JP3016333B2 - 耐食性に優れた深絞り用冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
耐食性に優れた深絞り用冷延鋼板及びその製造方法Info
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- Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
- Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
Description
耐食性,加工性,溶接性,化成処理性等に優れる冷延鋼
板及びその製造方法に関するものである。
対し,自動車自体の軽量化およびコストダウンの点か
ら,板厚の薄肉化が考えられている。しかしながら板圧
を減少させると,腐食後の残りしろが少なくなるため,
腐食後の強度減少という問題が生じる。一般に自動車用
鋼板の耐食性を向上させるために,亜鉛めっきの目付量
を増やすという方法が最も簡単であるが,付着量増加は
コストの上昇を招き,また鋼板を加工する際に被覆層の
はく離という問題が生じ,下地が露出して腐食しやすく
なる。また自動車用部品の組立を行う際にスポット溶接
が用いられているが,この溶接に対してめっきの付着量
が大きく影響を及ぼす。つまり付着量の増大とともに溶
接性が劣化することが認められる。また自動車用に用い
られる鋼板には,深絞り性などの成形性も優れ,しかも
安価であることも要求される。
報に示されるように,鋼板そのものの耐食性を改善した
鋼板の製造方法に関する技術も見られるが,鋼板中にP
,Cu,NiのほかMo,Crといった元素を相当量添加する
ため,製造コストが高くなる上に,加工性が劣化しやす
いという欠点を有している。またC 量が60ppm 以上と高
いため,鋼板の深絞り性の向上はあまり期待できない上
に,固溶C を減ずるためにTi添加量を多くせざるを得
ず,そのため製造コストの上昇,あるいは表面性状の低
下にもつながっている。
鑑みてなされたもので、低コストでしかも耐食性,加工
性,溶接性,化成処理性に優れた表面処理鋼板及びその
製造方法を開発することを目的とする。
検討を重ねた結果,鋼板としてIF鋼(格子間固溶元素の
ない鋼)をベースとして,耐食性を向上させる元素とし
て,P ,Cu,Niの元素を添加し,さらに耐食性を付与す
る元素として特にSnに注目してSnを添加した耐食性に優
れた深絞り用鋼板の少なくとも一方の表面に,Ni-P系合
金めっき層もしくはさらにW,Mo,Cr,Cuの一種または二種
以上を含有するNi-P系合金めっき層を形成し,非酸化性
雰囲気で熱処理を施すことにより,鋼板素地とめっき層
の界面にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金領域を形成す
ることによって非常に高い耐食性を十分確保することに
成功した。
りである。 1 )重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以下,Mn:0.
05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,sol.Al:0.
1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.002%,Cu:0.
2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.05%であ
り,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P +Cu+
Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜0.1%,N
b:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含有し,
残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板の少なく
とも一方の表面に,Fe-Ni-P を主成分とする拡散合金層
を有する,優れた耐食性と深絞り性を有する冷延鋼板。 2 )重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以下,Mn:0.
05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,sol.Al:0.
1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.002%,Cu:0.
2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.05%であ
り,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P +Cu+
Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜0.1%,N
b:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含有し,
残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板の少なく
とも一方の表面に,Fe-Ni-P を主成分としW,Mo,Cr,Cuの
一種または二種以上を含有する拡散合金層を有する,優
れた耐食性と深絞り性を有する冷延鋼板。 3 )重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以下,Mn:0.
05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,sol.Al:0.
1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.002%,Cu:0.
2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.05%であ
り,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P +Cu+
Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜0.1%,N
b:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含有し,
残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板を,酸洗
しスケールを除去後焼鈍の前に,または酸洗し冷間圧延
した後焼鈍の前に,前記鋼板の少なくとも一方の表面
に,電気めっきまたは無電解めっきによってPを8 〜18
重量% 含有するNi-P系合金めっきを施し,非酸化性雰囲
気で500 〜880℃で拡散熱処理を行い,鋼板素地表面にF
e-Ni-P を主成分とする拡散合金領域を形成することを
特徴とする,優れた耐食性と深絞り性を有する冷延鋼板
の製造方法。 4 )重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以下,Mn:0.
05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,sol.Al:0.
1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.002%,Cu:0.
2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.05%であ
り,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P +Cu+
Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜0.1%,N
b:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含有し,
残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板を,酸洗
しスケールを除去後焼鈍の前に,または酸洗し冷間圧延
した後焼鈍の前に,前記鋼板の少なくとも一方の表面
に,電気めっきまたは無電解めっきによってPを8 〜18
重量% ,W,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を15重量% 以
下の範囲で含有するNi-P系合金めっきを施し,非酸化性
雰囲気で500 〜880 ℃で拡散熱処理を行い,鋼板素地表
面にFe-Ni-P を主成分としW,Mo,Cr ,Cu の一種または二
種以上を含有する拡散合金領域を形成することを特徴と
する,優れた耐食性と深絞り性を有する冷延鋼板の製造
方法。 5 )スラブを熱間圧延して前述した鋼板を用意する際
に,Ar3 点以上で熱圧し,巻取り温度(CT;℃) として,
610 −2000×Sn≦CT( ℃) ≦710 −2000×Snの範囲で熱
延鋼板を巻取る工程と,70〜90% の圧下率で冷間圧延す
る工程を有する,請求項3 、4 に示した優れた耐食性と
深絞り性を有する冷延鋼板の製造方法。 6 )鋼板を非酸化性雰囲気で熱処理する際に,連続焼鈍
炉によって加熱することによって鋼板表面にFe-Ni-P を
主成分とする拡散合金領域を形成し,優れた耐食性と深
絞り性を有する冷延鋼板の製造方法。
で適用される鋼板は,P,Cu,Ni の添加をした鋼に,耐食
性をさらに向上させる元素としてSnを添加することによ
り,IF鋼をベースに耐食性及び加工性を十分確保するこ
とに成功したものであり以下の如くである。上記のよう
に鋼成分(以下において成分はすべて重量% である)を
限定した理由について述べると以下の如くである。
い。したがって本発明の効果を損なわない範囲として,
その上限を0.01% に限定するが,好ましくは0.006%であ
る。また下限については,過度に極低C 化しても加工性
がさほど向上しないことに加え,極低C 化するために,
他の元素を添加する必要があり,そのためコスト上昇を
伴うので0.002%とする。
化させることなく,固溶強化元素として鋼板の強化に寄
与する。しかしながら1%を越えて含有すると熱間圧延の
加熱時に発生するスケール量が著しくなるばかりか,過
剰に添加すると鋼板の深絞り性を劣化させ,さらに化成
処理性を悪化させるので1%を上限とした。
れるS を固定し,赤熱脆性を防ぐのに必要な元素である
ためその下限を0.05% とした。また1%を越えて含有する
とランクフォード値を著しく劣化させ,しかもコスト的
にも不利であるので,その上限を1%とした。
を強化できる元素であると共に,鋼板自体の耐食性を向
上させる元素である。IF鋼をベースとして,0.1%を越え
て含有させると,結果的に高強度化すると共に,粒界に
偏析しやすくなり,二次加工劣化の問題が顕在化するた
め,0.1%以下に限定した,一方耐食性を付与するには,
0.02% の添加が必要であり,これを下限とした。
て含有すると鋼の延性を劣化させ,耐食性に悪影響を及
ぼすため0.01% 以下とした。好ましくは0.007%以下であ
る。
N の固定のために必要であるが,多量に添加するとコス
トの上昇をもたらすとともに,アルミナ系介在物が増加
して表面性状が劣化するので0.1%以下とした,好ましく
は0.06% 以下である。
ォード値を得るためには,少ないほうが望ましいが,本
発明の効果を損なわない範囲として,その上限を0.004%
以下とした。
される場合に,鋼板自体の耐食性を向上させる元素であ
り,0.2%以上でその効果が得られる。過剰に添加すると
深絞り性を劣化させるばかりでなく,熱延時の表面疵ま
たはSnとの共存により,熱延時の熱間割れが発生しやす
くなるため,その上限を0.5%とする。
れた場合の表面疵を減少させ,さらに耐食性を高めるの
に有効な元素でである。しかしながら過剰に添加すると
深絞り性の劣化,コストの上昇を招くので,その下限値
を0.1%とし,上限を0.5%とした, B :0.0005〜0.002%とする。
有する。とくにIF鋼をベースとして,P を添加する場
合,二次加工脆化の問題を回避するために,添加は必須
である。0.0005% 未満ではその効果が小さく,0.002%を
越えて含有すると再結晶温度の上昇およびランクフォー
ド値の低下と行った欠点が生ずるために,この範囲に限
定した。
定を行い,ランクフォード値を向上させる作用がある。
即ち0.005%未満ではその効果が乏しく,一方多量に添加
するとコストの上昇を招くだけでなく,表面欠陥の原因
や化成処理性を劣化させるので,その上限を0.1%とす
る。
にC の固定を行う性質が有り,Tiとの複合添加によりさ
らにランクフォード値が上昇する,即ち0.002%未満では
その効果が乏しく,多量に添加するとコストの上昇を招
くので上限を0.05% に限定する。
×Sn×(2×P +Cu+Ni) ≦20を満たすSn量とする。Snは
前述の通り本発明において重要な元素であり,鋼板の耐
食性を向上させるためには添加は必須である。0.05% を
越えて含有させると,熱間延性が低下するばかりか鋼板
の延性および深絞り性も低下させるので0.05% を上限と
した,またSnによる耐食性向上効果を得るために,0.00
2%を下限とした。一方Sn含有量は2≦1000×Sn×(2×P
+Cu+Ni) ≦20で示される関係式により限定される。
となった。以下成分組成は重量% である。 C :0.002 〜0.01% ,Si:1%以下,Mn:0.05〜1%,P :
0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,sol.Al:0.1%以下,N :
0.004%以下,B :0.0005〜0.002%,Cu:0.2 〜0.5%,N
i:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.05%であり,前記組成間
に,2 ≦1000×Sn×(2×P +Cu+Ni) ≦20を満足する関
係を有し,Ti:0.005 〜0.1%,Nb:0.002 〜0.05% の何
れか一種または二種を含有し,残部が鉄および不可避不
純物成分からなる鋼板の少なくとも一方の表面に,Fe-N
i-P を主成分としW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を含
有する拡散合金層を有する冷延鋼板の耐食性を調査し
た。
を組み合わせた腐食環境で60日間経過後の無塗装鋼板の
腐食深さを測定した。平均腐食深さと鋼の成分組成との
関係を示すパラメータとして,1000×Sn×(2×P +Cu+
Ni) を用い,鋼板の平均腐食深さ及びランクフォード値
(rm)との関係を図1 に示す。図1 から明らかなように,
耐食性と深絞り性はSn,P,Cu,及びNiの含有量に強く依存
することがわかる。
が2 以上であるとき,焼鈍方法によらず耐食性が良好に
なることがわかる。しかし,20を越すとき,耐食性を付
与する元素の添加量が増えるため,ランクフォード値が
劣化する。従って,耐食性と深絞り性を共に満足させる
ことが不可能となる。このため,Sn量は2 ≦1000×Sn×
(2×P +Cu+Ni) ≦20で示される関係式に限定される。
このように,Sn,P,Cu,及びNiの含有量が焼鈍の種別によ
らず耐食性に大きく影響することから,Sn,P,Cu,及びNi
含有量のバランスのとれた適正な組合せが,優れた耐食
性に寄与することが判る。
性を具備しているが,苛酷な環境下に於て使用する自動
車用鋼板に対してはまだ不十分である。而して上記の鋼
板に対してさらなる耐食性を付与するため,本発明では
上記の鋼板にFe-Ni-P 拡散合金めっき層を形成する。P
を8 〜18重量% 含有するNi-P合金めっきはアモルファス
に近い構造をとり,この様なめっき層を有する鋼板を熱
処理すると一般の結晶性のめっき皮膜の場合に比較して
均一な拡散合金層が短期間のうちに形成される。このよ
うな拡散合金層は下地鋼を腐食から保護するとともにひ
とたび,下地鋼板の腐食が開始された後には形成される
鉄の腐食生成物を素早く緻密なものとする。この結果,
従来の技術では得られなかった優れた耐食性を得ること
ができる。
晶質であり,P の分布も均一でない。このため,熱処理
を受けたときに形成される拡散合金領域の組成が均一で
なく,前記下地生成錆の緻密性への寄与が十分でなく,
優れた耐食性を得ることができない。一方P が18重量%
超ではNi-P合金めっきは脆くなりその密着性が低下す
る。このため,熱処理などの過程でめっき剥離を生じや
すい。このようなことから,本発明における鋼板に形成
するめっき層のP 含有率は8 〜18重量% とした。望まし
い範囲は8 〜15重量% であり,より望ましい範囲は10〜
13重量% である。
は二種以上を15重量% 以下の範囲で複合化したNi-P系合
金めっきとして使用することもできる。W,Mo,Cr,Cuはい
ずれも,鋼の腐食に対しインヒビター的な役割をもつと
と同時に,Ni,P との相乗効果で初期錆の緻密性,安定
性を一層向上させる効果を有する。W,Mo,Cr,Cuの含有率
についてはその合計値で15重量% 以下であることが望ま
しい。W,Mo,Cr,Cuの合計含有率の増加と共に耐食性は向
上するが,その合計値が15重量% を超えるとその密着性
が低下するため,その後の過程でめっき剥離を生じやす
い。従って,W,Mo,Cr,Cuの含有率については合計値とし
て15重量% とした。W,Mo,Cr,Cuの含有効果を発揮するた
めには,その下限は0.5 重量% 以上が望ましい。
については特に規定しないが,0.1〜8g/m2 の範囲が望
ましい。0.1g/m2 未満では耐食性向上効果が十分でな
く,8g/m2 超ではめっき層の加工性が低下し剥離しやす
くなるとともに,めっき量を多くするためにラインスピ
ードも遅くする必要があり生産効率上不利となる。次に
本発明における製造条件について説明する。本発明は熱
延条件,焼鈍条件によらずその作用効果があるが,生産
性の高い連続焼鈍を用いる製造方法が請求項7 の発明で
ある。熱間圧延工程は,連続鋳造機から直送された高温
鋳片,または加熱によって得られた高温鋳片,あるい
は,鋼塊を分塊圧延して得られたスラブを,その成分組
成のAr3 変態点以上の温度で熱間圧延を行う。Ar3 変態
点未満では,焼鈍後のランクフォード値が劣化するので
この範囲に限定した。しかし,熱間圧延潤滑が十分に行
われる等の条件の下では,フェライト域の熱間圧延の適
用も本発明鋼の特性を損なうものではない。
×Sn≦CT( ℃) ≦710 −2000×Snで規定される温度で巻
取る。Snはその特性上粒界に偏析しやすい元素として知
られており,粒界に著しく偏析するのを押さえるため
に,Sn添加量に応じた温度で巻取る必要がある。図2 は
CT+2000×Snをパラメータとし,粒界偏析指数との関係
を調べたもので,CT+2000×Snの増加に伴って粒界偏析
指数は増加する傾向にある。
に対して粒界に偏析しているSnの比率を表したものであ
る。CT+2000×Snが610 未満では粒界偏析指数は小さ
く,粒界偏析は押さえられているが,逆にランクフォー
ド値が小さくなる。また710 を越す値では,ランクフォ
ード値は大きくなるが,粒界偏析指数も増大する。上記
いずれの場合でも,鋼板の特性は不適当であり,610 −
2000×Sn≦CT( ℃) ≦710 −2000×Snで規定される温度
範囲で巻き取ることが重要となる。上記の熱延巻取り温
度で巻取り,酸洗を行った後の冷間圧延は,圧下率の上
昇に伴い焼鈍後のランクフォード値は上昇するが,圧下
率70% 未満では高いランクフォード値をえることは難し
く,圧下率90% 以上ではその効果が少ないので,この圧
下範囲に限定した。
のであるが,酸洗ライン出側にて酸洗に引き続いて冷間
圧延前に実施するか,もしくは,酸洗冷圧後めっきを行
ってもかまわない。特にこのめっきが,冷間圧延前の場
合は,めっき前の洗浄,めっき前の活性化処理としての
酸洗などが不要となるため有利である。
られるが,簡便性,および得られる膜質等の点で電気め
っきまたは無電解めっき(化学めっき)が望ましい。次
に,Ni-P系合金めっき層を施した鋼板を非酸化雰囲気で
熱処理して,鋼板素地とめっき層の界面にFe-Ni-P を主
成分とする拡散合金領域を形成する。拡散のための熱処
理は,冷間圧延後の通常の焼鈍設備で行うことが可能で
ある。特に生産性の高い連続焼鈍を用いる方法が望まし
い。ここで述べる連続焼鈍とは一般的な冷延鋼板用の連
続焼鈍設備ならびに溶融めっきラインの前処理設備とし
てある焼鈍設備を用いることができる。この時の,最高
到達温度であるが,これは500 ℃以上880 ℃以下,望ま
しくは800 ℃以上880 ℃以下であることが望ましい。50
0℃未満ではN i-P 系合金めっき層と鋼表面との拡散層
が十分に形成されず,腐食過程での緻密な錆形成が十分
でないため耐食性向上効果が小さい。またより高いラン
クフォード値を得るためには800 ℃以上が望ましく,好
ましくは820 ℃を下限とする。一方880 ℃超では熱処理
炉内ロールへのめっき金属のピックアップが生じやす
く,その結果表面キズ等の原因となりやすい。さらに88
0 ℃を超える温度で焼鈍すると,フェライト粒の粗大化
により,プレス成形後,肌荒れを起こしやすくなる。ま
た,この最高到達板温での保持時間は温度によっても異
なるが,1 から120 秒が望ましい。短すぎると十分な拡
散領域が形成されないため,耐食性の向上効果が現われ
ず,120 秒超では過度の拡散合金化によってこの界面層
がもろくなるため,めっき層の密着性,加工性が低下す
る。また,熱処理の際,300 〜400 ℃程度の温度で数分
程度の過時効処理が行われてもよい。熱処理により形成
される好適な拡散領域は深さが0.1 〜20μm程度であ
る。
って昇温速度を50℃/sec以上で加熱する製造方法が請求
項6 である。なお,Ni-P系合金めっき層を熱処理する
と,その一部が拡散合金層を形成して,鋼板/拡散合金
域/Ni-P系合金めっき層の構成となる場合と,その全て
が拡散合金層を形成して,鋼板/拡散合金域の構成とな
る場合があるが,本発明はいずれも含む。
件で調質圧延が行われる。このような耐食性と深絞り性
をともに具備した冷延鋼板は,自動車用材料としてきわ
めて有用な鋼板である。
するが,本発明はむろんこの実施例に限定するものでは
ないことは当然である。なお耐食性,加工性の評価は,
いずれの実施例においても,作成した試験材を,以下に
示す方法にて評価を行った。 (評価方法・基準) (1) 耐食性:乾湿繰り返しに塩水噴霧を組み合わせた腐
食環境で1 日1 サイクルの腐食試験を行い,試験後の腐
食深さを測定し,以下の基準で評価した。
の損傷状況を観察し,以下の基準で評価した。
する程度 △ 大きなクラックの発生またはめっき片の剥離を部分
的に生じる × 広範囲にめっき剥離が認められる 実施例1 表1 に示す化学組成の鋼を溶製し,スラブとしたものを
加熱温度1200℃,仕上温度900 ℃,巻取温度650 ℃の条
件下で熱間圧延により4.0 mm厚の熱延板に仕上げた。
したものに,P 含有率12重量% ,付着量1g/m2 のNi-Pめ
っきを行ったものを,焼鈍方法として箱焼鈍は700 ℃,
連続焼鈍は850 ℃の二種類で焼鈍を行った。次に0.5%の
調質圧延を行った後,試験片を採取して引っ張り試験を
行った。実施例の結果を表2 に示す。表2 から本発明の
鋼は比較鋼に対してランクフォード値は高く,また優れ
た耐食性を示している。
P 含有率12重量% ,付着量1g/m2 のNi-Pめっきを行った
ものを,表3 に示す種々の熱延巻取温度,冷間圧延率,
焼鈍温度の条件で製造し,その鋼板の材質を調べた。そ
の結果を表4 に示す。表4 から本発明の製造方法で製造
された鋼板はいずれもランクフォード値は1.6 以上で優
れた性質を示している。
スラブとしたものを加熱温度1200℃,仕上温度900 ℃,
巻取温度650 ℃の条件下で熱間圧延により4.0mm厚の熱
延板に仕上げた。
したものに,表5 中に示す範囲でNi-P系めっきを行い80
0 〜880 ℃の温度範囲内で連続焼鈍した後,0.5%の調質
圧延を行って試験片を作成した。その結果を表6 に示
す。本発明の鋼板はいずれも優れた耐食性,加工性を示
している。
スラブとしたものを加熱温度1200℃,仕上温度900 ℃,
巻取温度650 ℃の条件下で熱間圧延により4.0mm厚の熱
延板に仕上げた。
っき(No. :A,B,C,M,N,O )を行った後,冷間圧延を施
して0.8 m としたものに,800 〜880 ℃の温度範囲内で
連続焼鈍し,0.5%の調質圧延を行って試験片を作成し
た。その結果を表7 に示す。本発明の鋼板はいずれも優
れた耐食性,加工性を示している。
鋼)をベースとして,耐食性を向上させる元素として,
P ,Cu,Niの元素を添加し,さらに耐食性を付与する元
素として特にSnに注目してSnを添加した耐食性に優れた
深絞り用鋼板の少なくとも一方の表面に,Ni-P系合金め
っき層もしくはさらにW,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上
を含有するNi-P系合金めっき層を形成し,非酸化性雰囲
気で熱処理を施すことにより,鋼板素地とめっき層の界
面にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金領域を形成し、こ
のことにより非常に高い耐食性を十分確保する。
深さおよびランクフォード値(rm)との関係を示す図
クフォード値(rm)との関係を示す図
Claims (6)
- 【請求項1】 重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以
下,Mn:0.05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,
sol.Al:0.1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.00
2%,Cu:0.2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.
05%であり,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P
+Cu+Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜
0.1%,Nb:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含
有し,残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板の
少なくとも一方の表面に,Fe-Ni-P を主成分とする拡散
合金層を有する,優れた耐食性と深絞り性を有する冷延
鋼板。 - 【請求項2】 重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以
下,Mn:0.05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,
sol.Al:0.1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.00
2%,Cu:0.2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.
05%であり,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P
+Cu+Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜
0.1%,Nb:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含
有し,残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板の
少なくとも一方の表面に,Fe-Ni-P を主成分としW,Mo,C
r,Cuの一種または二種以上を含有する拡散合金層を有す
る,優れた耐食性と深絞り性を有する冷延鋼板。 - 【請求項3】 重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以
下,Mn:0.05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,
sol.Al:0.1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.00
2%,Cu:0.2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.
05%であり,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P
+Cu+Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜
0.1%,Nb:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含
有し,残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板
を,酸洗しスケールを除去後焼鈍の前に,または酸洗し
冷間圧延した後焼鈍の前に,前記鋼板の少なくとも一方
の表面に,電気めっきまたは無電解めっきによってPを8
〜18重量% 含有するNi-P系合金めっきを施し,非酸化
性雰囲気で500 〜880℃で拡散熱処理を行い,鋼板素地
表面にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金領域を形成する
ことを特徴とする,優れた耐食性と深絞り性を有する冷
延鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 重量% でC :0.002 〜0.01% ,Si:1%以
下,Mn:0.05〜1%,P :0.02〜0.1%,S :0.01% 以下,
sol.Al:0.1%以下,N :0.004%以下,B :0.0005〜0.00
2%,Cu:0.2 〜0.5%,Ni:0.1 〜0.5%,Sn:0.002 〜0.
05%であり,さらに前記組成間に,2 ≦1000×Sn×(2×P
+Cu+Ni) ≦20を満足する関係を有し,Ti:0.005 〜
0.1%,Nb:0.002 〜0.05% の何れか一種または二種を含
有し,残部が鉄および不可避不純物成分からなる鋼板
を,酸洗しスケールを除去後焼鈍の前に,または酸洗し
冷間圧延した後焼鈍の前に,前記鋼板の少なくとも一方
の表面に,電気めっきまたは無電解めっきによってPを8
〜18重量% ,W,Mo,Cr,Cuの一種または二種以上を15重
量% 以下の範囲で含有するNi-P系合金めっきを施し,非
酸化性雰囲気で500 〜880 ℃で拡散熱処理を行い,鋼板
素地表面にFe-Ni-P を主成分としW,Mo,Cr ,Cu の一種ま
たは二種以上を含有する拡散合金領域を形成することを
特徴とする,優れた耐食性と深絞り性を有する冷延鋼板
の製造方法。 - 【請求項5】 スラブを熱間圧延して請求項3又は4の
鋼板を用意する際に,Ar3 点以上で熱圧し,巻取り温度
(CT;℃) として,610 −2000×Sn≦CT( ℃)≦710 −200
0×Snの範囲で熱延鋼板を巻取る工程と,70〜90% の圧
下率で冷間圧延する工程を有する,請求項3又は4に記
載の優れた耐食性と深絞り性を有する冷延鋼板の製造方
法。 - 【請求項6】 鋼板を非酸化性雰囲気で熱処理する際
に,連続焼鈍炉によって加熱することによって鋼板表面
にFe-Ni-P を主成分とする拡散合金領域を形成し,優れ
た耐食性と深絞り性を有する請求項3又は4に記載の冷
延鋼板の製造方法。
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---|---|---|---|
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US08/265,239 US5500290A (en) | 1993-06-29 | 1994-06-24 | Surface treated steel sheet |
KR1019940014851A KR960013481B1 (ko) | 1993-06-29 | 1994-06-27 | 표면처리강판 및 그 제조방법 |
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JPH07292437A JPH07292437A (ja) | 1995-11-07 |
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- 1994-04-25 JP JP6086710A patent/JP3016333B2/ja not_active Expired - Fee Related
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