JP2980394B2 - 原子炉用制御棒 - Google Patents

原子炉用制御棒

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JP2980394B2
JP2980394B2 JP3067095A JP6709591A JP2980394B2 JP 2980394 B2 JP2980394 B2 JP 2980394B2 JP 3067095 A JP3067095 A JP 3067095A JP 6709591 A JP6709591 A JP 6709591A JP 2980394 B2 JP2980394 B2 JP 2980394B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】〔発明の目的〕
【0002】
【産業上の利用分野】本発明は、沸騰水型原子炉等に適
用される原子炉用制御棒に係り、特に中性子吸収要素を
ハフニウム金属またはハフニウム合金によって構成した
原子炉用制御棒に関する。
【0003】
【従来の技術】一般に原子炉用制御棒は、先端構造材と
末端構造材とを結合するタイロッドと、このタイロッド
から放射状に突出し、その外殻部が深いU字形断面のシ
ースによって構成されたブレードと、前記シースの内部
に設けられ、前記タイロッドの軸心と平行に配列された
複数の中性子吸収要素とを有する構成とされている。
【0004】そして従来では、中性子吸収要素が、ボロ
ンカーバイド(BC)等のボロン化合物粉末を中性子
吸収材としてステンレス鋼等のチューブ内に充填した構
成とされる場合が多かった。なお、ボロンには、B−1
0とB−11との2種類が存在するが、中性子吸収材と
して適用されるものは、B−10である。このB−10
は、中性子と反応して、ヘリウム(He−4)およびリ
チウム(Li−7)に変化し、その後は中性子吸収能力
を失う。
【0005】このことは、ボロン化合物を中性子吸収材
に適用した場合、制御棒の中性子吸収能力が比較的早く
減衰することになり、核的寿命が短いということに繋が
っていた。
【0006】一方、最近では長寿命型の制御棒が要求さ
れるようになっており、中性子吸収要素を、ハフニウム
金属またはハフニウム合金によって作成することが検討
されている。なお、ハフニウム合金としては、ハフニウ
ム(Hf)をジルコニウム(Zr)またはチタン(T
i)等で希釈した合金が適用される。
【0007】ハフニウムは多くの核種を含み、その核種
の大部分は、一つの原子核で何度も中性子を吸収でき
る。したがって、ハフニウム製の中性子吸収要素による
と、中性子吸収能力が減衰しにくい。しかも、ハフニウ
ムは炉水中に直接浸しても、化学的に極めて安定であ
り、被覆材を必要としない。
【0008】ただし、ハフニウムは比重が13.1g/cm
3 と大きい一方で、ボロンカーバイドと同一体積のもと
では、中性子吸収能力がボロンカーバイドのそれより劣
り、かつ高コストである。
【0009】そこで発明者等においては、ハフニウム金
属または合金製の一対の湾曲した板体を対向接合させて
チューブ状に構成し、これを中性子吸収要素として金属
製シース内に収容した、いわゆるトラップ型ハフニウム
制御棒を提案した。この中性子吸収要素では、内部に炉
水を導入することにより、炉水の中性子減速材としての
機能と併せて中性子吸収能力を高め、これにより前記欠
点を克服することが可能となった。なお、他にその改良
案も提案され、例えば特開平2−10299号等におい
て関連技術が開示されている。
【0010】図7および図8は、このようなトラップ型
ハフニウム制御棒の概略構成を示したものである。すな
わち、断面十字形のタイロッド1の各突出部1aに、ブ
レード2Aの外殻部を構成する深いU字断面形状のシー
ス2が固着され、これにより制御棒が全体として横断面
十字形に形成されている。そして、タイロッド1とシー
ス2とによって囲まれる空間に、中性子吸収要素とし
て、ハフニウム金属または合金製の複数本の長尺な平管
3が並列に配置されている。
【0011】シース2の制御棒挿入先端側2aは、ハン
ドル4を有する先端構造材5に固着され、挿入末端側2
bは、スピードリミッタ6と一体化された末端構造材7
に固着されている。
【0012】そして、シース2の内部には、中性子減速
材兼冷却材である炉水が多数の通水孔8を介して流通
し、平管3の内外で通水が行われるようになっている。
【0013】ところで、平管3内での炉水の流れを観察
すると、殆ど軸方向の流れ(縦方向流れ)のみであり、
平管3同士の間での流入流出(横方向流れ)は起らな
い。このような流れの状態において、タイロッド1から
最も離れたブレード2A外縁側の平管3には、高い中性
子束が照射されるので、この部位の平管3内を流れる炉
水は最も高温となり、沸騰を起す場合も考えられる。こ
れに対し、タイロッド1に近い側の他の平管3内の炉水
の温度は、ブレード2A外縁側の平管3内の炉水の温度
よりも低く、冷却に十分な余裕が残っている。
【0014】しかし本来、制御棒の発熱率の高い部分で
は材料の健全性および中性子吸収特性の観点から高能率
の冷却が望まれる一方、発熱率の低い部分では高能率の
冷却を必要としないものであり、前記のトラップ型ハフ
ニウム制御棒では、これと逆の傾向にあって冷却特性
上、好ましいものではない。
【0015】また平管3は、シース2とともに先端構造
材5と末端構造材7に係合保持される構成とされ、長尺
物(例えば1m長)となる。この平管3であるハフニウ
ム材は、中性子吸収機能の点から、制御棒挿入先端側
(図7の上側)で肉厚を大とする必要がある一方、挿入
末端側(図7の下側)では肉厚を小として、重量制限を
越えないようにし、材料コストを抑制することが望まれ
る。ところが、このような肉厚の差を長尺物に与えるた
めには、板厚方向の削り込み等、面倒な加工工程が必要
となり、製造コストが高くなる等の問題が生じる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】従来のハフニウム制御
棒では、発熱率の高い部分で冷却性が低く、逆に制御棒
の発熱率の低い部分で冷却性が高い等、冷却特性に問題
が残っている。
【0017】また、長尺物に肉厚を変化させる等の面倒
な加工工程が必要で、製造コストが高くなる等の問題も
ある。
【0018】ところで、軽水炉等の原子炉容器内部は放
射線場となっており、放射線分解によって炉水中に活性
物質、例えば水素、酸素、H等が発生する。原子
炉容器内で炉水が滞留する隙間等があると、このような
活性物質によって隙間周囲の金属部材が腐食する現象が
見られ、これが「隙間腐食」または「クレビス腐食」と
称される。また、異種金属が同一液内で接近配置されて
いる場合、異種金属間の電位差による腐食、いわゆるボ
ルタ効果による腐食が生じる。従来では、このような電
気化学的な腐食について特に着目されず、中性子吸収材
としてハフニウムを適用し、シースとしてステンレス鋼
等を適用した制御棒の内部において、原子炉の中で非常
に長期間使用すると上記の電気化学的な腐食が発生し、
機能上および耐用寿命等に影響を及ぼす可能性があっ
た。本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、
中性子吸収材としてハフニウムを適用するものにおい
て、冷却特性の向上が図れるとともに、材料および製造
コストの低減が図れ、さらに電気化学的な腐食の抑制を
図ることができる原子炉用制御棒を提供することを目的
とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の目的を
達成するために、先端構造材と末端構造材とを結合する
タイロッドと、このタイロッドから放射状に突出し、そ
の外殻部が深いU字形断面のシースによって構成された
ブレードと、前記シースの内部に設けられ、前記タイロ
ッドの軸心と平行に配列された中性子吸収要素とを有
し、前記中性子吸収要素は、ハフニウム金属またはハフ
ニウム合金製で内部に炉水流動空間を有するものとされ
ている原子炉用制御棒において、前記中性子吸収要素を
板枠状とし、この板枠状中性子吸収要素は、前記シース
の両側壁内面に沿って互いに対向配置されるとともに前
記タイロッドの軸心と平行な方向で間隔的に配置された
ハフニウム金属またはハフニウム合金製の平板状の中性
子吸収板と、この中性子吸収板と略同一材料製で各中性
子吸収板の対向するもの同士を一定間隔に保持するよう
その対向面の取付け孔に炉水流動空間を形成しない状態
で挿入して取付けられた中性子吸収板連結用の棒状のス
ペーサとによって構成し、かつ前記シースと略同一材料
製でそのシースに両端部が固着され、前記中性子吸収板
の孔に炉水流動空間を形成する状態で挿通した棒状の支
持材によって前記シース内にそれぞれ支持させてなるこ
とを特徴とする。
【0020】
【作用】本発明の構成によると、板枠状の中性子吸収要
素を構成する中性子吸収板の対向面間隙および軸方向間
隙で、中性子減速材兼冷却材である炉水の縦方向流れお
よび横方向流れが自由に行われる。したがって、炉水に
よる中性子減速機能が、より効果的に発揮され、従来の
平管構造のものに比して中性子吸収要素の内面側におけ
る中性子吸収が活発に行われ、反応度効果の向上が図れ
るとともに、中性子吸収によって発熱する中性子吸収板
を、十分に冷却できるようになる。この結果、中性子吸
収板の肉厚を特に大きくする必要がなくなり、高価で比
重が大きいハフニウム材料の使用量が節減でき、材料コ
ストの低減が可能となる。
【0021】また、スペーサの配置によって炉水の流れ
が適度に攪拌される。したがって、冷却水温度の均一化
が図られ、高発熱部の冷却特性が一層向上するので、冷
却水中でのボイド発生が抑制される。この炉水は中性子
減速材としても機能するため、ボイド発生の抑制は、制
御棒の反応度効果の低減防止に繋がる。中性子吸収板の
冷却が効果的に行われる結果、中性子吸収板の健全性が
向上する。
【0022】また、スペーサは中性子吸収板の外側面お
よび外側縁から突出しない構成であるから、中性子吸収
板のシース内での設置幅が制限されたり、中性子吸収板
相互間隔が狭められることがない。もし、スペーサが中
性子吸収板の外側面および外側縁から突出する構成であ
ると、中性子吸収板相互間、あるいは中性子吸収板とタ
イロッドやシースとの間に不要な間隙が生じることにな
り、反応度価値の低減を招くが、本発明ではそのような
ことがない。
【0023】なお、原子炉用制御棒の先端部とブレード
の外側部とにおいては、中性子照射量が多くなるととも
に、原子炉全挿入時は挿入先端から1/3程度までが高
い反応度価値を必要とする。この場合、本発明の原子炉
用制御棒では、中性子吸収板が軸方向で複数に分割され
ているので、中性子吸収板毎に厚さを異ならせたり間隔
を変えることにより、中性子照射量や、必要な反応度価
値の分布に対応させることが容易に行える。したがっ
て、従来のように長尺な部材の一部を削り込む等の面倒
な加工工程が不必要であり、かつ削り込み加工による材
料のロスも生じないため、製造コストの低減が図れると
ともに、材料の無駄を省くことができる。
【0024】また、本発明に係る原子炉用制御棒では、
中性子吸収要素としての中性子吸収板と、その対向間隙
を保持するためのスペーサとが、ハフニウム系の略同一
材料によって構成されるので、電気化学的な腐食が生じ
にくい。
【0025】さらに支持材は棒状であり、例えば中性子
吸収板にあけた孔等を貫通して、シースに溶接等によっ
て固着される。この支持材と中性子吸収板との材質が異
なる場合、電気化学的な隙間腐食の発生が考えられる
が、中性子吸収板にあけられる孔等は熱膨脹率の差を考
慮して、支持材の外形より十分大きく設定される。した
がって、冷却水の滞留現象は容易に回避でき、隙間腐食
(クレビス腐食)の虞れは殆ど生じない。
【0026】さらにまた、支持材とシースとは略同一材
料で、例えばステンレス鋼等の適用となるが、これらは
相互に溶接することが可能であるから、両者間での電気
化学的な腐食の虞れも生じない。
【0027】
【実施例】以下、本発明に係る原子炉用制御棒の実施例
を図1〜図6を参照して説明する。
【0028】なお、実施例の構成中、中性子吸収要素以
外の構成部分については従来のものと略同様であるか
ら、図7の一部も実施例として参照する。
【0029】図1〜図3は一実施例を示している。図1
は主要構成を示す横断面図、図2は中性子吸収要素を示
す斜視図、図3は図1のA−A線断面図である。
【0030】本実施例では、先端構造材4と末端構造材
7とを結合するタイロッド1と、このタイロッド1から
放射状に突出し、その外殻部が深いU字形断面のシース
2によって構成されたブレード2Aとを有する(図7参
照)。シース2はステンレス鋼等で作られ、その構成壁
に多数の通水孔8が形成されている。
【0031】そして図1に示すように、シース2の内部
には、タイロッド1の軸心と平行な配列で、複数の中性
子吸収要素11が設けられている。中性子吸収要素11
は、図1〜図3に示すように板枠状をなし、この板枠状
の中性子吸収要素11は、平板状の中性子吸収板12
と、この中性子吸収板12の対向するもの同士を連結す
る棒状のスペーサ13とによって構成されている。
【0032】中性子吸収板12はハフニウム金属または
ハフニウム合金製とされている。ハフニウム合金として
は、ハフニウム(Hf)をジルコニウム(Zr)または
チタン(Ti)等で希釈した合金が適用される。
【0033】この中性子吸収板12は、シース2の両側
壁内面に沿って互いに対向配置されるとともに、タイロ
ッド1の軸心と平行な方向で間隔的に配置されている。
本実施例では図1に示すように、一つのブレード2Aを
構成するシース2内に、水平方向(タイロッド1とブレ
ード2A外側端との間)で、3個の中性子吸収要素11
が配列されている。また縦方向では、図3に示すように
多数の中性子吸収要素11が配列されている。
【0034】スペーサ13は、中性子吸収板12と略同
一材料製で、各中性子吸収板12の対向するもの同士を
一定間隔に保持するよう、その対向面の範囲内で連結し
ている。このスペーサ13は例えば丸棒状とされ、中性
子吸収板12の取付け孔12Aに挿入されている。この
スペーサ13の挿入端部は、他の部分よりも若干細径と
するのが正確な間隙形成等、製造上で好都合である。ま
た、中性子吸収板12のスペーサ挿入用の取付け孔12
Aと、スペーサ13の外径とは略等しくし、滞留水の空
間を形成しないのが好ましい。
【0035】また、スペーサ13は中性子吸収板12の
対向面の範囲内に設けられ、これにより、スペーサ13
は中性子吸収板12の側端面から突出しない構成となっ
ている。これにより、シース2内に不要な間隙が形成さ
れることが回避でき、制御棒反応度価値の低減が防止さ
れるようになっている。
【0036】このような中性子吸収要素11が、シース
2内に棒状の支持材14によって支持されている。すな
わち、支持材14はシース2と同一材料製、つまりステ
ンレス鋼製とされており、この支持材14が中性子吸収
板12にあけた複数の通水孔15の任意のものに挿通さ
れ、その両端部がシース2の内面に溶接等によって固着
されている。なお、支持材14が貫通する通水孔15の
直径は、支持材14の直径より大きく、中性子吸収板1
2とシース2との熱膨脹の差や、中性子照射に伴う照射
成長の差を十分吸収できるようになっている。これによ
り、中性子吸収板12と支持材14との接触部では炉水
が入れ替わり易く、滞留水が生じることは防止され、ク
レビス腐食など電気化学的な腐食問題は生じない。
【0037】ブレード2Aの外側端に位置する中性子吸
収板12(12a)は、他の2個の中性子吸収板12に
比較して肉厚が大きく設定されている。これにより、中
性子照射量が高く、寿命が短くなり易い部位に配置され
ている中性子吸収板12aの長寿命化と、反応度価値を
効果的に高めるようになっている。
【0038】また、対向する一対の中性子吸収板12の
端部は、一部を除き縦方向および横方向で互いに段違い
とされ(a≠b,a´≠b´,c≠d,c´≠d´)、
同様に、中性子吸収板12の通水孔15も対向位置のも
のが段違いとされている。
【0039】なお、中性子吸収板12の端部で段違いと
されない部分は、例えばタイロッド1およびブレード2
A外側端部に面する横方向端部、また先端構造材5およ
び末端構造材6に面する縦方向端部等である。
【0040】上記の段違い構成によって、隣接中性子吸
収要素11間に形成される間隙による反応度価値の低下
を抑制することができる。なお、間隙が小さい場合(例
えば1mm程度)には、反応度価値の低下は無視できる程
度の場合があり、そのような場合には上述のような段違
い構成としなくてもよい。
【0041】なお、中性子吸収板12の材質は、中性子
照射量の高低に対応して異ならせてもよい。例えば中性
子照射量が高い部分ではハフニウム金属板とし、中性子
照射量が高くない部分あるいは反応度価値を若干下げて
もよい部分では、ハフニウムと全率固溶合金を作る他の
材料、例えばジルコニウムやチタン等とにより、ハフニ
ウム合金板とすることもできる。この場合、スペーサ1
3についても、中性子吸収板12と同一組成のハフニウ
ム合金とするのが、溶接性および電気化学的安定性から
みて好適である。
【0042】ブレード2A外側の中性子吸収要素11で
は前記のように、中性子吸収板12aが厚肉とされてお
り、その分間隙が狭くなっているが、他の中性子吸収要
素11の中性子吸収板12間の間隙とでは炉水は自由自
在に往来ができ、かつスペーサ13や支持材14が炉水
の流れに攪拌を与えるので、間隙を流通する炉水には好
適な横流れが生じ、各中性子吸収板12は効果的に冷却
され、中性子吸収板12の健全性が向上する。
【0043】なお、シース2には通常設けられている通
水孔8の他、タイロッド近傍およびブレード2A外側端
に位置して、新たな通水孔8A,8Bが設けられ、これ
により通水冷却効果の一層の向上が図られている。
【0044】また、シース2内面の中性子吸収板12外
面と対向する部位には、微小なディンプリングが必要に
応じて設けられている。
【0045】以上の本実施例によると、中性子吸収板1
2の対向面部(中性子吸収要素11の内部)および中性
子吸収板12同士の軸方向間隙で、中性子減速材兼冷却
材である炉水の縦方向流れおよび横方向流れが自由に行
われる。したがって、炉水による中性子減速機能が、よ
り効果的に発揮され、従来の平管構造のものに比して中
性子吸収要素11の内面側における中性子吸収が活発に
行われ、反応度効果の向上が図れるとともに、中性子吸
収によって発熱する中性子吸収板12を、十分に冷却で
きるようになる。
【0046】この結果、中性子吸収板12の肉厚を特に
大きくする必要がなくなり、高価で比重が大きいハフニ
ウム材料の使用量が節減でき、材料コストの低減が可能
となる。
【0047】また、スペーサ13によって炉水が適度に
攪拌される。したがって、冷却水温度の均一化が図ら
れ、高発熱部の冷却特性が一層向上するので、冷却水中
でのボイド発生が抑制される。この炉水は中性子減速材
としても機能するため、ボイド発生の抑制は、制御棒の
反応度効果の低減防止に繋がる。中性子吸収板12の冷
却が効果的に行われる結果、中性子吸収板の健全性が向
上する。
【0048】また、スペーサ13は、中性子吸収板12
の外側面および外側縁から突出しない構成であるから、
中性子吸収板12のシース2内での設置幅が制限された
り、中性子吸収板12相互間隔が狭められることがな
い。もし、スペーサ13が中性子吸収板12の外側面お
よび外側縁から突出する構成であると、中性子吸収板1
2相互間、あるいは中性子吸収板12とタイロッド1や
シース2との間に不要な間隙が生じることになり、反応
度価値の低減を招くが、本実施例ではそのようなことが
ない。
【0049】なお、原子炉用制御棒の先端部とブレード
2Aの外側部とにおいては、中性子照射量が多くなると
ともに、原子炉全挿入時は挿入先端から1/3程度まで
が高い反応度価値を必要とする。この場合、本実施例の
原子炉用制御棒では、中性子吸収板12が軸方向で複数
に分割されるとともに、その中性子吸収板12毎に厚さ
を異ならせ、また間隔を変えることにより、中性子照射
量や、必要な反応度価値の分布に対応させている。した
がって、従来のように長尺な部材の一部を削り込む等の
面倒な加工工程が不必要であり、かつ削り込み加工によ
る材料のロスも生じないため、製造コストの低減が図れ
るとともに、材料の無駄を省くことができる。
【0050】また、本実施例に係る原子炉用制御棒で
は、中性子吸収板12とペーサ13とが、ハフニウム系
の略同一材料によって構成されるので、電気化学的な腐
食が生じにくい。
【0051】さらに支持材14は棒状であり、例えば中
性子吸収板12にあけた通水孔15を貫通して、シース
2に溶接等によって固着されている。この支持材14と
中性子吸収板12との材質は異なるので、電気化学的な
隙間腐食の発生が考えられるが、中性子吸収板12の通
水孔15熱膨脹率の差を考慮して、支持材14の外形よ
り十分大きく設定されているので、冷却水の滞留現象は
容易に回避でき、隙間腐食(クレビス腐食)の虞れは殆
ど生じない。
【0052】さらにまた、支持材14とシースとは同一
材料、つまりステンレス鋼製であるため、これらは相互
に溶接することが可能であり、両者間での電気化学的な
腐食の虞れも生じない。
【0053】図4〜図6は本発明の他の実施例を示して
いる。
【0054】図4に示した実施例では、シース2内に、
制御棒の軸心と直交する方向(水平方向)で、中性子吸
収要素11が2個配設されている。
【0055】また、図5に示した実施例では、シース2
内に、制御棒の軸心と直交する方向(水平方向)で、中
性子吸収要素11が1個配設されている。
【0056】これら図4、5に示した実施例によれば、
炉水が流通する空間が少なくなるが、中性子吸収要素1
1の設置数が減少するので、製造コストが低減できる。
【0057】なお、図4、5に示すように、これらの実
施例では、外側の中性子吸収要素11である中性子吸収
板12を特に厚くしていない。これは、炉水流通量の減
少によって冷却効果が低減することから、中性子照射が
前記一実施例に比較して低く、かつ反応度価値が小さい
場合に好適となるので、それに対応して中性子吸収能力
も低減する構成としたものである。
【0058】なお、以上の各実施例で示した構成は、必
要に応じて種々組合わせることが可能である。例えば、
一つの制御棒において、図1の実施例のものを挿入先端
側に適用し、末端側で図4または図5の実施例のものを
適用する等である。その他、前記各実施例の構成を任意
に1組、2組または3組と、種々組合わせて1体の制御
棒を構成することもできる。
【0059】図6は中性子吸収板12を一定間隔で連結
するスペーサ13の変形例を示している。すなわち、本
実施例では、スペーサ13が角棒状とされ、中性子吸収
板12の外側端部位置に配置されている。なお、中性子
吸収板12の端部位置や通水孔15が段違いになってい
る点は前記同様である。
【0060】このような構成によっても、前記各実施例
と略同様の効果が奏されるのは勿論である。このよう
に、スペーサ13は、不要な間隙形成による制御棒反応
度価値の低減を防止できるよう、中性子吸収板12の側
端面から突出しない範囲、つまり中性子吸収板12の対
向面の範囲内であれば、その形状や配置は種々変更でき
るものである。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る原子炉用制
御棒によれば、板枠状の中性子吸収要素を構成する中性
子吸収板の対向面間隙および軸方向間隙で、中性子減速
材兼冷却材である炉水の縦方向流れおよび横方向流れが
自由に行われるので、炉水による中性子減速機能がより
効果的に発揮され、従来の平管構造のものに比して中性
子吸収要素の内面側における中性子吸収が活発に行わ
れ、反応度効果の向上が図れるとともに、中性子吸収に
よって発熱する中性子吸収板を、十分に冷却できるよう
になる。この結果、中性子吸収板の肉厚を特に大きくす
る必要がなくなり、高価で比重が大きいハフニウム材料
の使用量が節減でき、材料コストの低減が計れる。
【0062】また、スペーサの配置によって炉水の流れ
が適度に攪拌されるので、冷却水温度の均一化が図ら
れ、また高発熱部の冷却特性が一層向上するので、冷却
水中でのボイド発生が抑制される。この炉水は中性子減
速材としても機能するため、ボイド発生の抑制は、制御
棒の反応度効果の低減防止に繋がり、中性子吸収板の冷
却が効果的に行われる結果、中性子吸収板の健全性が向
上できる。
【0063】しかも、スペーサは中性子吸収板の外側面
および外側縁から突出しない構成であるから、中性子吸
収板のシース内での設置幅が制限されたり、中性子吸収
板相互間隔が狭められることがない。したがって、スペ
ーサが中性子吸収板の外側面および外側縁から突出する
構成である場合と異なり、中性子吸収板相互間、あるい
は中性子吸収板とタイロッドやシースとの間に不要な間
隙が生じることがなく、反応度価値の低減を招くことが
ない。
【0064】さらに、原子炉用制御棒の先端部とブレー
ドの外側部とにおいては、中性子照射量が多くなるとと
もに、原子炉全挿入時は挿入先端から1/3程度までが
高い反応度価値を必要とするが、この場合、本発明の原
子炉用制御棒によると、中性子吸収板が軸方向で複数に
分割されているので、中性子吸収板毎に厚さを異ならせ
たり間隔を変えることにより、中性子照射量や、必要な
反応度価値の分布に対応させることが容易に行える。し
たがって、従来のように長尺な部材の一部を削り込む等
の面倒な加工工程が不必要であり、かつ削り込み加工に
よる材料のロスも生じないため、製造コストの低減が図
れるとともに、材料の無駄を省くことができる。
【0065】さらにまた、中性子吸収要素としての中性
子吸収板と、その対向間隙を保持するためのスペーサと
が、ハフニウム系の略同一材料によって構成されるの
で、電気化学的な腐食が生じにくく、しかも支持材は棒
状であり、例えば中性子吸収板にあけた孔等を貫通して
シースに溶接等によって固着されるので、この支持材と
中性子吸収板との材質が異なる場合でも、中性子吸収板
にあけられる孔等を熱膨脹率の差を考慮して、支持材の
外形より十分大きく設定する等により、冷却水の滞留現
象を容易に回避でき、隙間腐食等の虞れは殆ど生じな
い。なお、支持材とシースとは略同一材料であるから、
両者間での電気化学的な腐食の虞れも生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す横断面図。
【図2】前記実施例における中性子吸収要素を示す斜視
図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】本発明の他の実施例を示す横断面図。
【図5】本発明のさらに他の実施例を示す横断面図。
【図6】本発明のさらに異なる他の実施例を示す斜視
図。
【図7】従来例を示す斜視図。
【図8】図7のB−B線断面図。
【符号の説明】
1 タイロッド 2 シース 2A ブレード 5 先端構造材 7 末端構造材 11 中性子吸収要素 12 中性子吸収板 13 スペーサ 14 支持材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 志賀 重範 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株式会社東芝 横浜事業所内 (72)発明者 豊吉 勇 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株式会社東芝 横浜事業所内 (56)参考文献 特開 昭63−196889(JP,A) 特開 昭62−235595(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G21C 7/10

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先端構造材と末端構造材とを結合するタ
    イロッドと、このタイロッドから放射状に突出し、その
    外殻部が深いU字形断面のシースによって構成されたブ
    レードと、前記シースの内部に設けられ、前記タイロッ
    ドの軸心と平行に配列された中性子吸収要素とを有し、
    前記中性子吸収要素は、ハフニウム金属またはハフニウ
    ム合金製で内部に炉水流動空間を有するものとされてい
    る原子炉用制御棒において、前記中性子吸収要素を板枠
    状とし、この板枠状中性子吸収要素は、前記シースの両
    側壁内面に沿って互いに対向配置されるとともに前記タ
    イロッドの軸心と平行な方向で間隔的に配置されたハフ
    ニウム金属またはハフニウム合金製の平板状の中性子吸
    収板と、この中性子吸収板と略同一材料製で各中性子吸
    収板の対向するもの同士を一定間隔に保持するようその
    対向面の取付け孔に炉水流動空間を形成しない状態で挿
    入して取付けられた中性子吸収板連結用の棒状のスペー
    サとによって構成し、かつ前記シースと略同一材料製で
    そのシースに両端部が固着され、前記中性子吸収板の孔
    に炉水流動空間を形成する状態で挿通した棒状の支持材
    によって前記シース内にそれぞれ支持させてなることを
    特徴とする原子炉用制御棒。
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