JP2967019B2 - 液晶空間光変調素子の駆動方法 - Google Patents

液晶空間光変調素子の駆動方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画像表示装置、画像処
理装置、光情報処理システム等に応用される液晶空間光
変調素子の駆動方法に関するものであり、特に書き込み
光感度あるいは出力光の中間調表示特性を必要に応じて
変化させることを可能にする駆動方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】液晶空間光変調素子の機能は、例えば画
像等の2次元的なパターンを書き込み光によって液晶空
間光変調素子に書き込み、読み出し光によってその書き
込まれている2次元パターンを読み出すものである。こ
れによって、画像光の増幅、しきい値処理、反転あるい
は読み出し光と書き込み光の間のインコヒーレント・コ
ヒーレント変換、波長変換等の処理を行うことができ
る。
【0003】従来の液晶空間光変調素子の駆動は、液晶
空間光変調素子に印加される電圧Vと液晶層に印加され
る電圧VLCの比VLC/Vの差が、書き込み光非照射
時と照射時との間で最も大きくなるような特定の周波数
の交流電圧で行っていた(Applied Optic
s,vol.26,p.241,1987)。
【0004】周波数を固定した交流電圧で液晶空間光変
調素子の駆動を行う場合、1〜2桁程度の範囲の書き込
み光強度の変化が液晶空間光変調素子に印加した電圧V
と液晶層に印加される電圧VLCの比を有効に変化させ
ることができ、このVLCの変化により読みだし光が変
調される。また、このときの変調特性はVLCの変化に
対する液晶層の変調特性から決定される。
【0005】対象とする書き込み光の強度範囲で、この
液晶層での中間状態の変調を効果的に行うためには、変
調が飽和する電圧と変調がはじまる電圧との比と、書き
込み光強度が最大の時のVLC/Vと書き込み光強度が
最小の時のVLC/Vとの比が接近していることが望ま
しい。この書き込み光強度が最大の時のVLC/Vと書
き込み光強度が最小の時のVLC/Vとの比は、液晶層
に対する相対的な光導電層の厚さを換えることによって
変化させることができる。
【0006】この様な理由で、書き込み光強度が最大の
時のVLC/Vと書き込み光強度が最小の時のVLC/
Vとの比をVLCの変化に対する液晶層の変調特性に合
わせる様に光導電層の厚さを設定している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の技術における液晶空間光変調素子では、以下のよう
な問題点があった。
【0008】(1)ある周波数に固定して液晶空間光変
調素子の駆動を行う場合、2桁程度の範囲の書き込み光
強度の変化がVLC/Vを有効に変化させることがで
き、このVLCの変化により読み出し光が変調される
が、その強度範囲より弱い書き込み光に対しては全く変
調が行われなく、またその強度範囲より強い書き込み光
に対しては変調は行われるが変調の差が全く生じない。
【0009】例えば、液晶空間光変調素子を、赤外光−
可視光変換を行うIRスコープなどへ応用する場合、赤
外光感度を高くするために、暗い赤外画像に対応するよ
うな駆動周波数の設定で明るい赤外画像に対応するため
には、赤外光を減衰するために可変フィルターや可変し
ぼりを組み込み必要に応じて調整する必要がある。
【0010】(2)対象とする書き込み光の強度範囲
で、この液晶層での中間状態の変調を効果的に行うため
には、書き込み光強度が最大の時のVLC/Vと書き込
み光強度が最小の時のVLC/Vとの比をVLCの変化
に対する液晶層の変調特性に合わせる様に光導電層の厚
さを設定することは出来るが、素子作製後の変更が出来
ないために対象とする書き込み光強度の比を限定してし
まう。
【0011】また、単一周波数の交流電圧で液晶空間光
変調素子の駆動を行う場合、光導電層の厚さを最適値に
設定しても、書き込み光強度に対する液晶層の変調特性
を変化させることは出来ない。そのために、出力光の中
間調を制御するには、書き込み光強度に対する液晶層の
変調特性を補正するために、書き込み光強度の補正する
かまたは液晶空間光変調素子からの出力光に補正をかけ
ることが必要になる。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、一対の電極の間に光導電体層と液晶層を持し、該
光導電体層への光照射により書き込まれた情報によって
該液晶層へ照射される光の強度、位相あるいは偏波面の
変調を行う液晶空間光変調素子の駆動方法において、一
対の電極間に印加する電圧が複数の異なる周波数を重畳
した交流電圧であり、それぞれの周波数の波高値の比率
を変化させることによって、該液晶空間光変調素子にお
ける書き込み光強度に対する出力光強度の非線形性を制
御する。
【0013】
【作用】本発明によれば、一対の電極の間に光導電体層
と液晶層を持し、該光導電体層への光照射により書き
込まれた情報によって該液晶層へ照射される光の強度、
位相あるいは偏波面の変調を行う液晶空間光変調素子の
駆動方法において、一対の電極間に印加する電圧が複数
の異なる周波数を重畳した交流電圧であり、それぞれの
周波数の波高値の比率を変化させることによって、該液
晶空間光変調素子における書き込み光強度に対する出力
光強度の非線形性を制御することが出来、中間調特性を
変化させることが出来る。
【0014】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説
明する。
【0015】まず、本発明の駆動方法を適用した液晶空
間光変調素子の構成の一例を図1に示す。図1は、液晶
空間光変調素子の構造を示す断面図である。図1におい
て、液晶空間光変調素子9は対向して配置された2枚の
ガラス基板1a及び1b、該ガラス基板1a及び1b上
に夫々形成されたITO等の透明電極2a及び2b、透
明電極2a上に形成された光導電膜である水素化アモル
ファスシリコン(a−Si:H)膜4、該光導電膜4上
に形成された誘電体ミラー10、該誘電体ミラー10及
び透明電極2b上に夫々形成されたネマティック液晶を
配向させるための液晶配向膜3a及び3b、これらの間
に挟持されたネマティック液晶層5、及び液晶層5の層
厚を一定に保つためのスペーサー6から構成される。
尚、7は書き込み光、8は読み出し光である。
【0016】ネマティック液晶5はE44(メルク)を
用いホモジニアス配向とし、反射読み出し光のフィルタ
ーとして直交偏光子または偏光ビームスプリッタを液晶
の分子軸が、偏光子の偏光方向及び検光子の偏光方向の
夫々に対して45度傾くように配置し、書き込み光源と
読み出し光源には波長633nmのHeNeレーザーを
用いた。また、液晶層の厚さは、液晶層に印可される電
圧がしきい値以下のとき、検光子を透過する光量を0
(暗状態)とすべく、液晶の配向方向での偏光成分と、
それに直交する方向の偏光成分との位相差がπの偶数倍
になるように設定する。本実施例では、波長633nm
の読み出し光を用いているので、液晶層厚を2.5μm
とし、位相差を4πとしている。
【0017】上記構成にてなる液晶空間光変調素子にお
いて、予め、透明電極1aと透明電極1bに交流電圧を
印加しておくと、書き込み光7が照射された部分では、
光導電膜10の比抵抗が低下し、これに応じてネマティ
ック液晶層5への印加電圧が増大する。これが液晶のし
きい値を越えた時、ガラス基板1b及び誘電体ミラー層
10の面に沿って配向していた液晶が印加電圧方向に向
く。この結果、書き込み光7が照射された部分では、読
み出し光8aが位相変調を受け、反射読み出し光8bの
前述の位相差が小さくなっていき、この位相差がπの奇
数倍になったとき、検光子の透過光量が最大となる。
【0018】一方、書き込み光7が照射されない部分で
は、液晶がガラス基板1b及び誘電体ミラー層10の面
に沿って配向しているため、読み出し光8aは位相変調
を受けることなく、反射読み出し光8bとなる。従っ
て、反射読み出し光は検光子を透過できない。すなわ
ち、検光子を通して読み出せば、書き込みパターンに応
じたパターンを読み出すことができる。
【0019】透明電極2a及び2bに印加する周波数を
100Hz、1kHz、10kHzとしたときのそれぞ
れの書き込み光強度の変化に対する出力光強度の変化を
図2に示す。図2(a)〜図2(c)は夫々、印加周波
数100Hz、1kHz、10kHzの場合を夫々示
す。図2が示すように、印可する周波数を上げるに従っ
て出力光強度が立ち上がる書き込み光強度が大きくなっ
ている。このことより、印加する周波数を対象とする書
き込み光の強度範囲に対応させるために必要に応じて変
化させて液晶空間光変調素子を駆動することにより、可
変フィルターや可変しぼりを用いなくても広い強度範囲
の書き込み光に対して液晶層の変調の中間状態を制御す
ることが出来ることがわかる。
【0020】液晶層の変調特性は、液晶の配向変化にし
きい値特性があることにより、図3で示される変調特性
を持っている。ここで3〜4V間の出力光強度の最大値
のときは、前記した位相差が3πのときに対応し、4〜
5V間の最小値のときは、この位相差が2πのときに対
応する。対象とする強度範囲の書き込み光で、この液晶
層での中間状態の変調を効果的に行うためには、変調が
飽和する電圧と変調がはじまる電圧との比と、書き込み
光強度が最大の時のVLC/Vと書き込み光強度が最小
の時のVLC/Vとの比が接近していることが望まし
い。この書き込み光強度が最大の時のVLC/Vと書き
込み光強度が最小の時のVLC/Vとの比は、液晶層と
ミラー層に対する相対的な光導電層の厚さを変えること
によって変化させることができ、本実施例では液晶層の
厚さを2.5μm、ミラー層の厚さを0.4μm、光導
電層の厚さを4.5μmとした。
【0021】透明電極2a及び2bに100Hzと1k
Hzあるいは100Hzと1kHzと10kHzの周波
数を重畳した交流電圧を印加したとき、書き込み光強度
の変化に対して出力光強度は図4で示すように変化す
る。図4(a)が100Hzと1kHzの周波数を重畳
した交流電圧を印加した場合を、図4(b)が100H
zと1kHzと10kHzの周波数を重畳した交流電圧
を印加した場合を夫々示す。図4が示すように、複数の
異なる周波数を重畳した交流電圧を印加することで、出
力光強度の変化を起こす書き込み光の強度比が大きくな
ったことがわかる。出力光強度の変化が起こす書き込み
光の強度比は、重畳して印加する周波数を選択すること
によって任意に広げることが出来る。
【0022】また、図5は100Hz、1kHz及び1
0kHzの印加電圧の波高値を等しくしたときと波高値
の比を1:2:4にしたときの書き込み光強度変化によ
る出力光の強度変化を示す。図5(a)が波高値を等し
くした場合、図5(b)が波高値の比を1:2:4にし
た場合を夫々示す。図5が示す様に、重畳して印加する
交流電圧のそれぞれの波高値の比率を変化させると、液
晶層の変調特性を変化させることが出来る。この様に、
重畳して印加する交流電圧のそれぞれの波高値の比率を
変化させることにより、書き込み光強度に対する液晶層
の変調特性を変化させることが可能になる。
【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、一対の
電極の間に光導電体層と液晶層を持し、該光導電体層
への光照射により書き込まれた情報によって該液晶層へ
照射される光の強度、位相あるいは偏波面の変調を行う
液晶空間光変調素子の駆動方法において、一対の電極間
に印加する電圧が複数の異なる周波数を重畳した交流電
圧であり、それぞれの周波数の波高値の比率を変化させ
ることによって、該液晶空間光変調素子における書き込
み光強度に対する出力光強度の非線形性を制御すること
が出来、中間調の再現性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される液晶空間光変調素子の構造
を示す断面図である。
【図2】駆動周波数を変えたときの書き込み光強度に対
する出力光強度の変化を示すグラフである。
【図3】液晶の変調特性を示すグラフである。
【図4】周波数を重畳して印加したときの書き込み光強
度に対する出力光強度の変化を示すグラフである。
【図5】それぞれ異なる電圧の波高値の周波数の重畳し
て印加したときの書き込み光強度に対する出力光強度の
変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1a、1b ガラス基板 2a、2b 透明電極 3a、3b 液晶配向膜 4 水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜 5 ネマティック液晶層 6 スペーサ 7 書き込み光 8a、8b 読み出し光 9 液晶空間光変調素子 10 誘電体ミラー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G02F 1/135 G02F 1/135 505

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の電極の間に光導電体層と液晶層を
    挟持し、該光導電体層への光照射により書き込まれた情
    報によって該液晶層へ照射される光の強度、位相あるい
    は偏波面の変調を行う液晶空間光変調素子の駆動方法に
    おいて、前記一対の電極間に印加する電圧が複数の異な
    る周波数を重畳した交流電圧であり、それぞれの周波数
    の波高値の比率を変化させることによって、該液晶空間
    光変調素子における書き込み光強度に対する出力光強度
    の非線形性を制御することを特徴とする液晶空間光変調
    素子の駆動方法。
  2. 【請求項2】 前記周波数が可変であることを特徴とす
    る請求項1に記載の液晶空間光変調素子の駆動方法。
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