JP2965628B2 - 磁性体を構成要素とするセンサの製造方法 - Google Patents

磁性体を構成要素とするセンサの製造方法

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JP2965628B2
JP2965628B2 JP2168401A JP16840190A JP2965628B2 JP 2965628 B2 JP2965628 B2 JP 2965628B2 JP 2168401 A JP2168401 A JP 2168401A JP 16840190 A JP16840190 A JP 16840190A JP 2965628 B2 JP2965628 B2 JP 2965628B2
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【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は磁性体に磁気異方性を導入する方法に関す
る。具体的には、各種センサなどの構成要素として用い
られる磁性体に磁気異方性を導入する方法に関する。
(従来の技術) 近年、磁気異方性が導入された磁性体を構成要素とす
る各種センサ(例えばトルクセンサ、歪みセンサ、電流
センサ)が開発されている。これらのセンサでは、測定
すべき外部エネルギー(例えば軸に加えられるトルク、
平板に加えられる歪み、導体を流れる電流)の変化を、
磁気異方性が導入された磁性体の磁化容易軸の方向にお
ける磁気特性(例えば透磁率)の変化に変換し、この磁
気特性の変化を検出することにより、各種外部エネルギ
ーの大きさを検出している。
これらのセンサを構成する磁性体には、予め一軸磁気
異方性を導入しておく必要がある。従来、磁性体に一軸
磁気異方性を導入するには、以下のような方法が用いら
れているが、これらの方法にはいずれも問題がある。こ
こではトルクセンサを構成する軸の表面の磁性体に一軸
磁気異方性を導入する場合について説明するが、他のセ
ンサを構成する磁性体に一軸磁気異方性を導入する場合
にも、同様な方法が用いられる。
軸の径に合わせて非晶質磁性合金からなる環状の磁性
体を作製し、熱処理して内部応力を除去した後、軸にね
じりを与えた状態でこれを接着し、軸のねじりを戻す方
法。しかし、この方法では、予め軸の径に合わせて環状
の磁性体を作製する必要がある、軸にねじりを与える必
要がある、など工程の煩雑化を招くという問題がある。
磁性体に、磁界中熱処理・冷却を施すことにより、一
軸磁気異方性を導入する方法。しかし、この方法では、
非常に手間がかかり量産性に欠ける上、長尺の磁性体
は、熱処理をすることが困難であるため、磁性体の寸法
及び形状が制限される。また、非晶質合金薄帯では、そ
の全体が熱処理を受けると、脆くなるという問題があ
る。
熱間静水圧圧縮法(HIP)により、軸に非晶質合金を
接合し、結晶化した後、この合金の一部にレーザパルス
を照射して縞状に非晶質化する方法(特開昭63−280476
号公報)。この方法では、磁性体は結晶質相と非晶質相
とが交互に縞状に配列された構造となるため、磁気異方
性を導入することができる。また、この方法では、磁性
体の接合耐久性が良好となる。しかし、この方法では、
必ずしも充分な磁気異方性を導入することができないと
いう問題がある。
(発明が解決しようとする課題) 以上のように、磁気異方性が導入された磁性体を構成
要素とする各種センサなどの実用化にあたっては、磁性
体への磁気異方性の導入に対する対策が非常に重要であ
る。
本発明の目的は、磁性体に充分な磁気異方性を容易か
つ確実に導入することができる方法を提供することにあ
る。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明の磁性体を構成要素とするセンサの製造方法
は、磁性体を構成要素とするセンサを製造するにあた
り、前記磁性体の表面を選択的に局所加熱し、前記磁性
体の主相を磁気的に複数の領域に分割する境界相のパタ
ーンを形成し、前記分割された主相領域に磁気異方性を
生じさせることを特徴とする。
以下、本発明に更に詳細に説明する。
本発明において、磁気異方性が導入される磁性体は、
例えば各種センサの構成要素として用いられる。例え
ば、トルクセンサの場合、軸自体が磁性体でもよいし、
トルクセンサの軸の表面に、磁性体の薄帯を接着した
り、磁性体の薄膜を形成してもよい。軸の表面に磁性体
の薄膜を形成する方法としては、スパッタ法などの気
相成長法、めっき法、溶射法、溶接法による方法;軸
の表面に磁性体粉末を供給しながら、レーザービームを
照射する方法;熱間静水圧圧縮法(HIP)による方
法;が挙げられる。磁性体は、非晶質又は結晶質合金、
酸化物磁性体などの化合物磁性体のいずれでもよい。前
記の方法において、軟磁気特性を示す磁性体が得られる
ように、製造に関するパラメータ(例えばスパッタ法に
おけるAr圧など)を最適に選択することが好ましい。ま
た、結晶質磁性体を形成した後には、歪み取り熱処理を
施すことが好ましい。
非晶質合金の組成は特に限定されるものではない。磁
歪の大きい非晶質合金としては、式(I)で表される組
成を有するものが望ましい。
(Fe1-a-bMaM′ZSiXBY (I) (ただし、M:Co又はNiの少なくとも1種、M′:Ti、Z
r、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Ru、Rh、I
r、Pb、Pt、Ag、Au、Cu、Zn、A、Ga、In、Ge、Sn、P
d、Sb、Bi、Y、希土類金属のうちから選択される少な
くとも1種、 M=Niの場合、0.1≦a≦0.4、 M=Coの場合、0.2≦a≦0.99、 0≦b≦0.15、0≦X≦20、4≦Y≦35、X+Y+Z
=100) このようなFe系の非晶質合金に対しては、従来の磁界
中熱処理では、誘導磁気異方性の導入が困難であった。
一方、本発明の方法では、式(I)で表わせれる広い組
成範囲のFe系の非晶質合金にも充分な磁気異方性を導入
できる。特に、スパッタ法などの方法で非晶質磁性体を
形成する場合には、組成範囲を広くとることができる。
ただし、急冷ロール法によって薄帯状の非晶質磁性体を
製造する場合には、非晶質形成能によって制限されるた
め、若干組成範囲が限定される。
式(I)において、Mは大きな誘導磁気異方性Ku0
得るための必須成分であり、Co又はNiの少なくとも1種
が用いられる。従来の磁界中熱処理では、Mの含有量が
ある範囲を逸脱すると、大きな誘導磁気異方性が得られ
ない。一方、本発明の方法では、前記のように広い範囲
でMを含有することができる。
式(I)において、Bは合金の非晶質化のために必須
の元素である。Bの含有量を示すYは、4以上であるこ
とが必要である。Siは結晶化温度を上昇させる作用を有
する元素である。Siの含量を示すXが20を超えると、飽
和磁化が小さくなり、良好な磁気特性を得ることが困難
になる。なお、BとSiとの合計量が多すぎると磁気特性
を損なうので、X+Yは35を超えないことが好ましい。
式(I)において、M′は非晶質磁性体の結晶化温度
を高くし、熱安定性を向上させ、熱膨張係数の大きさを
調整し、耐食性を改善する作用を有する元素である。
M′としては、前述した各種元素のうちから選択される
少なくとも1種が用いられる。
式(I)で表わされる金属−半金属系の非晶質合金の
ほかにも、式(II)で表わされる金属−金属系の非晶質
合金を用いることもできる。
Co100−α−βM″αβ (II) (ただし、M″はNb、Ti、Hf、Zr、Yから選択される少
なくとも1種、 MはFe、Co、Ni、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、R
h、Ir、Pb、Pt、Ag、Au、Cu、Zn、A、Ga、In、Ge、S
n、Pb、Bi、希土類金属のうちから選択される少なくと
も1種、 2≦α≦25、0≦β≦30) 式(II)で表わされる非晶質合金ではCoが必須の元素
である。Coの一部と置換されるM″は非晶質金属化に必
須の元素である。αが2未満では非晶質金属が得られな
い。αが25を超えると非晶質金属が得られなくなるう
え、飽和磁化(MS)が大幅に低下してセンサの用途には
不適当である。
式(II)において、MはM″による非晶質金属化の
作用を促進し、かつセンサとして必要な磁歪値の制御を
容易にする作用を有する元素である。ただし、Mを含
まないCo−M″系の非晶質合金でもよい。βが30を超え
るとセンサとして必要な磁歪値が得られなくなるうえ、
非晶質化が困難になる。
結晶質磁性体としては、パーマロイなどが挙げられ
る。酸化物磁性体としてはフェライトなどが挙げられ
る。
本発明の方法をトルクセンサの製造に応用する場合;
軸に磁性体薄帯を接着したり磁性体薄膜を形成した後、
これらに磁気異方性を導入してもよいし;薄帯状の磁性
体予め磁気異方性を導入した後、これを軸に接着しても
よい。
本発明において、磁性体に磁気異方性を導入するため
に、その表面を局所加熱する手段は、加熱可能なエネル
ギービームであれば特に限定されない。例えば、YAGレ
ーザやCO2レーザなどのレーザビーム、イオンビーム、
電子線ビーム、赤外線ビームなどが挙げられる。エネル
ギービームが照射された領域では、磁性体を構成する主
相の構造が変化し、主相とは磁気特性の異なる境界相が
形成される。例えば非晶質の主相が構造緩和されて、主
相とは磁気特性の異なる非晶質又は結晶質の境界相が形
成される。また、部分的なアニール又は溶融に起因して
内部応力が残留し、主相に応力誘起磁気異方性が導入さ
れることも考えられる。磁性体を構成する主相及び境界
相の組み合わせは;主相−非晶質相、境界相−非晶質
相;主相−非晶質相、境界相−結晶質相;主相−結晶質
相、境界相−結晶質相;のいずれでもよい。主相と境界
相との磁気特性、例えば保磁力の違いは、5%以上であ
ることが好ましい。
磁性体にエネルギービームを照射する際には、エネル
ギービームのスポットを連続的に走査してもよいし、非
連続的に走査してもよい。それに応じて、境界相の形状
は、線状又は点状になる。また、エネルギービームのス
ポットは、所定の方向に沿って、間隔(ピッチ)を隔て
て走査する。操作の容易さ、及び充分な磁気異方性を導
入できることを考慮すると、線状の境界相のストライプ
パターンを形成することが好ましい。
このような操作により、例えば磁性体の主相の磁区制
御がなされ、所定方向に沿って一軸磁気異方性を導入す
ることができる。このように主相の磁気特性を制御する
ためには、磁性体中で境界相を占める面積の割合は50%
未満、更に30%以下であることが好ましい。なお、磁性
体に導入される一軸磁気異方性の方向は、エネルギービ
ームのスポット径(境界相の幅)、走査ピッチ(隣接す
る境界相間の間隔)などに応じて、エネルギービームの
走査方向の場合もあれば、それに対する垂直方向の場合
もあるなど、種々変更ができる。また、一軸磁気異方性
を生じさせる方向は、例えばセンサとして使用する場合
の主応力方向が好ましいが、特に限定されない。また、
例えばエネルギービームの走査速度によっても、境界相
の構造が変化し、それに伴って境界相の磁気特性も変化
する。したがって、スポット径に応じて走査ピッチを変
更させるなど、エネルギービームの照射条件を適当に設
定することが好ましい。具体的には、エネルギービーム
のスポット径(境界相の幅)は1μm〜1mmであること
が好ましく、エネルギービームの走査ピッチ(隣接する
境界相間の間隔)は50μm〜10mmであることが好まし
い。更に、境界相の幅は100μm以下、隣接する境界相
間の間隔は200μm以上であることが好ましい。ただ
し、間隔があきすぎると、境界相による分割効果が表わ
れにくくなるので、2mm以下であることが好ましい。
前述した特開昭63−280476号公報に開示された方法で
は、レーザビームが照射された領域(非晶質相)によっ
て磁性体の磁気特性が支配され、レーザビームの走査方
向に磁気異方性が付与される。これに対して、本発明の
方法では、磁性体を局所加熱して境界相のパターンを形
成すると、未加熱部分である主相が磁性体の磁気特性を
支配し、条件によっては走査方向及びその垂直方向のい
ずれにも磁気異方性が導入できる。そのメカニズムとし
ては、前述したように磁区再配列、応力誘起磁気異方性
などが考えられる。このように、両者の方法では、磁気
異方性が導入されるメカニズムが異なっている。また、
本発明の方法では連続的な処理ができるため、従来の磁
界中熱処理のように処理装置の大きさによって磁性体の
寸法が制限されることもない。
本発明においては、磁性体にエネルギービームを照射
する際に;磁性体に磁場を印加する;磁性体に応力を印
加する;磁性体に磁場及び応力を印加するという方法を
組み合わせてもよい。応力の大きさは、磁性体の破壊強
度にもよるが、0.1〜150kg/mm2の範囲が好ましい。これ
らの方法を併用すれば、エネルギービームの照射による
誘導磁気異方性、磁場による誘導磁気異方性、応力によ
る応力誘起磁気異方性を組み合わせることができ、複雑
な磁気異方性でも容易に導入することができる。
また、本発明においては、磁性体の化合物が生成する
雰囲気中で、磁性体にエネルギービームを照射してもよ
い。その雰囲気としては、酸化性雰囲気、窒素雰囲気が
挙げられる。また、酸化物磁性体に対しては、還元性雰
囲気を用いることもできる。酸化性雰囲気は、大気でも
よいが、酸化の目的からO2が50%以上であることが好ま
しい。窒素雰囲気は、大気でもよいが、窒化の目的か
ら、N2が90%以上であることが好ましく、また高圧をか
けることが好ましい。ただし、工程を単純化するため
に、特に高圧を加えなくても支障はない。還元性雰囲気
としては、水素雰囲気などが挙げられる。
酸化性雰囲気を用いた場合には、エネルギービームが
照射された領域では、高温酸化が進み、主相から組成及
び構造が変化し、主相とは磁気特性の異なる、酸化物相
を含む境界相が形成される。
窒素雰囲気を用いた場合には、エネルギービームが照
射された領域では、高温で窒化が急速に進行し、主相か
ら組成及び構造が変化し、主相とは磁気特性の異なる、
窒化物相を含む境界相が形成される。
酸化物磁性体に対して還元性雰囲気を用いた場合に
は、エネルギービームが照射された領域では、酸化物の
還元が進み、主相から組成及び構造が変化し、主相とは
磁気特性の異なる、還元相を含む境界相が形成される。
以上のようにして一軸磁気異方性が導入された磁性体
は、トルクセンサ、歪みセンサ、電流センサなどのセン
サや、磁気コアなどに応用される。
例えば、トルクセンサの原理について、第3図を参照
して説明する。第3図において、軸11の表面には磁性体
12が固定されている。この磁性体12には、予め軸11の周
方向に対して角度θ(≠0)の方向を磁化容易軸とする
一軸磁気異方性Ku0が付与されている。また、この磁性
体12に近接して、例えば励磁コイル及び検出コイルが配
置され、この検出コイルは検出回路に接続されている
(図示せず)。
このような構成のトルクセンサを用い、以下のように
してトルクを検出することができる。ここで、説明を簡
単にするために、θ=45゜、飽和磁歪定数λ>0とす
る。いま、軸11に破線矢印で示すトルクTが加わると、
軸11に発生した表面歪み応力σが磁性体12に伝達され、
磁性体12には軸11の周方向に対して+45゜の方向に張力
σが、−45゜の方向に圧縮応力−σがそれぞれ発生す
る。これに伴って、磁性体12には磁気歪み効果によっ
て、+45゜の方向に応力誘起磁気異方性Kus(Kus=3λ
・σ)が誘導される。この結果、Ku0とKusとが合成さ
れて一軸磁気異方性はKuxに変化する。この場合、磁性
体12の内部を通過する磁束の向きが一定であれば、一軸
磁気異方性が変化することにより、磁性体12における磁
束貫通方向の透磁率が変化する。したがって、この透磁
率変化を、検出コイル及びこれに接続された検出回路に
より測定することができ、その値から軸11に加えられた
トルクTを求めることができる。
このようなトルクセンサにより、正転時及び逆転時の
トルクを直接性よく検出するためには、軸11の周方向に
対してそれぞれ+θ及び−θ(0゜、90゜、180゜、270
゜を除く)の方向に予め一軸磁気異方性Ku0を付与した
1対の磁性体と、これらの磁性体の磁気特性変化を検出
するための差動結合された1対の検出コイル又は検出ヘ
ッドを用いてトルクセンサを構成する必要がある。
同様に、他のセンサでも、目的とする外部エネルギー
を検出するために、磁性体の磁気異方性が利用される。
(実施例) 以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。以
下の実施例では、主に、トルクセンサに使用される磁性
体に磁気異方性を導入する場合について説明する。
実施例1 軸の表面に形成された磁性体を局所加熱して磁気異方
性を導入する方法について説明する。
RFマグネトロンスパッタ装置に、特殊形状のターゲッ
トをセットし、強磁性体(S45C)からなる直径20mmの軸
の表面の2個所に、 (Fe0.2Co0.878Si8B14 なる組成を有する、幅10mm、厚さ15μmの非晶質合金薄
膜からなる1対の磁性体を形成する。
第1図の装置を用いて、これらの磁性体に磁気異方性
を導入する。軸11を回転させかつ長さ方向へ移動させな
がら、レーザ51から放射されるレーザビーム52を、ミラ
ー53で反射させ、レンズ54で集束させて軸11の表面の磁
性体12a、12bに照射する。この場合、レーザビームのス
ポット径を100μmとし、3m/minの走査速度で連続的に
照射する。レーザビームの走査方向は、軸11の周方向に
対して、磁性体12aでは+45゜、磁性体12bでは−45゜の
方向とし、前述した操作を1mmピッチで繰返す。この結
果、レーザビームが照射された領域では構造緩和が起こ
り、非晶質の主相13とは異なる磁気特性を有する、非晶
質の境界相16が形成され、これらの境界相14がストライ
プ状に配列された構造となる。
このように、磁気特性の異なる2種の非晶質相、すな
わち主相13及び境界相14を有する磁性体の表面の磁区の
モデルを第2図に示す。第2図に示されるように、磁区
のパターンははしご状又はステップラダー状であり、レ
ーザビーム照射方向に対応して磁区制御がなされてい
る。そして、レーザビーム照射方向が磁化容易軸方向と
なり、軸11の周方向に対して、磁性体12aでは+45゜の
方向に一軸磁気異方性▲K1 u0▼が、磁性体12bでは−45
゜の方向に一軸磁気異方性▲K2 u0▼が導入される。
なお、磁性体に磁気異方性が導入される方向は、レー
ザビームのスポット径、走査速度、照射ピッチなどによ
って異なる。例えばYAGレーザを用い、スポット径50μ
mのレーザビームを10m/minで走査させる操作を0.5mmピ
ッチで繰り返して施すと、レーザビームの走査方向と直
交する方向に磁気異方性が導入される。すなわち、磁性
体12aでは−45゜の方向に、磁性体12bでは+45゜の方向
に一軸磁気異方性が導入される。
この例において作製されたトルクセンサの構成を、第
4図に示す。磁気異方性が導入された1対の磁性体12
a、12bが形成された軸11の外周に、磁性体12a、12bに非
接触の状態で、円筒状の検出コイル15a、15bが設けられ
ている。また、検出コイル15a、15bの外周には円筒状の
励磁コイル16が設けられている。これら検出コイル15
a、15b及び励磁コイル16は、非磁性体からなる巻枠に0.
3mm径の銅線を、検出コイル15a、15bの場合100回、励磁
コイル16の場合300回巻回したものである。
第5図は、このトルクセンサの回路構成を示すブロッ
ク図である。発振器21にて100kHzの正弦波励磁電流を発
生させ、増幅器22にて増幅し、励磁コイル16に印加する
と、磁性体12a、12bには交番磁界が加わる。軸11にトル
クが加わると、前述した原理に従って、磁束貫通方向に
沿う磁性体12a、12bの透磁率が変化する。この変化に対
応して、検出コイル15a、15bにより信号が検出される。
これらの信号は、差動増幅器23、24、25により増幅さ
れ、同期検波器26にて整流される。このようにして、ト
ルク変化に応じて変化する直流の電圧出力が得られる。
このトルクセンサにより、トルクを検出した結果を第
6図に示す。第6図から明らかなように、このトルクセ
ンサの出力は、広いトルク範囲にわたって良好な直線性
を示す。
第7図に、境界相のパターンを形成する際のレーザビ
ーム走査速度と、センサ感度との関係を示す。第7図か
ら明らかなように、良好なセンサ感度を得るために、最
適なレーザビーム走査速度が存在する。
このことは、レーザビーム走査速度に応じて、境界相
の非晶質構造が変化し、それに伴って磁性体の磁気特性
が変化することによると考えられる。通常のX線回折に
より、40kV、20mA、Cu線源という条件で磁性体の結晶構
造を調べた結果、以下のことが判明している。第7図の
左端の場合にはレーザビームが照射された境界相領域は
結晶化している。一方、最適なレーザビーム走査速度を
含む、その他の走査速度の範囲においては、境界相は結
晶化されず、磁性体全体が非晶質であることが認められ
る。つまり、レーザビーム走査速度が小さい場合、局所
加熱の影響が大きく、レーザビーム照射領域は結晶化さ
れる。一方、良好な感度が得られる、最適な走査速度範
囲の場合、走査速度が大きいため、局所加熱されてもそ
の領域は構造緩和される程度で、結晶質相は生成しな
い。しかし、主相と、レーザビーム照射により構造緩和
された境界相とは、両者とも非晶質ではあるが、互いに
磁気特性が異なっている。
ただし、レーザビーム走査速度を第7図に示す広い範
囲で変化させても、直線性の良いトルク検出特性が得ら
れる。例えば、YAGレーザを用い、スポット径100μmの
レーザビームを1m/minで走査させる操作を1mmピッチで
繰り返して施す(第7図の左端の条件)。この場合、前
述したように、レーザビームが照射された領域は結晶化
し、非晶質の主相とは異なる磁気特性を有する、結晶質
の境界相が形成され、これらの境界相がストライプ状に
配列された構造となる。このように、主相が非晶質、境
界相が結晶質の場合でも、直線性の良いトルク検出特性
が得られる。
なお、レーザビーム走査速度は、レーザビームのパワ
ー、照射領域の熱容量及び熱伝導性などに大きく依存す
るので、これらの条件に応じて、良好なセンサ感度が得
られるような最適のレーザビーム走査速度を決定するこ
とが好ましい。また、レーザビームを照射するピッチは
50μm〜10mmであることが好ましい。ピッチが50μm未
満では第2図に示したような磁区パターンを得ることが
できない。ピッチが10mmを超えると充分な磁気異方性を
導入することができない。このため、いずれの場合も、
良好なトルクセンサが得られない。境界相領域の幅は1
μm〜0.2mmであることが好ましい。また、境界相領域
は必ずしも線状である必要はなく、磁気異方性が生じさ
えすれば、点状でもよい。
更に、式(I)で表わされる各種組成の非晶質合金
に、前記と同様にしてレーザビームを照射することによ
り、非晶質の境界相をストライプ状に形成して磁気異方
性を導入する。そして、第4図と同様なトルクセンサを
作製する。これらのトルクセンサの感度を測定した結果
を第1表に示す。
また、Co80Zr15Fe5なる組成を有する非晶質合金に、
走査速度を6m/minとした以外は、前記と同様にしてレー
ザビームを照射することにより、非晶質の境界相をスト
ライブ状に形成して磁気異方性を導入する。そして、第
4図と同様なトルクセンサを作製する。このトルクセン
サにより、トルクを検出した結果を第8図に示す。この
トルクセンサについて、レーザビーム走査速度と、感度
との関係を第9図に示す。これらの結果から、前記と同
様に優れたトルクセンサが得られることがわかる。更
に、式(II)で表わされる各種組成の非晶質合金に、前
記と同様にしてレーザビームを照射することにより、非
晶質の境界相をストライプ状に形成して磁気異方性を導
入する。そして、第4図と同様なトルクセンサを作製す
る。これらのトルクセンサの感度を測定した結果を第2
表に示す。
以上の例では、磁性体の主相が非晶質、境界相が非晶
質又は結晶質の場合について説明した。しかし、磁性体
の主相が結晶質、境界相が結晶質でもよい。以下、この
ような例について説明する。めっきにより、強磁性体
(S45C)からなる直径20mmの軸の表面の2個所に、Fe50
Ni50なる組成を有する、幅10mm、厚さ15μmの結晶質合
金(いわゆるパーマロイ)の薄膜からなる1対の磁性体
を形成する。前記と同様に、YAGレーザを用い、スポッ
ト径100μmのレーザビームを1m/minで走査させる操作
を1mmピッチで繰り返して施す。この結果、結晶質の主
相13とは異なる磁気特性を有する、結晶質の境界相14が
形成され、これらの境界相14がストライプ状に配列され
た構造となる。主相は安定状態の結晶質相であり、境界
相は準安定状態の結晶質相である。そして、レーザビー
ム照射方向が磁化容易軸方向となり、軸11の周方向に対
して、磁性体12aでは+45゜の方向に一軸磁気異方性▲
1 u0▼が、磁性体12bでは−45゜の方向に一軸磁気異方
性▲K2 u0▼が導入される。
第4図と同様なトルクセンサを作製し、トルクを検出
した結果を第10図に示す。第10図から明らかなように、
このトルクセンサの出力は、広いトルク範囲にわたって
良好な直線性を示す。磁性体中の結晶質の境界相の割合
と、センサ感度との関係を調べた結果を第11図に示す。
第11図に示されるように、結晶質の境界相の割合が0又
は1付近では感度が悪く、良好な感度を得るために最適
な割合が存在する。磁性体中の結晶質の境界相の割合
は、レーザビームの走査ピッチなどを変化させることに
より、変化させることができる。
また、結晶質の磁性体からなる軸自体に、レーザビー
ムを照射することにより、結晶質の境界相を形成しても
よい。以下、このような例について説明する。前記と同
様に、強磁性体(S45C)からなる直径20mmの軸11の表面
に、YAGレーザを用い、スポット径100μmのレーザビー
ムを1m/minで走査させる操作を1mmピッチで繰り返して
施す。この結果、軸11自体を構成する結晶質の主相13と
は異なる磁気特性を有する、結晶質の境界相14が形成さ
れ、これらの境界相14がストライプ状に配列された構造
となる。主相は安定状態の結晶質相であり、境界相は準
安定状態の結晶質相である。そして、第12図に示すよう
に、レーザビーム照射方向が磁化容易軸方向となり、軸
11の周方向に対して、12aの領域では+45゜の方向に一
軸磁気異方性▲K1 u0▼が、12bの領域では−45゜の方向
に一軸磁気異方性▲K2 u0▼が導入される。
第12図に示すトルクセンサを作製し、トルクを検出し
た結果を第13図に示す。第13図から明らかなように、こ
のトルクセンサの出力はそれほど大きくないが、広いト
ルク範囲にわたって良好な直線性を示す。
実施例2 薄帯状の磁性体を局所加熱して磁気異方性を導入する
方法について説明する。急冷ロール法により、 (Fe0.8Co0.278Si8B14 なる組成を有する磁歪定数10-5程度の非晶質合金薄帯を
作製する。
この磁性体に、第14図に示す装置を用い、磁気異方性
を導入する。第14図において、テーブル101上にはガイ
ドベース102が載せられている。薄帯状の磁性体12は,
供給ロールから巻取ロール(いずれも図せず)により巻
き取られ、ガイドベース102上を移動する。テーブル101
上には支柱103が取り付けられ、この支柱103にボールネ
ジ104が回転自在に取り付けられ、ガイドレール105が固
定されている。ボールネジ104には光学系106が連結さ
れ、この光学系106はガイドレール105に沿って移動す
る。光学系106の内部にはミラー107及びレンズ108が設
けられている。磁性体12の移動はセンサ109を介して移
動検出器110によって検出される。光学系106の移動は、
ボールネジ104を回転させるサーボモータ111をサーボモ
ータコントローラ112で制御することにより制御され
る。YAGレーザ113から放射されるレーザビーム114は、
ミラー107で反射され、レンズ108で集束されて磁性体12
に照射される。この際、磁性体12の酸化劣化を防止する
ために、光学系106内にはガス供給系115からArガスが導
入される。以上の各部材は操作盤117での設定に従い、
コントローラ116により制御される。なお、図中の55は
後述する実施例4で用いられる電磁石であるが、この例
では使用されない。
この場合、磁性体12上でレーザビームのスポット径を
100μmとし、3m/minの走査速度で連続的に走査する操
作を、所定方向に沿って1mmピッチで繰り返す。この結
果、主相とは異なる磁気特性を有する、非晶質の境界相
が形成され、これらの境界相がストライプ状に配列され
た構造となる。
第15図は、得られた磁性体に、レーザビームの走査方
向(境界相が延びる方向)に対して直交する方向に磁界
を印加した後、磁界を0近傍に戻し、縦カー効果を用い
た磁区観察装置で観察される磁区構造を示す写真であ
る。第15図に示されるように、第2図のモデルと同様な
磁区パターンが形成されている。
このようにして磁気異方性が導入された薄帯状の磁性
体を、軸に接着することにより、第4図と同様なトルク
センサを作製することができる。
実施例3 薄帯状の磁性体を局所加熱して、磁気異方性を導入す
る、他の方法について説明する。
第16図に示すように、図示しない供給ロールと巻取ロ
ールとの間に、薄帯状の磁性体12を移動可能に支持す
る。電源121に接続された赤外ランプ122から直接放射さ
れる赤外線及び集光ミラー123で反射される赤外線124
を、スリット板125に設けられたスリット126を通して磁
性体12に照射する。
この場合、磁性体12を移動させながら、赤外ランプ12
2のオン−オフを繰り返すことにより、ストライプ状に
配列された境界相を形成することができる。
また、第17図に示すように、スリット板125の一方の
面に、スリット128を有するシャッター127を移動可能に
支持する。赤外線124はスリット板125のスリット126
と、シャッター127のスリット128とが重なった部分を通
過して、磁性体12にスポット状に照射される。赤外線12
4のスポットは、磁性体12の移動と、シャッター127の移
動に応じて走査される。
実施例4 磁性体を磁場中で局所加熱して磁気異方性を導入する
方法について説明する。この方法は、基本的には実施例
1〜3で用いたのと同様な装置を用いて行われる。
RFマグネトロンスパッタ装置に、特殊形状のターゲッ
トをセットし、強磁性体(S45C)からなる直径20mmの軸
の表面の2個所に、 Co85Zr10Fe5 なる組成を有する、幅10mm、厚さ15μmの非晶質合金薄
膜からなる1対の磁性体を形成する。
第18図に示すように、第1図の装置に電磁石55を加え
た装置を用いて、これらの磁性体に磁気異方性を導入す
る。電磁石55により磁性体12に直流磁界を印加し、軸11
を回転させかつ長さ方向へ移動させながら、レーザ51か
ら放射されるレーザビーム52を、ミラー53で反射させ、
レンズ54で集束させて軸11の表面の磁性体12a、12bに照
射する。
この場合、レーザビームのスポット径を50μmとし、
5m/minの走査速度で連続的に照射する。レーザビームの
走査方向は、軸11の周方向に対して、磁性体12aでは+4
5゜、磁性体12bでは−45゜の方向とし、前述した操作を
1mmピッチで繰返す。電磁石54による磁界の方向もこれ
と同一の方向とする。この結果、非晶質の主相13とは異
なる磁気特性を有する、非晶質の境界相14が形成され、
これらの境界相14がストライプ状に配列された構造とな
る。
第4図と同様なトルクセンサを作製し、トルクを検出
した結果を第19図に示す。第19図から明らかなように、
このトルクセンサの出力は、広いトルク範囲にわたって
良好な直線性を示す。
磁性体を磁場中で局所加熱して磁気異方性を導入す
る、他の方法について説明する。
前述した第14図に示すように、磁性体12の近傍に電磁
石55を設置し、磁性体12に所定の方向に沿って磁界を印
加した状態で、レーザビームを走査させて、磁気異方性
を導入してもよい。
また、第20図に示すように、第16図の装置に電磁石55
を加えた装置を用いて、磁性体12に所定の方向に沿って
磁界を印加した状態で、スリット126を通して赤外線を
照射させて、磁性体に磁気異方性を導入してもよい。
実施例5 磁性体に応力を印加した状態で、局所加熱して磁気異
方性を導入する方法について説明する。
急冷ロール法により、 (Fe0.8Co0.278Si8B14 なる組成を有する磁歪定数10-5程度の非晶質合金薄帯を
作製する。
第21図に示す装置を用いて、薄帯状の磁性体に磁気異
方性を導入する。第21図において、磁性体12は、XY方向
に移動可能ステージ131上に設けられた、供給ローラ13
2、磁性体固定用の二軸ローラ133、134及び巻取ローラ
(図示せず)により移動可能に支持されている。一方の
二軸ローラ134の支持部材には、荷重135が取り付けら
れ、二軸ローラ133、134間に固定された磁性体12に引張
り応力が印加されるようになっている。磁性体12には、
レーザ51からレーザビームが照射される。なお、ステー
ジ131は回転できるようにしてもよい。
この場合、荷重135により磁性体12に10kg/mm2の引張
り応力を印加した状態で、レーザビームのスポット径を
50μmとし、ステージ131を移動させることにより、所
定方向に3m/minの走査速度で連続的に走査させる。この
操作を1mmピッチで繰返す。この結果、局所加熱により
導入された内部応力だけでなく、荷重による応力が加わ
り、磁性体12に応力誘起磁気異方性が導入される。
このようにして所定方向に磁気異方性が導入された薄
帯状の磁性体を、軸に接着することにより、第4図と同
様なトルクセンサを作製する。このトルクセンサによ
り、トルクを検出した結果を第22図に示す。第22図から
明らかなように、このトルクセンサの出力は、広いトル
ク範囲にわたって良好な直線性を示す。
磁性体に応力を印加した状態で、局所加熱して磁気異
方性を導入する、他の方法について説明する。
第23図に示すように、XY方向に移動可能なステージ13
1上に、固定治具136により、磁性体12の4辺を機械的に
押さえ、磁性体12にレーザ51から固定治具136に設けら
れた開口137を通してレーザビームを照射するようにし
てもよい。このような方法でも、レーザビームの照射領
域が溶融凝固する際に、結果的に磁性体12に応力が印加
され、応力誘起磁気異方性が導入される。
また、第14図、第16図、又は第17図の装置において、
薄帯状の磁性体12を支持している2個のローラ(図示せ
ず)のうち、巻取りローラーがやや速く回転するように
設定して、磁性体に引張り応力が印加されるようにして
もよい。このとき、ローラはローラ軸方向にスライドで
きるようにすることが好ましい。
変形例として、第21図、第23図に示すように、電磁石
55を設け、磁性体12に応力を印加するとともに、磁場を
印加してもよい。このような方法では、局所加熱と磁場
による誘導磁気異方性及び応力誘起磁気異方性が合成さ
れて、複雑な磁気異方性を導入することもできる。な
お、磁場の方向は、応力の方向に対して任意の角度をな
すように設定できることが好ましい。
実施例6 磁性体の化合物が生成される雰囲気中で、磁性体を局
所加熱して磁気異方性を導入する方法について説明す
る。
RFマグネトロンスパッタ装置に、特殊形状のターゲッ
トをセットし、強磁性体(S45C)からなる直径20mmの軸
の表面の2個所に、 Fe67Co18Si1B14 なる組成を有する、磁歪定数3.5×10-5程度の非晶質合
金薄膜からなる1対の磁性体を形成する。
第24図に示すよに、第1図の装置に酸素ガスを放出す
るノズル56を加えた装置を用いて、これらの磁性体に磁
気異方性を導入する。ノズル56から純度95%の酸素ガス
を吹き付け、軸11を回転させかつ長さ方向へ移動させな
がら、レーザ51から放射されるレーザビーム52を、ミラ
ー53で反射させ、レンズ54で集束させて軸11の表面の磁
性体12a、12bに照射する。この場合、レーザビームのス
ポット径を100μmとし、1m/minの走査速度で連続的に
照射する。レーザビームの走査方向は、軸11の周方向に
対して、磁性体12aでは+45゜、磁性体12bでは−45゜の
方向とし、前述した操作を1mmピッチで繰返す。この結
果、レーザビームが照射された領域では、酸化物を含む
境界相16が形成され、これらの境界相16がストライプ状
に配列された構造となる。酸化物としては、溶融凝固し
たFe−Co−Si−B−Oなる組成の非晶質相、Fe2O3、Fe3
O4、CoOなどの微結晶からなる多結晶相が含まれる。そ
して、レーザビーム走査方向が磁化容易軸方向となり、
軸11の周方向に対して、磁性体12aでは+45゜の方向に
一軸磁気異方性▲K1 u0▼が、磁性体12bでは−45゜の方
向に一軸磁気異方性▲K2 u0▼が導入される。
第4図と同じ構造のトルクセンサを作製し、トルクを
検出した結果を第25図に示す。第25図から明らかなよう
に、このトルクセンサの出力は、広いトルク範囲にわた
って良好な直線性を示す。
他の雰囲気中で、磁性体を局所加熱して磁気異方性を
導入する方法について説明する。
磁性体として前述した非晶質合金の代わりにめっきに
よりFe50Ni50を形成し、酸素ガスの代わりに純度95%の
窒素ガスを用いる以外は、前記と同様にして、磁性体に
磁気異方性を導入する。この場合、窒化物を含む境界相
が形成される。窒化物としては、溶融凝固したFe−Ni−
Nなる組成の非晶質相、FeNなどの微結晶からなる多結
晶相が含まれる。
以上説明したように、本発明の方法を用いれば、磁性
体に充分な磁気異方性を容易かつ確実に導入することが
できる。この結果、例えば感度の高いトルクセンサを作
製することができる。
なお、トルクセンサは、以上で説明したもの以外に
も、以下のような構成を有するものが用いることができ
る。
第4図のトルクセンサでは励磁コイル14を用いたが、
第26図に示すように励磁コイルを用いずに、第27図に示
す回路構成でトルク検出を行ってもよい。第27図におい
て、発振器21で発生された正弦波電流は増幅器22で増幅
される。増幅器22の出力端には,検出コイル15aと抵抗R
117aとの直列回路及び検出コイル15bと抵抗R2(R2
R1)17bとの直列回路からなるブリッジ回路が接続され
ている。また、発振器21で発生された正弦波電流は参照
信号発生器27に入力され、ここで発生した信号が位相検
波器28に出力される。そして、ブリッジ回路の検出端に
は差動増幅器25が接続され、その出力が位相検波器28で
検波されてトルクに応じた出力を得ることができる。
また、第28図に示すように検出コイル15a(15b)及び
励磁コイル16a(16b)が巻かれた磁気ヘッド18a(18b)
を用い、第29図に示す回路構成でトルク検出を行っても
よい。第29図において、検出コイル15a、15bは差動接続
されている。
また、本発明の方法により磁気異方性が導入された磁
性体は、トルクセンサだけでなく、歪みセンサや電流セ
ンサなどにも応用することができる。
歪みセンサを第30図を参照して説明する。第30図にお
いて、コイル基板31の両面には、磁歪効果を有する磁性
体12、12が、コイル基板31と絶縁された状態で設けられ
る。この磁性体12、12には、本発明の方法により、その
長さ方向を磁化容易軸とする一軸磁気異方性が導入され
ている。コイル基板31は、可撓性を有する絶縁基板32の
一方の面の上に、1対のコイル33a、33bを基板32の長さ
方向に沿って設け、これらを端子34a、34b間に直列に接
続したものである。すなわち、コイル33a、33bの内端ど
うしはスルーホールを通して基板32の裏面側に設けられ
た配線35により接続され、一方のコイル33aの外端は配
線36aにより端子34aと接続され、他方のコイル33bの外
端は配線36bにより端子34bと接続されている。この結
果、コイル33a、33bには互いに逆方向の電流が流れ、コ
イル33a、33bは互いに逆向きの磁束を発生する。
端子34a、34b間に電流を流すと、コイル33a、33bで発
生した磁束は、磁性体12、12の長さ方向に沿う磁路を通
過する。磁性体12、12の長さ方向に引張り応力又は圧縮
応力が作用すると、磁歪効果により誘導磁気異方性が発
生し、その結果透磁率の変化が生じる。この透磁率の変
化は、コイル33a、33bの合成インダクタンスの変化とし
て現われるので、歪みの大きさを検出することができ
る。
電流センサを第31図を参照して説明する。第31図にお
いて、円柱状のコア41の表面には、本発明の方法により
所定方向に一軸磁気異方性が導入された磁性体12が形成
されている。この磁性体12の近傍には、測定される電流
が流れるコイル42及び検出コイル43が巻かれている。
コイル42に電流が流れると、磁性体12の磁気特性が変
化する。この変化に応じて、検出コイル43のインピーダ
ンスが変化するので、コイル42に流れる電流の大きさを
検出することができる。
更に、本発明の方法により磁気異方性が導入された磁
性体は、各種センサだけでなく、磁気コアなどにも応用
することができる。例えば、長尺の薄帯状磁性体の幅方
向に線状の境界相を形成し、長さ方向にパターン化する
ことにより、磁区を細分化できるので、ヒステリシスを
低減することができる。この磁性体を巻いてトロイダル
コアを作製すると、低損失化が実現できる。この場合、
磁性体が低磁歪又はゼロ磁歪を示す組成であれば、より
低損失化することができ、高周波領域まで使用すること
ができる。
[発明の効果] 以上詳述したように本発明の方法を用いれば、磁性体
に充分な磁気異方性を容易かつ確実に導入することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例1において磁性体に磁気異方性
の導入するために用いられる装置を示す図、第2図は本
発明の実施例1において磁気異方性が導入された磁性体
の磁区のモデルを示す図、第3図は本発明の実施例にお
いて作製されるトルクセンサの原理を説明する図、第4
図は本発明の実施例1において作製されたトルクセンサ
の構成を示す図、第5図は本発明の実施例1において作
製されたトルクセンサの回路構成を示すブロック図、第
6図は本発明の実施例1において作製されたトルクセン
サのトルク検出特性を示す図、第7図は本発明の実施例
1において作製されたトルクセンサについて、レーザビ
ームの走査速度と感度との関係を示す図、第8図は本発
明の実施例1において他の磁性体を用いて作製されたト
ルクセンサのトルク検出特性を示す図、第9図は本発明
の実施例1において他の磁性体を用いて作製されたトル
クセンサについて、レーザビームの走査速度と感度との
関係を示す図、第10図は本発明の実施例1において更に
他の磁性体を用いて作製されたトルクセンサのトルク検
出特性を示す図、第11図は本発明の実施例1において更
に他の磁性体を用いて作製されたトルクセンサについ
て、境界相の割合と感度との関係を示す図、第12図は本
発明の実施例1において軸を構成する磁性体に磁気異方
性を導入することにより作製されたトルクセンサの構成
を示す図、第13図は本発明の実施例1において軸を構成
する磁性体に磁気異方性を導入することにより作製され
たトルクセンサのトルク検出特性を示す図、第14図は本
発明の実施例2において磁性体に磁気異方性の導入する
ために用いられる装置を示す図、第15図は本発明の実施
例2において磁気異方性が導入された磁性体の金属組織
を示す写真、第16図は本発明の実施例3において磁性体
に磁気異方性の導入するために用いられる装置を示す
図、第17図は本発明の実施例3において磁性体に磁気異
方性の導入するために用いられる他の装置を示す図、第
18図は本発明の実施例4において磁性体に磁気異方性の
導入するために用いられる装置を示す図、第19図は本発
明の実施例4において作製されたトルクセンサのトルク
検出特性を示す図、第20図は本発明の実施例4において
磁性体に磁気異方性の導入するために用いられる他の装
置を示す図、第21図は本発明の実施例5において磁性体
に磁気異方性の導入するために用いられる装置を示す
図、第22図は本発明の実施例5において作製されたトル
クセンサのトルク検出特性を示す図、第23図は本発明の
実施例5において磁性体に磁気異方性の導入するために
用いられる他の装置を示す図、第24図は本発明の実施例
6において磁性体に磁気異方性の導入するために用いら
れる装置を示す図、第25図は本発明の実施例6において
作製されたトルクセンサのトルク検出特性を示す図、第
26図は他のトルクセンサの構成を示す図、第27図は他の
トルクセンサの回路構成を示すブロック図、第28図は更
に他のトルクセンサの構成を示す図、第29図は更に他の
トルクセンサの回路構成を示すブロック図、第30図は歪
みセンサの構成を示す図、第31図は電流センサの構成を
示す図である。 12……磁性体、13……主相、14……境界相、51……レー
ザ発振器、52……レーザビーム、53……ミラー、54……
レンズ、55……電磁石、56……ノズル、101……テーブ
ル、102……ガイドベース、103……支柱、104……ボー
ルネジ、105……ガイドレール、106光学系、107……ミ
ラー、108……レンズ、109……センサ、110……移動検
出器、111……サーボモータ、112……サーボモータコン
トローラ、113……YAGレーザ、114……レーザビーム、1
15……ガス供給系、116……コントローラ、117……操作
盤、121……電源、122……赤外ランプ、123……集光ミ
ラー、124……赤外線、125……スリット板、126……ス
リット、127……シャッター、128……スリット、131…
…ステージ、132……供給ローラ、133、134……二軸ロ
ーラ、135……荷重、136……固定治具、137……開口。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平1−297733 (32)優先日 平1(1989)11月17日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平1−298941 (32)優先日 平1(1989)11月17日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平2−38263 (32)優先日 平2(1990)2月21日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平2−84656 (32)優先日 平2(1990)3月30日 (33)優先権主張国 日本(JP) (56)参考文献 特開 平1−117378(JP,A) 特開 昭59−61732(JP,A) 特開 昭61−173128(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 41/00 - 41/26

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】磁性体を構成要素とするセンサを製造する
    にあたり、前記磁性体の表面を選択的に局所加熱し、前
    記磁性体の主相を磁気的に複数の領域に分割する境界相
    のパターンを形成し、前記分割された主相領域に磁気異
    方性を生じさせることを特徴とする磁性体を構成要素と
    するセンサの製造方法。
  2. 【請求項2】磁性体に磁場を印加することを特徴とする
    請求項(1)記載の磁性体を構成要素とするセンサの製
    造方法。
  3. 【請求項3】磁性体に応力を印加することを特徴とする
    請求項(1)記載の磁性体を構成要素とするセンサの製
    造方法。
  4. 【請求項4】磁性体を、その酸化物相、窒化物相または
    還元相が生成される雰囲気中で局所加熱することを特徴
    とする請求項(1)記載の磁性体を構成要素とするセン
    サの製造方法。
  5. 【請求項5】前記分割された主相領域に、前記境界相の
    方向と平行な方向または垂直な方向に磁気異方性を生じ
    させることを特徴とする請求項(1)記載の磁性体を構
    成要素とするセンサの製造方法。
  6. 【請求項6】前記磁性体の表面を選択的に局所加熱する
    ことにより、前記磁性体の主相を磁気的に複数の領域に
    分割する境界相のパターンを形成するとともに前記分割
    された主相領域に磁気異方性を生じさせることを特徴と
    する請求項(1)記載の磁性体を構成要素とするセンサ
    の製造方法。
JP2168401A 1989-06-30 1990-06-28 磁性体を構成要素とするセンサの製造方法 Expired - Lifetime JP2965628B2 (ja)

Applications Claiming Priority (14)

Application Number Priority Date Filing Date Title
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