JP3024987B2 - 抗体、その製造法および用途 - Google Patents

抗体、その製造法および用途

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JP3024987B2
JP3024987B2 JP2-222544A JP22254490A JP3024987B2 JP 3024987 B2 JP3024987 B2 JP 3024987B2 JP 22254490 A JP22254490 A JP 22254490A JP 3024987 B2 JP3024987 B2 JP 3024987B2
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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は新しく見出された後述の式(1)のアミノ酸
配列のうち少なくとも8個の連続したアミノ酸を含有す
るペプチドに対する抗体、ハイブリドーマ、それらの製
造法およびそれらの用途に関する。
従来の技術及び課題 上皮成長因子(epidermal growth factor,EGF)や神
経成長因子(nerve growth factor,NGF)の発見以来、
多くの細胞成長因子が単離され、その構造が明らかにさ
れている。
細胞成長因子は細胞の分化および増殖の機構の解明に
役立ち、さらにヒトEGFのように医薬として期待される
ものもあり、その研究は近年ますますさかんになるつつ
ある。
ヒトNGFについては、そのゲノムDNAは分離されてはい
るが、未だ宿主において発現されたものはなく、したが
って、ヒトNGFを大量に生産し用いる研究は、進展して
いない。
また本発明者らはヒト神経成長因子(ヒトNGF)と約6
0%の相同性を示すポリペプチド(I)をコードするcDN
AをヒトグリオーマcDNAライブラリーからクローン化し
た(特願平1−193654号、第1〜4図参照)。ポリペプ
チド(I)は分子中に式(1)で示される次のアミノ酸
配列: を含有するものである。
このポリペプチド(I)はNGFと同様の作用、および
動物細胞の分化、成長および増殖の促進、遺伝子発現の
上昇、蛋白質および酵素の誘導など、生体内で重要な機
能を有しているものと考えられ、医薬品として利用でき
る可能性が高い。
発明が解決しようとする課題 ポリペプチド(I)に関する基礎知見、例えば生体内
における分布やその産生様式、活性発現の機序等を知る
ことができれば、ポリペプチド(I)の医薬品としての
開発は容易となる。
またポリペプチド(I)の量を正確に知ることは、こ
の蛋白質を遺伝子組換え体から精製する際にも重要であ
る。
従来、神経成長因子の量は、PC12細胞に対する突起伸
長作用を測定することにより算出されてきた。また、ニ
ワトリ、後根神経節細胞に対する突起伸長作用も利用さ
れている。しかしながら、この方法は細胞を用いるため
操作が微妙で測定誤差が大きく、しかも結果を得るのに
長時間を要するという欠点を有する。従って、上記目的
のために簡便かつ正確なポリペプチド(I)の測定手段
の開発が望まれている。
課題を解決するための手段 上記実状に鑑み、本発明者らはポリペプチド(I)の
実用的な測定手段を見出すべく、種々検討した結果、そ
の測定を可能ならしめるポリペプチド(I)もしくはそ
の部分ペプチドに対する抗体を作製し、これに基づいて
さらに研究した結果、本発明を完成した。
本発明は、 (1)式(1)で表わされるアミノ酸配列のうちの連
続した少なくとも8個のアミノ酸を含有するペプチドに
対する抗体;(2)ポリクローナル抗体である、上記
(1)の抗体;(3)モノクローナル抗体である、上記
(1)の抗体;(4)式(1)で表わされるアミノ酸配
列のうちの連続した少なくとも8個のアミノ酸を含有す
るペプチドとキャリア蛋白質との複合体を免疫原として
得られる上記(1)、(2)または(3)の抗体;
(5)ペプチドが式(1)のアミノ酸配列を含有するポ
リペプチド(I)である上記(1)もしくは(4)の抗
体;(6)ペプチドが式〔2〕Tyr Ala Glu His Lys Se
r His Arg Gly Glu Tyr Ser Val Cysで表わされる配列
のうちの連続した12〜14個のアミノ酸からなるポリペプ
チド(I)の部分ペプチド、あるいは式〔3〕Cys Ala
Leu Ser Arg Lys Ile Gly Argで表わされる配列のうち
の連続した8〜9個のアミノ酸からなるポリペプチド
(I)の部分ペプチドである上記(1)もしくは(4)
の抗体;(7)式(1)で表わされるアミノ酸配列のう
ちの連続した少なくとも8個のアミノ酸を含有するペプ
チド、またはこれらとキャリア蛋白質との複合体で哺乳
動物に免疫し、ポリクローナル抗体を生成させ、これを
採取することを特徴とする、上記(2)のポリクローナ
ル抗体の製造法;(8)式(1)で表わされるアミノ酸
配列のうちの連続した少なくとも8個のアミノ酸を含有
するペプチド、またはこれらとキャリア蛋白質との複合
体で免疫した哺乳動物の脾臓細胞と、該哺乳動物のリン
パ球様細胞とからなるクローン化されたハイブリドーマ
を液体培地中または哺乳動物の腹腔内で増殖し、モノク
ローナル抗体を生成、蓄積せしめ、これを採取すること
を特徴とする、上記(3)のモノクローナル抗体の製造
法;(9)式(1)で表わされるアミノ酸配列のうちの
連続した少なくとも8個のアミノ酸を含有するペプチ
ド、またはこれらとキャリア蛋白質との複合体で免疫し
た哺乳動物の脾臓細胞と、該哺乳動物のリンパ球様細胞
とからなるクローン化されたハイブリドーマ;(10)式
(1)で表わされるアミノ酸配列のうちの連続した少な
くとも8個のアミノ酸を含有するペプチド、またはこれ
らとキャリア蛋白質との複合体で免疫した哺乳動物の脾
臓細胞と、該哺乳動物のリンパ球様細胞とを細胞融合
し、クローニングすることを特徴とする該脾臓細胞と該
リンパ球様再細胞とからなるクローン化されたハイブリ
ドーマの製造法;(11)上記(1)、(3)、(4)、
(5)または(6)の抗体を用いることを特徴とする、
ポリペプチド(I)の精製法;(12)上記(1)、
(3)、(4)、(5)または(6)の抗体を用いるこ
とを特徴とする、ポリペプチド(I)の検出・定量法で
ある。
本発明の抗体を製造するにあたっては、ポリペプチド
(I)またはその部分ペプチドを免疫原として用いるこ
とができる。
本発明におけるポリペプチド(I)としては、式
〔1〕のアミノ酸配列であるポリペプチド、式〔1〕の
アミノ酸配列のC末端にさらにスレオニン残基を有する
アミノ酸配列であるポリペプチドが挙げられる。さら
に、本発明におけるポリペプチド(I)としては、式
〔1〕のアミノ酸配列のN末端に数個のアミノ酸残基を
有するおよび/またはそのC末端に数個のアミノ酸残基
を有するポリペプチドが挙げられる。
後述の参考例において、大腸菌より発現されたポリペ
プチド(I)は、C末端にThrが付加した次のアミノ酸
配列(1′): を有するものが製造された。
また、後述の参考例において、動物細胞で発現された
ポリペプチド(I)は、アミノ酸配列(1)または
(1′)を有すると考えられる。
本発明におけるポリペプチド(I)としては、上記し
たポリペプチドの他に、同一の活性を有する上記ポリペ
プチドの一部;または上記アミノ酸配列の一部が他のア
ミノ酸もしくはアミノ酸配列で置換、付加もしくは挿入
されかつ同じ活性を有するポリペプチドも含まれる。
なお、遺伝子組換え技術を用いてポリペプチド(I)
を製造する場合に、該ポリペプチド(I)をコードする
遺伝子の上流の開始コドンATGに対応するメチオニン残
基がポリペプチド(I)のN末端に付加しているもので
もよい。
ポリペプチド(I)を得るには、例えばポリペプチド
(I)をコードするDNAを含有する発現ベクターを適当
な宿主に組み込み、得られた形質転換体を培養すること
により得られる。
上述のポリペプチド(I)をコードする塩基配列を含
有する発現型ベクターは、例えば、(イ)ポリペプチド
(I)をコードするRNAを分離し、 (ロ)該RNAから単鎖の相補DNA(cDNA)を、次いで二重
鎖DNAを合成し、 (ハ)該相補DNAをプラスミドに組み込み、 (ニ)得られた組み換えプラスミドで宿主を形質転換
し、 (ホ)得られた形質転換体を培養後、形質転換体から適
当な方法、例えばDNAプローブを用いたコロニーハイブ
リダイゼーション法、により目的とするDNAを含有する
プラスミドを単離し、 (ヘ)そのプラスミドから目的とするクローン化DNAを
切り出し、 (ト)該クローン化DNAをベクター中のプロモーターの
下流に連結する、 ことにより製造することができる。
ポリペプチド(I)をコードするRNAは種々のポリペ
プチド(I)産生細胞、例えばヒトグリオーマ細胞、下
垂体細胞あるいは線維芽細胞から得ることができる。
このようにして得られた発現ベクターを、適当な宿主
(例、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞)に組み込み、
得られた形質転換体を培養することにより、ポリペプチ
ド(I)を製造することができる。
また免疫原としてはポリペプチド(I)のアミノ酸配
列のうち連続した少なくとも8個のアミノ酸からなる部
分ペプチドを用いることが出来、例えばそのN末ペプチ
ドとして式〔2〕Tyr Ala Glu His Lys Ser His Arg Gl
y Glu Tyr Ser Val Cysで表わされる配列のうちの連続
した12〜14個のアミノ酸からなるペプチド、またC末ペ
プチドとしての式〔3〕Cys Ala Leu Ser Arg Lys Ile
Gly Argで表わされる配列のうちの連続した8〜9個の
アミノ酸からなるペプチドが挙げられる。
上記部分ペプチドは、ペプチド合成の公知の常套手段
で製造し得る。そしてそれは、固相合成法、液相合成法
のいずれによってもよい。そのようなペプチド合成の方
法として、例えば、「ザ ペプチズ(The Peptide
s)」、第1巻(1966年)、Schroder and Lubke著、Aca
demic Press,New York,U.S.A.、“ペプチド合成”、泉
屋ら著、丸善株式会社(1975年)あるいは“ペプチド合
成の基礎と実験”泉屋ら著、丸善株式会社(1985)に記
載の方法が挙げられる。
また、該部分ペプチドは、適当な酵素によりポリペプ
チド(I)を切断することにより製造してもよい。該方
法として、たとえば、“生化学実験講座1 タンパク質
の化学II"、日本生化学会編、東京化学同人(1976)の2
55ページから332ページに記載の方法が挙げられる。
該式(1)で表わされるアミノ酸配列のうちの連続し
た少なくとも8個のアミノ酸を含有するペプチドを免疫
するに際しては、ポリペプチド(I)またはその部分ペ
プチドをキャリヤー蛋白との複合体としてから、これを
免疫に用いてもよい。
該キャリアー用蛋白としては、例えば、牛血清アルブ
ミン、牛チログロブリン、牛ガンマグロブリン、ヘモシ
アニン、フロインドの完全アジュバント(ディフコ社
製)などが挙げられる。
該ペプチドとキャリアー用蛋白との結合には、公知の
常套手段を用いて実施し得る。結合に用いる試薬として
は、例えば、グルタールアルデヒド、水溶性カルボジイ
ミドなどが挙げられる。ペプチドとキャリアー用蛋白と
の使用比は、約1対1ないし約1対30(重量比)が適当
であり、特に1対15〜20が好ましく、さらに、約1:1な
いし、1:4が好ましい。反応のpHは、中性付近、特に7.3
前後が良好な結果を与える場合が多い。また、反応に要
する時間は、約2〜6時間が良い場合が多いが、特に、
約3時間が適当である。このようにして作成された複合
物は、常套手段で約4℃前後で水に対して透析し、凍結
して保存しても良いし、凍結乾燥して保存しても良い。
ポリクローナル抗体を製造するためには、以上のよう
にして製造した免疫原が、温血動物に接種される。上記
抗体の製造に用いられる温血動物としては、例えば、哺
乳温血動物(例、羊、山羊、ウサギ、ウシ、ラット、マ
ウス、モルモット、ウマ、ブタ)、鳥類(例、ニワト
リ、ハト、アヒル、ガチョウ、ウズラ)などが挙げられ
る。免疫原を、温血動物に接種する方法としては、動物
に接種する免疫原は、抗体産生をするに有効な量でよ
く、例えば、ウサギに1回1mgを1mの生理食塩水およ
びフロイントの完全アジュバントで乳化して、背部なら
びに後肢掌皮下に4週間おきに5回接種すると抗体を産
生させる場合が多い。このようにして、温血動物中に形
成された抗体を採取する方法としては、例えばウサギで
は、通常最終接種後7日から12日の間に耳静脈から採取
し、遠心分離して血清として得られる。得られた抗血清
は、通常、各抗原ペプチドを保持させた担体を用いるア
フィティクロマトグラフィーで吸着した画分を回収する
ことによりポリクローナル抗体を精製することが出来
る。
また、ミルステイン(Milstein)らの方法〔ネイチャ
ー(Nature),第256巻(1975)、第495頁〕に記載の方
法と同様の方法により得られるモノクローナル抗体も利
用できる。すなわち、上記のポリクローナル抗体の調製
法と同様に免疫された温血動物、たとえばマウスから抗
体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に
脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産
生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、本発明の
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製すること
ができる。融合操作は既知の方法、たとえばケーラーと
ミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495
(1975)〕に従い実施できる。融合促進剤としてはポリ
エチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが
挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。骨髄腫細
胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0などがあげら
れるが、特にP3U1が好ましく用いられる。用いられる抗
体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄細胞数との好ましい比
率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜P
EG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、
好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートするこ
とにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体を得るためには、ラット、マウス
を用いるのが好ましい。免疫方法は、例えばマウスを免
疫する場合、皮下、腹腔内、静脈内に(とりわけ皮下)
注入するのが好ましい。また、免疫間隔、免疫量等の可
変度は高く、種々の方法が可能であるが、例えば2週間
隔で約2〜6回免疫し、最終免疫後、約1〜5日、好ま
しくは約2〜4日後に摘出した脾臓細胞を用いる方法が
よく用いられる。免疫量は1回にペプチド量として、マ
ウス当り約0.1μg以上、好ましくは約10μg〜300μg
用いることが望ましい。又、脾臓を摘出する前に、部分
採血を行い、血中の抗体価の上昇を確認した上で脾臓細
胞を用いる融合実験を行うことが望ましい。
上記脾臓細胞とリンパ球様細胞との細胞融合は例えば
摘出したマウスの脾臓細胞を、ヒポキサンチン−グアニ
ン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損(HGPRT-
やチミンジンキナーゼ欠損(TK-)の様なマーカーを持
った適切な同種または異種(好ましくは同種)のミエロ
ーマ〔例、P3−X63−Ag・8UI(市森ら、ジャーナル・オ
ブ・イムノロジカル・メソッド(J.Immun.Method)80 5
5(1985)〕等の、リンパ球様細胞株との間で融合させ
る。例えばケラーおよびミルスタインらの方法〔ネイチ
ャー(Nature)256:495(1975)〕に準じて融合させる
ことにより製造される。たとえばミエローマ細胞と脾細
胞とを約1:5の割合で、たとえばイスコフ培地とハムF
−12培地を1:1に混合した培地(以下IH培地と称する)
に懸濁させ、センダイウイルス、ポリエチレングリコー
ル(PEG)等の融合剤が用いられる。もちろんジメチル
スルホキシド(DMSO)その他の融合促進剤を加えること
も可能である。PEGの重合度は、ふつう約1,000〜6,00
0、時間は約0.5〜30分、濃度は約10%〜80%等が用いら
れるが、好ましい条件の一例として、PEG6,000を約35〜
55%で約4〜10分処理することにより、効率よく融合さ
せることが出来る。融合細胞は、ヒポキサンチン−アミ
ノプテリン−チミジン培地〔HAT培地;ネイチャー(Nat
ure),256,495(1975)〕等を用いて、選択的に増殖さ
せることが出来る。
増殖して来た細胞の培養上清は、目的とする抗体産生
があるか否かについてスクリーニングを行うことができ
るが、抗体価のスクリーニングは次の様に行うことが出
来る。即ち、この場合には、まず第1段階として免疫し
たペプチドに対する抗体産生の有無を、ラジオイムノア
ッセイ(RIA)法またはエンザイムイムノアッセイ(EI
A)法等の方法で調べることが出来るが、これらの方法
についても種々の変法が可能である。好ましい測定法の
一例として、EIAを用いる一つの方法について述べる。
セルロースビーズ等の担体に、例えばウサギ抗マウスイ
ムノグロブリン抗体を常法に従ってカプリングさせてお
き、これに測定したい培養上清や、マウスの血清を加
え、一定時間、定温(約4〜40℃を示す。以下において
も同様。)で反応させる。この後、反応物をよく洗った
後、酵素で標識したペプチド(酵素とペプチドを常法に
従いカプリングさせた後精製)を加え、一定時間、定温
で反応させる。反応物をよく洗った後、酵素基質を加
え、一定時間、定温で反応させ、その後、生成発色物を
吸光度または蛍光度等で測定することが出来る。
選択培地で増殖を示し、かつ免疫に用いたペプチドに
対する抗体活性のみられたウエルの細胞は、限界希釈法
等によりクローニングを行うことが望ましい。クローン
化された細胞の上清について同様にスクリーニングを行
い抗体価の高いウエルの細胞を増やすことにより、免疫
したペプチドと反応性を示すモノクローナル抗体産生ハ
イブリドーマクローンが得られる。
このようにしてクローン化されたハイブリドーマを、
液体培地中で増殖させる。具体的には例えば、液体培地
たとえばRPMI−1640〔Moore,G.E.ら、ジャーナル・オブ
・アメリカン・メディカル・アソシエーション(J.Am.M
ed.Assoc.)199,549(1967)〕に約0.1〜40%の牛血清
を加えた培地等で約2〜10日間、好ましくは約3〜5日
間培養することにより、培養液から該モノクローナル抗
体を得ることができる。また哺乳動物の腹腔内に接種
し、細胞を増殖させ、腹水を採取することにより抗体を
取得することが出来る。このためには、例えばマウスの
場合、ミネラルオイル等を前もって接種したBALB/c等の
マウスに約1×104〜1×107個、好ましくは約5×105
〜2×106個のハイブリドーマを腹腔内に接種し、約7
〜20日後、好ましくは約10〜14日後に腹水液を採取す
る。腹水に生成蓄積した抗体は、例えば硫安分画、DEAE
−セルロースカラムクロマトグラフィー等により、容易
にモノクローナル抗体を純粋な免疫グロブリンとして単
離することが出来る。
このようにして式(1)で表わされるアミノ酸配列の
うちの連続した少なくとも8個のアミノ酸を含有するペ
プチドに特異的に結合するモノクローナル抗体が得られ
る。
本発明のモノクローナル抗体にあっては免疫原の式
(1)で表されるアミノ酸配列のうちの連続した少なく
とも8個のアミノ酸を含有するペプチドと特異的に結合
する。
なお、本発明のモノクローナル抗体は、製造時に用い
た免疫原のペプチドとは異なる式(1)で表わされるア
ミノ酸配列のうちの連続した少なくとも8個のアミノ酸
を含有するペプチドと結合する場合もある。
本発明のモノクローナル抗体は、免疫原ペプチドであ
る式(1)で表わされるアミノ酸配列のうちの連続した
少なくとも8個のアミノ酸を含有するペプチドに対する
モノクローナル抗体である。
本発明のモノクローナル抗体は、式(1)で表わされ
るアミノ酸配列のうちの連続した少なくとも8個のアミ
ノ酸を含有するペプチドに特異的に結合するという性質
を有する。
本発明のモノクローナル抗体は、次の性質を有する。
(a)分子量:約140〜160キロダルトン。
(b)免疫グロブリンクラスがIgMまたはIgGに属する。
上記抗体分子は、そのフラクション〔例、F(ab′)
2,Fab′もしくはFab〕であってもよい。後述の標識剤を
直接結合させる抗体分子は、Fab′であることが好まし
い。
本発明のモノクローナル抗体は、ポリペプチド(I)
に対し特異的に結合することから、ポリペプチド(I)
測定用試薬として極めて有用である。さらに生体臓器、
組織中のポリペプチド(I)の測定を容易にすること
は、ポリペプチド(I)に関する基礎知見(例えば生体
内分布)を得る上からも極めて有用である。生体臓器、
組織中のポリペプチド(I)の検出には、通常酵素免疫
測定法(EIA法)などによる定量、あるいは蛍光抗体法
やラジオイムノアッセイ法(RIA法)が用いられる。ま
たこれらの臓器、組織中に存在するポリペプチド(I)
の大きさを知るにはタンパクのウェスタンブロッティン
グ法が有効である。この方法は臓器、組織由来の粗抽出
液あるいはその部分精製試料をアクリルアミド電気泳動
した後、メンブランフィルターにトランスファーし、HR
P結合抗体で検出する。
また、中和活性のある抗体では、ポリペプチド(I)
の活性を中和させ、ポリペプチド(I)の生体での機能
を追求することも可能である。
さらに該抗体とポリペプチド(I)との結合能を利用
し、抗体アフィニティーカラムを作製してポリペプチド
(I)の精製の試薬として利用することもできる。
ポリペプチド(I)を検出、定量するために用いられ
るEIA法またはRIA法としては、例えば、精製した抗体を
0.1〜10μg/ウエル、96穴プラスチックブレート(例え
ばヌンク社、デンマークのイムノプレート)、ガラスビ
ーズ、プラスチックビーズなどの担体に固定する。固定
は、プラスチックの場合約4℃、一夜または室温で約0.
5〜4時間反応させることにより行われる。ガラスの場
合、例えばプロシージングス ナショナル オブ ザ
アカデミー オブ サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA),第80巻、第3513〜3516頁(1983年)に記載したよ
うな方法で固定する。その他、抗体固定のための各種プ
レート(前述、ヌンク社等)の市販されているものを使
うこともできる。
以上のようにして抗体を固定したプレート又はビーズ
に抗原ポリペプチド(I)を含む溶液を加え吸着反応を
行う。吸着反応は室温で約0.2〜2時間で行われること
もあるが、約4℃、一夜が望ましい。
抗原−抗体の結合反応の後、標識剤を結合させた抗体
を加え吸着反応を行う。標識剤としては、放射性同位元
素、酵素、蛍光物質、発光物質などが挙げられるが、酵
素を用いるのが好ましい。酵素としては、安定で比活性
の大きなものが好ましく、ペルオキシダーゼ、アルカリ
ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコー
スオキシダーゼ等を用いることができるが、ペルオキシ
ダーゼが好ましい。ペルオキシダーゼとしては、種々の
起源のものを用いることができるが、その例としてはた
とえば西洋わさび、パイナップル、イチジク、甘諸、ソ
ラマメ、トウモロコシなどから得られるペルオキシダー
ゼが挙げられ、特に西洋わさびから抽出されたホースラ
ディッシュ ペルオキシダーゼ(horseradish peroxida
se)(HRP)が好ましい。
ペルオキシダーゼと抗体を結合するにあたり、抗体分
子としてのFab′のチオール基を利用するために、あら
かじめペルオキシダーゼにマレイミド基を導入したもの
を用いると好都合である。
マレイミド基をペルオキシダーゼに導入する方法とし
ては、ペルオキシダーゼのアミノ基を介してマレイミド
基を導入することができる。そのためにはN−サクシニ
ミジル−マレイミド−カルボキシレート誘導体を用いる
ことができ、好ましくはN−(γ−マレイミドブチルオ
キシ)サクシイミド(GMBSと略称することもある)など
が良い。従って、マレイミド基とペルオキシダーゼとの
間に一定の基がはいっていることとなってもよい。
GMBSをペルオキシダーゼに反応させるには、両者をpH
約6ないし8の緩衝液中で約10ないし50℃の温度で約10
分ないし24時間反応させることによって行われる。該緩
衝液としては、たとえば、pH7.0の0.1Mリン酸緩衝液な
どが挙げられる。このようにして得られたマレイミド化
ペルオキシダーゼは、たとえば、ゲルクロマトグラフィ
ーなどにより精製することができる。該ゲルクロマトグ
ラフィーを行う際に用いられる担体としては、例えば、
セファデックスG−25〔ファルマシア・ファインケミカ
ル社(スエーデン)製)〕、バイオゲルP−2〔バイオ
ラッド・ラボラトリーズ社(米国)製)〕などが挙げら
れる。
マレイミド化ペルオキシダーゼと抗体分子との反応
は、両者を緩衝液中で約0℃ないし40℃の温度で、約1
ないし48時間反応させることにより行うことができる。
該緩衝液としては、例えば、pH6.0の5mMエチレンジアミ
ン四酢酸ナトリウム塩を含む0.1Mリン酸緩衝液などが挙
げられる。このようにして得られたペルオキシダーゼ標
識抗体は、例えばゲルクロマトグラフィーなどにより精
製することができる。該ゲルクロマトグラフィーを行う
際に用いられる担体としては、例えば、セファデックス
G−25〔ファルマシア・ファインケミカル社(スエーデ
ン)製)〕、バイオゲルP−2〔バイオラッド・ラボラ
トリーズ社(米国)製〕などが挙げられる。
さらにペルオキシダーゼにチオール基を導入し、マレ
イミド化された抗体分子と反応させても良い。
ペルオキシダーゼ以外の酵素を抗体に直接結合させる
には、ペルオキシダーゼの場合に準じて行うことがで
き、また、自体公知のグルタルアルデヒド法、過ヨウ素
酸法、水溶性カルボジイミド法などが用いられる。
酵素標識のものについては、反応基質、例えばHRPの
場合2,2′−ジアジノ−ジ−〔3−エチルベンゾチアゾ
リンスルフォネート(6)〕〔2,2′−Adino−di(3−
ethyl benzothiazoline sulfonate(6)〕などを加え
発色させ吸光度を測定する。放射標識のものは、非結合
の放射活性をシンチレーションカウンターで測定する。
サンプルの吸光度または放射活性を既知の量のポリペプ
チド(I)に対する値と比較することによって定量する
ことができる。
後述の2種の抗体で抗原をはさみ込むサンドイッチEI
A法の他にも自体公知の競合的EIA法、間接的EIA法が行
なわれる。競合的EIA法としては、抗体を担体に固定
し、酵素または放射標識した抗原ポリペプチド(I)と
被検試料とを加えて、反応させ定量する。反応条件、標
識量の測定は、上述と同様に行なわれる。間接的EIA法
としては、被検試料と固定していない抗体とを反応さ
せ、未吸着の抗体を抗原固定のプレートと抗マウス標識
抗体によって定量する。反応条件、標識量の測定は、上
述と同様に行なわれる。
本発明のポリペプチド(I)の検出・定量等の測定系
における被検試料としては、尿、血清、血漿、髄液等の
体液、あるいは、動物細胞や菌体の抽出液またはその培
養上清が挙げられる。
本発明の測定方法の例として、標識剤がペルオキシダ
ーゼの場合について以下に具体的に説明するが、ペルオ
キシダーゼに限定されるものではない。
まず、:担体に保持された抗体に測定すべきポリペ
プチド(I)含有の分析対象物を加えて抗原抗体反応を
行った後、これに前記で得られたペルオキシダーゼと抗
体との結合物を加えて反応させる。
この本測定系における被検試料としては、尿、血清、
血漿、髄液等の体液、あるいは、動物細胞や菌体の抽出
液またはその培養上清が挙げられる。
ポリペプチド(I)の測定方法において用いられる担
体上に保持された抗体における担体としては、例えば、
ゲル粒子(例、アガロースゲル〔例、セファロース4B、
セファロース6B(ファルマシア・ファインケミカル社
(スエーデン)製)〕、デキストランゲル〔例、セファ
デックスG−75、セファデックスG−100、セファデッ
クスG−200(ファルマシア・ファインケミカル社(ス
エーデン)製)〕、ポリアクリルアミドゲル〔例、バイ
オゲルP−30、バイオゲルP−60、バイオゲルP−100
(バイオラッド・ラボラトリーズ社(米国)製〕、セル
ロース粒子〔例、アビセル(旭化成製)、イオン交換セ
ルロース(例、ジエチルアミノエチルセルロース、カル
ボキシメチルセルロース)〕、物理的吸着剤〔例、ガラ
ス(例、ガラス球、ガラスロッド、アミノアルキルガラ
ス球、アミノアルキルガラスロッド)、シリコン片、ス
チレン系樹脂(例、ポリスチレン球、ポリスチレン粒
子)、イムノアッセイ用プレート(例、ヌンク社(デン
マーク)製)〕、イオン交換樹脂{例、弱酸性陽イオン
交換樹脂〔例、アンバーライトIRC−50(ローム・アン
ド・ハース社(米国)製)、ゼオカーブ226(パームチ
ット社(西ドイツ)製)〕、弱塩基性陰イオン交換樹脂
〔例、アンバーライトIR−4B、ダウエックス3(ダウケ
ミカル社(米国)製)〕}などが挙げられる。
担体に抗体を保持させるには、公知の常套手段を応用
し得るが、例えば、“代謝”、第8巻(1971年)、第69
6頁に記載されているブロムシアン法、グルタールアル
デヒド法などが挙げられる。また、より簡便な方法とし
て物理的に担体表面に吸着させてもよい。
:で得られた反応生成物にペルオキシダーゼの基
質を加え、生じた物質の吸光度もしくは蛍光強度を測定
することにより上記の反応生成物の酵素活性を知る。
:上記〜の操作を既知量のポリペプチド(I)
の標準溶液に対してあらかじめ行い、ポリペプチド
(I)の吸光度もしくは蛍光強度との関係を標準曲線と
して作成しておく。
:未知量のポリペプチド(I)を含む分析対象物
(被検試料)について得られた吸光度もしくは蛍光強度
を標準曲線にあてはめ、分析対象物中のポリペプチド
(I)の量を測定する。
また、上記抗体はWesternブロッティング〔W.N.Burne
tte,アナリティカル バイオケミストリー(Analytical
Biochemistry),112,195(1981)〕によるポリペプチ
ド(I)の検出・定量に利用することができる。
以下にWesternブロッティングの具体例を示す。
ポリペプチド(I)を含む試料を、例えばsample buf
fer〔U.K.Laemmli,ネイチャー(Nature),227,680(19
70)〕に溶解する。この場合、還元剤として2−メルカ
プトエタノールを加える場合(還元条件下)と加えない
場合(非還元条件下)があり、そのいずれでもよい。こ
の溶液を約100℃で5分間加熱したのち、電気泳動にか
ける。電気泳動としては、蛋白質が分離できるものなら
何でも良く、具体的には例えばSDSを含むポリアクリル
アミドゲル電気泳動などが挙げられる。泳動後のゲルか
ら蛋白質をニトロセルロース膜に移す。この方法自体は
公知であり、例えば、Burnetteの方法〔アナリティカル
バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),1
12,195(1981)〕などが挙げられる。次にニトロセルロ
ース膜のポリペプチド(I)を免疫学的方法で検出す
る。即ち、ニトロセルロース膜を例えば3%ゼラチン溶
液でブロッキングしたのち、第1抗体反応を行う。第1
抗体として用いる抗体としては抗血清でも精製したもの
でも良いが、精製したものの方が好ましい。ブロッキン
グ後の第1抗体反応の条件としては、該膜上のポリペプ
チド(I)が第1抗体と結合できる条件であれば何でも
良く、例えば室温で約4〜16時間で行う。上記の第1抗
体反応ののち、第2抗体反応を行う。用いる第2抗体と
しては、第1抗体と結合でき、かつ検出が可能なもので
あれば何でも良く、例えば、標識酵素と結合したIgGな
どが挙げられる。標識酵素の具体例としては、ホースラ
ディシュパーオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスフ
ァターゼなどが挙げられる。第2抗体反応の条件として
は第1抗体に第2抗体が結合できる条件であれば何でも
良く、例えば室温で約1時間行う。上記の第2抗体反応
の後、発色を行い、ニトロセルロース膜上のポリペプチ
ド(I)のバンドを検出する。上記のWesternブロッキ
ングでは、約50ng以上のポリペプチド(I)であれば検
出が可能であり、種々の量のポリペプチド(I)のバン
ドの濃さと、被検体のバンドの濃さを比較することによ
って被検体中のポリペプチド(I)を定量することもで
きる。なお上記の第1抗体の代わりに、例えば、抗体と
HRPとの複合体を用いても良い。
ポリペプチド(I)の精製のためには、精製した当該
抗体を例えば活性化したアガロースゲルビーズの様な適
切な担体に常法に従ってカプリングさせた後、カラムに
充め、培養上清或いは破さいした菌体等の粗ポリペプチ
ド(I)を含む資料を抗体カラムにかけ、吸着させた
後、洗浄し、その後例えばKSCN(チオシアン酸カリウ
ム)の様なカオトロピック試薬、或いはポリペプチド
(I)の失活のない程度の弱酸性条件で溶出させる方法
等により、効率よく精製できる。
抗体カラムの作製は、例えばハイブリドーマを接種し
た腹水等から純粋に精製した本発明のモノクローナル抗
体を適切な担体とカプリングさせることにより、以下の
様な方法でできる。
用いる担体は、カプリングの後にポリペプチド(I)
が特異的に効率よく吸着され、その後適切な溶出が可能
なものであればどの様なものでもよいが、一例として蛋
白の一級アミンが結合し易い様に活性化されたアガロー
スゲルビーズ、例えばアフィゲル−10(バイオラド社
製)などが以下に述べる様な方法で好都合に用いられ
る。アフィゲル−10と抗体との反応は、約0.001〜1M、
好ましくは約0.1Mのバイカーボネート等の緩衝液中で反
応を行なう。反応条件は約0℃〜20℃、約10分〜24時
間、種々のpHが可能であるが、好ましくは約4℃、約4
時間、pH約7〜10の条件が用いられる。混合するアフィ
ゲル−10と抗体の量比は、アフィゲル1mに対し抗体量
が約50mg位迄は多ければ多い程多くの抗体がつくのでア
フィニティーカラムクロマトグラフィーにおける精製効
率を考慮して1mのアフィゲルに対し約10〜30mgの抗体
が好都合に用いられる。この様にしてできた抗体−担体
結合物は、反応に用いた緩衝液でよく洗った後、数日放
置するか、もしくは最終濃度約0.05〜0.10Mのエタノー
ルアミン・塩酸、グリシン等の一級アミンを有する化合
物を加え約4℃で約1〜4時間反応させる、あるいは1
〜5%牛血清アルブミン(BSA)等のタンパク質を4℃
一夜反応させる等の方法により、残存する未反応の活性
基をブロックした後、適切なカラムにつめることによ
り、抗体カラムとして使用できる。
上記した抗体カラムで精製するに際しては、たとえば
ポリペプチド(I)蛋白質含有試料を中性付近の緩衝
液、たとえばリン酸緩衝液やトリス・塩酸緩衝液に溶解
して抗体カラムに吸着させる。次にカラムを同じ緩衝液
で洗浄したのち、ポリペプチド(I)を溶出する。溶出
液としては、たとえば酢酸溶液、ポリエチレングリコー
ルを含む溶液、試料にくらべ抗体により結合し易いペプ
チドを含む溶液、高濃度塩溶液などおよびこれらを組み
合せた溶液などが用いられ、ポリペプチド(I)の不活
化をあまり促進しないものが好ましい。
カラム溶出液は、常法により緩衝液で中和する。必要
により再度上記の抗体カラムによる精製操作を行なうこ
とができる。
さらに、種々の公知の精製手法を組合せることによ
り、実質的にパイロジエンもエンドトキシンも含まな
い、実質的に純粋なポリペプチド(I)が得られる。本
発明の実質的に純粋なポリペプチド(I)としては、ポ
リペプチド(I)を90%(W/W)以上であるもの、さら
に好ましくはポリペプチド(I)を95%(W/W)以上で
あるものが挙げられる。
ここで得られるポリペプチド(I)蛋白質溶液は透析
に付し、必要によりこれを凍結乾燥により粉末とするこ
とができる。凍結乾燥に際しては、ソルビトール、マン
ニトール、デキストロール、マルトース、グリセロース
などの安定剤を加えることができる。
以上の様にして得られたポリペプチド(I)が活性を
有する場合には、そのまま使用し、活性を示さない場合
には酵素的あるいは非酵素的方法で活性化して用いるこ
とができる。
このようにして得られたポリペプチド(I)は動物細
胞、特に神経細胞の分化、あるいは増殖の促進、賦活性
作用等を示し、また種々の蛋白質、酵素等の誘導作用を
有するので、神経損傷その他の神経障害疾患に対して有
効な医薬品となることが期待される。
またポリペプチド(I)はNGFと同様のもしくは類似
の作用を有することも期待される。
本発明のポリペプチド(I)は動物細胞の分化、成
長、増殖、生存維持などに関連する研究のための試薬と
しても有用である。
該ポリペプチド(I)を医薬として用いるには、その
まま粉末として、または他の薬理学的に許容され得る担
体、賦形剤、希釈剤とともに医薬組成物(例、注射剤、
錠剤、カプセル剤、液剤、軟膏)として、温血哺乳動物
(例、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、
犬、ネコ)に対して非経口的または経口的に安全に投与
することができる。
注射剤の製剤化はたとえば生理食塩水またはブドウ糖
やその他の補助薬を含む水溶液を用い、常法に従って行
なわれる。錠剤、カプセル剤等の医薬組成物も常法に従
って調製し得る。
該ポリペプチド(I)を上記した医薬として用いる場
合には、たとえば上記した温血哺乳動物に、投与ルー
ト、症状などを考慮して、1日量約1ngないし100μg/kg
の中から適当量を選んで投与される。
該ポリペプチド(I)を動物細胞の分化、成長、増
殖、賦活などに関連する研究のために用いるには、たと
えばポリペプチド(I)を動物細胞培養用培地1mあた
り約0.1〜1,000ng/m、さらに好ましくは約1〜100ng
となる量を加えることが好ましい。ポリペプチド(I)
を添加された培地に動物細胞を培養して、動物細胞の分
化、成長、増殖、生存維持などを測定することができ
る。
作用 ポリペプチド(I)もしくはその部分ペプチドに対す
る抗体を用いることにより、ポリペプチド(I)の単
離、精製、定量を効率よく行なえるようにしたもので、
ポリペプチド(I)の医薬品への応用を計るものであ
る。
なお、本明細書および図面において、塩基やアミノ酸
などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on
Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分
野における慣用略号に基づくものであり、その例を次に
あげる。またアミノ酸に関して光学異性体がありうる場
合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA デオキシリボ核酸 A アデニン C シトニン G グアニン T チミン Ala :アラニン Arg :アルギニン Asn :アスパラギン Asp :アスパラギン酸 Cys :システイン Gln :グルタミン Glu :グルタミン酸 Gly :グリシン His :ヒスチジン Ile :イソロイシン Leu :ロイシン Lys :リジン Met :メチオニン Phe :フェニールアラニン Pro :プロリン Ser :セリン Thr :スレオニン Trp :トリプトファン Tyr :チロシン Val :バリン Boc :t−ブチルオキシカルボニル MeBzl:p−メチルベンジル Bzl :ベンジル −P :ペプチド固相合成用ポリスチレン樹脂 PAM :p−オキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹
脂 AcOH :酢酸 OBzI :ベンジルエステル Tos :トシル Br−Z:2−ブロモベンジルオキシカルボニル Cl−Z:2−クロロベンジルオキシカルボニル 後述の参考例1で得られた形質転換体エシェリヒア
コリ(Escherichia coli)MV1184/pUNK5は平成1年2月
10日から財団法人発酵研究所(IFO)に受託番号IFO1483
2として寄託されている。また該微生物は平成1年2月2
2日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(FR
I)に受託番号FERM BP−2304として寄託されている。
後述の参考例8で得られた形質転換体エシェリヒア
コリ(Escherichia coli)BL21(DE3)/pLysS,pENGFT10
2は平成1年7月14日から財団法人発酵研究所(IFO)に
受託番号IFO14903として寄託されている。また該微生物
は平成1年7月26日に通商産業省工業技術院微生物工業
技術研究所(FRI)に受託番号FERM BP−2529として寄
託されている。
後述の実施例2(3)で得られたマウスN4−2細胞、
マウスN46−31細胞、マウスN82−4細胞およびマウスN1
48−62細胞はそれぞれ、平成2年4月25日から財団法人
発酵研究所(IFO)に、また平成2年5月15日から通商
産業省工業技術院微生物工業技術研究所(FRI)に次の
受託番号として寄託されている。
IFO FERM BP MoAb 4−2 50241 2908 MoAb 46−31 50242 2909 MoAb 82−4 50243 2910 MoAb 148−62 50244 2911 実施例 以下、実施例、参考例を挙げて、本発明をさらに具体
例に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
参考例1 ポリペプチド(I)cDNAのクローニング E.coli Y1090にヒトグリオーマ由来のλgt 11cDNAラ
イブラリー(Clontech Laboratories,Inc.)を感染させ
たのち、約6×105個のファージをNZCYM培地(Molecula
r Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor L
aboratory,1982に記載)にまき、37℃で5時間培養し
た。次にナイロン膜をプレート上にのせ、1分間放置
後、プレートからはずした。このナイロン膜を0.5M Na
OH−1.5M NaCl、次いで1.5M NaCl−0.5M Tris−HCl,
pH8.0に浸し、さらに2×SSC〔モレキュラー クローニ
ング ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Clon
ing A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Labor
atory(1982)参照〕に浸し、風乾後、80℃で2時間放
置した。
ヒトβNGF〔ネイチャー(Nature),303,821(198
3)〕をコードするDNA(約0.38kb)を化学合成し、ニッ
クトランスレーションによって〔α−32P〕dCTPを用い
てラベル化することによってプローブを作製した。
上記で得られたナイロン膜とプローブを用いてMolecu
lar Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor
Laboratory,1982に記載の方法に従ってハイブリダイゼ
ーションを行った。即ち、プローブを含むハイブリダイ
ゼーション溶液にナイロン膜を浸し、65℃で16時間保温
した。該ナイロン膜を室温において2×SSC−0.1%SDS
で洗浄したのち、60℃において1×SSC−0.1%SDSで洗
浄した。次にオートラジオグラフィーによって陽性クロ
ーンを得た。
このようにして得られたクローンλβGN1321からEcoR
IでcDNAを切り出し、プラスミドpUC118(宝酒造株式会
社製)のEcoR I部位に挿入し、プラスミドpUNK5を得
た。得られたプラスミドpUNK5を用いて、Escherichia c
oli MV1184(宝酒造株式会社から入手)を形質転換し、
形質転換体Escherichia coli MV1184/pUNK5(IFO14832,
FERM BP−2304)を得た。
このプラスミドpUNK5に含まれるポリペプチド(I)c
DNAを含む全長約0.73kbのcDNAの制限酵素地図を第1図
に示す。第1図中の は非翻訳領域を、 はプロペプチドをコードする領域を、 は式(1)のアミノ酸配列のC末端にさらにスレオニン
残基を有するアミノ酸配列であるポリペプチドをコード
する領域をそれぞれ示す。
上記で得られたcDNAの塩基配列をジデオキシ法〔Mess
ingら、ヌクレイック アシッズ リサーチ(Nucl.Aci
d.Res.),,309(1981)〕によって決定した。決定さ
れた塩基配列およびこれにより翻訳されたアミノ酸配列
を第2図に示す。第2図において、アミノ酸配列の−1
からN末端側はプロペプチドの一部であり、1から118
または1から119は式(1)のアミノ酸配列であるポリ
ペプチドまたは式(1)のアミノ酸配列のC末端にさら
にスレオニン残基を有するアミノ酸配列であるポリペプ
チドをそれぞれ示す。
上記により決定されたポリペプチド(I)のアミノ酸
配列をUllrichら、ネイチャー(Nature),303,821(19
83)に示されたヒトβNGFのアミノ酸配列と比較し第3
図に示す。第3図において、上段は本発明のポリペプチ
ド(I)のうちの119個のアミノ酸配列を、下段はヒト
βNGFのアミノ酸配列をそれぞれ示す。同じアミノ酸残
基の部分を四角で囲った。また、図中−は単に結合手を
示す。
該比較から明らかな如く、本発明のポリペプチド
(I)のうちの119個のアミノ酸配列は、上記ヒトβNGF
のアミノ酸配列と約60%の相同性を有する。
さらに、上記により決定されたポリペプチド(I)の
うちの119個のアミノ酸配列をAngelettiら、プロシージ
ングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サ
イエンシズ(Proceedings of National Acsdemy of Sci
ences,USA),68,2417(1971);Scottら、ネイチャー
(Nature),302,538(1983)に示されたマウスβNGFの
アミノ酸配列と比較すると約60%の相同性を有する。
参考例2 ポリペプチド(I)cDNAの再クローニング 参考例1で得られたpUNK5に含まれるポリペプチド
(I)cDNAの5′末端側を含むEcoR I−Aha III断片
(約0.44kb)をプローブとして、ヒトグリオーマ由来の
cDNAライブラリー(Clontech Laboratories,Inc.)の中
から参考例1と同様の方法でクローン化を行った。得ら
れた多くの陽性クローンの1つλHNT31からEcoR IでcDN
Aを切り出し、プラスミドpUC119(宝酒造)のEcoR I部
位に挿入し、プラスミドpHNT2を得た。pHNT2に挿入され
ているポリペプチド(I)cDNA(約1.1kb)の制限酵素
地図を第4図に示す。第4図中の はシグナルペプチドをコードする領域を、 はプロペプチドをコードする領域を、 は式〔1〕のアミノ酸配列のC末端にさらにスレオニン
残基を有するアミノ酸配列であるポリペプチドをコード
する領域をそれぞれ示す。
上記で得られたcDNAの塩基配列をジデオキシ法によっ
て決定した。決定された塩基配列およびこれにより翻訳
されるアミノ酸配列を第5図に示す。第5図において、
Signalをシグナルペプチドを、Proはプロペプチドを、M
atureはポリペプチド(I)(成熟蛋白)をそれぞれ示
す。
参考例3 大腸菌用のポリペプチド(I)発現ベクター
の構築 参考例1で得られたプラスミドpUNK5に挿入されてい
るポリペプチド(I)cDNAには、ポリペプチド(I)の
N末端の11番目のチロシン残基をコードする領域付近に
Sca I部位が、ポリペプチド(I)の終止コドンの50塩
基下流付近にNsi I部位が存在する(第2図、第4図、
第5図参照)。そこでpUNK5より0.3kb Sca I−Nsi I断
片を単離し、これにアダプターNGFTE−1(35mer)、NG
FTE−2(33mer)、NGFTE−3(7mer)、NGFTE−4(15
mer)をT4DNAリガーゼで連結したのち制限酵素Nde IとB
amH Iで処理し、0.3kb Nde I−BamH I断片を得た(第
6図参照)。
該アダプターを次に示す。
一方、T7プロモーターを有する発現ベクターpET−3C
〔Rosenbergら、ジーン(Gene),56,125(1987)〕をN
de IとBamH Iで切断し、4.4kb Nde I−BamH I断片を単
離した。
上記で得られた4.4kb Nde I−BamH I断片を前記の0.3
kbのNde I−BamH I断片とT4DNAリガーゼで連結したの
ち、E.coli DH1に導入し、得られたアンピシリン耐性の
形質転換株(E.coli DH1/pENGFT102)から単離したプラ
スミドをpENGFT102と命名した(第6図)。
参考例4 形質転換体の作成および発現 参考例3で得られたポリペプチド(I)発現ベクター
pENGFT102を用いてE.coli BL21(DE3)〔ジーン(Gen
e),56,125(1987)〕の形質転換体E.coli BL21(DE
3)/pENGFT102を得た。
E.coli BL21(DE3)/pENGFT102を、50μg/mアンピ
シリンおよび0.2%グリコースを含む5mのLB培地で試
験管で37℃、16時間培養した。得られた培養液の1mを
20mの同じ培地を含む200m容フラスコに移し、37℃
で培養し、Klett値が170〜200になった時I PTGを終濃度
0.4mMになるように加え、さらに3時間培養した。得ら
れた培養液の30μから集めた菌体を30μのサンプル
緩衝液〔50mM Tris−HCl,pH6.8−2mM EDTA−1%SDS
−1%メルカプトエタノール−8%グリセロール−0.02
5%ブロムフェノールブルー〕に懸濁し、100℃、5分間
加熱したのち0.1%SDSを含む16%ポリアクリルアミドゲ
ルで電気泳動した。泳動後のゲルをクーマシーブリリア
ントブルー(Coomassie brilliant blue)で染色したと
ころ、前記ベクターpET−3Cを用いてE.coli BL21(DE
3)を形質転換して得られたE.coli BL21(DE3)/pET−3
Cでは認められない15キロダルトン(kda)の蛋白質がE.
coli BL21(DE3)/pENGFT102では認められ、その生産量
は全蛋白質の約10%であった。また該蛋白質は、ウサギ
抗マウスNGF抗体(Collaborative Research,Inc.米国)
を用いたウェスタン ブロッティングでも検出された。
参考例5 動物細胞用のポリペプチド(I)発現ベクタ
ーの構築 参考例2で得られたプラスミドpHNT2よりポリペプチ
ド(I)cDNAを含有する1.1kb EcoR I断片を単離した。
一方、発現ベクターpTB389〔特開昭64−2572(EP−251,
244Aに対応)に記載〕をEcoR Iで切断し、上記のポリペ
プチド(I)cDNAを含有する1.1kb EcoR I断片とT4DNA
リガーゼで連結させ、E.coli DH1〔Molecular Cloning,
A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,
p505(1982)〕の形質転換を行った。得られたアンピシ
リン耐性の形質転換体E.coli DH1/pNTK26からプラスミ
ドを単離し、これをpNTK26と命名した。
プラスミドpTB505〔特開昭62−175182(ヨーロッパ特
許公開255,701Aに相当)に記載〕よりエーベルソンマウ
ス白血病ウィルス(A−MuLV)LTR領域を含む1.1kb Cla
I−Hind III断片を単離した。一方、プラスミドpNTK26
を制限酵素Cla IとHind IIIで切断して小さい断片を除
去したのち上記のA−MuLV)LTR領域を含む1.1kb Cla I
−Hind III断片とT4DNAリガーゼで連結させ、E.coli DH
1の形質転換を行ない、アンピシリン耐性の形質転換体
E.coli DH1/pNTL145を得た。このようにして得られた形
質転換体からプラスミドpNTL145を単離した(第7
図)。
参考例6 動物細胞用のポリペプチド(I)発現ベクタ
ーの構築 参考例2で得られたプラスミドpHNT2よりポリペプチ
ド(I)cDNA中のシグナルペプチド、プロペプチドおよ
びポリペプチド(I)をコードする領域を含む0.86kb E
coR I−Aha III断片を単離した(Aha IIIについては第
4図および第5図参照)。得られた本断片の5′末端
(EcoR I)をKlenow Fragmentで平滑化したのち、両末
端にXho IリンカーpCCTCGAGGをT4リガーゼで連結し、Xh
o Iで処理して0.86kb Xho I断片を得た。
一方、動物細胞用発現ベクターpKSV−10(Pharmaci
a)を制限酵素Bgl IIで切断したのち、Klenow Fragment
で両末端(Xho I)を平滑化した。これにXho Iリンカー
(前出)を付与し、上記の0.86kb Xho I断片とT4DNAリ
ガーゼで連結させ、E.coli DH1の形質転換を行った。得
られたアンピシリン耐性の形質転換体(E.coli DH1/pNT
S101)からプラスミドpNTS101を単離した(第8図)。
参考例7 ポリペプチド(I)cDNAの動物細胞での発現 サルCOS−7細胞を10%胎児牛血清を含むDMEM培地(D
ulbecco's Modified Eagle's Medium)(Flow Laborato
ries)で単層培養したのち、同培地で培地交換した。交
換の4時間後に公知の方法〔Graham et.,ウィロロジー
(Virology),52,456,(1973)〕に従い、発現ベクタ
ーpTB389,10μgのポリペプチド(I)発現ベクターpNT
K26またはpNTL145を含むカルシウムホスフェートゲルを
調製し、細胞に添加し、形質転換体COS−7/pTB389,COS
−7/pNTK26およびCOS−7/pNTL145をそれぞれ得た。この
細胞を炭酸ガス培養器中で4時間培養し、グリセロール
処理〔Gorman et al.,サイエンス(Science),221,551
(1983)〕したのち、3日間培養した。培養後の培養液
を遠心分離して培養上清を得た。
ブレイン リサーチ(Brain Research),133,350(1
977)およびエクスペリメンタル セル リサーチ(Exp
erimental Cell Research),145,179(1983)に記載さ
れている方法に従って、上記で得られた培養上清の存在
下でPC12細胞を培養し、神経突起が細胞の直径の2倍以
上に伸長した細胞の割合を計算した。その結果を第2表
に示す。
上記と同様の方法で得られた培養上清を用いて、初代
培養中隔野および前脳基底部神経細胞のアセチルコリン
量に対する作用〔垣花満,寿野正広,神経化学,27,166
(1988)〕を調べた。
胎生17日目のラット胎仔脳より中隔野および前脳基底
部を採取し、Hatanakaらの方法〔ディベロプメント オ
ブ ブレイン リサーチ(Develop.Brain Res.),30,4
7(1986)〕に従い神経細胞を単離した。Poly−L−orn
ithine(100μg/m)で前処理した48−wellプレートに
約1×106cells/cm2/wellの割合でseedingした。無血清
のDME/F12/N2培養液(500μ)で24時間培養した。培
地を吸引除去後DME/F12/10%FCS(500μ)および検体
の培養上清を添加した。2日後培養液を同培養液750μ
へ変え再度培養上清を添加し、さらに2日間培養し
た。培養上清の添加は2種類の方法で行った。培養上清
を最終濃度が10%となるように前半の2日間は50μ
を、後半の2日間は75μを添加した。和光純薬より購
入したマウスNGF(75−NGF)を用いるときは、0.1%ova
lbumin/PBSで希釈し、その10μを添加した。
培養上清添加4日後培養液を吸引除去し、冷却した0.
3N PCA500μおよびACh測定用の内標EHCを20−60p mol
/20μ添加した。穏やかに撹拌後、500μをエッペン
ドルフマイクロチューブに移した。以後既報にしたがい
操作し、HPLC/ECDを用いてACh量を測定した。ACh抽出後
の細胞を1N NaOH500μに溶解しタンパク量の測定を行
った(Bio−Rad Protein Assay)。統計処理にはDunnet
t's t−testを用いた。
得られた結果を第3表に示す。
参考例8 大腸菌によるポリペプチド(I)の生産 参考例3で得られたポリペプチド(I)発現ベクター
pENGFT102およびT7リゾチーム発現ベクターpLysSを用い
て、E.coli BL21(DE3)〔ジーン(Gene),56,125(19
87)〕の形質転換を行い、形質転換体E.coli BL21(DE
3)/pLysS,pENGFT102(IFO14903,FERM BP−2529)を得
た。
形質転換体E.coli BL21(DE3)/pLysS,pENGFT102を50
μg/mのアンピシリン,10μg/mのクロラムフェニコ
ール,0.2%グルコースを含むLB培地〔1%トリプシン
(Difco),0.5%酵母エキス,0.5%NaCl〕で37℃,16時間
振とう下で培養した。得られた培養液12.5mを250m
の同じ培地を含む1容エーレンマイヤー(Erlenmeye
r)フラスコに移し、30℃で3時間振とう下で培養する
と培養液のKlett値は170になった。この培養液にイソプ
ロピル−β−D(−)−チオガラクトピロノシドを最終
0.1mMになるように添加し、さらに30℃で3時間振とう
下で培養した。得られた培養液30μから集めた菌体を
2倍濃度のsample buffer〔Leammli,ネイチャー(Natur
e),227,680(1970)〕(30μ)に懸濁し、100℃で
5分間加熱したのち0.1%SDSを含む16%ポリアクリルア
ミドゲルで電気泳動を行った。Burnetteの方法〔アナリ
ティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemis
try),112,195(1981)〕に従ってゲル上の蛋白をニト
ロセルロースフィルターに移し、ウサギ抗マウスNGF抗
体(Collaborative Research)とアフィニティー精製HR
P結合ヤギ抗ウサギLgG(バイオ・ラッド,米国)とを用
いたWesternブロッティングを行った結果、15キロダル
トン(KDa)のポリペプチド(I)が認められた。
上記と同様の方法で得られた泳動後のゲルをクーマシ
ーブリリアントブルー(Coomassie brilli ant blue)
で染色したところ、ポリペプチド(I)に相当する15KD
aの蛋白が認められ、その生産量は全蛋白の約10%と概
算された。
参考例9 ポリペプチド(I)の単離 参考例8で得られたE.coli BL21(DE3)/pLysS,pENGF
T102の培養液3.75を遠心分離し、菌体17g(wet)を得
た。この菌体を375mの50mM Tris・HCl(pH8.0)に懸
濁し、凍結、融解したのち超音波処理(海上電気,2A,2
分)を3回行った。この処理液を遠心分離し、その沈殿
を60mの5M塩酸グアニジン−5mM EDTA−1mM PMSF−0.1
mM APMSF−20mMジオチスレトイール(DDT)−50mMナト
リウムリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解した。得られた溶
液を2M塩酸グアニジン−5mM EDTA−0.1mM APMSF−5mM D
DT−25mMナトリウムリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化さ
せたSephacrylS−200でゲルろ過し、Westernブロッティ
ング(前出)によってポリペプチド(I)が検出された
フラクションを集め、溶出液(300m)を得た。この溶
出液をYM5メンブレン(アミコン社)を装着した限外ろ
過装置を用いて濃縮し、得られた濃縮液50mを上記と
同様の方法でゲルろ過し、328mgの精製ポリペプチド
(I)を含有する溶液164mを得た。SDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動で純度を調べた結果、得られたポ
リペプチド(I)精製標品はほぼ単一であった。
上記の精製ポリペプチド(I)を含有する溶液をUltr
apore RPSCカラム(0.46×7.5cm,ALTEX社)に負荷し、
トリフルオロ酢酸−アセトニトリル系を溶出溶媒とする
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行って、単一な
ポリペプチド(I)のN末端アミノ酸配列を気相プロテ
インシークェンサー(アプライドバイオシステム モデ
ル470A)を用いて決定した。その結果、精製ポリペプチ
ド(I)のN末端アミノ酸配列はN末端にメチオニンが
付加されていることのほかはcDNAの延期配列から推定し
たポリペプチド(I)のN末端アミノ酸配列と一致した
(第4表)。
上記で得られた精製標品のアミノ酸組成をニンヒドリ
ン法で求めた。その結果、精製標品の実測値はN末端に
メチオニンが付加されたポリペプチド(I)から計算し
た理論値とほぼ一致した。
上記の精製ポリペプチド(I)を含有する溶液(蛋白
濃度2mg/m)を蛋白濃度が10μg/mになるように2M塩
酸グアニジン−5mM EDTA−0.1mM APMSF−5mM DTT−25mM
ナトリウムリン酸緩衝液(pH6.0)で希釈し、50倍量の1
mM EDTA−50mM NaHCO3−Na2CO3(pH10.0)に対して4℃
で16時間透析し、さらに同じbufferに対して4時間透析
した。得られた透析内液のPO12細胞に対する作用をブレ
イン リサーチ(Brain Research),133,350(1979)
およびエクスペリメンタル セル リサーチ(Experime
ntal Cell Research),145,179(1983)に記載されて
いる方法に従って調べた。その結果、該透析内液の添加
によって、PC12細胞の6%に神経突起が観察され、2%
が細胞体の直径の2倍以上の長さの神経突起を有してい
た。一方、対照となる1mM EDTA−50mM NaHCO3−Na2CO3
(pH10.0)では神経突起を有する細胞は0.5%以下であ
った。
実施例1 免疫 BALB/cマウス(♀8週令)に対しフロインド完全アジ
ュバント(Difco社製)0.4mに溶解させた10μgの抗
原ポリペプチド(I)(参考例9で得られたもの)を皮
内に注射した。3週間後に、フロインド完全アジュバン
ト0.4mにとかした10μgの抗原ポリペプチド(I)を
皮内に再投与した。更に3週間後に同様の追加免疫を行
い、その2週間後に生理食塩水に溶かした10μgのポリ
ペプチド(I)を静脈内に接種した。
実施例2 (1)細胞融合 実施例1で示した免疫マウスより、抗原最終投与の3
日後脾臓を摘出し、細胞融合に用いる細胞を得た。この
細胞は、イスコフ培地とハムF−12培地を1:1の比率で
混合した培地(以下IH培地と略す)に懸濁した。
マウスミエローマ細胞P3−X63−Ag・8UIは、10%ウシ
胎児血清を含むRPMI1640培地で5%炭酸ガス、95%空気
の条件で継代培養した。
細胞融合は、ケーラーおよびミルスタインらが確立し
た方法〔ケーラー.G.およびミルスタイン.C.:ネイチャ
ー(Nature)256,495(1975)〕に準じて行った。上記
ミエローマ細胞2.9×107個と上述した方法で得られた免
疫されたリンパ球1.5×108個を混合し、遠沈し、45%の
0.3mのIH培地に溶解したポリエチレングリコール6000
(以下PEG6000)を滴下した。PEG6000溶液は、予め37℃
に温め、ゆっくりと滴下した。5分後37℃に予温したIH
培地1分間に0.5mずつ加え10mとした後、室温で600
回転15分遠心し上清を除去した。この細胞沈殿物を20%
仔牛血清を含むIH培地200mに懸濁し、96穴マイクロプ
レート(ヌンク社)に100μずつ植え付けた。1日
後、HAT(ヒポキサンチン1×10-4M,アミノプテリン4
×10-7M,チミジン1.6×10-5M)を含んだIH培地(20%仔
牛血清含有)(以下、HAT培地と称する。)を各ウェル
に100μずつ添加し、さらに3日おきに、培地の1/2量
をHAT培地と交換した。このようにして生育した細胞は
雑種細胞である。
(2)抗体生産細胞の検索 予め、ポリペプチド(I)を固定したポリスチレン製
96穴マイクロタイタープレートに、雑種細胞培養上清を
100μずつ加え37℃で1時間インキュベートした。培
養上清を除去、洗浄後2次抗体として西洋ワサビペルオ
キシダーゼ(HRP)標識抗マウスIgGヤギ抗体(カッペル
社)を加え37℃で1時間インキュベートした。2次抗体
を除去し、よくウエル洗浄した後、反応基質を加えた呈
色反応を行った(EIA法)。この方法により4つのウエ
ルに強い結合価が観察された。
(3)雑種細胞のクローニング これらのウエル中の細胞を、1ウエルあたり0.5個と
なるように、予め104個/ウェルのマウス胸腺細胞を栄
養細胞としてまいておいた96穴マイクロタイタープレー
トにまき、クローニングを行った。その結果、4つのク
ローン、MoAb4−2細胞(IFO50241,FERM BP−2908),Mo
Ab46−31細胞(IFO50242,FERM BP−2909),MoAb82−4
細胞(IFO50243,FERM BP−2910),MoAb148−62細胞(IF
O50244,FERM BP−2911)を得た。
これらの細胞上清中の抗体価測定結果を第6表に示
す。
クローニングされた細胞は、20%仔牛血清を含むIH培
地に10%となるようにジメチルスルホキシド(DMSO)を
加え液体窒素内に貯蔵した。
実施例3 モノクローナル抗体の免疫グロブリンクラス 実施例2で得られたマウス抗体をサブクラス検出キッ
ト(バイオラッド社)により各種標品免疫グロブリンと
反応させた。その結果を第7表に示す。
第7表より、MoAb4−2,MoAb46−31の生産する抗体は
いずれも免疫グロブリンクラスがIgG2bに属することが
わかる。そして、MoAb82−4,MoAb148−62の生産する抗
体はいずれも免疫グロブリンクラスがIgG1に属すること
がわかる。
実施例4 単クローン抗体を含む腹水の調製 ハイブリドーマMoAb4−2,MoAb46−31,MoAb82−4,MoAb
148−62について、それぞれ2×106個の細胞を予めミネ
ラルオイルを0.5m腹腔内に投与しておいたマウスに接
種した。10日後、1匹あたり2〜4mの腹水を採取し、
それぞれのハイブリドーマよりモノクローナル抗体MoAb
4−2,MoAb46−31,MoAb82−4,MoAb148−62を得た。
実施例5 腹水からの抗体の精製 実施例4の方法によりモノクローナル抗体MoAb4−2,M
oAb46−31,MoAb82−4,MoAb148−62を各々マウス5匹ず
つに接種し、腹水液20〜30mを得た。腹水液は2000rpm
(日立冷却)遠心機で遠心し、細胞などを除去した後、
スピンコSW28ロータ(ベックマン社、米国)で23000rpm
で4℃、2時間遠心し、不溶性タンパクや脂肪等を除い
た。上清に対し、40%飽和になるように硫酸アンモニウ
ムを加え、氷中、1時間、穏やかに撹拌した。沈殿をサ
ーバルSS34ローター(デュポン、米国)を用い、4℃、
15000rpmで30分間遠心し、回収後、バッファー〔10mMリ
ン酸カリウム(pH6.8)〕に溶かし、ハイドロキシアパ
タイトカラム(HCA−カラム)によって精製した。この
時、開始バッファーとして10mMリン酸カリウム(pH6.
8)を用い、溶出バッファーとしては500mMリン酸ナトリ
ウムバッファーを用いた。溶出は、開始バッファーから
溶出バッファーへの直線的濃度勾配により行った。溶出
抗体は、4℃に保存した。
実施例6 HRP標識抗体の作製 (1)実施例5で得られたモノクローナル抗体MoAb4−
2を2mg/m以上になるように濃縮し、次いで0.2Mリン
酸バッファー(pH7.0)に対して透析した。4.9mg/mモ
ノクローナル抗体MoAb4−2 0.7mに対し、11.5mg/m
となるようにN,N′−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶
解したS−アセチルメルカプトサクシニックアンヒドリ
ド(Aldrich社、米国)を50μ加えた。反応器の空気
を窒素ガスに置換し、密栓後、室温で一時間撹拌し、SH
基を導入した。未反応のS−アセチルメルカプトサクシ
ニックアンヒドリドを130μの0.2M Tris・HCl(pH7.
0),13μの0.2M EDTA,130μの2Mヒドロキシアミン
(pH7.0)を加え室温10分処理し、不活性化した。モノ
クローナル抗体MoAb4−2は、セファデックスG−25
(径1cm×80cm,ファルマシア社、スエーデン)を充填し
たゲルろ過カラムにより分散した(流速20m/h)。
(2)西洋ワサビパーオキシダーゼ(以下HPR,ベーリン
ガーマンハイム社,西ドイツ,Grade I)10mgを1.4mの
0.1Mリン酸バッファー(pH6.8)に溶解した。N−(4
−カルボキシシクロヘキシルメチル)マレイミドのN−
ヒドロキシスクシンイミドエステル14mgを335μのDMF
に溶解し、このうち100μをHPR溶液に加えた。反応器
の空気を窒素置換し。密栓後、室温で1時間撹拌した。
その後、セファデックスG−25を充填したゲルろ過カラ
ム(前出)により、マレイミド基を導入したHRP画分を
分取した。
(3)上記(1)においてSH基を導入した抗体MoAb4−
2画分6mと上記(2)においてマレイミド基を導入し
たHRP画分2mを混合し、コロジオンバッグ(ザルトリ
ウス社製、西ドイツ)を用いて減圧下、1mに濃縮し、
4℃、20時間反応させた。反応後HRPが導入された抗体
をウルトロゲルAcA44(LKB社製、スエーデン、径1cm×8
0cm)にかけ分離した(流速10m/h)。溶出ピーク画分
のうち抗体1分子あたりのHRP数が最も多い画分は、2.4
HRP/抗体であった。
実施例7 EIA法による、モノクローナル抗体を用いる
ポリペプチド(I)の定量 実施例5で得られたモノクローナル抗体MoAb82−4を
10μg/mとなるように炭酸緩衝液(pH9.6)で希釈し、
イムノプレート(ヌンク社、デンマーク)に100μ/
ウエル注入し、4℃、一夜静置することにより吸着させ
た。吸着しなかった抗体を除去した後、PBSで3回洗浄
し、0.01%メルチオレート、5%牛血清アルブミン(BS
A)を含むPBSを300μ/ウエルを加え4℃一夜放置し
た。
参考例9で得られたポリペプチド(I)を1%BSAを
含むPBSで希釈した。上記で作成したプレートよりBSA溶
液を取り除き、PBSで5回洗浄後、希釈したポリペプチ
ド(I)を100μ/ウエル加え、4℃一夜吸着を行っ
た。未反応のポリペプチド(I)を除去後、PBSで5回
洗浄し、実施例6で作製したHRP結合抗体(HRP−MoAb4
−2)を1%BSAで1/1000希釈し、100μ/ウエル加
え、室温で2時間反応させた。抗体含有液を除去後、PB
Sで10回洗浄し、パーオキシダーゼ基質(Sigma社、米
国)を100μ/ウェル加え、発色、比較定量した。
第9図はポリペプチド(I)の検出曲線を示してい
る。横軸は、加えたポリペプチド(I)濃度、縦軸はHP
R−MoAb4−2によって発色した吸光度をあらわす。この
図より、0.5ng/mの濃度のポリペプチド(I)を検出
できることがわかった。
実施例8(抗原認識部位の決定) 実施例4において精製した4抗体の抗原認識部位を競
合的結合阻止実験により検討した。
競合物として、合成ペプチドpep1:Tyr−Ala−Glu−Hi
s−Lys−Ser−His−Arg−Gly−Glu−Tyr−Ser−Val−Cy
s,pep2:Cys−Ala−Leu−Ser−Arg−Lys−Ile−Gly−Arg
を用いた。
合成ペプチドは、100μg/mあるいは0.39μg/mの
濃度に調製し、5%BSAを含むPBS溶液希釈を行った。抗
体量が吸光度493nmで1.0〜0.7となるように実施例4で
得た精製モノクローナル抗体について、MoAb4−2,Moab4
6−31については0.05μg/mに、MoAb82−4については
12.5μg/mに、Moab148−62については0.78μg/mに
希釈した。希釈液としては、5%BSAを含むPBS溶液を用
いた。希釈抗体液に希釈した競合物を加え、撹拌後37
℃,30分保温した。
この液中に含まれる未結合の抗体量を実施例7に示す
EIA法によって測定した。
合成ペプチドを用いた場合の結果を、第10図、第11
図、第12図、第13図に示す。
第10図はモノクローナル抗体MoAb4−2についての結
果を、第11図はモノクローナル抗体MoAb46−31について
の結果を、第12図はモノクローナル抗体MoAb82−4につ
いての結果を、第13図はモノクローナル抗体MoAb148−6
2についての結果を示す。なお、これらの図において…
○…はpep1を、−●−はpep2をそれぞれ競合物として用
いた結果を示す。また、図において、縦軸は発色剤の吸
光(波長493nmによる)を示す。
第10図および第11図から、モノクローナル抗体MoAb4
−2およびMoAb46−31は、pep1により競合的結合阻害を
受けた。このことから、モノクローナル抗体MoAb4−2
およびMoAb46−31はポリペプチド(I)のN末端アミノ
酸1−14番目の領域を認識していることが分かった。
第12図、第13図からMoAb82−4,MoAb148−62は、これ
らの合成ペプチドによって阻害を受けないことが分かっ
た。このことからMoAb82−4,MoAb148−62は、N末端ア
ミノ酸1−14番目の領域と、C末端1−9番目の領域以
外のアミノ酸を認識することが分かった。
上記したことから、4種のモノクローナル抗体の認識
部位については次の第8表のようにまとめられる。
実施例9 ウェスタンブロッティングによるヒトポリペ
プチド(I)の検出 参考例9記載の方法で得たポリペプチド(I)を15%
アクリルアミドゲル電気泳動〔Laemmli.U.K.(1970)ネ
イチャー(Nature)227,680−685〕した後、ザルトブロ
ット(ザルトリウス社、西独)を用い、ニトロセルロー
ス膜上にトランスファーした〔Kyshse−Anderson.J.ジ
ャーナル・オブ・バイオケミカル・アンド・バイオフィ
ジカル・メソッズ(Journal of Biochemical and Bioph
ysical Methods),10,203−209(1984)〕。この膜をT
BS〔20mM Tris・HCl(pH7.5).0.5M NaCl〕で5分ずつ
2回洗い、5%BSAを含むTBS中で室温1時間放置し、膜
上の未反応部分をブロックした。0.05%トゥイーン20を
含むTBS(TTBS)で5分ずつ3回洗った。実施例4で得
たモノクローナル抗体MoAb4−2,MoAb46−31,MoAb82−4,
またはMoAb148−62を、5%BSAを含む、TTBSで1000倍希
釈した液に、上記のニトロセルロース膜を入れ、室温で
1時間反応させた。反応液を取り除き、TTBSで5分ずつ
3回膜を洗い、その後5%BSAを含む、TTBSで2000倍に
希釈した2次抗体、アルカリホスファターゼ標識抗マウ
スIgGヤギ血清(バイオラッド社、米国)を加え、室温
で1時間反応を行った。膜をTTBSで5分ずつ3回洗浄
し、さらにTBSで5分ずつ2回洗い、その後、発色剤と
してNBT(nitro blue tetrazolum,50mg/m in70%dime
thylformamide)66μ,BCIP(5−bromo−4−chloro
−3−indolyl phosphate,50mg/m in dimethylformam
ide)33μ(プロメガ社、米国)をAPバッファー(100
mM Tris−HCl,pH9.5,100mM NaCl,5mM MgCl2)に溶解
し、室温で15分間反応を行なった。第15図にモノクロー
ナル抗体MoAb4−2を1次抗体として用いた時のウエス
タンブロッティングの結果を示す。レーン1には500ng
のポリペプチド(I)を、2には250ngのポリペプチド
(I)を、3には125ngのポリペプチド(I)を、4に
は62.5ngのポリペプチド(I)をそれぞれ泳動し、トラ
ンスファーしている。Mはマーカーを表わし、左側の数
字はその分子量である。
なお、上記MoAb4−2の代りにMoAb46−31、82−4、1
48−62を用いた場合もポリペプチド(I)を検出するこ
とができた。
実施例10 抗N末ペプチド抗体の作製 (1)N末ペプチドの合成 H−Tyr−Ala−Glu−His−Lys−Ser−His−Arg−Gly−G
lu−Tyr−Ser−Val−Cys−OHの合成 本ペプチドの合成は自動ペプチド合成機430A(アプラ
イド・バイオシステムズ社製)を用いた固相合成法にて
行なった。プログラムは「スタンダード−1」を用い
た。基本的な合成過程等は、メリーフィールド アール
ビー(Merrifield,R.B.)(1969)アドバンス オブ
エンザイモロジー(Adv.Enzymol.)32,221−296の方
法に準じている。レジンにはBoc−Cys(MeBzl)・PAM−
P(0.5mmol/g)を用い、カルボキシル末端から順次合
成した。Boc−アミノ酸としてBoc−Val,Boc−Ser(Bz
l),Boc−Tyr(Br−Z),Boc−Glu(OBzl),Boc−Gly,B
oc−Arg(Tos),Boc−His(Tos),Boc−Lys(Cl−Z),
Boc−Alaを用いた。アミノ末端Tyrまで合成したのち、
ペプチドレジンを合成機から取り出し、乾燥した。
ペプチドレジン1gに1.5mのp−クレゾールおよび0.
5mの1,2−エタンジチオールを加え、さらに約8mの
液体フッ化水素を加えて、0℃で2時間反応させた。反
応終了後、デシケーター中でフッ化水素を減圧除去し、
0.1%の2−メルカプトエタノールを含むジエチルエー
テルで、続いてジエチルエーテルで洗い、大部分の混在
試薬を除去した。ペプチドを10mの3%酢酸で抽出
し、ろ過により抽出液中に混入しているレジンを除い
た。ろ液をセファデックス(Sephadex)G−25を用いる
ゲルろ過により精製した。ゲルろ過条件は、カラムサイ
ズ2.8×60cm;検出波長280nm;溶媒3%酢酸;流速40m/
hrであった。
ペプチドを含むフラクションを集めて凍結乾燥し、得
られた粉末標品について逆相高速液体クロマトグラフィ
ーによりさらに精製した。カラムYMCパック、A−324OD
S10×250mm;カラム温度25℃;溶出溶媒A0.1%−トリフ
ルオロ酢酸−99.9%蒸留水;溶出溶媒B0.1%−トリフル
オロ酢酸−99.9%アセトニトリル;溶出プログラム0分
(90%A+10%B),30分(60%A+40%B);溶出速
度2m/分,検出波長230nm。本条件下で保持時間23.0
分に溶出された主ピーク画分を集めて、バイオラッドAG
1×8(AcOH型、1.8×5cm)のカラムに通し、洗液も集
め、アセトニトリルを留去した後、凍結乾燥した。白色
粉末56mgを得た。得られた目的物は上記高速液体クロマ
トグラフィーと同一条件で23.0分に鋭い単一のピークを
示した。エルマン ジー エル(Elman,G.L.)(1959)
アーキテクチュアル バイオケミストリー アンド バ
イオフィジクス(Arch.Biochem.Biophys.)8270−77法
による遊離のSH基の定量:114%。
アミノ酸分析値 Ser1.65(2);Glu2.13(2);Gly1.0
0(1);Ala1.04(1);1/2Cys0.82(1);Val1.03
(1);Tyr1.97(2);Lys0.95(1);His1.72(2),A
rg1.00(1)。回収率74%。
1/2Cysは過ギ酸酸化法により定量した。カッコ内は理
論値を示す。
(2)N末ペプチドとヘモシアニンとの複合体の作製 上記(1)で得られたN末ペプチド(5mg)とヘモシ
アニン(10mg)とを4mの0.2Mリン酸緩衝液(pH7.3)
に溶解し、氷水中で冷却した2.5%グルタールアルデヒ
ド400μを1滴づつ撹拌しながら加えた。氷冷下で3
時間撹拌後、蒸留水に対して透析し、N末ペプチドとヘ
モシアニンとの複合体を得た。
(3)N末ペプチドとウシ血清アルブミンとの複合体の
作製 ウシ血清アルブミン(BSA)(132mg)を3mの0.1Mリ
ン酸緩衝液(pH7.5)に溶解した(A液)。11.2mgのN
−(γ−マレイミドブチルオキシ)サクシンイミド(GM
BS)を200μのジメチルホルムアミド溶液で溶解した
(B液)。スターラーで撹拌しながらA液にB液を滴下
し、混合液を30℃で30分間反応させたのち、0.1Mリン酸
緩衝液(pH6.5)−0.1M NaClを溶出液としたSephadexG
−25(1.5cm×20cm)で精製し、マレイミド基を導入し
たウシ血清アルブミンを得た。
(1)で得られたペプチド(5mg)を0.1Mリン酸緩衝
液−5mM EDTAに溶解し、これにマレイミド基を導入した
ウシ血清アルブミン(20mg)を加え(全容量5m以
下)、30℃で60分間反応を行った。これにPBSを加えて1
2mにし、N末ペプチドとウシ血清アルブミンとの複合
体を得た。
(4)抗ポリペプチド(I)N末ペプチド抗体の作製 上記(2)で得られたN末ペプチドとヘモシアニンと
の複合体をFreundのcomplete adjuvantとよく混合し、
その混合物をウサギの皮下に注射した。以後、2週間お
きに上記(3)で得られたN末ペプチドとウシ血清アル
ブミンとの複合体をFreundのincomplete adjuvantと混
合し、その混合物を同じウサギに注射した。
上記の方法で免疫したウサギから採取して得られた血
液を遠心分離し、抗ポリペプチド(I)N末ペプチド抗
体を得た。
実施例11 抗C末ペプチド抗体の作成 (1)C末ペプチド H−Cys−Ala−Leu−Ser−Arg−Lys−Ile−Gly−Arg−O
Hの合成 実施例10と同様な方法で合成した。
Boc−Arg(Tos)・PAM−P(0.5mmol/g)を用い、カ
ルボキシル末端から順次合成した。Boc−Gly,Boc−Ile,
Boc−Lys(Cl−Z),Boc−Arg(Tos),Boc−Ser(Bz
l),Boc−Leu,Boc−Ala,Boc−Cys(MeBzl)を用いた。
実施例10と同様にフッ化水素処理および精製をして、目
的物の白色粉末200mgを得た。このペプチドは実施例10
に記載した高速液体クロマトグラフィーの条件で、12.6
分に鋭い単一のピークとして溶出された。エルマン ジ
ー エル(Elman,G.L.)(1959)アーキテクチュアル
バイオケミストリー アンド バイオフィジクス(Arc
h.Biochem.Biophys.)82,70−77法による遊離のSH基の
定量:106%。
アミノ酸分析値 Ser0.86(1);Gly0.96(1);Ala1.0
0(1);Ile1.00(1);Leu1.01(1);Lys1.05(1);
Arg2.06(2)。回収率68%。
(2)C末ペプチドとヘモシアニンとの複合体の作製 上記(1)で得られたC末ペプチドを用いて、実施例
10(2)と同様の方法でC末ペプチドとヘモシアニンと
の複合体を得た。
(3)C末ペプチドとウシ血清アルブミンとの複合体の
作製 上記(1)で得られたC末ペプチドを用いて、実施例
10(3)と同様の方法でC末ペプチドとウシ血清アルブ
ミンとの複合体を得た。
(4)抗ポリペプチド(I)C末ペプチド抗体の作製 上記(2)で得られたC末ペプチドとヘモシアニンと
の複合体をFreundのcomplete adjuvantとよく混合し、
その混合物をウサギの皮下に注射した。以後、2週間お
きに上記(3)で得られたC末ペプチドとウシ血清アル
ブミンとの複合体をFreundのincomplete adjuvantと混
合し、その混合物を同じウサギに注射した。この方法で
免疫したウサギから採取して得られた血液を遠心分離
し、抗ポリペプチド(I)C末ペプチド抗体を得た。
発明の効果 本発明ではポリペプチド(I)もしくはその部分ペプ
チドに対する抗体を用いてポリペプチド(I)を容易に
精度高く分離、精製することができ、ポリペプチド
(I)の作用機序の解明、ひいてはその医薬への応用の
途を開くものであり、その産業上の効果は大である。ま
た本発明においては、ポリペプチド(I)の部分ペプチ
ドを抗原の一部として用いた抗体を得ることができる
が、この場合には部分ペプチドであるため化学合成等、
簡単な方法で原料の調達が出来、その単離・精製自体が
煩雑なポリペプチド(I)全蛋白質を用いる場合に比べ
てより簡単にポリペプチド(I)もしくはその部分ペプ
チドに対する抗体が製造でき、ひいてはより簡便なポリ
ペプチド(I)の検出・定量法を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は参考例1で得られた、プラスミドpUNK5に含ま
れるポリペプチド(I)cDNAを含むDNAの制限酵素地図
を示す。 第2図は参考例1で得られた、プラスミドpUNK5に含ま
れるポリペプチド(I)cDNAの塩基配列およびこれから
翻訳されるアミノ酸配列を示す。 第3図は、参考例1で述べた、本発明のポリペプチド
(I)のアミノ酸配列(上段)とヒトβNGFのアミノ酸
配列(下段)との比較を示す。 第4図は参考例2で得られた、プラスミドpHNT2に含ま
れるポリペプチド(I)cDNAを含むDNAの制限酵素地図
を示す。 第5図は参考例2で得られた、プラスミドpHNT2に含ま
れるポリペプチド(I)cDNAを含有するDNAの塩基配列
およびこれから翻訳されるアミノ酸配列を示す。 第6図は、参考例3で得られた、大腸菌用のポリペプチ
ド(I)発現ベクターpENGFT102の構築図を示す。 第7図は、参考例5で得られた、動物細胞用のポリペプ
チド(I)発現ベクターpNTK26およびpNTL145の構築図
を示す。 第8図は、参考例6で得られた、動物細胞用のポリペプ
チド(I)発現ベクターpNTS101の構築図を示す。 第9図は実施例5で得られたモノクローナル抗体MoAb82
−4と実施例6で得られたHRP−MoAb4−2を用いて、実
施例7で得られたEIAによるポリペプチド(I)の定量
結果を示す。 第10図は実施例8で得られた各種ペプチドのモノクロー
ナル抗体MoAb4−2に対する競合的結合阻害の結果を示
す。 第11図は実施例8で得られた各種ペプチドのモノクロー
ナル抗体MoAb46−31に対する競合的結合阻害の結果を示
す。 第12図は実施例8で得られた各種ペプチドのMoAd82−4
に対する競合的結合阻害実験の結果を示す。 第13図は実施例8で得られた各種ペプチドのモノクロー
ナル抗体MoAb184−62に対する競合的結合阻害の結果を
示す。 第14図は実施例5で得られたモノクローナル抗体MoAb4
−2を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12P 21/08 G01N 33/53 D G01N 33/53 33/577 B 33/577 C12N 5/00 B 微生物の受託番号 FERM BP−2910 微生物の受託番号 FERM BP−2911 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG) EPAT(QUESTEL)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(1) で表わされるアミノ酸配列を含有するペプチドに対する
    抗体。
  2. 【請求項2】式〔2〕Tyr Ala Glu His Lys Ser His Ar
    g Gly Glu Tyr Ser Val Cysで表わされる配列のうちの
    連続した12〜14個のアミノ酸からなるポリペプチドまた
    は式〔3〕Cys Ala Leu Ser Arg Lys Ile Gly Argで表
    わされる配列のうちの連続した8〜9個のアミノ酸から
    なるポリペプチドに対する抗体。
  3. 【請求項3】ポリクローナル抗体である請求項1または
    2記載の抗体。
  4. 【請求項4】モノクローナル抗体である請求項1または
    2記載の抗体。
  5. 【請求項5】請求項1または2記載の抗体を産生する能
    力を有するハイブリドーマ。
  6. 【請求項6】請求項1または2記載の抗体を用いること
    を特徴とする、式(1)で表わされるアミノ酸配列を含
    有するペプチドの精製法。
  7. 【請求項7】請求項1または2記載の抗体を用いること
    を特徴とする式(1)で表わされるアミノ酸配列を含有
    するペプチドの検出・定量法。
JP2-222544A 1990-05-25 1990-08-27 抗体、その製造法および用途 Expired - Lifetime JP3024987B2 (ja)

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JP1-218711 1989-08-28
JP21871189 1989-08-28
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