JP2977523B2 - スパイラルフープ筋製造装置及び製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、柱のせん断補強と
座屈圧縮強度を高めるために用いられる螺旋状のフープ
筋を製造するスパイラルフープ筋製造装置及び製造方法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、スパイラルフープ筋の製造は、旋
盤による鉄筋の巻き取りにより行われていた。この方法
では、旋盤の構造的な制約により、次のような問題点が
存在していた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】まず第１に、旋盤によ
り巻き取られるスパイラルフープ筋のダイヤ径の大きさ
やスパイラルフープ筋の長さは限定的なものとなり、よ
り長いスパイラルフープ筋を製造するためには、スパイ
ラルフープ筋を製造後に、各スパイラルフープ筋を溶接
する必要があった。第２に、製造されたスパイラルフー
プ筋の送りピッチ幅が少なかったため、製造後にピッチ
幅を調整する必要があった。上記溶接や調整は、スパイ
ラルフープ筋の量産を妨げ、コスト高の一因ともなって
いた。第３に、製造は旋盤工に頼るため、人件費の面か
らコスト高となっていた。そこで、本願発明は、製造す
るスパイラルフープ筋の長さ寸法やダイヤ径を容易に調
整でき、またスパイラルフープ筋のピッチ幅も容易に調
整でき、さらに低コストでスパイラルフープ筋を製造で
きるスパイラルフープ筋製造装置及び製造方法を提供す
ることを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のスパイラルフープ筋製造装置は、動力源
と、該動力源から回転力を伝達されて回転するとともに
鉄筋を巻き取る巻取軸と、該巻取軸に対し所定の速度比
で回転するとともに前記巻取軸に巻き取られる鉄筋にス
パイラルのピッチを付与する螺旋軸と、前記速度比を調
整する速度比設定部を備え、前記螺旋軸のねじ山に沿っ
て、鉄筋を前記巻取軸に送り込むガイド部材を、前記巻
取軸と螺旋軸の上方であって、且つ、略中間位置に配置
したことを特徴とする（請求項１に記載の発明）。ここ
で動力源は、巻取軸や螺旋軸に回転力を与えることがで
きるものであればよく、典型的には各種電動機である。
また、巻取軸と螺旋軸の速度比は、巻取軸の回転速度と
螺旋軸の回転速度の割合であるが、螺旋軸を減速させる
場合の比でもよいし、逆に巻取軸を減速させる場合の比
でもよい。巻取軸と螺旋軸の速度比が大きくなれば、互
いに隣合うスパイラルフープ筋の間隔であるピッチ幅は
狭くなり、速度比が小さくなれば、ピッチ幅は拡がる。
よって上記構成のスパイラルフープ筋製造装置では、ス
パイラルフープ筋のピッチ幅を調整でき、製造後のピッ
チ幅の調整は不要となる。

【０００５】また、鉄筋が巻取軸に巻き取られる場合
に、ガイド部材によって、巻取軸と同一方向に回転しよ
うとする鉄筋を押さえることができ、綺麗に所定のダイ
ヤ径のスパイラルフープ筋を製造できる。

【０００６】また前記の巻取軸を交換可能にすれば（請
求項２に記載の発明）、スパイラルフープ筋のダイヤ径
の大きさやスパイラルフープ筋の長さ寸法を調整でき、
多種多様なスパイラルフープ筋を容易に製造することが
できる。

【０００７】また上記スパイラルフープ筋製造装置を用
いて、スパイラルフープ筋を製造する方法は、前記巻取
軸に対する螺旋軸の回転速度比を設定し、鉄筋の先端を
巻取軸に固定するとともに、前記ガイド部材の配置位置
を調整した後、前記巻取軸及び螺旋軸を回転させるよう
にする（請求項３に記載の発明）。このような方法によ
れば、なんら熟練を要せず、所定のダイヤ径やピッチ幅
の綺麗なスパイラルフープ筋を製造できる。

【０００８】

【発明の実施の形態】次に、上記発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図１はスパイラルフープ筋製造
装置の斜視図、図２は同装置を構成する巻取軸の分解斜
視図、図３は同装置の要部右側面図、図４は同装置の要
部左側面図である。実施の形態に係るスパイラルフープ
筋製造装置は、図１に示したように動力源としての電動
機１から回転力を伝達されて鉄筋２を巻き取る巻取軸３
と、この巻取軸３に対し所定の速度比により回転して、
前記巻取軸３に巻き取られる鉄筋２にスパイラルのピッ
チＰを付与する螺旋軸４を備え、それぞれ支持台５に載
置されている。

【０００９】前記巻取軸３は、表面が鉄筋の巻取面とな
る円筒部３０と、その円筒部３０の中心軸に配置されて
いる回転軸３１からなる。前記円筒部３０の長さは製造
するスパイラルフープ筋の長さ寸法に対応し、その軸径
はスパイラルフープ筋のダイヤ径に対応している。また
円筒部３０の端部には、切欠き３２が設けられており、
巻取軸３を回転させる前に鉄筋２の先端を係止できるよ
うになっている。このような円筒部３０は、例えば図２
に図示したように、回転軸３１に対して着脱自在に取り
付けられており、製造するスパイラルフープ筋の長さ寸
法やダイヤ径に応じて、交換できるようになっている。
よって、この製造装置によれば、従来例のように製造後
に各スパイラルフープ筋を溶接する必要もなく、任意の
ダイヤ径のスパイラルフープ筋を製造することができ
る。なお、前記円筒部３０と回転軸３１を分離せずに、
巻取軸３全体を交換してもよい。

【００１０】前記回転軸３１の一端は、図１に示したよ
うに前記支持台５に設けられた軸受け５０に軸支され、
他端は、他方の軸受け５１に軸支されている。またその
他端には前記電動機１からの回転力が伝達される歯車３
３及び後述する速度比設定部を構成するスプロケット３
４，３５を取り付けている。前記軸受け５０は、前記支
持台５に対してヒンジ類５２を介して固定されており、
支持台５の外側に倒すことができる。従って、製造する
スパイラルフープ筋のダイヤ径等に合わせて円筒部３０
を取り替える場合には、前記軸受け５０を外側に倒し
て、前記円筒部３０を回転軸３１に沿って取り外せばよ
い。また巻き終わったスパイラルフープ筋を取り出す場
合にも、前記軸受け５０を倒して、円筒部３０に沿って
スパイラルフープ筋を外せばよい。

【００１１】前記螺旋軸４は、円筒の表面にねじ山４０
を設けて螺旋を施した螺旋部４１とその螺旋部４１の中
心軸に配置した回転軸４２とからなり、その長さ寸法
は、前記巻取軸３と略同一である。前記回転軸４２の一
端は、前記支持台５に設けられた軸受け５３に軸支さ
れ、他端は、他方の軸受け５４に軸支されているととも
に、速度比設定部を構成する大小のスプロケット４３，
４４を取り付けている。

【００１２】前記速度比設定部は、前記螺旋軸４の回転
速度と巻取軸３の回転速度の速度比を調整することによ
って、スパイラルフープ筋のピッチＰを調整するもの
で、図１及び図３に示すように、前記巻取軸３の回転軸
３１に固定されたスプロケット３４，３５と、前記螺旋
軸４の回転軸４２に固定された小スプロケット４３及び
大スプロケット４４と、チェーンの張力調整用の張り車
６からなっている。前記スプロケット３４と前記小スプ
ロケット４３の歯数は略同一数であるが、スプロケット
３５と大スプロケット４４の歯数は、所定の減速比の歯
数となっている。そして、前記スプロケット３４と小ス
プロケット４３と張り車６を、前記電動機１の回転力を
用いてチェーン駆動すれば、前記巻取軸３と螺旋軸４
は、略同一速度で回転する。一方、前記スプロケット３
５と大スプロケット４４と張り車６とをチェーン駆動す
れば、前記巻取軸３の回転速度に対し螺旋軸４の回転速
度が減速され、スパイラルフープ筋のピッチ幅を狭くさ
せることができる。よって、スパイラルフープ筋の製造
後にピッチ幅を調整する必要がなく、従来の製造方法に
比べて、製造工程を簡略化及び容易化することができ
る。このことにより、製造コストが低減する。

【００１３】前記巻取軸３と螺旋軸４との上方であっ
て、かつ略中間位置には、図１に示したようにガイド部
材７が配置されている。このガイド部材７は、前記巻取
軸３に巻き取られる鉄筋２が前記螺旋軸４のねじ山４０
に沿って巻き取られるようにガイドするものであり、支
持台５に固定された支持棒８，８に上下スライド自在に
固定されている。このスライド構造は、支持棒８，８に
設けられた長孔８０，８０と、これらの長孔８０，８０
に沿って移動でき且つ前記ガイド部材７を固定した固定
板８１，８１と、これらの固定板８１，８１を所定の位
置で制止させる制止ボルト（図示せず）等から構成され
ている。そして、図４に示すように、巻取軸３の巻取り
動作中は、ガイド部材７の下面が前記巻取軸３の円筒部
３０と螺旋軸４の螺旋部４１の各接線に略一致するよう
に、高さを調整して前記支持棒８，８に固定する。この
ようなガイド部材７により、前記巻取軸３の回転に伴っ
て回転しようとする鉄筋２の回転を規制でき、鉄筋２を
螺旋部４１のねじ山４０に沿って摺動させることができ
る。

【００１４】上記のように構成されたスパイラルフープ
筋製造装置の使用方法を以下に説明する。まず、製造し
ようとするスパイラルフープ筋に応じて、所定の径及び
長さの鉄筋を用意する。そしてスパイラルフープ筋の長
さ寸法やダイヤ径に対応する巻取軸３を支持台５にセッ
トするとともに、加工するスパイラルフープ筋のピッチ
幅に対応させて、上記速度比設定部をセットする。次
に、スパイラルのサイズにより鉄筋先端部をベンダー等
で折り曲げて、フック２０を作り、図５に示すように、
そのフック２０を前記巻取軸３の切欠き３２に掛ける。
そして、鉄筋２が前記螺旋軸４のねじ山４０に沿って摺
動するように、前記ガイド部材７をセットする。次に、
電動機１をオンし、前記巻取軸３と螺旋軸４を同一方向
に回転させながら、鉄筋２をスパイラル状に巻き取る。
鉄筋の巻取終了後に、図６に示すように、前記軸受け５
０を倒して、前記巻取軸３からスパイラルフープ筋Ｓを
取り外す。以上のような製造方法によれば、熟練を要す
ることなく、製造しようとするダイヤ径Ｄ及びピッチＰ
のスパイラルフープ筋Ｓを容易に製造することができ
る。

【００１５】前記スパイラルフープ筋製造装置は、円形
スパイラルフープ筋を製造する構成であつたが、前記巻
取軸に代えて、四角柱状の巻取軸を回転させることによ
って、角スパイラルフープ筋を製造することもできる。

【００１６】

【発明の効果】請求項１に記載の発明によれば、螺旋軸
は巻取軸に対し、所定の速度比で回転するので、スパイ
ラルフープ筋のピッチ幅を調整できる。よって、製造後
にスパイラルフープ筋のピッチ幅を調整する必要がなく
なり、スパイラルフープ筋の製造工程の簡略化や容易化
を図ることができ、製造コストも低減させることができ
る。

【００１７】さらに、鉄筋が巻取軸に巻き取られる場合
に、ガイド部材により、巻取軸と同一方向に回転しよう
とする鉄筋を押さえることができ、綺麗に所定のダイヤ
径のスパイラルフープ筋を製造できる。

【００１８】請求項２に記載の発明によれば、容易にス
パイラルフープ筋のダイヤ径の大きさやスパイラルフー
プ筋の長さ寸法を調整できる。よって、上記請求項１の
発明の効果と相まって、多種多様なスパイラルフープ筋
の製造工程の簡略化や容易化を図ることができ、製造コ
ストも低減させることができる

【００１９】請求項３に記載の発明によれば、旋盤工等
のような熟練を要せず、所定のダイヤ径やピッチ幅の綺
麗なスパイラルフープ筋を製造できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実施形態のスパイラルフープ筋製造装置の斜
視図、

【図２】 同スパイラルフープ筋製造装置を構成する巻
取軸の分解組立図、

【図３】 同スパイラルフープ筋製造装置の右側面図、

【図４】 同左側面図、

【図５】 同スパイラルフープ筋の動作説明図、

【図６】 同動作説明図。

【符号の説明】

１ 電動機 ２ 鉄筋 ３ 巻取軸 ３０ 円筒部 ３１ 回転軸 ３２ 切欠き ３３ 歯車 ３４ ３５ ４３
４４ スプロケット ４ 螺旋軸 ４０ ねじ山 ４１ 螺旋部 ４２ 回転軸 ５ 支持台 ５０ ５１ ５３
５４ 軸受け ５２ ヒンジ類 ６ 張り車 ７ ガイド部材 ８ 支持棒 ８０ ８０ 長孔 ８１ ８１ 固定板

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 動力源と、該動力源から回転力を伝達さ
   れて回転するとともに鉄筋を巻き取る巻取軸と、該巻取
   軸に対し所定の速度比で回転するとともに前記巻取軸に
   巻き取られる鉄筋にスパイラルのピッチを付与する螺旋
   軸と、前記速度比を調整する速度比設定部を備え、 前記螺旋軸のねじ山に沿って、鉄筋を前記巻取軸に送り
   込むガイド部材を、前記巻取軸と螺旋軸の上方であっ
   て、且つ、略中間位置に配置したこと を特徴とするスパ
   イラルフープ筋製造装置。
2. 【請求項２】 前記巻取軸は、交換可能であることを特
   徴とする請求項１に記載のスパイラルフープ筋製造装
   置。
3. 【請求項３】 請求項２に記載のスパイラルフープ筋製
   造装置を用いて、スパイラルフープ筋を製造する方法で
   あって、 前記巻取軸に対する螺旋軸の回転速度比を設定し、 鉄筋の先端を巻取軸に固定するとともに、前記ガイド部
   材の配置位置を調整した後、 前記巻取軸及び螺旋軸を回転させることを特徴とするス
   パイラルフープ筋の製造方法。