JP3009758B2 - コバルトシッフベース錯体およびこれを用いた酸素分離プロセス - Google Patents

コバルトシッフベース錯体およびこれを用いた酸素分離プロセス

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JP3009758B2
JP3009758B2 JP3141193A JP14119391A JP3009758B2 JP 3009758 B2 JP3009758 B2 JP 3009758B2 JP 3141193 A JP3141193 A JP 3141193A JP 14119391 A JP14119391 A JP 14119391A JP 3009758 B2 JP3009758 B2 JP 3009758B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分子状酸素と選択的か
つ可逆的に反応し、空気または酸素を含む混合ガスから
酸素を分離する際に使用される、コバルトシッフベース
錯体に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】工業
的規模で空気中の酸素を分離製造する方法としては、一
般に、深冷法と吸着剤を用いた圧力変動法(PSA)が
多く用いられている。
【0003】前者の深冷法は、空気を液化し、多段の精
留工程を経て、窒素と酸素とを分離する方法であり、高
純度の酸素または窒素を製造することが可能であるが、
多量のエネルギーを必要とするという欠点を有する。ま
た、後者の圧力変動法は、ゼオライトモレキュラーシー
ブスまたはカーボンモレキュラーシーブス等の吸着剤を
用いて、該吸着剤に窒素または酸素を選択的に吸着させ
ることにより、酸素または窒素を分離する方法である。
この方法は、運転操作が簡便という利点を有している
が、装置が大きいことと、酸素を製造する場合には、最
大酸素濃度が95%にすぎないという欠点を有してい
る。
【0004】ツマキ(Tsumaki)は、固体状態のコバル
トシッフベース錯体(Cobalt ShiffBase Complex)が
分子状酸素と可逆的に結合することを見いだした。(Bu
ll.Chem. Soc. Japan 13,252(1938)参照。)その
後、多くの研究者が、空気より酸素を分離するのに有用
な化合物を見いだすべく、種々のコバルトシッフベース
錯体について研究しており、これらは、ジョーンズ(R.
d. Jones)らによる、ケミカル レビュー(Chem. Rev
iews ) 79(2), 139(1978) および、ニーダーホッファ
ー(E. C. Niederhoffer)らによる、ケミカル レビュ
ー(Chem. Reviews )84(2), 137(1984) に詳細に紹介
されている。
【0005】ここで、コバルトシッフベース錯体が、酸
素分子を吸着、脱離するメカニズムについて説明する。
基本的には、シッフベースは四座配位子であるが、コバ
ルト錯体は通常、六配位構造で安定な錯体となる。コバ
ルトシッフベースの第五番目の軸方向配位座にアキシャ
ルベースが配位すると、第六番目の軸方向配位座(アキ
シャルベースのトランス位)の酸素配位能力が高めら
れ、ここに酸素が配位する。酸素が配位した錯体を加熱
して温度を上げると、配位していた酸素は脱離する。ま
た、真空排気して酸素分圧を下げることによっても、配
位酸素を脱離させることができるものである。コバルト
シッフベース錯体への酸素の配位・脱離は、常温常圧近
傍で起こるため、酸素を分離するためのエネルギー投入
量は小さいと期待される。このため、コバルトシッフベ
ース錯体を利用して、空気または酸素を含む混合ガスか
ら酸素を分離する方法がいくつか提案されている。
【0006】ガイ(W. A. Gay)は、米国特許第4,0
32,617号において、新規なコバルトシッフベース
錯体(ビス(3、5ージフルオロサリチルアルデヒド)
エチレンジアミン)を開示しており、この錯体は、サリ
チルアルデヒドの3位と5位がフッ素化されたもので、
固体状態で酸素を吸脱着する。この錯体を酸素吸脱着に
使用した場合、30℃における酸素吸着能は3.5〜
4.0wt%で、110〜140℃の温度に加熱する
と、吸着していた酸素が脱離する。
【0007】ローマン(Roman )らは、米国特許第4,
451,270号で、空気から酸素を分離するためのプ
ロセスを開示している。このプロセスでは、コバルトシ
ッフベース錯体の溶液を作り、これに空気を接触させて
酸素を吸収させ、次に、この酸素吸収時の温度よりも錯
体溶液の温度を上げるか、または、酸素吸収時の酸素分
圧よりも錯体溶液と接する気相の酸素分圧を下げること
により、吸収されていた酸素を脱離させ、この酸素を生
成物として採取するものである。更に、ローマン(Roma
n )らは、米国特許第4,542,010号で、新規な
透過膜(facilitated transport membrane)を用いた
酸素分離法を開示している。この膜には、孔(pore)の
部分に、コバルトシッフベース錯体の溶液が保持されて
おり、この錯体が酸素の運搬を促進する役割を果たし、
酸素の分離係数を大きくしている。
【0008】しかし、これらの酸素分離法では、錯体は
二量化反応(dimmerization reaction)によって、酸
素に対して不活性なμ−ペルオキソ錯体となり、長期間
使用することができないという欠点があった。
【0009】米国特許第4,584,359号には、コ
バルトシッフベース錯体を化学的に結合した(chemical
ly bonded)ビニルポリマ膜(vinyl polymer membra
ne)が開示されている。この膜は、空気中の酸素を分離
する時、酸素の透過速度:1×10-6〜4×10-6[c
3/cm2 ,sec,cmHg]、窒素に対する酸素の分離係
数:1000より大きい、という性能を有するものであ
る。
【0010】ランプレイズド(D. Ramprased)らは、米
国特許第4,680,037号において、”ラクナーコ
バルト錯体(Lacunar Cobat complex)”と称する新
しい錯体を開示している。これによれば、この種の錯体
は、中心金属のコバルトをおおう、”ストラップ(stra
p)”が付与されており、これがペルオキソダイマー(p
eroxo dimmer)の生成を妨げるので、錯体の寿命(lif
e)が長くなるとしている。しかし、このような錯体構
造を得るには、多段階かつ複雑な合成を行う必要があ
り、その結果、錯体の合成コストはきわめて高くなって
しまう。従って、この錯体は、実用化にまでは至ってい
ない。
【0011】したがって、本発明の目的は、新規なコバ
ルトシッフベース錯体を提供することである。
【0012】また、本発明の他の目的は、酸素を含有す
る気体もしくは空気から酸素を分離するのに有用な、選
択的かつ可逆的に酸素分子と反応する、コバルトシッフ
ベース錯体溶液を提供することである。
【0013】また、さらなる本発明の目的は、前記コバ
ルトシッフベース錯体溶液を用いて、酸素を含有する気
体もしくは空気から酸素を分離する方法を提供すること
である。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、次の一般式(I)
【化1】(式中、各R1は独立にメチル基またはエチル
基、各R2はエチル基を示し、R3、R4、R5、R6は、
各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、
フェニル基、またはフェノキシ基を示し、R3、R4、R
5、R6は、同時に同じであっても異なっていても良
い。)で表されるコバルトシッフベース錯体を、提供す
るものである。
【0015】また、本発明は、上記課題を解決するため
に、上記のコバルトシッフベース錯体と、アキシャルベ
ースと、前記コバルトシッフベース錯体および前記アキ
シャルベースが溶解可能な溶媒とからなる、コバルトシ
ッフベース錯体溶液を提供するものである。
【0016】このほか、本発明は、上記課題を解決する
ために、上記の錯体溶液に、空気または酸素を含む混合
ガスを接触させることにより酸素を吸収させる過程と、
この酸素が吸収された溶液から酸素を脱離させて製品ガ
スとして採取する過程とからなる酸素分離プロセスを、
提供するものである。
【0017】本発明によるコバルトシッフベース錯体
は、常温常圧近傍で、分子状酸素と選択的且つ可逆的に
反応する。この種の錯体は二量化と呼ばれる劣化(degr
adation)を受け易いが、本発明による錯体は、錯体が
互いに接近できないように、立体障害基(一般式(I)
のR1とR2)が付与されており、更に、この立体障害基
(steric hindrance)は、溶媒への錯体溶解度を高め
る作用を持つものである。また、本発明によるコバルト
シッフベース錯体は、酸素分離膜または酸素吸収溶液の
錯体として使用される。
【0018】本発明は、空気または酸素を含む混合ガス
から酸素を分離するプロセスにおいて使用される、新規
なコバルト錯体に関するものであるが、これらの新規な
コバルト錯体は、二量化反応を防ぐための充分大きい立
体障害を有しており、その結果、従来より知られていた
コバルト錯体より寿命が長く、更に、溶媒への錯体溶解
度が著しく大きいことが特徴である。
【0019】本発明の新規なコバルト錯体はシッフベー
ス錯体と呼ばれるものに属するものであり、一般式
(I)
【化1】(式中、各R1は独立にメチル基またはエチル
基、各R2はエチル基を示し、R3、R4、R5、R6は、
各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、
フェニル基、またはフェノキシ基を示し、R3、R4、R
5、R6は、同時に同じであっても異なっていても良
い。)で表される構造を持つものである。
【0020】これらのシッフベースは、四座配位子(te
radentate ligand)であるが、第五番目の軸方向配位
座にアキシャルベースが配位すると、アキシャルベース
のトランス位の配位座に酸素分子が配位する。本発明に
よる、アキシャルベースが配位したコバルトシッフベー
ス錯体は、常温常圧近傍で、酸素を選択的に吸着、脱離
することが可能である。
【0021】前記アキシャルベースとしては、塩基性の
窒素原子を含むイミダゾール系の化合物、ピリジン系の
化合物、アルキルアミン系の化合物を使用することがで
きる。
【0022】イミダゾール系化合物の例としては、イミ
ダゾール、1−メチルイミダゾール(以下”MeIm”
と略する)、1−ベンジルイミダゾール、1−(3−ア
ミノプロピル)イミダゾール、1−(n−ブチル)イミ
ダゾール、ラウリルイミダゾール、1−1’−ドデカメ
チレンジイミダゾール、4−(イミダゾールー1−イ
ル)フェノール等を挙げることができる。
【0023】ピリジン系化合物の例としては、ピリジ
ン、4−ジメチルアミノピリジン、3−ブチルピリジ
ン、4,4’−ジピリジル、4−ピペリジノピリジン、
1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、4−エチルピリ
ジン等を挙げることができる。
【0024】また、アルキルアミン化合物の例として
は、ブチルアミン、イソブチルアミン、ネオペンチルア
ミン等を挙げることができる。
【0025】なお、これらのアキシャルベースのうち、
本発明において最適なものは、1−メチルイミダゾー
ル、4−ジメチルアミノピリジンである。
【0026】前記アキシャルベースが配位した本発明の
コバルトシッフベース錯体は、常温常圧近傍で、選択的
に酸素分子を配位・脱離させることができる。この性質
を利用すると、種々の酸素分離を効率良く行うことがで
きる。例えば、本発明の錯体とアキシャルベースとを溶
媒に溶かした錯体溶液は、酸素吸収溶液として使用する
ことができる。
【0027】更に、”含浸液膜(immobilized liquid m
embrane)”における酸素キャリアとしても、使用する
ことができるものである。
【0028】本発明の錯体を溶解させる溶媒としては、
非プロトン溶媒(aprotic solvent)で、錯体とアキシ
ャルベースを溶解できるものであれば、溶媒の種類を問
わないが、沸点が高く、粘度の低いものが望ましい。
【0029】このような溶媒としては、ラクトン、ラク
タム、スルホキシド、ニトリル、アミド、アミン、エス
テル、エーテル、その他窒素含有液体が使用可能であ
る。具体的には、このような溶媒の例としては、1−メ
チル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、
N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、
スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等
を挙げることができる。
【0030】酸素吸収溶液として使用する場合は、先
ず、空気または酸素を含む混合ガスと錯体溶液とを接触
させ、式1のように酸素と反応させる。
【0031】
【式1】
【0032】ここで、LnCoはコバルト錯体であり、
Lnは、シッフベースとアキシャルベースとを含むリガ
ンドを表す。典型的には、この時の酸素結合定数KO2
式2で表される。
【0033】
【式2】
【0034】ここでPO2は、錯体溶液と接する気相の酸
素分圧[Torr]である。P1/2は、全錯体のうち、その
半分に酸素を配位させるのに必要な酸素分圧であり、K
O2の逆数である。
【0035】酸素を吸収した錯体溶液は、種々の方法で
酸素を脱離させることができる。典型的な方法は、錯体
溶液を加熱する方法、または、錯体溶液と接する気相を
真空排気して酸素分圧を下げる方法である。このような
操作を施すと、上記式1の左向きの反応が進行して、酸
素が脱離してくる。
【0036】酸素を脱離させる他の方法は、電気化学的
な酸化(electrochemical oxidation)である。中心金
属のコバルトは、II価の酸化状態の時は、酸素配位能
を有するが、III価の酸化状態では、酸素は配位でき
ない。従って、適当な電極を用いて、LnCo(II)
−O2を酸化すると、配位していた酸素が脱離してく
る。この方法で酸素を脱離させる場合は、LnCo(I
II)を還元(reduction)する工程が必要になる。ま
た、溶媒は、極性溶媒(polar solvent)を使用しなけ
ればならない。
【0037】錯体溶液中の錯体は、酸素を吸収すると、
式3に示す反応が起こる。
【0038】
【式3】
【0039】これが、二量化反応と呼ばれる劣化メカニ
ズムであり、それは、二量体(dimer)となった錯体、
すなわち、”LnCo−O2−CoLn”が、容易に酸
素を脱離できないことによる。
【0040】二量化を防ぐためには、錯体同志が互いに
接近できないように、シッフベースのリガンドに、充分
に大きい立体障害基(steric hindrans)を付与すれば
良い。この場合、立体障害の作用を効果的にするために
は、中心金属のコバルトに近い位置に、立体障害基を付
与するのが良い。
【0041】本発明の錯体では、一般式(I)に示し
た、シッフベースのエチレンジイミン(Ethylenediimin
e)部のR1及びR2に、立体障害基として、メチル基ま
たはエチル基を導入している。R1およびR2の両方がメ
チル基である錯体は、従来より知られていたが、メチル
基だけでは、立体障害基の大きさとしては不充分であ
り、上記式3の二量化反応を完全に防ぐことができなか
った。
【0042】しかし、本発明の錯体の如く、一般式
(I)のR1および/またはR2に、エチル基を導入する
ことにより、上記欠陥をほぼ克服できるものである。さ
らに、R3ーR6は、それぞれ独立に、アルキル基、アル
コキシ基、フェニル基、およびフェノキシ基から選択さ
れるものである。
【0043】上記R1及びR2として、メチル基またはエ
チル基のようなアルキル基を選択する他の理由は、溶媒
への錯体溶解度を大きくするためである。従来より知ら
れていた錯体の溶解度は、大きいものでも0.1M程度
であった。これに対して、本発明による錯体は、0.5
M以上の錯体溶解度を有しており、酸素吸収溶液として
使用する場合、酸素運搬量(carring capacity)が大き
く、生成酸素のコスト低下に、大きな効果をもたらすも
のである。
【0044】さらに、R3ーR6を、それぞれ独立に、ア
ルキル基、アルコキシ基、フェニル基、およびフェノキ
シ基から選択する場合、錯体の溶解度が増加するもので
ある。溶媒がR1ーR6と同じ置換基を有する場合、溶解
度は、著しく増加する。
【0045】本発明の新規なコバルトシッフベース錯体
は、以下に示す反応(R1はエチル基,R2はメチル基も
しくはエチル基)によって合成することができる。
【0046】1、臭化物前駆体のモノニトロ前駆体への
変換
【0047】
【化2】
【0048】 2、モノニトロ前駆体のジニトロ前駆体への変換 (a)モノニトロアニオンの形成
【0049】
【化3】
【0050】(b)モノニトロ化合物の酸化カップリン
【0051】
【化4】
【0052】3、ジニトロ前駆体のジアミンへの変換 (a)ジニトロ前駆体の還元による、ジアミン塩酸塩の
生成
【0053】
【化5】
【0054】(b)塩酸塩の中和
【0055】
【化6】
【0056】4、ジアミンの精製
【0057】
【化7】
【0058】5、ジアミンからのシッフベースの生成 (a)ジアミンの塩酸塩の中和
【0059】
【化8】
【0060】(b)ジアミンとアルデヒドとの反応
【0061】
【化9】
【0062】6、コバルトシッフベースの形成
【0063】
【化10】
【0064】合成の詳細は実施例で説明する。以下に、
具体的に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、
本発明の主旨、および適用範囲は、これらの実施例によ
り制限されるものではない。
【0065】
【実施例1】 3,4−ジアミノ−3,4−ジメチルヘキサン(Deb
n)の合成
【0066】亜硝酸ナトリウム 72g(1 mol)を、
450mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解
させ、次に、室温・窒素雰囲気下で、該溶液を撹拌しな
がら、これに、2−ブロモブタン 82g(0.6 mol)
を滴下した。滴下して5時間撹拌後、冷水を加え、次
に、沸点が35〜37℃の石油エーテルで、生成物を抽
出した。次に、エバポレーターで石油エーテルを除去し
た後、減圧蒸留すると、2−ニトロブタンが得られ、そ
の収率は32%であった。
【0067】2−ブロモブタンのかわりに、2−アイオ
ドブタンを用いた場合には、収率は、22%であった。
【0068】水酸化ナトリウム 9.6g(0.24 mol)
を60gの水に加え、この水溶液に、2−ニトロブタン
25g(0.15 mol)を加えて、撹拌溶解させた。硝酸
銀46g(0.27 mol)のジメチルスルホキシド(450
ml)溶液に、上記水溶液を加え、37℃で、8時間反
応させた。反応終了後、上記ジメチルスルホキシド溶液
を濾過し、濾液に水を加えて、氷で0℃に冷却すると、
白色沈澱が生じた。この白色沈澱物を、クロロホルム−
ヘキサン混合溶媒で再結晶させて、精製したところ、そ
の収率は、28%であった。ここで得られた生成物は、
融点測定及びNMR測定により、3,4−ジメチル−
3,4−ジニトロヘキサンであることを確認した。
【0069】3,4−ジメチル−3,4−ジニトロヘキ
サン 5.2g(0.025 mol)と50mlの塩酸とを混
合撹拌し、この溶液に、金属錫(tin) 55g(0.46
mol)の小片を2時間かけて、0℃で加え、全量の金属
錫を加え終わった後、室温で2時間反応させた。次に、
この溶液のpHが12になるまで、水酸化ナトリウムの
ペレット(約80g)を加え、さらに、この溶液をジク
ロロメタンを加えて、生成物の抽出を計4回行った。次
に、このジクロロメタン溶液を、硫酸ナトリウムで乾燥
させた後、濾過し、濾液中のジクロロメタン溶媒をエバ
ポレーターで除去すると、黄色液状の粗3,4−ジアミ
ノ−3,4−ジメチルヘキサン(以後、3,4−ジアミ
ノ−3,4−ジメチルヘキサンを、”Debn”と略す
る)が得られた。
【0070】ここで得られた粗Debnを、ジクロロメ
タンに溶解し、塩化水素ガスを約3時間バブルすると、
Debn・2HClの白色結晶が生じた。このジクロロ
メタン溶液を、−8℃で一晩冷却後、窒素雰囲気下で濾
過し、真空乾燥すると、精製Debn・2HClが得ら
れ、その収率は80%であった。
【0071】
【実施例2】 3,4−ジアミノ−3,4−ジエチルヘキサン(Tee
n)の合成
【0072】硝酸ナトリウム 72g(1 mol)を、4
50mlのジメチルスルホキシドに溶解させ、次に、室
温・窒素雰囲気下で、該溶液を損拌しながら、これに、
2−ブロモペンタン 86g(0.71 mol)を滴下し、5
時間撹拌した。撹拌後、前記溶液に冷水を加え、次に、
沸点が35〜37℃の石油エーテルで、生成物を抽出し
た。次に、エバポレーターで石油エーテルを除去した
後、減圧蒸留すると、2−ニトロペンタンが得られ、そ
の収率は36%であった。
【0073】水酸化ナトリウム 6.5g(0.16 mol)
を、38gの水に加え、この水溶液に、2−ニトロペン
タン 19g(0.16 mol)を加えて、撹拌して溶解させ
た。次いで、硝酸銀 28g(0.165 mol)のジメチル
スルホキシド(370ml)溶液に、上記水溶液を加え、温
度40℃で、約5時間反応させた。反応終了後、上記ジ
メチルスルホキシド溶液を濾過し、濾液に水を加え、氷
で0℃に冷却したところ、黄色の液状物質が得られた。
この黄色液状物質中の2−ニトロペンタンを除くため、
38mlの水に6.5gの水酸化ナトリウムを溶かした
水溶液に、上記黄色の液状物質を加えて、4時間撹拌し
た。次に、この溶液中の有機層を分離採取し、n−ペン
タンで洗浄した後、真空乾燥させて、n−ペンタンを除
去した。最後に、残渣をカラムクロマトグラフィーで、
精製した。生成物は、GCMSにより、3,4−ジニト
ロ−3,4−ジエチルヘキサンであることを確認した。
これを用いて、実施例1と全く同様の方法、手順で、
3,4−ジアミノ−3,4ジエチルヘキサン(以後、
3,4−ジアミノ−3,4−ジエチルヘキサンを、”T
een”と略する)を得た。
【0074】
【実施例3】 3,5−ジ−tert−ブチルサリチルアルデヒドの合成
【0075】無水トルエン 80mlに、2,4−ジ−
ターシャリー−ブチルフェノール61.8g(0.3 mo
l)を加え、撹拌溶解させた。次に、この溶液に、4塩
化錫7.8g(0.03 mol)と、2,6−ルチジン 1
2.9g(0.12 mol)を添加し、室温で約20分、撹拌
を続けた。次に、この溶液に、パラホルムアルデヒド1
9.8gを添加すると、黄色の懸濁液となった。この懸
濁液を、100℃まで加熱し、100℃で15時間反応
させると、液色は茶褐色となった。室温まで茶褐色の混
合物を放冷した後、1500mlの水を加え、更に、4
NーHCl水溶液を加えて、pH2になるまで酸性化し
た。この溶液に、エーテルを加えて、生成物を抽出し
た。次に、このエーテル層を、飽和食塩水で洗浄した
後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過により硫酸
ナトリウムを除き、更に、エバポレーターでエーテルを
除去したところ、シロップ状の粗3,5−ジ−tert−ブ
チルサリチルアルデヒドが得られた。最後に、真空蒸留
で精製すると、黄白色オイル状の3,5−ジ-ターシャ
リー−ブチルサリチルアルデヒド 35.6g(収率5
1%)が得られた。
【0076】
【実施例4】 コバルト 3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン−
3,4−ジアミノ−3,4−ジメチルヘキサン(Co
(3,5DtBuSalDebn))の合成
【0077】125mlの水に、Debn・2HCl
6.65g(0.03 mol)を溶かし、この水溶液に、水酸
化ナトリウム 2.46g(0.06 mol)投入して撹拌す
ると、Debnの有機層が遊離してきた。この有機層を
ジクロロメタンで抽出し、エバポレーターでジクロロメ
タンを除去すると、油状のDebnが得られた。
【0078】3,5−ジ−tert−ブチルサリチルアルデ
ヒド 14g(0.06 mol)を、エタノール 50mlに
加え、撹拌溶解した。この溶液を、アルゴンガス雰囲気
下、室温で、前記油状のDebn 4.41g(0.03 m
ol)を添加し、16時間反応させると、黄白色の沈澱
物、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)−
3,4−ジイミノ−3,4−ジメチルヘキサン(以
後、”3,5DtBuSalDebn”と略する)が生
じた。この黄白色の沈澱物を窒素雰囲気下、濾過し、次
に、真空乾燥させたところ、シッフベースである、3,
5DtBuSalDebnが得られた。この収率は、4
1%であった。
【0079】3,5DtBuSalDebn 5.39
g(0.0094 mol)を、20mlのエタノールに加え、撹
拌した。一方、アルゴンガスをバブルして、酸素を脱気
したメタノール 60mlに、酢酸コバルト(II),
4水和物 2.33g(0.0094 mol)を加え、溶解させ
た。このコバルト溶液を、先の3,5DtBuSalD
ebnのエタノール溶液に投入すると、赤紫色の沈澱が
生じた。この沈澱物を真空濾過で集め、メタノールで洗
浄した後、100℃で真空乾燥した。生成物、Co
(3,5DtBuSalDebn)の収率は、94%で
あった。
【0080】
【実施例5】 N,N’−ビス(4−メトキシサリチリデン)−3,4
−ジアミノ−3,4−ジメチルヘキサノ コバルト(I
I)(CoVan4Debn)の合成
【0081】2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアル
デヒド(以後、”Van4”と略する) 1.86g
(0.0122 mol)を、エタノール 11mlに加え、撹拌
溶解した。この溶液をアルゴンガス雰囲気に置き、実施
例4と同様の方法で得られた、油状のDebn 0.8
8g(0.0061 mol)を添加して、温室で16時間反応さ
せると、黄白色の沈澱物、Van4Debnが生じた。
これを、窒素雰囲気下で濾過し、次に、真空乾燥させ
た。このようにして得られた、シッフベース、Van4
Debnの収率は、84%であった。
【0082】Van4Debn 2.06g(0.005 mo
l)を、10mlのエタノールに加え、撹拌溶解した。
一方、アルゴンガスをバブルして酸素を脱気したメタノ
ール30mlに、酢酸コバルト(II)、4水和物
1.24g(0.005 mol)を加え、撹拌溶解した。この
コバルト溶液を、先のVan4Debnのエタノール溶
液に投入すると、直ちに赤橙色の沈澱が生じた。この沈
澱物を真空濾過で集め、メタノールで洗浄した後、10
0℃で真空乾燥した。生成物、Co(Van4Deb
n)の収率は、73%であった。
【0083】
【試験例1】本発明のコバルトシッフベース錯体の有用
性を確かめるため、1−メチル−2−ピロリジノンに対
する溶解度を、0℃で、測定した。比較のため、一般式
(I)の、エチレンジアミン部のR1とR2が共にメチル
基、R4とR6が共にターシャリーブチル基、R3とR5が
共に水素原子である、コバルトシッフベース錯体(以
下、これをCo(3、5DtBuSalTmen)と略
す)の場合についても、測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】表1に示す通り、本件発明の錯体は、きわ
めて高い溶解度を示した。
【0086】
【試験例2】本発明による錯体、Co(Van4Deb
n)および、比較例としてのCo(Van4Tmen)
の酸素親和性を、下記の手順で測定した。
【0087】第2表に示す組成の錯体溶液(溶媒は1−
メチル−2−ピロリジノン)を調製し、0℃に冷却し
た。ここで、1ーメチルーイミダゾールを、1.5当
量、アキシャルベースとして加え、次に、酸素ガスと接
触させて、酸素を吸収させた。酸素分圧の変化量から、
酸素吸収量を求め、これと酸素平衡圧力を、”Hill equ
ation”に適用し、KO2=P1/2-1 を求めた。
【0088】
【表2】
【0089】次に、本件発明の錯体、Co(Van4D
ebn)の耐劣化性を確かめるため、酸素親和力の経時
変化を求めた。図1にその結果を示すが、ここでは、酸
素親和力を、Y160=[LnCo−O2]/[LnCo]
Total で表している。
【0090】図1から明らかなように、Debnの立体
障害が、二量化反応による劣化に対し、効果のあること
が確認できる。
【0091】
【試験例3】フロリアーニ(Floriani)らの、
ジャーナルオブケミカルソサエティ(J. Chem. Soc.)
(a), 946(1969) によると、コバルトシッフベース錯体
は、単量体の時、常磁性であり、二量体の時、反磁性で
ある。従って、帯磁率の測定から、二量化反応がどの程
度進行しているか判別することが可能である。
【0092】溶媒、1−メチル−2−ピロリジノンに、
Co(Van4Debn)と1ーメチルイミダゾールを
溶かし、錯体濃度0.1Mのアキシャルベースの添加割
合1.5当量の錯体溶液を調製した。比較のため、Co
(Van4Tmen)の錯体溶液を、同じ条件で調製し
た。これらの錯体溶液の0℃における帯磁率を、エバン
ス(Evans)の方法で測定した。以後、錯体溶液を
常に0℃に保持し、帯磁率の経時変化を測定した。その
結果を図2に示す。図2において、縦軸は初期帯磁率を
100とした時の経時変化を示す。
【0093】図2より、Debn錯体の方が、Tmen
錯体よりも帯磁率の低下速度が遅く、Debnの立体障
害が、二量化反応による劣化に対し、効果のあることが
確認できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のCo(Van4Debn)
と、比較例としてのCo(Van4Tmen)との、酸
素親和力の経時変化を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明のCo(Van4Debn)
と、比較例としてのCo(Van4Tmen)との、帯
磁率の経時変化を示すグラフである。
【式4】
フロントページの続き (72)発明者 マリアナ・アサロ アメリカ合衆国・カリフォルニア・ 94040・マウンテン・ビュー・ナンバ ー・47・ラタン・ストリート・2250 (72)発明者 仲山 一郎 神奈川県川崎市幸区塚越4−320 日本 酸素株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−20296(JP,A) 特開 昭59−12707(JP,A) 特開 平2−191545(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07F 15/06 B01D 53/14 C01B 13/02 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (式中、各R1は独立にメチル基またはエチル基、各R2
    はエチル基を示し、R3、R4、R5、R6は、各々独立
    に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、フェニル
    基、またはフェノキシ基を示し、R3、R4、R5、R6
    は、同時に同じであっても異なっていても良い。)で表
    されるコバルトシッフベース錯体。
  2. 【請求項2】 請求項1のコバルトシッフベース錯体
    と、アキシャルベースと、前記コバルトシッフベース錯
    体および前記アキシャルベースが溶解可能である溶媒と
    からなる、コバルトシッフベース錯体溶液。
  3. 【請求項3】 請求項2のコバルトシッフベース錯体溶
    液に、空気または酸素を含む混合ガスを接触させること
    により酸素を吸収させる過程と、この酸素が吸収された
    溶液から酸素を脱離させて製品ガスとして採取する過程
    とからなる、酸素分離プロセス。
  4. 【請求項4】 前記酸素を脱離させて製品ガスとする過
    程が、前記酸素吸収過程における温度よりも高い温度に
    おいて行なわれることを特徴とする、請求項3に記載の
    酸素分離プロセス。
  5. 【請求項5】 前記酸素を脱離させて製品ガスとする過
    程が、前記酸素吸収過程における、前記溶液と接触する
    気相の酸素分圧よりも低い酸素分圧において行なわれる
    ことを特徴とする、請求項3に記載の酸素分離プロセ
    ス。
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