JP3005673B2 - Al−Si−Fe系合金の製造方法 - Google Patents

Al−Si−Fe系合金の製造方法

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JP3005673B2
JP3005673B2 JP10051111A JP5111198A JP3005673B2 JP 3005673 B2 JP3005673 B2 JP 3005673B2 JP 10051111 A JP10051111 A JP 10051111A JP 5111198 A JP5111198 A JP 5111198A JP 3005673 B2 JP3005673 B2 JP 3005673B2
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修 梅澤
寿 長井
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科学技術庁金属材料技術研究所長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、Al−S
i−Fe系合金の製造方法に関するものである。さらに
詳しくは、この出願の発明は、展伸材、鍛造材等として
有用な、冷間加工性に優れると共に、強度・延性バラン
スを有するAl−Si−Fe系合金材料に作り替えるこ
とができ、Al−Si−Fe系合金のリサイクルを産業
的に実現可能とするAl−Si−Fe系合金の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、二次地金は、Alの総
需要の約4割を占めるものの、その利用は、鋳造品とダ
イカストに集中している。従って、Al総需要の半分以
上を占めている圧延品や鍛造品への二次地金の適用が進
まないと、今度のリサイクルの見通しが立たない。その
ために、合金の種類をできる限り統一することと、合金
系別又は用途別の再利用が求められている。
【0003】しかしながら、回収部材の単一性が十分で
ないこと、製品の総生産量に大きな幅があることから、
スクラップ材への不純物の混入は避けられない状況にあ
る。例えばSi及びFeは、それぞれAl合金における
主要不純物の一つであり、スクラップ材への混入が不可
避とされているものである。通常Feを0.8%以上含
有するAl鋳造合金では、Feリッチの金属間化合物
(Al2 Fe、Al5 SiFe等)が形成している。こ
の金属間化合物は、粗大針状結晶を呈し、かつ脆性加工
性に乏しく、展伸材及び鍛造材への適用を困難とする。
その上、Al−Si−Fe系過共晶合金では、粗大な初
晶Si結晶も第二相として存在しており、機械的性質と
冷間加工性の改善が不可欠となっている。
【0004】通常、凝固よりも冷却速度が速いダイカス
トでは、鋳型との焼付き防止のためにFeを微量添加し
ているが、1%以上の添加は、粗大な金属間化合物が形
成するために忌避されている。これらのため、Alのリ
サイクルにおいては、Al新地金による希釈をはじめ、
電解法、金属間化合物生成による分離・除去などが研究
されているものの、工業的な再利用は余り進んでいない
のが実情である。
【0005】そこで、この出願の発明は、上記の通りの
従来技術の限界を克服し、展伸材、鍛造材等として有用
な、冷間加工性に優れると共に、強度・延性バランスを
有するAl−Si−Fe系合金材料に作り替えることが
でき、Al−Si−Fe系合金のリサイクルを産業的に
実現可能とするAl−Si−Fe系合金の製造方法を提
供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、主要添加元素としてSi
を0.01〜25mass%、Feを0.5〜8mas
s%それぞれ含有し、変形困難な脆性的第二相が複数種
形成されているAl−Si−Fe系合金のバルク材料に
対し、塑性加工と熱処理の組合せを繰り返し行い、各種
第二相を破砕・分断し、Al母相中に微細分散させ、冷
間加工性に優れると共に、強度・延性バランスを有する
Al−Si−Fe系合金材料に作り替えることを特徴と
するAl−Si−Fe系合金の製造方法(請求項1)を
提供する。
【0007】また、この出願の発明は、熱処理におい
て、共晶温度直下に保持した後に急冷し、第二相を球状
化させること(請求項2)、並びに、塑性加工におい
て、冷間多パス加工を行うこと(請求項3)をそれぞれ
好ましい態様として提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】この出願の発明は、実用Al合金
であるAl−Si−Fe系合金の鋳造材、鍛造材、及び
展伸材の分野全般におけるリサイクルを可能とするため
に、変形困難な複数種の第二相(Al−Si−Fe金属
間化合物、Si晶等)を破砕・分断、さらには球状化さ
せることにより、Al母相中に安定に、しかも均一かつ
高密度に微細分散させ、冷間加工性に優れると共に、強
度・延性バランスを有するAl−Si−Fe系合金材料
に作り替えることができる。
【0009】この出願の発明のAl−Si−Fe系合金
の製造方法において、塑性加工と熱処理の対象とするA
l−Si−Fe系合金のバルク材料は、母相がAlであ
り、主要添加元素としてSiを0.01〜25mass
%、Feを0.5〜8mass%それぞれ含有するもの
である。このバルク材料に対して塑性加工と熱処理の組
合せを繰り返し行うことにより、Al−Fe金属間化合
物(Al,Fe等)、Al−Si−Fe金属間化合物
(Al,SiFe等)、Si晶、Siリッチ金属間化合
物等の複数種の変形困難な脆性的第二相を破砕・分断す
ることができ、Al母相中への微細分散が可能となる。
それら第二相の母相中への微細分散は、粗大なFeリッ
チな金属間化合物やSi晶が形成され、冷間加工時に第
二相の割れが問題とされるAl−Si−Fe系合金に有
効性を特に発揮する。
【0010】なお、Al−Si−Fe系合金のバルク材
料の化学組成において、Si及びFeの含有量をそれぞ
れ0.01〜25mass%、0.5〜8mass%と
限定しているのは、第二相の体積が大きくなり、微細分
散により隣接する第二相どうしが接触する場合は、良好
な効果が必ずしも期待できなくなるためである。
【0011】上記の通り、この出願の発明のAl−Si
−Fe系合金の製造方法では、塑性加工と熱処理を組み
合わせ、繰り返し行うが、塑性加工については、冷間で
の多パス加工が適当である。この多パス加工は、Al−
Si−Fe系合金のバルク材料全体に第二相の微細分散
を図るためには、バルク材料が鋳造材である場合、その
化学組成にも依存するが、60%以上のトータル減面率
とするのが適当である。加工量が低い段階では、第二相
の破砕・分断が十分には進まない。一方、熱処理ついて
は、共晶温度直下に保持た後に急冷し、第二相を球状化
することにより、金属間化合物、Si晶等の第二相を球
状化することが適当である。
【0012】得られる合金は、Al母材中に種々の第二
相が均一かつ高密度に微細分散しており、90%以上の
優れた冷間加工率を示し、Al−Si系合金に比較し、
冷間強加工によっても伸びの低下のない強度・延性バラ
ンスのとれたものとなる。このため、Si及びFeとい
う不純物元素濃度が高いAl−Si−Fe系合金ではあ
っても、展伸材及び鍛造材への適用が可能となり、二次
地金の利用拡大が図れる。また、不純物の精製除去プロ
セスへの依存を大きく軽減することができ、Si及びF
eの除去に多大なコストとプロセスが必要とされている
現状が改善される。
【0013】もちろん、この出願の発明においては、S
i、Fe以外の不純物元素がAl−Si−Fe系合金の
バルク材料に混入していてもよく、例えば、Cu、M
n、Mg等が考慮される。以下、実施例を示し、この出
願の発明のAl−Si−Fe系合金の製造方法について
さらに詳しく説明する。
【0014】
【実施例】表1に示した5種類の合金をφ30×200
mmのインゴットケースに鋳造し、これを供試材とし
た。
【0015】
【表1】
【0016】図1は、Al−14Si−2Feの合金鋳
造材の図面に代わる光学顕微鏡写真であり、図2は、A
l−7Fe−1Feの合金鋳造材のCMA分析結果(E
PMA測定の画像マッピング)を示したものである。表
1に示したいずれの合金も、粗大針状及び粗大板状の第
二相を含有する。それらの引張性質は表2に示した通り
である。いずれの合金も引張強度が低く、延性に乏し
い。
【0017】
【表2】
【0018】次に、各合金鋳造材に対し、スエージング
を用いて冷間多パス加工を施した。加工途中に回復熱処
理(793K・3.6ks、水冷)を行い、塑性加工及
び熱処理を繰り返し行った。1サイクルの圧下率は約2
0%とし、最終的に加工前の状態と比較して約80%の
断面減少率とした。このプロセスにおいて、金属間化合
物及びSi晶は破砕・分断され、母材中に微細に分布す
るとともに、球状化の傾向を示した。冷間スエージング
により90%以上の強加工が可能である。
【0019】図3は、Al−14Si−2Fe合金の9
0%加工のままの棒材の縦断面組織を示したものであ
り、図4は、Al−14Si−2Fe合金の99.7%
冷間加工のままの棒材の縦断面について、CMA分析を
行った結果を示したものである。これら図3及び図4に
示したように、金属間化合物及びSi晶は球状化し、微
細分布していることが確認される。
【0020】図5は、Al−7Si−1Fe合金及びA
l−7Si合金(比較材)の冷間スエージング加工を施
した棒材の引張強度と破断伸びを示したものである。図
5(a)から確認されるように、Al−7Si−1Fe
合金は、Al−7Si合金とほぼ同様な強度(0.2%
耐力、引張強度)を示す。また、図5(b)から確認さ
れるように、Al−7Si−1Fe合金は、Feを含有
しないAl−7Si合金に比較し、鋳造のままでは若干
伸びが小さいものの、冷間強加工では、Al−7Si合
金に起こる伸びの低下が認められず、優れた延性を有す
る。
【0021】以上より、この出願の発明により製造され
るAl−Si−Fe系合金は、優れた冷間加工性と共
に、強度・延性バランスを有すると認められる。
【0022】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、この出願の
発明によって、Al−Si−Fe系合金のバルク材料に
おいて、微細複相組織が形成され、冷間加工性と共に、
強度・延性バランスが発現し、Al鍛造材及び展伸材へ
の二次地金のリサイクルが可能となる。各種ピストン、
VTRのシリンダー、さらには各種機械部品へのAl−
Si−Fe系合金の適用とそれらの性能向上が図られ
る。
【0023】また、この出願の発明は、現在の工業設備
に、製造ラインの一部を改編するだけで適用可能であ
り、Al−Si−Fe系冷間加工材を安価に提供可能と
もなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al−14Si−2Feの合金鋳造材の図面に
代わる光学顕微鏡写真である。
【図2】Al−7Fe−1Feの合金鋳造材のCMA分
析結果(EPMA測定の画像マッピング)を示した図で
ある。
【図3】Al−14Si−2Fe合金の90%加工のま
まの棒材の縦断面組織を示した図面に代わる顕微鏡写真
である。
【図4】Al−14Si−2Fe合金の99.7%冷間
加工のままの棒材の縦断面について、CMA分析を行っ
た結果を示した図である。
【図5】(a)(b)は、各々、Al−7Si−1Fe
合金及びAl−7Si合金(比較材)の冷間スエージン
グ加工を施した棒材の引張強度と破断伸びを示した図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 685 C22F 1/00 685Z 686 686B 691 691B

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主要添加元素としてSiを0.01〜2
    5mass%、Feを0.5〜8mass%それぞれ含
    有し、変形困難な脆性的第二相が複数種形成されている
    Al−Si−Fe系合金のバルク材料に対し、塑性加工
    と熱処理の組合せを繰り返し行い、各種第二相を破砕・
    分断し、Al母相中に微細分散させ、冷間加工性に優れ
    ると共に、強度・延性バランスを有するAl−Si−F
    e系合金材料に作り替えることを特徴とするAl−Si
    −Fe系合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 熱処理において、共晶温度直下に保持し
    た後に急冷し、第二相を球状化させる請求項1記載のA
    l−Si−Fe系合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 塑性加工において、冷間多パス加工を行
    う請求項1又は2記載のAl−Si−Fe系合金の製造
    方法。
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