JPH11246953A - Al−Si−Fe系合金の製造方法 - Google Patents

Al−Si−Fe系合金の製造方法

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JPH11246953A
JPH11246953A JP5111198A JP5111198A JPH11246953A JP H11246953 A JPH11246953 A JP H11246953A JP 5111198 A JP5111198 A JP 5111198A JP 5111198 A JP5111198 A JP 5111198A JP H11246953 A JPH11246953 A JP H11246953A
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修 梅澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Al合金材料のリサイクル方法と、そのため
のAl母相中に種々の第二相が均一で高密度に分散し、
高い冷間加工率を示すとともに、強度、延性バランスに
優れ、さらにリサイクルが可能な新しいAl合金の製造
方法を提供する。 【解決手段】 変形困難な脆性的第二相を複数種類含有
するAl合金バルク材料に対し、塑性加工と熱処理の組
み合わせを繰り返し、各種第二相を分断・破砕・し、こ
れらを均一・高密度にAl母相中に微細分散させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、Al合金
材料のリサイクル可能化方法とリサイクル可能な高強度
Al合金の製造方法に関するものである。さらに詳しく
は、この出願の発明は、展伸材、鍛造材等として有用
な、冷間加工性を有する高強度・高延性を特徴とするA
l合金材料のリサイクル可能化方法とそのための高強度
Al合金の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術のその課題】従来、二次地金は、Alの総
需要の約4割を占めるものの、その利用はAl鋳造品と
ダイカストに集中している。したがって、Al総需要の
半分以上を占めている圧延品や鍛造品への二次地金の適
用が進まないと、今後のリサイクルの見通しが立たなく
なる。そのために、合金の種類をできるかぎり統一する
ことと、合金系別あるいは用途別の再利用が求められて
いる。
【0003】しかしながら、回収部材の単一性が十分で
ないことや製品の総生産量に大きな幅があるので、不純
物の混入は避けられない状況にある。たとえばSiおよ
びFe元素は、それぞれAl合金における主要不純物の
一つであり、スクラップ材への混入が不可避とされてい
るものである。通常、Feを0.8%以上含有するAl
鋳造合金では、Feリッチの金属間化合物(Al2
e、Al5 SiFe等)が形成される。通常、凝固した
場合、金属間化合物は粗大針状結晶を呈し、かつ脆性加
工性に乏しく、展伸材および鍛造材への適用も可能も困
難である。さらに、Al−Si−Fe系過共晶合金では
粗大な初晶Si結晶も第二相として存在し、機械的性質
と冷間加工性の改善が不可欠となっている。
【0004】また、通常凝固よりも冷却速度が速いダイ
カストでは、鋳型との焼き付き防止のため微量のFeを
添加するが、1%以上の添加は粗大な金属間化合物の形
成が生じるため忌避されている。そのため、Alリサイ
クル利用においては、Al新地金による希釈の他、電解
法や金属間化合物生成による分離・除去などが研究され
ているものの、工業的に再利用はあまり進んでいない。
【0005】そこで、この出願の発明は、以上のとおり
の従来の技術の限界を克服して、産業的にこれまで以上
にAlの再利用を可能とするAl合金材料のリサイクル
可能化方法とともに、リサイクルが可能な新しいAl合
金の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、変形困難な脆性的第二相
を複数種類含有するAl合金バルク材料に対して塑性加
工と熱処理の組合わせを繰り返して各種第二相を分断・
破砕し、Al母相中に微細分散させて高強度Al合金と
することを特徴とするAl合金材料のリサイクル可能化
方法(請求項1)を提供する。
【0007】また、この出願の発明は、上記方法に関連
して、Al合金バルク材料がAl二次地金である方法
(請求項2)、Al合金バルク材料は、不純物として、
主としてSi0.01〜25mass%およびFe0.
5〜8mass%を含有する方法(請求項3)、熱処理
では、共晶温度直下に保持した後に急冷することで第二
相を球状化する方法(請求項4)、塑性加工では、冷間
多パス加工を行う方法(請求項5)も提供する。
【0008】さらにまた、この出願の発明は、変形困難
な脆性的第二相を複数種類含有するAl合金バルク材料
に対し、塑性加工と熱処理の組み合わせを繰り返し、各
種第二相を同時に破砕・分断し、これらを均一・高密度
にAl母相中に微細分散させて高強度Al合金とするこ
とを特徴とするリサイクル可能な高強度Al合金の製造
方法(請求項6)を提供する。
【0009】さらに、この出願の発明は、合金バルク材
料がSiを0.01〜25mass%、Feを0.5〜
8mass%を含有し、SiおよびFeの一方または両
方が主要添加元素とされているAl−Si−Fe系合金
であること(請求項7)、熱処理では、共晶温度直下に
保持した後に急冷することで第二相を球状化すること
(請求項8)、塑性加工は、冷間多パス加工を行うこと
(請求項9)を特徴とするリサイクル可能な高速度アル
ミニウム合金の製造方法も提供する。
【0010】さらにまた、この発明は、二次地金等の不
純物を含有される金属間化合物等の脆性的第二相を制御
し、その機械的性質および冷間成形能を改善して、Al
のリサイクルプロセス(請求項4)をも提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】この出願の発明では、上記のよう
に、Al−Si−Fe系合金を主とする実用Al合金の
鋳造材、鍛造材および展伸材分野の全般におけるリサイ
クル可能なAl複相合金バルク材料のリサイクル可能化
方法として、そしてその製造方法として、変形可能な複
数種の第二相(Al−Si−Fe金属間加工物、Si晶
等)を粉砕・分断、さらには球状化させることによっ
て、Al母相中に安定に微細分散させることにより、冷
間加工性およびリサイクル性に優れたAl−Si−Fe
系合金を安価で効率よく製造すること等を可能にするも
のである。
【0012】さらに、この発明は、第二相の高密度・微
細分布を有する高Si−高FeAl合金のリサイクルと
その製造が可能であり、従来、スプレーデポジション法
などにより製造されている強度・延性バランスおよび高
温強度に優れたAl合金バルク材料の製造の新しい方法
による製造を可能にするものである。この発明の方法に
ついてさらにその実施の形態を説明すると、まず、熱処
理では、共晶温度直下に保持して急冷することで金属間
化合物およびSi晶等の第二相を球状化することを適当
としている。
【0013】具体的には、母相はAlであり、Siを
0.01〜25mass%、Feを0.5〜8mass
%含有し、SiおよびFeの一方または両方を主要添加
元素とするAl−Si−Fe系合金が代表的なものとし
て例示されるが、この合金を例にとると、Al−Fe金
属間化合物(Al,Fe等)あるいはAl−Si−Fe
金属間化合物(Al,SiFe等)、およびSi結晶ま
たはSiリッチ金属間化合物を破砕・分断し、それぞれ
球状化して微細分散する。この発明の方法では、特に粗
大なFeリッチな金属間化合物やSiを含有し、冷間加
工時にそれら脆性的第二相の割れが問題となるAl−S
i−Fe系合金においてその有効性を最大に発揮する。
しかし、第二相の体積化が大きくなり、微細分散により
隣接する第二相どうしが接触する場合は、良好な効果が
必ずしも期待できなくなるため、この発明におけるAl
−Si−Fe系合金においては、冷間加工に適当な複相
組織を得るために、主要添加元素であるSi量0.01
〜25mass%、Fe量を0.5〜8mass%に限
定している。
【0014】また、この発明においては、熱処理に塑性
加工を組合わせるが、この塑性加工は、冷間での多パス
加工とするのが適当である。この多パス加工によりバル
ク材料全体にわたり第二相微細分散を図るには、鋳造材
を出発材料とした場合、化学組成にも依存するが、60
%以上のトータル減面率とすることが適当である。加工
量が低い段階では、第二相の破砕・分断が十分に進まな
い。
【0015】得られた微細組織は、Al母材中に種々の
第二相が均一・高密度に微細分散されており、90%以
上の冷間加工率を示すとともに、強度・延性バランスに
優れている。したがって、この発明の方法では、Siお
よびFe元素をはじめとしたAl中の不純物元素濃度が
高い合金にあっても、展伸材用途への適用が可能であ
り、二次地金の利用の拡大が可能である。
【0016】さらにまた、従来の不純物精製除去プロセ
スへの依存を大きく軽減できることから、Al合金のリ
サイクル過程において、SiおよびFe等の除去に多大
なコストとプロセスを必要とされている現状を改善する
ものである。もちろんこの発明においては、不純物元素
はSi,Feに限られるものではない。さらにはCu,
Mn,Mg等の各種のものが考慮されるのである。
【0017】以下、実施例を示し、さらに詳しいこの発
明の方法について説明する。
【0018】
【実施例】表1に示す5種類の合金をφ30×200m
mインゴットケースに鋳造して供試材とした。
【0019】
【表1】
【0020】添付した図面の図1は、Al−14Si−
2Feの合金鋳造材の光学顕微鏡写真であり、図2はA
l−7Si−2Fe合金鋳造材のCMA分析結果(EP
MA測定の画像マッピング)を示したものである。各合
金とも、粗大針および粗大板状の第二相を含有する。こ
れら合金の引張性質を表2に示した。いずれの合金も引
張強度が低く、延性に乏しい。
【0021】
【表2】
【0022】そこで、各合金鋳造材に対し、スエージン
グを用いて、冷間多パス加工を施し、途中で回復熱処理
(793K・3.6ks、水冷)を加え、これらを繰り
返し行った。1サイクルの圧下率は、約20%であり、
最終的には加工前の段階から比較して約80%の断面減
少率を付与した。この過程において、金属間化合物およ
びSi晶は破砕・分断され、微細に分布するとともに、
球状化の傾向を示した。これらの試料は、冷間スエージ
ングにより90%以上の強加工を施すことが可能となっ
た。
【0023】添付した図面の図3は、Al−14Si−
2Fe合金の90%加工まま棒材の縦断面組織を示した
ものであり、図4はAl−14Si−2Fe合金の9
9.7%冷間加工まま棒材の縦断面について、CMA分
析を行なった結果を示したものである。図3ないし4の
いずれにおいても、金属間化合物およびSi晶は球状化
して微細分布していることが観察される。
【0024】添付した図面の図5は、この発明による組
織制御を施した合金Al−14Si−2FeとAl−1
4Si−2Fe合金(比較材)に冷間スエージング加工
を施した棒材の引張強度と被断伸びを示したものであ
る。図5(a)からは、Al−7%Siに対し、Al−
7%Si−1%Feは、ほぼ同様な強度(0.2%耐
力、引張強度)を示すことがわかる。
【0025】この発明の方法により微細化を施した材料
でも同様である。また、図5(b)からは、1%Fe添
加材は、鋳造まで無添加材よりも若干伸びが低いこと、
この発明の方法により微細化を施した材料では、冷間強
加工によりAl7Siの伸びが低下するのに対し、Al
7Si1Feでは、伸びの低下が認められず、優れた延
性を有することがわかる。
【0026】以上より、Fe添加材は、この発明の方法
を施すことで、優れた冷間加工性、強度−延性バランス
をゆうすることがわかる。
【0027】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、この発明の
方法によって、Al−Si−Fe系合金等において、冷
間加工性を有する微細複相組織が形成される。これによ
り、Al鍛造品および圧縮品への二次地金の適用を可能
にするものである。SiおよびFe等を含有する各種A
l合金用途に対応し、通常の鋳造材および二次地金に適
用可能である。
【0028】また、この発明の方法を用いることで、F
eを含有する亜共晶から過共晶にいたるAl−Si−F
e系合金を展伸材へ適用することが可能となるとともに
高強度・高延性化が得られる。これにより、各種ピスト
ン、VTRシリンダーの他、各種機械部品へのAl−S
i−Fe系合金適用とそれらの性能向上が可能となる。
【0029】さらに、この発明は、現在の工業設備にお
ける製造ラインの一部を改編するだけで、製造および量
産が充分に可能である。したがって、Al−Si−Fe
系冷間加工材および高強度Al箔、高強度Alワイヤー
を安価に提供できる。さらにまた、SiおよびFeはA
l合金における主要添加元素であるとともに、スクラッ
プから除去することで困難な合金元素である。さらに、
資源的に豊富かつ低クラーク数元素であることから、資
源循環および環境コストの観点からも経済的効果への波
及が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al−14Si−2Fe合金鋳造材の図面に代
わる光学顕微鏡である。
【図2】Al−7Si−2Fe合金鋳造材のCMA分析
結果(EPMA測定の画像マッピング)を示した図であ
る。
【図3】Al−14Si−2Fe合金の90%加工また
は棒材の縦断面組織を示した図面に代わる顕微鏡写真で
ある。
【図4】Al−14Si−2Fe合金の99.7%冷間
加工または棒材の縦断面について、CMA分析を行った
結果を示した図である。
【図5】(a)(b)は、この発明による組織制御を施
した合金Al−14Si−2FとAl−14Si−2F
e合金(比較材)に冷間スエージング加工を施した棒材
の引張強度と被断伸びを示した図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年4月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 Al−Si−Fe系合金の製造方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、Al−S
i−Fe系合金の製造方法に関するものである。さらに
詳しくは、この出願の発明は、展伸材、鍛造材等として
有用な、冷間加工性に優れると共に、強度・延性バラン
スを有するAl−Si−Fe系合金材料に作り替えるこ
とができ、Al−Si−Fe系合金のリサイクルを産業
的に実現可能とするAl−Si−Fe系合金の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、二次地金は、Alの総
需要の約4割を占めるものの、その利用は、鋳造品とダ
イカストに集中している。従って、Al総需要の半分以
上を占めている圧延品や鍛造品への二次地金の適用が進
まないと、今度のリサイクルの見通しが立たない。その
ために、合金の種類をできる限り統一することと、合金
系別又は用途別の再利用が求められている。
【0003】しかしながら、回収部材の単一性が十分で
ないこと、製品の総生産量に大きな幅があることから、
スクラップ材への不純物の混入は避けられない状況にあ
る。例えばSi及びFeは、それぞれAl合金における
主要不純物の一つであり、スクラップ材への混入が不可
避とされているものである。通常Feを0.8%以上含
有するAl鋳造合金では、Feリッチの金属間化合物
(Al2 Fe、Al5 SiFe等)が形成している。こ
の金属間化合物は、粗大針状結晶を呈し、かつ脆性加工
性に乏しく、展伸材及び鍛造材への適用を困難とする。
その上、Al−Si−Fe系過共晶合金では、粗大な初
晶Si結晶も第二相として存在しており、機械的性質と
冷間加工性の改善が不可欠となっている。
【0004】通常、凝固よりも冷却速度が速いダイカス
トでは、鋳型との焼付き防止のためにFeを微量添加し
ているが、1%以上の添加は、粗大な金属間化合物が形
成するために忌避されている。これらのため、Alのリ
サイクルにおいては、Al新地金による希釈をはじめ、
電解法、金属間化合物生成による分離・除去などが研究
されているものの、工業的な再利用は余り進んでいない
のが実情である。
【0005】そこで、この出願の発明は、上記の通りの
従来技術の限界を克服し、展伸材、鍛造材等として有用
な、冷間加工性に優れると共に、強度・延性バランスを
有するAl−Si−Fe系合金材料に作り替えることが
でき、Al−Si−Fe系合金のリサイクルを産業的に
実現可能とするAl−Si−Fe系合金の製造方法を提
供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、主要添加元素としてSi
を0.01〜25mass%、Feを0.5〜8mas
s%それぞれ含有し、変形困難な脆性的第二相が複数種
形成されているAl−Si−Fe系合金のバルク材料に
対し、塑性加工と熱処理の組合せを繰り返し行い、各種
第二相を破砕・分断し、Al母相中に微細分散させ、冷
間加工性に優れると共に、強度・延性バランスを有する
Al−Si−Fe系合金材料に作り替えることを特徴と
するAl−Si−Fe系合金の製造方法(請求項1)を
提供する。
【0007】また、この出願の発明は、熱処理におい
て、共晶温度直下に保持した後に急冷し、第二相を球状
化させること(請求項2)、並びに、塑性加工におい
て、冷間多パス加工を行うこと(請求項3)をそれぞれ
好ましい態様として提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】この出願の発明は、実用Al合金
であるAl−Si−Fe系合金の鋳造材、鍛造材、及び
展伸材の分野全般におけるリサイクルを可能とするため
に、変形困難な複数種の第二相(Al−Si−Fe金属
間化合物、Si晶等)を破砕・分断、さらには球状化さ
せることにより、Al母相中に安定に、しかも均一かつ
高密度に微細分散させ、冷間加工性に優れると共に、強
度・延性バランスを有するAl−Si−Fe系合金材料
に作り替えることができる。
【0009】この出願の発明のAl−Si−Fe系合金
の製造方法において、塑性加工と熱処理の対象とするA
l−Si−Fe系合金のバルク材料は、母相がAlであ
り、主要添加元素としてSiを0.01〜25mass
%、Feを0.5〜8mass%それぞれ含有するもの
である。このバルク材料に対して塑性加工と熱処理の組
合せを繰り返し行うことにより、Al−Fe金属間化合
物(Al,Fe等)、Al−Si−Fe金属間化合物
(Al,SiFe等)、Si晶、Siリッチ金属間化合
物等の複数種の変形困難な脆性的第二相を破砕・分断す
ることができ、Al母相中への微細分散が可能となる。
それら第二相の母相中への微細分散は、粗大なFeリッ
チな金属間化合物やSi晶が形成され、冷間加工時に第
二相の割れが問題とされるAl−Si−Fe系合金に有
効性を特に発揮する。
【0010】なお、Al−Si−Fe系合金のバルク材
料の化学組成において、Si及びFeの含有量をそれぞ
れ0.01〜25mass%、0.5〜8mass%と
限定しているのは、第二相の体積が大きくなり、微細分
散により隣接する第二相どうしが接触する場合は、良好
な効果が必ずしも期待できなくなるためである。
【0011】上記の通り、この出願の発明のAl−Si
−Fe系合金の製造方法では、塑性加工と熱処理を組み
合わせ、繰り返し行うが、塑性加工については、冷間で
の多パス加工が適当である。この多パス加工は、Al−
Si−Fe系合金のバルク材料全体に第二相の微細分散
を図るためには、バルク材料が鋳造材である場合、その
化学組成にも依存するが、60%以上のトータル減面率
とするのが適当である。加工量が低い段階では、第二相
の破砕・分断が十分には進まない。一方、熱処理ついて
は、共晶温度直下に保持た後に急冷し、第二相を球状化
することにより、金属間化合物、Si晶等の第二相を球
状化することが適当である。
【0012】得られる合金は、Al母材中に種々の第二
相が均一かつ高密度に微細分散しており、90%以上の
優れた冷間加工率を示し、Al−Si系合金に比較し、
冷間強加工によっても伸びの低下のない強度・延性バラ
ンスのとれたものとなる。このため、Si及びFeとい
う不純物元素濃度が高いAl−Si−Fe系合金ではあ
っても、展伸材及び鍛造材への適用が可能となり、二次
地金の利用拡大が図れる。また、不純物の精製除去プロ
セスへの依存を大きく軽減することができ、Si及びF
eの除去に多大なコストとプロセスが必要とされている
現状が改善される。
【0013】もちろん、この出願の発明においては、S
i、Fe以外の不純物元素がAl−Si−Fe系合金の
バルク材料に混入していてもよく、例えば、Cu、M
n、Mg等が考慮される。以下、実施例を示し、この出
願の発明のAl−Si−Fe系合金の製造方法について
さらに詳しく説明する。
【0014】
【実施例】表1に示した5種類の合金をφ30×200
mmのインゴットケースに鋳造し、これを供試材とし
た。
【0015】
【表1】
【0016】図1は、Al−14Si−2Feの合金鋳
造材の図面に代わる光学顕微鏡写真であり、図2は、A
l−7Fe−1Feの合金鋳造材のCMA分析結果(E
PMA測定の画像マッピング)を示したものである。表
1に示したいずれの合金も、粗大針状及び粗大板状の第
二相を含有する。それらの引張性質は表2に示した通り
である。いずれの合金も引張強度が低く、延性に乏し
い。
【0017】
【表2】
【0018】次に、各合金鋳造材に対し、スエージング
を用いて冷間多パス加工を施した。加工途中に回復熱処
理(793K・3.6ks、水冷)を行い、塑性加工及
び熱処理を繰り返し行った。1サイクルの圧下率は約2
0%とし、最終的に加工前の状態と比較して約80%の
断面減少率とした。このプロセスにおいて、金属間化合
物及びSi晶は破砕・分断され、母材中に微細に分布す
るとともに、球状化の傾向を示した。冷間スエージング
により90%以上の強加工が可能である。
【0019】図3は、Al−14Si−2Fe合金の9
0%加工のままの棒材の縦断面組織を示したものであ
り、図4は、Al−14Si−2Fe合金の99.7%
冷間加工のままの棒材の縦断面について、CMA分析を
行った結果を示したものである。これら図3及び図4に
示したように、金属間化合物及びSi晶は球状化し、微
細分布していることが確認される。
【0020】図5は、Al−7Si−1Fe合金及びA
l−7Si合金(比較材)の冷間スエージング加工を施
した棒材の引張強度と破断伸びを示したものである。図
5(a)から確認されるように、Al−7Si−1Fe
合金は、Al−7Si合金とほぼ同様な強度(0.2%
耐力、引張強度)を示す。また、図5(b)から確認さ
れるように、Al−7Si−1Fe合金は、Feを含有
しないAl−7Si合金に比較し、鋳造のままでは若干
伸びが小さいものの、冷間強加工では、Al−7Si合
金に起こる伸びの低下が認められず、優れた延性を有す
る。
【0021】以上より、この出願の発明により製造され
るAl−Si−Fe系合金は、優れた冷間加工性と共
に、強度・延性バランスを有すると認められる。
【0022】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、この出願の
発明によって、Al−Si−Fe系合金のバルク材料に
おいて、微細複相組織が形成され、冷間加工性と共に、
強度・延性バランスが発現し、Al鍛造材及び展伸材へ
の二次地金のリサイクルが可能となる。各種ピストン、
VTRのシリンダー、さらには各種機械部品へのAl−
Si−Fe系合金の適用とそれらの性能向上が図られ
る。
【0023】また、この出願の発明は、現在の工業設備
に、製造ラインの一部を改編するだけで適用可能であ
り、Al−Si−Fe系冷間加工材を安価に提供可能と
もなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al−14Si−2Feの合金鋳造材の図面に
代わる光学顕微鏡写真である。
【図2】Al−7Fe−1Feの合金鋳造材のCMA分
析結果(EPMA測定の画像マッピング)を示した図で
ある。
【図3】Al−14Si−2Fe合金の90%加工のま
まの棒材の縦断面組織を示した図面に代わる顕微鏡写真
である。
【図4】Al−14Si−2Fe合金の99.7%冷間
加工のままの棒材の縦断面について、CMA分析を行っ
た結果を示した図である。
【図5】(a)(b)は、各々、Al−7Si−1Fe
合金及びAl−7Si合金(比較材)の冷間スエージン
グ加工を施した棒材の引張強度と破断伸びを示した図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 686 C22F 1/00 686B 691 691B

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変形困難な脆性的第二相を複数種類含有
    するAl合金バルク材料に対して塑性加工と熱処理の組
    合わせを繰り返して各種第二相を分断・破砕し、Al母
    相中に微細分散させて高強度Al合金とすることを特徴
    とするAl合金材料のリサイクル可能化方法。
  2. 【請求項2】 Al合金バルク材料がAl二次地金であ
    る請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 Al合金バルク材料は、不純物として、
    主としてSi0.01〜25mass%およびFe0.
    5〜8mass%を含有する請求項1または2の方法。
  4. 【請求項4】 熱処理では、共晶温度直下に保持した後
    に急冷することで第二相を球状化する請求項1ないし3
    のいずれかの方法。
  5. 【請求項5】 塑性加工では、冷間多パス加工を行う請
    求項1ないし4のいずれかの方法。
  6. 【請求項6】 変形困難な脆性的第二相を複数種類含有
    するAl合金バルク材料に対し、塑性加工と熱処理の組
    み合わせを繰り返し、各種第二相を破断・分断し、Al
    母相中に微細分散させることを特徴とするリサイクル可
    能高強度Al合金の製造方法。
  7. 【請求項7】 合金バルク材料がSiを0.01〜25
    mass%、Feを0.5〜8mass%を含有し、S
    iおよびFeの一方または両方が主要添加元素とされて
    いるAl−Si−Fe系合金である請求項6のリサイク
    ル可能な高強度Al合金の製造方法。
  8. 【請求項8】 熱処理では、共晶温度直下に保持した後
    に急冷することで第二相を球状化する請求項6または7
    のリサイクル可能な高強度Al合金の製造方法。
  9. 【請求項9】 塑性加工では、冷間多パス加工を行う請
    求項6ないし8のいずれかのリサイクル可能な高強度A
    l合金の製造方法。
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JP2007239102A (ja) * 2007-03-08 2007-09-20 National Institute For Materials Science アルミニウム系鋳造合金及びその製造方法
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