JP3008474B2 - ディスクブレーキ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、制動時に発生するいわゆる鳴き（異音）
の防止効果を高めたディスクブレーキに関するものであ
る。

〔従来の技術〕

ディスクブレーキの鳴き防止策として、ブレーキピス
トンと摩擦パッド間にシムを２枚挿入し、そのシムの重
ね合わせ面にグリースを塗布しておく方法がある。これ
は、制動初期にシム間に抵抗なく滑りを生じさせて摩擦
パッドをディスクによる引きずり力で最も安定した位置
に移動させ、その位置で摩擦パッドをディスクに押し付
けて摩擦パッドからの制動トルクをトルク受け部材に伝
えることを狙ったもので、短期的には不足の無い鳴き防
止効果を上げている。

〔発明が解決しようとする課題〕

上述の鳴き防止策は、グリース塗布部がオープン構造
となっているため、一方のシムを部分的に凹ませるなど
して２枚のシム間にグリース溜りを作るなどしてもグリ
ースの蒸発、流出が早く、効果の持続性に問題があっ
た。

〔課題を解決するための手段〕

この発明は、優れた鳴き防止効果を長期にわたって発
揮させるため、ブレーキピストンと摩擦パッドの間に力
伝達部材をピストンの前部開口に挿入して介在する。

このような力伝達部材は、断熱や摩擦パッドに対する
パッド押圧面の密着性改善のために既に利用されている
が、この発明では、その力伝達部材を滑らせて従来の２
枚重ねシムと同様の作用を生じさせる。そのために、ピ
ストンと力伝達部材がディスク軸方向に接触する相互滑
動面をディスク摺接面に平行に形成し、ピストンと力伝
達部材間の径方向クリアランスを摩擦パッドとこれを受
けるトルク受け部材との間のクリアランスの２倍以上に
定め、さらに、ピストンと力伝達部材の相互滑動面に潤
滑用グリースを塗布する。また、この塗布グリースを封
入するためピストンと力伝達部材間にＯリングを配置す
る。

〔作用〕

力伝達部材はピストンとの間に滑りを生じて径方向に
動くことができ、この力伝達部材が制動初期に摩擦パッ
ドに追従するため、摩擦パッドの最安定位置への動きが
拘束されず、鳴きの原因である摩擦パッドの微小振動が
防止される。

また、Ｏリングがピストンと力伝達部材間のグリース
を封止保持するので、グリースの流出、蒸発も起き難く
なる。

そのＯリングは、制動解除時に力伝達部材をピストン
中心に戻すセンタリング機能も発揮し、従って、力伝達
部材が偏った位置から摩擦パッドに追従して途中でピス
トンに拘束され、摩擦パッドを拘束すると云ったことも
起こらない。

〔実施例〕

第１図に、この発明の一実施例の要部を示す。

図の１はキャリパ２のシリンダ３に挿入したピスト
ン、４はピストンの前部空洞1a内に挿入した力伝達部
材、５は空洞1aの内周面と力伝達部材４の外周面との間
に力伝達部材４で保持して配置したＯリング、６、６′
はディスクＤを間にして対向配置した摩擦パッド、７は
インナー側の摩擦パッド６を当接させるトルク受け部材
である。アウター側の摩擦パッド６′はトルク受け部材
７で受けることもあるし、キャリパ２自身で受けること
もある。また、各摩擦パッドは周知のパッドピンやガイ
ド（いずれも図示せず）によってディスク軸方向スライ
ド可能に支持されている。

力伝達部材４の外径は、空洞1aの内面との間に生じる
径方向クリアランスが摩擦パッド６とトルク受け部材７
との間のクリアランスの２倍以上となる大きさにしてあ
る。また、Ｏリング５で封止したクリアランス部にはグ
リース８を充填してあり、そのグリース８が相対的に滑
りを生じる空洞1aの奥端面と力伝達部材４の後面との間
に回り込んでいる。

なお、第２図に示すように、力伝達部材４の後面（空
洞1aの奥端面でもよい）に溝９を設けるとこの溝がグリ
ース溜りとなって力伝達部材４の径方向へ滑りが更に良
くなる。

また、力伝達部材４を、固体潤滑材を30重量％以上含
有する耐熱性樹脂で形成すると鳴き防止効果の持続性が
更に高まり、また、何らかの原因でＯリング５が破損す
るなどしても効果の極端な低下が起こらない。

〔効果〕

以上述べたように、この発明のディスクブレーキは、
ピストン前部の空洞とその中に挿入した力伝達部材との
間にグリースを封入し、さらに、力伝達部材は径方向に
充分な動きの自由度をもつようにして制動初期にその力
伝達部材を摩擦パッドに追従させるようにしたので、優
れた鳴き防止効果を長期間維持することができる。

また、力伝達部材のセンタリング機能が生じるため、
鳴き防止効果自体も従来の２枚重ねシムに比べてより確
実に発揮させる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明のディスクブレーキの要部を示す断面
図、第２図は力伝達部材の変形例を示す部分切欠き斜視
図である。 １……ピストン、1a……空洞、 ２……キャリパ、３……シリンダ、 ４……力伝達部材、５……Ｏリング、 ６、６′……摩擦パッド、７……トルク受け部材、 ８……グリース、９……溝。

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ブレーキピストンとディスクに摺接させる
   摩擦パッドとの間に力伝達部材を前記ピストンの前部開
   口に挿入して介在するディスクブレーキにおいて、 前記ピストンと力伝達部材がディスク軸方向に接触する
   相互滑動面をディスク摺接面に平行に形成し、 前記ピストンと力伝達部材間の径方向クリアランスを摩
   擦パッドとこれを受けるトルク受け部材との間のクリア
   ランスの２倍以上に定め、さらに、ピストンと力伝達部
   材の相互滑動面に潤滑用グリースを塗布し、この塗布グ
   リースを封入するＯリングをピストンと力伝達部材間に
   配置したことを特徴とするディスクブレーキ。
2. 【請求項２】前記相互滑動面にグリース溜りとなる溝を
   設けた請求項（１）記載のディスクブレーキ。
3. 【請求項３】前記力伝達部材を固体潤滑材を30重量％以
   上含む耐熱性樹脂で形成した請求項（１）又は（２）記
   載のディスクブレーキ。