JP3002157B2 - 建物の外壁を構築する移動足場 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、建物に外壁を構築
するために使用される移動足場に関する。

【０００２】

【従来の技術】建物の周囲に外壁を構築するために、図
１に示すように、建物１から数十ｃｍ離されて足場２が
固定される。この足場２は、図２に示すように、足場板
３の四隅に４本の垂直柱４を立てたものである。この構
造の足場２は、横に並べて連結して、建物１の周囲に固
定される。作業者は、この足場２の足場板３に載って、
建物１の外側に外壁材を固定している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】図１と図２に示す足場
２は、長い外壁材を能率よく建物１に固定できない欠点
がある。それは、長い外壁材を足場板３に運ぶときに、
四隅の垂直柱４が邪魔になるからである。とくに、長い
外壁材であって、窓の部分を切り欠いたものは、部分的
に幅が狭くなっているので、この部分で非常に曲がりや
すい性質がある。このような、外壁材を持ち上げるとき
には、足場板の四隅の垂直柱が邪魔になって、外壁材を
曲がらないようにして持ち上げるのが非常に難しい欠点
がある。さらに、従来の足場は、足場板を固定している
ので、全ての外壁を能率よく構築できない欠点もある。

【０００４】このような欠点は、クレーンの先端に作業
台を装着している高所作業用のクレーン車を使用して解
消できるように考えられる。しかしながら、実際にはこ
の種のクレーン車を使用しても、外壁を能率よく構築で
きない。それは、作業台が小さくて、長い外壁材を載せ
て移送できず、また、作業台を建物から所定の距離離し
て上下に移動させるのに手間がかかるからである。

【０００５】この欠点を解消するために、本発明者は、
長い外壁材を載せて移送できる上下移動ケージを作り、
これを建物の屋上から吊り下げて、外壁を構築する装置
を考案した。しかしながら、この装置は、ワイヤーで吊
り下げている上下移動ケージが、ふらふらと移動して定
位置に固定できないので、安全に作業できない欠点があ
った。とくに、外壁を建物を構築するときには、上下移
動ケージに載った作業者が、外壁材を建物に押し付けて
固定するので、このときに上下移動ケージが動いて安全
に作業できない欠点があった。とくに、上下移動ケージ
と建物との間隔が広くなると、この隙間から作業者が落
下する危険性があって、安全な作業が保証されない欠点
がある。

【０００６】さらにまた、この装置は、建物から上下移
動ケージを吊り下げる装置が高価になり、設備コストが
高くなる欠点がある。さらに、建物の周囲に外壁を構築
するためには、屋上に固定する装置を、建物の１面に外
壁を構築する毎に移動する必要があり、このために相当
な手間がかかる欠点もある。また、木造建物のように、
陸屋根でない建物は、平面状の屋上がないので、装置を
固定するのが難しい欠点もある。

【０００７】本発明は、このような欠点を解決すること
を目的に開発されたものである。本発明の重要な目的
は、全ての建物において、その全周に能率よく、安全に
外壁を構築できる建物の外壁を構築する移動足場を提供
することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の建物の外壁を構
築する移動足場は、クレーン車に吊り下げられて、作業
者と外壁材２１を載せることができる上下移動ケージ５
と、この上下移動ケージ５を上下に移動できるように連
結している枠体７とを備える。枠体７は、建物１から所
定の間隔離されて垂直に立てて固定されると共に、上下
移動ケージ５を上下に移動させるクレーン６で吊り下げ
て建物１の周囲に移動できるように構成されている。

【０００９】上下移動ケージ５は、枠体７の縦枠７Ａに
沿って上下に移動できる垂直ガイド１２を両側に設けて
いる。枠体７は、縦枠７Ａの上端を連結している横枠７
Ｂに、上下移動ケージ５を吊り下げるクレーン６のワイ
ヤー１８を挿通させる案内筒１９を設けている。

【００１０】枠体７をクレーン車のクレーン６で吊り下
げて、建物１の外壁構築面に移動させて、建物１から所
定の間隔離して垂直に立て、枠体７の案内筒１９に挿通
されたクレーン６のワイヤー１８で上下移動ケージ５を
上下に移動させながら、建物１に外壁を構築する。その
後、枠体７をクレーン車のクレーン６で吊り下げて、建
物１の別の外壁構築面に移動させて、建物１の周囲に外
壁を構築するように構成されている。

【００１１】本発明の移動足場は、下記のように使用さ
れて、建物１に外壁を構築する。 クレーン車のクレーン６で枠体７を吊り下げて、建
物１の外壁を構築する面に移動させる。枠体７は、建物
１から多少離されて、垂直に固定される。枠体７は、た
とえば、下端をブロック等の載台２２に載せ、上端を建
物１に連結して垂直に固定される。

【００１２】 枠体７の横枠７Ｂに設けられた案内筒
１９で、クレーン６が上下移動ケージ５を吊り下げる位
置を特定し、クレーン車のクレーン６で上下移動ケージ
５を吊り下げる。案内筒１９を通過してクレーン６で吊
下げられる上下移動ケージ５は、バランスよく水平の姿
勢で上下に移動される。建物１に固定される外壁材２１
は、上下移動ケージ５に載せられて、作業者と一緒に上
下に移動されて、建物１に固定される。上下移動ケージ
５を上方に移動させて、建物の１面に外壁材２１を固定
して外壁を構築する。

【００１３】 その後、上下移動ケージ５を最も上ま
で移動させて、この状態で上下移動ケージ５と枠体７を
一緒に吊り上げる。枠体７が倒れないようにして、枠体
７を建物１から離す。建物１から離された枠体７を、ク
レーン６で吊り下げて、次に外壁を構築する面に移動さ
せる。その後、との動作を繰り返して、建物１の全
ての面に外壁材２１を固定する。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基
づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明
の技術思想を具体化するための移動足場を例示するもの
であって、本発明は移動足場を下記のものに特定しな
い。

【００１５】さらに、この明細書は、特許請求の範囲を
理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番
号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決す
るための手段の欄」に示される部材に付記している。た
だ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に
特定するものでは決してない。

【００１６】図３の使用状態を示す斜視図と、図４ない
し図６に示す建物の外壁を構築する移動足場は、作業者
と外壁材２１とを載せてクレーン車のクレーン６に吊り
下げられて上下に移動される上下移動ケージ５と、この
上下移動ケージ５を連結している枠体７とを備える。

【００１７】上下移動ケージ５は、横に細長い長方形の
水平プレート８の四隅に、短い支柱９を固定して、この
支柱９の上端に手摺１０を固定したものである。手摺１
０は、水平プレート８の両側と背面に固定される。水平
プレート８の前縁は建物１との対向面となるので、外壁
材２１を固定するのに便利なように手摺を固定していな
い。

【００１８】水平プレート８は、長い外壁材２１を載せ
て移送できるように、たとえば、３〜８ｍの長さと、外
壁材２１を載せて作業者が安全に能率よく作業できるよ
うに、６０ｃｍ〜１．５ｍの幅を有する。

【００１９】上下移動ケージ５は、手摺１０の上方に吊
下ロッド１１を連結している。吊下ロッド１１は、クレ
ーン車のクレーン６で、上下移動ケージ５を水平の姿勢
で安定して吊り下げするために設けられる。この吊下ロ
ッド１１は、上下移動ケージ５の両側に垂直に固定され
る垂直ガイド１２を介して、水平プレート８と手摺１０
に連結されている。吊下ロッド１１は水平の姿勢で水平
プレート８に連結され、その中心に、クレーン６のフッ
ク１４に連結される引掛具１３を固定している。引掛具
１３は、水平プレート８の前後、左右の中心に配設され
て、上下移動ケージ５を水平の姿勢で安定して吊り下げ
て、上下に移動させる。

【００２０】垂直ガイド１２は、図５の水平断面図と図
６の斜視図に示すように、枠体７の縦枠７Ａに案内され
て、スムーズに移動するガイド片１５を有する。ガイド
片１５は、少なくとも、垂直ガイド１２の上下の２カ所
に設けられている。垂直ガイド１２を縦枠７Ａに沿って
移動させるためである。図の上下移動ケージ５は、ガイ
ド片１５に車輪を使用している。車輪は、縦枠７Ａの内
面を転動して、スムーズに移動する。ただ、ガイド片に
は、縦枠の内面を摺動するものも使用できる。

【００２１】図４と図６に示す上下移動ケージ５は、垂
直ガイド１２の上端に吊下ロッド１１を連結している。
この構造の上下移動ケージ５は、垂直ガイド１２を、吊
下ロッド１１を連結する部材に併用できるので、全体の
構造を簡単にして、しかも、上下移動ケージ５を水平の
姿勢で吊り下げて、安定して上下に移動できる特長があ
る。とくに、両側に設けた長い垂直ガイド１２は、上下
移動ケージ５を水平の姿勢に保持して、スムーズに上下
に移動させる。それは、長い垂直ガイド１２の上下にガ
イド片１５を離して設けることにより、上下移動ケージ
５が傾くのを抑制できるからである。また、長い垂直ガ
イド１２の上端に連結している吊下ロッド１１は、ここ
に設けた引掛具１３で、安定して上下移動ケージ５を上
下に移動させる。

【００２２】さらに、垂直ガイド１２の上端を吊下ロッ
ド１１で連結している上下移動ケージ５は、上下移動ケ
ージ５の上方のスペースを有効に活用できる特長があ
る。たとえば、この上下移動ケージ５は、図６に示すよ
うに、水平プレート８の全長よりも長い外壁材２１を、
手摺１０の上に載せて運搬できる。さらに、上下移動ケ
ージ５は、手摺１０を作業台に併用して、長い外壁材２
１を上下移動ケージ５の上で加工して能率よく作業でき
る特長もある。

【００２３】枠体７は、両側に配設されている２本の縦
枠７Ａと、この縦枠７Ａを連結する横枠７Ｂとからな
る。縦枠７Ａと横枠７Ｂが方形状に連結された枠体７と
なっている。２本の縦枠７Ａは、内側に沿って垂直ガイ
ド１２を移動できるようにＣ型鋼を使用している。Ｃ型
鋼は、縦枠７Ａの内側に、ガイド片１５を移動させるガ
イド溝１７を有する。Ｃ型鋼を使用した縦枠７Ａは、ガ
イド片１５が、ガイド溝１７から外部に外れることな
く、ガイド溝１７内を安定して転動できる特長がある。
このため、上下移動ケージ５は、ガイド溝１７から脱線
することなく、いいかえると前後に揺れて建物との間隔
を変化させることなく、縦枠７Ａに沿って安定して上下
に移動できる。ただ、縦枠は、Ｃ型鋼に代わって、たと
えば、Ｈ型鋼も使用できる。Ｈ型鋼は、内側にガイド片
を案内するガイド溝ができるように、上下端を横枠に連
結される。

【００２４】縦枠７Ａの上端を連結している横枠７Ｂ
は、上下移動ケージ５を吊り下げるクレーン６のワイヤ
ー１８を挿通させる案内筒１９を中央に固定している。
案内筒１９は、クレーン６のクレーンアーム６Ａの先端
に固定される先端具２０を挿入できる大きさをしてい
る。この構造の案内筒１９は、上下移動ケージ５をクレ
ーン車のクレーン６で吊り下げるときに、クレーンアー
ム６Ａの先端を連結できる。クレーンアーム６Ａの先端
が、案内筒１９に連結される移動足場は、クレーンアー
ム６Ａを枠体７の定位置に連結して使用できるので、上
下移動ケージ５を上下に移動させるときに、クレーンア
ーム６Ａが横枠７Ｂに対して移動することがなく、安定
して上下移動ケージ５を上下に移動できる特長がある。

【００２５】図に示す枠体７は、縦枠７Ａの上下両端を
横枠７Ｂで連結している。この構造の枠体７は、縦枠７
Ａの上下を連結する横枠７Ｂで、縦枠７Ａ間の間隔を一
定に保持できる特長がある。ただ、縦枠７Ａの下端は必
ずしも横枠７Ｂで連結する必要はない。縦枠７Ａの下端
を、一定の決められた間隔で地面に置いて、縦枠７Ａの
間隔を調整できるからである。

【００２６】縦枠７Ａと横枠７Ｂは、現場に運搬するの
に便利なように、脱着できる構造で連結している。たと
えば、縦枠７Ａと横枠７ＢをＬ金具で連結し、あるい
は、縦枠７Ａと横枠７Ｂの一方を貫通する止ネジを、他
方にねじ込み、あるいはまた、縦枠７Ａと横枠７Ｂの両
方を貫通する止ネジにナットをねじ込んで脱着自在に連
結することができる。脱着自在に連結している縦枠７Ａ
と横枠７Ｂは、運搬するときに、分解してトラック等で
便利に移送できる。

【００２７】以上の実施例の移動足場は、縦枠７Ａの内
側に設けたガイド溝１７にガイド片１５を案内してい
る。ただ、本発明の移動足場は、垂直ガイドと縦枠との
連結構造を前述の機構に特定しない。垂直ガイドと縦枠
は、垂直ガイドを縦枠に沿って上下に移動できるすべて
の機構、たとえば、垂直ガイドを筒状として、この筒を
縦枠に挿通する機構も利用できる。

【００２８】

【発明の効果】本発明の建物の外壁を構築する移動足場
は、全ての建物において、能率よく、しかも安全に外壁
を構築できる特長がある。それは、本発明の移動足場
が、クレーン車に吊り下げられて、作業者と外壁材を載
せることができる上下移動ケージと、この上下移動ケー
ジが上下に移動できるように連結されている枠体とを備
え、枠体を建物から所定の間隔離して垂直に立てて固定
すると共に、クレーンで上下移動ケージを上下に移動さ
せながら、建物に外壁を構築するからである。この構造
の移動足場は、作業者と外壁材を載せた上下移動ケージ
を、枠体の縦枠に沿って上下に移動させて、外壁材を運
搬して建物に固定できる。このように、作業者と外壁材
とを載せた状態で上下に移動できる移動足場は、外壁材
を、傷つけたり曲げたりすることなく、簡単かつ楽に運
搬できることに加えて、外壁材を建物に固定しやすい位
置で、いいかえると、最も作業しやすい位置で上下移動
ケージを停止させて、理想の状態で、能率よく外壁の構
築ができる特長がある。

【００２９】さらに、本発明の移動足場は、枠体を建物
から所定の間隔離して固定すると共に、上下移動ケージ
を、この枠体に沿って上下に移動させている。したがっ
て、作業者が外壁材を建物に強く押し付けても、上下移
動ゲージが前後左右にふらふらと移動することがなく、
また、風に吹かれて揺れることもない。このため、上下
移動ケージと建物との間隔は、変化することなく、常に
一定に保持されて、この隙間から作業者が落下する危険
性を極減し、安全な状態で安心して作業できる優れた特
長がある。

【００３０】さらに、本発明の移動足場の特筆すべき特
長は、上下移動ケージを上下に移動させるクレーンで、
枠体を吊り下げて建物の周囲に移動できることである。
このように、クレーンで枠体を移動できる移動足場は、
建物の一つの外壁面に外壁を構築した後に、枠体をクレ
ーンで吊り下げて、建物の別の外壁構築面に移動させて
外壁を構築することができる。したがって、本発明の移
動足場は、従来のように、建物の全周に足場を組み立て
る必要がなく、足場の設置にかかる費用や時間を著しく
低減して、建物の全周の全ての面に、能率よく理想の状
態で外壁材を固定できる特長がある。しかも、本発明の
移動足場は、一台のクレーン車を、枠体を外壁構築面に
移動することと、上下移動ケージを上下させることに併
用しているので、さらに低コストにして、作業の能率を
向上できる特長も備える。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来の足場を建物の周囲に固定した状態を示す
平面図

【図２】従来の足場を示す斜視図

【図３】本発明の実施例にかかる建物の外壁を構築する
移動足場の使用状態を示す斜視図

【図４】本発明の実施例にかかる建物の外壁を構築する
移動足場の正面図

【図５】図４に示す移動足場の水平断面図

【図６】図４に示す移動足場の上下移動ケージを示す斜
視図

【符号の説明】

１…建物 ２…足場 ３…足場板 ４…垂直柱 ５…上下移動ケージ ６…クレーン ６Ａ…クレーンアーム ７…枠体 ７Ａ…縦枠 ７
Ｂ…横枠 ８…水平プレート ９…支柱 １０…手摺 １１…吊下ロッド １２…垂直ガイド １３…引掛具 １４…フック １５…ガイド片 １７…ガイド溝 １８…ワイヤー １９…案内筒 ２０…先端具 ２１…外壁材 ２２…載台

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クレーン車に吊り下げられて、作業者と
   外壁材(21)を載せることができる上下移動ケージ(5)
   と、この上下移動ケージ(5)が上下に移動できるように
   連結され、さらに、建物(1)から所定の間隔離されて垂
   直に立てて固定できると共に、上下移動ケージ(5)を上
   下に移動させるクレーン車で吊り下げて建物(1)の周囲
   に移動できる枠体(7)とを備え、 上下移動ケージ(5)は、枠体(7)の縦枠(7A)に沿って上下
   に移動できる垂直ガイド(12)を両側に有し、 枠体(7)は、縦枠(7A)の上端を連結している横枠(7B)
   に、上下移動ケージ(5)を吊り下げるクレーン車のワイ
   ヤー(18)を挿通させる案内筒(19)を有し、 枠体(7)を建物(1)から所定の間隔離して垂直に立て、枠
   体(7)の案内筒(19)に挿通されたクレーン車のワイヤー
   (18)で上下移動ケージ(5)を上下に移動させて、建物(1)
   の外壁を構築し、枠体(7)をクレーン車で吊り下げて建
   物(1)の周囲に移動させて、建物周囲の外壁を構築する
   ように構成されてなる建物の外壁を構築する移動足場。