JP2991620B2 - 細胞活動の制御方法 - Google Patents

細胞活動の制御方法

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JP2991620B2
JP2991620B2 JP6205385A JP20538594A JP2991620B2 JP 2991620 B2 JP2991620 B2 JP 2991620B2 JP 6205385 A JP6205385 A JP 6205385A JP 20538594 A JP20538594 A JP 20538594A JP 2991620 B2 JP2991620 B2 JP 2991620B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、細胞活動の制御方法
に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、培
養条件下にある真核細胞のエンドサイトーシスを制御す
るための簡便な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】ヒトをはじめとする真核生物
は、その細胞が分裂増殖を繰り返し、活発な機能発現能
を有する細胞を次々に産生することによって個体が維持
されている。一つの細胞が分裂し、さらにもう一度分裂
するまでの期間を細胞周期と言い、この細胞周期は、染
色体の分離および細胞質の分裂が生じる「分裂期」とそ
れに続く「間期」とに大別される。このうち、間期にあ
る細胞は、細胞に不可欠な蛋白質を産生するためのmR
NA合成や、染色体DNAの複製を行うが、また同時
に、細胞外の液相にある高分子物質を受容体を介してあ
るいは液相そのものを小胞体によって細胞内に取り込む
活動(エンドサイトーシス)を普遍的に行っている。こ
のエンドサイトーシスは、細胞の代謝や信号物質伝達等
と共役し、個体の生存および物質産生を支えている重要
な細胞活動であると考えられている。
【0003】従って、このエンドサイトーシスを制御す
ることは、真核細胞による有用物質の産生、あるいは医
療技術の開発等に大きく寄与するものと期待されてい
る。培養条件下にある真核細胞のエンドサイトーシスを
低下もしくは停止させる方法としては、従来より、ショ
糖などの添加による高浸透圧下で細胞を培養する方法、
細胞質カリウムイオンを低下させる方法、脂溶性酸やア
ミン等によって細胞質pHを低下させる方法等が知られ
ている。しかしながら、これらの方法の場合には、それ
ぞれの作用の標的分子が明らかでなく、効果も一過性で
毒性がある。しかも特殊な細胞培養液を用いる必要があ
り、実際上の応用可能性は乏しいと言わざるを得ない。
【0004】この発明は、以上の通りの事情に鑑みてな
されたものであり、細胞生存を損なうことなく、エンド
サイトーシスを選択的に低下もしくは停止することので
きる簡便な方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、真核細胞の培養培地に塩化リチ
ウムを添加し、細胞の細胞外物質取り込み活動を低下も
しくは停止させることを特徴とする細胞活動の制御方法
を提供する。またこの発明は、真核細胞の培養培地にウ
ォートマンニンを添加し、細胞の細胞外物質の取り込み
活動を低下もしくは停止させることを特徴とする細胞活
動の制御方法をも提供する。
【0006】
【作用】この発明の方法においては、分裂能を有する真
核細胞の培養液中に塩化リチウムまたはウォートマンニ
ンを添加するだけの簡単な操作によって、その培養細胞
のエンドサイトーシスを低下もしくは停止させる。活動
低下の程度は、培養液への塩化リチウムまたはウォート
マンニンの添加量によって操作することができるが、塩
化リチウムは10〜100mMの範囲で、またウォート
マンニンは2〜200nMの範囲で添加することによ
り、細胞の生存を損なうことなく、しかも細胞増殖に影
響を及ぼすことなく、エンドサイトーシスを選択的に低
下もしくは停止させることができる。
【0007】エンドサイトーシスを回復させる場合に
は、培養液を交換して塩化リチウムまたはウォートマン
ニンを洗浄除去すればよい。塩化リチウムまたはウォー
トマンニンの添加量に応じて数時間から数十時間後には
エンドサイトーシスが回復する。なお、培養液それ自体
は特別な組成を必要とせず、公知のイーグルMEM培地
やダルベッコ変法MEM培地等を用いればよい。
【0008】以下、実施例を示してこの発明の方法につ
いてさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以
下の例に限定されるものではない。
【0009】
【実施例】
実施例1 ヒト培養細胞株HT1080を直径3cmのプラスティ
ックディシュで常法に従って培養し、その培地であるイ
ーグルMEM培養液に1M塩化リチウムを終濃度50m
Mの割合で添加した。塩化リチウムの添加から1、2、
3および18時間後、培養液に西洋わさびパーオキシダ
ーゼ(HRP)を1mg/mlの濃度で添加し、その2
0分後に新しい培養液で細胞を洗浄し、細胞に取り込ま
れたHRPの酵素活性を測定した。
【0010】結果は、図1に示した通りである。この図
1は、HRP活性の測定値を、細胞数を反映する細胞タ
ンパク質量にて規格化し、それを塩化リチウム無添加
(時間0)の活性値と比較した結果を示す。この図1か
ら明らかなように、細胞のHRP取り込み(エンドサイ
トーシス)は塩化リチウムの添加によって経時的に抑制
され、添加後3時間では対照(時間0)の15%まで低
下した。
【0011】なお、50mM塩化リチウムの添加による
細胞損傷や増殖阻害は観察されなかった。また、他の高
分子物質の取り込みにおいてもHRPに対するのと同様
の効果が観察された。さらに、蛍光標識化デキストラン
を予め取り込ませた細胞を塩化リチウムを含む培養液で
処理すると、対照(塩化リチウム無添加)の細胞では蛍
光が核周辺に密集する膜小胞に認められたのに対し、塩
化リチウム処理細胞では膜小胞が細胞全体に分散してい
た。一方、受容体に特異的に結合して細胞内に取り込ま
れるトランスフェリンを標識化して取り込ませた細胞の
場合、対照細胞では細長い標識膜器官が観察されたのに
対し、塩化リチウム処理細胞では膜器官が細断小胞化し
ているのが認められた。 実施例2 ヒト培養細胞株HT1080を実施例1と同様に培養
し、その培養液に1M塩化リチウムを図2に示した各終
濃度で添加した。塩化リチウムの添加から1時間後、培
養液にHRPを1mg/mlの濃度で添加し、その20
分後に新しい培養液で細胞を洗浄し、細胞に取り込まれ
たHRPの酵素活性を測定した。
【0012】結果は、図2に示した通りである。この図
2は、図1と同様にHRP活性の測定値を規格化し、そ
れを塩化リチウム無添加の活性値と比較した結果を示
す。この図2から明らかなように、細胞のエンドサイト
ーシスは塩化リチウムの添加量に依存して低下し、その
効果は10mM以上で生じることが確認された。 実施例3 ヒト培養細胞株HT1080を実施例1と同様に培養
し、その培養液に1M塩化リチウムを終濃度50mMの
割合で添加した。塩化リチウムの添加から3時間後、新
鮮な培養液で細胞を3度洗浄し、洗浄から図3に示した
時間ののち培養液にHRPを1mg/mlの濃度で添加
し、その20分後に細胞に取り込まれたHRPの酵素活
性を測定した。
【0013】結果は、図3に示した通りである。この図
3は、図1と同様にHRP活性の測定値を規格化し、そ
れを細胞洗浄直後(時間0)の活性値と比較した結果を
示す。この図3から明らかなように、塩化リチウムの添
加によって低下したエンドサイトーシスは、塩化リチウ
ムの除去から経時的に回復し、4時間以降はほぼもとの
水準に達することが確認された。 実施例4 ヒト培養細胞株HT1080を直径3cmのプラスティ
ックディシュで常法に従って培養し、その培地であるダ
ルベッコ変法MEM培養液にウォートマンニン終濃度5
0nMの割合で添加した。ウォートマンニンの添加後、
図4の横軸上段に示した時間で培養液にHRPを1mg
/mlの濃度で添加し、その10分後に新しい培養液で
細胞を洗浄し、細胞に取り込まれたHRPの酵素活性を
測定した。
【0014】結果は、図4に示した通りである。この図
4は、HRP活性の測定値を、細胞数を反映する細胞タ
ンパク質量にて規格化し、それをウォートマンニン無添
加(時間C)の活性値と比較した結果を示す。また、横
軸下段は細胞がウォートマンニンと接触した時間を示
す。この図4から明らかなように、細胞のHRP取り込
み(エンドサイトーシス)はウォートマンニンの添加に
よって速やかに抑制され、10分間の接触で対照の35
%まで低下した。
【0015】なお、50nMウォートマンニンの添加に
よる細胞損傷や増殖阻害は観察されなかった。また、他
の高分子物質の取り込みにおいてもHRPに対するのと
同様の効果が観察された。さらに、蛍光標識化デキスト
ランを予め取り込ませた細胞を50nMウォートマンニ
ンを含む培養液で処理すると、対照の細胞では蛍光が核
周辺に密集する膜小胞に認められたのに対し、ウォート
マンニン処理細胞では膜小胞が細胞全体に分散してい
た。一方、受容体に特異的に結合して細胞内に取り込ま
れるトランスフェリンを標識化して取り込ませた細胞の
場合、対照細胞では細長い標識膜器官が観察されたのに
対し、ウォートマンニン処理細胞では膜器官が小胞化し
ているのが認められた。 実施例5 ヒト培養細胞株HT1080を実施例4と同様に培養
し、その培養液にウォートマンニンを図5に示した各終
濃度で添加した。ウォートマンニンの添加から1時間
後、培養液にHRPを1mg/mlの濃度で添加し、そ
の20分後に新しい培養液で細胞を洗浄し、細胞に取り
込まれたHRPの酵素活性を測定した。
【0016】結果は、図5に示した通りである。この図
5は、図4と同様にHRP活性の測定値を規格化し、そ
れをウォートマンニン無添加の活性値と比較した結果を
示す。この図5から明らかなように、細胞のエンドサイ
トーシスの低下は、2〜3nM以上のウォートマンニン
添加で生じることが確認された。 実施例6 ヒト培養細胞株HT1080を実施例4と同様に培養
し、その培養液にウォートマンニンを終濃度50nMの
割合で添加した。ウォートマンニンの添加から1時間
後、新鮮な培養液で細胞を3度洗浄し、洗浄から図6に
示した時間ののち培養液にHRPを1mg/mlの濃度
で添加し、その20分後に細胞に取り込まれたHRPの
酵素活性を測定した。
【0017】結果は、図6に示した通りである。この図
6は、図4と同様にHRP活性の測定値を規格化し、そ
れを細胞洗浄直後(時間0)の活性値と比較した結果を
示す。この図6から明らかなように、ウォートマンニン
の添加によって低下にたエンドサイトーシスは、ウォー
トマンニンの除去によってもゆっくりとしか回復せず、
18時間を要しても80%の水準にしか達しないことが
が確認された。
【0018】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、細胞の生存および増殖を損なうことなく、エンド
サイトーシスを選択的に低下もしくは停止することので
きる簡便な方法が提供される。これにより、個体生存の
ための医療技術や有用物質の生物生産を担う細胞利用に
新たな途が拓ける。
【図面の簡単な説明】
【図1】塩化リチウム添加後のHRP取り込み量の経時
的変化を示す。
【図2】塩化リチウムの添加によるHRP取り込み量の
量依存的変化を示す。
【図3】塩化リチウム添加後のHRP取り込み量回復の
経時的変化を示す。
【図4】ウォートマンニン添加後のHRP取り込み量の
経時的変化を示す。
【図5】ウォートマンニンの添加によるHRP取り込み
量の量依存的変化を示す。
【図6】ウォートマンニン添加後のHRP取り込み量回
復の経時的変化を示す。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真核細胞の培養培地に塩化リチウムを添
    加し、細胞の細胞外物質取り込み活動を低下もしくは停
    止させることを特徴とする細胞活動の制御方法。
  2. 【請求項2】 塩化リチウムの添加量が10〜100m
    Mである請求項1の細胞活動の制御方法。
  3. 【請求項3】 真核細胞の培養培地にウォートマンニン
    を添加し、細胞の細胞外物質の取り込み活動を低下もし
    くは停止させることを特徴とする細胞活動の制御方法。
  4. 【請求項4】 ウォートマンニンの添加量が2〜200
    nMである請求項3の細胞活動の制御方法。
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IT1307787B1 (it) * 1999-07-26 2001-11-19 Univ Firenze Processo per incrementare la motilita' degli spermatozoi e spermatozoia motilita' superiore cosi' ottenuti.
ES2290125T3 (es) * 2000-03-31 2008-02-16 The General Hospital Corporation Metodos para incrementar el crecimiento capilar mediante un polipeptido wnt.
EP1656455B1 (en) * 2003-08-13 2012-09-19 Sandoz Ag Process for the purification of recombinant polypeptides
US7476512B2 (en) 2004-02-27 2009-01-13 The General Hospital Corporation Methods of identifying dermal papilla cells

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