JP3006237B2 - アミノピラゾール誘導体の製法 - Google Patents

アミノピラゾール誘導体の製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、式〔II〕 (式中、R1,R2 は水素原子、アルキル基、アラルキル
基またはアリール基を表す。)で示されるピラゾール誘
導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術、発明が解決しようとする課題】ピラゾー
ル誘導体〔II〕は、写真薬、医薬、農薬等のファインケ
ミカル分野の中間体として良く知られた化合物であり、
ヒドラジンにα, β−不飽和ニトリルを反応させて製造
することも知られている。
【0003】例えば、ヒドラジンに3-イミノブチロニ
トリルを反応させることによる5-アミノ-3- メチルピラ
ゾールの製造方法( J. Heterocyclic Chem.,11,423(197
4))、ヒドラジンにカリウム-t- ブトキサイドなどの
アルカリの存在下、2-クロロ-2- ブテノニトリルを反応
させることによる5-アミノ-3- メチルピラゾールの製造
方法( J. Heterocyclic Chem.,19,1265(1982))等が知ら
れている。しかしながら、ヒドラジンにβ、γ−不飽和
ニトリルを反応させることについては知られていない。
【0004】本発明者らは、このような状況下に、不飽
和ニトリル類を用いるピラゾール誘導体〔II〕の製造
方法について鋭意検討を重ねた結果、α−位にハロゲ
ン、スルホニルオキシ等の特定の置換基を有するα−置
換−β,γ−不飽和ニトリル類〔I〕がヒドラジンと反
応して目的物〔II〕を生成することを見出すととも
に、α,β−不飽和アルデヒド〔III〕を出発原料と
し、α−置換−β,γ−不飽和ニトリル類〔I〕を経由
するピラゾール誘導体〔II〕の新規な製造ルートを見
出し、さらに種々の検討を加えて本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、(1)
ヒドラジンと式〔I〕 (式中、R1,R2 は水素原子、アルキル基、アラルキル
基またはアリール基を、Xはハロゲン原子、アルキルス
ルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を
表す。)で示されるβ,γ−不飽和ニトリル類とを反応
させることを特徴とする式〔II〕 (式中、R1,R2 は前記と同じ意味を有する。)で示さ
れるピラゾール誘導体の製造方法及び
【0006】(2) 式〔III 〕 (式中、R1,R2 は水素原子、アルキル基、アラルキル
基またはアリール基を表す。)で示されるシアンヒドリ
ン類を、ハロゲン化剤、スルホン化剤と反応させて前記
式〔I〕で示されるα−置換−β,γ−不飽和ニトリル
類を得、次いでヒドラジンと反応させることを特徴とす
る式前記〔II〕で示されるピラゾール誘導体の製造方法
及び
【0007】(3) 式〔IV〕 (式中、R1,R2 は水素原子、アルキル基、アラルキル
基またはアリール基を表す。)で示される不飽和アルデ
ヒド類とシアノ化剤と反応させて、前記式〔III 〕で示
されるシアンヒドリン類を得、次いでハロゲン化剤また
はスルホン化剤と反応させて前記式〔I〕で示される
β,γ−不飽和ニトリル類を得、しかる後にヒドラジン
と反応させることを特徴とする前記式〔II〕で示される
ピラゾール誘導体の工業的に優れた製造方法を提供する
ものである。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明は、ヒドラジンとα−置換−β,γ−不飽和ニトリ
ル類〔I〕とを反応させることを特徴とするものである
が、α−置換−β,γ−不飽和ニトリル類〔I〕の置換
基R,Rとしては、例えば水素原子、メチル、エチ
ル、プロピル、ブチル等の低級アルキル基、ベンジル、
,m,pトリルメチル、o,m,pエチ
ルフェニルメチル等のアラルキル基、フェニル、o
,pトリル、o,m,pエチルフェニル等
のアリール基などが挙げられる。またXとしては、例え
ば塩素、臭素、沃素等のハロゲン原子、メタンスルホニ
ルオキシ、エタンスルホニルオキシ、プロパンスルホニ
ルオキシ等のアルキルスルホニルオキシ基、ベンゼンス
ルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ等のア
リールスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0009】具体的化合物としては、例えば、α−クロ
ロ−β、γ−ブテノニトリル、α−クロロ−β,γ−ペ
ンテノニトリル、α−ブロム−β、γ−ブテノニトリ
ル、α−ヨード−β、γ−ブテノニトリル、α−メタン
スルホニルオキシ−β、γ−ブテノニトリル、α−p−
トルエンスルホニルオキシ−β、γ−ブテノニトリル、
等があげられる。
【0010】またヒドラジンとしては、例えば、抱水ヒ
ドラジン、無水ヒドラジン等が挙げられる。通常、抱水
ヒドラジンが用いられるが、ヒドラジンと酸との塩、例
えば塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等にアルカリを作用せしめ
て、ヒドラジンを生成させて使用することもできる。
【0011】ヒドラジンは、β,γ−不飽和ニトリル類
〔I〕に対して、通常2〜5当量使用される。塩基を共
存させると1当量程度まで使用量を削減し得る。かかる
塩基としては、例えばナトリウムメチラート、ナトリウ
ムエチラート、カリウムブチラート等の金属アルコラー
ト類、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウム等の無機
塩基が挙げられる。その使用量は、β,γ−不飽和ニト
リル類〔I〕に対して0.1 〜5当量使用される。
【0012】反応は、通常溶媒の存在下に実施され、か
かる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン等の炭化
水素類、メタノール、エタノール、ブタノール等のアル
コール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の
エーテル類なとが挙げられる。 溶媒の使用量は、通
常、β,γ−不飽和ニトリル類〔I〕に対して1〜50重
量倍である。
【0013】また反応は、β,γ−不飽和ニトリル類
〔I〕の種類にもよるが、通常室温〜120 ℃程度の温度
で実施され、通常1〜50時間で完結する。反応終了後、
蒸留、抽出等の手段により目的とするβ,γ−不飽和ニ
トリル類〔I〕を取り出すことができる。このものは、
さらに再結晶、各種クロマトグラフィー等の精製手段に
よりさらに精製することもできる。
【0014】次に、α−置換−β,γ−不飽和ニトリル
類〔I〕の製法について説明する。α−置換−β,γ−
不飽和ニトリル類〔I〕は、不飽和アルデヒド類〔I
V〕を出発原料として、これにシアノ化剤を反応させ
て、シアンヒドリン類〔III〕を得、次いでハロゲン
化剤またはスルホン化剤を反応させることにより製造し
得る。
【0015】不飽和アルデヒド類〔IV〕の置換基R1,R
2としては前記したと同じ置換基が挙げられる。具体化
合物としては、例えばアクロレイン、クロトンアルデヒ
ド、ケイ皮酸アルデヒド、3-メチル-2- ブテナール、青
葉アルデヒド、シトラール等が挙げられる。
【0016】シアノ化は公知の方法、例えば、触媒量の
塩基の存在下にシアン化水素を反応させる方法(J.Am.Ch
em.Soc.,57,1405(1935))、酸の存在下に金属シアニド、
トリアルキルシリルシアニドを反応させる方法( J.Org.
Chem.,45,401(1980)) などに準拠して実施できる。
【0017】得られたシアンヒドリン類〔III 〕は、更
に蒸留、再結晶、各種クロマトグラフ等の精製手段によ
り精製して用いても良いし、硫酸、P-トルエンスルホン
酸等を安定剤として加えてそのまま次工程に導いても良
い。
【0018】シアンヒドリン類〔III〕のハロゲン化
は、公知の方法、例えば、ピリジン、トリメチルアミン
等の存在下に塩化チオニルを作用させる方法、ホスゲン
を作用させた後、ジメチルホルムアミドを作用させる方
法、ホスフィン塩の存在下に四塩化炭素、臭素等を反応
させる方法、3塩化リン、3臭化リン、5塩化リンなど
のハロゲン化リンを作用させる方法、ビルスマイヤー塩
を用いる方法(J.Org.Chem.,55,575
(1990))等に準拠して実施し得る。
【0019】またシアンヒドリン類〔III 〕のスルホン
化は、公知の方法、例えば、ピリジン、トリエチルアミ
ン等のアミン類の存在下にメタンスルホン酸クロリド、
p-トルエンスルホン酸クロリド等のスルホン酸ハライ
ド、無水メタンスルホン酸等のスルホン酸無水物を作用
させる方法等に準拠して実施し得る。
【0020】ハロゲン化、スルホン化は、通常溶媒の存
在下に実施されるが非存在下で実施することもできる。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族
系溶媒、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジクロ
ロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン
化炭化水素系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒
が挙げられる。反応温度は、通常、−10℃から溶媒の
沸点の範囲から選定され、反応時間は、反応温度にもよ
るが通常1〜50時間程度である。
【0021】得られたα−置換−β,γ−不飽和ニトリ
ル類〔I〕は、蒸留、再結晶、各種クロマトグラフィー
等により更に精製しても良いし、そのままヒドラジンと
反応させても良い。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、ヒドラジンにα−置換
−β,γ−不飽和ニトリル類〔I〕を反応させることに
より、目的とするピラゾール誘導体〔II〕を製造し得
る。 また、α−置換−β,γ−不飽和ニトリル類
〔I〕は不飽和アルデヒド類〔IV〕から効率良く誘導し
得るので、本発明方法は工業的にも有利である。
【0023】
【実施例】次に、実施例によって本発明を更に詳細に説
明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは
ない。
【0024】実施例1 2lのフラスコにアクロレイン140gと塩化メチレン1.2lを
仕込み−5℃まで冷却した。攪拌下これにシアン化水素
119 ml、トリエチルアミン0.7ml 、塩化メチレン50mlか
らなる溶液を反応温度が5℃を越えないようにして滴下
した。滴下後、30分かけて20℃まで昇温して同温度でさ
らに30分攪拌を続けた。反応後、pHが約3になるまで硫
酸を加えた。次いで、溶媒を減圧下に留去することによ
り、粗アクロレインシアンヒドリン 218g を得た。純度
88.4%、収率92%であった。
【0025】実施例2 200mlのフラスコに粗アクロレインシアンヒドリン
19.6g(純度88.4%)と塩化メチレン80ml
を仕込み、攪拌下に、−10℃まで冷却してこれにピリ
ジン19.8gを加えた。次いで、塩化チオニル31.
5gを反応温度が−15℃を越えないようにして滴下
し、さらに−15℃で0.5時間、4℃で3.5時間攪
拌を続けた。反応後、反応液を氷水100mlに加えて
30分攪拌した後、セライトを用いて混合液を濾過し、
有機層を分液した。水層は塩化メチレンで抽出した。有
機層を合わせ、これを硫酸マグネシウム乾燥、減圧溶媒
留去、蒸留することにより、2−クロロ−3−ブテンニ
トリル19.8gを得た。沸点61℃/30mmHg、
純度は92%、収率は86%であった。
【0026】実施例3 50mlのフラスコに2-クロロ-3- ブテンニトリル0.39g(純
度92%) とエタノール2ml を仕込み、攪拌下これに80%
抱水ヒドラジン0.5ml(8mmol)を加えて80℃まで昇温し、
同温度で2時間攪拌を続けた。次いで、減圧下に低沸分
を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー
(展開溶媒:酢酸エチル/エタノール)により精製する
ことにより、5-アミノ-3- メチルピラゾール 311mgを得
た。収率は90.6%であった。
【0027】実施例4 50mlのフラスコに粗アクロレインシアンヒドリン
0.47g(純度88.4%)と塩化メチレン5mlを
仕込み、攪拌下に5℃まで冷却した。次いで、これにピ
リジン0.75ml(7mmol)をゆっくり滴下し、
同温度でさらに5分攪拌した後、塩化メタンスルホン酸
0.47ml(6mmol)を滴下し、25℃で6時間
攪拌を続けた。次いで、反応液を10mlの氷水に加え
て30分攪拌した後、分液した。水層は塩化メチレンで
抽出した。有機層を合わせ、これを1Nの塩酸で洗浄、
重炭酸ソーダ水溶液洗浄、硫酸マグネシウム乾燥、減圧
溶媒留去することにより、粗2−メタンスルホニルオキ
シ−3−ブテンニトリル1.0gを得た。
【0028】実施例5 実施例3において、2-クロロ-3- ブテンニトリルの代わ
りに実施例4で得られた粗2-メタンスルホニルオキシ-3
- ブテンニトリル 1.0 gを用い、エタノール3ml:、80
%抱水ヒドラジン0.5ml(8mmol)を用いる以外は、実施例
3に準拠して実施することにより、5-アミノ-3- メチル
ピラゾール 445mgを得た。収率はアクロレインシアンヒ
ドリンに対して89%であった。
【0029】実施例6 実施例1において、アクロレインの代わりにケイ皮アル
デヒド6.3ml(50mmol)を用いる以外は、実施例1に準拠
して実施することにより粗ケイ皮アルデヒドシアンヒド
リン9.6gを得た。
【0030】実施例7 実施例2において、アクロレインシアンヒドリンの代わ
りに、実施例6で得られた粗ケイ皮アルデヒドシアンヒ
ドリン3.84g(20mmol) を用い、塩化メチレン15ml、ピリ
ジン2ml、塩化チオニル 1.7mlを用い、反応を5〜10℃
で行う以外は、実施例2に準拠して実施して、粗2-クロ
ロ-4- フェニル-3- ブテンニトリル3.6gを得た。
【0031】実施例8 実施例3において、2-クロロ-3- ブテンニトリルの代わ
りに実施例7で得られた粗2-クロロ-4- フェニル-3- ブ
テンニトリル 0.9g(5mmol)を用い、エタノール5 ml:、
80%抱水ヒドラジン 0.69 ml(11 mmol) を用いる以外
は、実施例3に準拠して実施することにより、5-アミノ
-3- ベンジルピラゾール 230mgを得た。
【0032】比較例1 50mlのフラスコにアクロレイン3.1ml(44m
mol)とベンゼン8.6mlを仕込み、−10℃まで
冷却した後、これに無水酢酸4.5g(44mmol)
を加えた。次いで、青酸ナトリウム3.14gと水16
mlからなる溶液を同温度で15分滴下した後、同温度
で2時間攪拌を続けた。反応終了後、0℃まで昇温しジ
エチルエーテルで2回抽出をし、抽出したエーテル層を
10%重炭酸ソーダで洗浄後、硫酸マグネシウム乾燥、
溶媒留去、蒸留することにより2−アセトキシ−3−ブ
テンニトリル4.02gを得た。沸点63〜65℃/1
0mmHg、純度100%であった。次いで、2−アセ
トキシ−3−ブテンニトリル130mgにt−ブタノー
ル3ml、t−ブトキシカリウム148mgを加えた後
80%抱水ヒドラジン162mg(2.6mmol)を
加え40℃で4時間反応させ、反応液をガスクロマトグ
ラフィーで分析したが、5−アミノ−3−メチルピラゾ
ールは検出できなかった。さらに80℃に昇温して3時
間反応させたが目的物は検出できなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 関口 将人 大阪府大阪市此花区春日出中3丁目1番 98号 住友化学工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−29669(JP,A) 特開 昭63−150265(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 231/38 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒドラジンと式〔I〕 (式中、R1,R2 は水素原子、アルキル基、アラルキル
    基またはアリール基を、Xはハロゲン原子、アルキルス
    ルホニルオキシ基またはアリールスルホニルオキシ基を
    表す。)で示されるα−置換−β,γ−不飽和ニトリル
    類とを反応させることを特徴とする式〔II〕 (式中、R1,R2 は前記と同じ意味を有する。)で示さ
    れるピラゾール誘導体の製造方法。
  2. 【請求項2】式〔III 〕 (式中、R1,R2 は水素原子、アルキル基、アラルキル
    基またはアリール基を表す。)で示されるシアンヒドリ
    ン類を、ハロゲン化剤、スルホン化剤と反応させて式
    〔I〕 (式中、R1,R2 は前記と同じ意味を、Xはハロゲン原
    子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホ
    ニルオキシ基を表す。)で示されるα−置換−β,γ−
    不飽和ニトリル類を得、次いでヒドラジンと反応させる
    ことを特徴とする式〔II〕 (式中、R1,R2 は前記と同じ意味を有する。)で示さ
    れるピラゾール誘導体の製造方法。
  3. 【請求項3】式〔IV〕 (式中、R1,R2 は水素原子、アルキル基、アラルキル
    基またはアリール基を表す。)で示される不飽和アルデ
    ヒド類とシアノ化剤と反応させて、式〔III 〕 (式中、R1,R2 は前記と同じ意味を有する。)で示さ
    れるシアンヒドリン類を得、次いでハロゲン化剤または
    スルホン化剤と反応させて式〔I〕 (式中、R1,R2 は前記と同じ意味を、Xはハロゲン原
    子、アルキルスルホニルオキシ基またはアリールスルホ
    ニルオキシ基を表す。)で示されるα−置換−β,γ−
    不飽和ニトリル類を得、しかる後にヒドラジンと反応さ
    せることを特徴とする式〔II〕 (式中、R1,R2 は前記と同じ意味を有する。)で示さ
    れるピラゾール誘導体の製造方法。
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