JP2997850B2 - ペプチド - Google Patents

ペプチド

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  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は重症筋無力症における自己抗体の標的抗原で
あるアセチルコリン受容体の部分ペプチドに関する。本
ペプチドは強い抗原性を持つので重症筋無力症の治療と
診断において重要である。
〔従来の技術〕
ネイチャー(Nature)、第299巻、第793〜797頁(198
2年)には、シビレエイの1種であるトルペド・カリホ
ルニカ(Torpedo californica)の電気器官から抽出さ
れたニコチン性アセチルコリン受容体のαサブユニット
前駆体が461個のアミノ酸から構成されることが報告さ
れている。
特開平1−139597号公報において、本発明者等はトル
ペド・カリホルニカのアセチルコリン受容体のαサブユ
ニットにおける第183〜200番目に相当する合成ペプチド
が、重症筋無力症患者血清中の抗アセチルコリン受容体
抗体(以下、抗AChR抗体と略す)と結合しうる事を示し
た。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来、蛋白質のN端の合成ペプチドを免疫原として動
物に投与し、蛋白質に対する抗体あるいは抗血清を得る
ことが行なわれている。しかし、一般に合成ペプチドを
免疫原とする抗体は、アフィニティーが弱く実用性に乏
しいことが指摘されてきており、抗AChR抗体と充分に結
合する臨床上実用的な合成ペプチドは得られていない。
従って、本発明の目的は、抗原性が強く特に重症筋無
力症の治療と診断において有用な合成ペプチドを提供す
ることにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、特に重症筋無力症の治療と診断におい
て有用な合成ペプチドを開発することを目的として種々
研究を重ねてきたところ、アセチルコリン受容体αサブ
ユニットの同一または異なるT細胞認識部位がB細胞認
識部位の両端にそれぞれ結合したペプチドを創製するこ
とに成功し、かつ当該ペプチドが抗AChR抗体と強く結合
することを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明はアセチルコリン受容体αサブユニット
の同一または異なるT細胞認識部位がB細胞認識部位の
両端にそれぞれ結合しているペプチドであって、該T細
胞認識部位が式(a)で表されるアミノ酸配列の全部ま
たは一部を有するものであり、該B細胞認識部位が式
(b)で表されるアミノ酸配列の全部または一部を有す
るものであることを特徴とする、抗AChR抗体に対する結
合能を有するペプチド、該ペプチドを有効成分とする重
症筋無力症治療剤、治療用吸着剤および診断薬に関する
ものである。
本発明において、アセチルコリン受容体αサブユニッ
トのT細胞認識部位は、ジャーナル・オブ・イミュノロ
ジー(The Journal of Immunology)、第138巻、第2213
〜2229頁(1987年)に記載された方法によって求められ
る。具体的には第107〜116番目、第125〜143番目、第16
9〜181番目、第257〜269番目、第351〜368番目などが挙
げられるが、なかでも第107〜116番目がもっとも望まし
い。即ち、次式(a)で表されるアミノ酸配列であり、
本発明においては、この配列の全部または一部を有する
ものが用いられ、通常6〜12個のアミノ酸から構成され
る。また、これらの配列において、一部のアミノ酸に置
換、削除、挿入などが有る場合でもT細胞に対する結合
能を有するものは、本発明のペプチドに含まれる。
一方、B細胞認識部位は、プロシーディングズ・オブ
・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.N
atl.Acad.Sci.USA)、第78巻、第3824〜3828頁(1981
年)に記載の親水性プロファイルおよびFEBS、第188
巻、第215〜218頁に記載の抗原性プロットにより求めら
れる。具体的には第20〜30番目、第60〜90番目、第125
〜147番目、第190〜第195番目などが挙げられるが、な
かでも第67〜76番目および第190〜195番目がもっとも望
ましい。即ち、次式(b)で表されるアミノ酸配列であ
り、本発明においては、この配列の全部または一部を有
すものが用いられ、通常3〜12個のアミノ酸から構成さ
れる。また、これらの配列において、一部のアミノ酸に
置換、削除、挿入などが有る場合でも抗AChR抗体に対す
る結合能を有するものは、本発明のペプチドに含まれ
る。
本発明のペプチドは前記のT細胞認識部位がB細胞認
識部位の両端に結合しているものであるが、この場合の
T細胞認識部位は同一であってもよくまた異なるもので
あってもよい。
異なるものとしては、T細胞認識部位のうち異なる部
位のものがそれぞれB細胞認識部位の両端に結合したも
のでもよく、同じ部位のうち、一部のアミノ酸の置換、
削除、挿入などによって異なる配列になったものも挙げ
られる。
同じT細胞認識部位が結合したものとしては、例えば
次のようなペプチドが例示される。
あるいは、 などである。
本発明において、抗AChR抗体に対する結合能は、例え
ば後述の実施例で示すように、ELISA、RIA、FIAなどに
より判定される。
本発明のペプチドの合成は、ペプチドの合成において
通常用いられる方法、例えば固相合成法や液相合成法に
よって行なわれるが、固相合成法が操作上簡便である
〔例えば、日本生化学会編「続生化学実験講座2タンパ
ク質の化学(下)」(昭和62年5月20日株式会社東京化
学同人発行)、第641〜694頁など参照〕。
本発明のペプチドは、重症筋無力症の疾患原因物質で
ある抗AChR抗体と結合する能力を有しているので、重症
筋無力症の患者の治療と診断において有用である。
本発明の重症筋無力症治療剤は、重症筋無力症の患者
に投与することにより血清中の抗AChR抗体と結合しこれ
を中和することができるので、重症筋無力症の患者の症
状を軽減することができる。有効な活性発現のための投
与量は、年齢、体重、症状によって異なるが、通常、2g
/kg以下であり、好ましくは200mg/kg以下1μg/kg以上
である。好ましい投与形態は水溶性または生理食塩液な
どの生理学的に許容しうる塩類溶液が挙げられる。投与
経路は静脈、皮下、腹腔などがあげられ、さらにカプセ
ル化、リポソーム化することにより経口投与も可能であ
る。本発明のペプチドは上記投与量において顕著な急性
毒性は発現しない。
また、本発明の重症筋無力症治療用吸着剤は、体液に
不溶性の担体に本発明のペプチドを固定化することによ
り、重症筋無力症の患者血清中の抗AChR抗体を吸着除去
することができる。担体はペプチドを共有結合できるア
ミノ基、カルボキシル基、水酸基などの官能基を有する
ものが好ましい。さらに有効な量のペプチドを固定化す
るために表面積が広い多孔性の担体が好ましい。担体の
形状は、粒子状、シート状、中空糸状などの任意のもの
が使用できる。固定化は、一般にペプチドまたはタンパ
ク質を担体に固定化する場合に使用する方法に従って行
なわれる。例えば担体のカルボキシル基をN−ヒドロキ
シコハク酸イミド活性エステルに変換し、これに本発明
のペプチドが有するアミノ基と反応させる方法(活性エ
ステル法)、担体のアミノ基あるいはカルボキシル基と
ペプチドのカルボキシル基あるいはアミノ基をそれぞれ
ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合試薬で結合
する方法(縮合法)などが挙げられる。
本発明のペプチドを体液に不溶性の担体に固定化して
得られる重症筋無力症治療用吸着剤を抗AChR抗体を含む
重症筋無力症の患者の血液、血漿などの体液と接触させ
ることにより、抗AChR抗体を吸着除去することができ
る。
本発明のペプチドは抗AChR抗体と特異的に結合するの
で診断薬用の試薬としても有用である。
即ち、本発明の重症筋無力症診断薬は、本発明のペプ
チドをチューブ、ビーズ、プレートの表面などに吸着ま
たは固定化するか、あるいは酵素、放射性同位元素、蛍
光色素などで標識することにより、重症筋無力症の患者
の血清中の抗AChR抗体の検出に有効に使用しうる。例え
ば、ELISA、RIA、FIAなどにより行なうことができる。
〔実施例〕 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する
が、本発明はこれらの実施例により限定されるものでは
ない。
(1) ペプチドの合成 実施例1 式 で示されるペプチドをペプチド自動合成装置を用いて固
相合成法により合成した。米国アプライド・バイオシス
テムズ社製のPAMイソロイシン、t−Boc−L−Ile 0.1m
molを用い、ペプチドのN端に向かって順次アミノ酸を
結合させた。結合反応において、米国アプライド・バイ
オシステムズ社製のt−Bocリジン、t−Bocロイシン、
t−Bocアスパラギン酸、t−Bocチロシン、t−Bocト
レオニン、t−Bocグリシン、t−Bocイソロイシン、t
−Bocアスパラギン、t−Bocプロリン、t−Bocトリプ
トファン、t−Bocアラニンをそれぞれ用いた。
得られた保護ペプチドを株式会社ペプチド研究所製の
HF反応装置I型を用いて脱保護と固相からの除去を行な
った。粗組成物をミリポア・ウオーターズ社製分取用高
速液体クロマトグラフ〔カラム:デルタパックC18 47
×300mm プレップパック1000加圧モジュール付〕で精
製した。得られた精製ペプチドを島津社製LC6A高速液体
クロマトグラフ〔カラム:東ソー社製TSKgel ODS−80T
M CTR、移動相:トリフルオロ酢酸を0.05容量%含有す
るアセトニトリルと水の混合溶媒(アセトニトリル濃度
を30分間に5容量%から50容量%に変化させた。)〕で
分析したところ26.1minに単一のピークが示された。FAB
法マススペクトルにより求められた精製ペプチドの分子
量は3412であった(理論値:3410.98)。
実施例2 式 で示されるペプチドを実施例1と同様の方法で合成し
た。得られたペプチドの分析用高速液体クロマトグラフ
におけるピークの溶出時間は、24.2min、FABマススペク
トルによる分子量測定結果は、2993(論理値:2991.54)
であった。
比較例 式 Tyr−Thr−Cys−Cys−Pro−Aspで表されるペプチ
ド(比較例1)および、式 Trp−Asn−Pro−Ala−Asp
−Tyr−Gly−Gly−Ile−Lysで表されるペプチド(比較
例2)を実施例1または実施例2と同様の方法で合成し
た。得られたペプチドの分析用高速液体クロマトグラフ
におけるピークの溶出時間、およびFABマススペクトル
による分子量測定結果をまとめて第1表に示す。
(2) ラットに対する抗原性試験 実施例1および実施例2に示すペプチド各30n molを
フロイント・コンプリート・アジュバントとともに2週
間間隔で6回、ルイスラットのフット・パッドの皮下に
注入することにより免疫を行なった。採血後、横隔膜を
摘出し電気生理学的試験に供した。
実施例1のペプチドで免疫したラット10匹のうち6匹
に高濃度の抗AChR抗体が検出され、同じ6匹のラットが
電気生理学的に実験的重症筋無力症を発症していること
がわかった。実施例2のペプチドで免疫したラット11匹
のうち3匹に抗AChR抗体が検出され、同じ3匹のラット
が電気生理学的に実験的重症筋無力症を発症した。比較
例1および比較例2ではいずれも8匹中1匹に弱い抗AC
hR抗体価および軽度の実験的重症筋無力症の発症が認め
られた。
(3) 抗AChR抗体との結合性試験 実施例1または実施例2のペプチド5mgとヒトα
アシッドグリコプロテイン1mgを1−エチル−3−(3
−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドにより結
合させてペプチド−ヒトα−アシッドグリコプロテイ
ン−コンジュゲイトを得た。上記コンジュゲイトをELIS
A用の96穴プレートに固相化し、通常のELISAの手法に従
って、抗AChR抗体を含む重症筋無力症の患者血清17例と
抗AChR抗体を含まない正常者の血清20例との反応性を検
討した(例えば、石川栄治他編「酵素免疫測定法」株式
会社医学書院社1978年12月15日発行など参照)。
その結果、正常者の平均値と標準偏差値の2倍を加え
た値以上の値を示す重症筋無力症の患者血清が実施例1
のペプチドに対して7例(陽性率約40%)、実施例2の
ペプチドに対して5例(陽性率約30%)存在した。
比較例1および比較例2のペプチドについても同様の
検討を行なったが、いずれも重症筋無力症の患者血清の
陽性率は0%であった。
(4) 吸着剤の作成と評価 生化学工業社製のCM−セルロファインCH、10gをジオ
キサン中でN−ヒドロキシコハク酸イミド0.5gおよびジ
シクロヘキシルカルボジイミド1.0gとともに一晩振盪す
ることにより、活性エステル化した担体を得た。上記担
体に10mmolのリン酸塩緩衝液(pH7.4)に溶解した実施
例1または実施例2のペプチド10mgを加え、4℃で一晩
振盪することにより実施例1または実施例2のペプチド
が固定化された吸着剤を得た。
(3)で抗AChR抗体の濃度が高いことが判明した重症
筋無力症の患者血清5例を上記吸着剤と混合し(血清2m
lに対して吸着剤500mg)、37℃で2時間振盪した。上清
について(3)と同様の方法で抗AChR抗体の濃度を測定
したところ、いずれも50%以上の除去率を示した。
比較例1または比較例2のペプチドを同様の方法で固
定化して得られた吸着剤についても同様の検討を行なっ
たが、いずれも有意に抗AChR抗体濃度を低下させなかっ
た。
〔発明の効果〕
本発明によれば、上記の実施例から明らかなとうり、
重症筋無力症の患者の治療と診断に有用なペプチドが提
供される。本発明のペプチドは抗AChR抗体と特異的に結
合する能力を持つので、抗AChR抗体とアセチルコリン受
容体の結合を阻害することから、重症筋無力症の患者に
投与することにより抗AChR抗体を中和して症状を軽減す
ることに効果がある。
また、本発明のペプチドを用いた診断試薬により重症
筋無力症の患者血清中の抗AChR抗体の濃度を測定するこ
とができる。
また、本発明のペプチドを固定化して得られる吸着剤
は重症筋無力症の患者血清中の抗AChR抗体を効率良く吸
着除去できることから、症状を軽減することに効果があ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷原 正夫 岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会 社クラレ内 (72)発明者 岡 樹一郎 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (56)参考文献 第31回日本神経学会総会抄録(平成2 年5月23日発行)p.216 J.Neurol.Sci.,Vo l.99,No.2−3(1990.No v.)p.219−227 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07K 7/08 C07K 14/705 REGISTRY(STN) CA(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アセチルコリン受容体αサブユニットの同
    一または異なるT細胞認識部位がB細胞認識部位の両端
    にそれぞれ結合しているペプチドであって、該T細胞認
    識部位が次式(a)で表されるアミノ酸配列の全部また
    は一部を有するものであり、該B細胞認識部位が次式
    (b)で表されるアミノ酸配列の全部または一部を有す
    るものであることを特徴とする、抗AChR抗体に対する結
    合能を有するペプチド。
  2. 【請求項2】次式で表される請求項(1)記載のペプチ
    ド。
  3. 【請求項3】次式で表される請求項(1)記載のペプチ
    ド。
  4. 【請求項4】請求項(1)、(2)または(3)記載の
    ペプチドを有効成分とする重症筋無力症治療剤。
  5. 【請求項5】請求項(1)、(2)または(3)記載の
    ペプチドを体液に不溶性の担体に固定化してなる重症筋
    無力症治療用吸着剤。
  6. 【請求項6】請求項(1)、(2)または(3)記載の
    ペプチドを有効成分とする重症筋無力症診断薬。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2019004674A1 (ko) * 2017-06-28 2019-01-03 한국세라믹기술원 아세틸콜린수용체 결합 펩타이드

Non-Patent Citations (2)

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J.Neurol.Sci.,Vol.99,No.2−3(1990.Nov.)p.219−227
第31回日本神経学会総会抄録(平成2年5月23日発行)p.216

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WO2019004674A1 (ko) * 2017-06-28 2019-01-03 한국세라믹기술원 아세틸콜린수용체 결합 펩타이드
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