JP2991920B2 - 複層めっき鋼板 - Google Patents

複層めっき鋼板

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JP2991920B2
JP2991920B2 JP6040151A JP4015194A JP2991920B2 JP 2991920 B2 JP2991920 B2 JP 2991920B2 JP 6040151 A JP6040151 A JP 6040151A JP 4015194 A JP4015194 A JP 4015194A JP 2991920 B2 JP2991920 B2 JP 2991920B2
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plating
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車、家電、建材等
に使用される耐食性および塗装適合性に優れた防錆用の
複層めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、防錆用めっき鋼板は要求される耐
食性が厳しくなり、用途によっては複層めっき鋼板が適
用されるようになってきた。例えば特公平3−2851
8号公報や特公平2−48636号公報には、第1層に
NiまたはNi系合金めっき層、第2層にZn系合金め
っき層、第3層にFeの濃度を高めたZn系合金めっき
層を形成した複層めっき鋼板が開示されている。これら
は第1層(下層)で母材との密着性を向上させ、第2層
で耐食性を担い、第3層(最上層)で後に化成処理を施
して、塗装密着性を向上させる構成にしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近で
は、塗装密着性の改善要求が高まりつつあり、さらには
需要家の製造設備の都合によって塗装前の化成処理を省
略したいという要求も出てきた。そこで、本発明は、こ
のような要求を満足させて、塗装前の化成処理を施さな
くても塗装密着性を向上させた複層めっき鋼板の提供を
目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために、鋼材の少なくとも片面に、第1層(下
層)としてZnめっき被覆層を形成し、第2層(上層)
としてNi−P合金で1g/m2 以上のめっき被覆層を
形成することを特徴とする。
【0005】
【作用】まず、本発明において第1層(下層)にZnめ
っきを被覆する理由を述べる。鋼材の耐食性を向上させ
るためには、母材自体の耐食性を上げるか、あるいは母
材を保護する金属を被覆するのが一般的である。母材に
炭素鋼が適用され、その主成分の鉄の水溶液系の電極反
応及び標準電極電位(熱力学データからの計算値、25
℃、水素基準)は、 Fe2++2e- =Fe(solid)、−0.440
o /V であるのに対して、鉄より卑な金属あるいはその合金を
めっきすれば母材の腐食を妨げることができる。そこで
亜鉛は、 Zn2++2e- =Zn(solid)、−0.7627
o /V である〔電気化学便覧 第4版(電気化学協会編,丸
善)より〕から、鉄より卑で犠牲防食作用が大きいめっ
き金属といえる。以上の観点から、第1層の金属として
Znを選定するものである。
【0006】次に、第2層(上層)にNi−P合金めっ
を形成させる理由を述べる。よい耐食性を得るために
は、上層は塗装密着性を向上させる目的で、りん酸塩や
クロメート等の化成処理を施すのが一般的である。しか
しながら、本発明では上層にNi−P合金めっきを被覆
することによって、化成処理を行う必要がない構成とし
たものである。例えば、ニッケルの水溶液系の電極反応
及び標準電極電位は、 Ni2++2e- =Ni(solid)、−0.236 Eo /V である〔電気化学便覧 第4版(電気化学協会編,丸
善)より〕から、母材のFe、下層めっきのZn系合
金、上層めっきのNi−P合金を比較した場合、Niが
電極電位的に最も貴であることがわかる。塗装して使用
される場合、塗膜下の金属の溶出が起こり難いことが塗
装密着性を向上させることを意味している。そのため第
2層(上層)の皮膜は第1層(下層)の溶け易い皮膜を
完全に被覆することが必要である。通常電気めっきが被
めっき表面を確実に覆うためには1g/m2 以上の付着
量が必要とされ、Ni−P合金も同様に1g/m2 以上
の被覆層を形成していることが望ましい。しかも第2層
(上層)のNi−P合金めっき自身は耐食性が良く、非
晶質な皮膜で比較的硬く疵がつき難く、無塗装で使用す
ることが可能であるのも大きな利点である。
【0007】さらに、第2層をNi−P合金めっきに選
定したことによって、以下のような利点もある。近年し
ばしば行われるようになった複層めっき方法において、
上層にFeまたはFe濃度の高いZn系合金の電気めっ
きがしばしば施されるようになった。その理由は上述し
た本発明のNi−P合金めっきの場合と同様の原理に基
づいている。しかしながら、Fe系合金電気めっき浴で
は2価のFe2+がアノード酸化やエアレーション酸化に
よって3価のFe3+に変わり、その割合が増えると電析
効率を低下させる。そのため別の槽でFe2+に還元して
フィードバックさせる工程が必要になる。また溶質Fe
の補給方法にも工夫が必要で、浴の管理が複雑かつ困難
である。それに比べてNiめっき浴はNi2+1種類のみ
であり、エアレーション酸化が起こらず浴管理は容易で
ある。しかも無電解法でNi−P合金めっきを施す場合
は、第1層(下層)が溶融Znめっきの場合、あるいは
最終工程に電気めっき設備を設けることができないよう
な状況で、第2層(上層)のNi合金を形成させる場合
により効果的である。
【0008】ここで電気Znめっき、溶融Znめっき、
Ni−P合金無電解めっき、りん酸塩処理、クロメート
処理等の方法は、当業者においては熟知されているので
詳細な説明を省略し、実施例で標準的な工程の記述のみ
で説明する。
【0009】
【実施例】次に標準的な浴組成を用いて作製した複層め
っき鋼板について実施例で説明する。 実施例1 一般冷延鋼板(JIS G3141,SPCC,板厚
0.8mm)を母材として、試験片の大きさ50mm×10
0mmを採取し、脱脂、塩酸酸洗、水洗等の前処理を施
す。次に、 ZnSO4 ・7H2 O:400g/l (NH4 2 SO4 : 25g/l H2 SO4 : 12g/l からなるZnめっき浴組成で、浴のpH1.0、浴の温
度60℃、カソード電流密度20A/dm2 のめっき条件
で、第1層(下層)に電気Znめっきして付着量20g
/m2 を得た。引き続き、市販の無電解めっき原液(日
本カニゼン製,シューマー)を5倍に薄めて、浴温70
℃、pH6とした無電解めっき液を用いて、上記で作製
した電気Znめっき鋼板の上層に第2層としてNi−P
合金を無電解めっきして表1に示す通りの付着量の試験
片D1〜D4を得た。このD1〜D4の試験片は化成処
理を施さないで、カチオン電着塗膜厚み20μm、焼き
付け硬化180℃、20分を施して塗装密着性試験材D
3,D4とし、また比較材D1,D2とした。次に、同
上条件で電気Znめっき付着量20g/m2 を施し、り
ん酸塩系化成処理で皮膜付着量2.5g/m2 を形成さ
せ、カチオン電着塗膜厚み20μm、焼き付け硬化18
0℃、20分を施した。
【0010】試験材、比較材とも塗膜の一部分に下地鋼
板に達するスクラッチを入れ、塩水噴霧試験(JIS
Z2371)を1000時間行った。その後、各試験片
の塗膜のスクラッチ部分、およびその他の平面部分のブ
リスターおよび錆の発生状況を観察し、◎印は全く異常
なし、○印は少し異常あり、△印は膨れ(ブリスターの
場合)または錆の発生あり、および×印は膨れまたは錆
の発生が顕著、として、それらの結果を表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】表1から、本発明の複層めっき鋼板で化成
処理を行っていない試験材D3,D4は、複層めっき鋼
板で上層のNi−P合金めっき付着量が1g/m2 に満
たない比較材D1,D2および上層のNi−P合金めっ
きが存在しないが、化成処理を行った比較材S1に比べ
て、優れた塗装密着性を示していることが解る。
【0013】すなわち、平面部分の全て、およびスクラ
ッチ部分においてブリスターの異常は全くなかった。た
だ、スクラッチ部分に白錆が少し発生しただけであっ
た。それにくらべて化成処理を行っただけの場合および
上層めっき量が少ない場合、ブリスターを完全には抑え
ることができなかった。
【0014】実施例2 溶融亜鉛めっき鋼板、めっき付着量180g/m2 (両
面)に実施例1と同様の条件で、Ni−P合金の無電解
めっきを施して、表2の通りの付着量の試験片D5〜D
8を得た。このD5〜D8の試験片は化成処理を施さな
いで、カチオン電着塗膜厚み20μm、焼き付け硬化1
80℃、20分を施して塗装密着性試験材D7,D8と
し、また比較材D5,D6とした。次に、上記と同様の
溶融亜鉛めっき鋼板に、りん酸塩系化成処理で皮膜付着
量2.5g/m2 を形成させ、カチオン電着塗膜厚み2
0μm、焼き付け硬化180℃、20分を施した。
【0015】試験材、比較材とも塗膜の一部分に下地鋼
板に達するスクラッチを入れ、塩水噴霧試験(JIS
Z2371)を1000時間行った。その後、各試験片
の塗膜のスクラッチ部分、およびその他の平面部分のブ
リスターおよび錆の発生状況を観察し、実施例1と同様
の評価基準で判定した結果を表2に示す。
【0016】
【表2】
【0017】表2から、本発明の複層めっき鋼板で化成
処理を行っていない試験材D7,D8は、複層めっき鋼
板で上層のNi−P合金めっき付着量が1g/m2 に満
たない比較材D5,D6および上層のNi−P合金めっ
きは存在しないが、化成処理を行った比較材S2に比べ
て、優れた塗装密着性を示していることが解る。
【0018】すなわち、平面部分の全て、およびスクラ
ッチ部分においてブリスターの異常は全くなかった。そ
れにくらべて化成処理を行っただけの場合、および上層
めっき量が少ない場合はブリスターを完全には迎えるこ
とができなかったのは実施例1とほとんどおなじ結果で
あった。
【0019】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、自動車・
家電・建材等に使用される耐食性および塗装適合性に優
れた防錆用の複層めっき鋼板を提供することができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の少なくとも片面に、鋼板表面よ
    り、第1層としてZnめっき被覆層を形成し、第2層と
    してNi−P合金で1g/m2 以上のめっき被覆層を形
    成したことを特徴とする複層めっき鋼板。
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