JP2980521B2 - 有機薄膜材料及びその製造方法 - Google Patents

有機薄膜材料及びその製造方法

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JP2980521B2 JP15752394A JP15752394A JP2980521B2 JP 2980521 B2 JP2980521 B2 JP 2980521B2 JP 15752394 A JP15752394 A JP 15752394A JP 15752394 A JP15752394 A JP 15752394A JP 2980521 B2 JP2980521 B2 JP 2980521B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、有機薄膜材料及びそ
の製造方法、特に、有機半導体、非線形光学材料、光導
電材料などの機能性有機薄膜やそれらを用いたデバイス
に利用される新規で有用な芳香族化合物の有機薄膜材料
及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、有機分子の持つ半導体性、非線形
光学特性、光導電性などの機能性を利用した新規な電子
又は光デバイスの開発が盛んに行われている。このよう
なデバイスに用いるためには、層構造、結晶性、分子配
向などの高次構造が制御された薄膜に形成することが必
須となっている。
【0003】このような高次構造の制御された有機薄膜
の製造方法としては種々の方法があるが、その中でも近
年は真空蒸着法を基本とする作製技術が注目されてい
る。特に、超高真空下で分子をゆっくりとした堆積速度
で蒸着することによって薄膜中の分子の配向を制御す
る、あるいは結晶化させることのできる有機分子線蒸着
法が優れており、盛んに研究が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したような有機薄
膜材料の製造方法、特に有機分子線蒸着法による薄膜の
製造方法では、用いられる分子が蒸着可能であるという
制限がある。材料的に安定な高分子では蒸着不可能なこ
とが多く、また蒸着が可能な場合でも高分子自体に分子
量分布があるため、高次構造が制御された薄膜を製造す
るのは困難であるという問題点があった(飯島正行ら
「真空」第32巻、第6号、P.531、1959
年)。一方、蒸着分子に低分子材料を用いた場合、高次
構造の制御性は高いが、製造された膜の構造が安定性に
欠けるという問題点があった。
【0005】さらに、蒸着可能な低分子材料を原料に用
いて、光照射などのエネルギー供給により原料を重合し
て安定な薄膜を製造する方法としては、化学気相堆積法
(CVD法)がある。しかし、CVD法は有機薄膜内の
分子の配向状態の制御性が劣り、得られる薄膜は分子配
向性や結晶性の無いアモルファス状態の薄膜となること
が多く、機能が充分に発現されていない場合がほとんど
であるという問題点もあった。
【0006】この発明は、このような問題点を解決する
ためになされたもので、構造制御性に優れているために
高機能を発現し、かつ重合体となっているため安定性に
優れた有機薄膜材料及びその製造方法を得ることを目的
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明の請求項第1項
に係る発明は、分子内に少なくとも1個のラジカル発生
基を有する芳香族化合物と、分子内に少なくとも1個の
不飽和結合を有する芳香族化合物とを10-6Torr以下
の真空下で基板に蒸着し、光照射によって光化学反応さ
せて得られたものである。
【0008】この発明の請求項第2項に係る発明は、請
求項第1項における少なくとも1個のラジカル発生基を
有する芳香族化合物を、末端又は両末端にチオール基を
有する次の構造式(1)で表される化合物としたもので
ある。
【0009】
【化4】
【0010】この発明の請求項第3項に係る発明は、請
求項第1項における少なくとも1個の不飽和結合を有す
る芳香族化合物を、末端又は両末端にエチニル基を有す
る次の構造式(2)で表される化合物としたものであ
る。
【0011】
【化5】
【0012】この発明の請求項第4項に係る発明は、1
つの分子内に少なくとも1個のラジカル発生基と少なく
とも1個の不飽和結合とを有する芳香族化合物を10-6
Torr以下の真空下で基板に蒸着し、光照射によって光
化学反応させて得られたものである。
【0013】この発明の請求項第5項に係る発明は、請
求項第4項における芳香族化合物を、次の構造式(3)
で表される化合物としたものである。
【0014】
【化6】
【0015】この発明の請求項第6項に係る発明は、請
求項第1項ないし第5項における芳香族化合物を基板へ
真空蒸着する際に、同時に光照射するものである。
【0016】この発明の請求項第7項に係る発明は、分
子内に少なくとも1個のラジカル発生基を有する芳香族
化合物と、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有す
る芳香族化合物とを10-6Torr以下の真空下で基板に
蒸着し、光照射によって光化学反応させて製造するもの
である。
【0017】この発明の請求項第8項に係る発明は、1
つの分子内に少なくとも1個のラジカル発生基と少なく
とも1個の不飽和結合とを有する芳香族化合物を10-6
Torr以下の真空下で基板に蒸着し、光照射によって光
化学反応させて製造するものである。
【0018】この発明の請求項第9項に係る発明は、請
求項第7項又は第8項における芳香族化合物を基板へ真
空蒸着する際に、同時に光照射するものである。
【0019】
【作用】この発明の請求項第1項においては、光励起に
よってラジカルを発生する基を少なくとも1個有する芳
香族化合物と、不飽和結合を少なくとも1個有する芳香
族化合物とを10-6Torr以下の真空下で基板に蒸着す
ることにより、分子配向や結晶性などの構造が制御され
た薄膜が得られる。この薄膜に光照射を行い光化学反応
させることによって重合させ、高分子とすることにより
安定化し、高機能で安定な有機薄膜材料を得る。
【0020】この発明の請求項第2項においては、末端
又は両末端にチオール基を有する上記構造式(1)で表
される芳香族化合物と、分子内に少なくとも1個の不飽
和結合を有する芳香族化合物とを用いることにより、光
照射を行ったときにチオール基と不飽和結合の間での重
付加反応が誘起され重合が進行する。このようにして高
機能で安定な有機薄膜材料を得る。
【0021】この発明の請求項第3項においては、分子
内に少なくとも1個のラジカル発生基を有する材料と、
末端又は両末端にエチニル基を有する上記構造式(2)
で表される芳香族化合物とを用いることにより、光照射
を行ったときにラジカル発生基と不飽和結合の間での重
付加反応が誘起され重合が進行する。このようにして高
機能で安定な有機薄膜材料を得る。
【0022】この発明の請求項第4項においては、1つ
の分子内に少なくとも1個のラジカル発生基と少なくと
も1個の不飽和結合とを有する芳香族化合物を10-6
orr以下の真空下で基板に蒸着することにより、分子配
向や結晶性などの構造が制御された薄膜が得られ、光照
射によって光化学反応させて重合することにより高機能
で安定な有機薄膜材料を得る。
【0023】この発明の請求項第5項においては、上記
構造式(3)で表される芳香族化合物を用いることによ
り、光照射を行ったときにラジカル発生基と不飽和結合
の間での重付加反応が誘起され重合が進行する。このよ
うにして高機能で安定な有機薄膜材料を得る。
【0024】この発明の請求項第6項においては、請求
項第1項ないし第5項における芳香族化合物を基板へ真
空蒸着する際に、同時に光照射することによって、薄膜
の組成や重合度が均一で高機能で安定な有機薄膜材料を
得たり、また、照射光が透過しないような厚さのある薄
膜も得られる。
【0025】この発明の請求項第7項においては、分子
内に少なくとも1個のラジカル発生基を有する芳香族化
合物と、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する
芳香族化合物とを10-6Torr以下の真空下で基板に蒸
着することにより、分子配向や結晶性などの構造が制御
され、光照射によって光化学反応を誘起して蒸着膜を重
合させることにより、高機能で安定な有機薄膜材料を製
造する。
【0026】この発明の請求項第8項においては、1つ
の分子内に少なくとも1個のラジカル発生基と少なくと
も1個の不飽和結合を有する芳香族化合物を10-6Tor
r以下の真空下で基板に蒸着することによって、分子配
向や結晶性などの構造が制御され、光照射によって光化
学反応を誘起して蒸着膜を重合させることにより、高機
能で安定な有機薄膜材料を製造する。
【0027】この発明の請求項第9項においては、請求
項第7項又は第8項における芳香族化合物を基板へ真空
蒸着する際に、同時に光照射することによって、薄膜の
組成や重合度が均一で高機能で安定な有機薄膜材料を得
たり、また、照射光が透過しないような厚さのある薄膜
も製造する。
【0028】
【実施例】この発明では、分子内に少なくとも1個のラ
ジカル発生基を有する芳香族化合物と、分子内に少なく
とも1個の不飽和結合を有する芳香族化合物とを用い
る。これらの化合物を10-6Torr以下の真空度を有す
る真空チャンバー中の加熱源に装填する。次に、上記両
芳香族化合物を独立に加熱、蒸発させて薄膜を作製する
が、加熱温度、シャッター動作、堆積速度制御などによ
り任意の混合比の混合膜や、任意の膜厚を有する積層膜
を作製することができる。また、これらの条件及び基板
の種類、処理温度などの制御により、薄膜中の分子配向
や結晶性などの高次構造を制御することができる。この
ようにして作製した薄膜に光照射を行うことによって、
ラジカル発生基がラジカル化し、不飽和結合部分に重付
加反応することにより重合して高分子化する。これによ
り、薄膜の構造が安定化し、長期に亙って劣化の少ない
薄膜が得られる。
【0029】このとき、ラジカル発生基は芳香族化合物
の分子内に少なくとも1個あればよいが、1個の場合に
は他の一つの分子と反応後、さらに他の分子との反応が
進行しなくなるので2量体で反応が終了する。より高分
子量化を進めるためには、2個以上のラジカル発生基を
有することが望ましい。また、作製した薄膜の高次構造
を維持しながら光化学反応を誘起して重合するために
は、反応する相手分子である不飽和結合を有する芳香族
化合物の不飽和結合部分と空間的に近い状態にあること
が望ましい。具体的には、ラジカル発生基は芳香族化合
物の末端にあることが望ましい。
【0030】上述と同様に、ラジカル発生基と反応する
不飽和結合を分子内に少なくとも1個有する芳香族化合
物についても、薄膜全体で高分子量化させるためには2
個以上の不飽和結合を有していることが望ましい。作製
した薄膜の高次構造を維持しながら光化学反応を誘起し
て重合するためには、反応する相手分子であるラジカル
発生基を有する分子のラジカル発生基部分と空間的に近
い状態にあることが必要であり、具体的には、不飽和結
合は芳香族化合物の末端にあることが望ましい。
【0031】また、分子内に少なくとも1個のラジカル
発生基を有する芳香族化合物と分子内に少なくとも1個
の不飽和結合を有する芳香族化合物とを基板に蒸着して
薄膜を作製する場合、これらの芳香族化合物の組成比は
モル比で0.5から2の範囲に設定するのが好ましい。
この範囲外であると光化学反応が効率よく進まず、安定
な薄膜が得られないためである。
【0032】分子内に少なくとも1個のラジカル発生基
を有する芳香族化合物におけるラジカル発生基として
は、特に制限はないが、水酸基(−OH)、アミノ基
(−NH)、一置換アミノ基(−NHR)、二置換ア
ミノ基(−NR)、カルボキシル基(−COO
H)、カルボニル基(−CO−)、酸無水物基(−CO
−O−CO−)、酸塩化物基(−COCl,−SO
l)、イソシアネート基(−NCO)、チオール基(−
SH)、などが挙げられる。ここで、−R、−R、−
はアルキル基、アリール基、メトキシ基、エトキシ
基、ブトキシ基、ハロゲン基などの置換基である。
【0033】分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有
する芳香族化合物における不飽和結合としては、特に制
限はないが、例えばエチニル基(−C≡CH)、一置換
エチニル基(−C≡CR)、ビニル基(−CH=C
)、一置換ビニル基(−CR=CH、−CH≡C
HR)、二置換ビニル基(−CR=CHR、−CH
=CR)、三置換ビニル基(−CR=CR
)などが挙げられる。ここで、−R、−R、−R
はアルキル基、アリール基、メトキシ基、エトキシ基、
ブトキシ基、ハロゲン基などの置換基である。
【0034】また、1つの分子内に少なくとも1個のラ
ジカル発生基と少なくとも1個の不飽和結合とを有する
芳香族化合物も用いられる。この芳香族化合物における
ラジカル発生基と不飽和結合としては、特に制限はない
が、上述したような官能基が挙げられる。このような芳
香族化合物を10-6Torr以下の真空度を有する真空チ
ャンバー中の加熱源に装填する。次いでこの芳香族化合
物を加熱、蒸発させ薄膜を作製する。この時、加熱温
度、シャッター動作、堆積速度制御などを調節すること
により任意の膜厚を有する薄膜を作製することができ
る。
【0035】また、これらの条件及び基板の種類、処理
温度などを制御することにより、薄膜中の分子配向や結
晶性などの高次構造を制御することができる。このよう
にして作製した薄膜に光照射を行うことによって、ラジ
カル発生基がラジカル化し、不飽和結合部分に重付加反
応することにより重合して高分子化する。これにより、
薄膜の構造が安定化し、長期に亙って劣化の少ない薄膜
が得られる。
【0036】また、この発明においては、上述した薄膜
を作製した後、光を照射する場合が通常であるが、薄膜
を作製しながら同時に光照射を行うこともできる。この
とき、薄膜作製後の光照射では光が充分に薄膜内部まで
届かない場合でも、最初から光照射を行うことによって
充分な厚さの膜を形成することができる。
【0037】この発明で用いられる光照射のための光源
としては、特に制限はなく、水銀ランプ、ハロゲンラン
プなどの各種ランプ、YAGレーザ、エキシマレーザ、
銅蒸気レーザなど各種のレーザ、さらに、X線を発生さ
せるシンクロトロン放射光など種々の光源が用いられ
る。ただし、波長に関しては材料の光化学反応を誘起さ
せることが必要であるので、有機材料に適した波長の光
源を選択しなければならない。有機材料の場合、そのよ
うな吸収領域は紫外域にあるので、エキシマレーザは適
した光源の一つである。以下、この発明を実施例1〜1
0及び比較例1〜10に基づいて説明するが、この発明
はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0038】実施例1.到達真空度10-9Torrの真空
チャンバーが設けられ、2本のクヌードセンセルを備え
た真空蒸着装置を用いた。2本のクヌードセンセルに
は、図1に示す構造式のペリレンチオール化合物とペリ
レンエチレン化合物とをそれぞれ装填し、加熱蒸発させ
て薄膜を作製した。このとき、各セルの温度を制御する
ことにより、モル比1:1の混合薄膜を作製した。膜厚
は1000〜2000Åであった。薄膜を作製した後、
薄膜をチャンバーから取り出し、光照射用のチャンバー
にセットして10-3Torr以下までの真空に減圧した
後、エキシマレーザを照射した。ガスにはKrF系のガ
スを用いて、発振波長248nmとした。照射強度は4
mJ/cmに調整し、250ショット(全照射量1J
/cm)照射した。光照射前と光照射後のFTIRス
ペクトルを比較検討することにより、光照射によってチ
オール基の強度が減少、エチレン基の強度が減少してい
ることがわかった。これから、ペリレンチオール化合物
とペリレンエチレン化合物の間で重合反応が進んでいる
ことがわかった。
【0039】比較例1.実施例1と同様にペリレンチオ
ール化合物とペリレンエチレン化合物の混合薄膜を作製
し、光照射を行わない試料を比較例1とした。実施例1
と比較例1の経時安定性を可視光の透過量で評価した。
試料作製直後の吸収スペクトルは図2中の実線で示して
おり、実施例1、比較例1ともに同じスペクトルを示
す。試料を作製して1カ月経過後に可視吸収スペクトル
を測定すると、実施例1では20日後でも変化がないの
に対して、比較例1は図2中の破線で示すように全波長
範囲にわたって吸収が増えており、特に短波長側で大き
く変化があった。比較例1の試料を偏光顕微鏡で観察す
ることにより、試料作製直後にはなかった凝集構造が現
れており、比較例1では時間の経過とともに分子の配向
などの構造が乱れて凝集が起こり、不安定であることが
わかった。
【0040】実施例2〜6、比較例2〜6.表1に示す
2種の材料を組み合わせて、実施例1と同様の方法で混
合薄膜を作製した。それぞれの試料で実施例1と同様の
光照射をおこなったものを実施例2〜6とし、光照射を
行わないものを比較例2〜6とした。
【0041】
【表1】
【0042】これらの実施例及び比較例に対応する試料
の作製直後と1ケ月経過後の吸収スペクトルを比較し
た。その結果、実施例1と比較例1との比較と同様に、
実施例2〜6ではスペクトルに変化はなく安定であるの
に対して、比較例2〜6では分子の凝集化が起こり、光
の散乱によって吸収が増大していたことがわかった。
【0043】実施例7.原料の芳香族化合物としてチオ
フェン環が6個直鎖状に連結したα−セクシチェニルを
骨格としたセクシチェニレンジチオールとセクシチェニ
レンジエチニルを用いて、実施例1と同様にして薄膜を
作製した。このとき、セル温度とシャッターの動作を制
御することにより、一層ごとに両者の化合物が繰り返さ
れる構造に成膜した。また、基板への堆積速度は1Å/
min(分)程度になるようにして成膜を行ったため、
それぞれの分子は垂直に配向するように配列した。
【0044】薄膜を作製した後、実施例1と同様にして
エキシマレーザを照射することにより、薄膜を高分子化
した。重合反応の進行は赤外スペクトルの測定によって
確認した。この試料に対して、入射光が45゜の角度で
入射するときの偏光吸収スペクトルを測定した。測定の
結果、図3に示すように、P偏光で大きい吸収ピークが
現れ(エネルギー3.5eV近傍)、チオフェン環から
なる分子鎖が基板に対して垂直に配向していることがわ
かった。この試料の分子配向の状態を摸式的に示すと図
4(a)のようになる。図4(a)は、実施例7におけ
る試料の分子配向の状態を模式的に示している。図中、
1はチオール基(−SH)、2はセクシチェニレン骨
格、3はエチニル基と結合したチオール基、4はチオー
ル基と結合したエチニル基、5はエチニル基(−C≡C
H)、6は基板をそれぞれ示している。
【0045】比較例7.実施例7と同様にして、セクシ
チェニレンジチオールとセクシチェニレンジエチニルを
用いて薄膜を作製した。実施例7と全く同じ条件で薄膜
を作製し、光照射を行わない試料を比較例7−1とし
た。この場合、得られる吸収スペクトルや分子配向は実
施例7とほぼ同じであった。薄膜の分子配向の状態を図
4(b)に示す。
【0046】また、別の試料として基板への堆積速度は
50Å/minになるようにして成膜を行った薄膜を作
製した。堆積速度が速いため、薄膜中のチオフェン環は
ランダムな方向を向き、また積層構造の観点においても
その層構造が乱れており、全体としてアモルファス膜と
なった。この試料を比較例7−2とした。この場合の分
子配向状態の模式図を図4(c)に示す。吸収スペクト
ルは図3とは異なり、偏光依存性を示さず、ブロードな
形状となった。
【0047】実施例7と比較例7−1、及び比較例7−
2に対してTHGメーカフリンジ法による非線形光学定
数X(3)の測定を行った。実施例7及び比較例7−1で
は、いずれも垂直方向のX(3)が存在し、X(3)の垂直成
分の値は5×10-11esuであった。一方、比較例7
−2では、アモルファス状態であるため、X(3)の垂直
成分は存在せず、面内成分だけが存在した。その値は2
×10-12esuと実施例7より小さく、高次構造制御
が薄膜の高機能化に有利であることがわかった。
【0048】また、これらの試料の2カ月経過後の特性
を再測定したところ、実施例7では経時変化はなかった
が、比較例7−1は特性が劣化し、X(3)値は2×10
-12esuと比較例7−2と同じ程度であった。このよ
うに堆積速度を制御した薄膜作製を行うことにより、高
機能でしかも安定な有機薄膜材料を得ることができる。
【0049】実施例8.芳香族分子団として4個のチオ
フェン環からなるチオフェン4量体を有し、両末端にア
ミノ基とエチレン基が結合した材料を原料として、実施
例1と同様に真空蒸着膜を作製した。堆積速度は1Å/
minに制御して行った。薄膜作製後、実施例1と同様
にしてエキシマレーザ照射による光化学反応を誘起して
重合させた。蒸着後の吸収スペクトルからは、実施例7
と同様に分子が垂直に配向していることがわかった。
【0050】比較例8.実施例8と同様にして薄膜を作
製し、光照射を行わない試料を比較例8とした。実施例
7と比較例8との試料の電気伝導度を比較した。電気伝
導度の測定は、作製した試料薄膜に平行配置された金電
極パターンを蒸着して形成して行った。電気伝導度は、
実施例8では10-2S/cmであったが、比較例8では
10-5S/cmであり、重合化によって電気伝導度が向
上していることがわかった。また、試料を作製して2カ
月経過後に行った測定では、実施例8ではほとんど変化
がなく安定性にも優れた材料が得られた。これに対し
て、比較例8の試料では電気伝導度が2桁低くなってお
り、安定性が劣ることがわかった。
【0051】実施例9.芳香族分子団としてオリゴチェ
ニレンビニレンを有し、両末端にチオール基とエチニル
基が結合した材料を原料として、実施例1と同様に真空
蒸着膜を作製した。堆積速度は1Å/minに制御して
行った。薄膜作製後、実施例1と同様にしてエキシマレ
ーザ照射による光化学反応を誘起して重合させた。蒸着
後の吸収スペクトルから、実施例7と同様に分子が垂直
に配向していることがわかった。
【0052】比較例9.実施例9と同様の材料及び条件
で薄膜を作製し、光照射を行わない試料を比較例9とし
た。実施例9と比較例9の試料の電気伝導度を比較し
た。電気伝導度の測定は、作製した試料薄膜に平行配置
された電極を蒸着して行った。ここでは、金電極を用い
た。電気伝導度は、実施例9では10-0S/cmであっ
たが、比較例9では10-3S/cmであり、重合化によ
って電気伝導度が向上していることがわかった。また、
試料を作製して2カ月経過後の測定では、実施例9では
ほとんど変化がなく、安定性にも優れた材料が得られ
た。これに対して、比較例9の試料では電気伝導度が2
桁低くなっており、安定性が劣ることがわかった。
【0053】実施例10.ペリレンチオール及びペリレ
ンエチニルを実施例1と同様に基板に真空蒸着したが、
蒸着を行っている間、同時に光照射を行って重合反応を
起こさせながら膜厚5μmの厚膜の有機薄膜材料を得
た。
【0054】比較例10.実施例10と同様にして光照
射薄膜を作製した。膜厚は5μmに統一して膜形成を行
った。蒸着終了後、光照射を行い重合させた。実施例1
0の試料と比較例10の試料の赤外スペクトルを比較す
ると、実施例10の試料ではチオール基とエチニル基の
反応が進行しているのに対して、比較例10の試料では
未反応の官能基が多く残っていることがわかった。この
実施例10及び比較例10の試料を導波路として用い
た。導波路特性はプリズムカップリング法にて評価し
た。実施例10及び比較例10ともに作製直後の導波特
性はほぼ同じであった。試料作製から2カ月経過後の特
性を再測定したところ、実施例10では試料作製直後と
ほぼ同じ特性が得られたが、比較例10では分子の凝集
が起こって散乱が増加しており、導波特性が低下してい
た。
【0055】
【発明の効果】以上説明したとおり、この発明の請求項
第1項は、分子内に少なくとも1個のラジカル発生基を
有する芳香族化合物と、分子内に少なくとも1個の不飽
和結合を有する芳香族化合物とを10-6Torr以下の真
空下で基板に蒸着し、光照射によって光化学反応させて
得られたので、高次構造が制御されているため高機能
で、しかも安定な有機薄膜材料を得ることができるとい
う効果を奏する。
【0056】この発明の請求項第2項は、請求項第1項
における少なくとも1個のラジカル発生基を有する芳香
族化合物を、末端又は両末端にチオール基を有する上述
した構造式(1)で表される化合物としたので、チオー
ル基と不飽和結合との間で重付加反応が誘発されて重合
が進行し、高機能で安定な有機薄膜材料を得ることがで
きるという効果を奏する。
【0057】この発明の請求項第3項は、請求項第1項
における少なくとも1個の不飽和結合を有する芳香族化
合物を、末端又は両末端にエチニル基を有する上述した
構造式(2)で表される化合物としたので、ラジカル発
生基と不飽和結合との間で重付加反応が誘発されて重合
が進行し、高機能で安定な有機薄膜材料を得ることがで
きるという効果を奏する。
【0058】この発明の請求項第4項は、1つの分子内
に少なくとも1個のラジカル発生基と少なくとも1個の
不飽和結合とを有する芳香族化合物を、10-6Torr以
下の真空下で基板に蒸着し、光照射によって光化学反応
させて得られたものであるので、分子配向や結晶性など
の構造が制御された薄膜が得られ、高機能で安定な有機
薄膜材料を得ることができるという効果を奏する。
【0059】この発明の請求項第5項は、請求項第4項
における芳香族化合物を、上述した構造式(3)で表さ
れる化合物としたので、ラジカル発生基と不飽和結合の
間で重付加反応が誘発されて重合が進行し、高機能で安
定な有機薄膜材料を得ることができるという効果を奏す
る。
【0060】この発明の請求項第6項は、請求項第1項
ないし第5項における芳香族化合物を基板に真空蒸着す
る際に同時に光照射するので、薄膜の組成や重合度が均
一で高機能かつ安定な有機薄膜材料が得られると共に、
照射光が透過しないような厚さのある薄膜も製造可能と
なる有機薄膜材料が得られるという効果を奏する。
【0061】この発明の請求項第7項は、分子内に少な
くとも1個のラジカル発生基を有する芳香族化合物と、
分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する芳香族化
合物とを10-6Torr以下の真空下で基板に蒸着し、光
照射によって光化学反応させて製造するので、分子配向
や結晶性などの構造が制御された薄膜が得られ、高機能
で安定な有機薄膜材料を製造することができるという効
果を奏する。
【0062】この発明の請求項第8項は、1つの分子内
に少なくとも1個のラジカル発生基と少なくとも1個の
不飽和結合とを有する芳香族化合物を10-6Torr以下
の真空下で基板に蒸着し、光照射によって光化学反応さ
せて製造するので、分子配向や結晶性などの構造が制御
された薄膜が得られ、高機能で安定な有機薄膜材料を製
造することができるという効果を奏する。
【0063】この発明の請求項第9項は、請求項第7項
又は第8項における芳香族化合物を基板に真空蒸着する
際に同時に光照射するので、薄膜の組成や重合度が均一
で高機能かつ安定な有機薄膜材料を製造できると共に、
照射光が透過しないような厚さのある薄膜も製造可能と
なる有機薄膜材料が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例1において使用したペリレ
ンチオール化合物及びペリレンエチレン化合物を示す構
造式である。
【図2】 この発明の実施例1及び比較例1における試
料の吸収スペクトルを示す線図である。
【図3】 この発明の実施例7及び比較例7における試
料の吸収スペクトルを示す線図である。
【図4】 この発明の実施例及び比較例における試料の
分子配向の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 チオール基、2 セクシチェニレン骨格、3 エチ
ニル基と結合したチオール基、4 チオール基と結合し
たエチニル基、5 エチニル基、6 基板。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浜野 浩司 尼崎市塚口本町八丁目1番1号 三菱電 機株式会社 材料デバイス研究所内 (72)発明者 久保田 繁 尼崎市塚口本町八丁目1番1号 三菱電 機株式会社 材料デバイス研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08J 5/18 C23C 14/12

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子内に少なくとも1個のラジカル発生
    基を有する芳香族化合物と、分子内に少なくとも1個の
    不飽和結合を有する芳香族化合物とを10-6Torr以下
    の真空下で基板に蒸着し、光照射によって光化学反応さ
    せて得られたものであることを特徴とする有機薄膜材
    料。
  2. 【請求項2】 少なくとも1個のラジカル発生基を有す
    る芳香族化合物は、末端又は両末端にチオール基を有す
    る次の構造式(1)で表される化合物であることを特徴
    とする請求項第1項記載の有機薄膜材料。 【化1】
  3. 【請求項3】 少なくとも1個の不飽和結合を有する芳
    香族化合物は、末端又は両末端にエチニル基を有する次
    の構造式(2)で表される化合物であることを特徴とす
    る有機薄膜材料。 【化2】
  4. 【請求項4】 1つの分子内に少なくとも1個のラジカ
    ル発生基と少なくとも1個の不飽和結合とを有する芳香
    族化合物を10-6Torr以下の真空下で基板に蒸着し、
    光照射によって光化学反応させて得られたものであるこ
    とを特徴とする有機薄膜材料。
  5. 【請求項5】 芳香族化合物は、次の構造式(3)で表
    される化合物であることを特徴とする請求項第4項記載
    の有機薄膜材料。 【化3】
  6. 【請求項6】 芳香族化合物を基板へ真空蒸着する際
    に、同時に光照射することを特徴とする請求項第1項な
    いし第5項のいずれかに記載の有機薄膜材料。
  7. 【請求項7】 分子内に少なくとも1個のラジカル発生
    基を有する芳香族化合物と、分子内に少なくとも1個の
    不飽和結合を有する芳香族化合物とを10-6Torr以下
    の真空下で基板に蒸着し、光照射によって光化学反応さ
    せて製造することを特徴とする有機薄膜材料の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 1つの分子内に少なくとも1個のラジカ
    ル発生基と少なくとも1個の不飽和結合とを有する芳香
    族化合物を、10-6Torr以下の真空下で基板に蒸着
    し、光照射によって光化学反応させて製造することを特
    徴とする有機薄膜材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 芳香族化合物を基板へ真空蒸着する際に
    同時に光照射することを特徴とする請求項第7項又は第
    8項記載の有機薄膜材料の製造方法。
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