JP3009912B2 - アルカリ金属塩化物電解用陽イオン交換膜 - Google Patents

アルカリ金属塩化物電解用陽イオン交換膜

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はアルカリ金属塩化物電解用の陽イオン交換膜
及びこれを用いたアルカリ金属塩化物の電解方法に関す
るものである。
〔従来の技術〕
アルカリ金属水酸化物の製造に使用されるイオン交換
膜としては、高い電流効率と低い電気抵抗を有し、且つ
大きな機械強度を有することが必須である。
主流となっているフィルタープレス型電解槽において
は、イオン交換膜をガスケットを介して電解槽枠で締め
つけ、イオン交換膜により陽極室と陰極室に分離する構
造が採られている。
このような電解槽においてアルカリ金属酸化物の電解
を実施した場合、イオン交換膜は電解槽枠の全周囲、即
ちガスケットに近い部分は通常の電解面である中央部に
比して機械強度の劣化が大きく、この僅かの部分の強度
低下ひいては破損により短時間で取りかえねばならな
い。又、この部分の破損による電解槽の損傷、電解槽・
イオン交換膜の更新のための電解停止によるアルカリ金
属水酸化物の生産性の低下等の問題も起きている。
膜の機械強度の劣化や損傷が起こりやすい部分は、陽
極液の塩素ガスが滞留しやすい部分に相当し、その理由
としては以下の如く考えられる。即ち、塩素ガスがイオ
ン交換膜の陽極面側から膜中に拡散していき、一方、陰
極面側からはアルカリ金属水酸化物も膜中に拡散してい
き、膜中で両者が出合い、次のような反応によって、イ
オン交換膜中に溶解度の小さいアルカリ金属塩化物が生
成・析出し、又発生期の酸素が発生することによってイ
オン交換膜の組織が破壊され、前述の如き機械強度の低
下が起こると考えられる。
Cl2+2MOH→MCl+MClO+H2O 2MClO→2MCl+O2 従来このようなイオン交換膜の局部的な強度低下を防
ぐ方法として、電解槽内の塩素ガス滞留部分にイオン交
換膜の片面又は両面をガス不透過物質で被覆する方法
(特開昭52−144399号公報、特開昭54−71780号公
報)、陰極面側を多孔質フィルムで被覆し、陽極面側に
ガス解放層と気孔内部が親水性を有する多孔体層で被覆
する方法(特開昭63−118082号公報)等が提案されてい
るが、これらフィルムや多孔質体を異質のイオン交換膜
に接合するには加熱加圧が必要で作業性が悪く、接合し
た周囲は寸法変化が起こりフラットな膜が得にくく、大
型電槽への装着が困難で且つ電解液の槽外リークが発生
し易い。又、接合力が不充分で、電解使用中に剥離が生
じ易いなどの欠点を有している。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は電解槽内の塩素ガスの滞留し易い部分に当る
イオン交換膜の強度低下を防止し、特定の部分のみの強
度低下によって膜の寿命が短くなることがない、新規な
アルカリ金属塩化物の電解用イオン交換膜を提供するこ
とを課題とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明はイオン交換膜によって陽極室と陰極室とに分
離された電解槽を用い、アルカリ金属塩化物を電解する
に際し電解槽の塩素ガスの滞留する部分に相当するイオ
ン交換膜の陰極面側表面に、アルカリ金属水酸化物の拡
散がイオン交換膜の陰極側表層のそれより大きい層を被
覆してなるアルカリ金属塩化物電解用の陽イオン交換膜
である。
ここに電解槽の塩素ガスが滞留し易い部分に相当する
イオン交換膜の部分とは、イオン交換膜がガスケットを
介して電解槽枠で締めつけられているフィルタープレス
型電解槽の場合は、ガスケットに挟まれており、電解槽
枠によってプレスされていない部分(第1図Aの部分)
及び周辺、即ちガスケットより通電部側へ少なくとも幅
10mm以内のゾーン(第1図Bの部分)である。
なぜこのような部分にCl2ガスが滞留するのかは明確
ではないが、ガスケットと膜の段差による微妙な凸凹に
よって、或いはガスケット劣化によってCl2ガスが滞留
すると考えられる。
またガスケットの上下左右の4辺について、どの辺に
おいてもCl2ガスが滞留するが、上辺、下辺そして左右
辺の順でCl2ガスの滞留頻度は大きくなる。
この部分で塩素ガスとアルカリ金属水酸化物が膜中で
反応しアルカリ塩化物の生成・析出、酸素の生成によっ
て膜組織が破壊されると考えられるが、この反応を防ぐ
方法としては従来、陽極面側からの塩素ガスの膜中への
拡散、及び陰極面側からのアルカリ金属水酸化物の膜中
への拡散を防ぐ方法が提案されているが、その効果は必
ずしも充分でなく、その方法もフィルムの接合等複雑な
工程が必要であった。
本発明者らはこの問題を解決すべく鋭意検討を行った
結果、従来とは全く逆にイオン交換膜の塩素ガスの滞留
しやすい部分の陰極面側にアルカリ金属水酸化物の拡散
が大きい層を設けることによって、驚くべきことにその
部分の強度低下を防ぐことができることを見出した。
陰極面側に金属水酸化物の拡散が大きい層を設けるこ
とによって強度低下を生じない理由は明確ではないが、
多層構造の陽イオン交換膜のアルカリの拡散量を左右す
る大きなポインが陰極液に接している層の拡散量にある
ことから類推すれば、上記被覆層を設けることによっ
て、アルカリ金属水酸化物の拡散が大きくなり、塩素ガ
スとアルカリ金属水酸化物の反応が膜中ではなく膜外即
ち陽極面側で生じているため強度低下を生じないと思わ
れる。
イオン交換膜の陰極面側に被覆するアルカリ金属水酸
化物の拡散が大きい層は高含水率の含フッ素重合体、無
機物粒子と含フッ素重合体との混合物等が用いられるが
本発明の範囲を限定するものではない。
高含水率の含フッ素重合体とは、例えばスルホニルフ
ルオロライド基及び/又はカルボン酸基を有する含フッ
素重合体で、その具体例としては、 (n=0,1,2、m=1,2,3)の共重合体、 (n=0,1,2、m=1,2,3,4、R=CH3,C2H5,C3H7)の共
重合体等でその加水分解されたものである。
ここに高含水率の層とは、陽イオン交換膜の陰極側表
層より90℃10NNaOH中の含水率で1〜12%以上高いもの
が好ましく、さらには、3〜7%以上高いものがより好
ましい。
無機物粒子としてはジルコニウム、ケイ素、チタンの
酸化物、窒化物、又は炭化物が用いられる。これらの無
機物の粒子径は0.01〜0.20μ、好ましくは0.02〜0.08μ
である。
陰極面側の被覆層として用いられる無機物粒子と含フ
ッ素重合体の混合物において、含フッ素重合体の混合物
中の割合は5〜70wt%の範囲で、Hg圧入法で多孔度15%
以上であることが好ましい。
アルカリ金属水酸化物の拡散速度は、厚さ25μの均一
サンプル膜を3.5N塩化ナトリウムを陽極室に、30%水酸
化ナトリウムを陰極室に張込んだセルに組込み、90℃で
3時間経過後の水酸化ナトリウムの移動量から求めた。
又、無機酸化物粒子を含む層の拡散速度は孔径3μのメ
ンブレンフィルターの上に無機酸化物粒子を含む層を塗
布したものをサンプルとして測定し、拡散量が既知のス
ルホン酸ポリマーを塗布したものとの相対比によって求
めた。
本発明における陽イオン交換膜の陰極面とは、多層構
造の陽イオン交換膜の場合、被覆層が無い部分において
表層に存在する層の含水率が小さい面であり、陽極面と
は含水率が大きい面をいう。
本発明の陽イオン交換膜は、上述の通り塩素ガスの滞
留し易い部分に相当する陰極側の面の部分に、膜のアル
カリ金属水酸化物の拡散速度が陰極側表層のそれより大
きな拡散速度を有する層を被覆してなるものであるが、
これに加えて塩素ガスの滞留し易い部分に相当する陽極
側の面の部分に無機物粒子を被覆層として設けることが
好ましい。
また、陽極面側に無機物粒子を被覆することによって
強度低下をより生じなくなる理由も明確ではないが、当
該部分の陽極面の親水性を向上することによって膜内含
水率が増大し、その結果としてアルカリ金属塩化物が析
出しにくくなるため、或いはCl2ガスが滞留しにくくな
るためと考えられる。
その被覆層は無機物粒子と高含水率の含フッ素重合体
及び、又は無機物粒子とポリテトラフルオロエチレン等
のフッ素重合体よりなる液及びガス透過性の多孔度15%
以上の多孔質層であり、イオン交換膜の塩素ガスの滞留
し易い部分の陽極面側には高含水率の含フッ素重合体の
みを被覆しても効果はない。
これらの被覆層は、装着しようとする電解槽の塩素ガ
スが滞留し易い部分すなわちガスケットに挟まれてお
り、電解槽枠によってプレスされていない部分及びガス
ケットより通電部側へ少なくとも幅10mm以内のゾーンに
相当する膜表面にのみ塗布すれば良い。しかしながら工
業的に実施するためには、装着時のズレ等も考慮して幅
20〜300mmで被覆することが好ましい。また、膜の有効
利用の観点から及びこれらの被覆層を設けた部分が、で
きるだけ通電部に入らないようにすることが重要である
ため、膜の端からの被覆層の占める距離は好ましくは30
0mm以内、更に好ましくは150mm以内にすることが必要で
ある。
これらの被覆層は上下左右の各4辺に設けることが好
ましいが、Cl2ガスが特に滞留し易い上辺及び下辺にの
み設けることが効果的であり、工業的に有利である。
被覆量は、効果及びコストの面から、膜面1cm2あたり
0.05〜10mg塗布することが好ましい。
イオン交換膜全面にこれらの被覆層を設けると電流効
率の低下が起る悪影響を及ぼし、又生産コストも上昇す
るため通電面を避け周囲のみ被覆層を設けることが必要
であり、全体の膜面積の40%以下であることが好まし
く、更に好ましくは、20%以下である。
本発明の陽イオン交換膜のベース膜として用いられる
陽イオン交換膜は、それ自体公知であって当業者には明
らかであるが、スルホン酸及び/又はカルボン酸イオン
交換基をもつイオン交換樹脂膜であって、フッ素炭化水
素の主鎖より成り、スルホニル基及び/又はカルボキシ
ル基を含む側鎖を溶融可能形で有する重合体を加水分解
したものである。次にこのフッ素化重合体の一般的製造
方法につき詳細に説明するが、これは本発明の範囲を限
定するものではない。
フッ素化重合体は、以下に述べる第1群より選ばれる
少なくとも1種の単量体と、第2群及び/又は第3群よ
り選ばれる少なくとも1種の単量体を共重合することに
より製造することができる。
第1群の単量体はフッ素化ビニル化合物、例えばフッ
化ビニル、ヘキサフロロプロピレン、フッ化ビニリデ
ン、パーフロロ(アルキルビニルエーテル)、テトラフ
ロロエチレンの少なくとも1種である。
第2群の単量体は、カルボン酸型イオン交換基に変換
し得る官能基を有するビニル化合物である。
即ち、一的には式 (但しs=0,1,2、t=1〜12の整数、Y=F又はCF3
Z=F又はCF3、R=炭素数1〜4のnアルキル) で表される単量体が用いられる。
好ましい単量体の具体例としては例えば、 CF2=CFO(CF22COOCH3 CF2=CFO(CF33COOCH3がある。
第3群の単量体は、スルホン酸型イオン交換基に交換
し得る官能基を有するビニル化合物である。これは一般
式 CF2=CF−TKCF2SO2F 〔式中Tは炭素原子数1〜8個の2官能性のフッ素化基
であり、Kは0又は1である〕 で表すことができるビニル化合物である。
上記式のT基は分岐していても分岐していなくても
(即ち直鎖状でも)良く、1つ又はそれ以上のエーテル
結合を有していても良い。ビニル基はエーテル結合を介
してT基に結合するものが好ましい。即ち単量体が式CF
2=CFOTCF2−SO2Fのものが好適である。
好適なスルホニルフロライドを含有する単量体の具体
例は CF2=CFOCF2CF2SO2F CF2=CF(CF22SO2F である。
共重合するに当り、前記3つの群より選ばれる単量体
の種類及び割合は、フッ素化重合体に希望する官能基の
種類及び量により選択決定される。
例えば、カルボン酸エステル官能基のみを含有する重
合体を必要とする場合、第1群及び第2群の単量体より
夫々少なくとも1種を選択して共重合すれば良い。又各
単量体の混合割合は、単位重合体当りに要求される官能
基の量により決定される。官能基の量を増やす場合、第
2,第3群より選ばれる単量体の割合を増加させれば良
い。一般的には全官能基の量が交換基に添加された後0.
5〜2.0ミリ当量/g、好ましくは0.6〜1.5ミリ当量/gのイ
オン交換容量の範囲で用いられる。
当業者にとっては明らかに公知であるが、電力原単位
性能の良い陽イオン交換膜とするには、多層構造の陽イ
オン交換膜であることが好ましく、又このような膜を用
いて運転する時は、バリヤー性の高い層を陰極面側にす
るために製造する水酸化アルカリ濃度(陰極液濃度)に
おいて、含水率の小さい層を陰極面側にして運転するこ
とによって高性能が発揮できる。
フッ素系イオン交換樹脂において、含水率は同一官能
基の場合、交換容量が大きい程大きく、又同一交換容量
で比較すれば、側鎖構造が長いほど官能基が強酸基であ
る方が含水率は大きいことが公知であり、これらのこと
を勘案して陽イオン交換膜は設計される。
本発明に用いられる酸化織布は、フッ素化重合体のモ
ノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸である強化
糸と、必要によりハイドロカーボンのモノフィラメント
糸又はマルチフィラメント糸である犠牲糸を用いた実質
的に縦糸及び横糸より成る織布である。
本発明の膜は、上記したフッ素化重合体フィルム及び
強化織布よりなるものが好ましい。
被覆の形成法について以下に述べるが、本発明はこれ
に限定されるものではない。イオン交換膜の陰極面側に
被覆するアルカリ金属水酸化物の拡散が大きい層は以下
のような方法で形成される。
a)20wt%以上のアルコール系溶剤を含む水溶液に高含
水率の含フッ素重合体を1〜20wt%になるように加熱溶
解した液をスプレー法等によって塗布する方法。
b)上記aの液に無機物粒子を加え、ボールミル等によ
って均一に分散させ、スプレー法、ロール方等によって
塗布する方法。
また陽イオン交換膜の陽極側に被覆する無機物の被覆
方法としては、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フ
ッ素重合体の懸濁液に無機物粒子を加えて均一に分散し
た後、スクリーン印刷法、熱融着プレス法等によって塗
布する方法、或いは陰極面側被覆層としても採用される
上記bの方法等がある。水酸化アルカリ製造用の膜とす
るためには、側鎖を溶融可能形で有する重合体(イオン
交換基前駆体膜)を酸または塩基を用いて加水分解処理
して、すべての官能基をイオン化可能な官能基に変換し
なければならないが、被覆層を塗布する際には加水分解
処理後の膜に実施しても良いが、未加水分解のイオン交
換基前駆体膜に処理した方が工業的には有利である。
本発明のアルカリ金属塩化物を電解する条件としては
既知の条件が適用できる。例えば、陽極室のアルカリ金
属塩化物水溶液の濃度は2.5〜5N、陰極室のアルカリ金
属水酸化物の濃度は20〜50%に保ち、温度50〜100℃、
電流密度10〜60A/dm2で運転される。
〔発明の効果〕
本発明は電解槽の塩素ガスの滞留し易い部分に当るイ
オン交換膜の陰極側表面にアルカリ金属水酸化物の拡散
がイオン交換膜の陰極側に面する層のそれより大きい層
を被覆するか或いは、更に陽極側に面する層に無機物粒
子層を被覆することによってイオン交換膜の局部的な機
械強度の低下を防ぐことができ、その結果イオン交換膜
の寿命が延長され安定した長期間の運転が可能となると
いう効果を有している。
〔実 施 例〕
以下に本発明の実施例を示すが、これによって本発明
が限定されるものではない。
実施例−1 との共重合で得られた当量重量1150の重合体Aを押出成
型で厚さ25μのフィルムに成型した。
との共重合で得られた当量重量1050の重合体Bを押出成
型で100μのフィルムに成型した。更にAのフィルムと
Bのフィルムそして補強剤のPTFE製100デニール糸の50
メッシュ平織布を上記順番で重ねたのち、加熱成型して
積層フィルムを作製した。
次いで、この積層フィルムを加水分解して陽イオン交
換膜を得た。このイオン交換膜陰極側に面する層(Aフ
ィルムの加水分解後の層)の水酸化ナトリウムの拡散速
度は28meq/dm2・Hr.であった。
との共重合で得られた当量重量1000の重合体を加水分解
して酸型したものを200g、エタノール4500g/水4500gの
混合液に溶解し、これに酸化ジルコニウム800gを分散さ
せ被覆用組成物を得た。この被覆用組成物を孔径3μの
メンブレンフィルターに塗布して乾燥後、1cm2当り0.5m
gの重量の被覆層を得た。この被覆層の水酸化ナトリウ
ムの拡散速度は1350meq/dm2・Hr.であった。
被覆層に用いた重合体の90℃,30%NaOH中の含水率は1
2%であり、陰極側に面する層のそれは4%であった。
イオン交換膜のA層の表面の周囲、ガスケット付近に
当る部分に被覆用組成物をスプレー法で塗布・乾燥して
1cm2当り0.5mgの被覆を有するイオン交換膜を得た。
膜の大きさは1270mm×2455mmであり、被覆層は125mm
の幅で周囲に施したので、非塗布面の大きさは1020mm×
2205mmであった。
このイオン交換膜のA層側に被覆層を有する面が陰極
面になるように、通電面1154mm×2354mmのフィルタープ
レス型電解槽に組込み、陽極室の塩化ナトリウム濃度を
3.5Nに、陰極室の水酸化ナトリウム濃度を35%に保ちつ
つ湿度90℃、電流密度40A/dm2で180日間電解を行った。
電解を停止し、取出した膜の電槽上部のガスケット付
近の膜断面を観察した結果、塩化ナトリウムの結晶の析
出はなく膜組織の破壊は起っていなかった。
同様の部分の機械強度測定結果を示す。
比較例−1 実施例−1においてA層の表面の周囲、ガスケット付
近の当る部分に被覆層を設けない以外は実施例−1と同
様のイオン交換膜を実施例−1と同様の電解を行なっ
た。
電解を停止し、取出した膜の電槽上部のガスケット付
近の膜断面を観察した結果、塩化ナトリウムの結晶の折
出が認められた。水洗して塩化ナトリウムを除去した後
は空洞となっており、膜組織の破壊が起きていた。
同様の部分の機械強度測定結果を示す。
実施例−2 の共重合で得られた当量重量1200の重合体Aを押出成型
で厚さ25μのフィルムに成型した。
との共重合で得られた当量重量1050の重合体Bを押出成
型で100μのフィルムに成型した。
更にAのフィルムとBのフィルムに補強材としてPTFE
製200デニール糸と400デニール糸の絡み織布を加え積層
フィルムを作製した。
次いで、この積層フィルムを加水分解して陽イオン交
換膜を得た。このイオン交換膜陰極側に面する層の水酸
ナトリウムの拡散速度は25meq/dm2・Hr.であった。
CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fとの
共重合で得られた当量重量1000の重合体を加水分解して
酸型したものを200g、エタノール4500g/水4500gの混合
液に溶解し被覆用組成物を得た。この被覆用組成物を孔
径3μのメンブレンフィルターに塗布して乾燥後、1cm2
当り0.1mgの重量の被覆層を得た。この被覆層の水酸化
ナトリウムの拡散速度は1700meq/dm2・Hr.であった。
陰極側に面する層の90℃,10NNaOH中での含水率は3%
であり、被覆層に用いた重合体の含水率は12%であっ
た。
イオン交換膜のA層の表面の周囲、ガスケット付近に
当る部分に被覆用組成物をロール法で塗布・乾燥して1c
m2当り0.1mgの被覆を有するイオン交換膜を得た。膜の
大きさ、塗布層を実施した部分は、実施例−1と同一で
ある。
このイオン交換膜を実施例−1と同様の電解槽、電解
条件で250日間電解を行った。電解を停止し、取出した
膜の電槽上部のガスケット付近の膜断面を観察した結
果、塩化ナトリウムの結晶の析出は認められず膜組織の
破壊は認められなかった。
同様の部分の機械強度を示す。
実施例−3 との共重合で得られた当量重量1100の重合体Aと、 との共重合で得られた当量重量1030の重合体Bを共押出
成型し、重合体Aの厚みが25μで、重合体Bの厚みが90
μ、合わせて115μのフィルムCを作製した。更に、重
合体Bを押出成型して40μのフィルムDを作製した。フ
ィルムCとフィルムDの間に補強材として、PTFE製200
デニール糸の20mesh平織布を加え積層フィルムを作製し
た。ただしフィルムCの平織布が接する側は重合体Bの
側である。重合体Bを加水分解して酸型したもの200gを
エタノール4500g/水4500gの混合液に溶解し、これに酸
化ジルコニウム800gを分解させ被覆用組成物を得た。
積層フィルムで重合体Aが表層に存在する面をA面、
重合体Bが表層に存在する面をB面とする。積層フィル
ムのA面及びA面とB面の両面に、電槽に組み込んだ場
合、上下のガスケット付近に当たる部分に被覆用組成物
を1cm2当たり0.3mgになるようにスプレー法で塗布、乾
燥した後、加水分解してイオン交換膜を得た。膜の大き
さは1270mm×2455mmであり、陰極側、陽極側共に被覆層
を上下に125mmの幅で施したので、非塗装面の大きさは1
020mm×2455mmであった。
この被覆層の水酸化ナトリウム拡散速度は1500meq/dm
2・Hr.であり、イオン交換膜陰極側に面する層の水酸化
ナトリウム拡散速度は30meq/dm2・Hr.であった。
10NNaOH、90℃中における加水分解した後の重合体A
の含水率は5%であり、重合対Bの含水率は10%であっ
た。
このイオン交換膜のA面が陰極側になるように実施例
−1と同様のフィルタープレス型電解槽に組み込み、陽
極室の塩化ナトリウム濃度を200g/に、陰極室の水酸
化ナトリウム濃度を33%に保ちつつ温度85゜〜90℃、電
流密度15A/dm2〜40A/dm2で360日間電解を行なった。
電解を停止し、取り出した膜の電槽上部のガスケット
付近の膜断面を観察した結果、塩化ナトリウムの結晶の
析出はなく膜組織の破壊は起こっていなかった。
同様の部分の機械的強度測定結果を示す。
比較例−2 周囲、ガスケット付近の当たる部分に被覆層を設けな
い以外は実施例−3と同様のイオン交換膜を用いて実施
例−3と同様の電解を行った。
電解を停止し、取り出した膜の電槽上部のガスケット
付近の膜断面を観察した結果、塩化ナトリウムの結晶の
析出が認められた。水洗して塩化ナトリウムを除去した
後は空洞となっており、膜組織の破壊が起きていた。
同様の部分の機械強度測定結果を示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の膜がフィルタープレス型電解槽に組
み込まれた模式図を示す。図において1は電解槽枠、2
はガスケット、3は陽イオン交換膜である。又、Aの部
分は陽イオン交換膜のガスケットに挟まれており、電解
槽枠によってプレスされていない部分であり、Bの部分
は陽イオン交換膜のガスケットより、通電部側へ少なく
とも幅10mm以内の部分である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25B 1/00 - 15/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】陽イオン交換膜により陽極室と陰極室に分
    離された電解槽において、アルカリ金属塩化物を電解す
    るに際して電解槽の塩素ガスが滞留し易い部分に相当す
    る陽イオン交換膜の陰極面側表面に、アルカリ金属水酸
    化物の拡散が陽イオン交換膜の陰極側表層のそれより大
    きい層を被覆してなるアルカリ金属塩化物電解用陽イオ
    ン交換膜。
  2. 【請求項2】請求項第1項の陽イオン交換膜において、
    陽イオン交換膜により陽極室と陰極室に分離された電解
    槽において、アルカリ金属塩化物を電解するに際して電
    解槽の塩素ガスが滞留し易い部分に相当する陽イオン交
    換膜の陽極面側表面に、無機物粒子を被覆してなるアル
    カリ金属塩化物電解用陽イオン交換膜。
  3. 【請求項3】請求項第1項又は第2項記載の膜を用いる
    アルカリ金属塩化物電解方法。
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