JP2970339B2 - 耐転動疲労損傷性に優れたレール - Google Patents

耐転動疲労損傷性に優れたレール

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄道においてレールの
寿命を左右する頭頂並びに頭部コーナー部に生じる転動
疲労損傷に対する耐損傷性に優れたレールに関する。
【0002】
【従来の技術】鉄道輸送は他の輸送機関と比較して輸送
効率が高く、年々高速化、ダイヤの過密化が指向されて
おり、レールに対する負荷が年々過酷になっている。こ
のため、直線部においてはレール頭頂面の、曲線部にお
いては頭部コーナー部の転動疲労損傷が増加している。
【0003】従って、レールに求められる特性もより高
性能化しつつあり、これまで以上に転動疲労特性に対す
る耐損傷性に優れるレールが求められている。このよう
なレールとしては、例えば特公昭55−2388号公報
に開示されているような頭部を高温に再加熱して所定の
温度域から冷却し、700〜650℃の温度域を10.
5〜15℃/秒の速度で冷却することにより得られる熱
処理レールが知られている。このような熱処理レールは
特に頭部の硬度が高いことから軸重の高い鉄道に使用さ
れ優れた特性を示している。
【0004】また特開平2−282448号公報には、
C量を従来レールよりも幾分か低くして、さらに頭頂部
と頭部コーナー部に硬度差を付け、耐ころがり疲労損傷
性を良好にしたレールが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、最近高速化
の進んでいる在来線において、これまで新幹線に敷設し
たレールにしか認められなかったレール頭頂面シェリン
グが発生するようになり、この対応に苦慮している。
【0006】頭頂面シェリングの発生原因については、
全てが解明されているわけではないが、その原因の一つ
として、車輪の走行、スリップ時のレール表面の急速加
熱・急速冷却によりレールの表面に白色層と称されるマ
ルテンサイト層の生成が報告されている。この場合、白
色層は非常に硬いことからマトリクスとの境界に割れが
発生し、進展することによりシェリング損傷に至るとさ
れている。
【0007】白色層の硬さは一般にC量によって決ま
り、C量が多いほど白色層の硬さが高くなる。従来のレ
ールは、特公昭55−2388号公報に開示されたもの
を含め、C量が0.65〜0.85%と多いことから白
色層が生成した場合、硬さが高くなる点が弱点となって
いる。また、従来のレールはミクロ組織がパーライト組
織となっており、軟らかいフェライト層と硬いセメンタ
イト層がラメラー状となっていることから摩耗し難く、
一度生成した白色層が、列車の通過時の車輪とレールの
接触に伴う摩耗によっても除去されず、損傷の起点とな
りやすい点も欠点となっている。
【0008】本発明者たちは、この問題に対処するため
白色層の硬さが低く、また白色層が生成しても列車通過
時の車輪とレールの接触による摩耗によって除去される
ようなレールを検討した。白色層すなわちマルテンサイ
トの硬さはC量によって一義的に決まることからこの硬
さを低くするためにはC量を低くすることが有効であ
る。
【0009】しかし、C量を低くしただけのレールで
は、強度が低くなりレール表面に大きな塑性フローが生
じ、これがきしみ割れ等の別種の損傷となるという問題
が生じた。これに対しては、例えば前述の特開平2−2
82448で開示されているようにC量の低いレールで
頭部コーナー部のみを熱処理等で高硬度とするレールが
開発されている。けれども実際の鉄道における列車の走
行においては、車輪とレールの接触は一様ではなく、高
硬度化した頭部コーナー近傍部が車輪と接触することが
あり、この場合には頭頂部に接触が生じず、摩耗量を増
やすことにより白色層の除去を行うという当初の目的が
達成されないため白色層は除去され難く、耐転動疲労損
傷性が必ずしも良好とはいえないという欠点があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、耐
転動疲労損傷性に優れたレールを提供することを目的と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】本願発明者ら
は、上記のような従来技術の欠点を考慮した結果、複雑
な熱処理を行うことなく頭頂部及び頭部コーナー部が共
に塑性フローによる損傷が生じない程度の均一な硬さを
有し、疲労強度及び硬さが従来レールと同等であり、さ
らに頭部のミクロ組織を全面ベイナイト組織とすること
で従来レールよりも1.3〜3.0倍摩耗量を多くする
ことによって、白色層の除去が可能となり、転動疲労損
傷に対する耐損傷性に優れることを見出した。さらに微
量合金元素を加えることにより摩耗量は全面ベイナトイ
組織の場合と同等で、かつ白色層の生成を抑制し、頭部
が内部まで同一硬さを示すことから使用寿命が著しく延
びることも明らかにした。
【0011】本発明は以上の知見に基づいてなされたも
のであり、重量%で、C:0.15〜0.45%、S
i:0.05〜1.0%、Mn:0.30〜2.5%、
P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:0.
70〜3.00%、V:0.005〜0.05%未満
含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、頭部が均
一ベイナイト組織であり、硬さが頭頂及び頭部コーナー
部のいずれかの位置においてもHvで240〜390の
間であることを特徴とする耐転動疲労損傷性に優れたレ
ールを提供する。
【0012】また、重量%で、Nb:0.005〜0.
01%未満、Ti:0.001〜0.01%未満の1種
又は2種をさらに含有することを特徴とする耐転動疲労
損傷性に優れたレールを提供する。
【0013】さらに、上記基本組成に、又は上記元素を
さらに含有した組成に、さらにCu:0.05〜2.0
%、Ni:0.05〜2.0、Mo:0.005〜0.
05%の1種又は2種以上を含有させたことを特徴とす
る耐転動疲労損傷性に優れたレールを提供する。
【0014】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、化学成分の限定理由について説明する。なお、以下
の説明において、%表示は全て重量%を表わす。
【0015】C:0.15〜0.45% Cは白色層の硬さとレールそのものの強度に重要な影響
を与える元素であり、その含有量が0.45%を超える
とレール頭頂部における白色層の硬さが著しく硬くな
り、母材の硬度差が高くなりすぎることからシェリング
損傷の起点となる。一方、0.15%未満では母材の強
度が低くなり、塑性フローが著しく、これを起点とする
損傷が発生する。従って、C量を0.15〜0.45%
に規定する。
【0016】Si:0.05〜1.0% Siは、脱酸剤として有効なだけでなく、マトリクスに
固溶して強度を上昇させる元素であるが、その含有量が
0.05%未満ではその効果が認められない。また1.
0%を超えるとマトリクスが脆化し、また硬いSiO2
がマトリクス中に分散してこれがシェリングの起点とな
る。従って、Si量を0.05〜1.0%に規定する。
【0017】Mn:0.30〜2.5% Mnはマトリクスに固溶して焼入性を高め高強度化する
元素であるが、0.30%未満ではその効果が認められ
ず、2.5%を超えると偏析部にマルテンサイトを生成
しやすくなり、損傷の起点となる。従って、Mn量を
0.30〜2.5%に規定する。
【0018】P:0.03%以下 Pは靭性を劣化させることから、0.03%以下に規定
する。 S:0.03%以下 Sは主に介在物の形態で鋼中に存在するが、0.03%
を超えるとこの介在物量が著しく増加し、マトリクスを
脆化せしめることから、0.03%以下に規定する。
【0019】Cr:0.70〜3.00% Crはベイナイト焼入性を増加する元素であり、本発明
鋼のようにミクロ組織をベイナイト組織として高強度化
を図るために非常に重要な元素であるが、0.70%未
満ではベイナイト焼入性が低く、ミクロ組織が均一なベ
イナイト組織とならない。一方、3.00%を超えると
マルテンサイトが生成しやすくなり損傷の起点となる。
従って、Cr量を0.70〜3.00%に規定する。
【0020】V:0.005〜0.05%未満 Vはマトリクス中のCと結び付いて圧延後に析出するこ
とから、頭部の内部まで析出強化により硬度を高くし、
レールの寿命を延ばすために有効なだけでなく、車輪の
走行、スリップ時における頭部表面の急速加熱時にCと
析出物を形成しておりこれが分解しないことから、結果
として急速加熱された部分の固溶C量を低減させ、白色
層の硬さを低くしてシェリング損傷を抑制するのに非常
に有効である。ただし、その量が0.005%未満では
その効果を有効に発揮することができない。また、0.
05%以上添加してもその効果は飽和してしまう。従っ
て、V量を0.005〜0.05%未満に規定する。
【0021】 Nb:0.005〜0.01%未満 Ti:0.001〜0.01%未満 Nb,TiはVと同様にマトリクス中のCと結びついて
圧延後に析出することから、頭部の内部まで析出強化に
より硬度を高くし、レールの寿命を延ばすために有効な
だけでなく、車輪の走行、スリップ時における頭部表面
の急速加熱時にCと析出物を形成しており、これが分解
しないことから結果として急速加熱された部分の固溶C
量の低減に有効であり、白色層の硬さを低くしてシェリ
ング損傷の抑制に非常に有効である。その効果はVと複
合添加とすることで著しいが、Nbで0.005%未
満、Tiで0.001%未満の添加では有効でない。ま
た、Nbで0.01%、Tiで0.01%以上添加して
もその効果は飽和してしまうだけでなく、析出物が粗大
化しやすく別の損傷原因となる可能性が生じる。従っ
て、Nb,Tiを含有させる場合には、その量はNb:
0.005〜0.01%未満、Ti:0.001〜0.
01%未満に規定され、これらの1種又は2種が添加さ
れる。
【0022】Cu:0.05〜2.0% Ni:0.05〜2.0% Mo:0.005〜0.05% Cu,Ni,Moは、いずれもマトリクスに固溶してベ
イナイト焼入性を向上せしめ、高強度化するのに有効な
元素であるが、上記範囲未満ではその効果が認められ
ず、またその範囲を超えるとマルテンサイトが生成しや
すくなりシェリング損傷の起点となる。従って、Cu、
Ni、Moを含有させる場合には、その量はCu:0.
05〜2.0%、Ni:0.05〜2.0%、Mo:
0.005〜0.05%に規定され、これらの1種又は
2種以上が添加される。
【0023】次に、本発明のレールのミクロ組織につい
て説明する。本発明ではレール頭部を均一ベイナイト組
織とする。ベイナイト組織は従来レールのパーライト組
織と比較して転位密度を増やして高強度化していること
からC量をパーライト鋼よりも低くすることが可能であ
る。また、パーライト組織では硬い炭化物(セメンタイ
ト)が層状に配向していることから摩耗し難いのに対
し、ベイナイト組織は炭化物がマトリクス中に微細な炭
化物として分散しているため、マトリクスの摩耗時に同
時に除去されることからパーライト組織と比較して摩耗
しやすいという特徴を有している。
【0024】転動疲労損傷は、レール表面近傍において
疲労層が蓄積して発生する場合、もしくは白色層と母材
の境界から亀裂が生じてこれが進展して発生する場合が
考えられるが、いずれの場合においても蓄積した疲労層
もしくは生じた白色層を、列車が通過する時のレールと
車輪の接触により摩耗させて除去することにより損傷発
生を抑制することが可能である。従って、上述したよう
にレール頭部を所定の硬さを有する均一ベイナイト組織
にして摩耗しやすくすれば、転動疲労損傷性に優れたも
のとなるのである。このように白色層を摩耗により有効
に除去するためには、普通レール(JISによる、以下
同じ)と比較して摩耗量が多いことが必要であるが、著
しく摩耗量が多いとレール頭部の減肉が著しくなり、必
要な寿命が確保できない。実際には、摩耗量が普通レー
ルの1.3〜3.0倍であれば、必要な寿命を確保しつ
つ、転動疲労損傷性に優れたものとなる。本発明の成分
組成の鋼で製造され、以下に示す範囲の硬さを有するベ
イナイト組織であれば、摩耗量が普通レールの1.3〜
3.0倍の範囲であり、減肉による寿命も問題ない。な
お、このようなベイナイト組織は、圧延後、レール素材
を空冷又は加速冷却することにより得ることができる。
【0025】なお、レールの摩耗量については実際に敷
設した場合の摩耗量で評価することが最も望ましいが、
実敷設レールの接触条件をシミュレートした西原式摩耗
試験機を用いた比較試験により評価した値も有効であ
る。
【0026】硬さについては、頭頂部・頭部コーナー部
いずれの位置においてもHvで240〜390の硬さ有
することが必要である。ベイナイト組織で、かつこの範
囲の硬さを有していれば、普通レールよりも磨耗量が多
く、転動疲労損傷性が良好である。この場合に、ベイナ
イト組織で頭頂部、頭部コーナー部を実質的に均一硬さ
とすることは、複雑な熱処理が不要であるためコスト的
に望ましい。
【0027】また、頭部コーナー部はHvで240〜3
90あれば塑性フローは従来レールと同等であり、塑性
フローを起点とする損傷は発生しない。Hvで390を
超えると摩耗量が低下するため不都合が生じること、ベ
イナイト組織でHv390以上とするには合金添加量を
増加する必要があるため、コスト的に有効でないことか
ら390以下に規定する。
【0028】次に、実験例に基づいて、上述した本発明
における各要件の限定理由の根拠について説明する。図
1は摩耗減量比に及ぼすマトリクス組織、硬さの影響を
調査した結果である。供試鋼は表1に成分範囲を示すよ
うに、C,Si,Mn,Cr,Cu,Ni,Mo,V,
Nb,Tiを種々変化させた成分で、いずれも熱間圧延
により16mmの鋼板とし、一部の鋼板はエアー冷却を
行っている。これらの鋼板から外径30mm、幅8mm
の西原式摩耗試験片を採取し、在来線のレールと車輪の
接触をシミュレートした接触荷重135kg、すべり率
−10%、無潤滑条件で摩耗試験を行い、10万回転後
の摩耗減量を測定した。評価においては、普通レールの
摩耗量を測定し、普通レールに対する供試鋼の摩耗減量
比を求めて、この値を用いている。なお、図1の組織の
欄において、Pはパーライトを示し、Bはベイナイトを
示す。
【0029】
【表1】
【0030】図1から理解できるように、マトリクス硬
さの増加に伴い摩耗減量が減少している。普通レールは
Hv240以上の硬さを有しており、この硬さでレール
頭部コーナー部のきしみ割れが重大な問題となっていな
いこと、きしみ割れはレールコーナー部の塑性変形によ
るものであり、コーナー部の強度(硬さ)のみで規定さ
れるものであることから、硬さの下限値はHv240以
上であれば問題ないことが理解できる。また、同一マト
リクス硬さにおいてはパーライト組織よりもベイナイト
組織の方が摩耗減量が大きい。このことから、普通レー
ルよりも摩耗減量を多くして耐損傷性に優れるようにす
るためには、頭部をベイナイト組織とする必要があるこ
とが理解できる。
【0031】これまでの各種検討から、摩耗による疲労
層の除去には摩耗減量比が1.3倍以上あることが必要
であると考えられている。さらにレールの計画寿命の観
点からは、摩耗減量が普通レールの3.0倍を超えると
計画寿命に達する前にレール頭部の摩耗による減肉が著
しくなり使用不可能となることから、摩耗減量比の上限
は3.0倍となる。現在使用されているパーライト組織
を有する普通レールの硬さはHv240〜260程度で
あるが、これよりも摩耗減量比が1.3〜3.0倍の値
を示すベイナイト組織の硬さはHv240〜390であ
ることが図1から理解できる。従って、本発明の目的と
するベイナイト組織の硬さがHv240〜390であれ
ば、摩耗による疲労層の除去、レール頭部の減肉による
寿命、レール頭部コーナー部のきしみ割れのいずれの観
点からも満足できるレールとなることがこの図から示さ
れる。
【0032】図2はレール頭頂部表面に生成する白色層
の硬さ、厚さに及ぼすマトリクスのC量の影響を示した
ものである。供試鋼は表2に成分範囲を示すようにC量
を変化させた成分で、熱間圧延により16mmの鋼板と
した。これらの鋼板から直径3mmの円柱試験片を採取
し、西原式転動疲労試験機のレールサンプルを取り付け
る側にこの円柱試験片をセットし、車輪試験片と瞬間的
に接触させて、強制滑りによる急速加熱、急速冷却の実
レールにおけるすべりによる白色層生成をシミュレート
して生成した白色層の硬さ、厚さを評価した。
【0033】
【表2】
【0034】図2から理解できるように、白色層の厚さ
はC量の減少により薄くなる。これはC量の低下に伴い
白色層生成における臨界冷却速度が高冷速側にシフトす
るために冷却速度の遅い内部では白色層が形成されない
ためであると考えられる。白色層の硬さはC量に大きく
依存し、C量の減少に伴い硬度が低下している。白色層
とマトリクスとに硬度差が有りすぎると摩耗による白色
層の除去の抵抗となることから、白色層の硬さはマトリ
クス硬さの1.75倍以内であることが必要と考えられ
る。図1に示したように摩耗減量比の観点からマトリク
ス硬さの上限をHv390としていることから、白色層
硬さはHv680以下とすることが必要である。従っ
て、C量の上限は0.45%となる。
【0035】図3はレール頭頂部表面に生成する白色層
の厚さに及ぼす微量添加物の影響を示したものである。
供試鋼は表3に成分範囲を示すように0.4%Cをベー
スにV,Nb,Tiを変化させた成分で、熱間圧延によ
り16mmの鋼板とした。これらの鋼板から図2の場合
と同様、直径3mmの円柱試験片を採取し、西原式転動
疲労試験機のレールサンプルを取り付ける側にこの円柱
試験片をセットし、車輪試験片と瞬間的に接触させて、
強制滑りによる急速加熱、急速冷却の実レールにおける
すべりによる白色層生成をシミュレートして生成した白
色層の厚さを評価した。
【0036】
【表3】
【0037】図3から、V,Nb,Tiを添加すること
により白色層厚さが減少することが理解される。V,N
b,Tiは炭化物を形成し、急速加熱ではこの炭化物が
分解しないため、結果として固溶C量が減少して白色層
生成における臨界冷却速度が高冷速側にシフトし、冷却
速度の遅い内部で白色層が生成しなくなることから白色
層厚さが減少するのである。図3に示すように、この効
果はVが著しく大きく、Nb,Tiは炭化物生成能は高
いが、単独添加ではそれほど大きくはない。そして、そ
の効果は、Vで0.05%以上、Nb,Tiで0.01
%以上で飽和していることが確認される。また図3中に
黒塗りのマークで示すようにV添加系をベースにNb,
Tiを添加した場合、Vを単独で添加した場合よりも白
色の厚さが低下していることが理解できる。そして、こ
の場合には白色層の硬さも低下している。従って、N
b,Tiは単独では効果小さいが、Vとの複合添加によ
り上記効果が増大することから、Vとの複合添加が望ま
しいことが理解される。
【0038】図4はレール頭部の表面から内部30mm
位置までの硬さ分布に及ぼすマトリクスの成分の影響を
示したものである。供試鋼は表4に成分範囲を示すよう
にCu,Ni,Mo,V,Nb,Tiを変化させた成分
で、熱間圧延によりレール頭部の形状にシミュレート圧
延した後、頭部中央の表面から内部30mm位置までビ
ッカース硬さを測定した。
【0039】
【表4】
【0040】図4から理解できるように内部硬さの低下
は、析出硬化元素であるV,Nb,Tiの添加により小
さくなる。また、ベイナイト焼入性を増加するCu,N
i,Moの複合添加によっても小さくなることが理解で
きる。但し、V,Nb,Tiの多量添加を行ってもレー
ル内部の硬さ低下の抑制が飽和することから、Vでは
0.05%以上、Nb,Tiの0.01%以上の添加は
必要ない。一方Cu,Ni,Moの多量の添加は表層に
マルテンサイト層を形成することから望ましくない。
【0041】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について説明
する。 (実施例1)表5の組成、ミクロ組織、硬さを有する供
試鋼について摩耗試験を行った。摩耗試験は、外径30
mm、幅8mmの試験片を供試鋼より採取し、鉄道車輪
材から同一寸法のタイヤ試験片を採取し、これらを西原
式摩耗試験機を用いて、在来線における接触状況として
報告されている接触荷重135kg、すべり率−10
%、潤滑剤無しの条件で接触させることで行った。そし
て、その際の摩耗減量と比較として行った普通レール材
の摩耗減量との比をとり、その摩耗減量比によって摩耗
性を評価した。その結果を表5に併記する。また、供試
鋼製造の際の加速冷却の有無も表5に併記した。
【0042】
【表5】
【0043】表5に示すように、本発明よりもC量が高
く、パーライト組織を示しているE−4,7,9につい
ては、E−4,9が硬さがHvで250,350と本発
明の範囲内を満たすが、摩耗減量比が1.00,0.9
5と低く、E−7は摩耗減量比が1.40と良好である
が硬さがHvで200と本発明の下限値未満であるため
実用に共し得ない。
【0044】E−1,2,3,5,6,8はベイナイト
組織を呈しているが、E−2はCrが0.65%と本発
明の範囲未満であることから、硬さがHvで230と低
く、摩耗減量比が3.58と多すぎる結果となってい
る。E−6はMnが3.05%と本発明の範囲を超えて
おり、硬さがHvで420と高く、摩耗減量比も1.2
0と十分な摩耗性とはいえない。
【0045】ベーナイト組織を有するもので、全ての成
分が本発明の範囲内であるE−1,3,5,8は、硬さ
も本発明の範囲内であり、摩耗減量も適正な値となって
いることが確認された。
【0046】(実施例2)表6の組成、ミクロ組織、硬
さを有する供試鋼について、実施例1と同様に摩耗試験
を行った。その際の摩耗減量比も表6に併記した。ま
た、供試鋼製造の際の加速冷却の有無も表6に併記し
た。なお、供試鋼は全てベイナイト組織を呈していた。
【0047】
【表6】
【0048】表6に示すように、Mn,Crの含有量が
本発明の範囲よりも低いF−1,4,7は硬さが低く、
摩耗減量比が3.0以上の高い値を示す。また、Mn,
Crの含有量が本発明の範囲よりも高いF−3,6,9
は硬さが著しく高く、摩耗減量比が1.3未満となって
いる。これに対し、Mn,Crの含有量が本発明の範囲
を満たすF−2,5,8については硬さが本発明の範囲
内であり、摩耗減量比が適正な範囲であることが確認さ
れた。
【0049】(実施例3)表7の組成、ミクロ組織、硬
さを有する供試鋼について、実施例1と同様に摩耗試験
を行った。その際の摩耗減量比も表7に併記した。ま
た、供試鋼製造の際の加速冷却の有無も表7に併記し
た。供試鋼のミクロ組織は、Hvが390を超えている
ものについては、一部ベイナイトとマルテンサイトの混
合組織となった。なお、表7のミクロ組織の欄におい
て、M+Bはマルテンサイトとベイナイトとの混合組織
を示す。
【0050】
【表7】
【0051】表7に示すように、Cu,Ni,Moの1
種または2種以上の添加量が本発明の範囲を満たしてい
るG−1,3,5,7,9,11,13は硬さがHvで
271〜335と本発明の範囲内であり、摩耗減量比が
1.43〜2.84と適正な範囲となっていた。しか
し、合金元素のうちCu添加量が本発明の範囲を超えて
いるG−2、Ni添加量が本発明の範囲を超えているG
−4,8,12,14、Mo添加量が本発明の範囲を超
えているG−6,10、Ni,Moの二種の添加量が本
発明の範囲を超えているG−14は、いずれもHv39
0以上の硬さを示し、摩耗減量比が1.3以下と小さく
なっていることが確認された。
【0052】(実施例4)表8の組成、ミクロ組織、硬
さを有する供試鋼について、実施例1と同様に摩耗試験
を行った。その際の摩耗減量比も表8に併記した。この
実施例では、摩耗減量比に加え、白色層の厚さも測定し
た。白色層厚さは、供試鋼から直径3mmの円柱試験片
を採取し、西原式転動疲労試験機のレールサンプルを取
り付ける側にこの円柱試験片をセットし、車輪試験片と
瞬間的に接触させることにより、強制滑りを発生させて
試験片を急速加熱、急速冷却し、実レールにおけるすべ
りによる白色層生成をシミュレートした試験を行い、生
成した白色層の厚さを測定している。その結果も表8に
併記した。また、供試鋼製造の際の加速冷却の有無も表
8に示した。なお、供試鋼の成分はH−1とH−2、H
−3とH−4、H−5とH−6、H−7とH−8、H−
9とH−10の間ではC,Si,Mn,Crがほぼ同一
添加量となるように調整し、V,Nb,Tiをそれぞれ
本発明の範囲内及び範囲超えの添加量となるようにして
いる。
【0053】
【表8】
【0054】表8から明らかなように、いずれも組織が
ベイナイトであり、硬さが本発明の範囲内であって、摩
耗減量比も適正値となっている。しかし、白色層の厚さ
は、V,Nb,Tiを本発明の範囲を超えて添加しても
ほとんど変化していないことから、本発明の範囲を超え
る添加はコストの増加を招くのみで有効性が認められな
いことが確認された。
【0055】(実施例5)ここでは、表9の組成を有す
る鋼を実際にレール形状に圧延し、圧延後空冷もしくは
加速冷却を行っている。そして、これら供試鋼の表面硬
さを各圧延材の頭頂面でHv10kgで測定した。ま
た、頭頂面から30mm深さの位置で内部硬さをHv1
0kgで測定した。摩耗減量比は、圧延材頭部(但し、
マルテンサイトとベイナイトの混合組織となっている供
試材についてはベイナイト単層部)から実施例1に示し
た摩耗試験用サンプルを採取し、実施例1と同様の試験
法により評価した。これらの値も表10に示す。なお、
供試鋼製造の際の加速冷却の有無については、表9に併
記した。また、表10に表層組織を示すが、その欄にお
けるM+Bはマルテンサイト+ベイナイトを示す。
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】供試鋼I−1、2はC,Si,Nb,M
n,Cr含有量をほぼ同じにしてVの影響を比較したも
のであるが、V含有量が本発明の範囲内であるI−2は
内部硬さの低下が少ないのに対し、V含有量が0.00
2%と低いI−1は内部硬さが著しく低下している。
【0059】I−3,4はVの含有量の高い領域におい
て比較したものであるが、I−4はV含有量が本発明の
範囲を超える0.105%添加されているにもかかわら
ず、内部硬度はI−3と同等であることから、多量のV
添加は有効でないことが確認された。
【0060】I−5とI−6、I−7とI−8、I−9
とI−10は、それぞれC,Si,Mn,Cr,V含有
量をほぼ同じとして、Nb,Tiの単独もしくは複合添
加の影響を比較している。Nb,Tiを本発明の範囲を
超えて添加したI−6,8,10はいずれも内部硬さの
低下の程度が本発明の範囲の鋼であるI−5,7,9と
同等であり、Nb,Tiの多量に添加してもその効果が
飽和していることが確認された。
【0061】I−11とI−12、I−13とI−1
4、I−15とI−16、I−17とI−18、I−1
9とI−20、I−21とI−22、I−23とI−2
4は、それぞれC,Si,Mn,Cr,V含有量を同程
度としてCu,Ni,Moの単独もしくは複合添加の影
響を比較している。Cu,Ni,Moを本発明の範囲を
超えて添加したI−12,14,16,18,20,2
2,24は、内部硬さの低下は本発明鋼であるI−1
1,13,15,17,19,21,23とほぼ同等で
あり有効性がなく、表層に損傷の起点となるマルテンサ
イトが生成したマルテンサイトとベイナイトの混合組織
となってしまうことが確認された。
【0062】I−25,26はMnの影響を比較したも
のであるが、Mn含有量が本発明の範囲内のI−25は
表層硬さがHv379と請求範囲を満たしており、内部
硬さの低下が少なく、摩耗減量比も1.37と適正な値
を示すのに対し、I−26はMnが高いために表層にマ
ルテンサイトが生成し、表層が著しく硬化する。
【0063】I−27,28はCの影響について比較し
たもであるが、C量が本発明の範囲内であるI−27は
表層組織、表面硬度が本発明の範囲内であり、摩耗減量
比も適正な値であるのに対し、I−28はC量が高いこ
とから表層にマルテンサイトが生成し、表層硬さが著し
く高くなっている。
【0064】I−29,30は本発明における合金元素
を全て含有した場合のNb,Tiの影響を比較してい
る。Nb,Tiを本発明に規定する量以上に添加しても
内部硬さは本発明鋼と変わらず、多量の添加では効果が
飽和する。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
頭部を特定組成の均一ベイナイト組織とし、硬さを頭頂
部・頭部コーナー部のいずれの位置においてもHvで2
40〜390のとすることにより、摩耗量を普通レール
よりも増大させたので、耐転動疲労特性に優れたレール
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩耗減量比に及ぼすマトリクス組織、硬さの影
響を示す図。
【図2】白色層の硬さ、厚さに及ぼすC量の影響を示す
図。
【図3】白色層の厚さに及ぼす微量添加物の影響を示す
図。
【図4】レール頭頂面から内部までの硬さ分布に及ぼす
成分の影響を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 38/00 301 C22C 38/24 C22C 38/50

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.15〜0.45%、
    Si:0.05〜1.0%、Mn:0.30〜2.5
    %、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:
    0.70〜3.00%、V:0.005〜0.05%未
    を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、頭部
    が均一ベイナイト組織であり、硬さが頭頂及び頭部コー
    ナー部のいずれの位置においてもHvで240〜390
    の間であることを特徴とする耐転動疲労損傷性に優れた
    レール。
  2. 【請求項2】 重量%で、Nb:0.005〜0.01
    %未満、Ti:0.001〜0.01%未満の1種又は
    2種をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載
    の耐転動疲労損傷性に優れたレール。
  3. 【請求項3】 重量%で、Cu:0.05〜2.0%、
    Ni:0.05〜2.0、Mo:0.005〜0.05
    %の1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とす
    る請求項1又は2に記載の耐転動疲労損傷性に優れたレ
    ール。
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