JP2992134B2 - エンジン用弁バネおよびその製造方法 - Google Patents
エンジン用弁バネおよびその製造方法Info
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- JP2992134B2 JP2992134B2 JP3177450A JP17745091A JP2992134B2 JP 2992134 B2 JP2992134 B2 JP 2992134B2 JP 3177450 A JP3177450 A JP 3177450A JP 17745091 A JP17745091 A JP 17745091A JP 2992134 B2 JP2992134 B2 JP 2992134B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はたとえば自動車等のエン
ジンに使用されるエンジン用弁バネに関する。
ジンに使用されるエンジン用弁バネに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車等に用いられるエンジンに対して
は高効率、高馬力でしかも小形軽量であることが要求さ
れ、このためにシャフトの回転数、気筒数および1気筒
あたりの動弁の数は増加する傾向にある。これに伴い動
弁の小形化、高速化が要求され、したがって動弁の動き
に伴い圧縮を繰り返す弁バネにたいしては、小形の寸法
において高速動作への追随性が優れサージングが防止で
きること、繰り返し動作によるへたり及び疲労破壊が起
きにくいことと共に潤滑油に対する耐食性に優れている
ことが要求される。このような目的のため従来より例え
ば特開昭62ー283232に記載されているようにコ
イル状の弁バネ端部の硬度を低くし中央部の硬度を高く
する技術が知られている。
は高効率、高馬力でしかも小形軽量であることが要求さ
れ、このためにシャフトの回転数、気筒数および1気筒
あたりの動弁の数は増加する傾向にある。これに伴い動
弁の小形化、高速化が要求され、したがって動弁の動き
に伴い圧縮を繰り返す弁バネにたいしては、小形の寸法
において高速動作への追随性が優れサージングが防止で
きること、繰り返し動作によるへたり及び疲労破壊が起
きにくいことと共に潤滑油に対する耐食性に優れている
ことが要求される。このような目的のため従来より例え
ば特開昭62ー283232に記載されているようにコ
イル状の弁バネ端部の硬度を低くし中央部の硬度を高く
する技術が知られている。
【0003】また特開昭62ー258236に記載され
たようにコイル状の弁バネの端部の線径を太く中央部の
線径を細くする技術が知られている。
たようにコイル状の弁バネの端部の線径を太く中央部の
線径を細くする技術が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前述の従
来の技術ではそれぞれ問題がある。特開昭62ー283
232に記載された技術によればバネのへたりを防止
し、疲労寿命を上げる効果はあるが、境界部がソフトと
なるためバネの固有周波数の向上は不十分でサージング
の防止は不完全となりやすく、一旦サージングが発生す
るとバネの端部に応力が集中し好ましくない。またバネ
の表面は従来のアニオンコートであり潤滑油に対する耐
食性に乏しい欠点がある。
来の技術ではそれぞれ問題がある。特開昭62ー283
232に記載された技術によればバネのへたりを防止
し、疲労寿命を上げる効果はあるが、境界部がソフトと
なるためバネの固有周波数の向上は不十分でサージング
の防止は不完全となりやすく、一旦サージングが発生す
るとバネの端部に応力が集中し好ましくない。またバネ
の表面は従来のアニオンコートであり潤滑油に対する耐
食性に乏しい欠点がある。
【0005】また特開昭62ー258236に記載され
た技術によれば、バネの固有周波数を高めサージングを
防止する効果はあるが、バネのへたりの防止、疲労寿命
の向上、潤滑油に対する耐食性の向上については何等考
慮がされておらず欠点を残したままである。これらの従
来技術の欠点は、バネ素材のまま、またはこれに従来の
軟質コートを施した状態においては、バネ素材の硬度を
上げて行くと繰り返し圧縮によるへたりは起きにくくな
り、バネの固有周波数も増加してサージングも防止でき
るようになる反面、素材表面に腐食ピットが発生しやす
くなりこれにより疲労破壊が起こりやすいという二律背
反する性質により実用可能なバネ素材の硬度の上限が抑
えられていたことに起因するものと考える。本発明の目
的はかかる従来技術の欠点を除去し、小形の寸法におい
て高速動作への追随性が優れサージングが防止でき、繰
り返し動作によるへたり及び疲労破壊が起きにくく、潤
滑油に対する耐食性に優れているエンジン用弁バネを提
供することである。
た技術によれば、バネの固有周波数を高めサージングを
防止する効果はあるが、バネのへたりの防止、疲労寿命
の向上、潤滑油に対する耐食性の向上については何等考
慮がされておらず欠点を残したままである。これらの従
来技術の欠点は、バネ素材のまま、またはこれに従来の
軟質コートを施した状態においては、バネ素材の硬度を
上げて行くと繰り返し圧縮によるへたりは起きにくくな
り、バネの固有周波数も増加してサージングも防止でき
るようになる反面、素材表面に腐食ピットが発生しやす
くなりこれにより疲労破壊が起こりやすいという二律背
反する性質により実用可能なバネ素材の硬度の上限が抑
えられていたことに起因するものと考える。本発明の目
的はかかる従来技術の欠点を除去し、小形の寸法におい
て高速動作への追随性が優れサージングが防止でき、繰
り返し動作によるへたり及び疲労破壊が起きにくく、潤
滑油に対する耐食性に優れているエンジン用弁バネを提
供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
め本発明のエンジン用弁バネでは、以下に示す構成を採
用する。すなわち、バネ素材の表面を湿式メッキにより
なるNiPまたはNiBの皮膜である第1の皮膜により
被覆し、該第1の皮膜の表面を気相合成法によるセラミ
ックスの皮膜である第2の皮膜により被覆してなること
を特徴とする。
め本発明のエンジン用弁バネでは、以下に示す構成を採
用する。すなわち、バネ素材の表面を湿式メッキにより
なるNiPまたはNiBの皮膜である第1の皮膜により
被覆し、該第1の皮膜の表面を気相合成法によるセラミ
ックスの皮膜である第2の皮膜により被覆してなること
を特徴とする。
【0007】また、本発明のエンジン用弁バネの製造方
法では、以下に示す構成を採用する。すなわち、線材を
熱処理後コイル状に成形してバネ素材を形成し、その後
該バネ素材にショットピーニング処理を施した後、湿式
メッキにより該バネ素材の表面にNiPまたはNiBの
皮膜である第1の皮膜を被覆し、その後、該第1の皮膜
の上に気相合成法によりセラミックスの皮膜である第2
の皮膜を被覆することを特徴とする。
法では、以下に示す構成を採用する。すなわち、線材を
熱処理後コイル状に成形してバネ素材を形成し、その後
該バネ素材にショットピーニング処理を施した後、湿式
メッキにより該バネ素材の表面にNiPまたはNiBの
皮膜である第1の皮膜を被覆し、その後、該第1の皮膜
の上に気相合成法によりセラミックスの皮膜である第2
の皮膜を被覆することを特徴とする。
【0008】
【作用】本発明によれば化学的に極めて安定し、機械的
にも強固なセラミックスの皮膜によりエンジン用弁バネ
のバネ素材の表面が十分なる密着力をもって被覆、保護
される。従って本発明によれば、サージング及びへたり
の防止のためバネ素材の硬度を上げても腐食ピットおよ
びこれに起因する疲労破壊は発生しにくく、目的に応じ
適宜バネ素材の硬度を選択することができるため前述の
従来技術における根本的な課題が解決され、小形の寸法
において高速動作への追随性が優れサージングが防止で
き、繰り返し動作によるへたり及び疲労破壊が起きにく
く、しかも潤滑油に対する耐食性にすぐれているという
条件を同時に満足するエンジン用弁バネの実現ができ
る。
にも強固なセラミックスの皮膜によりエンジン用弁バネ
のバネ素材の表面が十分なる密着力をもって被覆、保護
される。従って本発明によれば、サージング及びへたり
の防止のためバネ素材の硬度を上げても腐食ピットおよ
びこれに起因する疲労破壊は発生しにくく、目的に応じ
適宜バネ素材の硬度を選択することができるため前述の
従来技術における根本的な課題が解決され、小形の寸法
において高速動作への追随性が優れサージングが防止で
き、繰り返し動作によるへたり及び疲労破壊が起きにく
く、しかも潤滑油に対する耐食性にすぐれているという
条件を同時に満足するエンジン用弁バネの実現ができ
る。
【0009】
【実施例】以下に本発明の第1の実施例を説明する。ま
ずC0.55wt%,Si1.55wt%,Mn0.80wt%,P
0.01wt%,S0.012 wt%およびCr0.75wt%を含
む鋼材(SUP12)の線材を用意しオイルテンパー処
理により硬度Hv650の熱処理線材を製造した。次に
この線材を定寸に切断したのち冷間でコイリングを行
い、図3に示される形状で第1表に示される諸元のエン
ジン用弁バネのコイル状のバネ素材を成形した。図3に
おいて材料線径φdなるバネ素材11はコイル平均径φ
Dなるコイル形状をなしている。 次に該バネ素材に対し表面加工としてショットピーニン
グを行った後図2に示す直流方式のイオンプレーテイ ン
グ装置の陽極側のボート23にチタン材27を配し、陰
極22にバネ素材11を取付け、排気口28を通じて真
空槽21を予め5×10ー 5 Torrの真空度に排気し
ておく、次に、導入口26からアルゴンガスを導入しな
がら排気を続け槽内を5×10ー 4 Torrに維持す
る。この状態で陰極22に取付けたバネ素材11に直流
電源24によりー500Vの電圧を加えると共にボート
23を加熱電源29の制御により加熱しチタン材27を
を蒸発させた。次にチタン材の蒸発を続行しながら導入
バルブ26からアルゴンガスと共に窒素ガスを導入し
た。この結果、電極間にチタンおよび窒素のそれぞれの
イオンが混合した状態で発生し、これらが混じりあった
状態で陰極に取付られたバネ素材11の表面に蒸着され
図1に示すようにTiNなるセラミックスの強固な皮膜
32を形成する。
ずC0.55wt%,Si1.55wt%,Mn0.80wt%,P
0.01wt%,S0.012 wt%およびCr0.75wt%を含
む鋼材(SUP12)の線材を用意しオイルテンパー処
理により硬度Hv650の熱処理線材を製造した。次に
この線材を定寸に切断したのち冷間でコイリングを行
い、図3に示される形状で第1表に示される諸元のエン
ジン用弁バネのコイル状のバネ素材を成形した。図3に
おいて材料線径φdなるバネ素材11はコイル平均径φ
Dなるコイル形状をなしている。 次に該バネ素材に対し表面加工としてショットピーニン
グを行った後図2に示す直流方式のイオンプレーテイ ン
グ装置の陽極側のボート23にチタン材27を配し、陰
極22にバネ素材11を取付け、排気口28を通じて真
空槽21を予め5×10ー 5 Torrの真空度に排気し
ておく、次に、導入口26からアルゴンガスを導入しな
がら排気を続け槽内を5×10ー 4 Torrに維持す
る。この状態で陰極22に取付けたバネ素材11に直流
電源24によりー500Vの電圧を加えると共にボート
23を加熱電源29の制御により加熱しチタン材27を
を蒸発させた。次にチタン材の蒸発を続行しながら導入
バルブ26からアルゴンガスと共に窒素ガスを導入し
た。この結果、電極間にチタンおよび窒素のそれぞれの
イオンが混合した状態で発生し、これらが混じりあった
状態で陰極に取付られたバネ素材11の表面に蒸着され
図1に示すようにTiNなるセラミックスの強固な皮膜
32を形成する。
【0010】ここでバネ素材11と皮膜32の密着力を
上げるには両者の界面34の近傍においてバネ素材11
の成分であるFe,Cと皮膜32の成分であるTi,が
相互に十分拡散していることと共に界面を挟んでの内部
応力の変化を十分なだらかにする必要があり、これに伴
い硬度の変化をなだらかにする必要がある。一方、皮膜
32の外面36においては表面における腐食、破壊に対
する耐性を上げるため内部応力、硬度はなるべく高いこ
とが望ましい。ところで、TiNセラミックスにおいて
はNの成分比が増加するほど内部応力と硬度が増加する
傾向がある。本実施例においてはこれらの点に留意し、
蒸着の開始時においては導入する窒素ガスの分圧を1×
10ー 4 Torrと低くし、皮膜32の成長とともに暫
次圧力を高め同分圧を8×10ー 4 Torrにまで高め
るようにした。この結果、皮膜32及び界面34近傍に
おけるTi,N,Fe及びCの成分比はAESによる分
析によれば、それぞれ図4における曲線41、42、4
3および44に示すようになり、界面34の前後におけ
る急峻な成分比の変化が防止され、しかも外表面36に
おいてはNの成分比が十分高くなっていることが認めら
れ、強固な皮膜32をバネ素材11の上に十分な密着力
をもって被覆できることが明らかとなった。ここで図4
の縦軸は成分比、横軸は皮膜の外表面36からの深さを
示す。
上げるには両者の界面34の近傍においてバネ素材11
の成分であるFe,Cと皮膜32の成分であるTi,が
相互に十分拡散していることと共に界面を挟んでの内部
応力の変化を十分なだらかにする必要があり、これに伴
い硬度の変化をなだらかにする必要がある。一方、皮膜
32の外面36においては表面における腐食、破壊に対
する耐性を上げるため内部応力、硬度はなるべく高いこ
とが望ましい。ところで、TiNセラミックスにおいて
はNの成分比が増加するほど内部応力と硬度が増加する
傾向がある。本実施例においてはこれらの点に留意し、
蒸着の開始時においては導入する窒素ガスの分圧を1×
10ー 4 Torrと低くし、皮膜32の成長とともに暫
次圧力を高め同分圧を8×10ー 4 Torrにまで高め
るようにした。この結果、皮膜32及び界面34近傍に
おけるTi,N,Fe及びCの成分比はAESによる分
析によれば、それぞれ図4における曲線41、42、4
3および44に示すようになり、界面34の前後におけ
る急峻な成分比の変化が防止され、しかも外表面36に
おいてはNの成分比が十分高くなっていることが認めら
れ、強固な皮膜32をバネ素材11の上に十分な密着力
をもって被覆できることが明らかとなった。ここで図4
の縦軸は成分比、横軸は皮膜の外表面36からの深さを
示す。
【0011】本実施例によれば、従来腐食ピットの発生
を防ぐため硬度の上限がHv500程度に抑えられてい
たバネ素材11の硬度をHv650とすることにより固
有周波数を424Hzより550Hzと高めサージング
を完全に防止するとともに、繰り返し圧縮に対するへた
りの歪量を従来の1/6とし、しかも疲労破壊に対する
寿命は従来の2倍とし、しかも潤滑油に対する耐食性に
おいても問題のないエンジン用弁バネが実現できた。
を防ぐため硬度の上限がHv500程度に抑えられてい
たバネ素材11の硬度をHv650とすることにより固
有周波数を424Hzより550Hzと高めサージング
を完全に防止するとともに、繰り返し圧縮に対するへた
りの歪量を従来の1/6とし、しかも疲労破壊に対する
寿命は従来の2倍とし、しかも潤滑油に対する耐食性に
おいても問題のないエンジン用弁バネが実現できた。
【0012】次に本発明の第2の実施例を説明する。ま
ず第1の実施例と同じ鋼材(SUP)で同じ太さの線材
を用意しオイルテンパー処理により硬度Hv720の熱
処理線材を製造した。次にこの線材を定寸に切断したの
ち冷間でコイリングを行い、第3図に示される形状で第
1表に示される諸元の図5においてその断面が示される
エンジン用弁バネのコイル状のバネ素材51を成形し
た。次に該バネ素材51に対し表面加工としてショット
ピーニングを行ったのち約80℃のブルーシューマーの
無電解メッキ液(pH6)に15分間浸しNi92%,
P8%のNiPの皮膜をバネ素材51の表面に析出さ
せ、図5に示す第1の皮膜52としてこれを被覆する。
次にこの状態で400℃1Hrの熱処理を行い該第1の
皮膜の硬度をHv1000程度としたのち図2に示す直
流方式のイオンプレーテイ ング装置を用い第1の実施例
の場合と同様の方法によりTiNの皮膜である第2の皮
膜53が前記第1の皮膜52の表面に蒸着されこれを被
覆する。本実施例の場合はバネ素材51とTiNの皮膜
53とが中間層であるNiP膜52を介して結合されて
いる。ここで、バネ素材51,NiP膜52およびTi
N皮膜53の硬度はそれぞれHv720,Hv1000
およびHv1600であり、中間層であるNiP膜52
の介在により、バネ素材に直接TiN皮膜を被覆した第
1の実施例の場合よりも更に膜の厚さ方向に対する硬度
の勾配を緩やかにすることができる。この結果、本実施
例においてはTiN膜の表面硬度および密着力を第1の
実施例よりも更に高めることができ、へたりおよび疲労
破壊に対する耐性が更に向上する。更に、中間層NiP
膜は湿式の化学メッキによるため、ピンホールが少な
く、これにより腐食に対する耐性が向上する。なお本実
施例においては中間層たる第1の皮膜としてNiP膜を
用いたがこの代わりにNiB膜を用いても同様の効果が
えられる。
ず第1の実施例と同じ鋼材(SUP)で同じ太さの線材
を用意しオイルテンパー処理により硬度Hv720の熱
処理線材を製造した。次にこの線材を定寸に切断したの
ち冷間でコイリングを行い、第3図に示される形状で第
1表に示される諸元の図5においてその断面が示される
エンジン用弁バネのコイル状のバネ素材51を成形し
た。次に該バネ素材51に対し表面加工としてショット
ピーニングを行ったのち約80℃のブルーシューマーの
無電解メッキ液(pH6)に15分間浸しNi92%,
P8%のNiPの皮膜をバネ素材51の表面に析出さ
せ、図5に示す第1の皮膜52としてこれを被覆する。
次にこの状態で400℃1Hrの熱処理を行い該第1の
皮膜の硬度をHv1000程度としたのち図2に示す直
流方式のイオンプレーテイ ング装置を用い第1の実施例
の場合と同様の方法によりTiNの皮膜である第2の皮
膜53が前記第1の皮膜52の表面に蒸着されこれを被
覆する。本実施例の場合はバネ素材51とTiNの皮膜
53とが中間層であるNiP膜52を介して結合されて
いる。ここで、バネ素材51,NiP膜52およびTi
N皮膜53の硬度はそれぞれHv720,Hv1000
およびHv1600であり、中間層であるNiP膜52
の介在により、バネ素材に直接TiN皮膜を被覆した第
1の実施例の場合よりも更に膜の厚さ方向に対する硬度
の勾配を緩やかにすることができる。この結果、本実施
例においてはTiN膜の表面硬度および密着力を第1の
実施例よりも更に高めることができ、へたりおよび疲労
破壊に対する耐性が更に向上する。更に、中間層NiP
膜は湿式の化学メッキによるため、ピンホールが少な
く、これにより腐食に対する耐性が向上する。なお本実
施例においては中間層たる第1の皮膜としてNiP膜を
用いたがこの代わりにNiB膜を用いても同様の効果が
えられる。
【0013】次に本発明の第3の実施例を説明する。先
ず第2の実施例におけるショットピーニンされたバネ素
材51を準備し、図7に示すP−CVD装置の真空槽7
2内に配された下側の平行平板電極73の上に取り付け
る。真空槽72は排気口76および導入口77を備え、
はじめは排気口76より排気しつつ、ArとTiCl4
の混合ガスを導入口77より導入し、槽内の真空度を5
×10ー 1 Torrに保持する。この状態で上側の平行
平板電極74と下側の平行平板電極73の間に高周波電
源78により23.56MHzのRF電界を加える。こ
れにより導入された混合ガスのプラズマが電極間に発生
し、活性化されたチタンがアルゴンにより清浄化された
バネ素材51の表面に緻密且つ強固に付着し図6に示す
Ti膜62を形成する。次にこの状態から更に導入口7
7からN2 ガスを混合ガスの1成分として追加導入し槽
内の真空度が1Torrになるように保持した状態でR
F電界によるプラズマの励起を続行する。これにより活
性化された窒素及びチタンが混じりあって前記Ti膜6
2の上に緻密且つ強固に付着し図6に示すTiN膜63
を形成する。その後、熱処理をすることにより前記の膜
62および63は互いに拡散しあい図8に示すようにT
iNの皮膜82によりバネ素材51が被覆されてなるエ
ンジン用弁バネがつくられる。本実施例によれば図8に
おける皮膜82および界面83の近傍の構成元素の成分
比は図4に示す第1の実施例のものとほぼ同様であり、
皮膜の密着強度は十分高く、その上、プラズマ状態で形
成されるため皮膜が緻密となり、第1の実施例に比し疲
労破壊および潤滑油に対する耐性は更に倍増する。以上
の如く本発明の実施例として最外層の皮膜としてTiN
膜を用いたものにつき説明いたが、本発明はこれに限る
ものではなく、TiNの代わりにZrN,HfN,Zr
C,HfC等の金属化合物即ちセラミックスを用いても
同様の効果が得られる。
ず第2の実施例におけるショットピーニンされたバネ素
材51を準備し、図7に示すP−CVD装置の真空槽7
2内に配された下側の平行平板電極73の上に取り付け
る。真空槽72は排気口76および導入口77を備え、
はじめは排気口76より排気しつつ、ArとTiCl4
の混合ガスを導入口77より導入し、槽内の真空度を5
×10ー 1 Torrに保持する。この状態で上側の平行
平板電極74と下側の平行平板電極73の間に高周波電
源78により23.56MHzのRF電界を加える。こ
れにより導入された混合ガスのプラズマが電極間に発生
し、活性化されたチタンがアルゴンにより清浄化された
バネ素材51の表面に緻密且つ強固に付着し図6に示す
Ti膜62を形成する。次にこの状態から更に導入口7
7からN2 ガスを混合ガスの1成分として追加導入し槽
内の真空度が1Torrになるように保持した状態でR
F電界によるプラズマの励起を続行する。これにより活
性化された窒素及びチタンが混じりあって前記Ti膜6
2の上に緻密且つ強固に付着し図6に示すTiN膜63
を形成する。その後、熱処理をすることにより前記の膜
62および63は互いに拡散しあい図8に示すようにT
iNの皮膜82によりバネ素材51が被覆されてなるエ
ンジン用弁バネがつくられる。本実施例によれば図8に
おける皮膜82および界面83の近傍の構成元素の成分
比は図4に示す第1の実施例のものとほぼ同様であり、
皮膜の密着強度は十分高く、その上、プラズマ状態で形
成されるため皮膜が緻密となり、第1の実施例に比し疲
労破壊および潤滑油に対する耐性は更に倍増する。以上
の如く本発明の実施例として最外層の皮膜としてTiN
膜を用いたものにつき説明いたが、本発明はこれに限る
ものではなく、TiNの代わりにZrN,HfN,Zr
C,HfC等の金属化合物即ちセラミックスを用いても
同様の効果が得られる。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば前記の如く、高速動作へ
の追随性が優れ、サージングが防止でき、繰り返し動作
によるへたりおよび疲労破壊が起こりにくく、しかも潤
滑油に対する耐食性に優れているという条件を同時に満
足するエンジン用弁バネの実現が出来る。
の追随性が優れ、サージングが防止でき、繰り返し動作
によるへたりおよび疲労破壊が起こりにくく、しかも潤
滑油に対する耐食性に優れているという条件を同時に満
足するエンジン用弁バネの実現が出来る。
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例におけるバネ素材の被覆
構造を示す断面図である。
構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の製造に用いられるイオ
ンプレーテイ ングの系統を示す図である。
ンプレーテイ ングの系統を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施例のコイル形状を示す正面
図である。
図である。
【図4】本発明の第1の実施例の皮膜および界面部にお
ける成分の比率を示す図である。
ける成分の比率を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例におけるバネ素材の被覆
構造を示す断面図である。
構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例におけるバネ素材の熱処
理前の膜構造を示す断面図である。
理前の膜構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例の製造に用いられるP−
CVD装置の系統を示す図である。
CVD装置の系統を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施例におけるバネ素材の熱処
理後の被覆構造を示す断面図である。
理後の被覆構造を示す断面図である。
11,51 バネ素材 21,72 真空槽 28,76 排気口 26,77 導入口 22 陰極 23 ボート 24 直流電源 27 チタン材 32,82 TiN皮膜 34,83 界面 52 第1の皮膜 53 第2の皮膜 73,74 平行平板電極 78 高周波電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/00 - 14/58 C23C 16/34 C23C 28/04 B21F 35/00 F01L 3/10
Claims (2)
- 【請求項1】 バネ素材の表面を湿式メッキによりなる
NiPまたはNiBの皮膜である第1の皮膜により被覆
し、該第1の皮膜の表面を気相合成法によるセラミック
スの皮膜である第2の皮膜により被覆してなることを特
徴とするエンジン用弁バネ。 - 【請求項2】 線材を熱処理後コイル状に成形してバネ
素材を形成し、その後該バネ素材にショットピーニング
処理を施した後、湿式メッキにより該バネ素材の表面に
NiPまたはNiBの皮膜である第1の皮膜を被覆し、
その後、該第1の皮膜の上に気相合成法によりセラミッ
クスの皮膜である第2の皮膜を被覆することを特徴とす
るエンジン用弁バネの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3177450A JP2992134B2 (ja) | 1991-06-21 | 1991-06-21 | エンジン用弁バネおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3177450A JP2992134B2 (ja) | 1991-06-21 | 1991-06-21 | エンジン用弁バネおよびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0642319A JPH0642319A (ja) | 1994-02-15 |
JP2992134B2 true JP2992134B2 (ja) | 1999-12-20 |
Family
ID=16031162
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3177450A Expired - Lifetime JP2992134B2 (ja) | 1991-06-21 | 1991-06-21 | エンジン用弁バネおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2992134B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109312660A (zh) * | 2016-06-01 | 2019-02-05 | 三菱重工发动机和增压器株式会社 | 旋转机械用叶轮、压缩机、增压器及旋转机械用叶轮的制造方法 |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20020191493A1 (en) * | 2000-07-11 | 2002-12-19 | Tatsuo Hara | Spring, drive mechanism, device and timepiece using the spring |
JP6551767B2 (ja) * | 2018-11-19 | 2019-07-31 | 三菱重工業株式会社 | 積層部材、並びに、これを用いた羽根車、圧縮機及びエンジン |
-
1991
- 1991-06-21 JP JP3177450A patent/JP2992134B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN109312660A (zh) * | 2016-06-01 | 2019-02-05 | 三菱重工发动机和增压器株式会社 | 旋转机械用叶轮、压缩机、增压器及旋转机械用叶轮的制造方法 |
US10781701B2 (en) | 2016-06-01 | 2020-09-22 | Mitsubishi Heavy Industries Engine & Turbocharger, Ltd. | Impeller for rotary machine, compressor, forced induction device, and method for manufacturing impeller for rotary machine |
EP3421755B1 (en) * | 2016-06-01 | 2021-10-06 | Mitsubishi Heavy Industries Engine & Turbocharger, Ltd. | Impeller for rotary machine, compressor, supercharger, and method for manufacturing impeller for rotary machine |
Also Published As
Publication number | Publication date |
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JPH0642319A (ja) | 1994-02-15 |
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