、臭素イオン含有量が増加するに伴っ
て、ピークBに対するピークAの大きさが大きくなり、
これによっても、臭素イオンの含有量が判る。
【0073】なお、本実施例では、臭素イオンの原料と
して臭化アンモニウムを用いた例を挙げたが、上記に特
に限定されることはなく、例えば臭化カルシウムを用い
ることも可能である。
【0074】次に、得られた臭素イオン含有のアパタイ
ト粒子を用いた酸素検出素子について、図1、図6、図
12および図13に基づいて説明する。
【0075】本実施例の酸素検出素子では、上記した実
施例1での酸素検出素子18と同様にして作成される。
【0076】すなわち、本実施例の酸素検出素子では、
100gの臭素イオン含有のアパタイト粒子に対し、バイ
ンダーとしてのポリビニルブチラール(積水化学社製、
商品名:エスレックB,BH-3)を20〜30重量%、可塑剤と
してのジエチルフタレートとジブチルフタレートの混合
液を20〜30重量%、溶剤としてトルエンとエタノールの
混合液を50重量%、消泡剤(三洋化成社製、商品名:イ
オネットS-85)を 0.1重量%となるようにそれぞれ加
え、ボールミルにて20時間混合して、均一な混合物を得
た。
【0077】その後、上記混合物を、ロータリーエバポ
レーターにて脱泡し、ドクターブレード法によって膜厚
約 300μmのグリーンシートを得た。そのグリーンシー
トに、ビスマス(Bi)を含有する白金ペーストをスク
リーン印刷法で印刷して櫛形電極16・16を形成し
た。そして、乾燥後、4本の白金リード線17・17を
一対の電流端子と一対の電圧端子としてそれぞれ設け、
焼成して、図1に示すように、素子膜片(素子本体)1
4上に櫛形電極16・16が形成された酸素検出素子1
9を得た。
【0078】上記各櫛形電極16・16では、相互に対
抗する電極板16aが7.5 対形成されている。なお、上
記電極板16aの数は、上記に限定されることはなく、
1対から10対程度形成してもよい。
【0079】上記焼成の条件は、5℃/分の昇温速度に
て室温から 500℃まで昇温した後、その 500℃の状態を
2時間維持し、続いて、 500℃から 800℃まで5℃/分
の昇温速度にて昇温した後、その 800℃の状態を2時間
維持し、続いて、 800℃から室温まで5℃/分の降温速
度にて降温する。
【0080】また、図示しないが、白金リード線を1本
ずつの2端子法の酸素検出素子も作製した。この2端子
法は、通常の抵抗値の測定法であって、2端子に所定の
交流電圧が印加され、その電圧値および電流値により、
検体の抵抗値およびリアクタンスが測定される。
【0081】一方、4端子法は、つまりケルビンダブル
ブリッジ法であって、4端子の内、一対の電流端子に大
きな電流を流し、測定機内の可変標準抵抗値を可変して
検流計Gの振れが零となるようにして、検体の抵抗値お
よびリアクタンスが測定される。
【0082】上記酸素検出素子19の抵抗値およびリア
クタンスを測定する測定システムでは、図6に示すよう
に、上記酸素検出素子19を収納するためのチェンバー
20が、所定のガス雰囲気を維持できるように設けられ
ている。
【0083】また、上記測定システムでは、酸素
(O2 )40%+窒素(N2 )60%の酸素富化合成空
気のガスボンベ21aと、N2 ほぼ100%(99.9
999%)のガスボンベ21bと、上記各ガスボンベ2
1a・21bからのガスを混合するガスミクサ22とが
設置され、さらに、上記ガスミクサ22からのガスを乾
燥するガスドライヤ23と、上記ガスミクサ22からの
ガスに対し加湿する加湿器24とが、前記チェンバー2
0にガスを供給するように設けられている。
【0084】さらに、上記チェンバー20内には、チェ
ンバー20内の温度を測定するための熱電対25と、チ
ェンバー20内に設置された被検体である酸素検出素子
19を保温するセラミックヒータ28が設けられてい
る。
【0085】よって、上記熱電対25からの信号に基づ
いて、上記セラミックヒータ28の温度を制御するため
の温度コントローラ26と、この温度コントローラ26
からの制御信号によって上記セラミックヒータ28に給
電する電源30を制御するSSR(Solid State Relay
)31とが設けられている。
【0086】また、チェンバー20内のガス組成を検出
するためのガスクロマトグラフ29が上記チェンバー2
0に接続されている一方、酸素検出素子19の抵抗値お
よびリアクタンスを測定するためのインピーダンスアナ
ライザー27が設けられている。なお、上記インピーダ
ンスアナライザー27からの測定結果を示す信号は、マ
イクロコンピューター32に入力されて記憶され分析さ
れる。
【0087】臭素イオン濃度50 mol%のアパタイト粒
子からなる酸素検出素子19について、図6に示す測定
システムを用いて、室温(25℃)での抵抗およびリアク
タンスを4端子法で測定した。それらの結果を、コール
・コールプロットにして図12に示した。なお、この測
定は、N2 100 %のガスと、O2 20%+N2 80%の混合
ガスと、O2 40%+N2 60%の混合のガスとについて行
った。
【0088】次に、臭素イオン濃度50 mol%のアパタ
イト粒子からなる酸素検出素子19について、ガスミク
サ22にて、ガスボンベ21aからの酸素富化合成空気
(O2 40%+N2 60%)をガスボンベ21bからの
ほぼ100%の窒素で希釈して作ったO2 20%の合成
空気、および、窒素雰囲気を、30分毎に切り替えて2
端子法によって酸素濃度変化に対するインピーダンスの
変化を測定した。
【0089】なお、上記測定システムに用いたインピー
ダンスアナライザー27には、横河ヒューレットパッカ
ード社製のインピーダンスゲインフェイズアナライザ4
194Aを用いた。また、上記インピーダンスアナライ
ザー27は下記の条件にて測定した。
【0090】測定条件 測定周波数 100Hz、500Hz、1k
Hz 測定信号レベル 1.0V 積分時間 100msec 切替時間 30分毎 ただし、上記の測定では、上記チェンバー20に、ガス
ボンベ21aから酸素富化合成空気(O2 40%+N2
60%)と、ガスボンベ21bから窒素ガスのみ、また
はガスボンベ21a・21bとから窒素ガスに対して酸
素が20%となるように混合した混合ガスを、100m
l/minにて30分毎に切り替えて流しながら、室温
(25℃)、50%RHにて、酸素検出素子19のイン
ピーダンスを測定した。なお、酸素検出素子19の光の
影響をさけるため、図6に示すように、チェンバー20
から20cmのところに6Wのインバータ蛍光灯34を
点灯させ、それらを遮光箱35に入れておいた。
【0091】臭素イオン濃度50 mol%の酸素検出素子1
9における2端子法での測定結果を、図12に示した。
図12から、合成空気が流れている間は、いずれの測定
周波数であってもN2 ガスのみが流れている間のインピ
ーダンスよりも大きくなっていることが判る。この結果
から、臭素イオン濃度50mol %の酸素検出素子19で
は、室温にて、良好な酸素検出特性を示すことが判っ
た。
【0092】このように、本実施例における酸素検出素
子19は、100Hz から 1kHzの測定周波数を用いて、2
端子法あるいは4端子法により抵抗値またはリアクタン
スを測定することにより、室温にて酸素を検出できるも
のである。
【0093】したがって、上記酸素検出素子19は、 1
00Hzから 1kHzの測定周波数を用いることにより、比較
的安価な回路構成とでき、その上、従来の濃淡電池式の
セラミックセンサーのように検出素子を 800℃以上に加
熱する必要がなく、ヒーター等の加熱手段を省くことが
できるから、酸素検出装置を簡素化でき、省エネルギー
化でき、かつ、コストダウンできるものとなっている。
【0094】なお、本実施例では、グリーンシートに白
金電極を印刷後、焼成して酸素検出素子19を形成した
例を挙げたが、上記グリーンシートをアルミナ基板等の
絶縁基板上に形成し、その上に白金電極を印刷し、それ
を焼成して酸素検出素子を形成してもよい。これによ
り、素子本体の補強、即ちグリーンシートの補強を行う
ことができる。
【0095】また、上記酸素検出素子は、 800℃以下の
温度にても、酸素を検出できるものであり、 25 ℃程度
の常温においても、酸素の検出測定可能となっている。
【0096】さらに、本実施例では、臭素イオン含有の
アパタイト粒子によって酸素検出素子19を形成してい
る。このように、塩素イオンよりもイオン半径の大きな
臭素イオンを水酸アパタイトの水酸基と一部置換するこ
とにより、臭素イオン含有のアパタイト粒子の結晶構造
を塩素イオン含有のアパタイト粒子の結晶構造よりも歪
みが大きくなり、全体として低抵抗となり、導電率が高
くなる。
【0097】この導電率の向上によって、検出感度の向
上を図ることになるので、酸素検出素子に使用する場
合、より導電率の高い臭素イオン含有のアパタイト粒子
を使用することが望ましいことが判る。このことは、図
7および図12の抵抗・リアクタンスのコール・コール
プロットからも判る。
【0098】さらに、ハロゲンイオン含有のアパタイト
粒子を焼成した場合、臭素イオン含有のものは焼結性が
高く、塩素イオン含有のものは焼結性が低い。このた
め、酸素検出素子の強度の面からも臭素イオン含有のア
パタイト粒子を使用することが望ましいことが判る。な
お、上記焼成温度は、700 〜1300℃の範囲で行うことが
望ましい。これは、700 ℃以下ではリン酸カルシウムは
焼結せず、また、1300℃以上になると焼成されたアパタ
イトが分解するためである。
【0099】以上各実施例から、ハロゲンイオン含有の
アパタイト粒子にビスマス系化合物を含有させた酸素検
出素子を検出装置に使用すれば、常温で良好な酸素検出
特性を示すことが判った。
【0100】なお、上記各実施例の構成では、図1に示
すような櫛形電極16を設けた例を挙げたが、図14に
示すように、素子膜片14の両面に櫛形電極46aを有
する電極46・46をそれぞれ形成した酸素検出素子4
8を用いてもよい。また、図15に示すように、アパタ
イト粒子を略直方体形状に成形し焼成したペレット状の
検出素子54を形成し、その検出素子54の表面に、各
電極16を形成した酸素検出素子58を用いてもよい。
【0101】また、上記各実施例では、酸素検出素子表
面にビズマスを混在させるために、素子膜片14に接続
する白金電極16を印刷する際に、白金ペースト中にビ
スマスを混入させているが、ビスマスは素子膜片14の
表面上に存在すれば酸素に対して触媒作用として素子膜
片14の抵抗値を変化させることができるので、これに
限定するものではなく、例えばハロゲンイオン含有のア
パタイト粒子中にビスマスを混入させて、素子本体の表
面に混在させても良い。
【0102】さらに、上記各実施例では、酸素検出素子
として、塩素イオン含有のアパタイト粒子と臭素イオン
含有のアパタイト粒子とを別々に記載したが、これに限
定されず、ビスマスを含有するものであれば、他のハロ
ゲンイオンあるいは塩素イオンと臭素イオンの両イオン
を含有したアパタイト粒子を用いてもよい。
【0103】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の酸素検出素子
は、以上のように、ハロゲンイオン含有のアパタイト粒
子とビスマス系化合物とを含んだ構成である。
【0104】それゆえ、上記構成は、例えば請求項2記
載の酸素検出素子におけるハロゲンイオンが塩素イオン
または/および臭素イオンであり、且つ、ビスマス系化
合物を含むことにより、室温において酸素を検出できる
ものであり、よって、酸素検出装置に用いると、従来の
ように加熱する必要がないため、上記酸素検出装置を簡
素化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る塩素イオンまたは臭素イオンを含
有したアパタイト粒子を用いた酸素検出素子の概略構成
図である。
【図2】本発明の塩素イオン含有のアパタイト粒子を製
造する際に用いたスプレードライヤーの概略構成図であ
る。
【図3】上記塩素イオンを含有する各アパタイト粒子に
おける含有塩素イオン量と、塩素イオンの添加量との関
係を示すグラフである。
【図4】上記塩素イオンを10〜50 mol%それぞれ含有す
る各アパタイト粒子のX線回折図である。
【図5】上記塩素イオンを60〜100mol%それぞれ含有す
る各アパタイト粒子のX線回折図である。
【図6】上記酸素検出素子のインピーダンスを測定する
ための測定システムを示す構成図である。
【図7】塩素イオン濃度60 mol%の上記酸素検出素子に
おける抵抗値とリアクタンスを測定したコール・コール
プロットである。
【図8】雰囲気ガスを窒素と合成空気(酸素20%+窒
素80%)とを所定時間切り替えながら塩素イオン濃度
60 mol%の上記酸素検出素子のインピーダンスを測定し
たグラフである。
【図9】本発明の臭素イオン含有のアパタイト粒子にお
ける含有臭素イオン量と、臭素イオンの添加量との関係
を示すグラフである。
【図10】上記臭素イオンを10〜50 mol%それぞれ含有
する各アパタイト粒子のX線回折図である。
【図11】上記塩素イオンを60〜 90mol%それぞれ含有
する各アパタイト粒子のX線回折図である。
【図12】臭素イオン濃度50 mol%の酸素検出素子にお
ける抵抗値とリアクタンスを測定したコール・コールプ
ロットである。
【図13】雰囲気ガスを窒素と合成空気(酸素20%+
窒素80%)とを所定時間切り替えながら臭素イオン濃
度50 mol%の上記酸素検出素子のインピーダンスを測定
したグラフである。
【図14】上記酸素検出素子の一変形例を示す概略構成
図である。
【図15】上記酸素検出素子の他の一変形例を示す概略
構成図である。
【符号の説明】
1 ACP粒子 7 ACP造粒粒子 14 素子薄片 16 白金電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−193054(JP,A) 特開 昭62−242847(JP,A) 特開 平3−96845(JP,A) 特開 平1−290552(JP,A) 特開 昭64−28212(JP,A) 特開 平7−109113(JP,A) 特開 平7−128269(JP,A) 特開 平7−167814(JP,A) 特開 平8−239208(JP,A) 特開 昭58−84124(JP,A) 特開 昭58−84129(JP,A) 特開 昭59−227727(JP,A) 特開 昭58−32153(JP,A) 特開 昭63−163156(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/12 G01N 27/02 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ハロゲンイオン含有のアパタイト粒子とビ
    スマス系化合物とを含むことを特徴とする酸素検出素
    子。
  2. 【請求項2】上記ハロゲンイオンが、塩素イオンまたは
    /および臭素イオンであることを特徴とする請求項1記
    載の酸素検出素子。
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