JP2977707B2 - 高周波用誘電体磁器組成物 - Google Patents

高周波用誘電体磁器組成物

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JP2977707B2
JP2977707B2 JP5200313A JP20031393A JP2977707B2 JP 2977707 B2 JP2977707 B2 JP 2977707B2 JP 5200313 A JP5200313 A JP 5200313A JP 20031393 A JP20031393 A JP 20031393A JP 2977707 B2 JP2977707 B2 JP 2977707B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主にマイクロ波領域で
使用される誘電体共振器等の材料として用いる高周波用
誘電体磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】誘電体共振器の使用周波数領域が拡大す
るにつれて、マイクロ波領域で使用される誘電体共振器
でも小型化が求められている。そのためこれまでに種々
の誘電体磁器組成物が開発されているが、このような組
成物に求められる特性としては、特に小型化を可能にす
るために比誘電率(εr )が高く、誘電損失を低く押さ
えるためにQが高く、さらに温度変化に対する特性変動
を低く押さえるために共振周波数温度係数(TCf)が
小さいこと等である。
【0003】このような目的で用いるものとして、従来
提案されている誘電体磁器組成物としては、例えば、B
aO−TiO2 −Nd23 −Bi23 系などの材料
が知られている。さらに、特開平2−275756号公
報において、BaO−TiO2 −Nd23 −Me−B
23 (ただしMeはDy23 または 1/3Pr4
11)、あるいは特開平4−104949号公報におい
て、BaO−TiO2 −Nd23 −Pr211/3−B
23 等の組成物が開示されている。
【0004】しかし、これらの組成物を用いて高周波用
誘電体共振器を構成する際、誘電体磁器製造時に、焼成
温度がわずかに変化することでTCf特性が大きく変動
してしまう。さらに、焼成温度のわずかな低下によりε
r やQが大きく低下することがある。そのため、安定し
た電気特性をもつ誘電体磁器を得ることがむずかしく、
製品の不良率も高くなってしまう。したがって、従来の
組成物を用いて安定した電気特性をもつ誘電体磁器を得
るためには、焼成温度の精密な管理が必要となってい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、広い
焼成温度範囲で大きな比誘電率εr と、マイクロ波領域
での大きなQと、小さなTCfとが得られ、さらに、焼
成温度変化に対してTCfの変化幅が小さい、安定です
ぐれた電気特性をもつ高周波用誘電体磁器組成物を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)、(2)の本発明により達成される。 (1)酸化バリウムと酸化チタンと酸化ネオジムとを主
成分として含み、酸化バリウム、酸化チタンおよび酸化
ネオジムをそれぞれBaO、TiO2 およびNd2 3
に換算し、前記主成分を組成式xBaO・yTiO2
zNd2 3 で表わしたとき、x+y+z=100モル
%として、8≦x≦19、62≦y≦73および12≦
z≦19であり、さらに、酸化ビスマス、酸化ニオブお
よび酸化マンガンをそれぞれBi2 3、Nb2 5
よびMnOに換算したとき、前記組成式の主成分に対し
てBi23 が2.5〜11.3重量%、Nb2 5
0.05〜0.3重量%およびMnOが0.05〜1.
5重量%添加されている高周波用誘電体磁器組成物。 (2)4GHz における比誘電率εr が70以上、4GHz
における無負荷時のQが1000以上、さらに−40〜
80℃における共振周波数温度係数TCfが30ppm /
℃以下である上記(1)の高周波用誘電体磁器組成物。
【0007】
【具体的構成】以下に、本発明の具体的構成について詳
細に説明する。
【0008】本発明の高周波用誘電体磁器組成物は、酸
化バリウムと酸化チタンと酸化ネオジムとを主成分とし
て含む。この酸化バリウム、酸化チタンおよび酸化ネオ
ジムをそれぞれBaO、TiO2 およびNd23 に換
算し、前記主成分を組成式xBaO・yTiO2 ・zN
23 で表わしたとき、x+y+z=100モル%と
して、xは、8≦x≦19、より好ましくは9≦x≦1
8である。また、yは、62≦y≦73、より好ましく
は65≦y≦73である。さらに、zは、12≦z≦1
9、より好ましくは14≦z≦19である。
【0009】xが小さすぎるとQが小さくなる。また大
きすぎてもQが小さくなり、その上焼成温度が高くなる
とTCfが+側に大きくなる。yが小さすぎると焼結性
が悪化し、εr およびQがともに小さくなる。また大き
すぎてもεr およびQがともに小さくなる。zが小さす
ぎるとQが小さくなり、また大きすぎてもεr およびQ
がともに小さくなる。
【0010】本発明の高周波用誘電体磁器組成物には、
さらに、前記主成分に、酸化ビスマス、酸化ニオブおよ
び酸化マンガンを添加する。添加量としては、酸化ビス
マス、酸化ニオブおよび酸化マンガンをそれぞれBi2
3 、Nb2 5 およびMnOに換算したとき、前記主
成分に対してBi2 3 の添加量は2.5〜11.3重
量%、より好ましくは3.0〜11.0重量%、特に
3.0〜10.0重量%である。また、Nb2 5 の添
加量は、前記主成分に対して0.1〜0.3重量%であ
る。さらに、MnOの添加量は、前記主成分に対して
0.05〜1.5重量%、より好ましくは0.1〜1.
0重量%である。
【0011】酸化ビスマスの添加量が少なすぎるとTC
fが+側に大きくなり、また多すぎるとQが小さくな
る。酸化ニオブの添加量が少なすぎると焼成温度により
TCfが大きく変化し、その上焼成温度が低い場合には
εr およびQがともに小さくなる。また多すぎてもεr
が小さくなる。酸化マンガンの添加量が少なすぎると焼
結性が悪化し、さらにεr およびQが小さくなる。また
多すぎるとεr およびQがともに小さくなり、さらにT
Cfが+側に大きくなる。
【0012】また、本発明の高周波用誘電体磁器組成物
では、前記酸化ネオジムの一部が、酸化ランタンおよび
酸化プラセオジムの1種または2種で置換されていても
よい。
【0013】酸化ネオジムがこれらによって置換されて
いる場合、酸化ランタンおよび酸化プラセオジムをそれ
ぞれLa23 およびPr211/3に換算し、前記主成
分を組成式xBaO・yTiO2 ・z[(Nd23
1-m-n (La23m (Pr211/3n ]で表わし
たとき、m+n>0、0≦m≦0.13、好ましくは0
≦m≦0.1、0≦n≦0.13、好ましくは0≦n≦
0.1であり、通常は、m+nは0.01以上とされ
る。
【0014】酸化ネオジムの一部を置換した酸化ランタ
ンの置換量が多すぎると、εr およびQがともに小さく
なり、そのうえTCfが+側に大きくなってくる。ま
た、酸化ネオジムの一部を置換した酸化プラセオジムの
置換量が多すぎてもTCfが+側に大きくなる。
【0015】さらに、これらの組成成分の他に、原料あ
るいは製造工程の材質等に由来する成分等による酸化ケ
イ素、酸化アルミニウム等が組成物全体の0.1重量%
程度以下含まれていてもよい。
【0016】このような組成とすることで、本発明の高
周波用誘電体磁器組成物は、製造時の焼成温度が125
0℃程度で、4GHz における比誘電率εr が70以上、
特に70〜73、また、4GHz における無負荷時のQが
1000以上、特に1000〜1480、さらに−40
〜80℃における共振周波数温度係数TCfが30ppm/
℃以下、特に+4〜+28ppm/℃というすぐれた電気特
性を有する。さらにTCfの変化幅が焼成温度1220
〜1380℃、特に1250〜1350℃の範囲で5pp
m/℃以内となり、TCfが焼成温度のバラツキに対して
すぐれた安定性をもつ。
【0017】本発明の高周波用誘電体磁器組成物は、こ
のような組成物を、通常は例えば混合、仮焼、粉砕、混
練、成形、焼成等の処理を行なうことで得られるが、処
理工程等は特に限定されず、また、その条件等も公知の
条件から適宜選択すればよい。
【0018】用いる原料に特に制限はないが、通常は前
記各酸化物を構成する金属成分元素を含む原料粉末を混
合して用いることが好ましい。この際原料粉末として
は、酸化物あるいは後の焼成により酸化物となるもので
ある。すなわち、通常前記の各酸化物を構成する元素を
含む例えば、酸化物、炭酸塩、水酸化物等から選択すれ
ばよい。
【0019】これら用いる原料粉末の平均粒径は、好ま
しくは5μm 以下、より好ましくは0.5〜3.0μm
である。
【0020】このような原料粉末を、最終組成が前記組
成となるように秤量し、混合するが、混合する方法や時
間等に特に制限はなく、成分が十分分散する方法および
時間を選択すればどのようであってもよい。混合を湿式
で行なう場合には、溶媒として水や低級アルコール類等
を単独でまたは2種以上混合して用いればよい。
【0021】得られた混合物は、適当な方法で脱水、乾
燥等を行った後、通常は仮焼を行なえばよい。仮焼は通
常、空気中で1000〜1200℃程度の温度で、2〜
4時間程度行なう。さらに、仮焼により得られた仮焼物
は、適当な方法により粗粉砕の後、平均粒径0.5〜
3.0μm 程度に粉砕すればよく、このとき湿式粉砕を
行う場合は前記湿式混合で用いられる溶媒から1種ある
いは2種以上混合して用いればよい。
【0022】粉砕後の粉末に、通常は粉末100重量部
に対して2.0〜5.0重量部程度バインダを加えて混
合した後、加圧成形を行なえばよい。バインダとして
は、通常ポリビニルアルコール等が用いられる。加圧成
形は、例えば適当なサイズの金型にバインダ等を混合し
た前記粉末を充填し、成形圧2〜5t/cm2 程度で行えば
よい。
【0023】焼成は、昇温速度を50〜300℃/h程
度、降温速度を50〜300℃/h程度とし、1250〜
1350℃程度で、1〜5時間程度、大気中等の酸素雰
囲気下で行えばよい。
【0024】このようにして得られた焼成体は、主相と
してBaNd2 Ti514相、また、副相としてBa2
Ti920をもつ。このような相は、X線回折(XR
D)により確認することができる。
【0025】得られた焼成体は、通常は1〜3μm 程度
のグレインサイズの主相と、3〜10μm 程度のグレイ
ンサイズの副相と、1μm 以下程度のバウンダリー相と
をもつ。
【0026】このような本発明の高周波用誘電体磁器組
成物は、通常800MHz 〜3GHz 程度の周波数帯域で好
ましく用いられる。代表的な用途例としては、自動車電
話共用器、段間フィルタに代表されるバンドパスフィル
タ電圧制御発振素子等の共振素子の材料等を挙げること
ができる。さらに、マイクロ波集積回路基板、高周波電
力用コンデンサ材料としても使用できる。
【0027】
【実施例】以下に、本発明の具体的実施例を示し、本発
明をさらに詳細に説明する。
【0028】実施例1 出発原料として、BaCO3 、TiO2 、Nd23
Bi23 、Nb25 、MnOの粉末を用い、焼結後
の最終組成が表1および表2に示す各試料番号の組成と
なるように各成分粉末を秤量し、ボールミル中で、溶媒
として水を用いて20時間湿式混合したのち、脱水、乾
燥して混合物を得た。
【0029】この混合物を1000〜1200℃、2時
間仮焼後、得られた仮焼物を粗粉砕し、さらにボールミ
ル中でジルコニア球と共に溶媒として水を用いて湿式粉
砕を行った。
【0030】得られた粉砕物にバインダとしてポリビニ
ルアルコールを加えて混合・造粒し、直径12.7mm、
高さ7mmの円柱状に加圧成形したのち、1250℃、1
300℃および1350℃の各温度で2時間焼成して誘
電体磁器を得た。
【0031】得られた誘電体磁器を直径10mm、高さ5
mmに加工してそれぞれ試料番号1〜13および21〜3
4とし、2枚の平行な金属板の間に前記円柱状の各誘電
体磁器試料をはさんで共振器を構成して下記に示す方法
により諸特性を測定した。得られた結果を表1および表
2にまとめて示す。なお、表1および表2中で、添加物
成分の組成は、主成分に対する重量%で示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】<誘電特性測定方法>比誘電率εr および
Qは誘電体共振器法(Hakki and Coleman の方法)によ
り、約4GHz でのTE01δモードの共振をネットワーク
アナライザで測定した。測定温度は25±10℃、測定
湿度は25〜85%RHとし、測定器はヒューレットパ
ッカード社製ネットワークアナライザ:HP8510B
を使用した。
【0035】<共振周波数温度係数TCf測定方法>測
定温度−40〜80℃における共振周波数frの変化を
誘電体共振器法(Hakki and Coleman の方法)により測
定し、数1式によりTCfを算出した。
【0036】
【数1】
【0037】実施例2 出発原料として、BaCO3 、TiO2 、Nd23
La23 、Pr211/3、Bi23 、Nb25
MnOの粉末を用い、焼結後の最終組成が表3に示す各
試料番号の組成となるように各成分粉末を秤量し、他は
実施例1と同様に処理して試料番号41〜50を得た。
ただし、添加物成分の添加量は、Bi23 、Nb25
およびMnO換算で、それぞれ7.5重量%、0.2
重量%および0.1重量%とした。得られた各試料を実
施例1と同様にして諸特性を測定した。得られた結果を
表3にまとめて示す。なお、表3中で、置換成分の組成
は、Nd23 に対する置換量をモル比で示した。
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】表1、表2および表3に示す電気特性の
測定結果より明らかなように、本発明の高周波用誘電体
磁器組成物は、εr が大きく、TCfが比較的小さいた
め、従来の誘電体磁器組成物よりきびしい周波数温度安
定性の要求に応じることが可能となった。さらに、Nb
25 の添加により安定焼成温度域が広がったため、製
造時の焼成温度の管理が容易になり、焼成炉の精密な温
度管理設備が不要となった。また、Bi23 の添加量
を変化させることで、TCf値を30ppm/℃以下に制御
することが可能となった。さらにMnOの添加により焼
結性が向上し、その上Nb25 を添加したことによる
Q値の低下が防止できた。すなわち、すぐれた電気特性
をもつ高周波用誘電体磁器組成物が安定して製造可能と
なった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−100058(JP,A) 特開 平2−242525(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01B 3/12 303 H01B 3/12 311 C04B 35/46 H01P 7/10

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化バリウムと酸化チタンと酸化ネオジ
    ムとを主成分として含み、酸化バリウム、酸化チタンお
    よび酸化ネオジムをそれぞれBaO、TiO2 およびN
    2 3 に換算し、前記主成分を組成式xBaO・yT
    iO2 ・zNd2 3 で表わしたとき、x+y+z=1
    00モル%として、8≦x≦19、62≦y≦73およ
    び12≦z≦19であり、 さらに、酸化ビスマス、酸化ニオブおよび酸化マンガン
    をそれぞれBi2 3、Nb2 5 およびMnOに換算
    したとき、前記組成式の主成分に対してBi23
    2.5〜11.3重量%、Nb2 5 が0.05〜0.
    3重量%およびMnOが0.05〜1.5重量%添加さ
    れている高周波用誘電体磁器組成物。
  2. 【請求項2】 4GHz における比誘電率εr が70以
    上、4GHz における無負荷時のQが1000以上、さら
    に−40〜80℃における共振周波数温度係数TCfが
    30ppm /℃以下である請求項1の高周波用誘電体磁器
    組成物。
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